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剣客バトルロワイアル〜第六幕〜

1 :創る名無しに見る名無し:2010/08/08(日) 00:41:49 ID:W+GpKYa4
夢が現か現か夢か ある者は泉下から、ある者は永劫の未来から
妖しの力によって、謎の孤島に集いし 古今東西の剣鬼八十名
踊る舞台は蠱毒の坩堝 果たして最後に立つ影はいずれの者か

前スレ
剣客バトルロワイアル〜第五幕〜
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1277182611/

避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12485/

まとめ
http://www15.atwiki.jp/kenkaku/

2 :創る名無しに見る名無し:2010/08/08(日) 00:42:50 ID:W+GpKYa4
23/36【史実】
○足利義輝/○伊藤一刀斎/○伊東甲子太郎/● 岡田以蔵
○沖田総司/● 奥村五百子 /○小野忠明/○上泉信綱
● 河上彦斎 /● 清河八郎 /○近藤勇/● 斎藤伝鬼坊
○斉藤一/●斎藤弥九郎/○坂本龍馬/● 佐々木小次郎
○佐々木只三郎/○白井亨/○新免無二斎/○芹沢鴨
○千葉さな子/○塚原卜伝/○辻月丹/○東郷重位
○富田勢源/● 中村半次郎 /● 新見錦 /○服部武雄
● 林崎甚助 /○土方歳三/● 仏生寺弥助 /○宮本武蔵
● 師岡一羽 /○柳生十兵衛/○柳生連也斎/● 山南敬助

3 :創る名無しに見る名無し:2010/08/08(日) 00:43:47 ID:W+GpKYa4
1/1【明楽と孫蔵】
○明楽伊織
1/1【明日のよいち!】
○烏丸与一
1/1【暴れん坊将軍】
○徳川吉宗
0/1【異説剣豪伝奇 武蔵伝】
● 佐々木小次郎(傷)
2/2【うたわれるもの】
○オボロ/○トウカ
1/1【仮面のメイドガイ】
○富士原なえか
2/2【銀魂】
○坂田銀時/○志村新八
1/1【Gift−ギフト−】
○外薗綸花
0/1【月華の剣士第二幕】
● 高嶺響
1/1【剣客商売】
○秋山小兵衛
2/2【魁!男塾】
○赤石剛次/○剣桃太郎
0/1【里見☆八犬伝】
● 犬塚信乃(女)
0/1【三匹が斬る!】
● 久慈慎之介
1/3【シグルイ】
● 伊良子清玄 /● 岩本虎眼 /○藤木源之助
1/1【史上最強の弟子ケンイチ】
○香坂しぐれ

4 :創る名無しに見る名無し:2010/08/08(日) 00:45:32 ID:W+GpKYa4
0/2【神州纐纈城】
● 三合目陶器師(北条内記) /●高坂甚太郎
0/2【駿河城御前試合】
● 屈木頑乃助 /● 座波間左衛門
1/1【椿三十郎】
○椿三十郎
1/1【東方Project】
○魂魄妖夢
1/2【八犬伝(碧也ぴんく版)】
● 犬坂毛野 /○犬塚信乃(男)
1/1【バトルフィーバーJ】
○倉間鉄山
1/2【刃鳴散らす】
● 伊烏義阿 /○武田赤音
1/1【ハヤテのごとく】
○桂ヒナギク
0/1【BAMBOOBLADE(バンブーブレード)】
● 川添珠姫
1/1【必殺仕事人(必殺シリーズ)】
○中村主水
1/1【Fate/stay night】
○佐々木小次郎(偽)
1/1【用心棒日月抄】
○細谷源太夫
0/1【らんま1/2】
● 九能帯刀
1/1【ルパン三世】
○石川五ェ門
3/6【るろうに剣心】
● 鵜堂刃衛 /○神谷薫/○志々雄真実/● 四乃森蒼紫 /● 瀬田宗次郎 /○緋村剣心

見せしめ
0/1【斬】
● 村山斬

【残り五十名】

5 :創る名無しに見る名無し:2010/08/08(日) 01:52:31 ID:9JfGplXQ
お、復活したか
スレ立て乙!

6 :創る名無しに見る名無し:2010/08/08(日) 02:00:04 ID:odotbs0q
復活キタコレ!
スレ立て乙であります!

7 :創る名無しに見る名無し:2010/08/09(月) 21:27:08 ID:9uaIa4Xs
ギコで見てるんだけどなんで過去スレ全て消えたの?

8 :創る名無しに見る名無し:2010/08/09(月) 21:36:34 ID:QZ2sW8p2
鯖移転の際にトラブルがあって、この板のほとんどのスレが落ちたらしい

9 :創る名無しに見る名無し:2010/08/09(月) 22:18:41 ID:7kR2eAo0
復活記念age

10 : ◆cNVX6DYRQU :2010/08/10(火) 21:43:38 ID:g9sSi9Xk
スレ立て乙です。
伊藤一刀斎、香坂しぐれ、椿三十郎、志々雄真実で予約します。

11 :創る名無しに見る名無し:2010/08/17(火) 12:04:12 ID:1Un9dyYS


12 :創る名無しに見る名無し:2010/08/17(火) 19:22:48 ID:q7Ggz/6o
保守

13 : ◆cNVX6DYRQU :2010/08/18(水) 06:08:23 ID:zRhF3q/6
伊藤一刀斎、香坂しぐれ、椿三十郎、志々雄真実で投下します。

14 :名刀の鞘 ◆cNVX6DYRQU :2010/08/18(水) 06:10:54 ID:zRhF3q/6
(二十三人か、多いな)
城下を目指して海岸沿いの木立の中を南下する椿三十郎は、果心居士の言葉に軽い衝撃を受けていた。
最初に出会った辻月丹も、仁七村で見掛けた三人も、三十郎が今まで出会ったのは殺し合いなどする気のない者ばかり。
そのせいで少し楽観的に考えていたが、どうやら主催者の言葉に乗せられた連中は意外と多いようだ。
まあ、殺し合いに否定的な者ばかり集めてはこんな御前試合など成り立たないのだから、当然かもしれないが。
とすると、三十郎がこれまでそうした剣客に出会わなかったのは単に幸運だったからか、それとも……
(危険な連中は、隠れて隙を伺ってやがるのかもしれねえな)
八十人で互いに殺し合い最後の一人になろうと思えば、六七人は自分の手で討たなければなるまい。
前に推測したようにこの御前試合の参加者が達人ばかりだとすると、それは如何に腕の立つ者にも簡単な事ではなかろう。
加えて、仁七村の者達のように徒党を組む者も居る訳で、それに真っ向から勝負を挑むなど無謀の極み。
御前試合を叩き潰すのではなく勝ち抜こうとするなら、隠れ潜み、隙を見せた者から狩って行くのが現実的な策だ。
こう考えれば、今まで積極的に他者を探そうとしなかった三十郎が、危険な剣士に出会わなかったのも頷ける。
(今もその辺に隠れて俺を狙ってる奴がいるかもしれないな)
ふと、そんな考えが三十郎の胸に浮かぶ。

「隠れてないで、出て来たらどうだ?」
殆ど冗談で言ってみた三十郎だが、その言葉が終わらぬ内に微かな気配が生じたのを感じて思わず剣に手を掛ける。
次の瞬間、頭上の木の枝がざわめき、何者かが飛び降りて来るのを感じた三十郎は、抜き打ちを放つ。
だが、斬ったのは人影と共に降りて来た葉のみ。肝心の敵……香坂しぐれは、足指で枝を抓み、落下を一時的に止めたのだ。
そうして三十郎の居合いをやり過ごしたしぐれは、再び落下して一撃を放った。
地面を一転してこの一撃をかわした三十郎は、相手の武器が脇差でなければやられていたと、肝を冷やす。
実際には、しぐれの攻撃に三十郎の命を奪おうと言うまでの殺気がなかった為も大きいのだが、そこまではわからない。
殺意を籠めずとも十分に鋭い剣と、先程までの推論から、三十郎がしぐれを危険人物と認識したのは仕方ない事だろう。
互いに背を向け、肩越しに睨み合う三十郎としぐれ。
長刀を持つ三十郎は、脇差を構えるしぐれより間合いの点では有利だが、得物の長さが違い過ぎる為、懐に潜られると厄介だ。
三十郎は、全神経を集中させて、しぐれの動きを読み取ろうとした。

15 :名刀の鞘 ◆cNVX6DYRQU :2010/08/18(水) 06:13:58 ID:zRhF3q/6
厄介な相手に行き会った。志々雄真実の姿を死人した瞬間、伊藤一刀斎は即座にそう悟った。
一刀斎にそう思わせた要因としては、包帯に覆われた異相や血の臭いもあったが、最大のものは自分に向けられた殺気。
恐ろしく烈しい殺気でありながら、そこに憎しみや怒りはまるで感じられず、むしろ愉悦の気が内包されている。
目の前にいるのは、強敵と命の遣り取りをする事を第一の喜びとする剣鬼。
かつては自身もそうであったし、若い剣士はそうであるべきとも思うが、今の一刀斎には、相手になってやる気はない。
一刀斎は既に人斬りに倦み、己の全てである剣法を敢えて封印する事で、悟りを得ようとしている身の上だ。
本来ならば、志々雄の姿を見た瞬間に踵を返して逃げ出すのが正解だっただろう。
だが、位置が悪い。一刀斎の感覚が正しければ、ここは地図の表記で言うとほノ伍の北東の隅に当たる筈。
北には志々雄、東には水地。
逃げるとすれば南か西しかない訳だが、そうすると巳の刻以降の立ち入りを禁じられた地域の只中に戻る事になる。
巳の刻まではまだ間があるが、そろそろ主催者の挑発に乗せられた剣士が集まり始めてもおかしくない頃だ。
そんな事を考えていた為に、一刀斎は逃げる機会を逸した……いや、或いは、上の理屈はただの言い訳かもしれない。
この強敵と戦ってみたい……その想いが一刀斎の胸の中で燻っていた事は、否定できないのだから。

「悪くねえな。さあ、楽しもうか」
「すまぬが、俺はもう人は斬らない。斬り飽いた」
挑発的とも言える一刀斎の言葉に、志々雄はにやりと笑って答える。
「無理するなよ。あんたの剣気は、まだまだ斬り足りないって言ってるぜ?」
そう言われてしまうと、一刀斎にも簡単には反論できなかった。
実際、志々雄と相対して以来、一刀斎の心は久方ぶりに高揚しているのだ。
まるで、若き日に強敵との果し合いを行った時のように……いや、ここまでの昂ぶりは生まれて初めてかもしれない。
剣士ならば強敵と闘いたい欲求があるのは当然、この欲望を抑えるのも悟りを開く為の修行、とも言えるだろう。
しかし、相手は恐らく一刀斎が闘争心と技を総動員しても勝てるとは限らない程の強敵。
当然の事ながら、斬られて死んでしまえばどんな悟りも無意味となる。
戦うべきか、逃げるべきか。戦ったとして勝てるのか、逃げたとして逃げ切れるのか。
心を一つに定められぬままに、一刀斎は志々雄真実と睨み合っていた。

16 :名刀の鞘 ◆cNVX6DYRQU :2010/08/18(水) 06:16:42 ID:zRhF3q/6
睨み合う椿三十郎と香坂しぐれ。しかし、そうしていたのは一瞬、しぐれは振り向くと突進して来る。
三十郎としては、間合いを詰められると不利な以上、大刀の間合いに居る内に倒す以外にない。
素早く振り向きざまの一撃を放つ三十郎。とはいえ、まだしぐれを殺すまでの気はなく、途中で刀を峰に返した。
だが、それは余計な気遣い。三十郎の剣は、しぐれに届く前に、降って来た太い枝に遮られ、振りが遅れる。
その枝は、しぐれが先程まで足場としていたもの。
しぐれは飛び降りる前にその枝に切れ込みを入れておき、自重で枝が落ちるタイミングを見計らって動いたのだ。
剣が枝に遮られて出来た間隙を突いてしぐれは三十郎の懐に飛び込み、脇差による一撃を叩き込む。
だが、ここで、しぐれを殺さぬ為に刃を返していた事が、三十郎に幸いした。
峰で叩かれた枝がしぐれに向かって飛び、しぐれはそれを切り裂いてから三十郎を攻撃した為、三十郎を捉え切れない。
結果として、しぐれの脇差は、身を捩じらせた三十郎の肩を浅く突くに留まる。
それでもまだ、三十郎の至近距離まで近付いたしぐれが有利と見えたが、次の瞬間、その身体が跳ね飛ばされた。
三十郎が腰に差した鞘を掴み、左手で引き抜きつつの突きでしぐれを打ったのだ。
「やっぱり、名刀には鞘が付いてないとな」
「ならば…お前は名刀ではない…な」
そう三十郎の軽口に返すと、しぐれは跳躍して小太刀の葉の茂みの中に身を隠す。
逃げたか……と思った三十郎だが、一瞬後、気付いて駆け出し……いや、逃げ出した。

正面から戦えば、間合いの差と両手が揃っている事で三十郎が有利。
しかし、気配を消す事と身軽さにおいてはしぐれが大きく優っている。
先程は三十郎の思い付きがたまたま当たっていたおかげでしぐれを炙り出す事が出来たが、次はそう都合良く行くまい。
木立の中で隠れつつ襲われれば、不利なのは三十郎の方。
全力で駆けて木立を抜け出し、周囲を見回してみるが、しぐれの姿は見られない。
一瞬、遠ざかった木立の中から自分を見詰める鋭い視線を感じたように思うが、それもすぐに消えた。
取り敢えず息を付いて、三十郎は再び歩き出す。
これまで、三十郎は、未知の力を主催者を警戒し、警戒心の殆どをそちらに向けていたが、それだけでは不十分のようだ。
参加者の中にも他者を殺そうとする者が多くおり、どうやらその者達は腕が立つ上に狡猾さを併せ持っている。
主催者を倒そうとする剣士が、月丹のように暢気な者ばかりであれば、危ういかもしれない。
機会があれば、自分のような者が、危険な剣士の数を減らしておくべきだろうか。
この御前試合が予想以上に過酷な物と感じた三十郎は、警戒を深めつつ城下へと向かうのであった。

【ほノ陸 平原/一日目/朝】

【椿三十郎@椿三十郎】
【状態】:肩に軽傷
【装備】:やや長めの打刀
【所持品】:支給品一式、蝋燭(5本)
【思考】基本:御前試合を大元から潰す。襲われたら叩っ斬る
一:柳生十兵衛から情報を得るため城下へ向かう
二:名乗る時は「椿三十郎」で統一(戦術上、欺瞞が必要な場合はこの限りではない)
三:辻月丹に再会することがあれば貰った食料分の借りを返す
四:危険な剣士を見付けたら、なるべく倒す
【備考】
※食料一人分は完全消費しました。
※人別帖の人名の真偽は判断を保留しています。

【ほノ漆 木立の中/一日目/朝】

【香坂しぐれ@史上最強の弟子ケンイチ】
【状態】疲労中、右手首切断(治療済み)、両腕にかすり傷、腹部と額に打撲
【装備】蒼紫の二刀小太刀の一本(鞘なし)
【所持品】無し
【思考】
基本:殺し合いに乗ったものを殺す
一:木立に隠れて体力を回復させる
二:富田勢源に対する、心配と若干の不信感
三:近藤勇に勝つ方法を探す
【備考】
※登場時期は未定です。

17 :名刀の鞘 ◆cNVX6DYRQU :2010/08/18(水) 06:22:09 ID:zRhF3q/6
辰の刻を告げる鐘が鳴り響く。
もうかなりの時間、志々雄との睨み合いを続けている一刀斎は、このままではまずいととうに悟っていた。
志々雄の闘気は凄まじく、このまま睨み合いを続けて気死させるのは至難の業。少なくとも巳の刻までには絶対に無理だ。
巳の刻までこの場に留まって何が起きるかはわからないが、それを試してみる気は一刀斎にはない。
志々雄一人と相対していてさえ、己の戦意を抑えるのに苦労していると言うのに、更なる危険が加わったらどうなる事か。
このまま対峙を続ける訳にはいかないが、今から背を向けてほノ伍に駆け戻るのもまた剣呑。
一刀斎は、ついに打って出る覚悟を決めた。
と言っても、切り掛かる訳ではなく、その気勢で剣気をぶつける事で志々雄を守りに入らせ、その隙にすり抜けるのだ。
その狙いを持って一刀斎は剣気を高め、それに応じて志々雄も力を溜める。そして、一刀斎は剣気を解き放った。

剣がぶつかり合う音が響き、一刀斎は驚愕に眼を見開く。
もっとも、志々雄が一刀斎の予想を超える動きをしたという訳ではない。
予想外の動きをしたのは一刀斎の方。剣気だけをぶつけるつもりが、渾身の一撃を志々雄に叩き付けていたのだ。
擬態を見抜かれぬよう本気で高めた剣気と、志々雄の凶暴な闘気に呼応して、一刀斎の身体が意志を超えて動いていた。
己の行為に狼狽し、慌てて剣を引く一刀斎。結果としては、それで正解だったと言って良いだろう。
あのまま押し込んでいれば、志々雄が受け太刀を押し返し、一刀斎の刀を斬鉄剣で切断していたであろうから。
無論、志々雄も容易く逃がしはしない。剣を回して大地に擦らせると、摩擦でその刃先に炎が生まれる。
斬鉄剣が燃料となるべき脂を残していない為に、炎は一瞬で消えるが、肝心なのは発火するまでに上昇した刃先の高温。
それが斬鉄剣の周囲に陽炎を生じ、一刀斎に剣の軌道を正確に見究めさせない。
身を引いて志々雄の斬撃をかわす一刀斎だが、斬鉄剣に袂を切られ、次の瞬間、体勢を大きく崩された。
志々雄が香坂しぐれとの対戦で出来た斬鉄剣の刃毀れを利用し、そこに一刀斎の着物を引っ掛けたのだ。
一刀斎は袂を引かれるのに逆らわず、その方向に跳ぶ事で、志々雄の追い討ちの拳をかわすが、無理な跳躍で地に膝を付く。
そんな一刀斎に対し、斬鉄剣を構え直した志々雄は、大上段からの気勢の乗った振り下ろしで両断せんとする。
この体勢では回避も防御も不可能と悟った一刀斎は、自身も志々雄の胴を目掛けて渾身の横薙ぎを放つ。
二筋の剣撃が交錯し、志々雄の左手が空を切る。そして次の瞬間、相手の剣を受けて弾き飛ばされたのは志々雄の方。
一刀斎の剣の方が紙一重だけ早かった形だが、そもそもの剣速において志々雄が劣っていた訳では決してない。
なのに一刀斎が競り勝った理由の一つは、一刀斎の無理。腕を痛めかねない、本来の限界を越えた斬撃を放ったのだ。
そのせいで、志々雄に剣を当てながら、それを引いて斬る余裕すらなく、叩いて弾き飛ばすに留まる。
まあ、人を斬らぬと誓った一刀斎にとってはその方が都合が良い訳で、だからこそこんな一撃を放った訳だが。
そして、もう一つの理由は志々雄の失策。あの時、志々雄は両手ではなく片手で剣を握っての一撃を放っていた。
一刀斎が回避を試みた場合、その方が自由が利くからだが、相手が反撃に出た時点で両手斬りに切り替えても良かっただろう。
そうしていれば、重力を味方に付けた志々雄の切り下ろしの方が早く一刀斎を両断していた公算が高い。
しかし、志々雄はそれをせず、開いた左手を空しく動かし、存在しない鞘を掴んで一刀斎の薙ぎを受けようとしたのだ。
もし、志々雄の事に鞘が差されていれば、速くとも鋭さに欠ける横薙ぎは鞘を切断できずに砕くしかなく、
それで生じる一瞬の遅滞の間に、志々雄の斬鉄剣が一刀斎に届いていたであろう。
だが、志々雄はとうに鞘を失っており、その為に目算が狂って一刀斎に後れを取る結果となった。
志々雄真実ともあろう者が、己が鞘を持たない事を忘れるという失策を犯したのは、気力の消耗に拠る部分が大きい。
強敵への対処をすぐに決められず、長々と睨み合いをするに到らせた一刀斎の悩みが彼を助けたとも言えるし、
志々雄の鞘を奪い、激戦で消耗させた千石・トウカ・しぐれ等が、結果として見ず知らずの一刀斎を救った形でもある。

18 :名刀の鞘 ◆cNVX6DYRQU :2010/08/18(水) 06:23:26 ID:zRhF3q/6
渾身の一撃で志々雄を跳ね飛ばした一刀斎はしばらく全力で駆け、追ってくる気配がない事を確かめてから振り返る。
すると、志々雄は一刀斎を追おうともせず、その場に座り込んでいるようだ。
消耗した状態で闘い続ける愚を悟ったか、逃げる者よりもで主催者の挑発に乗せられて来る剣士と闘う方が面白いと踏んだか。
どちらにせよ、強敵と戦いながら、斬らずして逃げる事に成功した一刀斎は手応えを感じていた。
危うい場面は幾つもあって完全とはとても言えないが、この調子で行けば、悟りへと到るのも不可能ではあるまいと。
志々雄の振り下ろしで皮一枚だけ切られた頭から流れる血を軽く拭い、一刀斎は晴れ晴れとした顔で北へと向かう。

【ほノ伍 北東の隅/一日目/午前】

【志々雄真実@るろうに剣心】
【状態】疲労大、軽傷多数
【装備】斬鉄剣(鞘なし、刃こぼれ)
【道具】支給品一式
【思考】基本:この殺し合いを楽しむ。
一:しばらく休んで体力を回復させる
二:土方と再会できたら、改めて戦う。
三:無限刃を見付けたら手に入れる。
※死亡後からの参戦です。
※人別帖を確認しました。

【にノ伍 南東の隅/一日目/午前】

【伊藤一刀斎@史実】
【状態】:疲労小、頭部に掠り傷
【装備】:村雨@史実(鞘なし)
【所持品】:支給品一式
【思考】 :もう剣は振るわない。悟りを開くべく修行する
一:刀を決して使わない
二:伊庭寺に向かう
三:挑まれれば逃げる
【備考】
※一刀流の太刀筋は封印しました

19 :名刀の鞘 ◆cNVX6DYRQU :2010/08/18(水) 06:26:07 ID:zRhF3q/6
かつて、椿三十郎に「本当の名刀は鞘に納まっているもの」と諭した者がいた。
それが正しいかどうかはさておき、この言葉を発した女人は、鞘を剣を封印する物として捉えていたようだ。
しかし、それは決して「鞘」の本義ではない。
鞘の主目的は、刃自体を保護する事であり、それは、いざという時の為に、剣の鋭さを保たせる為である。
結局のところ、「斬る」事こそが剣の主眼であり、鞘もまたそれを補助する為にこそ存在する道具。
そして、剣士達は鞘に当初の目論見を越えた機能を持たせているが、それ等はどれも剣の「斬る」機能を助ける為のもの。
中でも居合い切りは最も良く知られたものだし、他にも鞘を武具として攻防に使う技は数多い。
結局の所、刀は何処までも「斬る」ものであり、それは剣士もまた同様。
今回、四人の剣士が二つの血闘を演じたが、四人の中で戦いに積極的な、言わば抜き身の刀は志々雄真実一人のみ。
椿三十郎と香坂しぐれは、相手が挑んで来ない限り戦うつもりはない、鞘の内にある刀に喩えられる剣士達であった。
にもかかわらず、互いの警戒心が呼応し、刺激し合い、最終的には命の遣り取りをする事になる。
更に伊藤一刀斎は、何があっても人を斬るまいと固く心に決めた、封印された剣。
それでさえも、志々雄に強い殺気を向けられれば無視できず、相手に剣を叩き付ける結果を生み出す。
今回の二つの闘いでは死者は出なかったが、それはただの結果。
厳しい戦いを経験した剣士達は、その刃の鋭さを増し、他の剣士達を巻き込み更に激しい戦いを引き起こすであろう。
強敵と出会えば闘うのが剣士の本能であり、これは剣士自身の意志でもそう簡単に止められるものではないのだ。
そうした剣士の本質に敢えて逆らい、新たなる境地を求めるのも、剣を究めた剣客に許された権利の一つではある。
しかし、その道は非常に険しく、伊藤一刀斎のような剣聖にすら、成就させるのは簡単ではあるまい。

20 : ◆cNVX6DYRQU :2010/08/18(水) 06:37:37 ID:zRhF3q/6
投下終了です。

21 :創る名無しに見る名無し:2010/08/18(水) 22:00:00 ID:QDFFuvEL
投下乙です

4者4様、されどその本質はいずれもやはり剣客
剣客とはつまるところ人斬り包丁、されど、斬らぬ事もまた選べれど…
彼ら、特に一刀斎の歩む道行きの険しいいですな。

>「やっぱり、名刀には鞘が付いてないとな」
>「ならば…お前は名刀ではない…な」

この掛け合いが個人的に好きです

22 :創る名無しに見る名無し:2010/08/19(木) 23:32:57 ID:ifD5BC9j
支援age

23 : ◆cNVX6DYRQU :2010/08/22(日) 20:53:00 ID:PYipzeME
芹沢鴨、桂ヒナギク、細谷源太夫、沖田総司、石川五ェ門、白井亨、柳生連也斎で予約します。

24 : ◆cNVX6DYRQU :2010/08/31(火) 06:17:14 ID:UipM0twS
芹沢鴨、桂ヒナギク、細谷源太夫、沖田総司、石川五ェ門、白井亨、柳生連也斎で投下します。

25 :技比べ ◆cNVX6DYRQU :2010/08/31(火) 06:21:24 ID:UipM0twS
「失礼。そこの川を人が流れて来たやもしれぬのだが、何か見ておられぬか?」
「人ですか。見てませんねえ。扇なら、下流に流れてましたが」
城下からやって来た男とにこやかに話す沖田総司。
平和的なやりとりと言って良いだろう……二人の間に渦巻く殺気と、男の身を染める血さえ無視すれば。
石川五ェ門は、沖田を止めるべきか加勢すべきか、迷っていた。
ここは、川沿いから道一本分だけ城下の中に入った路地の奥、向こう岸からは死角となった区域。
血の臭いが近付いてくるのを知った沖田は自ら歩み寄り、この位置で相手を迎えたのだ。
彼が川岸で相手を待たず、向こう岸と視線の通らないこの位置まで来た理由は明白。
一つには、芹沢達にこの出会いを気付かせぬ為。もう一つは、男に自分達が総勢五人の大集団と知られぬ為。
つまり、沖田ははじめから、この男との勝負を目論んでいると見て間違いないだろう。
無論、五ェ門とて、この男が殺戮を好む危険人物であれば、討つのにやぶさかではない。
その場合、ヒナギクや細谷にわざわざ川を渡らせる必要はなく、自分達二人で十分だとも思っている。
だが、問題はこの男が果たして危険な殺し屋であるのかどうかだ。
あの姿は、酒蔵で会った天狗男のような者に襲われた結果かもしれないし、同意の上での果し合いの結果かもしれない。
殺気とて、明らかに戦うつもりでいる沖田を見れば、それに応じるのは剣士ならば当然であろう。
この男の心底を知るにはどうするべきか。言葉を重ねるか、それとも……

五ェ門はそっと移動し、角から顔を出して対岸を覗き見る。
こちらの姿が見えないのを不審に思った芹沢達が、川を渡って来でもすれば、悠長に詮議などする余裕はなくなるだろう。
そこで、彼等の様子を伺い、場合によっては押し留めるつもりだったのだが……
五ェ門は芹沢達の様子を見てぎょっとする。彼等に一人の男が近付いているのが見えたのだ。
そして、その男の手には剥き出しの白刃……明らかに尋常ではない。
三対一とはいえ、ヒナギクの実戦での実力は未知数だし、天狗男との立ち合いを見ても、細谷の力はどうも安定に欠ける。
そして最大の問題は、芹沢のあの粗暴な性格。
あの男は、強敵に襲われた時、仲間と協調して戦うどころか、ヒナギクや細谷を盾にしかねないのではないか?
そうでなくても、芹沢には細谷を足手まといとして疎み、ヒナギクを新見の仇かと疑っている節があるのだし。
それらの危惧によって、五ェ門の心に焦りが生まれた。
彼等から目を離しているのは危険。出来ればすぐにでも駆け戻りたい所だが、沖田を放っておく訳にもいかない。
そもそも、こちらにいる男と、対岸の白刃男が仲間で、呼応してこちらを襲うつもりという可能性もあるのだし。
振り返って沖田達の様子を見ると、二人は微妙に位置を変え、男は木の陰に半ば隠れる形になっている。
いざとなったら、これを盾にして、二人に挟撃されるのを防ごうという魂胆だろうか。
これは、仮に闘う事になった場合、一筋縄ではいかなそうな相手だ。

「沖田殿、あまり時間をかけると芹沢殿が怒り出すぞ。早く行った方が良いのではないか?」
名前を呼ばれたのが気に入らなかったのか、呼び掛けた五ェ門を僅かに睨む沖田だが、すぐににこやかに反論を始める。
「でも、折角会えたのに、何もせずに別れるなんて失礼じゃないですか。こちらの……ええと、お名前は伺いましたっけ?」
「失礼。名乗るのが遅れたが、拙者は柳生厳包と申す」
沖田に乗せられたのか、自覚してか、「柳生」という名を無造作に口にする厳包。
こうなると、沖田は無論、五ェ門も彼を捨てて戻ろうとは言いにくくなる。
「柳生ですか。これなら、少々時間を取っても芹沢さんは許してくれると思いませんか?石川さん」
「いや、柳生と言っても、厳包殿の尾張柳生は江戸柳生とは一線を画していたと聞く。敵とは限るまい」
柳生連也斎厳包と言えば、柳生宗矩の息子宗冬を御前試合にて打ち破ったと伝えられる人物。
白洲にいた主催の男が宗矩ならば、厳包はその手下と言うより敵である可能性が高いと見るべきではないだろうか。
「だとしても、柳生新陰流には違いありませんからね。その技を見せて貰うのは有意義だと思いませんか?」
そう言う沖田は何流だろうと見たがるに決まっているが、今回は彼の言葉にも理がある。
主催者に深く繋がると思われる、柳生家の剣や人に関する情報は何としても手に入れたいところだ。
しかし、長々と話を聞いていては、その間に芹沢達の方で何が起きるか知れたものではない。
となると、やはり、勝負を申し込むのが最善手なのか……

26 :技比べ ◆cNVX6DYRQU :2010/08/31(火) 06:24:27 ID:UipM0twS
「誰だ!」
強い調子で誰何する芹沢。
まあ、白刃を持った男が背後から近付いて来れば、彼でなくとも、態度が刺々しくなるのは必然だ。
しかし、次の一言で、芹沢の戦意は大きく削がれる事となる。
「私は白井亨と申す者」
石川五右衛門がいるくらいだから、二十年前に死んだ筈の白井がこの島に来ていても何の不思議はない事。
これが、宮本武蔵のような「歴史上の」剣客であれば、芹沢もむしろ更に闘志を滾らせただろう。
しかし、白井亨と言えば、芹沢が剣術を始めた頃にはまだ、伝説的な剣豪として存命であった剣士。
当時の多くの若者同様、天下第一とも噂される白井の教えを受ける事を、若き日の芹沢もまた夢想した事がないではない。
そんな大先達を前にしては、さすがの芹沢も、他の者に対するような傲慢な態度が取れる筈もなかった。
「貴方があの高名な白井殿か。真だとすれば、お会いできて光栄の極み」
「いえ、私は未だ剣の振り方も碌に知らぬ未熟者に過ぎません」
「ご謙遜を……」
芹沢はそう返すが、白井が己の剣技を未熟なものと考えているのは謙遜でもなんでもなく、ただの事実。
この認識は、天下一流の腕を持ちながらも、更なる進歩を強く求める貪欲さに裏打ちされたもの。
そして、白井はこの島で、生と死の狭間に身を置く事で、新たな剣に開眼出来る事を体感していた。
だから……
「ですから、ここで少し試させて頂きます」

三人までの残りの距離を一気に詰め、切り付ける白井。
今回、白井が試そうと思っているのは、一刀流の秘技「払捨剣」。
大勢の敵に囲まれた際の技だが、白井の見解によれば、この技は完全ではない。
と言うのも、この技は、個々の敵の腕が己よりも数段落ちる場合にしか通用しないからだ。
もっとも、同等の腕の者に多数で掛かられれば死ぬのが道理であり、それに対応できる技を求める方が無理とも言えるだろう。
だが、白井はそんな無理を成し遂げる事で、真の剣術を会得しようとしていた。
腕の立ちそうな三人の集団に出会えた事を奇貨として、白井は自己流の払捨剣を試してみようとする。
最初の標的は、白井の奇襲に最も機敏に反応しようとしていた桂ヒナギク。
ヒナギクは無限刃を抜きつつ、咄嗟に後退して白井の剣をやり過ごした……筈が、かわしきれずに服の前を大きく切られた。
それで多少なりとも彼女の気を逸らせれば、というのが白井の目論見だったが、実際の効果は予想以上。
「きゃあ!」
呑気な事に、ヒナギクは悲鳴を上げると、両手を使って露わになった自分の身体を隠す。
無論そんな隙を白井が見逃す筈もなく、剣を回して柄を叩き付け、ヒナギクを吹き飛ばした。
続いては、仲間がやられた事で、漸く白井への畏敬を忘れて剣を向けて来た芹沢鴨。
白井の剣を紙一重でかわして反撃しようとする芹沢だが、その寸前に視界が赤く染まり、慌てて飛び退く。
紙一重でかわした筈の剣が瞼の上を掠め、出血して芹沢の目を塞いだのだ。


27 :技比べ ◆cNVX6DYRQU :2010/08/31(火) 06:29:23 ID:UipM0twS
元々、白井亨は、古流の心法と道場剣法の技を併用し、相手の間合いの読みを狂わせる事を得意としていた。
ただし、今回の敵である芹沢やヒナギクは、実戦経験が豊富な上に、白井より後代の、より進歩した技を学んでいる。
故に、柳生連也斎に対して使ったような技では見切られる可能性が高かっただろう。
そもそも、道場剣法は基本的に多対一を想定していないし、心法も達人複数に対して使っていてはとても気力が保たない。
だが、ここで白井が使ったのは、心法でも道場剣法でもなく、剣をどこまでも理詰めで考える白井独自の技術。
日本刀は鉄で出来ており、その為に一定の延性を持つ。つまり、強い力が加わる事で多少なりとも変形するのだ。
微妙な加減速の調整によってこの性質を活かし間合いを稼ぐのが、白井流払捨剣の肝となる技である。
無論、こんな事で稼げる間合いはごく僅かだが、白井の剣を紙一重で見切るほどの達人に対しては効果覿面。
そして、複数の達人の刀が乱舞する場では、皮一枚程の傷による毛一筋の隙ですら、致命傷になり得る。
達人の精緻さ故の脆さを利用し、数の優位を活用する間を与えずに押し切る……それが、白井の払捨剣だ。

こうして二人を「払い捨て」た白井は、最後に、最も反応の鈍い細谷に向かって行った。
この男も相当の使い手ではあろうが、老いを克服できていないのか、或いは病か、動きに微かな破綻が見られる。
そこを突いて戦闘力を削らんと、白井は細谷に必殺の一撃を繰り出す。
相手が間合いを外そうとするのを見越し、延性によって負傷させようという剣だったが、意に反して細谷は前に出た。
「!?」
そして細谷は、白井の剣を受け止めようとすらせず、相討ちを狙うかのような一撃を放つ。
白井が咄嗟に身をかわした事で、この交錯は互いに傷を与えるに留まったが、無理にかわした白井の体勢が崩れ、そこへ……
「老体、動くなよ!」「許さないわよ!」
立ち直った芹沢が正確に細谷の身体をすり抜ける突きを放ち、ヒナギクは超人的な身軽さで細谷の身体を越えて白井に迫る。
次の瞬間、対岸から轟音が響いて彼等の気が逸れなければ、白井は致命傷か、少なくとも重傷を負っていただろう。
この僥倖を逃さず、白井は飛び退くと、身を低くして田の中に走り込み、身を隠しつつ駆け去った。
対岸への警戒や、酔いが醒め切らぬまま激しい動きをした為に細谷が座り込んだ事もあって、芹沢達は追跡を断念する。

(まだまだ甘いか)
白井の払捨剣は、浅めの攻撃を放てば相手は引いてかわすだろうという読みに基づいたもの。
しかし、多数の達人が居れば、その心根も流儀も様々であり、中に細谷のように命を捨てて前に出る者がいてもおかしくない。
その程度の事で破綻するようでは、とても多数の達人に対抗する技とは言えないだろう。
相手がどう動こうと成り立つ、もしくはもっと確実に敵の動きを制御する工夫が必要だ。
(あの死地を乗り切れたのは天佑。必ずやそれを活かさねば)
決意を新たに、白井亨は剣術の更なる進歩の為に、無謀な道行きを再開するのであった。

【へノ伍 水田/一日目/午前】

【白井亨@史実】
【状態】左腕、肩に軽傷
【装備】打刀(鞘なし)、町人の着流し、掻巻
【所持品】「孝」の霊珠
【思考】
基本:甘さを捨て、真の剣客になる
一:自ら、この死合を仕掛けたものの正体を掴む。他者とは馴れ合わない。
二:更に修練と経験を積む。
三:命を落とすまで勝負を諦めない。本当に戦闘不能になれば、自害する。
【備考】※この御前試合を神仏が自分に課した試練だと考えています。
    ※珠の正体には気付いていませんが、何か神聖な物である事は感じ取っています。
    ※八犬士の珠は、少なくとも回復、毒消しの奇跡を発現出来ます。

28 :技比べ ◆cNVX6DYRQU :2010/08/31(火) 06:34:45 ID:UipM0twS
川の東岸にて白井亨と芹沢鴨等の死闘が始まった直後、西岸においても、三人の剣士が剣気を高めつつ向かい合っていた。
睨み合う三人の中心に、互いの姿を隠すように木が立っているが、この程度、彼等にとってはどうという事もない。
「はあっ!」「てやーっ!」
掛け声と共に、五ェ門と厳包の刀が閃き、木が切り倒されると同時に、その樹皮が切り刻まれる。
木を伐り倒したのは、厳包の刀。但し、峰打ちでだ。
鈍刀で鉄をも両断する尾張柳生の豪剣をもってすれば、峰で木を切断するくらいは容易い事なのだろう。
対して、五ェ門の刀は、木の皮のみを細断し、中身には掠り傷一つつけていない。
斬鉄剣という、切れ過ぎるほど切れる剣を相棒としていただけに、五ェ門は「斬らない」技術に非常に長けていた。
そして、幹を切断され樹皮を剥がれた木は轟音と共に地面に転がり……いきなり、その一点が陥没する。
下手人は沖田の木刀。沖田は厳包や五ェ門と同時に、神速の突きを放っており、その効果が数秒送れて現れたのだ。
子供好きな沖田が、血の臭いで子供に嫌われるのを厭い、人を斬っても返り血を浴びぬ為にこんな技を編み出したとか。
「それで、この勝負は誰の勝ちになるんですか?」
そう。木を使ってそれぞれの秘技を披露し、斬り合う事なく技比べをするのが、五ェ門が申し込んだ勝負である。
こうすれば、無駄な争いをせずに、柳生の剣を見る事ができるという訳だ。
見れる技は一つとは言え、秘技ともなれば、中には幾つもの技の要諦が内包されているだろう。
加えて、どのような技を秘技としているかを分析すれば、柳生新陰流の心根を推し量る事も出来る筈。
五ェ門としてはそういう意図で申し込んだ勝負だったのだが、厳包の方は……

「参考になった。勝者などは各自で判定すればよかろう」
そういう厳包の言葉は本心からのもの。
そもそも、この手の技比べの勝敗など、何処に着目するかでどうとでも変わり得る。
例えば、実戦での実用性という点に注目すれば、己の技が最高だと、厳包は考えている。
斬らない技や、斬った効果が遅れて出る技よりは、得物の威力と切れ味を増幅する技が実用的というのは、まあ妥当だろう。
しかし、それ以外の側面……例えば、技の神秘性で比べれば、沖田の技の方が上かもしれない。
どうやれば、突いた数秒後に木が陥没するなどという現象を起こせるのか、実見した厳包にも未だ読みきれていないのだ。
本人は子供に嫌われない為に編み出したなどと簡単に言っていたが、如何に才子でも簡単に身に付けられる技ではあるまい。
厳しい修練と経験の中で、剣というものの本質を自分なりに捉えていたからこそ、あんな事が可能になったのだろう。
そして、技比べという字義の通り、技量そのものを比べれば、五ェ門が一枚上手だと思われる。
厳包や沖田の技と違い、木の中身を傷付けず樹皮だけを切るというのは、ゆっくりとならば凡庸な剣士にも十分可能な技。
だが、神速で剣を振るいながらそれをやるとなると、その精度は驚異的だ。
ここまで思い通りに剣を扱えるようになるまで、五ェ門は一体どれほど多くの物を斬って来たのであろうか。
それらの凄まじい技を見れただけでも、この技比べは厳包にとっても得るものが多い勝負であった。
優れた剣士の技を見れたというのもそうだし、彼等の剣が厳包のものとは異質であったというのも参考にするには良い。
二人の秘技、そしてそれを可能とする技術体系は、厳包が見知っている流派のそれとはかなりの隔たりがあった。
岩本虎眼なる者の剣も異質ではあったが、それは戦国の遺風が残っていると考えれば納得の行く類のもの。
対して、沖田や五ェ門の剣の異質さは、虎眼のそれとは大きく方向を異にする、まるで未来のものの如き剣。
白井の剣にも似たような印象を感じたが、沖田や五ェ門の剣は、更に自分の剣から遠いように思える。
このような様々な流派が世にあるとは、厳包にとっても意外であった。
彼等のような剣士ともっと出会い、見聞を広げる事ができれば、厳包の剣は更に大きく進歩する筈だ。

29 :技比べ ◆cNVX6DYRQU :2010/08/31(火) 06:37:37 ID:UipM0twS
(もっとも、その前にすべき事をしておかねばならぬが)
白井亨の口を封じる……その為に、厳包はまずはこの東側の川の下流を見てみようと思っていた。
前に会った少年の言葉を信じれば、白井は逆の川を流れた筈だが、藤木は見ていないというし、沖田が見た扇も気になる。
それに第一、西側の川の下流は、城下から、森の立ち入りが禁じられた区域に向かう通り道になっているのだ。
今そこに向かえば、好戦的、或いは柳生に含むところがある剣士に出会う確率が高いだろう。
挑戦されればいつでも受けるつもりでいる厳包だが、出来れば、先にすべき事を済ましてしまいたい。
余計な悩みがない方が、剣士との勝負で得られる物も多いだろうし。
「それでは、拙者も先を急ぐので失礼する」
そう言って踵を返す厳包の背中に、五ェ門が声を掛けた。
「拙者達は昼から、城でこの御前試合を叩き潰そうとする方々と会談する手はずになっている。
 宗矩の手下ではない柳生の者ならば歓迎されるであろう。用が済んだら、是非参られよ」
「……承知した。必ず」
厳包としても、宗矩や将軍の企みを叩き潰すのには賛成だし、多くの剣士と会えるのも嬉しい事だ。
力強く約すると、柳生厳包は己の剣の道の障害となる者を排除する為、歩き出すのであった。

【へノ肆 城下町/一日目/午前】

【柳生連也斎@史実】
【状態】胸部に重傷
【装備】打刀@史実
【所持品】支給品一式、「仁」の霊珠(ただし、文字は「如」に戻っています)
【思考】
基本:主催者を確かめ、その非道を糾弾する。
一:白井亨を見つけ出し、口を封じる。
二:城に行ってみる。
三:戦意のない者は襲わないが、戦意のある者は倒す。
四:江戸柳生は積極的に倒しに行く。
【備考】※この御前試合を乱心した将軍(徳川家光)の仕業だと考えています。

30 :技比べ ◆cNVX6DYRQU :2010/08/31(火) 06:38:58 ID:UipM0twS
「ちっ、せっかくの上物をこんな事に使う破目になるとはな」
愚痴りつつ、芹沢は酒蔵から拝借してきた酒を口に含み、細谷の肩に吹き付ける。
白井が逃げ去った後、芹沢の傷とヒナギクの服の処置はすぐに終わったが、細谷の傷の治療には時間が掛かっていた。
重傷という訳ではないが、きちんと手当てしておかないと、後で支障が出るかもしれない。
「ごめんなさい。私達が不甲斐ないせいでこんな事に……」
「何の、これでも儂は腕利きの用心棒じゃ。この程度、何ともないわ」
「けっ」
細谷の大口に苛立つ芹沢だが、先程の失態を鑑みれば、反論もしにくい。
「腕利きだってんなら、次は無傷で乗り切れるよう工夫しやがれってんだ」
そう低声で呟くと、芹沢は細谷の手当てを続けるのだった。

【へノ伍 川沿い/一日目/午前】

【芹沢鴨@史実】
【状態】:健康
【装備】:近藤の贋虎徹、丈の足りない着流し
【所持品】:支給品一式 、酒
【思考】
基本:やりたいようにやる。 主催者は気に食わない。
一:機会を見付けて桂ヒナギクに新見の事を吐かせる。
二:昼になったら沖田たちと城へ向かい、足利義輝に会う。どうするかその後決める。
三:沖田、五ェ門を少し警戒。
四:会った時の態度次第だが、目ぼしい得物が手に入った後、虎徹は近藤に返す。土方は警戒。
【備考】
※暗殺される直前の晩から参戦です。
※タイムスリップに関する桂ヒナギクの言葉を概ね信用しました。
※石川五ェ門を石川五右衛門の若かりし頃と思っています。

【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
【状態】健康
【装備】無限刃@るろうに剣心
【所持品】支給品一式
【思考】基本:殺し合いに否定的な人を集めて脱出。
一:新見錦が主催者に捕えられているのなら救出する。
二:足利義輝たちと合流する。
三:芹沢鴨や沖田総司が馬鹿な事をしないよう見張る。
四:柳生十兵衛を探して、柳生宗矩の事を聞きたい
五:自分の得物である木刀正宗を探す。
※自分たちが何らかの力で、様々な時代から連れてこられたことを推測しました。
※石川五ェ門を石川五右衛門の若かりし頃と思っていますが、もしかして…。

【細谷源太夫@用心棒日月抄】
【状態】肩に軽傷
【装備】打刀
【所持品】支給品一式×3
【思考】
基本:勇敢に戦って死ぬ。
一:ほノ伍を調査し、主催者の手の者を待ち伏せる。
二:五ェ門に借りを返す。
【備考】
※参戦時期は凶刃開始直前です。
※桂ヒナギクに、自分達が異なる時代から集められたらしい事を聞きました。ちゃんと理解できたかは不明です。

31 :技比べ ◆cNVX6DYRQU :2010/08/31(火) 06:42:06 ID:UipM0twS
「まだ時間がかかりそうですね」
沖田があからさまに溜め息をつく。
厳包との技比べを終えて川岸に戻った沖田と五ェ門は、細谷の負傷を聞かされ、手当ての間、待つよう命じられたのだ。
「こんな事なら、柳生さんとの勝負をあんなに急ぐ必要なかったんじゃないですか?」
「柳生殿も急ぎの用があるというのだから仕方あるまい。勝負の機会は後で幾らでもあろう」
「ちゃんと城に来てくれますかね、柳生さん」
「きっと」
そこに関しては、五ェ門には自信があった。
あのような形の勝負を申し込んだのは、柳生の技を見る目的もあったが、それ以上に厳包の心を見定める為。
厳包の本気の剣閃を観察する事で、五ェ門は彼の心が少しは理解できたと思っている。
彼の剣には、恐れや不健康な悦びは見られず、何よりも強く感じられたのは、気高い誇り。
故に、厳包は無体に剣を振るったりはせず、一度口にした己の言葉を違える事はまずあるまいと、五ェ門は考えていた。
「それならいいんですけどね……」
沖田はそう口ではそう言いつつ、やはり根に持ってるのか、恨めしげに五ェ門を見ながら続ける。
「じゃあ、あちらを待つ間、何をして暇を潰します?ああ、石川さんの本当の素性、なんて面白いかもしれませんね」
「む……」
この時には、五ェ門も既に己の失策を悟っていた。
「尾張柳生」「江戸柳生」やその関係、厳包が尾張柳生であり、二階笠の男が江戸柳生の宗矩と推定される事。
いずれも、豊太閤の時代に刑死した初代石川五右衛門が持っている筈もない知識だ。
五ェ門本人がそう名乗ったのではなく、芹沢達が勝手に誤解したのだが、騙したと言われても仕方ないかもしれない。
咄嗟に返事が出来ずにいる五ェ門を見て、沖田は急に機嫌を直し、笑みを浮かべて言う。
「まあ、石川さんには面白い技を見せてもらいましたから、名前なんてどうでも良いんですけどね。
 機会があったらまた技比べをしましょうか。今度は、もう少しはっきりと勝負がつくやり方で」
どうやら、沖田は五ェ門の素性を深く追求しないでいてくれるようだが、それは善意からではなさそうだ。
むしろ、「何か企んでるなら面白そうだから泳がせておこう」的な、妙な期待をされているような……
五ェ門も溜め息を付くと、所在なさげに対岸の細谷の応急処置を見守るのだった。

【へノ肆 川沿い/一日目/午前】

【沖田総司@史実】
【状態】打撲数ヶ所
【装備】木刀
【所持品】支給品一式(人別帖なし)
【思考】基本:過去や現在や未来の剣豪たちとの戦いを楽しむ
一:芹沢を正午に城に行かせて義輝と会わせる。一応、罠がないか事前に調べる。
二:芹沢、ヒナギク、五ェ門と全力で勝負する状況をつくりたい。
【備考】
※参戦時期は伊東甲子太郎加入後から死ぬ前のどこかです
※桂ヒナギクの言葉を概ね信用し、必ずしも死者が蘇ったわけではないことを理解しました。
※石川五ェ門が石川五右衛門とは別人だと知りましたが、特に追求するつもりはありません。

【石川五ェ門@ルパン三世】
【状態】腹部に重傷
【装備】打刀(刃こぼれして殆ど切れません)
【所持品】支給品一式 母屋に置いてあります。
【思考】
基本:主催者を倒し、その企てを打ち砕く。
一:桂ヒナギクを守る。
二:斬鉄剣を取り戻す。
三:芹沢・沖田を若干警戒
四:ご先祖様と勘違いされるとは…まあ致し方ないか。
【備考】
※ヒナギクの推測を信用し、主催者は人智を越えた力を持つ、何者かと予想しました。
※石川五右衛門と勘違いされていますが、今のところ特に誤解を解く気はありません。

32 : ◆cNVX6DYRQU :2010/08/31(火) 06:42:56 ID:UipM0twS
投下終了です

33 :創る名無しに見る名無し:2010/09/01(水) 08:40:06 ID:sNEoBaOL
投下乙!

34 :創る名無しに見る名無し:2010/09/01(水) 22:16:13 ID:wwZywzr3
避難所より転載

44 :名無しさん:2010/08/31(火) 21:43:34
規制されてたので、こちらへ。

投下乙です。
沖田は相変わらず剣呑だなあ。
今回は芹沢が静かだった分、余計に目立った気がする。
あと、立木に対する技比べというのは、いかにも剣術モノらしい展開でよかったです。
三者の技術の中でも五エ門の「斬らない技に長けている」というのに納得。
人を刀で斬っておきながら、体には傷一つつけず、パンツ一丁にして昏倒させる、
というのは確かに考えてみればものすごい技術だw

35 :創る名無しに見る名無し:2010/09/02(木) 09:46:56 ID:pg57ii8t
投下乙です

ここは剣呑だが今回はまだ完全に燃え上がってない様な…これが大火事になる時は…

36 : ◆cNVX6DYRQU :2010/09/07(火) 07:25:29 ID:v7FYQ4bK
小野忠明、柳生宗矩で予約します。

37 :創る名無しに見る名無し:2010/09/08(水) 22:21:05 ID:H5o+bWXp
test

38 : ◆cNVX6DYRQU :2010/09/10(金) 06:29:57 ID:+79tg9LE
小野忠明、柳生宗矩で投下します。

39 :待ち望んだ対決 ◆cNVX6DYRQU :2010/09/10(金) 06:37:10 ID:+79tg9LE
ここは島の南西の端付近の森、地図でへノ壱に区分される地域。
果心居士がこの区域への立ち入りを許した期限である辰の刻は既に過ぎ、この地には多数の武者がひしめき、相闘っていた。
といっても、果心の言葉に好奇心や反骨心を刺激された剣客が大挙して押し寄せた、という訳ではない。
ここで戦っている者の大半は剣士と言えるような者ではなく、甲冑に身を固めた兵士。
兵士の群れが、禁止区域に侵入した剣客と戦っているのだ。
果心の言う、禁を破った者に訪れる避け得ぬ死とは、この兵士達によって殺されるという意味だったのか。
だが……
「くははははは!相手にならぬわ!」
声と共に小野忠明が木刀を振るい、たちまち数人の兵士が他愛もなく切り裂かれる。
辰の刻を過ぎて間もなく、忠明がこの地に侵入し、兵士達と闘って……いや、撫で斬りにしていた。

元々、忠明は激戦の疲れを癒す為に城下に入るつもりだったのだが、その彼を入り口で迎えたのは晒された生首。
加えて、町のあちこちから血臭や戦闘の気配を感じ取るに到って、忠明は城下が休息の場としては不適当である事に気付く。
仕方なく城下西の森の中で休む事にした忠明だが、辰の刻を告げる鐘と共に、西方に無数の気配が生じたのを感じ取る。
様子を伺い、何時の間にか森の中に多数の兵士が現れ、彼等の持つ旗印が二階笠と見た瞬間、忠明は斬り込んでいた。
そして今、既に兵士達の半分程は切り捨てただろうか。戦況は忠明の側が圧倒的に優勢だ。
「甘いぞ、宗矩!こんな紙人形共が俺に太刀打ちできると思ったか!」
「紙人形」というのはこの場合、ただの比喩ではない。
忠明に斬られた兵は、血を吹いて屍となるのではなく、両断された紙の人形へと変じ、降り積もっている。
そう、この兵士達は血肉を備えた人間に非ず。果心居士がその妖術によって生み出した式神なのだ。
と言っても、所詮は元が紙であるせいでこの式神達が弱く、為に忠明に歯が立たないという訳ではない。
むしろ、妖人果心の作だけあって、この式神の強さは、人間の兵士の平均を遥かに上回ると言って良いだろう。
だが、一刀流を極めた小野忠明のような達人にとっては、並の兵士を上回る程度の戦闘力など無いのと同じ。
まして、木刀・正宗で身体能力を大幅に底上げされている今、式神達は忠明にとって、正に紙人形でしかなかった。
人でない故に恐怖心を持たぬ式神は、仲間が斬られても怯む事なく忠明に立ち向かい、見る間に数を減らして行く。

忠明の猛攻によって瞬く間に間に式神の群れは斬り減らされ、あとは僅かに五体の足軽を残すのみ。
「俺の腕を思い知ったか、宗矩!」
叫びと共に、式神を全滅させんと大振りの横薙ぎを放つ忠明。
(ちっ!)
だが、斬られた兵士は四人だけ。
横薙ぎが放たれる直前に足軽の一体が躓いたのかよろけ、結果、運良く忠明の剣をかわした形となる。
運良く……しかし、忠明程の剣客の一撃をただの式神が幸運だけでかわす、などという事が有り得るものだろうか。
答えは否。そんな事は、忠明自身が誰よりもよくわかっている筈だ。
小野忠明の剣を避ける者はただの紙人形などではなく、相当の遣い手だと。
なのに、足軽のよろける動きがあまりにも自然であった為に、忠明は一瞬、それが偶然だと思ってしまった。
そうして生き残った足軽は、舞うような動きで、剣を振り切った忠明の死角に入り込む。
(この動きは、柳生……!!)
それが、小野忠明の最後の思考となった。

【小野忠明@史実 死亡】
【残り四十九名】

40 :待ち望んだ対決 ◆cNVX6DYRQU :2010/09/10(金) 06:42:01 ID:+79tg9LE
「次郎右衛門、わしが知らぬと思うたか」
小野忠明を一刀で仕留めた男が陣笠を取ると、出て来たのは、足軽の装いに相応しからぬ、威厳ある老人の顔。
彼こそが、この島で最も顔が知られているであろう男……柳生宗矩である。
「わしが知らぬと思うたか。あんな人形共がお主に太刀打ちできるはずがない事を。
 奴等に出来るのは、精々が目くらまし。その程度の事、わしが知らぬとでも思うていたのか、次郎右衛門よ」
宗矩と忠明は、共に徳川将軍家の剣術指南役を務めた同僚の間柄である。
一刀流こそ最強と信じる忠明は、己の腕が宗矩より勝っていると思い、それを満天下に示す機会を狙っていたが、
宗矩は優れた政治力によってそれを封殺し、柳生の声望が損なわれる可能性を潰して来たのだ。
それによって忠明は宗矩への、柳生への敵愾心を募らせた訳だが、対する宗矩の側はどうだったか。
無論、小野忠明ほどの名人に思われることを、剣士として光栄に思わぬ筈はない。
だが、宗矩は忠明と闘って必ず勝てると言える程に傲慢ではなく、己の欲の為に家名を賭ける程に我が強くもなかった。
一族の為、先祖の為、子孫の為……剣客として願っても無い好機を自ら断ち切ること幾度か。
全てを捨てて、ただの剣士として忠明と立ち合いたいという宗矩の想いは、忠明の宗矩への敵意にも劣らなかっただろう。
それなのに、遂に実現した二人の対決が、このような形で呆気なく決着してしまうとは……
宗矩とて、本当は真っ向から忠明に挑み、一刀流の妙技や無想剣を存分に味わいたかった筈だ。
しかし、宗矩は、忠明が斬り込んで来た時点で、彼の性格と己の技を鑑みて、最良の策を思い付いてしまっていた。
果心から預かった式神達を存分に斬らせて気分を昂揚させ、忠明の防衛意識が鈍ったところで、一気に必勝の位置を取る。
成功すれば忠明に技を使う間も与えない事になるこの策を無視するには、宗矩はあまりにも剣に対して真摯すぎたのだろう。
剣士でありながら、政治力によって出世する己の生き方を愧じる心が、この性向を助長させたのかもしれない。
より良い策がありながら、それを捨てて正面から闘うのは剣への冒涜であり、忠明へのこの上ない侮辱。
そう考えた為に、宗矩は搦め手をもって忠明を攻め、結果、二人の剣術指南役が奥義を競う機会は永遠に失われた。

宗矩は、死した忠明の手から零れ落ち、地に突き立った木刀・正宗を睨む。
この剣による過度な精神の昂揚がなければ、忠明は宗矩の策を見破って、もっとまともな勝負ができた可能性が高い。
もっとも、そもそも正宗の力によって潜在能力を開放されていなければ、忠明は仏生寺弥助に敗れていたかもしれないし、
精神が高揚した事で得た絶対の自信がなければ、四人の達人と戦い、ああも見事に凌ぎきる事など不可能だったろう。
だから、正宗を恨むのは筋違いであり、八つ当たりだと宗矩も自覚している。自覚しているが……
宗矩の剣が一閃し、木刀・正宗が切り折られた。
それで己の中に区切りを付けたのか、宗矩は式神の中に紛れ込む為の甲冑を外し、意識を先の事に向けようと努める。
果心居士の言葉に誘われ、次にこの地に足を踏み入れる剣客は果たして誰なのか。
もっとも、どんな剣豪が来たところで、忠明の代わりにはなり得ないのだが……

【へノ壱 森/一日目/午前】

【柳生宗矩@史実?】
【状態】健康
【装備】三日月宗近@史実
【所持品】「礼」の霊珠
【思考】
基本:?????
一:へノ壱に侵入した者を斬る
二:?????

41 : ◆cNVX6DYRQU :2010/09/10(金) 06:43:10 ID:+79tg9LE
投下終了です。

42 :創る名無しに見る名無し:2010/09/10(金) 17:07:41 ID:hOp302eK
落とし穴にハマって死にそうな御仁ではあったな

43 :創る名無しに見る名無し:2010/09/10(金) 17:55:35 ID:Q/PBgsvK
1レスで死亡w あっけなさすぎw
宗矩はもう参加者枠でいいのかね

44 :創る名無しに見る名無し:2010/09/10(金) 18:07:55 ID:J/GOax8n
投下乙です

宗矩の柳生謀略剣が小野忠明を降すか…!
宗矩と忠明の剣に対する思想の違いが良く出ていましたな。
しかし忠明がこんな形で脱落とは…らしいと言えばらしいけど

しかし宗矩自ら禁止エリア出陣するとは
果心もいよいよ余裕が無くなってきたかな?

投下乙です

45 :創る名無しに見る名無し:2010/09/10(金) 19:17:48 ID:EBE9xEIR
投下乙です

柳生謀略剣の真髄、説くと見させてもらいましたw
これは戦う前から勝敗が決まってた様な…
剣客らしいあっさりと、だが筋の通った敗因だわ

ちなみに正宗はヒナギクが探してたのに折られたのか
なんかカワイソスw

46 :創る名無しに見る名無し:2010/09/11(土) 23:40:43 ID:VSuYEjxw
乙でした。
「兵法者」としては文句のつけようもないけど、「剣士」としては…という矛盾ですね。
そのあたりは宗矩本人が一番感じてそうなのが今後のドラマに繋がりそう。
次、宗矩と相対するのは連也か伊勢守か十兵衛か…?



47 : ◆cNVX6DYRQU :2010/09/15(水) 07:34:02 ID:pqIUXWmi
近藤勇、土方歳三、佐々木小次郎(偽)で予約します。

48 :創る名無しに見る名無し:2010/09/15(水) 19:44:10 ID:tmqWoQxB
もう少し開始遅ければ我間乱参戦させられたのになぁ…モゾ…

49 :創る名無しに見る名無し:2010/09/15(水) 23:58:58 ID:3pIsPSKi
装甲悪鬼村正もなー。ツルギなしでも大暴れしてそう。

50 : ◆F0cKheEiqE :2010/09/16(木) 00:12:05 ID:O/lsmSjJ
新免無二斎 予約

51 :創る名無しに見る名無し:2010/09/20(月) 02:08:13 ID:Zv3ZPgfT
予約来てたのか

52 : ◆cNVX6DYRQU :2010/09/22(水) 07:05:59 ID:E1EvwjXN
近藤勇、土方歳三、佐々木小次郎(偽)で投下します。

53 :三剣士、復活を志す ◆cNVX6DYRQU :2010/09/22(水) 07:09:59 ID:E1EvwjXN
二人の達人の気迫が地を覆い、名刀と妖刀がぶつかり合って火花を散らす。
近藤勇と土方歳三の激闘は日の出を挟み、既に一刻近くも続いている。
途中、果心居士の声が響いていた間も、二人はその言葉を聞こうともせずに全力で戦い続けていた。
清河八郎、中村半次郎、河上彦斎、そして新見錦……決して薄くはない縁のある人々の死すら、今の彼等の心には響かない。
己の半身とも言える相棒に、身に付けたあらゆる技をもって立ち向かう、それが、今の彼等の心を占める全てだ。
同じ流派で学び、常に相棒として肩を並べて戦って来た二人。当然、共に相手の戦い方は熟知している。
それだけに互いに決め手なく戦いは長引いていたのだが、ここに来て、漸く戦況に変化が現れ始めた。
土方の動きが急に激しさを増し、怒涛の勢いで近藤を襲う。
さしもの近藤も完全には防ぎ切れず、二三の掠り傷を負うが、焦りの表情を浮かべるのは彼でなく土方の方だ。
(気合術……やはり考案していたか、近藤さん)

気合術、それは天然理心流開祖近藤内蔵之助が編み出した、気によって対手を金縛りにする技だと伝えられている。
或いは二階堂平法の心の一方と同質のものかと思われるが、この手の術の常として伝承は困難を極め、二代目の三助で絶えた。
故に、四代目の勇にとって、気合術は話に聞くだけの技なのだが、天然理心流宗家としてはそれで済ませる訳にはいかない。
古老の話を聞き、伝書を読み込み……気合術の復元の為に近藤勇が払ってきた努力は相当の物になる。
狂気の人斬り鵜堂刃衛の新撰組入隊を許したのも、彼の心の一方を学ぶ為だったというのは嘘か真か。
だが、結局の所、近藤勇は、他流の技を盗むのではなく、天然理心流の修行を突き詰める事で、己なりの答えを出した。
技の理屈は非常に単純、構えた剣の先から強烈な剣気を放射し、相手を射すくめるのだ。
気迫で格下の相手を圧倒し動けなくするというのは、剣士なら誰にでも出来る事で、とても術と言える程の物ではない。
単に動けなくするのではなく、棒のように倒すとか、呼吸まで止めて死に至らしめるというのならば話は別だが。
だが、近藤にしてみれば、そのように派手に金縛りにせずとも、斬り込むだけの隙を作れればそれで十分。
その代わり、自分と同等以上の剣客の動きをも止められるよう工夫したのが、近藤勇の気合術だ。
土方のような一級の剣士ならば、近藤が全力で剣気をぶつけても、同じく剣気を高めて凌ぐだろう。
だが、断続的に長い時間、強烈な剣気を放射され続ければどうか。
気を抜いた所に剣気をぶつけられればどうしても隙が出来る為、相手は常に気を張っていなければならない。
剣気を集中させる事に専念して放出できなければ剣士は攻勢に出れないし、そうしていればいずれ気力が尽きる。
開祖の気合術と同じ物なのかは不明だが、気組みを重視する天然理心流らしい技と言えよう。
無論、気迫のぶつかり合いで相手に圧倒される事なく、受け太刀に回らせるのが大前提の技であるが、
近藤にとっては、技の競り合いよりも剣気の鬩ぎ合いの方が得意であり、望む所。
実際、気組みのみの比較ならば、同じ天然理心流の土方をも、素質・修行の双方で大きく上回っている。
つまり、近藤に気合術を仕掛けられれば、土方には対抗策はないという事だ。

故に、土方は近藤が剣気を高め気合術を使おうとしているのを察知し、気組みの勝負を避ける為に攻勢に出た。
激しく攻撃し、気を練るゆとりを与えなければ、気合術を使われる気遣いはない。
だが、土方がそう出る事は近藤の計算の内であり、だからこそ、気合術を使うのをここまで待ったのだ。
最初から短期決戦を目論んでいたならともかく、長期戦の中途から短期戦に切り替えるのは簡単ではない。
現に、疲労した土方が放つ剣は僅かに鋭さを欠き、防御に徹する近藤に傷らしい傷を与えられずにいた。
このまま動き続ければいずれ体力が尽きて動けなくなるし、かといって止まれば気合術で気力を削られる。
どちらにせよ最終的には動きを封じられる訳で、そこまで込みで気合術という事なのだろう。
(こりゃあ、「あれ」をやるしかないか)
追い込まれた状況に土方は密かな決意を固め、渾身の突きを放った。

54 :三剣士、復活を志す ◆cNVX6DYRQU :2010/09/22(水) 07:14:30 ID:E1EvwjXN
「うっ」
土方の突きを余裕を持って防御しようとした近藤……だが次の瞬間、呻き声と共に後退する。
近藤は突きにわき腹を浅く抉られ、血を流す。と言っても、防御に失敗した訳ではない。
突き一本は確実に防御した。しかし、土方はそれと同時にもう一本の突きを放って来たのだ。
確かに天然理心流には瞬時に複数の突きを繰り出す型はあり、沖田の三段突きなどが有名ではあるが、
「一挙動としか見えぬ間に三段の突きを放つ」というのは、あくまでも比較的未熟な剣士から見ての話。
近藤くらいの剣客なら、三つの突きが順番に繰り出されているのを見切るくらいは容易い事。
だが、今回の土方の突きは、近藤にも全く同時に二つ放たれたとしか見えなかった。
土方の突きが沖田を遥かに上回る程に速いとは思えないし、もしそうなら、二段突きの片方すらも防げなかった筈。
或いは土方がもう一本の刀を隠し持っていて、日本の刀を使って二つの突きを放ったのかとも考えてみたが、
二つの刀の刃紋が全く同一であった事から考えて、一本の刀で二度の突きを放ったと考えて間違いあるまい。
そもそも、二刀による二段の片手突きならば、その両方を弾く事はそう難しくない事であり、
土方の二段突きは、それぞれの突きが諸手突き故の強烈な勢いと速度を持つからこそ、防ぐのが至難なのだ。

「はあっ!」
土方の技の正体を掴めずに居る近藤に対して再び二段突きが放たれ、近藤は一本を受け損ねて腿を刺される。
咄嗟に足を引いたので傷は浅く、動きに支障を来たすほどではないが、このままでは重傷を負うのも時間の問題だ。
近藤は平正眼の構えから思い切り腕を伸ばし、一部で信剣などと呼ばれる構えを取った。
この構えの相手に正面から諸手突きを放てば自身も刺される事になり、突きを浅くするか正中線を外すしかない。
だが、この構えからでは、突き以外の攻撃に対して敏捷に受け太刀をするのは困難。
つまり、土方が諸手突き以外の攻撃も二段で放つ事ができるならば、近藤もここで最期という事になるのだが……
次の瞬間、近藤の腕と肩から血が噴き出す。
やはり、今回も土方が仕掛けて来たのは二段突きであり、突きでは近藤に致命傷を与えるに到らなかった。
そして、防御ではなく見る事に意識を集中させていた近藤は、遂に土方の二段突きの正体を掴む。
(そうか……。歳、お前も考えてくれていたのか、気合術を)

気合術復活が、天然理心流宗家としての近藤勇の頭の多くを占める懸案であったなら、親友の土方がそれに気付かぬ筈もない。
友の助けにならんとひそかに気合術を研究していた土方だが、彼が復元した気合術は近藤のそれとは大きく異なっていた。
全身の剣気を錐のように鋭くして一気に射出し、相手を気死させる……それが、土方考案の気合術である。
無論、どれだけ剣気を研ぎ澄ませたところで、同等以上の剣客を本格的に失神させるなど不可能。
出来るのは、一刹那にすら満たないごく短い間だけ、敵の意識を失わせるという程度。
だが、使いようによってはそれでも十分有効に働く。
必殺の一撃と同時に剣気を発し、相手が気死している半刹那の間に素早く剣を引き戻し、次の一撃を放つ。
これにより、相手にとっては二段の攻撃が同時に来るのと同じ事になる、という訳だ。
但し、この気合術には未完成な点が残されており、だから土方はこれを今まで近藤には披露していなかった。
第一に、全剣気を鋭く射出する事に集中しなくてはならない為、身体の方もそれに合わせた動きしか出来ない。
端的に言うと、剣気を放出する前後に可能な動きは渾身の突きのみ、という事だ。
加えて、気をぶつけて相手の意識を失わせる事は出来ても、身体の反射的な動きまでは封じれない事。
同時二段の突きを防ぎ切るのは至難の業だが、一流の剣客ならば咄嗟に身を捻って致命傷を避けるくらいはして来る。
これらの不完全性から、土方は近藤にも己の気合術を秘して来たのだが、結果的に、それがこの戦いで有効に働いていた。

55 :三剣士、復活を志す ◆cNVX6DYRQU :2010/09/22(水) 07:18:45 ID:E1EvwjXN
土方の気合術によって苦戦を強いられた近藤だが、技の正体を掴んでしまえば対応策はいくらでも思い付く。
近藤は正眼に構えていた刀を大きく振り上げ、上段の構えを取る。
二段突きを防ぐのが困難なら、防がなければ良い。土方に二段突きを使う間を与えず一気に倒そう、という肝だ。
「近藤さんらしいな」
土方はニヤリと笑って剣の刀身を舐め上げると、突きの構えを取った。
余裕ぶっているが、今までの激しい動きと気合術の連続使用により、気力体力の消耗では断じて土方の方が激しい。
ここで近藤が短期決戦に方針を変えてくれたのは正に好都合で、土方としては乗らない理由はないだろう。
相手が防御を考えないなら気合術も不要という訳で、土方は剣気を放出するのではなく、内に込めて練り上げて行く。
互いの気が高まり、遂に戦機が熟する。土方は、残る力を全て込めた渾身の突きを繰り出す。
対する近藤も上段からの振り下ろしで迎え撃つが、動き始める瞬間が理想のそれよりも半瞬だけ遅れる。
土方との間合いを僅かに読み違えたのだが、通常ならば近藤ほどの剣士が読み間違えるなどという事は有り得ない。
有り得ざる事を引き起こした秘密は、土方の刀の刃紋にあった。

烏丸与一からこの刀を奪って以来、土方はこの刀にある刃紋について不審に思っていた。
土方は刀を見る目についてはかなり自信を持っている。
と言っても、これは虎徹あれは村正などと鑑定する学識がある訳ではなく、この刀の製作者が誰かもわからない。
それでも、この刀の生みの親が作る刀には、刃紋など不似合いだと、断言できた。
この刀に表れている刀鍛冶の作風は、無駄を極限まで削ぎ落とし、何処までも「斬る」という機能を追及するもの。
にもかかわらず、この刀には刃紋がある。
そんなものは役に立たない飾りに過ぎない……いや、むしろ刃紋の存在は斬り合いで不利に働く事も多いのだ。
例えば、敵の死角から剣を振るい、相手がその一部を目の端に捉えた場合。
刃紋がなければ、白刃の一部だけが視界に入っても、その正確な位置や動きは割り出せず、適切な対処は難しいだろう。
だが、その剣に刃紋があれば、見えたのが刀のどの部分なのか、更にその方向や速度をも、模様から推し量れる。
この事がずっと引っ掛かっていた土方だが、ここに来て、上で述べた刃紋の欠点を逆用し、武器とする事を思い付く。
刀の製作者がそういう使い方を想定して刃紋を付けたのかは不明だが、今はそれを気にしても仕方ない。
先程、突きの構えを取る前に刀を舐めた時、土方は事前に舌を噛み切り、流血させておいた。
そう、刀を舐めたのは刀身に血を塗り付けて刃紋の一部を隠し、それを見た近藤に錯覚を起こさせる為だったのだ。
計略は図に当たり、土方の刀は、近藤の国重よりも一寸だけ先んじて、相手の刀に突き刺さろうとしている。

詐術によって優位を手にした刀は近藤の身体に近付いて行く。近藤の鳩尾に、いや胸に、喉に……土方は目を瞠った。
近藤は振り下ろしと共に身体全体を沈め、その勢いを乗せる事で剣速を常よりも速めたのだ。
これは、薩摩に伝わる示現流の一派である薬丸流の技。
薬丸自顕流の剣士達は、維新志士の中でも大きな勢力であった為、新撰組でもその技と対処法は盛んに研究された。
だから、近藤がその技を使えたとしてもおかしくはないのだが、この土壇場で天然理心流の宗家が他流の技を使うとは……
もっとも、天然理心流は新当流の剣士であった開祖が、更に諸流を学びその長所を取り入れて創始したと言うし、
今の形にこだわらず、柔軟に他流を取り入れる態度の方が、宗家には相応しいのかもしれないが。
とにかく、これにより近藤の振り下ろしの速度は増し、土方が刃紋を利用して稼いだ優位を丁度相殺する形となる。
条件は五分、そして戦う二人の腕も五分。それで互いに防御を省みない一撃を繰り出せば、勝負の帰結は明らか。
((相討ち!?))
近藤と土方、二人の剣は全く同時に対手に致命傷を与えんとし……

56 :三剣士、復活を志す ◆cNVX6DYRQU :2010/09/22(水) 07:21:26 ID:E1EvwjXN
「俺達は未熟だな……」
「……ああ、全くだ」
つい先程まで周囲を包んでいた剣撃の音と激しい殺気は、今は全く収まり、静寂を取り戻している。
親友二人の勝負の結果は引き分け。但し、両者死亡ではなく両者生存。
このまま行けば相討ちと悟った瞬間、二人は申し合わせたかの如く、同時に剣を止めたのだ。
もしも、どちらかの剣が先に相手に届いていれば、その者は躊躇わずに相棒を切り裂いたであろう。
だが、相討ちとなり、後に何も残さず共に死ぬよりは、相手だけでも生き残った方が良いと、二人は思ってしまった。
そうすれば、友は更に戦いつづける事が出来るし、己は死してもその技は友の血肉となって生き続けると。
勝負の最中に、相手を倒す事ではなく生かす事を考え剣を止めるなど、剣士としての弱さとしか言いようがない。
夢にまで見た好敵手との決闘の正念場において、己の弱さがくっきりと表れた事は、二人の剣士に強い衝撃を与えていた。

二人はどちらからともなく剣を引く。
今の未熟な、心が弱くなった自分では、親友を斬るにも斬られるにも不足だと感じたからだ。
何せ、他でもない近藤勇と土方歳三の決着を付ける戦いなのだから。
二人共がその名に相応しい剣士として臨まなければ、己の、そして新撰組や流派の名まで汚すだけの勝負になってしまう。
「少しだけ時間をくれ。必ず覚悟を固めてみせる」「ああ、わかってる」
そして二人は、再会を約してまた別れる。
修羅の犇くこの島を旅する事で、どんな状況でも相手を斬る事のみを考える真の剣客の心を取り戻そうと決意して。
再会の約束は正午、今いる位置とは島の正反対にある呂仁村址だ。
果心居士の「午の刻よりろの弐」という言葉が無意識の内に耳に残っていたのか、ただの偶然か。
どちらにせよ、この御前試合に、また一つ大きな火種が生まれる事となった。

【へノ漆/村の中/一日目/朝】

【近藤勇@史実】
【状態】軽傷数ヶ所
【装備】新藤五郎国重@神州纐纈城
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この戦いを楽しむ
一:正午に呂仁村址で土方と勝負する。
二:相討ちになっても土方を斬る覚悟を固める。
三:強い奴との戦いを楽しむ (殺すかどうかはその場で決める)
四:老人(伊藤一刀斎)と再戦する。
【備考】
死後からの参戦ですがはっきりとした自覚はありません。

【土方歳三@史実】
【状態】疲労
【装備】 香坂しぐれの刀@史上最強の弟子ケンイチ
【道具】支給品一式
【思考】基本:全力で戦い続ける。
1:正午に呂仁村址で近藤と勝負する。
2:相討ちになっても近藤を斬る覚悟を固める。
3:強者を捜す。
4:集団で行動している者は避ける。
5:志々雄と再会できたら、改めて戦う。
※死亡後からの参戦です。
※この世界を、死者の世界かも知れないと思っています。

57 :三剣士、復活を志す ◆cNVX6DYRQU :2010/09/22(水) 07:24:30 ID:E1EvwjXN
(良いものを見せてもらった)
少し前から、近藤と土方の決闘を密かに見ていた剣士が一人。元暗殺者の英霊、佐々木小次郎だ。
剣客が跋扈する幕末の江戸京都で技を磨いた二人の剣士の駆け引きは、小次郎の参考になるものが多かった。
出来れば飛び出して勝負に加わりたいくらいだったが、結局それは自制し、別れる二人を見送る。
同門らしい二人の勝負に水を差すのは無粋だし、疲れ傷付いた二人に挑んでは、十分にその技を堪能できまい。
そして何より、土方がこの戦いで見せた二段突き。
相手を瞬間だけ気死させる事で、前後して放った二つの突きを、実質的に同時攻撃とする技。
これは、この島の特異な環境のせいで燕返しを封じられた小次郎にとっては、光明となりえる技だ。
無論、燕返しは二段ではなく三段の技だし、単純な突きではなく、異なる三つの剣撃を有機的に連動させなくてはならない。
土方の二段突きをそのまま盗むだけでは燕返しの復活とはならないが、入り口としてはこれでも十二分。
だからこそ、小次郎は近藤と土方を見送る。
遠からず新たな燕返しが完成した時に、彼等には恩返しとして、己の最高の剣を味わわせてやると、小次郎は決めていた。

【へノ漆/海辺/一日目/早朝】

【佐々木小次郎(偽)@Fate/stay night】
【状態】左頬と背中に軽度の打撲
【装備】妖刀・星砕き@銀魂
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:強者と死合
一:燕返しを復活させる
二:復活したなら、近藤と土方に勝負を挑む
三:愛刀の物干し竿を見つける。
四:その後、山南と再戦に望みたい。
【備考】
※自身に掛けられた魔力関係スキルの制限に気付きました。
※多くの剣客の召喚行為に対し、冬木とは別の聖杯の力が関係しているのか?
と考えました、が聖杯の有無等は特に気にしていません。
登場時期はセイバーと戦った以降です。
どのルートかは不明です。
※燕返しは本来の性能を発揮できないようです。
※この御前試合が蟲毒であることに気付き始めています。

58 : ◆cNVX6DYRQU :2010/09/22(水) 07:25:12 ID:E1EvwjXN
投下終了です。

59 :創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 19:40:01 ID:qtouO/n9
投下乙です!

60 :創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 19:54:20 ID:ZRtaqcl7
乙!
ここで二人の決着が付かなかったことをほっとしていいのか惜しめばいいのか。
しかし壷毒が深まるにつれ、超常の技に目覚める率が上がってるな。

61 :創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 20:31:41 ID:3ChvMuIq
剣気って便利だなー(棒読み)

62 :創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 20:38:59 ID:wK2/QPb7
しばらく前からこのロワに頻出する「剣気」の定義がよくわからない
気合やなんかとは次元を隔てた不思議パワーの域に達してるというか
そろそろ誰かが刀から剣気ビーム出すんじゃなかろうか

63 :創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 22:22:15 ID:hL4kH6AC
あまり簡単になんでもできると、刃衛とかがヘボくなるから嫌だな。
ファンタジー色が強くなると、泥くさいリアル剣術の重みもなくなるし。

64 :創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 23:26:55 ID:8xFWAbTF
蟲毒で剣士の力が加速度的に増してるから
こういうことが起きるのはそれほど違和感無いかな。
一貫してそういう演出もされていたし。

ただ、気とかマンガ的過ぎる技に傾くのは確かに萎えるな。
ビームとかは流石に勘弁して欲しい。

65 :創る名無しに見る名無し:2010/09/23(木) 01:45:40 ID:glyzwek/
土方の剣気ってのがもうその域だろ
気合で一瞬相手を気絶させるとかチートにもほどがある

66 :創る名無しに見る名無し:2010/09/23(木) 02:38:42 ID:83MuPZui
えーとつまり、土方が刃衛の心ノ一方を体得したってことでいいのかな

67 :創る名無しに見る名無し:2010/09/23(木) 09:42:47 ID:n7QNVgiV
剣気なんて実際は存在しないって言ってたのに剣気で気絶って…さすがにまずいでしょ…

68 :創る名無しに見る名無し:2010/09/23(木) 11:12:38 ID:XNWFOZCi
剣気の発散で離れたとこの敵を呼び寄せたあたりから「ん?」と思っちゃいたが
一流の剣客ならそういうこともできるのだろうと無理矢理疑問を封殺してきた
やっぱ便利パワーだよな、うん、同じこと考えてる人がいて安心した

69 :創る名無しに見る名無し:2010/09/23(木) 18:31:08 ID:y+75ym0u
投下乙です
SS中に放送があったようなので佐々木小次郎の思考から山南は消してもいいかもです
放送で呼ばれた山南の名に描写を一言追加してみては

70 :創る名無しに見る名無し:2010/09/23(木) 18:57:04 ID:XkQIIiD+
ま、時代劇でも似たような描写はあるわけだし。
剣心とか桃だとか参戦してる時点で、
これくらいは認めとかないと勝負にならんだろうとは思う。

71 :創る名無しに見る名無し:2010/09/23(木) 20:24:01 ID:83MuPZui
>>70
スーパー系に対抗するのに必ずしもスーパー系になる必要なくね
沖田の三段突きがいきなり九頭龍閃に進化したって萎えるし

72 :創る名無しに見る名無し:2010/09/24(金) 00:51:52 ID:rxyq8FDX
>>70
そいつらは原作でそういう技持ってるからでしょ
実在した剣客がそいつらと戦うに当たって捏造パワーなどではなく剣の技巧の限りを尽くすのがここの特色だと思ってたんだけど違うのか

73 : ◆cNVX6DYRQU :2010/09/24(金) 07:24:34 ID:J7H5uRiR
作中の剣気については、るろ剣の「剣気」、男塾の「氣」、史上最強の弟子〜の「気当たり」、史実・伝承の「気」を
混ぜた感じのものを考えています。
各作品で気が厳密に定義されている訳でもなく、作品毎の扱いに差もあったりするので微妙な面もありますが。
基本的には「生物の感覚・精神に何らかの効果を及ぼす実体のないもの」
但し、桃太郎の暹氣虎魂のように奥義級の技なら無生物にも直接干渉可能、というイメージでしょうか。

>>69
山南が死亡したのは日の出後なので、現時点で小次郎にそれを知る術はないと思われます。

明楽伊織、倉間鉄山、赤石剛次、中村主水、東郷重位で予約します。

74 :創る名無しに見る名無し:2010/09/24(金) 14:27:23 ID:a4gF+6R+
解説してくれてありがたいんだけど今は安易に使いすぎじゃないかといわれてるんじゃないかな
混ぜた感じのってそれ明らかに捏造じゃないですか

75 :創る名無しに見る名無し:2010/09/26(日) 23:54:08 ID:/0T4HIuv


76 :創る名無しに見る名無し:2010/09/28(火) 16:22:09 ID:xZBcuJW2


77 : ◆cNVX6DYRQU :2010/10/02(土) 06:40:58 ID:ipIKxyta
明楽伊織、倉間鉄山、赤石剛次、中村主水、東郷重位で投下します。

78 :主水、不運を嘆く ◆cNVX6DYRQU :2010/10/02(土) 06:42:33 ID:ipIKxyta
中村主水は、城下にある一軒の民家に背を預けて、軽く目を閉じていた。
うたた寝をする程に疲労している訳ではない。
日の出と共に島内に響いた声について考え、且つ己に向けられているかもしれない監視の目を気配で探っているのだ。
あの声が告げた死者の名が出鱈目でなければ、主催者は主水達を何らかの手段で監視している筈。
白洲の老人が告げた「御前試合」という言葉も、何者かが剣客達の殺し合いを眺めているという事を示唆している。
では、主催者は如何なる方法で、二十名以上の死者の名を正確に知れる程に、この御前試合の様子を把握しているのか。
まず考え付くのは、島中に多数の忍び・隠密を放ち、剣客達の戦いの様子を監視・報告させる事だが、
一流の剣客達が互いに隠れたり気配を探ったりしつつ戦う中で、姿を隠し続けられる程の忍びが何十人もいるとは考え難い。
妖術か、唐繰りか、とにかく尋常でない手段を使って主催者は主水達を見ていると考えるべきだろう。
もっとも、この島に連れて来られた時の経緯から、連中が妙な力を使うのはとうに予想できていた事。
彼等がそれと同様の力を、剣客達の監視の為に常に使っているなら、力の正体を探る為にはむしろ好都合だ。
そう思って精神を集中し、周囲の気配を探る主水。
微かに視線を感じるような気もするが、そう思っているから感じる錯覚かもしれず何とも言えない。
それよりも……
「…二十三人も……」「………宗次郎…無念……」
目を閉じていても、切れ切れに耳から入ってくる話し声が、主水の集中をかき乱す。
声の出所は、主水から少し離れた位置にある一軒の民家。そこには三人の剣客が籠もっている筈なのだ。

この御前試合を協力して叩く潰すべく、同盟を組んだ明楽伊織・倉間鉄山・赤石剛次の三人だったが、
赤石剛次は盲目の人斬り伊良子清玄と相打つ形で昏倒し、残る二人は明石を抱えてその民家に入ったのだった。
そのまま彼等は日の出を迎え、それ以降は、あの妖しい声の告げた内容について話し合っているらしい。
主水は彼等から一定の距離を置いて見張っているし、彼等も基本的には声を潜めて話している。
故に、主水の位置から彼等の話は通常、聞こえる筈がないのだが、時にその声が激し、主水に耳にまで届いているのだ。
死者として発表された名の中に知る辺があったのか、余りに多くの死者が出ている状況に憤っているのか。
しかし、彼等のそうした態度は、主水から見れば勇が克ちすぎているように思えた。
短時間の間に二十名以上の死者、そしてその多数の死者を逐一把握しているらしい主催者。
あの声の言った事が事実であれば、主催者を討ち殺し合いを止めるのは、相当に茨の道だと思える。
にもかかわらず、警戒よりも怒りが先に立っているように見える彼等は、主水の基準では呑気に過ぎると言えよう。

(もっとも、あいつに比べりゃ、まだマシだが)
そう胸中に呟いて、主水はまた一際高まった鼾に嘆息した。
鼾の主は、最後に彼等の仲間に入った白髪の男。
彼は盲目の剣士との闘いで昏倒したのだが、休む内に気絶が何時の間にか睡眠に転化したようだ。
目の前に高鼾で眠る者が居るのでは、明楽や鉄山があまり声を潜める気にならないのも仕方ないだろう。
この過酷な状況で、出会ったばかりの男達を枕元に置きながら熟睡とは、豪胆なのか無神経なのか……
まあ、わざわざ狂った人斬りを探そうとしていた連中にとっては、鼾に危険人物が釣られて来ても望む所なのだろうが。
戦いに巻き込まれるのは御免と、主水は三人が潜む民家から更に距離を取る事にする。
この分なら彼等はもうしばらく動かないだろうし、その間にもう少し集中して監視の目を探ってみたい。
主水はしばし歩いた後、全身で気配を感じ取ろうとし……次の瞬間、剣に手を掛け、跳ねた。

79 :主水、不運を嘆く ◆cNVX6DYRQU :2010/10/02(土) 06:47:50 ID:ipIKxyta
(ちっ)
主水は心の中で舌打ちする。
明楽達から離れて周囲を探ろうとした主水は、自分に向けられる殺気を感じて、咄嗟に臨戦態勢を取った。
だが、その時点で主水は、殺気が自分個人に向けられた訳ではない事に気付く。
その男は、周囲に無差別に殺気を放ち、それに引っ掛かった者が反応するのを察して、己の相手を探そうとしていたのだ。
喩えるなら、周囲に人には聞こえない音を発し、その反射から物体の位置を把握する蝙蝠が近いだろうか。
とにかく、主水はその男……東郷重位の思惑通り殺気に反応し、それによる気の乱れはすぐさま重位に察知される。
飛ぶように駆けた重位は、主水が慌てて隠れるよりも早くその眼前に姿を現し、駆け寄って抜き打とうと……
この時点で仕方なく決意を固めた主水は、重位が抜こうとする瞬間、僅かに踏み込み、間合いを微妙に調整した。
「俺に何か用かい?」
抜けば相討ち、両者必死の距離を確保した主水は、これを維持して重位を牽制し、主導権を握ろうとする。だが……
「うおっ!?」
重位は主水会心の相討ちの構えを歯牙にもかけず、抜即斬で主水を両断せんと刀を振るう。
体を捨て、相討ちを恐れず踏み込む事で死中に活を求めようとしたのか。
いや、違う。単に、重位は己の雲燿の剣に絶対の信を置いているというだけの事。
普通なら相打ち必至の状況でも、己の雲燿の太刀ならば、必ず相手の剣よりも先にその身を切り裂く事が出来ると。
実際に主水が重位と同時に仕掛けていたらどうなったかわからないが、主水の側にはそんな危うい賭けをする気はない。
素早く身を引き、手首を狙ってきた剣を、咄嗟に剣を離してかわすと、空中にある剣を拾った勢いで背を向け、駆け出した。

入り組んだ路地を利用して、主水は重位の追跡を凌ぐ。
しかし、速さを身上とする示現流の剣士だけあって、重位の走力は明らかに主水を上回っており、逃げ切るのは困難だろう。
(厄介な相手に出会っちまったな)
主水は己の不運を嘆く。
示現流の剣客と相対するのは初めてではないが、重位の腕は示現流の中でも別格だ。
加えて、今の重位のように目に入る者を片端から斬り捨てんとする相手には、暗殺剣は如何にも使い難い。
正面から戦うのも騙し討つのも不利。となれば、他に打てる手は、地の利を活かして優位をもぎ取るくらいか。
走りながらそう結論付けた主水は、傍らの小さな小屋に飛び込んだ。
狭い屋内では存分に剣が振るえず、さしもの示現流も雲燿の速度は出せまいと見込んでのことだったのだが……
「浅知恵よ」
主水を追って小屋に入った重位は、冷笑すると低い天井にも頓着せず蜻蛉に構えた。
当然、切っ先が天井板に突き当たるが、重位の豪剣はそれを簡単に突き破り、切り裂きつつ主水に迫って行く。
主水が跳び退いた直後の空間を、彼が盾にしていた柱ごと重位の剣が裂き、その勢いで床まで粉砕する。
重位は休まず追い打ちを掛け、またも飛び退いてそれをかわす主水。
目にも映らぬ雲燿の太刀を避け続けている主水だが、それは重位の剣ではなく足元を見ているからこそ。
如何に重位の剣術が神業とは言え、まずは相手を間合いの内に捉えなければ、攻撃は仕掛けられない道理。
示現流は足運びの速さにも定評があるが、さすがに雲燿の速さには及ばず、見切る事は十分に可能。
そうやって、主水は重位の雲燿の太刀を凌ぎ続けている訳だが……
(こりゃあ、無理だな)
主水は、砕かれた床板の破片に掠られた頬から血を流しつつ、己の不利を冷静に見究めた。
前述の足元を見る方法では、相手の攻撃を大きく外す事になる為、せっかく回避に成功しても、即座の反撃は困難。
かわし続けて隙を伺おうにも、そういう展開になれば脚力の差が大きく響いて来るだろう。
主水とて足弱ではないが、重位の脚力はあまりに隔絶している。
何せ、重位自身の剣で床が幾箇所も粉砕され足場が悪くなった小屋で、平気で跳び回っているのだから。
(足場……そうか!)
己の思考の断片から活路を見出した主水は、あちこち壊され崩れかけた小屋から、機を見て飛び出した。

80 :主水、不運を嘆く ◆cNVX6DYRQU :2010/10/02(土) 06:51:47 ID:ipIKxyta
主水を追って小屋を飛び出した重位は、辻の天水桶の上に立つ主水を見出し、初めて動きを止める。
地の利をもって重位の動きを掣肘せんとしていた主水だが、何者であっても示現の剣を押さえ込むなど不可能。
そこで、今度は地形効果によって己を利する事で、雲燿の剣に対抗しようという事か。
確かに、雲燿の太刀は八相の構えからの振り下ろしを基本としているだけに、高所に陣取る相手には使いにくい。
この位置関係では、重位が雲燿の剣で主水を捉えたとしても、精々足を斬るに止まり、致命傷にはならないだろう。
それどころか、後ではなく上に跳ぶ事でかわされ、技を出した直後の隙に上空から切り込まれる恐れすらある。
こんな状況では、さしもの重位も、立ち止まって攻めの策を練るしかなかった。
と言っても、迂闊に攻められないからと、無駄に長考して時間を費やせば、不利になるのは重位の方だ。
主水は、重位に対抗する為に地の利を活用するのみならず、天にある太陽までも味方に付けようとしているのだから。
現在、太陽は重位から見て、主水の胴体の向こう側に浮かんでいる筈である。
もう少し時が過ぎれば、日は天頂に近付き、主水の頭上から顔を出してその金の針で重位の眼を射んとするだろう。
その前に決着を付けようと、重位は丹田に力を込め、気力を高めて行った。
互いに戦機を伺って睨み合うこと暫し、辰の刻を告げる鐘の音が鳴り響いた瞬間、重位は溜め込んだ気を解き放つ。

「チェーイ!」
重位が溜め込んだ気を放った瞬間、足場にしている天水桶の蓋が砕け、主水は落下する。
示現流と言えば雲燿の太刀は確かに名高いが、だからと言って速さと威力のみを頼りとする荒武者の剣では決してない。
精妙な技を持つのは勿論だが、香取神道流の流れを汲み禅僧善吉に相伝されただけあって、心法にも優れているのだ。
中でも重位の気迫は凄まじく、剣を動かさずに気合を掛けるだけで、自在に茶碗を割ったり格子を折った話が伝わっている。
まして、師との邂逅を経て気力が充実した今の重位ならば、桶を粉砕する程度は嚢中の玉を取るよりも容易かろう。
足場を失った主水が落下した事で、日の光がその頭を越えて差し込んで来るが、重位は歯牙にも掛けない。
己の雲燿の剣なら、光が重位まで届くよりも、そして無論、主水が身をかわすよりも早く、目標に達する確信がある故に。
重位の剣が、辛うじて剣を頭上に翳した主水に叩き付けられた直後、漸く日光が重位の眼に届いてその視界を奪う。
雲燿の剣を受けるとはさすがにこの島に呼ばれるだけの事はあるが、示現流の豪剣の前では、受け太刀など全く無意味。
勢いに圧されて己の鍔で己の頭をかち割るか、それを堪えられれば、重位の剣は主水の剣を叩き折ってその身を切り裂く筈。
主水の死を確信しつつ、それでも一応は残心の構えを取って警戒はしておく。
そして数瞬後、視力を回復させた重位が目を開けると、何処にも死体はなく、ただ砕けた天水桶の破片だけが散乱していた。

【とノ参/城下町/一日目/午前】

【東郷重位@史実】
【状態】:健康、『満』の心
【装備】:村雨丸@八犬伝、居合い刀(銘は不明)
【所持品】:なし
【思考】:この兵法勝負で優勝し、薩摩の武威を示す
   1:逃げた男(中村主水)を追って斬る。
   2:薩摩の剣を盗んだ不遜極まる少年(武田赤音)を殺害する。
   3:殺害前に何処の流派の何者かを是非確かめておきたい。

81 :主水、不運を嘆く ◆cNVX6DYRQU :2010/10/02(土) 06:57:37 ID:ipIKxyta
「痛てて……。ついてねえなあ」
東郷重位から逃げ延びた中村主水は、先刻まで明楽伊織ら三人が籠もっていた民家で、頭の瘤を擦っていた。
ここに逃げて来たのは、重位に捕捉された場合、彼等とかち合わせる事でしのごうという狙いがあっての事だ。
いざ来てみると民家はもぬけの殻となっていたが、重位もすぐには迫って来る様子がないから、それはまあ良い。
しかし、周囲に争った跡がない所を見ると、襲われて脱出したとかではなく、彼等は普通に赤石が回復して出立したのだろう。
あんなに呑気にしていた連中がこの朝を平安に過ごし、慎重に思慮深く動いた自分が危機に晒されたのは理不尽ではないか。
何とか斬られずには済んだものの、瘤は痛いし、重位の太刀を受け止めた刀は目釘と刀身が折れてしまったのだ。
主水は刀と鞘を捨てると、折れた刀の切っ先だけを持って民家に出る。
中途半端な武器を持っているよりも、無手と見せかけて油断を誘う方がまだマシ、というのが主水の考えだった。
もっとも、今回の闘いで主水に収穫がなかった訳ではない。
(確かに、見てやがったな)
仕事人という裏稼業を長く続けて来た主水は、殺し合いの最中にでも、己に向けられた視線を探る事ができた。
そして、あの示現流との死闘の最中、確かに視線が……粘つく厭らしい視線が、主水に向けられていたのだ。
間違いなく奴らは剣客達の戦いを見ている。尚且つ、主水の勘が正しければ、この視線の主は大した相手ではない。
無論、主催者の中でも、白洲の男が相当の達人なのは確かだし、日の出の時の声にも底知れない響きがあった。
だが、中には小者も混ざっており、これが本当に「御前試合」なら、おそらくその小者こそが連中の首領という事になる。
主催者にどんな怪人が揃っていようと、頭に弱みがあるのなら、始末する事は十分に可能な筈だ。
(もっとも、今回のような不運に見舞われさえしなけりゃの話だがな)
主水は再び歩き出す。この家に居た三人に恵まれた幸運が、今度は自身を加護してくれる事を祈って。

ここで、中村主水の幸運と不運に関する認識に誤解がある事を指摘しておこう。
まず、今回の主水は、必ずしも全面的に不運であったとは言えず、幸運に恵まれた面もかなりあった。
確かに、東郷重位との遭遇は不運とも言えるが、その重位と闘って生き延びれたのは運の助けがあったからこそ。
「満」の心を得た重位は強敵であり、如何に中村主水でも、余程の覚悟を持って当たらなければ、対抗は難しい。
なのに、自衛の為以外に重位を殺す理由を持たぬ今の主水が無事に済んだのは、僥倖が幾重にも重なったからだ。
幸運の第一は主水が防御に使ったのがただの剣ではなく、天界より来たりし石より作られた特殊な剣であった事。
流星刀は似た素性を持つ斬鉄剣と対照的に、硬度よりも粘性に優れた刀であり、剛剣を受けるのに適していた。
もっとも、単にそれだけなら、重位の雲燿の太刀を防いで主水を守るまでには到らなかった可能性が高い。
次の幸運は、重位が打ち込んで来る直前、主水が流星刀の目釘を僅かに緩めていた事である。
膂力で大幅に勝る重位相手に打ち合いは無謀と判断した主水が、刀身を飛ばす等の奇手を見越して打った一手。
その結果、重位の剣を受けた流星刀は、鍔で主水の頭を割る事も、完全に叩き折られて防御を突破される事もなく、
己の目釘と刀身の不完全な破壊に雲燿の太刀の威力を消費させつつ、刀身の平で主水の額を打つに留めたのだ。
お蔭で主水は強敵東郷重位の剣を堪能しながら生き延びる事ができ、その経験は今後の戦いで主水の身となるだろう。
だから、この朝の主水は、決して凶運に祟られていたとばかりは言えない。
最後に一つ。主水は明楽・倉間・赤石の三人が平安に時を過ごしたと思っているが、実はそれは彼の思い違いである。
主水よりは遅れてであるが、彼等もまた、避け得ぬ強敵との出会いを果たしていたのだ。

【へノ参/城下町/一日目/午前】

【中村主水@必殺シリーズ】
【状態】頭部に軽傷
【装備】流星剣の切っ先
【所持品】なし
【思考】
基本:自分の正体を知る者を始末する
一:明楽を探して、調査の進み具合を監視する
二:できるだけ危険は避ける
三:主催者の正体がわかったら他の者に先んじて口を封じる

82 :主水、不運を嘆く ◆cNVX6DYRQU :2010/10/02(土) 06:59:52 ID:ipIKxyta
明楽伊織・倉間鉄山・赤石剛次の三人は、島の南西の森にやって来ていた。
他の多くの剣客と同様、彼等もまた、立ち入りを禁じられた地域には、何かがあると考えたのだ。
追っていた「いぞう」が既に討たれたらしいと知った以上、彼等がそれを調べる道を選んだのは妥当な判断だろう。
城下を出るのが遅れた為に、既に辰の刻を過ぎているが、避け得ぬ死が云々などという脅しに怯む彼等ではない。
そして、彼等の勇気は報われる事になる。
「てめえは……!」
今、彼等の目の前に居るのは、昨夜あの白洲で御前試合の開催を宣した老人。
少なくとも三人の少年と言っていい若人を含む二十数名の死者を出した元凶、もしくはその一味。
この御前試合が如何なるもので、不可思議な力を持つ主催者が何者かの核心に迫る情報を持っているだろう男。
そして、御前試合の参加者とされた剣士達と比べても全く見劣りしない、第一級の剣客だ。
「勝負を望むならば、あと二間、前に出よ。その線を越えた者は全て、我が剣によって避け得ぬ死を迎える」
言われずとも、三人は前に進み、老人と剣を交えるだろう。
この老人と出会えたのは三人にとって望外の事であり、わざわざこんな森の中に足を運んだ甲斐はあったと言える。
もっとも、老人に対する三人の思いには、多少のずれがあったのだが。

【へノ弐/森/一日目/午前】

【明楽伊織@明楽と孫蔵】
【状態】健康、町衆の格好に変装中
【装備】古銭編みの肌襦袢@史実
【所持品】支給品一式
【思考】基本:殺し合いを許さない
一:鉄山、赤石と協力して老人(柳生宗矩)を討つ
二:信頼できそうな人物を探す
三:殺し合いに積極的な者には容赦しない
四:刀を探す
[備考]参戦時期としては、京都で新選組が活動していた時期。
 他、史実幕末志士と直接の面識は無し。斎藤弥九郎など、江戸の著名人に関しては顔を見たことなどはあるかも。

【倉間鉄山@バトルフィーバーJ】
【状態】健康
【装備】 刀(銘等は不明)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を打倒、或いは捕縛する。そのために同志を募る。弱者は保護。
一、赤石や伊織と共に柳生宗矩を捕え、情報を聞き出す
二、主催者の正体と意図を突き止めるべく、情報を集める。
三、十兵衛、緋村を優先的に探し、ついで斎藤(どの斎藤かは知らない)を探す。志々雄は警戒。
四、どうしても止むを得ない場合を除き、人命は取らない。ただ、改造人間等は別。

【赤石剛次@魁!男塾】
【状態】気絶、腕に重傷
【装備】木刀
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を斬るまでの間は、明楽伊織や倉間鉄山と協力する
一:老人(柳生宗矩)に一騎討ちを挑む
二:刀を捜す
三:濃紺の着流しの男(伊烏義阿)が仇討を完遂したら戦ってみたい
※七牙冥界闘・第三の牙で死亡する直前からの参戦です。ただしダメージは完全に回復しています。
※武田赤音と伊烏義阿(名は知りません)との因縁を把握しました。
※犬飼信乃(女)を武田赤音だと思っています。
※人別帖を読んでいません。

83 : ◆cNVX6DYRQU :2010/10/02(土) 07:00:36 ID:ipIKxyta
投下終了です。

84 :七氏:2010/10/02(土) 12:45:44 ID:x/Ayu36G
流石むこ殿。示現流開祖から逃げ切るとは!

85 :創る名無しに見る名無し:2010/10/02(土) 22:25:29 ID:7LPda8yT
乙です。
主水が気づいたのは忠長の視線か。
さすがにやるな。

そして三人相手に宗矩のこの余裕・・・何か用意があるのか、
三人の思惑の違いすら読み切ってるからなのか、次の展開が気になるな。

86 :創る名無しに見る名無し:2010/10/02(土) 22:41:42 ID:Y9X5MULP
投下乙!

87 :創る名無しに見る名無し:2010/10/03(日) 15:47:42 ID:pzYOM7A0
バトルフィーバー見てきたけど、






鉄山ってスーパー戦隊界の東方不敗だよなww

88 :創る名無しに見る名無し:2010/10/03(日) 21:28:33 ID:JPl35bKG
>>61-68
剣気とは書かれてないが気合で人が足場にするほど大きな桶が砕かれたぞ
でも剣気じゃないからセーフなんだろ?
よかったな

89 :創る名無しに見る名無し:2010/10/04(月) 07:28:01 ID:NQoCS8Up
>>88
東郷さんは元々、その類の逸話が幾つもある人。

90 :創る名無しに見る名無し:2010/10/04(月) 09:43:44 ID:qJblioHf
気合いの喝声だけで荒縄千切ったりもしてたね。
あと、東郷の雲耀は一部の高弟でないと視認する事すら出来ないレベル。
ソウ(赤音と同レベル)に到達してようやく理解が出来るとか、そんな無茶は逸話もあるよ。

91 :創る名無しに見る名無し:2010/10/06(水) 22:13:25 ID:Zw1CQrn/
投下乙です

主水さん、さすがしぶといw
でも東郷も追うつもりか
そして三対一だがこれは…

92 :創る名無しに見る名無し:2010/10/08(金) 16:28:09 ID:mCboCcxq
ほしゅ

93 : ◆cNVX6DYRQU :2010/10/10(日) 19:22:45 ID:+j0Uo41Z
上泉信綱、武田赤音、宮本武蔵、柳生連也斎で予約します。

94 :創る名無しに見る名無し:2010/10/10(日) 19:49:47 ID:FF5jcSz2
なにこの死者が出ずにはいられなさそうな面子。

95 :創る名無しに見る名無し:2010/10/10(日) 19:57:38 ID:jflbXYdl
>>82
>【赤石剛次@魁!男塾】
>【状態】気絶、腕に重傷
もう気絶してないんじゃね?


96 :創る名無しに見る名無し:2010/10/10(日) 23:12:11 ID:FF5jcSz2
そういやこのロワってなにかしらのフラグを作ったキャラは必ず成就することなく、次ぐらいで即死するよな?
バッキバキに折れまくる分、何一つ最初から作らないほうがいいのか。

97 :創る名無しに見る名無し:2010/10/11(月) 00:35:27 ID:gfr+V7PT
剣客の殺し合いの無残、無常の表れだと思うけど

98 :創る名無しに見る名無し:2010/10/11(月) 08:41:19 ID:/5TlX45Q
フラグ有りなら伊勢守と武蔵は鉄板だろうけどな。
死ぬ所が想像がまるで付かん。

99 :創る名無しに見る名無し:2010/10/16(土) 05:57:15 ID:nMMJ44E+
連也斎はとみ先生の劇画だと100人切り余裕な人だったんだっけ
まぁそれくらいの補正は武蔵だって持ってるし、このロワじゃたいしたことないステータスなんだろうけど

100 : ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 06:42:58 ID:P3toMJII
>>95
すいません、ミスです。赤石のテンプレの「気絶」は削除という事で。

それと、上泉信綱、武田赤音、宮本武蔵、柳生連也斎で投下します。

101 :顔合わせ ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 06:47:36 ID:P3toMJII
「ん……」
休憩を終えた武田赤音は思い切り伸びをする。
辰の刻を告げる鐘が鳴ったのは少し前の事。休み始めたのは日の出をかなり過ぎてからだから、休めたのは一、二時間程か。
「そっちも終わったか」
赤音が目を向けた先に居るのは、剣聖上泉伊勢守信綱と、その同行者であった林崎甚助……正確には、甚助であった骸。
岡田以蔵を斬った後、信綱と赤音は、残して来た林崎甚助と神谷薫の元に戻ろうとしていた。
そんな時、夜明けと共に響いて来たあの声。
信綱はその声の主に心当たりがありそうな素振りを見せていたが、直後に表情を一変させる。
足を早めて戻ってみると、そこには、薫の姿は無く、あの声が告げた通り息絶えた甚助の死体が。
そこから殺害者のものと思しき血の跡を追って行くと、城下から出る橋が崩落した辺りで途切れていた。
橋の破壊と血の主に関係があるのか、その者がここから何処へ向かったのか、どちらも現時点では全く不明。
信綱は仕方なく甚助の元に戻って血に塗れた姿を整えてやり、その間、赤音は一休みしていたという訳だ。

「なら、俺は行かせてもらうぜ。あの女も、『林崎甚助』を殺る程の使い手なら、助けなんて無用だろうしな」
そう言って立ち上がる赤音。だが、信綱はその件に関して疑念を捨てきれずにいる。
「本当に、その神谷なる女人が、彼と勝負して打ち勝ったのだと思うかね?」
確かに、持っている刀を折られ、その切っ先で喉を突かれるという甚助の死因は、相手が無手であった事を強く示唆する。
いくら好戦的でも武器を持たない者がわざわざ甚助を襲うとも思えず、甚助もまた好んで素手の相手に挑むような者ではない。
……その相手が、尊敬する上泉伊勢守に刃を向ける不届き者の仲間でさえなければ。
そういう訳で、状況証拠から見れば林崎甚助の死に神谷薫が関わっている疑いは非常に濃い。
だが、信綱には、その神谷薫に林崎甚助を討てるような力量があるとは、信じかねている。
先程、気配を感じた時に危険さを感じなかったというのは、まあ、薫が己の剣呑さを隠すのに長けていたとすれば説明は付く。
問題は、甚助の刀を折ったそのやり口。
先程から、信綱は甚助の死体と折れた剣を仔細に観察し、甚助を破った神谷薫と思われる者の技を再現しようと務めていた。
結果、甚助の剣を折った技もその使い手も、無刀取りを長らく研究して来た信綱からすれば、非常に未熟なものに思える。
この程度の腕であの卍抜けに対抗できる筈もなく、この一件には何か裏があるように思えるのだが……

「あん?まあ、連れがあんな小娘にやられたのを認めたくないのもわかるがな」
赤音とて、あの無力そうな娘に、居合いの祖とも言われる大剣豪を討てたとは信じ難い。
だが、いくら考えても真相はわかる筈ないし、赤音としては、そんな無駄な事に時間を浪費するつもりはないのだ。
のんびりしている内に戦い甲斐のある剣士は互いに殺しあって数を減らして行っているだろうし、
主催者がああして干渉して来たという事は、誰かがそれを手掛かりに、赤音に先んじて彼等を討ってしまう恐れすらある。
薫が甚助を討ったのであれば、いずれ仕合の相手として再会できるかもしれず、そうなれば甚助を討てた真相も判明しよう。
という訳で、赤音は信綱を渋々でも納得させ、さっさと別れる方向に話を持って行こうとしていた。
「相手が武器も持ってない女だから油断したんだろう。まあ……」
「ならば、その者は所詮、剣の道を歩むには相応しくなかったという事だな」
いきなり、信綱でも赤音でもない者の声が、赤音の言葉に応じる。
だが、信綱も赤音もその声が語る言葉をまともに聞いていない。
「な」の音が響いた瞬間、二人は全力で跳躍し、その場を離れたからだ。
もっとも、彼等が即座に動かなければ、言葉と同時に放たれた剣によって両断され物聞けぬ骸になっていたのだから、
この言葉は所詮、はじめから誰にも聞かれず空しく響く運命だったとも言えるのだが。
何時の間にか忍び寄っていた男の言葉に囚われず奇襲をかわした二人は、その不動明王に似た男に相対した。

102 :顔合わせ ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 06:51:32 ID:P3toMJII
「随分と気の利いた挨拶じゃねえか」
気配を消して近距離まで近付いた技量、剣の一撃の凄まじさ、そして、まず声を掛ける事で殺気から気を逸らす遣り口。
面白い勝負ができそうな相手の登場に笑う武田赤音。
「貴殿は?」
上泉信綱も、相手が只者でない事を悟ったのか、心持ち丁寧な口調で問い掛ける。
「宮本武蔵玄信と申す」
いきなり発せられた大剣豪の名に、赤音は驚愕に目を瞠り、続いてにやりと笑った。
確かに、林崎甚助や 師岡一羽・斎藤伝鬼坊がいるのなら、宮本武蔵が参加していても何の不思議も無い。
この分だと、雲燿の剣を見せてくれたあの老人はやはり東郷重位だったのだろう。
戦意を燃やし始めた赤音を制して、信綱も自己紹介を返す。
「私は、上泉信綱と申す者……」
言った途端、武蔵の強烈な殺気が叩き付けられ、信綱は穏便にこの場を収めるのが困難だと悟る。
赤音としても、目の前の老人があの剣聖伊勢守だった事に何も感じない訳ではないが、今は宮本武蔵の方が重要だ。
史上最強とすら言われる達人であり、現在まで残る精緻な兵法理論を創出した大剣客。
加えて、多くの対戦相手を打ち殺し、子供や素人にすら容赦しなかったという武蔵なら、赤音にも手加減などするまい。
武蔵本人は赤音よりも信綱の方に興味がありそうだが、こんな極上の獲物を誰が譲ってなどやるものか。
素早く信綱の前に出ると、いきなり飢虎を繰り出して先制攻撃を仕掛ける。
「!?」
あっさりと攻撃を弾かれ、驚愕が赤音を襲う。
無論、宮本武蔵に奇襲が簡単に通じるとは、赤音もはじめから思っていない。
しかし、今の武蔵の動きは明らかに反応が早過ぎる。まるで、赤音が動き始めた瞬間に飢虎を読んだかのように。
(こいつ、まさか刈流を……)
「ほう。お前はあの男の同門か」
武蔵が、赤音の疑念を裏付ける一言を放った。

「あの男?」
「この島には、お主と同じ剣を使う男が参加しておろう。濃紺の着流しの男だ」
(伊烏!)
死者を含めれば刈流を修めた剣士は相当の数になるだろうし、服などはいくらでも着替えられる。
だから、赤音と同じ流派、濃紺の着流しというだけでは、武蔵が言う剣士が伊烏義阿とは限らない。
それでも、もしも伊烏がこの島に来ているとすれば……
「あいつに、会ったのか……?」
「会いたいならば、ここから半里、北東に向かうが良い。今ならまだそこに居よう」
半里……そんな近くに伊烏が居るというのか。伊烏は、死した後でも変わらず自分を追い求めてくれているのだろうか……
チン!
鍔鳴りの音で赤音が我に帰ると、上泉は剣に手を掛けて武蔵と相対し、武蔵の方も既に刀を抜き、上段に構えていた
「行かれよ。但し、短慮は控えるが良かろう」
(二人して俺を体よく追い払おうとしてやがるな)
赤音は心中で毒づくが、まあ、彼等の立場からしたらそれも無理ないかもしれない。
武蔵が求めるのは己の剣の進歩と勝利。ならば、大事なのは対手の腕前と剣者としての器量のみ。
無論、赤音とて相当の達人であろうとわかってはいるが、剣術界における上泉伊勢守の名はあまりに巨き過ぎる。
一方の信綱からしても、放置した場合の危険は武蔵の方がより大きいと判定したのは妥当なところだろう。
伊烏が求めるのは強者との仕合だが、武蔵は勝利の為なら強者も弱者もかまわず殺そうとするであろうから。
それに、赤音にとっても、伊烏に会えるなら、武蔵や信綱などはっきり言ってどうでも良い存在でしかないのだ。
赤音は、見る人によっては「頂上決戦」と称されてもおかしくない世紀の対決に背を向けると、北東を指して走り出した。

【へノ肆 城下町/一日目/午前】

【武田赤音@刃鳴散らす】
【状態】:健康
【装備】:逆刃刀・真打@るろうに剣心、野太刀、殺戮幼稚園@刃鳴散らす
【所持品】:支給品一式
【思考】基本:伊烏を探す。
     一:北東に向かい、伊烏を探す。
     二:強そうな剣者がいれば仕合ってみたい。とりあえずは老人(東郷重位)の打倒が目標。
     三:女が相手なら戦って勝利すれば、“戦場での戦利品”として扱う。
     四:この“御前試合”の主催者と観客達は皆殺しにする。
     五:己に見合った剣(できれば「かぜ」)が欲しい。
     六:一輪のこれ(殺戮幼稚園)、どうすっかな?
【備考】※人別帖をまだ読んでません。神谷薫、上泉信綱、宮本武蔵の顔と名前は把握。

103 :顔合わせ ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 06:54:48 ID:P3toMJII
「一の太刀を使われるか」
さすがに、信綱は瞬時に見抜いていた。
武蔵の構えは、最強を謳われ、信綱にとっても最も尊敬する先達である、塚原卜伝の奥義のそれであると。
「そうか。やはり、これが一の太刀なのは間違いないか」
既に足利義輝に確認していた事だが、あれが詐術であった可能性もこれで消えたと、ほぼ確信して頷く武蔵。
その武蔵の反応も、信綱には予測の内。彼の一の太刀の構えを見れば、それが正式に伝授されたのでない事は歴然としている。
信綱の見るところ、武蔵の一の太刀は卜伝のそれに比べて不完全だ。
もっとも、一の太刀を完全な物として修得している者は卜伝の弟子の中にもいないだろうが、問題は不完全さの方向性。
武蔵は、一の太刀の深奥の部分に関しては、信綱が驚く程に良く会得しており、欠けているのは基礎の方。
卜伝が新当流を基礎から修めていない者に一の太刀の伝授を許す筈がなく、武蔵は卜伝の弟子では有り得なかった。
だが、それにしても……
「実にお見事」
信綱は素直に感嘆する。
元々新当流の剣士でない為に武蔵の一の太刀は基礎が不完全だが、奥義の核心と言える部分は、信綱の見る限り完璧だ。
一の太刀をここまで盗み取ったのも大したものだが、より感嘆に値するのは、盗んだ相手が塚原卜伝当人であろう事。
上で述べたように、卜伝の弟子には一の太刀を伝授された者が幾人か居るが、誰も奥義を完全に物にしたとは言えない。
もっとも、一の太刀は卜伝が己の全てを掛けて編み出した秘技なのだから、卜伝ならざる剣士が完全に会得できないのは当然。
例えば、信綱の弟子でもある足利義輝は、一の太刀の威力では卜伝に及ばない代わりに、その剣には卜伝に無い高貴さがある。
だから、弟子達の一の太刀が不完全であるからと言って、それは彼等が剣客として師に及ばない事を意味する訳ではないが、
とにかく、卜伝以外の者は完全な一の太刀を使えないのだから、武蔵がこういう形で一の太刀を盗める相手は卜伝のみ。
つまり、武蔵は卜伝の一の太刀を見、その核心を盗める程に卜伝の剣を理解しながら、同じ道を進もうとしている。
誰にでも出来る事ではない……少なくとも、信綱には出来なかった。
塚原卜伝は、信綱の見る所、非の打ち所のない完全な剣士だ。
仮に、信綱が卜伝と同じ道を進んだとして、望み得る最高の場合でも、卜伝に並ぶのが精一杯だっただろう。
その場合、この世に塚原卜伝が二人居たとしても意味はなく、信綱は剣術の発展の為に如何なる寄与も出来ない。
だから、信綱は、生涯に何百人を殺したと誇らしげに語る卜伝とは逆に、活人の先にある剣を目指した。
奥義として選んだのも、転・無刀取りなど、一の太刀とは対照的に、相手を先に動かし、その力を逆用して制する技。
見方によっては、塚原卜伝との真っ向勝負を避けて別の道に逃げたとも言えるし、
卜伝なら己が進む道にある剣理は全て探し尽すだろうから、自身は他の道を探せば良いという、信頼の表れとも言える。
しかし、この男は……一の太刀をここまで修得できている事から考えて、元々卜伝とごく近い道を歩んで来たのだろう。
そして、卜伝のあの一の太刀を目の当たりにしながら、自分も同じ技を身に付け、卜伝を含む全参加者に勝つつもりのようだ。
塚原卜伝と同じ道を進んでいても、己ならば追い越せるという強い自負。
これ程の相手の威を、果たして自分に受け止め切れるか……
信綱は、意識せず、剣から手を放していた。

104 :顔合わせ ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 06:57:55 ID:P3toMJII
武蔵は、信綱が剣から手を放し、無手で構えたのを見て歯噛みする。
元々、一の太刀は剣で剣に対する際の技であり、剣を持たない相手を斬るにはあまり向かない。
卜伝が剣神天真正と立ち合い見出した故か、剣神を祀る神官家の者として剣の他の「外の物」相手に奥義など不要との自負か。
どちらにせよ、素手の相手にわざわざ一の太刀を使う事は基本的に想定していないのだ。
特に、信綱が狙っているであろう無刀取りにとっては、上段からの振り下ろしは基本の型の中で最も取り易い形。
出来れば正眼に構え直したいところだが、上段に構えた剣をそのまま下ろせば、一瞬、自分の腕で己の視界を遮ってしまう。
片手を放してから構え直せば視界は確保できるが、片手を遊ばせる隙が出来る事には違いがない。
もちろん、冷静に考えればそれでも、剣を構えた武蔵が素手の信綱よりは幾らか有利の筈。
しかし、一の太刀の利点を潰される恰好になった事と、新陰流開祖の名声が武蔵の心に焦りを生む。
一流の剣客同士の勝負では、僅かな心の隙が武器の有無以上に大きく勝敗を分ける事がある。
こうなれば手は一つ……武蔵は意を決すると、剣を上段から振り下ろした。

武蔵は間合いの外で剣を振り下ろすと同時に手を放し、信綱に飛ばす。
信綱は素早く手で刀身の平を打って叩き落すが、そのすぐ後から突っ込んできた武蔵の拳をかわし切れず、一撃を受ける。
咄嗟に武蔵の腕を掴んで固めようとするが、武蔵は腕を強く捻って振りほどく。
続いて武蔵は蹴りつけようとするが、信綱に軸足を払われてたたらを踏む。
術技の限りを尽して殴り合い、蹴り合う二人の大剣豪。
無論、剣客……とくに戦国の世に生きる剣士は、剣のみならず無手を含む多数の武術を併修するもの。
新陰流や二天一流もその例外ではなく、柔術の技法をも豊富に含んでいる。
新陰流の無刀取りは柔術に通じる技だし、気楽流なる柔術流派は新陰流の技を取り込み信綱を開祖と称したという。
また、武蔵も格闘術に長け、天下一を称する新当流の有馬喜兵衛を、組み打ちに持ち込むことで倒したのは有名な話だ。
だから、二人の無手の技が劣っているという事は決してないのだが、それでも、剣術こそが彼等の表芸なのは間違いない。
無論、二人の達人が相手の技を深く読み合い、互いの無手の敵への対処に瑕疵を見つけたが故の格闘戦ではあるのだが、
超一級の剣客二人が素手で撲り合うさまは、滑稽と言って良いだろう。
命懸けでありながら滑稽な争いを続ける二人……その不毛な争いを止める男は、既に間近に迫っていた。

105 :顔合わせ ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 07:01:46 ID:P3toMJII
(老人の方は、新陰流だな)
争う二人に忍び寄る柳生厳包は、信綱の動きからそれを悟る。但し、厳包と同じ尾張柳生ではあるまい。
尾張にあれ程の達人が居れば厳包の耳に入らない筈がないというのもあるが、老人の技法そのものが尾張柳生とは少し違う。
老人の構えは腰を落とした介者剣法の型であり、尾張柳生では初代利厳が素肌剣法に適応した直立の構えを採用している。
もっとも、必ずしも足元が整備されていない野試合では、安定を重視する介者剣法が直立の構えに劣るとは限らないが。
だが、直立の構えは、急激に変化する世に生きた柳生利厳の大きな成果であり、尾張柳生の誇るべき構えだ。
よって、あの老人は利厳の技を継ぐ尾張柳生の剣士では有り得ない。
また、聞く所によれば、江戸柳生も宗矩の指導の下で素肌剣法への適応を進めたとか。
それが本当だとすれば、あの老人は、柳生以外にも無数に存在する新陰流の一派の遣い手という事になる。
厳包にとっては、新陰流正統を争う敵手とも考えられるが、彼はそんな卑小な理由で二人を襲おうとしているのではない。
そもそも、彼には白井亨を見つけ出すという急務がある訳で、単に新陰流の剣士を見付けただけなら寄り道などしなかった。
先を急ぐ厳包の足を止め、針路を変えさせたのは、この二人の剣客の信じ難い程の腕前。
剣を使っていなくても、動きを見れば、老人も、その相手も、己に劣らぬ一流の剣士である事は一目瞭然。
一方で、刀や木刀を腰に差したまま素手で戦う二人の有り様は、厳包から見れば明らかな隙。
隙を見出したならば、そこを衝き、指摘してやるのが剣客同士の礼儀というもの。
それでどちらかが死亡したとしても、生き残った方が闘いから何かを得られれば、結果的には剣術の発展に繋がる。
剣の為という、満天下を覆い過去未来を貫く、剣士にとって絶対の大義が、主の為という、己一個の義を圧倒したのだ。
使命感に身を任せ、厳包は二人へ近付いて行った。

厳包はぐんぐんと二人に近付いて行くが、一向に気付かれる様子は無い。
信綱と武蔵が目の前の相手との戦いに気を取られているせいもあるが、最大の秘密は厳包の歩法。
それは柳生新陰流秘奥の術。
新陰流の奥義と言っても信綱が創出したものではなく、厳包の曽祖父である石舟斎が考案した……いや、改良したもの。
石舟斎晩年の愛弟子に、金春七郎なる猿楽師が居た。
七郎は石舟斎から幾度も極意を伝授されているが、それは単に彼の剣士としての才が優れていたからというだけではない。
石舟斎は七郎に新陰流の奥義を伝える代わりに、七郎から猿楽金春流の秘伝を習ったという。
柳生の血には猿楽狂いの性が秘められてはいるが、この場合、石舟斎の目当ては猿楽の技を剣術に活かす事。
古書に曰く、芸の至上は、人の意識の外にありながら、人の心に和を作り出す事なりと。
派手な芸で見る人を驚かすのも一つの道だろうが、存在を意識させず、無意識に働きかけて人の心を和ませるという道もある。
今回、厳包がやっているのも同様で、気配を消すのではなく、相手の心と調和させる事で、意識に上るのを防いでいるのだ。
そのまま、相手に刀を抜く暇を与えない為に超接近戦を続ける二人に近付くと、一気に薙ぎ払った。

厳包の一撃を受けて転がる信綱と武蔵。但し、直前に殺気を感じ取って刃筋をずらした為、共に斬られては居ない。
無論、鉄の塊で打たれて痛くない筈はないが、戦闘力が大きく減る程の痛手ではなく、素早く立ち上がって得物を抜く。
もしも、二人を一度に薙ぎ払うという無茶をしていなければ、彼等の片方は負傷させられていたかもしれない。
だが、厳包の思惑としてはそれで良いのだ。
負傷させずとも、二人は今までの戦いでそれなりに体力と気力を消耗している筈。加えて、地の利。
信綱と武蔵が、相手に地の利を与えない為に牽制し合っていた為、空いていた絶好の位置。
そこを漁夫の利を得る形で厳包が占め、今の一撃で二人を追い払ってこの位置を確保した。
この二つの優位さえあれば、どんな達人が相手でも必ず勝てるという自信を、厳包は持っている。
「柳生殿!?」「柳生兵庫助!」
どうやらこの二人は共に柳生に縁を持つようだが、今まで戦っていた手前、結束して厳包と戦う訳にもいくまい。
先程の一撃で平等に両者を攻撃し、彼等の間の均衡を崩さなかったのは、そういう狙いもあったのだ。
十分な勝算を持って、厳包は偉大なる大先達二人に刃を向けた。

106 :顔合わせ ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 07:06:31 ID:P3toMJII
鼎立の状態で睨み合う三人の剣豪。
暫く、隙を突かれるのを恐れて誰も動けない状況が続くが、やがて吹いて来た突風が均衡を破る。
風下に立ち不利な状況に追いやられた武蔵は、隙を伺う構えから防御重視に構え直した。
その瞬間を逃さず、信綱は厳包との間合いを詰めて行く。
武蔵の横槍を心配しなくてせずに済む内に、厳包の剣を確かめておこうという肝か。
厳包としてもそれは望む所。
信綱か突いて来た剣を叩き落すと、剣を回して斬り付ける厳包。
回避し身を一転させての打ち込みを、厳包は手を峰に添えて受け、そのまま剣を滑らせての一撃を信綱が身を沈めて避ける。
数回の応酬の後、風がやむ直前に、厳包の追撃を紙一重でやり過ごして身を引く信綱。
信綱の着物が裂けているところを見ると、現段階ではやはり、疲れと地形が厳包を優位に立たせているらしい。
しかし、実際に戦ってみて信綱の真価を実感した厳包の心には、焦りが生まれていた。
最初に感じた通り、信綱の新陰流は厳包のものより古く、その点では厳包に約八十年の利がある。
無論、技が新しければそれだけで勝てるというものでもないが、問題はその技の有利も信綱相手には風前の灯だという事。
今の数合の前の段階で二人の技の時代差が八十年だったとすれば、今は七十九年程になっているだろう。
このごく短い闘いの間に、信綱は凄まじい勢いで、厳包から技法を学び取っているのだ。
この調子で一刻も戦い続ければ、石舟斎と利厳が心血を注いで新陰流に加えた新技を、残らず盗まれてしまうかもしれない。
そうして利点を一つ失った時、厳包は果たして、老年に似合わぬ天稟と、歳以上の老練さを持つ信綱に対抗できるのか……

信綱に強い脅威を感じ、密かに短期決戦を目論む厳包。
しかし、今、厳包が対峙している相手は、信綱一人ではない。
そしてもう一人の相手、宮本武蔵は、厳包の心に生じた微かな弱気と、己から注意が逸れた事を見逃す甘い剣客ではなかった。
信綱が退いて出来た隙間を埋めるように前へ出ると、畳み掛けるように攻めて行く。
変幻自在の木刀の攻めに一歩引くかに見えた厳包だが、思い直して前に出る。
木刀は遠間での防衛を苦手とする武器であり、間合いを保ちつつ武蔵の攻めが切れるのを待てば、厳包は優位に立てるだろう。
だが、それをやれば結局の所、戦いの流れが緩やかなものとなり、長期戦となる可能性が高い。
闘いが長引けばそれだけ多くの技を信綱に奪われる訳で、それが厳包には我慢できなかった。
木刀の突きをいなした厳包のの大上段からの切り下ろしを、見切って間合いを外したかに見えた武蔵が、いきなりのけぞる。
厳包が切り下ろしの最中に手の中で剣を滑らせ、間合いを見かけよりも伸ばしたのに直前で気付いたのだ。
岩本虎眼が先の戦いで使って見せ、厳包を殺しかけた技。厳包はこの場面で、敢えて他流の技を使う事を選択した。
信綱に新陰流の手を見せてそれを盗まれるのを恐れた、という一面ももちろんある。
だが、それ以上に、これは厳包が上泉伊勢守という巨大な存在に刺激され、更なる進歩を求め始めた証左。
信綱のようにこちらの技法を瞬間で学び取る剣士に対抗する為には、ただ新陰流正統の技を墨守するのみでは不足、
この島で出会った剣士達の技をも取り込んで、己の新陰流を更に進化させ続ける事で、信綱に対しようとしているのだ。
見切りに優れた武蔵は、予測より早く身をかわすが、厳包はぎりぎりまで刀を滑らせ、遂にその刃先は武蔵の額に届く。
無論、両手どころか、片手の指二本で支える所まで滑らせた剣では、武蔵の頭蓋骨を割る程の威力は発揮し得ない。
そして次の瞬間、武蔵の刀の鞘による抜き打ちが己に斬り付けた刀を強く叩き、厳包の手から弾き飛ばす。
だが、それも全て厳包の計算の内。二人がそのまま馳せ違った瞬間、厳包の手には既に別の刀が握られている。
それは、最初に武蔵が信綱に投げ付け、叩き落された刀。
その存在が頭にあり、間合いを伸ばし過ぎて剣を落としたとしても、すぐ補充できる見込みがあってのあの行動だったのだ。
対して、振り向いた武蔵の顔……目の上には厳包の剣による傷。
ごく浅い傷ではあるが、このまま止血せずに戦い続ければ、流血によって視界を塞がれ、戦闘能力を大きく減らす事になる筈。
飛び違って位置を変えた事で、武蔵に対する地の利は失ったが、相手の視界を塞ぐ事による利はそれに勝るだろう。
総合すると厳包に得な一閃だった。この時点では、厳包にはそう思えたのだが……

107 :顔合わせ ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 07:12:36 ID:P3toMJII
傷を受けた武蔵は、すぐさま鞘を投げ付けて信綱を牽制すると、再び厳包に襲い掛かる。
だが、その動きもまた、厳包の予想を外れるものではない。
そもそも、この闘いを短期決戦に持ち込むのは厳包の狙いだった。
とはいえ、膠着し易い三つ巴の戦いで流れをそちらに持って行くには、三人の内、少なくとも二人がそれを望む事が必要。
そこで、目の上の掠り傷という、時間を置く事で不利になる傷を狙ったのだ。
望み通り、武蔵は短期決戦を挑んで来てくれ、厳包は十分な自身を持ってそれを迎え撃つ。
無論、武蔵とて信綱に劣らぬ凄まじい達人である事に、厳包も気付いていない訳ではない。
五分の条件なら勝負がどう転ぶかは不明だし、流血が未だ武蔵の視界を遮らない内の決戦なら、多くの面で条件はほぼ五分。
しかしただ一点、厳包が真剣を持っているのに対して武蔵の得物は木刀。ただでさえ、木刀は威力という点では真剣劣る武器。
まして、厳包は剣の鋭さに関しては絶対の自信を持っている。
前述したように、尾張柳生の技法は、厳包の父利厳の代に介者剣法から素肌剣法に移行した。
利厳自身は加藤清正に従って功を建てた事などからわかるように、介者剣法をも極めていたが、子に教えたのは素肌剣法のみ。
だが、それは決して、新陰流正統として合戦での働きや鎧武者との勝負を捨てたという事を意味しない。
現に、厳包の兄である清厳は、病身でありながら天草の乱に参戦し、数限りない敵を討ち取ったという。
狙い所からして介者剣法とは異なる素肌剣法の技で、甲冑で固めた敵と戦える秘密……それこそが、剣の鋭さだ。
鎧を容易く切り裂ける鋭ささえあれば、鎧武者も素肌の武士より動きが重いだけの敵でしかない。
もちろん、武蔵ほどの達人が持つ木刀を切断するのは、凡庸な武者の兜を両断するより遥かに困難だろう。
それでも自分の渾身の一撃なら必ず行けるとの確信を持って、厳包は武蔵を迎撃する。

ぶつかり合う厳包の刀と武蔵の木刀。
「!?」
厳包の剣は木刀に切り込むが、両断するには到らず、武蔵に力任せにはね上げられた。
厳包の技が武蔵に劣っていたというよりも、問題があったのは刀の方。
と言っても、刀の質が悪かった厭う事ではなく、柄の仕掛けが僅かに厳包の刃筋を狂わせたのだ。
厳包は知らず、直前までこれを使っていた武蔵は熟知している事だが、この刀の柄には、刃が仕掛けられている。
そのせいで、刀の重心がほんの僅かに通常の剣と僅かにずれ、それが厳包の剣を一糸だけ狂わせた。
本来ならば、仕込み柄による重心の差が、勝負を大きく分ける事などまずないないだろう。
特にこの剣は、ただの暗器ではなく、普通の刀として使う事も十分に想定している武器。
もう僅かでも時間があれば、厳包はこの刀の特異性に気付いて打ち込みを修正していた筈。
そうなれば、重心の狂いによる不利などほぼ皆無。少なくとも、目を塞がれる事の不利とは比較になるまい。
だがただ一瞬、厳包自身がそれに気付く前ならば、この小さな弱点は致命的なものになり得る。
だからこそ、武蔵は厳包との勝負を急いだのだ。
不利が顕れるのを懼れたからではなく、有利が消える前にそれを活かす為に。
その事を悟った時には、武蔵の木刀が振り下ろされ、厳包は意識を失っていた。

倒れる厳包。しかし、衝撃の割に傷自体は大したものではない。
信綱が、武蔵が飛ばした鞘を刀で叩き落しつつ、己の鞘を木刀の軌道に差し込んで、厳包を救ったのだ。
武蔵は厳包の身体を挟んで信綱と対峙し、素早く袖を破って鉢巻とし、流血を防ぐ。
予想通り、信綱はその絶好の隙を衝こうともせず、ゆっくりと横に動いて行く。
その動きがが自分を気絶した厳包から引き離す事を意図してのものだと見切って、武蔵は笑う。
よく見ると兵庫助利厳とは別人だが、面差しと技から見て、倒した男が柳生の一族である事は明らか。
あの老人が本物の上泉伊勢守ならば、いや、ただ伊勢守に私淑しているだけだとしても、柳生を守ろうとするのは当然。
武蔵としても、既に倒した相手にとどめを刺す事は興味の外であり、今大事なのは信綱を討つ事。
すぐに戦いの場を移してやってもいいくらいだが、精々気力を使わせてやろうと、焦らしつつ移動して行く。

108 :顔合わせ ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 07:16:54 ID:P3toMJII
武蔵と信綱は徐々に移動し、城下南東の橋付近までやって来た。
橋の一部が崩落しているのを見て、武蔵は信綱の狙いを悟る……悟ったと考える。
今までの行動を見る限り、信綱に武蔵を殺す気はないようだ。
と言って、あの衝撃なら厳包が目覚めるには暫く時が掛かる筈だし、それまで戦い続ける体力は既に残っていまい。
だが、武蔵を橋の向こうに追いやる、または誘い込み、橋を完全に破壊すれば……
橋がなくても川を渡るのはそう難しくないが、濡れれば体力を消耗するし、渡河中には隙が出来る。
そうまでして敵にとどめを刺す欲求は武蔵にはないから、この手で厳包を救う事は出来よう。
別に武蔵もそれは構わないのだが、信綱が武蔵を引き離す事にこだわってくれれば、そこに隙が生まれる筈。
その好機を伺いつつ、武蔵は信綱と睨み合い、時に打ち合いつつ橋に近付いて行った。
戦いの場は、信綱の誘導に武蔵が乗る形で橋の上に移り、信綱が袴の内で膝を撓めるのを見切った武蔵は一気に勝負に出る。
武蔵は上段からの大きな振り下ろしで信綱を襲い、目論見通りに身をかわした信綱が跳躍すると、切り返しを放つ。
だが、剣を振り上げつつ武蔵は予想外の事態に驚愕する。
予想外の一つは、信綱が橋の向こう側ではなく、真上に跳躍した事。
もっともそれ自体は大した問題ではない。
木刀の軽さを十分に活かした武蔵の切り返しは、疾さだけなら佐々木小次郎の燕返しにも匹敵するだろう。
故に、この一撃を空中にいながら凌ぎきる事は如何に剣聖でも不可能……それが万全の状態で放たれていたならば。
それが予想外のもう一つ。予期せぬ異変により、武蔵の切り上げの軌道は、思っていたのとは僅かにずれている。
剣を振り上げ始めた途端に異常を悟った武蔵は、眼前を過ぎる木刀の刀身に、金属片が食い込んでいるのを見た。
武蔵には知る由もない事ではあるが、それは林崎甚助の形見であり、彼の命を奪った凶器でもある長柄刀の切っ先。
見せ太刀としての切り下ろしをかわした際、信綱はそれを厳包との対決で木刀に刻まれた切れ込みに嵌め込んだのだ。
予期せぬ重心の狂いによって乱れた切り上げを空中でかわした信綱は、身を翻して木刀の上に乗る。
信綱の重さによって下がる木刀。
この状況を許しておけば、信綱が相手を殺さないように手加減したとしても武蔵の必敗。
腕に全力を込めて、信綱を木刀の上から跳ね飛ばす。
飛ばされて武蔵の背後に着地した信綱は、それ以上は戦おうとせず、厳包が倒れている方向に向かって歩いて行く。
「また後ほど」という一言だけを残して。
武蔵はそれを追わない……いや、追えなかった。
それどころか、今、信綱が踵を返して仕掛けて来でもすれば、川に飛び込んで逃れるしか手がなかっただろう。
木刀の先に乗る重量を支えるには、梃子の原理により、その重量自体の何倍もの力が必要となる。
人一人分の重量を一気に跳ね飛ばした負担で、武蔵の腕は痺れ、存分に剣を振るえなくなっているのだ。
無念の想いで睨みつける武蔵を背に、信綱は愛弟子の曾孫の元に向かうのだった。

109 :顔合わせ ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 07:19:33 ID:P3toMJII
立ち去る信綱を見送りながら、痺れた腕を見詰める武蔵。
今は十分に力が入らない状況だが、少し休めば問題なく動くようになるだろう。
しかし、この程度の被害で済んだのは、武蔵の鍛錬の結果でも、僥倖によるものですらなく、信綱の意図によるもの。
跳ね飛ばされる瞬間、信綱はうまく重量を分散して、武蔵の腕に過度の負担が掛かるのを防いだのだ。
僅かな重心の狂いで生じる隙を利用した手法は、柳生厳包との戦いで武蔵が用いた策と似ているように見えるが、
武蔵のは厳包が仕掛けのある刀を手にした偶然を利用したものなのに対し、信綱は自分でその状況を作って見せた。
あれがとうに死んだ筈の剣聖だというのを本気で信じたくなる、見事な兵法である。
武蔵にも引けを取らぬ技、知略、そして武蔵にはない活人剣の利。
敵に殺意も悪意も持たない信綱の剣は殺気を発さないのだ。
これは、武蔵のような相手の動きを予測してそれに対応する型の剣士に対しては、非常に有効な武器。
気配を察知できず、五感のみで相手の動きを探るのでは、どうしても読みに遅れと不確実性が出来てしまう。
そして信綱は、読みの微妙なずれから生じる微かな隙を、瞬時に最大限に活かす判断力をも持っている。
相手を殺さずに制するという、ただ倒すより遥かに困難な戦いを続ける事で養われた能力だろうか。
今回は自分が勝ち得なかった事を、さすがの武蔵も認めざるを得ない。
だが、負けた訳でもない。武蔵はこうして生きているのだから。
余人ならばいざ知らず、宮本武蔵を殺さずに制するなど、何者にも不可能。無論、殺す事も不可能だが。
今回の勝負で、信綱のやり方はかなりの程度まで把握できた。
相手の剣を知った後での対応力ならば、武蔵の右に出る者は無い筈。

信綱を打ち倒す策を様々に構築しながら城下に戻り始めた武蔵は、一本の木が切り倒されているのを発見。
丁度良いと、武蔵は木刀で手頃な枝を叩き折ると、木刀を捨てて、長柄刀の切っ先を使って削り始めた。
木刀を得意とする武蔵だが、やはり出来合いの物ではどうしても限界があるようだ。
膂力に優れる武蔵ならば、通常よりずっと長く重い木刀でも自在に振るえる。
自作の木刀ならば製作の過程で細部まで把握できるから、僅かな異常も素早く察知する事が出来る筈。
そして、形状を工夫する事で、今回のように余計な物を付け足されたり、逆に削られた時の影響も最小限にする事が可能。
本来、強敵との勝負では、得物の選択からじっくりと戦略を立てるのが武蔵の本来のやり方。
その場合、武器は必ずしも自作の物とは限らないが、今回のように支給される武器を選べない戦いでは自作こそが最も堅実。
最初にあの一の太刀使いの老人に会って、その技を盗むのに夢中になってしまったが、そろそろ基盤を固め直す時期か。
武蔵は腰を据えて武器の形を整え続ける。
再び立ち上がる時、彼はこれまでよりも更に一段進んだ剣客となっているだろう。

【とノ肆 川の近く/一日目/午前】

【宮本武蔵@史実】
【状態】疲労
【装備】製作中
【所持品】長柄刀の切っ先
【思考】
最強を示す
一:一の太刀を己の物とする
二:一の太刀を完成させた後に老人(塚原卜伝)を倒す
【備考】
※人別帖を見ていません。

110 :顔合わせ ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 07:21:51 ID:P3toMJII
「流石は……」
先程の戦いの場に戻った信綱は、その場に厳包の姿がなくなっているのを見て呟く。
あの強烈な打撃を受けてもう意識を取り戻したとは思いにくいが、無意識の内にこの場から脱したという事か。
誰かに運ばれたとも考えられるが、あれだけの剣士なら、敵意を持つ者に抵抗の跡もなく連れ去られる事はまずあるまい。
どちらにせよ、この分なら信綱の出る幕はないだろう。
一応の保険を掛けたとはいえ、知人に会いに行った武田赤音を放っておく訳にもいかないし。
本心を言えば、あの男の素性や剣術の由来を聞いておきたかったのだが。
柳生宗厳の一族である事は間違いないだろうが、あの異様なまでに進化した新陰流は一体……
確かに宗厳は信綱の弟子の中でも特に優れた素質を持ってはいたが、あれだけの進歩は数年ではとても不可能。
考えながら、信綱は意識せずに刀を抜き、厳包がしたような直立の構えを取っていた。
厳包が信綱に見せてくれたのは彼の新陰流の中のほんの一端。
しかし、その中からでも、この進歩を引き起こした者の思想や経験をある程度は推測する事ができる。
数少ない手掛かりから、信綱は、未来の新陰流を学び取ろうとしていた。

【へノ肆 城下町/一日目/午前】

【上泉信綱@史実】
【状態】疲労、足に軽傷(治療済み)、腹部に打撲、爪一つ破損、指一本負傷、顔にかすり傷
【装備】オボロの刀@うたわれるもの
【所持品】なし
【思考】基本:他の参加者を殺すことなく優勝する。
     一:武田赤音と合流する。
     二:宮本武蔵とはあらためて勝負する。
     三:機会があれば柳生連也斎の新陰流をもっと見たい。
【備考】※服部武雄から坂本竜馬、伊東甲子太郎、近藤勇、土方歳三の人物像を聞きました。
    ※己の活人剣で以蔵を救えず、赤音の殺人剣でこそ以蔵が救われた事実に、苦悩を抱いています。
    ※己の活人剣の今回の敗北を率直に認め、さらなる高みを模索しようとしています。

【へノ肆 民家の中/一日目/午前】

【柳生連也斎@史実】
【状態】胸部に重傷、意識朦朧
【装備】中村主水の刀@必殺シリーズ
【所持品】支給品一式、「仁」の霊珠(ただし、文字は「如」に戻っています)
【思考】
基本:主催者を確かめ、その非道を糾弾する。
一:白井亨を見つけ出し、口を封じる。
二:城に行ってみる。
三:戦意のない者は襲わないが、戦意のある者は倒す。
四:江戸柳生は積極的に倒しに行く。
【備考】※この御前試合を乱心した将軍(徳川家光)の仕業だと考えています。

111 : ◆cNVX6DYRQU :2010/10/18(月) 07:22:56 ID:P3toMJII
投下終了です。

112 :創る名無しに見る名無し:2010/10/18(月) 16:11:40 ID:U9EwzhJH
乙でした。
この4人が集まって死者が出なかったってのはすげえな。
しかしここでまだ伊勢守が成長するとは…。
というか、もしかして伊勢守も一の太刀(自己流)使えるんだろうか。

113 :創る名無しに見る名無し:2010/10/18(月) 17:57:23 ID:c6qN4Vkx
投下乙です。
確かにここまで好戦的な危険極まりない面子で死者ゼロ、なおかつ無理がない展開というのが凄い。
剣聖頂上対決に柳生と赤音の行く末といい、先が楽しみでありますなあ。

114 :創る名無しに見る名無し:2010/10/18(月) 18:00:00 ID:c6qN4Vkx
あと、伊勢守は無刀取りもあるが「合撃(一刀流で言う所の「切落」)」が使えなかったかな?

115 :名無し:2010/10/19(火) 00:01:08 ID:7but0vxk
乙です。
流石、剣聖。合撃(がっしうち)を遣わなかったのは、不殺ゆえ?
赤音…。

116 :創る名無しに見る名無し:2010/10/19(火) 00:03:12 ID:J4SRkJqx
合撃は連也の代で完成した技だから無理だろ。
まあ、そのうち覚えそうな気もするけど。

117 : ◆cNVX6DYRQU :2010/10/26(火) 07:25:55 ID:YzvDNDWx
柳生十兵衛、志村新八、オボロ、新免無二斎、佐々木只三郎で予約します。

118 :創る名無しに見る名無し:2010/10/26(火) 17:58:31 ID:1Pj0ELJ8
そういや坂本竜馬を斬った人は諸説あるけど、誰になるんだろこのばあい。
佐々木只三郎は候補者の一人だった気が…。

119 : ◆cNVX6DYRQU :2010/11/03(水) 06:48:15 ID:nFJTi66V
すいません、>>117の予約に抜けがあったので
あらためて、柳生十兵衛、志村新八、オボロ、新免無二斎、佐々木只三郎、富士原なえかで予約し直します。

120 : ◆cNVX6DYRQU :2010/11/03(水) 06:49:22 ID:nFJTi66V
上記六名で投下します。

121 :悪夢の終わり ◆cNVX6DYRQU :2010/11/03(水) 06:53:27 ID:nFJTi66V
柳生十兵衛、志村新八、オボロの三人は、北からやって来た男と向き合っていた。
殺気はないが、その強烈な存在感を隠す事もせずに堂々と街道を歩いて来た男。
いつ誰に襲われるかわからないこの殺し合いの場では、ある意味、隠れ潜みながら近付いて来るよりも剣呑な態度と言えよう。
ただ一つ安心材料は、男が持つのが通常の剣術には向かない大剣で、男もそれを少々持て余しているように見える事か。
「失礼だが、御尊名を伺いたい」
「新免無二斎と申す」
十兵衛の問いにあっさりと返す無二斎だが、その名乗りは、十兵衛にとって十分に衝撃的なものであった。
「ほう、それは……それが真なら、お会いできて光栄」
「あの、知ってる人ですか?」
「知らぬか?新免無二斎殿と言えば、かの宮本武蔵殿の父御だ」
ひそひそと聞いて来る新八に囁き返す十兵衛。
「み、宮本武蔵って、どう考えても年代が合わないじゃないですか。ま、まさか、幽霊?」
そう、問題はそこだ。
十兵衛とて無二斎の生没年まで知っている訳ではないが、彼の認識によれば、息子の武蔵ですら既に老人に近い。
まして、足利義昭が将軍として京にいた頃に、その御前で戦ったという話が事実であれば、存命だとしても相当に高齢の筈。
なのに目の前の男は、老人どころかまだ青年と言って良い年齢に見える。
とするとこの男は新八の言うように幽霊か、より現実的に考えれば騙り者という事になるが……
だが、十兵衛には目の前の男の存在感が亡霊のものとは思えなかったし、すぐばれる嘘をつくような底の浅い男にも見えない。
そういう訳で対応を決めかねていると、太鼓と鐘の音がこの場にも鳴り響いたのだった。

刻を告げる音と同時に響いて来た声によって告げられる二十三名もの死者。
数刻前に立ち合った強敵を含むその名前を、特に感慨も見せる事もなく聞き流して行く無二斎。
新八とオボロは、知り合いの名が呼ばれなかった事にほっとしつつ、多すぎる死者に怒りを……新八は怖れも……露わにする。
対して、十兵衛は、呼ばれた名の内の幾つかに注目していた。
師岡一羽・斎藤伝鬼坊・佐々木小次郎……いずれも、とうに死没した筈の剣豪達だ。
ここまで続くと、目の前の無二斎も本物、つまり、この御前試合には死んだ筈の剣客が何人も参加していると考えるべきか。
異常な事態ではあるが、異常と言うなら、あの父が……柳生但馬守がこんな事に加担している事がそもそも異常。
だが、主催者に死者を蘇らせるような尋常でない術者がいるなら、或いは父を動かす事も可能かもしれない。
そう結論し、無二斎に、そしてこれから死んだ筈の剣豪を名乗る者に出会った場合も、本物として接する事にした十兵衛。
「無二斎殿。我等はこの御前試合なるものを叩き潰す為に動いている。宜しければ同行して下さらぬか?」
十兵衛も無二斎の人格までは知らないし、噂に聞く武蔵の容赦のない行いを考えても、新八を預けるには不安が残る。
しかし、三人を前にしてのこの態度を見ても、あんな脅しに乗せられて諾々と主催者に従うような者でないのは明らか。
主催者に父以外にも油断ならない者がいるとわかった以上、一人でその全てを相手するのは難しいだろうし。
そのような思惑で十兵衛は無二斎を誘ったのだが……
「『我等』か。その中には、そこに隠れている者も含まれているのか?」
無二斎の視線に誘われ、その場にいる全員が一箇所に目を遣ると、それを合図としたように、木陰からその男が襲って来た。

「がっ!」
いきなり飛来した鞘に直撃され、あっさりと気絶する新八。
それを追うように飛び出してきた男の剣を辛うじて止め、突き放す十兵衛。
(この刀は……)
十兵衛自身の愛刀とよく似た三池典太独特の作風、太刀と呼ぶには短い刀身と、恐ろしいほどに研ぎ澄まされた刃。
(まさか、権現様の……!?)
久能山に祀られている筈の宝刀をこの島に持ち込んだのだとすれば、やはり主催者は只者ではないという事か。
(いや、それよりも今は……)
十兵衛は気を取り直して目の前の相手と向き合う。
実際、この男は相当の遣い手。間合いの点で不利な筈の短い刀の弱点を、逆に強みに変えられるだけの腕があるようだ。
未だ見ぬ主催者に気を取られて注意を逸らせば、あっさりと懐に入り込まれて切り刻まれかねない。
顔色の悪さは精神の憔悴を表してはいるが、心を蝕む悪夢が剣士を進歩させる事は、十兵衛自身が身を以って知っている事。
心の中で己を叱咤すると、十兵衛は目前の相手に気合を向け直す。


122 :悪夢の終わり ◆cNVX6DYRQU :2010/11/03(水) 06:55:32 ID:nFJTi66V
「貴様も、死人なのか?」
「さて、どうかな。そうかもしれぬ」
睨み合いの中、佐々木只三郎が思わず発した問いに、はっきりしない答えを返す隻眼の男。
からかわれているのかと歯噛みしつつ、相手の片目による死角へと回り込む只三郎。
その情勢を見て頬被の男が前に出ようとするが……
「オボロ、俺よりも新八を頼む!」
気配でその動きを察したらしい隻眼の男がそれを止める。
新八というのは最初に倒した眼鏡の少年だろうが、隻眼の男は、その少年を誰から守ろうとしているのだろうか。
もし只三郎だけを警戒しているのならば、二人で掛かってしまえば、只三郎も倒れた者に止めを刺す暇などあるまい。
只三郎が手裏剣でも持っていれば話は別だが、それなら最初に鞘などを投げる必要がなかった事は容易にわかる筈。
とすると、隻眼の男が警戒しているのはもう一人の、大剣の男。
距離があったのと、妖術師の声が重なっていたせいで彼等の会話は聞き取れなかったが、信頼関係がある訳ではなさそうだ。
現に、眼鏡の少年が倒され、只三郎と隻眼の男が睨み合っている今でも、大剣の男は動こうともしないし……
(うっ)
ふと大剣の男に目を遣った只三郎は、男と目が合い、強烈な警戒感を掻き立てられる。
こちらを見詰める男の目は、冷徹そのもの。
戦う只三郎と隻眼の男の剣の全てを見切り、弱点を見出そうとする勝負師の目だ。
只三郎としては、ここで全員と闘うつもりではなく、奇襲の勢いで一人斃すか手負わせれば充分と思っていたが、甘かったか。
隻眼の男との戦いで剣を見せすぎれば、後で参加者を一人減らしたのとでは割に合わない不利を蒙る事になるかもしれない。
只三郎は僅かに位置を変え、大剣の男から見て隻眼の男の影になる位置に入ろうとするが……

(!!こいつ……)
隻眼の男は、只三郎が位置を変えたのに応じて自身も僅かに体勢を変える。
但し、只三郎が大剣の男から隠れるのを妨げようと言うのではなく、只三郎を自身の隻眼の死角に入れたのだ。
この分だと、先程、只三郎が隻眼の死角を取れたのも、この男がそう誘導しての事という事か。
つまり、この男は、隻眼の剣士と闘う時にはその死角に入るべし、という定石を逆手に取った剣を使うらしい。
確かに、剣客同士の勝負では多彩な状況が有り得、その全てに対応する技を編み出すのは至難の業。
彼我の位置関係だけでも特定でき、その状況に限定して技を磨けば、その条件を満たす間の技の冴えは相当のものになろう。
それこそ、視覚で直接的を捉えられない事による不利など、簡単に取り返せる程に。
相手の狙いがわかったからには位置関係を変えてしまいたい所だが、敵に死角があればそこを衝くのが、いわば剣の正道。
前から訓練していたならともかく、付け焼刃で無理に正道を外せば、どうしても剣に歪みが生まれる。
つまり、どちらにせよ不利なのは変わらないという事か。
だが、不利な点が何処かさえわかっていれば、やりようはいくらもある。
何しろ、只三郎には徳川の加護がついているのだから。

123 :悪夢の終わり ◆cNVX6DYRQU :2010/11/03(水) 07:00:04 ID:nFJTi66V
ソハヤノツルギの横薙ぎを十兵衛が外し、反撃の突きを只三郎は回転してかわす。
その勢いで剣を振り下ろす只三郎だが、僅かに軌道が甘い。
すかさず十兵衛も真っ向から振り下ろし、只三郎の剣を切り落とすと同時にその拳を削らんとする。
だが、十兵衛の剣は只三郎の拳に触れる前に止められた。
剣を止めたのは、只三郎が持っていたエペの柄。
その、葵の紋が入った護拳を手の中に握り込み、柄の部分で剣を止めたのだ。
只三郎の振り下ろしがぶれたのも、こんな物を握って剣の握りが緩くなった事による、いわば作られた隙。
エペの柄は剣を受ける事を想定したものではないが、元々拳を削るのに大した威力は必要ないし、
太刀の間合いの内側に潜り込まれない為に身を引きながらの一撃であったせいで、どうしても剣勢が弱くなる。
エペの柄という隠し球、そして、僅かな応酬で十兵衛が柳生新陰流だと見抜いた知識を最大限に活用した秘策だ。
そうして上手く十兵衛の剣を止めた只三郎は、一瞬の内に素早く間合いを詰めた。
小太刀の距離で只三郎と渡り合う愚を悟っている十兵衛は、何とか只三郎を止め、突き放そうと苦闘する。
剣を絡ませたまま横に走り、半回転し、後ずさり、やっと只三郎を突き放した時、十兵衛は目の前に無二斎が居る事に気付く。
無論、これは只三郎が仕向けた事。二人は今、無二斎を挟んで向かい合っていた。
無二斎の目的があくまで自分達の剣を見る事であって、十兵衛の助太刀に回る事はないと見切った上での行動だ。
案の定、無二斎は目の前を通る十兵衛を見詰めるだけで、背後を駆け抜ける只三郎に攻撃する気配はない。
加えて、さすがに剣を向けられれば無二斎も黙って居ないだろうから、互いに対して構える事も不可能。
二人は素早く無二斎の陰から出て、それから剣を構えるが、構えて攻撃する素早さなら、大刀より小太刀の方が絶対に有利。
エペの柄をしまった只三郎は、十兵衛よりも一瞬早く、一撃を放った。

「!?」
只三郎は目を瞠る。遅れて放たれた十兵衛の剣が只三郎の剣を打ち落とし、その腕を襲ったのだ。
剣の間合いの差がここでは只三郎に味方し、指や拳を傷付けられる事はなかったが、それでも軽い傷ではない。
「くっ!」
今度は横薙ぎで攻める只三郎だが、結果は同じ。
「ほう……」
無二斎が思わず感嘆の声を上げる程に、十兵衛の剣は、先程よりも明らかに鋭さを増していた。
ここに来ての、いきなりの十兵衛の進歩、これは実は、無二斎を盾として使うという、只三郎の戦術が生んだと言える。
と言っても、無二斎が十兵衛の手助けをしたという訳ではない。
十兵衛を助けたのは剣。破邪の剣である源氏の重宝村雨が、奇瑞を示したのだ。

124 :悪夢の終わり ◆cNVX6DYRQU :2010/11/03(水) 07:04:26 ID:nFJTi66V
先程、只三郎に死人かと問われた時、十兵衛は否定しなかったが、それは必ずしも韜晦ではない。
十兵衛は、日頃から常に死人に囲まれて生きて来たのだから。
何時の頃からだったか、十兵衛の身辺に地獄の鬼や亡者が跳梁するようになったのは。
初めの内は十兵衛も現れる鬼達を一々斬り捨てたものだが、際限のなさに諦め、彼等に囲まれる生活を受け入れた。
地獄の住人に苛まれ続ける中、時に、自分も気付かないだけで既に死んで亡者の仲間に入っているのでは、と思う事もある。
一方で、常に地獄の光景に苛まれる生活が心の鍛錬となり、十兵衛の新陰流が独自の境地を開く助けとなった一面もあろう。
だが、真剣勝負の場においては、彼等は十兵衛の集中を掻き乱し剣を鈍くする邪魔者でしかない。
そこで、妖怪に対して絶大な威力を発揮する神剣村雨が十兵衛の助けになった、という訳だ。

鬼も亡者も六道の一つ地獄道の正規の住人な訳で、それを妖怪と呼んで良いのかは疑問が残るところだが、
地獄に居る筈の者が地上に現れればそれは妖であり、妖が怪異を為して人を悩ませば、まあ妖怪と言っても良かろう。
それにそもそも、十兵衛の周りで踊り狂っていた者達が本当に地獄の住民なのか、という問題もある。
参加者の中には妖怪や術者の知る辺が居る者や、神の加護を受ける者も居るが、それらの存在もこの島に手出し出来ずにいる。
なのに、十兵衛を苛む者達だけが容易く十兵衛と共にこの島に入り込める、などという事が有り得るのか。
まあ、地獄の住人は、天人の一生ですら須臾に思える程の悠久の時を刻む世界で、永劫に近い生を過ごす者達。
しかも、その時間を、人間界の修行者よりも遥かに高次な苦行を積みながら過ごしているという見方も出来る訳で、
亡者が神を遥かに上回る通力を持っているという事も、有り得なくはないかもしれない。
だがその場合、それ程の存在が侵入して来て、島を覆う妖気と何の角逐もないというのは余りに不自然。
とすると、導かれる結論は実に単純。即ち、この鬼や亡者は十兵衛の心が生んだ幻影ではないかというものだ。
もしそうなら、人の心が生み出し、人を苦しめる存在……それは正に、真の意味での妖怪と言えよう。
それだからか、単に神剣の力が悪しき者全てに有効だったからか、村雨は十兵衛に憑いた者達を容易く切り裂いた。
十兵衛が無二斎の前を横切り、無二斎の傍で敵と対峙しているだけで、踊り回る亡者達は勝手に村雨に触れ、滅して行く。
そして十兵衛は、亡者達に悩まされる事で得た剣技を、万全な状態で振るえる機会を、遂に得る。

上で述べたような事情は只三郎には知る由もないが、十兵衛の技量が飛躍的に上昇したのはわかっている。
だが、只三郎はそう簡単に退く訳にはいかない。
鞘を失い、剣を見せ、手傷を負い……それで戦果もなく逃げる体たらくでは、優勝など到底不可能。
目の前の相手だけでも倒さんと、無二斎の事もオボロや新八の事も忘れ去り、十兵衛に全神経を集中させる。
或いは、亡者を喪った事で、十兵衛が技の冴えと共に人がましい心まで僅かに取り戻してしまった事を直感的に悟ったのか。
技ではなく、決死の覚悟をぶつける事にのみ勝機があると読んだ只三郎は、防御を捨てた全力の突きを繰り出す。
その突きを叩き落そうとする十兵衛だが、必死の想いに支えられた剣を逸らすのは、今の十兵衛にとっても困難。
二人の力が拮抗し……
「気を付けろ!」
オボロの警告の声が辺りに響いた。

125 :悪夢の終わり ◆cNVX6DYRQU :2010/11/03(水) 07:10:49 ID:nFJTi66V
富士原なえかは、未だ悪夢の中から脱する事が出来ずに居る。
蝦蟇に苛まれ、重荷を背負いつつさ迷い歩くなえか。
家族、友人、それにこの島で出会った清河八郎……亀裂の向こう側には、次々となえかの記憶にある者が現れ続けていた。
しかし、彼等はなえかを哀れむように、蔑むように見詰めるだけで、苦しむ彼女を助けてはくれない。
だが、ふらふらと歩く内に、遠く……亀裂の向こうの更に先に微かな光が見え、それに感応するが如く、懐中に温かみが宿る。
遠くの光と身体に感じられる熱は、何かを訴えかけて来るようで、なえかは一瞬、使命感のようなものを感じ取った。
それはただの錯覚。だが、それでなえかは、己に足りないものに本能的に気付く。
彼女が憧れる戦国武将、剣豪、志士……その多くが一人どころでない命を手に掛けた人殺し。
しかし、彼等は罪悪感に押し潰され掛けているなえかとは違う。彼等は、なえかが持っていない物を持っているから。
それは信念、信条、自信。己の行為が、殺人という禁忌を犯すに足る理由を持つと信じられる心だ。
国の為、剣の為、思想の為、野心の為、欲望の為……その目的が絶対の物だと思えるからこそ、彼等は殺人を怖れない。
なえかも、それが欲しいと思った。
戦う理由、その為なら倫理を踏み躙っても構わないと信じられ、人殺しである自分を許せるような理由が。
だが、なえかにそんな物が持ち得るのか。
何の前触れもなく連れて来られ、清河八郎が死んで知り合いの一人すら居なくなったこの島で。
島に来た当初は、強い剣士と闘ってみたいなどと思っていたが、その程度の理由で殺人を肯定できる程、彼女は強くない。
理由を見つけられないまま、無意識に光を求めて歩みを進めるなえか。
と、記憶にある顔が入れ代わり立ち代り現れていた彼岸に、なえかは二度と見たくなかった顔を見付ける。
清河を襲撃し、おそらくは殺害したのであろうあの男。
なえかが男を忌み嫌う気持ちとは裏腹に、身体は男に近付く事を求め、更に足を早めた。
命の恩人である清河の仇討ち……確かに、これならなえかが戦う理由になるかもしれない。
しかし、人殺しという点では男もなえかも同じだし、正当防衛気味に一人を殺しただけで打ちのめされているなえかに、
積極的にあの男を探し出して討つ、などという真似が果たして出来るかどうか……
少なくとも、そんな事をすれば、男と並んでなえかを見ている家族や友人と、元の関係には二度と戻れなくなるだろう。
だから、あの男の存在がなえかの救いになるかは微妙なのだが、それでもなえか一縷の希望に縋るように近付こうとした。
無論、亀裂で隔てられた先にいる男に歩いて近付ける筈もなく、なえかが進む分だけ男は遠ざかって行く。
但し、なえかが歩き続けている事は、実は無駄にはなっていない。
彼岸には近付けずとも、その更に先にいる光は、彼岸の者達のように逃げる事なく、なえかが進むにつれて近付いて来る。
そして遂に、光がなえかを照らした時、なえかの世界は劇的に変化を遂げた。
重荷となってなえかを苛んでいた蝦蟇、哀しげに人殺しとなったなえかを見詰めていた人々、彼女の行く手を遮っていた亀裂。
その全てが、光に照らされた途端に消え去ったのだ。
残ったのは、なえかを叱咤するかのように剣の形を取った光、なえかを鼓舞するかのように懐中で熱く光る珠、
光が剣を象るのを見て漸くその存在を思い出した手の中の剣、そして、全ての人々が消える中で何故か一人だけ残ったあの男。
この全てを認識した瞬間、なえかの身体は自然と動いていた。

126 :悪夢の終わり ◆cNVX6DYRQU :2010/11/03(水) 07:13:00 ID:nFJTi66V
「気を付けろ!」
オボロの声が響くが、全力で只三郎の刺突に抗している最中の十兵衛は、容易には動けないし、
十兵衛に全神経を集中しきった只三郎には、オボロの声も、近づいて来る者の存在も認識すら出来ない。
只三郎も十兵衛も反応できぬままに、飛び込んで来た人影と決闘の場が交錯した瞬間、只三郎の身体が両断された。
「見事!」
思わず、十兵衛が呟く。
飛び込んで来た少女の、殺気も作為も感じさせないままに只三郎を両断して見せた剣は十兵衛から見ても相当のもの。
父宗矩も一目を置く剣豪小野次郎右衛門が、かつて語ってくれた一刀流夢想剣を思い起こさせる程だ。
しかし、この高名な剣客の折角の褒め言葉も、今の少女……富士原なえかには届かない。
夢遊の内に剣を振るって清河の仇を討ったなえかは、それで満足したのか、再び眠りの世界へ舞い戻ったのだから。

【佐々木只三郎@史実 死亡】
【残り四十八名】

【にノ参 街道脇/一日目/朝】

【柳生十兵衛@史実】
【状態】健康、潰れた右目に掠り傷
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:柳生宗矩を斬る
一:できれば無二斎に同行してもらう
二:信頼できる人物に新八の護衛を依頼する
三:城下町に行く
【備考】
※オボロを天竺人だと思っています。
※五百子、毛野が危険人物との情報を入手しましたが、
 少し疑問に思っています。

【志村新八@銀魂】
【状態】気絶
【装備】木刀(少なくとも銀時のものではない)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:銀時や土方、沖田達と合流し、ここから脱出する
一:銀時を見つけて主催者を殺さなくていい解決法を考えてもらう
二:十兵衛と自分の知っている柳生家の関係が気になる
三:「不射之射」か…
四:天人まで?
【備考】※土方、沖田を共に銀魂世界の二人と勘違いしています
※人別帖はすべては目を通していません
※主催の黒幕に天人が絡んでいるのではないか、と推測しています
※五百子、毛野が危険人物との情報を入手しましたが、
 疑問に思っています。

127 :悪夢の終わり ◆cNVX6DYRQU :2010/11/03(水) 07:14:25 ID:nFJTi66V
【オボロ@うたわれるもの】
【状態】:左手に刀傷(治療済み)、煤、埃などの汚れ、顔を覆うホッカムリ
【装備】:打刀
【所持品】:支給品一式
【思考】
基本:男(宗矩)たちを討って、ハクオロの元に帰る。試合には乗らない
一:城下町に行く。
二:五百子、毛野を警戒。
三:トウカを探し出す。
四:刀をもう一本入手したい。
五:頬被りスタイルに不満
※ゲーム版からの参戦。
※クンネカムン戦・クーヤとの対決の直後からの参戦です。
※会場が未知の異国で、ハクオロの過去と関係があるのではと考えています。

【新免無二斎@史実】
【状態】健康
【装備】十手@史実、村雨@里見☆八犬伝
【所持品】支給品一式
【思考】:兵法勝負に勝つ
一:柳生十兵衛・オボロ・富士原なえかの剣を観察する
二:隙を見せる者が居たらとりあえず斬っておく
三:もう少し小さな刀が欲しい

【富士原なえか@仮面のメイドガイ】
【状態】足に打撲、両の掌に軽傷、睡眠中、罪悪感
【装備】壺切御剣@史実
【所持品】支給品一式、「信」の霊珠
【思考】
基本:戦う目的か大義が欲しい。

128 : ◆cNVX6DYRQU :2010/11/03(水) 07:15:48 ID:nFJTi66V
投下終了です。

129 :創る名無しに見る名無し:2010/11/03(水) 09:35:17 ID:gYD7RY03
な、なんだってー?
不意を討たれたからとはいえ、只三郎がこうもあっさりと…。
あと無二斎の状態表、さりげなくえぐい事考えてやがる。

ともあれ、投下乙です。
wikiの更新も急がねばなりませんな。

130 :創る名無しに見る名無し:2010/11/03(水) 19:16:19 ID:YNpuroAO
投下乙です

131 : ◆cNVX6DYRQU :2010/11/13(土) 22:54:22 ID:RQB2ptXE
秋山小兵衛、徳川吉宗、魂魄妖夢、志々雄真実で予約します。

132 :創る名無しに見る名無し:2010/11/14(日) 10:04:23 ID:fgv1jzBo
連続の予約乙であります。
最近、雑談が少ないな…。

こう、剣術っぽい話をしたいものだが。

133 : ◆cNVX6DYRQU :2010/11/21(日) 10:19:34 ID:zibQdRti
秋山小兵衛、徳川吉宗、魂魄妖夢、志々雄真実で投下します。

134 :妖薙ぎの剣 ◆cNVX6DYRQU :2010/11/21(日) 10:25:26 ID:zibQdRti
「何もないみたいね」
「ふむ……」
日の出後に樹てた戦略に従い、秋山小兵衛・徳川吉宗・魂魄妖夢の三人は、地図上のほノ伍にあたる地域を調べていた。
調査の対象となるのは、面積にして百町にも足らない狭い範囲だが、二刻に大きく足らない時間では調べきれる筈もない。
だから、彼等の調査は対象区域の表面をなぞった程度でしかなかったが、その限りでは特に何も見つけられずにいる。
「やはり、何か起きるのは巳の刻を過ぎてからか」
「でも、ここの地形がわかっただけでも、来た甲斐はあったわ」
確かに、巳の刻以降にこの辺りが戦場になる場合に備えて、地形を下調べしておくと言うのも、彼等の目的の一つではあった。
特に、不可思議な力で飛行と遠距離攻撃を封じられた今の妖夢にとっては、地形を熟知しておくのは常以上に重要な事。
一面に生える草の中に隠れた穴や大きな石、微妙な傾斜などを出来る限り頭に入れて行く。
「小兵衛、どうかしたか?」
そんな中、一人黙って考え込む小兵衛に、吉宗が声を掛ける。
「はあ……」
実は、小兵衛はこの一見何もなさそうな地帯に、一つの異変を見出していた。
確証が得られないので黙っていたのだが、ここは打ち明けて意見を聞いてみるべきかと思い直す。
優れた為政者であり君主である吉宗と、幻想郷なる異界に住む半人半霊の少女妖夢。
一人で思い悩むより、一介の剣客である小兵衛にはない視点を持つであろう二人に相談する方が得策かもしれない。
だが、小兵衛が口を開こうとした瞬間に現れた男が、彼がそれを口にする機会を永遠に奪ったのであった。

「戦いの前に下調べとは、いい心掛けだな。だが、実際に戦ってみなければ、地形を把握できたとは言えないんじゃねえか?」
声と共に、濃い茂みの中から立ち上がる志々雄真実。その殺気と、既に抜き放たれた利刃を見れば、その意図は明らか。
「俺が行こう」
吉宗が他の二人を制して前に出、刀を抜くと刃を返す。
小兵衛は先に闘っているし、妖夢は本来の力を封じられて全力を出せなという。
だから、三人の中で誰か一人が闘うならば、吉宗が出るのは妥当な選択と言えるかもしれない。
しかし、どうして三人ではなく、一人だけが戦う必要があるのか。
剣客として、多勢で一人にかかるのを厭う気持ちが彼等になかったと言えば嘘になる。
だが、それよりも、彼等は志々雄の行動に強い警戒感を抱いていたのだ。
あの時、三人は志々雄が自ら姿を現すまでその存在に気付けなかった。
三人で動き回る吉宗等に、一人で留まっていた志々雄が先に気付き、気配を消したのだろうから、そこまでは納得が行く。
しかし、志々雄はどうして、隠れたまま三人を奇襲せず、堂々と姿を現したのか。
自信家で奇襲などという手を嫌ったとすると、今度は志々雄が最初に気配を消していた事が説明できない。
最も納得が行く説明は、志々雄は彼等を此処に来させる為に隠れて待ち受けていたというものだ。
その場合、この場所に何らかの罠が隠されている公算が高いだろう。
三人で一斉に掛かれば、揃って罠にかかる危険も大きくなる。
故に彼等は、まずは吉宗が一人で闘い、他の二人がそれを見守って志々雄の策を警戒する策を取った。
数の上の優位を捨てる事も頼り切る事もない慎重な構え。だが……

135 :創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 10:25:39 ID:QXGDgoOB
支援

136 :妖薙ぎの剣 ◆cNVX6DYRQU :2010/11/21(日) 10:35:44 ID:zibQdRti
睨み合いつつ、少しずつ位置を変えていく吉宗と志々雄。
この動きを主導しているのは吉宗。にもかかわらず、吉宗は志々雄への警戒を強めて行く。
吉宗と志々雄の初期の位置関係は、吉宗から見て志々雄が南東から南南東の方角。
つまり、巳の刻に近づく今の時間、志々雄の位置は太陽を背にする位置であり、加えて、丁度風上にも当たっていた。
この明らかな有利を、志々雄はさして粘りもせずに手放し、今では日の光も風も横合いから受けるようになっている。
やはり何かを企んでいる……その確信に、歴戦の戦士に似合わず緊張したのか、口の中が乾くのを自覚する吉宗。
ここでやっと志々雄が動き、吉宗に剣を振り下ろした。
志々雄の斬撃を吉宗が弾き、二人の剣が火花を散らす。
次の瞬間、志々雄の剣が炎に包まれ、さすがの吉宗も驚いて身を引き、防御の構えを取る。
だが、志々雄は吉宗を追わない。身を翻すと横合いの、つまりは小兵衛達が居る方向の草を燃え上がらせる。
「小兵衛、妖夢!」

(しまった!)
慌てて剣を抜き放ち、周囲の草を切り払いながら小兵衛は心中で舌打ちした。
草の生い茂るこの場所まで敵を誘き出し、炎で攻めるのが志々雄の戦略だったのだ。
無論、この程度の火攻めなら、普通ならば小兵衛と妖夢が力を合わせれば楽に切り抜けられた筈。
だが、今回は火の回りが恐ろしくに速い。
原因は、周囲の草の極端な乾燥。そして、これこそが、小兵衛が感じ取りながら言えずにいた、異変の兆候だったのだ。
ほノ伍に踏み込んで以来、調査をしつつ進むにつれて、大気に、大地に、草木に含まれる水分の枯渇が感じられた。
もっとも、時刻が昼に近付けば湿度が下がるのは当然だし、大地や草木の乾燥も、単に場所ごとの水はけの差とも考えられる。
だから、小兵衛も確信が持てずにいたのだが……
対する志々雄は、おそらく一箇所に留まって草木や大地が水分を奪われるのを正確に観察していたのだろう。
そして、吉宗と睨み合いながらも乾燥の進行を密かに測り、攻勢に出る最良の機会を狙っていた。
それが成功した事は、火が燃え広がる絶妙の速度を見れば明らか。
二人ではどうやっても乗り切れないが、すぐに三人で協力すれば或いは、と思わせるだけの速さ。
「こちらを気になさるな!」
駆け寄ろうとした吉宗に小兵衛は叫ぶが、そんな事が無理なのはわかっている。
かと言ってこの状況を切り抜ける妙策もない。
小兵衛は歯噛みしつつ、何とか妖夢だけでも火を抜けさせる手立てを考えていた。

志々雄の鋭い一撃を何とかいなす吉宗だが、完全には捌ききれずに袖口を掠られた。
単純な腕前だけならば、吉宗のそれは決して志々雄に劣るものではないだろう。
斬鉄剣の凄まじい切れ味と炎を操る技は確かに脅威ではあるが、吉宗には延べ数万にも及ぶ真剣勝負の経験がある。
だから、本来ならばかなりの接戦になるであろう勝負だが、この状況で吉宗が実力を十全に発揮できる筈もない。
小兵衛や妖夢を早く助けようと焦り、その焦りが吉宗を二人から遠ざけていた。
吉宗は激しく志々雄に打ち込むが、数合の後、遂にその刀が半ばからへし折れる。
斬鉄剣の切れ味はすぐに察知して気を付けていた吉宗だが、斬鉄剣は切れ味のみならず耐久力でも非常に優れた剣。
加えて、吉宗は剣の刃を反して闘っていたが、日本刀とは本来、峰の部分への打撃に非常に弱い物。
吉宗がいつも使っている刀は、征夷大将軍の佩刀だけあって、相当の業物ばかり。
加えて、吉宗の普段の行いを良く知る友にして優れた剣客でもある山田朝右衛門が、特に頑丈な剣を選んでいた。
その刀を使う限り、吉宗が峰打ちで数十人の敵を次々と打つ、という無茶な使い方をしても、特に問題はなかったのだが……
吉宗が焦りから、今の刀が普段とは違い、並の刀でしかないのを忘れて思い切り叩き付けた結果、剣はあっさり折れたのだ。
刀を折られたり奪われた経験は吉宗にも幾度もあり、そんな時の対処法もきちんと心得てはいる。
だが、炎に巻かれようとしている仲間を気に掛けながらの戦闘では、とてもその経験を活かすどころではない。
志々雄の追撃を折れた剣で何とか受け止める吉宗だが、着実に追い込まれつつあった。

137 :創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 10:37:19 ID:QXGDgoOB
支援

138 :妖薙ぎの剣 ◆cNVX6DYRQU :2010/11/21(日) 10:38:46 ID:zibQdRti
「妖夢、わしが合図をしたら一気に炎を駆け抜けて風上に回れ」
小兵衛にそう言われて、妖夢は眉を顰めた。
炎を突っ切るのを恐れた訳ではない。小兵衛の声に、悲壮な色を感じたのだ。
そもそも、今のままでは如何に妖夢でも炎を抜けるのは不可能で、一瞬でも火勢を弱める必要がある。
だが、乾き切った環境で燃え盛る炎に、如何なる策を用いれば勢いを削げるのか。
簡単に思い付く手は、手近な唯一の水源、即ち、大半が水分で構成されている人間の身体を用いる事。
実際に小兵衛がそんな事を考えているかはわからないが、もしそうだったら妖夢としては座視する訳にはいかない。
剣を構えて精神を集中させる妖夢。
今の妖夢は力を封じられ、弾幕で炎に対抗する事も、飛行して小兵衛と共に炎から脱する事も不可能。
その状況は何も変わっていないし、むしろ、先ほどから周囲を覆う妖気が、湿度と反比例して濃くなっているとすら思える。
それでも、今は不可能でもやるしかないのだ。妖夢は、裂帛の気合と共に剣を振り切った。

(出来た!?)
自身と仲間達の危機が、妖夢の気力と剣技を常よりも飛躍的に高めたのであろうか、
或いは、気体が凝縮して液体となり凝固して固体となるように、濃密になった妖気がそれで却って斬り易くなったのか。
とにかく、妖夢の振るった兼定は、確かに妖気を切り裂き、大きな切れ目を作ったのだ。
当然、そこにはすぐに周囲の妖気が流入して埋められるが、少なくともそれまでの一瞬、妖夢は妖気から解放された。
今はそれで十分。一瞬の間に、無数の弾幕が放たれ、炎はたちまち掻き消される。
「ふう……」
火が消えたのを確認すると、全精気を込めた一閃の疲れが漸く妖夢を遅い、その場に膝を付く。

「何!?」
妖夢の、彼からすれば奇怪な技を見て、さすがの志々雄もそちらに気を取られる。
火を消した後に更に志々雄を攻撃する余裕は妖夢にもなかったが、僅かに気を逸らしただけでも十分。
小兵衛達が助かって心配事もなくなった吉宗は、志々雄の一瞬の隙を逃さずその腕を掴み、格闘戦に持ち込む。
柔術の一手で崩しに掛かるのを、志々雄はどうにか堪えるが、次いで吉宗は力任せに投げに掛かる。
吉宗は若い頃、本職の力士と相撲を取り、これを破る程の大力を誇ったという。
当事の紀州藩の相撲と言えば、相撲中興の祖と言われる鏡山沖之右衛門などを抱え、強豪が揃っていた。
そんな相手に素人でありながら勝ったというだけで、吉宗の膂力の程がわかろうというものだ。
これには、非力には程遠い志々雄でも耐え切れず、地面に投げ倒される。
だが、実戦では相手を地に倒してもそれで終わりではない。
体格と筋力の優位を活かして押さえ込もうとする吉宗に対して、志々雄は貫き手や噛み付きといった剣呑な技で迎え撃つ。
妖夢の無事を確かめて駆け付けた小兵衛が、容易に手が出せない程に激しく揉み合う二人。
そうしている内に、遂に、鐘の音が……巳の刻を告げる鐘の音が鳴り響く。
ほぼ同時に、「それ」がやって来た。

139 :妖薙ぎの剣 ◆cNVX6DYRQU :2010/11/21(日) 10:40:20 ID:zibQdRti
【ほノ伍 草地/一日目/昼】

【志々雄真実@るろうに剣心】
【状態】疲労中、軽傷多数
【装備】斬鉄剣(鞘なし、刃こぼれ)
【道具】支給品一式
【思考】基本:この殺し合いを楽しむ。
一:徳川吉宗、秋山小兵衛、魂魄妖夢を殺す。
二:土方と再会できたら、改めて戦う。
三:無限刃を見付けたら手に入れる。
※死亡後からの参戦です。
※人別帖を確認しました。

【徳川吉宗@暴れん坊将軍(テレビドラマ)】
【状態】健康
【装備】打刀(破損)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者の陰謀を暴く。
一:小兵衛と妖夢を守る。
二:主催者の手掛かりを探す。
三:妖夢の刀を共に探す。
【備考】※御前試合の首謀者と尾張藩、尾張柳生が結託していると疑っています。
※御前試合の首謀者が妖術の類を使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識。
及び、秋山小兵衛よりお互いの時代の齟齬による知識を得ました。

【秋山小兵衛@剣客商売(小説)】
【状態】腹部に打撲 健康
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】基本:情報を集める。
一:妖夢以外にも異界から連れて来られた者や、人外の者が居るか調べる
二:主催者の手掛かりを探す。
【備考】
※御前試合の参加者が主催者によって甦らされた死者かもしれないと思っています。
 又は、別々の時代から連れてこられた?とも考えています。
※一方で、過去の剣客を名乗る者たちが主催者の手下である可能性も考えています。
 ただ、吉宗と佐々木小次郎(偽)関しては信用していいだろう、と考えました。
※御前試合の首謀者が妖術の類を使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識を得ました。

【魂魄妖夢@東方Project】
【状態】疲労
【装備】無名・九字兼定
【所持品】支給品一式
【思考】基本:首謀者を斬ってこの異変を解決する。
一:この異変を解決する為に徳川吉宗、秋山小兵衛と行動を共にする。
二:愛用の刀を取り戻す。
三:主催者の手下が現れたら倒す。
三:自分の体に起こった異常について調べたい。
【備考】
※東方妖々夢以降からの参戦です。
※自身に掛けられた制限に気付きました。
 制限については、飛行能力と弾幕については完全に使用できませんが、
 半霊の変形能力は妖夢の使用する技として、3秒の制限付きで使用出来ます。
 また変形能力は制限として使う負荷が大きくなっているので、
 戦闘では2時間に1度程しか使えません。
※妖夢は楼観剣と白楼剣があれば弾幕が使えるようになるかもしれないと思っています。
※御前試合の首謀者が妖術の類が使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識を得ました。

140 : ◆cNVX6DYRQU :2010/11/21(日) 10:41:14 ID:zibQdRti
投下終了です。
支援ありがとうございました。

141 :創る名無しに見る名無し:2010/11/30(火) 18:20:00 ID:Ap5+BLRQ
乙です
吉宗の真剣勝負経験、数万回wwwww

142 : ◆cNVX6DYRQU :2010/12/02(木) 07:06:47 ID:DUCoDjdX
塚原卜伝、足利義輝、犬塚信乃、剣桃太郎、坂田銀時で予約します。

143 :創る名無しに見る名無し:2010/12/02(木) 10:52:07 ID:OneEgSDv
>>142
お疲れ様です。

wikiが全然更新されてない!
だ、誰か支援をー!

144 : ◆cNVX6DYRQU :2010/12/10(金) 06:21:37 ID:nyy6iw++
塚原卜伝、足利義輝、犬塚信乃、剣桃太郎、坂田銀時で投下します。

145 :秘技伝授 ◆cNVX6DYRQU :2010/12/10(金) 06:22:38 ID:nyy6iw++
「おいおい。あいつ、あの恐そうな爺さんを跪かせてるよ。え、マジに将軍なの?」
「何だ、まだ信じてなかったのか、銀さん?」
足利義輝と、その前に平伏している塚原卜伝を盗み見ながら、坂田銀時と剣桃太郎はこそこそと囁き交わす。
「しかし、義輝さんが本物だとしたら、あの爺さんも本物の塚原卜伝って事になるのか……」
名だたる剣聖との出会いに、桃太郎は覚えず好戦的に目を輝かせる。
「有名な御仁か?」
「ああ。塚原卜伝と言えば、史上最強と評価する奴もいる、高名な剣豪だぜ」
桃太郎の言葉に、信乃は若干の警戒をもって義輝と卜伝を見守る。
そこまで高名で、しかも義輝が師と崇める程の人物であれば、相当の剣客である事は間違いあるまい。
仲間となってくれれば心強いが、それに関して、信乃には懸念が一つ。
義輝は今迄、信乃と共に主催者に対抗する仲間を募って来たが、師に関しては、勧誘する事に積極的な素振りは見せなかった。
手合わせをして己の剣技の進捗を見てもらうという事ばかり言い、協力要請はそれに付随して行うといった感じだろうか。
とすると、首尾良く出会った二人がこれからまずする事は……

「異なる時代から?」
卜伝は、再会した弟子義輝の口から出た突飛な言葉に眉を顰める。
「うむ。間違いあるまい。この場には、遥かに先の時代、或いは過去より来た剣客が多く居る」
もしかしたら書の中にある物語の世界から来た者すら居るかもしれない、とは義輝も流石に言い控えた。
卜伝にしてみれば、義輝の言は荒唐無稽に聞こえるが、確かにそれが事実ならば死んだ筈の義輝が生きている説明も付く。
廻国修行で全国の武芸流派を見聞し尽くした筈の卜伝が、見た事のない技を使う剣士とこの島で幾人も出会った事も。
そこで、卜伝はひとまず、義輝の言葉を信用する事とする。
もっとも、義輝の言葉の真偽がどうあろうと、卜伝の行動は特に変わる筈もないのだが。

「卜伝、そなたはこれからどうするつもりだ?」
「東西の、いや、公方様の御言葉が真ならば古今未来から一廉の剣客が集うこの場で、剣士たる者が為すべき事は一つ」
卜伝の言葉に、義輝はやはりと嘆息しつつ頷く。
三好松永の輩でなくとも、他人に強制されて殺し合うなど義輝には我慢ならない事だが、卜伝にはそうとも限らない。
聞くところによれば、若き日の卜伝は貴人権門の気まぐれで武芸者との真剣勝負を求められる事が幾度もあったとか。
だが、卜伝はそれを厭うどころか逆に好機とし、全ての立ち合いに勝利して己の剣と名声を高めたという。
そんな経験があれば、この御前試合の受け止め方も義輝とは違っていて当然。
義輝も、この師に対して意に染まぬ企てに協力させる事ができるとも、そうしたいとも思っていない。
「公方様は、如何なされますか?」
「この御前試合を企てた者共を成敗致すつもりだ」
だから、下手な勧誘などせず、ただ己の決意のみを語る。
「公方様なら、そうでしょうな」
卜伝もまた、他者の意のままに動く事を決して肯じ得ない義輝の気性は理解しており、了解の意を示す。
「ならば、最後に一手だけ、伝授致しましょう」

146 :秘技伝授 ◆cNVX6DYRQU :2010/12/10(金) 06:24:00 ID:nyy6iw++
平伏の体勢から卜伝が剣を突き出したのを見て、咄嗟に駆け出そうとする銀時・桃太郎・信乃の三人だが……
「手出し無用!すまぬが、二人だけで立ち合わせてくれ」
「かまいませぬぞ。兵は将にとっての剣であり、良い兵を集め従えるのも将軍には欠かせぬ技。
 公方様の集めた兵共が使い物になるや否や、見て進ぜよう」
「あの者達は余の配下ではないし、何より、余は卜伝に一個の剣士として挑みたいのだ、頼む」
最後の「頼む」は卜伝よりも仲間達に向けた言葉。彼等はやむなく立ち止まる。
「けっ、むかつく爺だぜ。俺達をその他大勢みたいに言いやがって」
銀時が毒づくが、信乃は卜伝の立ち居振る舞いから、その言葉のもう少し別の側面を読み取っていた。
「あの老人、口で言う程には俺達の事を軽視してはいないようだ。
 先の言葉も、俺達が義輝の家来ではないと知った上で、俺達の加勢を防ぐ為に敢えて言ったのかもしれない」
「なるほど、評判通りの食えない爺さんって訳か」
桃太郎などは卜伝の巧妙な兵法に更に闘争心を刺激された様子だが、義輝の思いを尊重して自重する。
「何にしろむかつく事に変わりはねえな。おい、手出しはしねえから、刀はこいつを使え!」
銀時が物干竿を抜いて素早く義輝に投げ渡す。
義輝も、木刀でこの大剣豪に立ち向かう無謀は知っているので、その好意は素直に受けた。
「すまぬ。では卜伝……参るぞ!」

正眼に構えた二人の剣が交わる……と見えた瞬間、義輝が動く。
剣尖を抑え込もうとして来る卜伝の剣を、己の剣をその周りに旋回させる事で外しつつ、電光の突きを放つ。
「さすがは卜伝」
突き出された物干竿の切っ先は、卜伝の身には届かず、その袂を僅かに裂くのみでかわされていた。
義輝は感嘆の息を吐く。卜伝との再会の日の為に開発したこの技も、やはり卜伝から一本を取るには足りなかったかと。
だが、実は感嘆していたのは卜伝の方も同じ。
義輝の剣は、数年前に会った時に比べて、明らかに長足の進歩を遂げていたのだ。
義輝が卜伝よりも前の時代から来ているらしい事を考えると、その進捗の速度は凄まじいとすら言える。
これだけの技がありながら、松永の軍勢如きに討たれるとは、信じられなくなる程の腕前。
いや、或いは、この進歩の多くは、御前試合が始まってからの戦いの中で身に付けたものなのだろうか……
どちらにしろ、義輝の素質はやはり相当の物。
足利将軍家などに生まれていなければ、卜伝の後継者にも成り得たかもしれない。
これだけの弟子を、万が一にも妖術師如きに討たせる訳にはいかないと、卜伝は気合を入れ直して最後の教授を始めた。

147 :秘技伝授 ◆cNVX6DYRQU :2010/12/10(金) 06:25:06 ID:nyy6iw++
暫し睨みあった後、卜伝はいきなり駆け出すと、城の中に駆け込む。
長大な物干竿に対するのに、室内に入る事でその間合いの利を枷と為そうという事か。義輝もそうはさせじと後を追う。
城の中に入っても、これだけ大きな城ならば、物干竿を存分に振るえるだけの広さを持っている部分も多くある。
その領域に居る間に追いつこうとする義輝だが、卜伝に上手くかわされて間を詰められない。
走力ならば若い義輝の方が断じて上回っているのだが、問題は卜伝の知識。
卜伝の学んだ神道流は剣術のみならず、あらゆる武器に加え、軍配術や築城術をも含む総合武術。
そして、卜伝はそれら全ての技を極め尽くしている。
無論、義輝とて征夷大将軍として軍略を修めてはいるが、城に関する知識では卜伝が上回っているようだ。
その知識を活かし、卜伝は城の構造を読み切り、無駄のない計算され尽くした動きで進んで行く。
やがて、遂に卜伝が自ら足を止めた。
そこは立ち並ぶ柱や低い鴨居が邪魔となり長刀を振るうには難がある、卜伝にとっては絶好の地形。

地の利を味方に付けて義輝に対する卜伝だが、愛弟子の構えを見て表情を変える。
剣を下段に付けたその構えは、明らかに卜伝の教えた新当流ではなく、新陰流のもの。
足利義輝は卜伝だけでなく上泉伊勢守にも師事して新陰流を学んだのだから、それも不思議ではない。
だが、上泉伊勢守と言えば、己を史上最強の剣士と堅く信じる卜伝が意識する数少ない剣客の一人。
その伊勢守に伝授された技を卜伝に用いようとするとは……
思わず地形を盾にするのも忘れた卜伝が豪剣を繰り出すと、義輝は紙一重でかわして素早く身を転じた。
死角からの奇襲に備えて正眼の構えを取る卜伝。
多少は広い空間に身を移した義輝も、即座に攻勢には出ずに、向き直ると同時に正眼に構えて卜伝と剣を交える。
次の瞬間、二人は互いに剣を四半回転させ、相手の剣を正中線から外そうと鬩ぎ合う。
だが、義輝は筋力で勝る上に、身を転じた瞬間に握りを変えて剣で相手の押し退ける力を溜めていた。
自身の剣の位置を保ったまま卜伝の剣を外し、素早く構え直して必殺の一撃を放つ。
卜伝も同様に動くが、競り勝って正中線の位置を保っていた義輝の有利は、剣の重量による不利を補って余りある程。
一瞬早く義輝の物干竿が唸り……空を切る。
愕然として動きを止めた義輝に、一瞬遅れて振り下ろされた卜伝の剣が突きつけられた。

148 :秘技伝授 ◆cNVX6DYRQU :2010/12/10(金) 06:29:35 ID:nyy6iw++
「おわかりか?」
「これは……妖術か?」
卜伝は頷く。
香取神道流はただの武術ではなく、忍術や陰陽術・方術・風水・陀羅尼など、魔の領域にも深く踏み込んだ流儀。
それを学んだ卜伝自身がこれらの術を使えるという訳ではないが、術の効果を見破るくらいの事は十分に可能。
卜伝の眼から見ると、この城の中には時空の歪みとでも言うべきものが存在していた。
基本的には殆ど問題にもならない程度のものだが、この一角……ここでだけは歪みが相乗し、無視できない程になっている。
具体的には、確実に卜伝を捉える筈だった義輝の剣が、軌道を逸らされて目標を外してしまうくらいに。
「これを為した者は、おそらくは法師か居士」
卜伝は推測する。城を覆うこの邪気は、法力の類によるものだと。しかも……
「主催者には外道の術者が付いているようですな。この歪みはおそらく、外道の術の使用に付随して生まれた産物」
「外道の法師か居士……話に聞く立川流の類か?」
外道の居士と言われて果心居士を思い出す義輝だが、その宗派、またそもそも真の仏徒なのかも、噂は語っていなかった。
「いえ。それら左道邪教と呼ばれる者共も、仏を崇め、仏の力で事を為そうとする点においては仏道の中に居ります。
 この場合の外道は、仏を信じながら仏を拒み、仏道を外れし者。左様な者は、必ずその根底に歪みを抱えておる筈」
卜伝は言う。外道とは、通常は道に外れた願いや、道に則っていては得られぬ力を望んだ者が堕ちるもの。
だが、仏道の場合、仏尊とは凄まじく多様な存在であり、その力・慈悲は無辺。
確かに仏の教えには厳格な法が含まれるが、悪人成仏の教えに見られるように、仏の力と寛容さは容易く法を超越する。
仏道の中には男女或いは稚児との性愛で仏と合一せんとするもの、殺戮によって悟りに近付かんとする教えすらあり得るとか。
そして、法力を究めた者は、或いは如来と成り、或いは根源仏と合一し、無尽蔵な力を振るえるという。
つまり、法師や居士は、仏道の中で右道左道を選べば如何なる望みでも叶えられる訳で、わざわざ道を踏み外す必要は皆無。
にもかかわらず外道の法力を使うからには何らかの歪みを抱えている筈であり、此処の時空の歪みもその表れであろうと。

「公方様。法力破りの技を伝授する暇はありませぬが、公方様ならば、必要な時が来れば自ずと使えるようになりましょう。
 剣は全ての基にして、外道は必ず正道を恐れるもの。ただそれだけをお忘れあるな」
観念的な言い様ではあるが、実際、卜伝の剣は時空の歪みなどものともせず、精確に義輝を襲っていた。
それを見ただけでも……剣術が妖術の効果に打ち克つ事ができると確信できただけで、義輝にとっては大きな収穫だろう。
言うべき事を言い終えると、愛弟子への最後の教授を終えた卜伝は一礼して剣を納め、立ち去る。
二人の戦いを見守っていた義輝の仲間達は一顧だにせず……少なくとも、関心を示した様子を表には出さない。ただ、
「今は去り申すが、次にお会いした時には、公方様等の御首級、頂戴致すでしょう。それまで御健勝で」
そんな不吉な言葉を残して。

149 :秘技伝授 ◆cNVX6DYRQU :2010/12/10(金) 06:31:04 ID:nyy6iw++
【ほノ参/城内/一日目/午前】

【塚原卜伝@史実】
【状態】左側頭部と喉に強い打撲
【装備】七丁念仏@シグルイ、妙法村正@史実
【所持品】支給品一式(筆なし)
【思考】
1:この兵法勝負で己の強さを示す
2:勝つためにはどんな手も使う
【備考】
※人別帖を見ていません。
※参加者が様々な時代から集められたらしいのを知りました。

【足利義輝@史実】
【状態】打撲数ヶ所
【装備】備前長船「物干竿」@史実
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を討つ。死合には乗らず、人も殺さない。
一:正午に城で新撰組の長と会見する。
二:信綱と立ち合う。また、他に腕が立ち、死合に乗っていない剣士と会えば立ち合う。
三:上記の剣士には松永弾正打倒の協力を促す。
四:信乃の力になる。
五:次に卜伝と出会ったなら、堂々と勝負する。
【備考】※黒幕については未来の人間説、松永久秀や果心居士説の間で揺れ動いています。
※犬塚信乃が実在しない架空の人物の筈だ、という話を聞きました。

【犬塚信乃@八犬伝】
【状態】顔、手足に掠り傷
【装備】小篠@八犬伝
【所持品】支給品一式、こんにゃく
【思考】基本:主催者を倒す。それ以外は未定
一:義輝を守る。
二:義輝と信綱が立ち合う局面になれば見届け人になる。
三:毛野、村雨、桐一文字の太刀、『孝』の珠が存在しているなら探す。
【備考】※義輝と互いの情報を交換しました。義輝が将軍だった事を信じ始めています。
※果心居士、松永久秀、柳生一族について知りました。
※自身が物語中の人物が実体化した存在なのではないか、という疑いを強く持っています。
※玉梓は今回の事件とは無関係と考えています。

【剣桃太郎@魁!!男塾】
【状態】健康
【装備】打刀
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者が気に入らないので、積極的に戦うことはしない。
1:銀時、義輝、信乃に同行する。
2:向こうからしかけてくる相手には容赦しない。
3:赤石のことはあまり気にしない。
※七牙冥界闘終了直後からの参戦です。

【坂田銀時@銀魂】
【状態】健康 額に浅い切り傷
【装備】木刀
【道具】支給品一式(紙類全て無し)
【思考】基本:さっさと帰りたい。
1:危ない奴と斬り合うのはもう懲り懲り
2:新八を探し出す。
※参戦時期は吉原編終了以降
※沖田や近藤など銀魂メンバーと良く似た名前の人物を宗矩の誤字と考えています。

150 : ◆cNVX6DYRQU :2010/12/10(金) 06:31:50 ID:nyy6iw++
投下終了です。

151 :創る名無しに見る名無し:2010/12/11(土) 09:21:48 ID:TOp9SuuQ
ここに来て、ようやく主催者に行き当たったか。
しかし、ト伝の師弟は武蔵の殺伐としたものと違って良い師弟関係が多いな。
わざわざ主催打倒の切っ掛けすら与えるとは。ト伝も単なる喰えないじいさんではないと言うことか。
ともあれ、投下お疲れさまです。

152 :創る名無しに見る名無し:2010/12/11(土) 09:24:43 ID:TOp9SuuQ
そういや明日はパロロワ別館での剣客ロワ語り日だ。者共、出会え出会えー!


153 :創る名無しに見る名無し:2010/12/12(日) 11:22:11 ID:TDg5/ANF
投下乙。
目指すところが違う卜伝と義輝が、それでもお互いのことを理解しあっているというのがいいですね。
深い師弟関係の伝ってくる描写だったと思います。

154 : ◆cNVX6DYRQU :2010/12/23(木) 19:00:04 ID:+d8Fjk/o
芹沢鴨、細谷源太夫、桂ヒナギク、沖田総司、石川五ェ門、志々雄真実、徳川吉宗、秋山小兵衛、魂魄妖夢、近藤勇、藤木源之助で予約します。

155 :創る名無しに見る名無し:2010/12/24(金) 21:18:35 ID:ug1vOrr3
そんなに盛り沢山で大丈夫か?

吉宗たちにヒナギク・源太夫・五ェ門が合流できれば
義輝チームに並ぶ対主催チームができるんだが、
同じ場所にマーダー2人に芹沢・沖田・近藤とか予想できないにも程がある。
なんというwktk。

156 :創る名無しに見る名無し:2010/12/25(土) 08:29:59 ID:CoR6lyVj
そこまで頑張られるからには、こちらも頑張らないとな。
期待して待ってます。

157 :創る名無しに見る名無し:2010/12/29(水) 08:36:02 ID:wDF6B8UF


158 :創る名無しに見る名無し:2010/12/30(木) 18:59:26 ID:uD4oCB9l
age

159 : ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 21:48:45 ID:jmERPEYR
>>154の十二名で投下します。

160 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 21:50:17 ID:jmERPEYR
「遅くなっちゃいましたね。下調べどころか、そろそろ巳の刻になっちゃうんじゃあ……」
桂ヒナギクが呟く。彼女と芹沢鴨、細谷源太夫の三名は、漸くほの伍へと到達していた。
沖田総司と石川五ェ門も同様だが、彼等は川の向こう側で建物の捜索をしている為、こちらからは姿が見えない。
「すまんのう、儂のせいで」
細谷が謝る。ここへの到着が巳の刻間近になったのは、細谷が白井亨戦で負った傷の手当てに時間を取られた為なのだ。
「あ、いえ、そんなつもりじゃ……。元はと言えば、悪いのは油断した私達の方ですし」
勝手に自分も悪い事にされた芹沢は不機嫌そうにヒナギクの横顔を睨むが、油断していたのは事実なのでそこには反論しない。
「ふん、中途半端に準備の時間があると、むしろ英気が削がれ却って不利になるのが真剣勝負の綾というものよ。
 巳の刻に遅れたわけでなし、これくらいで丁度良かろう。お主達も気に病む事はないぞ」
そう言って自分だけは悪くないような形で芹沢がまとめた次の瞬間、鐘の音が鳴り響いた。

「霧!?」
鐘の音が聞こえた次の瞬間、辺り一帯が霧に包まれる。
霧自体は通常の霧と特に変わらないように見えるが、一瞬で、しかも丁度この時刻に発生した霧が尋常の物である筈もない。
霧そのものに殺傷能力がないのであれば、当然、この霧を発生させた者の狙いはその先にある訳で……
「はあっ!」
大気を切り裂いて飛来した矢を芹沢が叩き落す。強い衝撃で刀が震え、不気味な唸り声を上げた。
霧に紛れての攻撃を予想していたから防げたが、この弓勢は相当のものだ。
更なる攻撃を受ける前にと芹沢が駆け出そうとした瞬間……
「ぬう!」
別方向から飛来した矢を、細谷が辛うじて叩き落す。
咄嗟に三人が背中合わせに円陣を組むと、更に別方向から矢が襲い、今度はヒナギクがそれを防ぐ。
「どうして、この霧の中でこんなに精確に矢を放てるのよ!?」
ヒナギクが叫ぶ。辺りを覆う霧は、白兵戦なら殆ど問題にならない程度の濃さだが、視界がまともに効くのは精々十間。
当然、彼等からは弓で狙撃して来る射手の姿は見えないのだが、対して矢の方は正確に彼等を狙って来る。
「さあな。この霧が俺達の視界しか遮らないのか、奴等が目で見る以外の方法で俺達の位置を特定してるのか……。
 俺達を一晩でこんな島まで連れて来て、一瞬で島中に散らばらせるような連中だ。その程度は朝飯前だろうさ」
「待て、それでは、この霧も矢も、御前試合の主催者の仕業だと言うのか?」
「阿呆か。他に考えられぬだろう。いい加減に、酔いを醒ませ!」
などと言い合う間にも、次々と矢が飛来し、三人は剣を振るってそれを弾く。
今の所は凌げているが、敵の姿が見えず、囲まれたと思しき状況の中、三人の心中には徐々に焦りが生まれていた。

161 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 21:51:28 ID:jmERPEYR
「十人は居るな……」
八方から矢が飛んで来る状況から、細谷は敵の数をそう推測する。
「一斉に狙撃されたら防ぎきれんぞ」
「でも、どうして一度に射て来ないのかしら」
細谷の危惧に、ヒナギクは疑問で返す。確かに、今まで飛来する矢は各個バラバラにしか来ていない。
霧は敵の攻撃を妨げないと思っていたが、射手達にも三人の位置がわかるだけで互いの連携までは不可能なのか?
「そもそも、剣客ばかり集めて御前試合を開くような連中がどうして弓の達人ばかり抱えてやがる!
 だったら始めから弓術大会でも開いてやがれってんだ!」
確かに、芹沢が怒鳴ったように、剣客ばかりを集めて御前試合を開催した主催者側にこうも弓術家が多いのは奇妙だ。
剣客の試合で勝ち残った者を無双の武芸者と認定するという言葉からは、剣術への強いこだわりが感じられるのだが……

「うぐっ!」
攻撃が単発だった事もあり、ここまでどうにか攻撃を凌いで来た三人だったが、遂に細谷が弾き損ねて手首を削られる。
「ちっ、何してる!」
「い、今、矢の動きが手元で変化したぞ」
意味不明の事を言う細谷に舌打ちしつつ、芹沢は次の矢の風切り音に反応して身構えるが、矢の動きを見て目を瞠った。
「見ろ!」
芹沢は、素早く矢を叩き落すと、矢が飛んできた方向を指し示す。
周囲に立ち込める霧は、これまで芹沢達の視界から敵を隠す妨害者として存在して来たが、ここで初めて彼等の助けとなる。
矢は霧を切り裂いて飛んで来るので、矢が飛び終えた一瞬後まで、その軌跡を霧の裂け目として視認する事ができるのだ。
そして今、霧が示している矢の動きは……
「嘘でしょ……。矢が、カーブしてる!?」
そう、矢の軌道は明らかに曲線を描いていた。しかも、上下ではなく左右に。この意味する所は……
「散れ!敵は一人だ、探し出せ!」
芹沢の号令と共に三人はばらばらになって駆け出す。
そう、彼等が疑問を覚えていた、八方から襲ってくる矢が単発でしか飛んで来ない事の理由は単純、射手が一人だから。
今までは芹沢達の目が届かない距離で矢を曲げ、以降は直進させる事で、八方の敵に狙撃されていると錯覚させたのだろう。
だが、それで彼等を倒しきれない事に苛立ったのか、より近距離で矢の軌道を曲げ、為に策が露顕したのだ。
矢の軌道を操る常識外れの技量と、多数の敵による攻撃と錯覚させる程の速射、加えて個々の矢の弓勢。
敵が相当の達人である事は間違いないが、正体がわかってしまえば対応の仕様はある。
三人は、未だ見ぬ敵の姿を求めて散って行った。

162 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 21:52:39 ID:jmERPEYR
敵を求めて走る芹沢。走る速度と方向は不断に変化させ続ける。
こうしておけば、敵に数瞬先の位置を予測されにくく、弓で狙撃されても当たる可能性は低くなるだろう。
矢の軌道を変化させるのをやめて真っ直ぐ狙い撃たれれば別だが、そうしてくれれば簡単に敵の位置を掴めるのだから望む所。
だが、芹沢達が駆け出して以来、矢による攻撃はぱったりと止んでいた。
「まさか、逃げたんじゃねえだろうな」
これまでの事から考えて、主催者は人を瞬時に遠くへ移動させる手段を持つと思われ、それを駆使して逃げられては面倒だ。
もっとも、矢による攻撃の補助として発生させられたと思しき霧が晴れる様子がない所を見ると、その可能性は薄いか。
だとすると、効果の薄い弓を捨てて別の手段、例えば剣による迎撃態勢を整えていると見るべきだろう。
実際、数ある武芸から特に剣術を選んで試合を催した主催の配下が、剣の心得がない弓術者というのは不自然だ。
古武士ならば、例え剣術を表芸とする者であっても、弓矢にも長けていて不思議はなく、この敵もその類かもしれない。
だとすると、余技である弓術ですら入神の域に達していたこの敵の、剣の腕はどれ程のものになるのか……
半ば危惧し半ば期待しながら駆けていた芹沢がぴたりと足を止める。
霧の向こうに気配を感じたのだ。そして、芹沢の勘は、その気配の主が相当の使い手だと告げていた。
芹沢が剣を構えると、相手もそれを察したのか、剣気が高まるのが感じられる。
この相手が弓矢を射て来た主催の手下なのかどうかは不明だが、芹沢にはそれをわざわざ問い質すつもりはない。
主催の一味にしろ参加者にしろ、相手はすっかりやる気になっているようなのだから、叩き潰してやるのが当然の対応。
今は無礼な主催者の打倒を一応の方針としているが、主催と無関係でも向かって来る者を許してやる義理などないのだから。

共に無言で間合いを詰めて行く二人。
霧で視界を制限された現状では、彼等が声を挙げようとしないのも当然と言えば当然。
ただ、芹沢はともかく、相手の方はわざわざ声を立てないようにする必要性は薄いかもしれない。
何しろ、この相手は凄まじく濃密な気配を発しており、音などに頼らなくとも相手の位置を簡単に掴めるのだ。
これだけ強烈な気迫を感じたのは、流石の芹沢も初めて……いや、確か前に一度、これとよく似た剣気を浴びた事がある。
芹沢は記憶の片隅に眠っていたそれを懸命に引っ張り出そうとした挙句、遂にそれを思い出す。
「ふははははは!何だ、近藤君じゃないか」
「芹沢さん……か?」
こうして、新撰組の二人の局長は再会した。

【ほノ伍 東部/一日目/昼】

【芹沢鴨@史実】
【状態】:健康
【装備】:近藤の贋虎徹、丈の足りない着流し
【所持品】:支給品一式 、酒
【思考】
基本:やりたいようにやる。 主催者は気に食わない。
一:虎徹を近藤に返すか?
二:攻撃を仕掛けてきた主催者の手下らしき者を斬る。
三:機会を見付けて桂ヒナギクに新見の事を吐かせる。
四:昼になったら沖田たちと城へ向かい、足利義輝に会う。どうするかその後決める。
五:沖田、五ェ門を少し警戒。
【備考】
※暗殺される直前の晩から参戦です。
※タイムスリップに関する桂ヒナギクの言葉を概ね信用しました。
※石川五ェ門を石川五右衛門の若かりし頃と思っています。

【近藤勇@史実】
【状態】軽傷数ヶ所
【装備】新藤五郎国重@神州纐纈城
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この戦いを楽しむ
一:正午に呂仁村址で土方と勝負する。
二:相討ちになっても土方を斬る覚悟を固める。
三:強い奴との戦いを楽しむ (殺すかどうかはその場で決める)
四:老人(伊藤一刀斎)と再戦する。
【備考】
死後からの参戦ですがはっきりとした自覚はありません。

163 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 21:53:35 ID:jmERPEYR
「攻撃が止んだか」
それを認識した細谷がまず考えたのは、自分ではなく芹沢かヒナギクに攻撃が集中しているのではないかという危惧だった。
芹沢はまだしも、ヒナギクが狙われたら……まあ、細谷よりは彼女の方が身のこなしに関しては勝っているかもしれないが。
だが、この御前試合で生き残る事よりも己の命を有意義に使う事を目的としている細谷としては、
仲間に危険を背負わせておいて自分が無為に無人の地を駆け回るなどというのは不本意極まりない事だ。
いっそ戻ろうかと思い足を止めるが、それではわざわざ散らばって敵を探している意味がない。
この先に敵が潜んでいて逃げようとしているのかもしれないし……
そんな感じで逡巡していたせいか、細谷はその気配に気づくのが数瞬遅れた。
だが、まだ致命的な距離ではない。素早く体勢を整えて振り向く……寸前に衝撃を受けて細谷は倒れる。
明らかに剣の間合いの外からのいきなりの突風に戸惑う細谷だが、それを訝る間もなく剣撃が襲って来た。

【ほノ伍 北部/一日目/昼】

【藤木源之助@シグルイ】
【状態】背中に軽傷(回復済み)、不動心
【装備】一竿子近江守@史実、岩本虎眼の死装束@シグルイ
【所持品】「忠」の霊珠、支給品一式
【思考】
基本:勝ち残り、虎眼流の最強を示す
一:敵を探し、「生き試し」を行う。
二:虎眼の仇、柳生の男(柳生連也斎)を討つ
三:『遠当て』の剣を研鑽する
【備考】
※人別帖を見ました。

【細谷源太夫@用心棒日月抄】
【状態】肩と手首に軽傷、転倒
【装備】打刀
【所持品】支給品一式×3
【思考】
基本:勇敢に戦って死ぬ。
一:主催者の手下を探し出して倒す。
二:五ェ門に借りを返す。
【備考】
※参戦時期は凶刃開始直前です。
※桂ヒナギクに、自分達が異なる時代から集められたらしい事を聞きました。ちゃんと理解できたかは不明です。

164 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 21:54:54 ID:jmERPEYR
鐘の音と同時にいきなり周囲が霧に包まれ、そこに飛来する必殺の矢。
組み合っていた徳川吉宗と志々雄真実は、素早く飛び離れてやり過ごした。
続く矢は傍らの秋山小兵衛と魂魄妖夢に向かい、まだ疲労から脱し切れていない妖夢に代わって小兵衛が矢を切り払う。
「上様!」
状態が万全でなく状況が掴めない中で攻撃を受け続ける事の不利を瞬時に悟った小兵衛は撤退を促す。
「ちっ、もう終わりか」
ほノ伍の外へ向かう三人を見送りながら、志々雄は呟く。
だが、この霧と強力な矢がいつ飛んで来るかわからない現状では、彼等を追い掛けても満足の行く闘いは望めまい。
それに、どうやら戦う相手は他にもすぐ傍に居るようでもあるし。
志々雄真実は、踵を返すと歩き出した。

【ほノ伍 北東部/一日目/昼】

【志々雄真実@るろうに剣心】
【状態】疲労中、軽傷多数
【装備】斬鉄剣(鞘なし、刃こぼれ)
【道具】支給品一式
【思考】基本:この殺し合いを楽しむ。
一:土方と再会できたら、改めて戦う。
二:無限刃を見付けたら手に入れる。
※死亡後からの参戦です。
※人別帖を確認しました。

165 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 21:56:23 ID:jmERPEYR
吉宗、小兵衛、妖夢の三人は、志々雄の剣と何者かの矢を避けて東進し、ほノ伍を抜けた辺りで霧が晴れたのを発見する。
「あの霧も声が言っていた避け得ぬ死とやらの一貫という事か。天候をも操るとは、わかってはいたが恐ろしい力だな。」
「いえ、むしろあの者達の妖術にも対応の仕様があるとはっきりしたかと」
そして、小兵衛は吉宗に説明する。巳の刻の少し前から、辺りの水気が急激に失せて行った現象を。
おそらく主催者は、ああしてほノ伍の一帯から水分を集め、それを利用してあの霧を作り出したのだろう。
「つまり、連中の妖術は大きな影響を及ぼすには準備が必要であり、前兆もあるという事です」
今回は後手を踏んだが、妖術の前兆がこんな現れ方をする事がわかっていれば、今後は先読みする事も不可能ではあるまい。
妖術という全く無縁だった技を使う敵との対戦に強い危惧を抱いていた小兵衛の二人だが、この見通しに希望を見出す。
「でも、私達が戦わなくてはいけないのは妖術だけではないみたいね」
漸く疲労から回復してきた妖夢が呟く。妖怪との戦いに慣れた彼女には、そちらの印象が強いのは当然だろう。
志々雄真実は、無数の達人と戦って来た彼等にとってすらも充分に印象的な剣客。
また、巳の刻を過ぎた後に飛んで来た矢も、一、二本を防いだだけだが相当の鋭さを持っていた。
つまり、参加者にも主催者の一味にも、彼らの前に立ちはだかるべき凶悪な剣士がいるという事だ。
「確かに。妖術にばかり気を取られていては、剣に足を掬われるやもしれませんな」
「うむ。俺達の本分は剣。そこを忘れぬように心掛けねばならぬな」
決意を新たにする吉宗と小兵衛。
もっとも、人別帳にあった錚々たる剣客の名を思い出せば、そして主催がどれ程の剣士を抱えているかを知れば、
その固い決意ですらも、まだ生温いと言って過言でない程の試練が控えている事を彼等も悟ったであろうが。

【ほノ陸 北西部/一日目/昼】

【徳川吉宗@暴れん坊将軍(テレビドラマ)】
【状態】健康
【装備】打刀(破損)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者の陰謀を暴く。
一:小兵衛と妖夢を守る。
二:主催者の手掛かりを探す。
三:妖夢の刀を共に探す。
【備考】※御前試合の首謀者と尾張藩、尾張柳生が結託していると疑っています。
※御前試合の首謀者が妖術の類を使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識及び、秋山小兵衛よりお互いの時代の齟齬による知識を得ました。

【秋山小兵衛@剣客商売(小説)】
【状態】腹部に打撲 健康
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】基本:情報を集める。
一:妖夢以外にも異界から連れて来られた者や、人外の者が居るか調べる
二:主催者の手掛かりを探す。
【備考】※御前試合の参加者が主催者によって甦らされた死者かもしれないと思っています。
 又は、別々の時代から連れてこられた?とも考えています。
※一方で、過去の剣客を名乗る者たちが主催者の手下である可能性も考えています。
 ただ、吉宗と佐々木小次郎(偽)関しては信用していいだろう、と考えました。
※御前試合の首謀者が妖術の類を使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識を得ました。

【魂魄妖夢@東方Project】
【状態】疲労
【装備】無名・九字兼定
【所持品】支給品一式
【思考】基本:首謀者を斬ってこの異変を解決する。
一:この異変を解決する為に徳川吉宗、秋山小兵衛と行動を共にする。
二:愛用の刀を取り戻す。
三:主催者の手下が現れたら倒す。
四:自分の体に起こった異常について調べたい。
【備考】※東方妖々夢以降からの参戦です。
※自身に掛けられた制限に気付きました。楼観剣と白楼剣があれば制限を解けるかもしれないと思っています。
※御前試合の首謀者が妖術の類が使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識を得ました。

166 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 21:58:12 ID:jmERPEYR
「ええと……」
敵の姿を求めて走っていたヒナギクは、川岸近くで見つけたそれの前で立ち尽くしていた。
「……釜?」
そう、ヒナギクの前に現れたのは伏せた釜、正確には茶釜だ。もっとも、彼女が戸惑うのも無理はない。
這いつくばる蜘蛛を思い起こさせるその意匠は、見る者が見れば芸術的なのだろうが、素人には不気味な印象を与える。
それに、その大きさ。茶釜としては規格外に近い……具体的には、屈めば優に人が中に隠れられるくらいに。
「明らかに……怪しいわよね」
ここまであからさまに不審な物体を無視する訳にもいかず、ヒナギクは茶釜に手を掛け……ようとして思い直す。
とある伝説を思い出したのだ。
それによると、かつて御子神典膳(後の小野忠明)が兄弟子の善鬼と伊藤一刀斎の後継の座を巡って争った際、
善鬼は大きな瓶を逆さにしてその中に隠れたという。
典膳が瓶を持ち上げてどかそうとすると、一刀斎がそれでは足を斬られると止め、典膳は瓶ごと善鬼を両断したとか。
もっとも、この伝承の史実性は怪しく、おそらくは一刀流伝来の瓶割り刀の名に因んで創作された逸話だと思われる。
だが、逆さにした入れ物の中に敵が隠れている場合、それを不用意に持ち上げるのは危険という理屈はもっともだ。
ヒナギクは刀を上段に構えた。
釜はかなり頑丈そうな鉄製で、釜自体を割る自信はあるが、中に敵が潜んでいた場合、それまで斬るのは難しいだろう。
また、実は敵は釜の中ではなくこの近くの何処かに潜んでいて、ヒナギクが釜に気を取られた隙を狙っているのかもしれない。
そうした可能性を十分に考え、敵の襲撃を警戒しつつ、ヒナギクは剣を振り下ろ……
「え?」
ヒナギクは、信じられない思いで己の腹に突き立った刃を見つめる。
警戒はしていた。周囲からの攻撃、そして茶釜を割った直後のその中からの攻撃にも。
だが、刃は、彼女が剣を振り下ろすよりも早く、茶釜を音もなく貫いてヒナギクを襲ったのだ。
大きいとはいえ茶釜の中では剣を振りかぶる余裕すらないだろうに、こうもた易く茶釜を貫いて来るとは……

剣が抜かれ、ヒナギクが膝を付くと同時に、茶釜がチーズをスライスするかの如く、あっさりと切り裂かれる。
中から出て来たのは初老の男。手にした弓と箙から、この男が追い求めていた相手だとヒナギクは悟った。
「桂ヒナギク。我等の剣を根幹とする流儀が流布する中では、最も先の時代から来た剣士の一人だそうだが……
 随分とひ弱な花が咲いた物よ。やはり、素肌剣法にばかり傾斜するのは改めさせるべきであったか。」
そう一人ごちながら、無造作に剣を振り下ろす男。ヒナギクは辛うじて剣で受けるが、力負けしてよろめく。
膂力においてこの老人がヒナギクに優っているというのもあるが、より致命的なのはヒナギクが受けた傷。
彼女は確実に内臓を貫かれている。
傷のあまりの鋭さが逆に幸いして小康状態を保っているが、腹に力を入れて踏ん張れば、傷が破れて死に至る公算が高い。
同じ理由で、大声を上げて敵の発見を芹沢や細谷に伝える事も不可能。
相手の力を受け流そうとするヒナギクに対し、老人はそうはさせまいと剣を操り、二本の剣は絡み合い滑り、激しく噛み合う。
「ぬ!?」
絡み合う剣の一本……ヒナギクの刀がいきなり発火し、老人の動きが一瞬止まった。
対するヒナギクは、剣で刺された精神的なショックで感性が麻痺していたのが幸いし、驚愕より生存本能に従って動く。
ヒナギクが炎を纏ったままの剣を振るい、回避が遅れた老人は箙に剣を受け、そこにあった矢が激しく燃え出す。
それに老人が気を取られた瞬間、ヒナギクは身を転じて駆け出した。

川に駆け寄ると、跳躍。
ほノ伍に着いて以来の空気の異常乾燥と関係あるのか、川の水位が下がっていた為、負傷したヒナギクでも跳び越すのは簡単。
だが、跳躍の最中、背中に衝撃を受け、ヒナギクは西岸に墜落する。
「く……」
矢はさっき全て燃えた筈なのに……などと考える余裕すら、既にヒナギクには残っていない。
必死に這って逃れようとするが、老人は水位の低くなった川を易々と渡り、ヒナギクの背に刀を……

167 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 21:59:11 ID:jmERPEYR
「矢が止んだか」
石川五ェ門は、特に感慨もなくそう呟く。
火器の発達した時代で、法による庇護のない闇社会を生きて来ただけあって、彼は飛び道具への対応を完璧に身に着けている。
まあ、機械兵器と達人の矢では次元が違うが、それでも十人以上の相手に分散した狙撃を防ぐのにさしたる苦はなかった。
捜索の為に手分けした沖田や、対岸に居る筈の芹沢達にしても、この程度の攻撃でやられるとは心配していない。
だが、攻撃が急に止まったという事は、何らかの異変が起きた事を示す。
異変の原因を探ろうと五感を集中させた五ェ門は、その気配を敏感に察知した。
「何者!?」
神速の抜き打ちで近くにあった木立を切り払う。
夜の間に多少は研ぎ直された刀は見事に木立を両断するが、その背後に居た人物は機敏に跳躍して回避する。
その姿を鋭い目で追った五ェ門は……
「可憐だ……」
見蕩れていた。

【ほノ伍 北西部/一日目/昼】

【石川五ェ門@ルパン三世】
【状態】腹部に重傷
【装備】打刀(刃こぼれ)
【所持品】支給品一式 母屋に置いてあります。
【思考】
基本:主催者を倒し、その企てを打ち砕く。
一:目の前の可憐な少女(千葉さな子)に話を聞く。
二:桂ヒナギクを守る。
三:斬鉄剣を取り戻す。
四:芹沢・沖田を若干警戒
五:ご先祖様と勘違いされるとは…まあ致し方ないか。
【備考】※ヒナギクの推測を信用し、主催者は人智を越えた力を持つ、何者かと予想しました。
※石川五右衛門と勘違いされていますが、今のところ特に誤解を解く気はありません。

【千葉さな子@史実】
【状態】健康
【装備】物干し竿@Fate/stay night 、童子切安綱
【所持品】なし
【思考】基本:殺し合いはしない。話の通じない相手を説き伏せるためには自分も強くなるしかない。
一:目の前の怪しい人物(石川五ェ門)を誰何する。
二:トウカは無事だろうか?
三:緋村剣心の援護に向かう。
四:龍馬さんや敬助さんや甲子太郎さんを見つける。
五:間左衛門の最期の言葉が何故か心に残っている。
【備考】
※二十歳手前頃からの参加です。
※実戦における抜刀術を身につけました。
※御前試合の参加者がそれぞれ異なる時代から来ているらしい事を認識しました。

168 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 22:05:12 ID:jmERPEYR
「やあ、やってますね」
近くを捜索していて、水音と戦いの気配に惹かれてやって来た沖田総司は、地を這うヒナギクとそれに迫る老人を見付ける。
老人が弓を持っている所を見ると、彼が先程まで矢で狙撃して来ていた、おそらくは主催者の一味。
あの白洲に居た男も相当の達人に思えたが、この老人の風格もそれに優るとも劣らない。
となれば、沖田の選択は一つ。ヒナギクと老人の間に割って入ると、彼女に告げる。
「すいません、ヒナギクさん。出来ればここは僕に譲ってもらえませんか?」
「う……くっ」
既にまともに返事の出来る状態ではないヒナギクは、曖昧に頷くと必死に近くの物陰へと這い去った。

「お名前を伺ってもいいですか?ああ、申し遅れました。僕は沖田総司といいます」
「柳生宗厳と申す」
兵法者ならば誰しも一度は聞いた事があるであろうその名に、沖田は目を輝かせる。
「高名な石舟斎様と剣を交えられるとは光栄です」
「さて、お主は剣を使うに足る程の者かな」
そう言うと、宗厳は弓を構えて引き絞る。見た所、彼は矢を持っていないようなのだが……
宗厳が弦を放し、沖田は咄嗟に射線上から跳び退く。
「!」
沖田が避けた射線の先には一本の木。その木の枝が急に垂れ、青々とした葉が急激に色を失って行く。
「気合術ですか。人や獣ならともかく、植物まで気死させるなんて凄いですね」
沖田の感嘆に答えず、宗厳は続けざまに矢を放つ。
先程は多くの相手を一度に狙わなければならなかったのと距離があった為に実力を発揮しきれなかったが、今回は別。
凄まじい速射により、一度に幾本もの不可視の矢が、それもそれぞれ微妙に軌道を変化させつつ沖田に迫り……

「ほう」
沖田が、剣気を一気に高め、己に迫る不射之射による矢を一度に掻き消したのを見て、宗厳は弓を捨てて剣を取る。
「凄い技ですけど、気組みの強さだけならうちの近藤さんの方が上ですね」
「城の外にある井戸」
「はい?」
宗厳の唐突な発言に訝る沖田だが、宗厳はかまわず言うべきことを言い続ける。
「この御前試合を仕掛けた者共を討ち、元の暮らしに帰る事を望むならば、城外南西の井戸に飛び込め。これが褒賞だ」
「褒賞と言うと、弓の気合術を破った事のですか?」
「いや、儂を討つ事への褒賞の先払いだ。討てずにここで死ねば、それまでの事だ」
「なるほど。褒賞を貰ったからには頑張らないといけませんね。では、全力で行かせて頂きますよ」
自分から石舟斎に仕掛ける沖田。
有名な剣聖と立ち合える興奮からか、長引けば経験の差で不利との計算からか、沖田は最初から烈火のような猛攻を仕掛けた。
だが、さすがは石舟斎。沖田の勢いをうまくいなし、相手の力を逆用して剣を走らせる。
幾度かの応酬の後、馳せ違った沖田が素早く地に目を走らせると、そこにあるのは散乱した木屑。
石舟斎は沖田の剣を防ぎつつ、同時にその木刀を削っているのだ。
このままでは遠からず得物を切り折られる公算が高い。
そうでなくとも、この痩せ細った木刀では、首尾良く石舟斎を打てても相手の骨を砕く前に自身が砕けかねない
早期の決着、かつ削られか細くなった木刀で致命傷を与える。
この条件を満たし得る技は、沖田の持つ中では一つ。沖田は一気に間合いを詰めると、渾身の三段突きを放った。

169 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 22:07:05 ID:jmERPEYR
沖田の必殺の突きを剣で受ける宗厳。さすがに勢いを殺し切れず僅かに体勢を崩した瞬間、沖田が二段目の突きを繰り出す。
だが、その突きは僅かの差で宗厳には届かない。と言っても、宗厳が避けたのではない。沖田の得物が短くなったのだ。
一段目の突きの際、宗厳はただ沖田の木刀を受けたのではなく、密かにその切っ先を切断していた。
介者剣法全盛の戦国の剣客なればこそ身に付いた、構えなしで鉄をも易々と切り裂く鋭い斬撃があって初めて可能な芸当。
その為、短くなった木刀は宗厳にまでは届かず、空を突くに留まる。
しかも、宗厳の狙いはただ沖田の突きを不発に終わらせる事だけではない。
そもそも、沖田の三段突きは、一瞬に三つの突きを放つだけでなく、その三つの軌道がほぼ同一である所に最大の特徴を持つ。
だからこそ相手は紙一重でかわすのも受けるのも難しく、大きく避けて隙を作る事になる。
しかし、精密な技と言うものは、往々にして僅かな狂いで致命的な隙を生むことになるもの。
今回の沖田も、一段目と同じ軌道を描くつもりで放った二段目の突きが、木刀の重量の変化のせいで僅かに流れる。
当然、それでは突きを放ってから引き戻すのに余分の時間がかかる事になる訳で、その隙を宗厳は見逃さない。
沖田が三段目の突きを放つよりも早く、宗厳が斬撃を放った。

地に転がる沖田。身を投げ出す事でどうにか宗厳の攻撃をかわしたが、その代償に今の彼は無手。
沖田が剣の回避に全神経を集中した瞬間、宗厳が空いた手で木刀を奪ったのだ。
宗厳は取った木刀を即座に寸断し、その間に沖田は立ち上がり、素手のまま迎撃の構えを取る。
「いやあ、まさか石舟斎様相手に無刀取りを披露する事になるとは、恐縮しますね」
「ほう……。ならば、見せてもらおうか」
というような会話を交わし沖田は身構えるが、実際には宗厳程の達人に通用する無刀取りの技など、沖田は心得てはいない。
あのような虚勢を張ったのは、石舟斎に刀を取られる事を警戒させ、また沖田が完全に受けに回るつもりだと思わせる為。
相手が防御に徹していて、なおかつ不用意な攻撃をすれば剣を取られると思えば、必ず慎重になり斬撃に遅れが生じる筈。
そうしておいて、一散に宗厳の懐に飛び込んで拳撃を叩き込む。それが沖田の描いている戦術だ。
無論、かなり成算の低い戦略ではある。
宗厳が多少慎重になった所で、拳と剣の圧倒的な間合いの差が埋まる程の遅れが生まれる可能性は低い。
また、そもそも特に拳法の心得がある訳でもない沖田の拳が当たった所で、宗厳に有効な打撃を与えられるかどうか。
不利は百も承知で沖田は膝を撓め……

170 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 22:08:45 ID:jmERPEYR
必死に這いずって物陰に隠れるヒナギク。だが、その心は絶望に包まれつつあった。
背中の矢傷も痛むが、それより今までの動きのせいで腹の傷から血が滲み出始めている。
早く治療を、それも設備の整った病院で本格的な処置を受けなければ、死は免れないだろう。
だが、この島には医療設備などないし、島を脱出したとしても、ここが現代でなく戦国時代だったりしたらどうしようもない。
己の死が避け得ぬものとして巨大になりりつつある中で、ヒナギクは沖田と宗厳の決闘を見詰めていた。
宗厳が矢を番えないままに弓で沖田を狙撃し、かわした沖田の背後にある木を枯死させる。
ここで、漸くヒナギクは己に実体のある矢が突き立った訳ではなく、宗厳の気による一種の錯覚だと気付く。
それを知る事で背中の痛みは薄らいだが、それでも腹の傷が致命傷である事には変わりない。
どうすれば良いのかわからないままに、半ば朦朧とするヒナギクの耳に、宗厳の言葉が飛び込んで来る。
「……元の暮らしに帰る事を望むならば、城外南西の井戸に飛び込め。……」
この言葉で、ヒナギクの意識が覚醒する。

「お城の、井戸……」
ここから城までは約2キロというところか。それなら、今のヒナギクでも十分に辿り着ける距離だ。
「井戸に飛び込みさえすれば……」
古くから井戸は異界への入り口として知られてはいるが、井戸が現代に直接繋がっていると考えるのは少々短絡的だろう。
だが、ヒナギクはその短絡的な思考に飛び付く。井戸に飛び込みさえすれば、すぐ現在に帰れ、助かると。
追い詰められた状況故に目の前の希望に縋る心理か、或いは井戸で現代と戦国時代を繋いでいた某漫画の影響かもしれない。
とにかく、早く城に向かおうと思うヒナギクだが、その彼女を留めるのは、目の前で戦っている沖田の存在。
そして、激しい戦いの後に、沖田は遂に武器を失って地に転げる。
(沖田さん……!)
このままヒナギクが城に向かえば、沖田は宗厳に斬られて果てる公算が非常に高い。
とはいえ、位置関係として宗厳が沖田よりも近くに居る為、手にした刀を投げ渡すのは困難。
無論、ヒナギク自身が沖田に加勢して戦えば、傷が破れて死に到る事は確実。
全てを忘れて逃げてしまえば、生きて帰れる。友人達に、姉に、そして彼に、再会する事が出来るのだ。
(でも、このまま逃げたら……)
自分を助けてくれた沖田を見捨てて逃げ帰ったとして、そんな恩知らずの卑怯者が皆に顔向けできるのか。
と言って、ここで死んでしまえば、そもそも顔向け以前に元の時代に帰る事すら不可能。
逃げるか、沖田を助けるか、どちらを選んでも望む結果が得られないのであれば……
ヒナギクは第三の選択肢を選ぶ事にした。

171 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 22:12:07 ID:jmERPEYR
沖田が拳を固め、飛び出そうとしたその瞬間……
「待ちなさい!」
宗厳が振り向くと、そこには剣を構えた桂ヒナギク。
「ほう……」
彼女の顔に出ているのは鬼相。己の命を捨てて、宗厳に挑むつもりと見える。
兵法としては、このような相手は避けるのが正道だが、今回はそういう訳にもいかないか。
宗厳は覚悟を決めて振り向くが、救われた形になった沖田が文句を付けた。
「あの、桂さん、さっきも言ったように、ここは僕が……」
「こいつに会ったのは私が先なんだから、当然、私に優先権がある筈よ」
「ですから、さっき譲って下さいって」
「あら、私が一言でも譲るなんて言ったかしら?とにかく、こいつは私がやっつけるんだから、沖田さんはそこで見てて!」
第三の選択肢……命を捨ててでも、主催の一味である柳生宗厳を倒し正義を貫くという選択をした桂ヒナギク。
己に残された時間が少ない事を自覚しているヒナギクは、沖田とのやり取りもそこそこに、宗厳を襲った。
それを不満そうに眺めていた沖田だが、次第にその眼光が鋭くなって行く。
重傷を負っている筈のヒナギクが、宗厳相手に優勢に戦っているのだ

本来、宗厳は相手の動きを完全に読み切り、その力を己の有利になるように活かして勝利する剣士だ。
沖田の三段突きの特性を瞬時に見切り、それを逆用して得物を奪ったのが良い例だろう。
だが、先に無限刃の発火能力に不覚を取ったように、敵自身の予想をも超える事態への対処は遅れる場合がある。
今回、ヒナギクに遅れを取っているのも同様。
ヒナギクはこの島に来る以前は、主に木刀・正宗なる、所持者の潜在能力を引き出す武器を使っていた。
つまり、正宗が失われた現在、彼女の身体能力は常の戦いに比べて大きく低下しているのだ。
普段のヒナギクならばそれも織り込んで戦法を組み立てるが、今の彼女には既にそんな余裕は皆無。
正宗がある時と同じつもりで剣を振るい、それによって生じる思惑と現実のずれが、宗厳の読みを狂わせる。もっとも……
「なるほど。たまには死を決した者とやるのも悪くはないな」
宗厳が余裕で呟いたように、一時的に押されたとしてもこの程度で彼程の達人が破れる筈もない。
ヒナギクの身体能力の、彼女自身の想定と実際の差分を修正し、その動きを制御し始める。

「はああああ!」
自身の技が通用しなくなり出したのを悟ったか、単に限界が近付いたからか、ヒナギクが一気に勝負に出た。
宗厳もこれを凌げばヒナギクに限界が来ると悟っており、その動きを精密に計算して迎え撃つが……
「!?」
木刀・正宗は単に身体能力を上げる武器ではない。
正宗が引き出すのはあくまで所持者の潜在能力、つまり正宗に由来するのではなく元々ヒナギクが持っていた力。
そして、正宗によって普段から潜在能力を引き出されていた彼女は、常人より潜在能力が解放され易くなっていたのだ。
死の淵に身を置いての渾身の一撃となれば、当然のように潜在能力が全解放されるくらいには。
加えて、人間の潜在能力とは、先天的に決まっている物ではなく、人が成長すれば潜在能力もまた大きくなる。
若く人間の剣士との対戦経験の浅いヒナギクが、宗厳程の剣客と立ち合えば、僅かの時間に大きく成長しても不思議はない。
結果、ヒナギクの決死の一撃の速度は、今までとは逆に、彼女自身の想定を大きく超えるものとなった。
その速度は、剣が空気との摩擦で温度を急激に上昇させ、無限刃にこびり付いた脂を発火させる程の常識外れの領域。
当然、ヒナギクの想定よりも遅い攻撃を予測していた宗厳の防御が間に合う筈もなく、無限刃が宗厳を捉え……

172 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 22:13:53 ID:jmERPEYR
「見事であった。我等が裔、剣道の精華よ」
宗厳がヒナギク……胴体を両断されて宙を舞う彼女に向けて、賞賛の言葉を呟く。
その身を真紅に染めるのは彼女の血。
と言っても、ヒナギクの銅を両断した時に浴びた血は、宗厳の身を染める血の半分以下でしかない。
残りは、ヒナギクの剣が宗厳を捉えようとした瞬間、遂に内臓の傷が破れた彼女が吐いた血である。
これにより、宗厳を切り裂く筈だったヒナギクの剣は力を失い、その肩口を僅かに焦がすだけに留まった。
そして、両断されたヒナギクの内、上半身の側が沖田のすぐ傍に落下。
「桂さん、ヒナギクさん!」
沖田の呼びかけに反応したかのように、ヒナギクが口を動かす。
もっとも、胴を輪切りにされた人間が言葉を話せるとも思えず、これもただの痙攣運動だと考えるのが妥当であろうが。
「はい、わかりました」
しかし、沖田は、ヒナギクがまるで己の意思で何かを言い残したように、そしてそれを理解できたのかのように頷く。
そして、死してなお彼女の手に握られていた無限刃を取ると、宗厳に相対した。
「では、次は僕の番という事で問題ありませんよね」

沖田の刀が宗厳を掠める。
先程と違って沖田の剣を持て余している宗厳だが、彼に焦りの色はない。
そもそも、沖田が今、宗厳相手に五分以上に戦えているのは、ヒナギクの戦法を踏襲しているからこそ。
即ち、自身の本来の身体能力を大きく上回る剣速を想定し、それを念頭に置いて剣を振るう。
これによって、宗厳に心を読まれても、そこに描かれた沖田と現実の沖田の間には相違が生まれるという訳だ。
しかも、先程のヒナギクがそうだったように、本来の自身を上回る自分を想定しての戦いは、潜在能力を解放し易い。
故に、宗厳が、沖田の動きを、彼が心に描いているよりも下回ると決め付けてかかれば、足元を掬われる事になる。
この結果、宗厳は沖田に苦戦している訳だが、どんな戦法だろうと、種が割れてしまえば対応は可能。
慎重に読みに幅を持たせて防御に徹し、時間を稼ぐ。
その内に、目論見の通り、沖田の動きを正しく読み取れる確度が上がって行く。
沖田の戦法は、潜在能力が無作為に解放されたりされなかったりする事を利用して宗厳の読みを外すもの。
だが、そうして戦う内に沖田の潜在能力が解放される比率が急速に高まり、結果として剣速のぶれが小さくなって来た。
天才剣士と讃えられる沖田の素質が、今回は彼の戦術を妨げている形だ。
加えて、人が潜在能力を普段から発揮できないのは、自分の力で自身の身体を損なわない為の安全装置という側面も持つ。
その安全装置を停止させて戦い続ければ、元々頑健とは言えない沖田の身体が遠からず限界を迎えるのは避けられまい。
それを自覚している沖田は、ここで一気に勝負に出る事にした。

173 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 22:16:08 ID:jmERPEYR
足元の砂利をいくつか蹴上げてから構えを取る沖田。
溜めの最中に攻撃されるのを防ぐ為の牽制だろうが、宗厳は元々、真っ向から沖田の一撃を迎え撃つつもりでいる。
彼を侮っている訳ではない。
この一撃は、潜在能力を解放するだけでなく、ヒナギクと同様、宗厳との戦いを糧に、能力そのものを底上げして来る筈。
だが、どれだけ速く鋭い剣であっても、それがどの程度かをあらかじめ予測する事が出来れば、打ち勝つ事は可能。
そして、宗厳は、剣術界に巨大な勢力を為す事になる柳生新陰流の基礎を作っただけあって、剣士の見極めにも長けている。
ここまでの応酬で宗厳は既に沖田の天才性を本人以上に把握しており、この勝負を賭けた一撃の速さ・軌道も予測済み。
宗厳が計算され尽くした必勝の剣を放とうとした時、業火が宗厳の視界を遮った。

(ふむ……)
宗厳は思い出す。先程、桂ヒナギクを両断した時の事を。
彼女の上半身の落下地点が丁度、沖田のいる位置の間近であった為、沖田は彼女が握っていた無限刃を手にする事が出来た。
無論、それが宗厳の意図である筈もなく、あんな事態が起きたのは、宗厳の斬撃に、自身の意図とのずれがあった為。
ヒナギクを斬り捨てるあの瞬間、宗厳は彼女が吐いた血によって視界を塞がれており、そのせいで剣の軌道が逸れたのだ。
そして今回、沖田は勝負を賭けた一撃を、牽制と見せかけて跳ね上げた小石に当て、火花を散らせて剣を発火させた。
炎で視界を遮られた宗厳の剣はまたも僅かに理想の軌道からずれ、結果、宗厳は沖田の剣により致命傷を受ける事となる。
小石に当たればその分だけ剣の速度が損なわれるし、視界を塞がれた所で宗厳の剣がずれる保証もない。
この状況なら、相手の失策を願うよりも己の剣が競り勝つ事に賭けて来るだろうというのが、宗厳の読みだったのだが……
(そうか……)
沖田は、強さを競う為に剣を振るっているのではなく、ただ剣を交える事を楽しみとしている剣客。
だからこそ、真っ向からの勝負では自分に勝ち目がない事をあっさり認め、悲壮感も見せずに分の良くない賭けに出られた。
沖田がそのような剣士であれば、宗厳がその考えを理解できなかったのも当然。
何しろ、宗厳は己の子や孫の、同様の気持ちにすら、長らく気付いてやる事が出来なかったのだから。
(宗矩……お前も……)
……この少年のような剣士になりたかったのか?

174 :疾風の如く! ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 22:19:04 ID:jmERPEYR
「兵法の舵を取りたる世の海を 渡りかねたる石の舟かな」
宗厳が詠んだ、石舟斎という斎名の由来を示していると言われる和歌である。
宗厳は本来、世の海を渡る、即ち立身を人生の目標としていた。
しかし、国人領主として勢力を伸ばす事には失敗し、立身の手段として選んだのが、新陰流の兵法。
そして、兵法による立身は、宗厳の代には成し遂げられないかったが、子息の宗矩が見事に成し遂げ、柳生家は大名となる。
兵法を梃子に将軍の信頼を得、老中すらも恐れるほどの権勢を誇る……宗厳の価値観ならば成功と言える人生。
しかし、宗矩自身はそう思っていないと言うのだ。
彼の望みは、ただ一介の剣客として、たとえ野に屍を曝す事になろうとも、腕を競い、闘い続ける事であったという。
だが、柳生家の興隆を望む宗厳の遺志に縛られ、敗死の危険を侵す事を許されず、兵法者としての生を全う出来ずにいると。
また、宗矩のみならず、孫の兵助やその息子にとってすら、宗厳の願いは重荷となるとも言われた。
こう言った果心居士は幻術に長けた妖人ではあるが、未来や人の心を映し出す場合には、詐術を使わず真実を見せる。
そんな性格だから果心は、分野を問わず名人を愛する松永久秀や太閤秀吉にすら敬遠され嫌悪されていたのかもしれないが、
とにかくこの手の話で虚偽である事を警戒する必要はない、というのが、宗厳が経験から学んだ果心との付き合い方だ。
宗厳が望んだのは立身。だが、宗厳がそんな望みを抱いたのは、全て子孫の為。
己の望みが子孫達の枷となっているのなら、宗厳が採るべき道は一つ。だから、宗厳は果心居士の企みに与する事にした。
その甲斐あって、宗矩も今頃、望んだ通りに強い剣客と戦っている筈だ。
きっと、この沖田のように充実した顔をして、楽しそうに。
(宗矩……)
「……剣の道を、貫けよ」

「はい、必ず」
己が斬った柳生宗厳の最期の言葉を自分に向けられたものだと思った沖田は、そう答える。
次いで沖田が目を向けたのは、胴を輪切りにされた桂ヒナギク。
「ありがとうございました。疾風の剣、忘れませんよ」
両断されたヒナギクの唇の動き。それは確かに「はやて」と言っているように、沖田には見えた。
それが、彼女が最後に見せた剣技の名前だというのは、沖田にとってはごく自然な発想。
こうして沖田は、桂ヒナギクと柳生宗厳という二人の剣士の想い……彼等の想いだと捉えたものを背負い、歩き出す。
更なる強き剣士、更なる戦いを求めて。

【桂ヒナギク@ハヤテのごとく 死亡】
【柳生宗厳@史実 死亡】
【残り四十七名】

【ほノ伍 川岸/一日目/昼】

【沖田総司@史実】
【状態】打撲数ヶ所
【装備】無限刃
【所持品】支給品一式(人別帖なし)
【思考】基本:過去や現在や未来の剣豪たちとの戦いを楽しむ
一:芹沢を正午に城に行かせて義輝と会わせる。一応、罠がないか事前に調べる。
二:芹沢、五ェ門と全力で勝負する状況をつくりたい。
【備考】※参戦時期は伊東甲子太郎加入後から死ぬ前のどこかです
※桂ヒナギクの言葉を概ね信用し、必ずしも死者が蘇ったわけではないことを理解しました。
※石川五ェ門が石川五右衛門とは別人だと知りましたが、特に追求するつもりはありません。

175 : ◆cNVX6DYRQU :2011/01/03(月) 22:19:46 ID:jmERPEYR
投下終了です。

176 :創る名無しに見る名無し:2011/01/04(火) 09:04:37 ID:BeEuR4a7
ヒ、ヒナギクが死んだぁー?!
柳生も死んだぁーー!!!!

177 :創る名無しに見る名無し:2011/01/04(火) 13:02:56 ID:pk9yb0rK
うおおおお!投下乙です!
ヒナギクが熱すぎます!
そしてとうとう主催戦へのフラグが!

178 :創る名無しに見る名無し:2011/01/04(火) 22:23:50 ID:SBQ4EjRO
投下乙。
ヒナギク無念。こんな剣鬼ばかりの地で死ぬのは本望じゃなかっただろうに。
刺客、柳生宗厳との勝負は沖田の勝利で終わったが、何気に火種はまだいっぱいある。
芹沢と近藤、藤木と源太夫、そして、フリーになった志々雄。
まだまだ死者が出そうな雰囲気だなぁ。

179 :創る名無しに見る名無し:2011/01/11(火) 22:13:36 ID:0RyLEE4p
投下乙です
ヒナギクはよくやったよ…確かにこんな場所で死ぬのは不本意だろうな…
主催への道は…まだまだだろうな…ごたごたがまだ起きそう

180 : ◆cNVX6DYRQU :2011/01/12(水) 21:28:19 ID:+jI/WcAG
柳生宗矩、明楽伊織、倉間鉄山、赤石剛次で予約します。

181 :創る名無しに見る名無し:2011/01/12(水) 22:42:19 ID:Rl0u2mxt
禁止エリアはほぼ意味ない、主催でしゃばりまくり
まだ半分以上残ってるので当初の参加者以外のキャラ出まくりで
一人の書き手が私物化暴走でもうバトルロワイアルじゃねえじゃん

182 :創る名無しに見る名無し:2011/01/12(水) 22:45:09 ID:Rl0u2mxt
おまけにファンタジー禁止なのに剣気(笑)とか普通に使ってるし
そりゃあ他の書き手も逃げるわな

183 :創る名無しに見る名無し:2011/01/13(木) 01:24:08 ID:OjNiHwXF
そりゃあ貶すだけなら馬鹿でも出来るわな

184 :創る名無しに見る名無し:2011/01/13(木) 11:24:56 ID:DR7tAVWA
異を唱えたいなら、作品で唱えればいい。

185 :創る名無しに見る名無し:2011/01/13(木) 13:06:29 ID:HSNIFfqH
前も出た話だが、参加キャラにアニメ・漫画キャラが入ってる時点で
そういう不思議パワーが入ってくるのはしょうがない。
最初にその辺を確定させないまま始まったんだから、
後付でファンタジー禁止とかルールっぽく言っても
それは個人的好みの表明にしかならんよ。

まあ、気持ちとしてはわからんでもないが、
でも、史実剣豪が、まっとうな剣力だけで
不思議パワーを使う架空剣豪を凌駕する、というのは
ロマンだし、魅力的だから、
そういう意味でも不思議パワーを却下する気はないな。
書くのが難しいから稀になるのは仕方ないけど。

186 :創る名無しに見る名無し:2011/01/13(木) 13:45:14 ID:1B+3nFBg
それより剣気が存在しないと思ってる時点で話にならないわ
もしかしてアポロは本当は宇宙に行ってないとか本気で信じちゃう人なのかしら

187 :創る名無しに見る名無し:2011/01/15(土) 05:22:33 ID:ERG74p6T
剣気ってのが相手を威圧したり間合いや距離感を読み違わせたりするものとして扱われてるなら俺は文句ないな
剣気を凝縮させてビームのように放ったり、剣気で刀身をコーティングして威力アップ、とかまでいくとさすがにファンタジー過ぎるが

188 :創る名無しに見る名無し:2011/01/15(土) 07:04:51 ID:Tu7AJs/S
うちの剣道の先生はそれくらい普通にやるけどな

189 :創る名無しに見る名無し:2011/01/17(月) 00:19:23 ID:18Qu+zs1
まあオーラみたいなもんだよな
向かい合っただけでこいつには勝てねえ、やべえ!みたいな感覚があるんじゃね?
てか俺は学校の体育の剣道で元剣道部と向かい合っただけでそれを感じたわけだがw

190 : ◆cNVX6DYRQU :2011/01/20(木) 20:52:58 ID:du+aF26z
柳生宗矩、明楽伊織、倉間鉄山、赤石剛次で投下します。

191 :選んだ道 ◆cNVX6DYRQU :2011/01/20(木) 20:53:42 ID:du+aF26z
柳生宗矩と睨み合う明楽伊織・倉間鉄山・赤石剛次の三人。
三人の精神性には微妙な差があるが、宗矩程の、しかも主催の一味と思しき剣士と遭遇すれば、望む事は大体同じ。
「俺が行くぜ」
先んじて前に出ようとする赤石だが、鉄山はそれを止める。
無論、負傷し、気絶から回復したばかりの赤石の状態に対する懸念などはおくびにも出さない。
「待て。あの者からは主催者の情報を聞き出さねばならん。君の豪刀では、その前に殺してしまうだろう」
「そういうあんたも、相当の豪剣を使いそうに、俺には見えるがな」
そんな事を言い合う二人だが、いきなり響いた激しい打撃音に慌てて振り向く。
明楽が、おこりも見せずに宗矩に殺到し、仕掛けたのだ。
「使え!」
先制の一撃を防がれて素手で宗矩と対峙する事になった明楽に、鉄山が慌てて剣を投げ渡す。
「ちっ、先を越されたか」
赤石にしてみれば、既に戦闘が始まってしまった以上、それに介入するのは無粋の極み。
渋々ながら、明楽の闘いを見守る事とする。
一方の鉄山は、一騎討ちへのこだわりをそう強く持っている訳ではなく、必要とあれば明楽に加勢するつもりだ。
しかし鉄山は、多対一の戦いでは、多数の側にチームワークがなければ数が逆に枷となる事をよく知っていた。
よって、彼もまずは二人の戦いを見守り、明楽の戦い方を学んで加勢する場合の方法をシミュレートする。
二人の見詰める中、明楽は激しく宗矩に攻撃を仕掛けて行く。

「やるな」
初撃をいなされた明楽は呟いた。
明楽の拳は宗矩の柄に受けられ、同時に出した本命の蹴りも、腰に差されたまま左手で操られる鞘に阻まれる。
「使え!」
宗矩が蹴足をうまく弾いて追撃を封じ、跳び離れると同時に、鉄山が刀を投げ渡して来た。
宗矩のような正統派の剣士には拳法で向かうのが有効かと思ったが、あの捌きを見るに、確かに無手では厳しそうだ。
明楽は刀を受け取……ろうとした瞬間、宗矩が斬り込んで来る。
咄嗟に跳躍してかわしつつ刀を取る明楽。
宗矩は空中に居る明楽に逆風の太刀で仕掛けようとするが、明楽は鞘を飛ばしてそれを封じ、飛び蹴りから接近戦を挑む。
刀と肉体による明楽の攻めを防ぐ宗矩だが、やはり体術では明楽が優っているようだ。
このまま格闘の距離を保って勝負を付けようと、明楽は牽制の拳を放ちつつ、必殺の蹴りの準備を整える。
「!?」
牽制の拳を宗矩が甘んじて受けるのを見た明楽は、慌てて後ろに跳ぶ。
今の一撃は牽制とはいえ、まともに受ければそれなりの痛手にはなる筈。
それを承知で敢えて防がなかったとなれば、宗矩の狙いは一つ。
案の定、宗矩は拳撃の勢いを利用し後進して距離を取りつつ剣を振り下ろして来る。
反応が早かったお蔭で致命傷は防げそうだが、完全にかわしきるのは不可能。
覚悟を決める明楽だが、宗矩はその身体に届く寸前に剣を止めると、距離を取って構え直す。
致命傷にならない程度の一撃は、放つ気も防ぐ気もないという事か……
その剣、息遣い、眼差し……宗矩からは、いささかの乱れも歪みも感じられない。
最初に白洲で見せたあの無惨な行いさえなければ、尊敬できる剣客だと思っただろう。
「何で……あんた程の人が、こんな事に与する!?」
明楽は、思わずそう叫んでいた。

192 :選んだ道 ◆cNVX6DYRQU :2011/01/20(木) 20:54:35 ID:du+aF26z
(丸目殿のお蔭だな)
体術を交えた明楽の攻めをどうにか防ぎながら、宗矩はそんな事を胸中で呟く。
嘗て、上泉信綱の弟子でタイ捨流開祖の丸目長恵が、新陰流の正当な後継の座を賭け、宗矩に挑んで来た事がある。
その時、宗矩はうまく長恵をおだてて帰したのだが、当然、説得に失敗して立ち合う事になる可能性もあった。
タイ捨流は拳法の技法を多く取り入れた流派。よって、宗矩も拳法に対応する法を幾つも考案し、学んだのだ。
実際には、運良くと言うべきか、残念ながらと言うべきか、宗矩の説得が成功し、タイ捨流と柳生の対決は実現しなかったが、
学んだ技は、今こうして、御庭番の体術に対抗するのに活きている。
(だが……)
体術に関して言えば、明楽の技は、おそらくは丸目長恵をも上回っているだろう。
明楽の蹴りを受けた腕に衝撃が響く。このまま闘い続ければ明楽の体術を捌き切れなくなるのは確実。
事態を打開せんと、宗矩は明楽の一撃を敢えて防がす、その衝撃を利用して間合いを開く。
「!?」
宗矩は後進しつつ剣を振り下ろそうとするが、明楽の素早い反応を見て動きを止める。
拳法家らしく明楽の身体は頑健で、中途半端な攻撃では致命傷を与えるのは難しいだろう。
そして、忍びに対して致命傷にならない程度の傷を負わせるのは、無意味どころか手負いの獅子としてしまう危険さえ孕む。
実際、着衣の下から覗く明楽の身体には無数の傷跡が刻まれ、彼が幾度も手傷を負いながら激戦を生き延びてきた事が伺える。
まして、宗矩の今の状況では、万全の状態で全力の剣を振るえる回数は限られているのだし……

「何で……あんた程の人が、こんな事に与する!?」
「お主にはわかるまいな」
明楽の叫びに宗矩はただそう返す。
明楽伊織が生きたのは、幕府の土台は揺らぎ、海外列強の手が日本にまで伸び、危機感が全国を覆っていた時代。
多くの者がそれぞれの志に従って国を救わんとして相争い、明楽の住む江戸もその渦中に巻き込まれることになる。
倒幕の志士達は御用盗を送って江戸の治安と幕府の権威を打ち砕かんとし、その性質から御用盗には人格の破綻した外道も多数。
これに対し、明楽は、列強から日本を守る為に腐った幕府を倒し、強い国を作り直さんとする志士達の大義を一顧だにせず、
あくまでも目に入る人々を守り、眼前で行われた非道を憎むという、いわば小義の為に闘い続けた。
この点、大義を捨てて小義を取って来たという点では、宗矩も明楽と同じ。
宗矩は、柳生家の興隆という、父が果たせなかった志を実現させるという小義の為に人生を捧げ、
その為に、互いに切磋琢磨する事で剣技を発展させるという、剣士ならば最も優先すべき大義を曲げた事が幾度ある事か。
だが、共に大義を捨てて小義に生きながら、宗矩は明楽のようには己の生き方を確信できず、思い悩んで来た。
更に、出世するにつれ、幕臣として天下の平安を守るべき大義と、柳生の当主として家来や弟子達を守るべき小義も生まれる。
これら絡み合う義の狭間で懊悩していた宗矩は、それ故に果心居士の誘いに乗った。
それまでの軌跡や心の綾は、説明しても明楽には理解されないだろうし、そんな事を理解させる必要もない。
今の宗矩はただの剣士、故に必要なのは、互いに剣技を披露し、それを理解し合う事のみ。
宗矩は、心の内を語る代わりに、今の己に可能な最高な剣を見せる事を決め、まずはその前に果たすべき義務を果たす事にする。


193 :選んだ道 ◆cNVX6DYRQU :2011/01/20(木) 20:55:19 ID:du+aF26z
(丸目殿のお蔭だな)
体術を交えた明楽の攻めをどうにか防ぎながら、宗矩はそんな事を胸中で呟く。
嘗て、上泉信綱の弟子でタイ捨流開祖の丸目長恵が、新陰流の正当な後継の座を賭け、宗矩に挑んで来た事がある。
その時、宗矩はうまく長恵をおだてて帰したのだが、当然、説得に失敗して立ち合う事になる可能性もあった。
タイ捨流は拳法の技法を多く取り入れた流派。よって、宗矩も拳法に対応する法を幾つも考案し、学んだのだ。
実際には、運良くと言うべきか、残念ながらと言うべきか、宗矩の説得が成功し、タイ捨流と柳生の対決は実現しなかったが、
学んだ技は、今こうして、御庭番の体術に対抗するのに活きている。
(だが……)
体術に関して言えば、明楽の技は、おそらくは丸目長恵をも上回っているだろう。
明楽の蹴りを受けた腕に衝撃が響く。このまま闘い続ければ明楽の体術を捌き切れなくなるのは確実。
事態を打開せんと、宗矩は明楽の一撃を敢えて防がす、その衝撃を利用して間合いを開く。
「!?」
宗矩は後進しつつ剣を振り下ろそうとするが、明楽の素早い反応を見て動きを止める。
拳法家らしく明楽の身体は頑健で、中途半端な攻撃では致命傷を与えるのは難しいだろう。
そして、忍びに対して致命傷にならない程度の傷を負わせるのは、無意味どころか手負いの獅子としてしまう危険さえ孕む。
実際、着衣の下から覗く明楽の身体には無数の傷跡が刻まれ、彼が幾度も手傷を負いながら激戦を生き延びてきた事が伺える。
まして、宗矩の今の状況では、万全の状態で全力の剣を振るえる回数は限られているのだし……

「何で……あんた程の人が、こんな事に与する!?」
「お主にはわかるまいな」
明楽の叫びに宗矩はただそう返す。
明楽伊織が生きたのは、幕府の土台は揺らぎ、海外列強の手が日本にまで伸び、危機感が全国を覆っていた時代。
多くの者がそれぞれの志に従って国を救わんとして相争い、明楽の住む江戸もその渦中に巻き込まれることになる。
倒幕の志士達は御用盗を送って江戸の治安と幕府の権威を打ち砕かんとし、その性質から御用盗には人格の破綻した外道も多数。
これに対し、明楽は、列強から日本を守る為に腐った幕府を倒し、強い国を作り直さんとする志士達の大義を一顧だにせず、
あくまでも目に入る人々を守り、眼前で行われた非道を憎むという、いわば小義の為に闘い続けた。
この点、大義を捨てて小義を取って来たという点では、宗矩も明楽と同じ。
宗矩は、柳生家の興隆という、父が果たせなかった志を実現させるという小義の為に人生を捧げ、
その為に、互いに切磋琢磨する事で剣技を発展させるという、剣士ならば最も優先すべき大義を曲げた事が幾度ある事か。
だが、共に大義を捨てて小義に生きながら、宗矩は明楽のようには己の生き方を確信できず、思い悩んで来た。
更に、出世するにつれ、幕臣として天下の平安を守るべき大義と、柳生の当主として家来や弟子達を守るべき小義も生まれる。
これら絡み合う義の狭間で懊悩していた宗矩は、それ故に果心居士の誘いに乗った。
それまでの軌跡や心の綾は、説明しても明楽には理解されないだろうし、そんな事を理解させる必要もない。
今の宗矩はただの剣士、故に必要なのは、互いに剣技を披露し、それを理解し合う事のみ。
宗矩は、心の内を語る代わりに、今の己に可能な最高な剣を見せる事を決め、まずはその前に果たすべき義務を果たす事にする。

194 :選んだ道 ◆cNVX6DYRQU :2011/01/20(木) 20:56:08 ID:du+aF26z
「何だって?」
宗矩が小声で何事かを呟き、明楽が聞き返す。
「その場所に、我等の主が居る場へ通じる入り口がある」
いきなり主催者の核心に迫る情報を教えられて訝しむ明楽にかまわず、宗矩は言葉を継ぐ。
「これが、わしを討った者への褒賞。討てずに死ねば、今の言葉は誰にも伝わらぬ」
それだけ言うと、宗矩は剣を構えて前に出る。

宗矩の言葉が本当ならば、これは是が非でも持ち帰り仲間に伝えなれければならない情報だが、果たして真か嘘か。
ただ一つ言えるのは、あの言葉が事実だとすれば、宗矩は明楽に決戦を挑むつもりだという事だ。
先程のやり取り、初めの一言は宗矩が声を潜めていた為に鉄山達には聞こえなかっただろうが、それ以降は聞こえていた筈。
だとすれば、明楽は何も宗矩を倒さずとも、あの数語を叫べば、褒賞とやらを仲間達に渡す事が出来る。
或いは、忍びの体術を持ってこの場を逃れ、主催者を目指しても良い。
なのに明楽に主催者の居所を伝えたという事は、宗矩は明楽に叫ぶ暇も逃げる余裕も与えるつもりはないという事。
逆に、あの言葉が嘘だとすれば、明楽にそう思わせ、引っ掛けるのが宗矩の目的というところか。
だとすれば、これからの宗矩の行動を見極めれば、その言葉の真偽も見分けられる公算が高い。
明楽もまた構えを取り、宗矩の動きに対応しようとする。

そして、二人は同時に地を蹴った。
宗矩は無論、明楽にとっても、宗矩が本気で勝負に出た場合、逃げ腰で掛かればあっさり斬られる事になるのは明らか。
二人は全力を込めた一撃を、真っ向から打ち込み合う。
膂力では明楽が優るが、その力を剣に乗せる技術においては宗矩に一日の長がある。
その為、二人の剣はほぼ……いや、完全に同時に相手の身体に届く、即ち相討ち。そう見えた瞬間……
明楽きいきなり刀を引くと、背後に居る鉄山達に投げ渡す。
次の瞬間、無手になった明楽を襲う宗矩の剣。
明楽は防御の構えを取るが、素手で宗矩必殺の剣を防ぎ切れる筈もなく、その効果は死を一瞬先に伸ばす事のみ。
だが、明楽が欲しかったのはその一瞬。それを利用し、明楽は思い切り叫ぶ。
「にノ参にある、道祖神の下だ!」
それだけを言い残し、明楽伊織は宗矩の剣の下に斃れた。

【明楽伊織@明楽と孫蔵 死亡】
【残り四十六名】

195 :選んだ道 ◆cNVX6DYRQU :2011/01/20(木) 20:56:57 ID:du+aF26z
明楽が倒れたのを見て、即座に進み出ようとする赤石を、鉄山が留める。
「まだ邪魔をするつもりか?」
赤石が睨むが、鉄山は動じる事なく宗矩を示す。
「君の性格からして、手負いの相手には全力を出し切れんだろう」
確かに、剣を持つ右手の袖口から垂れる血は、宗矩が腕に浅からぬ傷を追っている事を表していた。
この傷の元は、明楽が鉄山の投げた刀を取った直後、牽制の鞘に隠して飛ばした隠し小柄によって受けたものだ。
動脈を掠める、即ち、そのままならば大した傷ではないが、全力を込めて腕を振るえば傷が広がる絶妙な位置への傷。
戦いの最中、明楽に手傷を負わせる機会を得た宗矩が寸前で剣を止めたのは、その一撃で腕の傷が重くなるのを案じた為もある。
そういう訳で、小柄の傷はいわば宗矩の剣を封じる枷として働いていたのだが、最後の瞬間、宗矩はそれを無視した。
傷を構わず渾身の一撃を放ち、結果として明楽を討てたが、代わりに腕の動脈が破れ、これでは存分には剣を振るえまい。
鉄山が推測した通り、そのような者を相手にするのは赤石の趣味とは異なる。
「君は、城下に戻って仲間を募り、明楽殿の言っていた道祖神に向かってくれ。私もあの者の相手をしてから後を追おう」
「……」
にノ参にある道祖神の下……それが、宗矩の言っていた、主催者に続く道の入り口である事は明らかだ。
赤石は無言で踵を返し、歩み去る。
完全に納得した訳ではないが、明楽が遺した情報を活かし、一刻も早く主催者を討つのがあの漢への最良の供養なのは事実。
今の戦いを見て、胸の奥に生まれた炎は、非道な主催者にぶつける事で晴らすとするか。

【へノ弐 森の中/一日目/午前】

【赤石剛次@魁!男塾】
【状態】腕に軽傷
【装備】木刀
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を斬る
一:にノ参の道祖神に向かう
二:刀を捜す
三:濃紺の着流しの男(伊烏義阿)が仇討を完遂したら戦ってみたい
※七牙冥界闘・第三の牙で死亡する直前からの参戦です。ただしダメージは完全に回復しています。
※武田赤音と伊烏義阿(名は知りません)との因縁を把握しました。
※犬飼信乃(女)を武田赤音だと思っています。
※人別帖を読んでいません。

196 :選んだ道 ◆cNVX6DYRQU :2011/01/20(木) 20:57:38 ID:du+aF26z
鉄山は、赤石が自分の言葉に従って立ち去ってくれた事に息を付き、宗矩に刀を向ける。
宗矩の右腕の状態からして、全力で剣を振るう事はまず不可能な筈。
無理に全力の剣撃を放てば傷が悪化し、二、三振りで腕が使い物にならなくなるだろう。
だが、鉄山はその事で宗矩を侮るつもりはない。
何故ならば、宗矩は既に死を決した、故に心に一切の怖れを持たない剣士なのだから。
だからこそ、明楽の後に二人の強敵が控えている事を知りながら、腕の傷を慮る事なく戦う事が出来たのだ。
あの戦いの最後の瞬間、明楽との相討ち必至と見られる状況で、剣に毛一筋の動揺も表さなかったのもこの覚悟ゆえ。
対する明楽は、相討ちになれば主催の居所を知る者が居なくなる為、その剣にごく僅かな躊躇が生まれた。
達人同士の決闘では、ほんの僅かの動揺が勝負を分ける決定的な要素になる事が往々にしてある。
己の中の微かな躊躇いを発見した明楽が、瞬時に勝負を見切った事で、今回は鉄山達に情報と刀を遺す事が出来たが……
鉄山が赤石と宗矩の勝負を妨げたのも、宗矩のこの覚悟を恐れた為。
先の伊良子清玄との戦いでわかるように、赤石もまた死を恐れず、命を捨ててでも敵を倒さんとする勇士。
このような剣士同士が戦えば、その帰結は高い確率で相討ち。
そんな形で赤石を死なせる事を肯んじ得なかった為、鉄山は宗矩との勝負を自身で引き受けた。
である以上、鉄山自身もここで命を落とすつもりはない。宗矩がどれだけ手強い武士であっても。
鉄山は前に出てへノ壱に進入し、宗矩に対して剣を構える。

だがそれにしても、宗矩は、そして主催者達は何を考えているのか。
道祖神の下に主催者に通じる道があるという言葉、あれは、ただ明楽を惑わす為に言い放った出鱈目ではない筈。
明楽が命を捨ててまでそれを伝えたのは、生と死の狭間に共に身を置き宗矩を見定めた上で、真実だと見極めたからだろうし、
彼の眼力は十分に信頼に値するものだったと、鉄山は考えている。
だとすると、主催に通じる重要な情報をあっさりと漏らし、それを知る赤石が去るのを止めようともしない宗矩の態度は奇妙だ。
参加者に攻められる事も主催者の計画の内なのか、或いは、宗矩が主催者に完全には同心していないのか……
それをも見定めんと、鉄山は刀を正眼に置いたまま、ひたと宗矩を見据えた。

【へノ壱 森の中/一日目/午前】

【倉間鉄山@バトルフィーバーJ】
【状態】健康
【装備】 刀(銘等は不明)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を打倒、或いは捕縛する。そのために同志を募る。弱者は保護。
一、柳生宗矩の思惑を見極め、倒す。
二、にノ参の道祖神から主催を目指す。
三、十兵衛、緋村を優先的に探し、ついで斎藤(どの斎藤かは知らない)を探す。志々雄は警戒。
四、どうしても止むを得ない場合を除き、人命は取らない。ただ、改造人間等は別。

【柳生宗矩@史実?】
【状態】腕に重傷、胸に打撲
【装備】三日月宗近@史実
【所持品】「礼」の霊珠
【思考】
基本:?????
一:へノ壱に侵入した者を斬る
二:?????

197 : ◆cNVX6DYRQU :2011/01/20(木) 20:58:20 ID:du+aF26z
投下終了です。

198 :創る名無しに見る名無し:2011/01/21(金) 02:54:15 ID:g6nPew21
乙!
タイマンでやってもやっぱつええな。
さすが将軍家指南役。いい戦いだった。

199 :創る名無しに見る名無し:2011/01/21(金) 17:59:31 ID:651YOxT1
投下乙です!

200 :創る名無しに見る名無し:2011/01/21(金) 22:27:43 ID:VveJuZWU
投下乙です

明楽は最後にいい仕事したな…
さて、明石に情報が行ったが…鉄山さん、明石に集団を集めて纏させるとか無理では…

201 :創る名無しに見る名無し:2011/01/27(木) 21:50:52 ID:0PplKRKt
倒すことより情報か、さすが忍びだぜ

202 : ◆cNVX6DYRQU :2011/02/01(火) 06:56:58 ID:gfmJmwC9
辻月丹、富田勢源、徳川吉宗、秋山小兵衛、魂魄妖夢、藤木源之助、香坂しぐれ、佐々木小次郎(偽)、細谷源太夫で予約します。

203 : ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 06:47:47 ID:dR/0q2GJ
上記9人で投下します。

204 :義手と偽手 ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 06:49:48 ID:dR/0q2GJ
突然の背後からの突風に突き倒される細谷源太夫。
すぐさま追い討ちの剣が振り下ろされるのを気配で察すると、咄嗟に勘だけで行李を振り回し、それを防ぐ。
行李が砕ける音で防御の成功を悟った細谷は、攻撃を続けようとする敵の足元に剣を薙ぎ、かわす隙に立ち上がる。
そこで初めて細谷は相手の姿を見るが、その異様な眼付きが、この敵に対しては誰何も問答も無意味だと如実に示していた。
思わず気圧される細谷だが、そうでなければ次にやって来た凄まじい横薙ぎであっさり斬られていたかもしれない。
及び腰になっていたおかげで、細谷は胸を浅く斬られつつどうにか間合いを外し、ここで漸く、剣を構え直す。
やっとまともに戦える体勢を整えた細谷だが、激しい気力の消耗により、既に肩で息をしていた。
この男は明らかに細谷よりも上手。しかも、不意打ちを受けた事で完全に戦いの主導権を握られている。
(これが、儂の最期の闘いとなるか)
あっさりと覚悟を決める細谷。だが、それは長い用心棒としての経験から導かれる確かな予感だった。
この相手は危険だ。いつもの仕事ならば逃げるか、時間を稼いで助けを待つしか手がないような強敵。
だが、こんな殺し合いを強制する者達が支配するこの島で、助けなど期待できない。
この者が弓を持っていない所を見ると、主催者の手先は別にいる訳で、仲間達が来てくれるとしてもそちらを片付けてからの筈。
たった数度の応酬で応酬でここまで消耗するようでは、仲間が来るまで持ち堪えるなど不可能だろう。
同様に、足腰の衰えた今の細谷には、この頑健そうな剣士から逃げ延びる事も出来そうにない。
そして何より、細谷には仲間の足手纏いとなってまで生き延びようという気は、既になかった。
妖術師と武術の達人の双方を抱える主催者、この男のような強く凶悪な参加者。
この状況では、いくら仲間達が強くとも、無傷でこの御前試合を切り抜けるのは難しいだろう。
そして、自分達の中で誰かが斃れるのならば、最初の一人は年の順から言っても、腕前から言っても自分になるのが道理。
第一、若く志のある他の者達と違い、細谷はここから生きて帰っても、待っているのは厄介者として息子の世話になる未来。
それならば、仲間の為、ここでこの危険な剣士を道連れに、無理ならせめて手傷だけでも負わせて死ねれば本望。
悲壮な覚悟を固めて、細谷は剣を構え直した。

一方、ここまで押し気味で闘っている男……藤木源之助の心にも、密かな焦りが生まれていた。
本来、藤木の力をもってすれば、押し気味に戦うどころか、既に細谷を討ち取っていてもおかしくないのだ。
なのに思うように身体が動かない。まるで、身体の重心がずれたかのように、完全な均衡が取れずにいる。
腰に脇差がないからか、長く行李を背負っていたのが悪かったのか……
まあ、不思議な珠のおかげで癒えたとはいえ、あれだけの重傷を負った後では多少の後遺症は仕方ないのかもしれないが。
藤木は再び剣を構え、左手に意識を集める。
身体全体の均衡が僅かに狂っているのに対し、左腕だけは普段よりも好調だ。
前の戦いではこの左腕のおかげであの若者との接近戦で優位に立つ事が出来たし、その風を操る技もすぐに修得した。
身体が本調子ではない以上、この戦いでは左腕に頼るしかないだろう。
「何かお前の左腕に引っかかるもんがあるんだ。一応気をつけとけ」
坂田銀時のその忠告を、藤木とて忘れた訳ではなかったが。

205 :義手と偽手 ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 06:51:44 ID:dR/0q2GJ
「しぐれ殿!」
富田勢源が抑えた声で叫ぶのを見守りながら辻月丹は周囲を警戒していた。
勢源が呼んでいるのは香坂しぐれ……勢源の同行者であった、重傷を負った女人の名だそうだ。
だが、あの夜明けの主催の声を聞いて激高した勢源が、彼女を道祖神の祠に置いて来てしまったとか。
そして、主催者との遭遇で負傷した勢源は月丹と出会い、共に祠に戻ってみると、そこにあったのは無残な焼け跡。
あれを見た勢源が、自責して懸命にしぐれを探そうとしているのも当然と言えよう。
だが、この決して小さくはない島で、人一人を碌な手掛かりなしに見つけ出すのは容易ではない。
加えて、あの焼け跡や勢源と彼を通して聞いたしぐれの体験からして、島には主催の言葉に乗せられた参加者も多いようだ。
勢源もそれがわかっているから声を抑えているのだろうが、それでも危険な剣士を招いてしまう危険はある。
だからこそ月丹は周囲に注意を払っていたのだが、その気配に気付いたのは勢源の方が早かった。
思わず小太刀に手を掛ける勢源。
普通の人間と似て非なるその気配に、咄嗟に夜明けに戦った妖術師を連想したのは仕方ない事だろう。
もっとも、落ち着いてみれば、その少女の気配があの妖人とはまるで違うとすぐわかるのだが。
近くの木の陰から現れた少女は勢源の動きに反応し、機敏な動きで剣を構える。
構えるだけですぐに切り掛からなかったのは、相手の二人が共に老剣士であったからだろうか。
「妖夢、待て」
妖夢と呼ばれた少女に続き、青年と老人の二人が現れ、少女を制止する。
「すまぬ、こちらは争うつもりはない」
危うく遭遇戦をしかけた五人だが、今回は出会った両者が集団であった事もあって簡単に誤解が解けた。
「こちらこそ申し訳ない。私は富田勢源、こちらは辻月丹殿です」
穏やかに自己紹介する勢源だが、その言葉に相手方にいる老人が眼を見開く。
富田勢源と言えば戦国の高名な剣客と同じ名前。それで驚いたのだろうか。まあ、月丹の名もそれなりに知られてはいるが。
「そうか。剣名は聞き及んでいる。余は徳川吉宗、こちらは秋山小兵衛と魂魄妖夢だ」
その言葉に、今度は月丹が目を見開く番だった。

「一つお聞きするが、香坂しぐれ殿という若い女人を御存知ありませんか?」
余程しぐれという女が心配なのか、青年の、月丹にとっては衝撃的な名乗りをあっさり流して彼女の事を聞く勢源。
「すまぬが、この島に来て以来、ここにいる妖夢以外の娘には会っていない」
「私も知らないわ」
否定的な答えに勢源は落ち込むが、更に食い下がる。
「おそらく鞘のない小太刀を持ち、右手首を切り落とされた女性なのですが、本当に心当たりはありませんか?」
そう言うと、今度は三人が顔を見合わせる。
「そういう事なら、心当たりがある」
吉宗はそう言うと、一行を木立ちの中に導いて行った。

206 :義手と偽手 ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 06:53:36 ID:dR/0q2GJ
佐々木小次郎は、木刀を構えたまま、もう長いこと立ち尽くしていた。。
日の光を背に受け、少しずつ位置を変えていく己の影をじっと見つめ続ける小次郎。
どれくらいそうしていたか……小次郎は満足そうに頷くと構えを解く。
今までのは小次郎なりの修練で、何かしら得るところがあったという事だろうか。
傍から見ている分には、小次郎は何もせず突っ立っていたようにしか見えないのだが……
「退屈をさせてしまったか?ならば次は、もう少し面白いものを見せよう」
小次郎がそう言った相手は、何時の間にか彼の後ろに忍び寄っていた女剣士、香坂しぐれ。
両者はそれ以上の言葉を交わす事なく、ともに剣を構え、自然に交戦状態に入る。
しかし、小次郎はどうしてしぐれの接近を悟る事が出来たのか。
しぐれは完全に気配を消していたし、小次郎も一度たりとも振り返らなかったはずなのだが。
木刀では、刀身に背後の敵を映すような芸当も出来ようがないし……
そのような不審があった為に、しぐれはこの戦いでは慎重に臨む事にする。
即ち、小太刀の間合いの不利を補う為に至近距離に跳び込むのではなく、切れ味の差を活かして木刀の切断を狙う戦術だ。
そして、この待ちの戦法が、初手の応酬ではしぐれの命を救う事となった。

「未だ到らぬか……」
その声を聴きながら、しぐれは驚愕の表情を浮かべて跳び下がり、辛うじて小次郎の剣を逃れる。
それでも完全には避けきれず、その肩には木刀の鋭い斬り下げによる裂傷が刻まれた。
無論、小次郎の剣を小太刀で迎撃して破壊するような余裕は全くない。
何しろ、一瞬の間に、縦斬り・横薙ぎ・円を描く一撃の三つの攻撃がほぼ同時にしぐれを襲って来たのだ。
高速の連続攻撃などとは明らかに違う。
最初の縦斬りがしぐれに届くよりも前に、既に二撃目・三撃目が放たれてしぐれに迫っていたのだから。
では、隠し持っていた木刀による三刀流か。それも否。何しろ……
考えがまとまる前に、小次郎が再び動き、しぐれは考察を中断する事を余儀なくされる。
そして、この一撃、いや三撃は、最初の攻撃で小次郎が「未だ到らぬ」と言ったのがハッタリでない事を如実に示す。
先程の攻撃は、三つの攻撃が「ほぼ」同時に放たれたが、今回は三撃が全く同時に放たれたと言っても良いかもしれない。
一撃一撃が達人の渾身の一撃と変わら鋭さを秘めた剣が同時に三つ……さすがにこれを完全に防ぎ切るのは至難。
小次郎の剣が、ついにしぐれの右手を捉えた。

207 :義手と偽手 ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 06:56:26 ID:dR/0q2GJ
上段の構えから、再び左手だけを振り下ろす藤木。だが、使う技は前とは少し違う。
細谷が、両足を踏ん張り、再び突風に襲われた場合に備えているのを見たからだ。
浮羽神風流の技を盗んだ藤木だが、さすがに付け焼刃の彼の風には、あの少年が放った「疾」ほどの力はない。
細谷のように体格が優れた剣士に、そうと知って身構えられてしまえば、踏みこらえられてしまう可能性が高いだろう。
故に、左手から発する物をただの突風ではなく、鋭い刃と為す。
それは、刃の数や威力では劣るが、やはり浮羽神風流の一手である「嵐」に類似した技。
あの闘いで烏丸与一が見せた技は「疾」のみだが、剣によって大気を操れるならば鎌鼬に行き付くのはいわば常道。
特に、藤木は浮羽神風流の技を「晦まし」の延長として使っており、「晦まし」で振り下ろされるのは実体がないとはいえ剣。
ならば、藤木がこの新技で突風ではなく刃を放つようになるのは当然の成り行きと言える。
かくして刃が放たれ、回避の用意がなかった細谷の肩に切り傷が刻まれた。
しかし、細谷は傷を負いながら微動だにしない。
藤木の鎌鼬に達人を仕留める程の威力がなかったとはいえ、普通ならば予想外の技に驚いて隙を見せる筈なのだが。
原因は細谷の覚悟。
死を決したその覚悟が、一種の悟りに似た効果で細谷の心を鎮め、藤木の妖剣と負傷による動揺を抑えたのだ。

細谷は、藤木が左手に続いて右手を振り下ろすのと同時に身体ごと剣をぶつけて行き、鍔迫り合いに持ち込む。
鍔迫り合いは藤木も得意とするところだが、剣を保持するのが両手と片手ではさすがに不利は否めない。
それでも、体勢を崩されながらもどうにか堪え、左手を引き戻すまで転倒せずに耐えたのは流石と言うべきか。
左手を戻した藤木は、それを剣の峰に添え、包丁で西瓜を切るが如く、細谷の剣を切り裂いた。
「ぐっ!」
剣を切断した藤木の刀はそのまま細谷の身体を切り裂き、さしもの細谷も苦痛の呻き声を上げる。
とはいえ、体勢の崩れた状態から、剣を切断した余勢での一撃では、細谷に致命傷を与えるには至らない。
当然、死を覚悟している細谷が負傷したくらいで退く筈もなく、至近距離から、半ばまで切断された剣を突き出す。
既に振り抜いた剣を引き戻して防御するのは間に合わないし、体勢が崩れた現状では回避も困難。
すぐにそれを悟った藤木は、咄嗟に左腕だけを引き戻して細谷の突きを受ける。
敢えて左腕に剣を刺させる事で細谷の動きを封じ、とどめを刺そうと言うのだ。
ここまで役に立ってくれた左腕に重傷を負うのは痛いが、死を覚悟した達人を斃すのにそれくらいの犠牲は已むを得まい。
だが、細谷の剣と藤木の腕が接触した瞬間、予期せぬ衝撃を受けて、藤木は転倒する。
折れたとはいえ、日本刀の突きがあの勢いで腕に当たれば、剣は腕に刺さり、それによって勢いは減殺される筈。
なのに、まるで金属と金属がぶつかったような音と衝撃に、藤木は戸惑う。
慌てて腕の突きを受けた部分を見てみれば、そこは細谷の突きによって裂け陥没しているが、血は一滴も出ていない。
明らかに異常な事態に混乱し、何とか事態を把握しようとする藤木。
そして、持ち主が妖術の力によって惑わされているのを察し、藤木の懐にあった宝珠がまぶしく光る。
神仏をも使役したという役行者の力を受け継いだ珠は、藤木の左手と、更には心に施された幻術の力を除き、真実を露わにした。
藤木の頭の中に蘇る、無惨に死した師の記憶。
と言っても、昨夜、柳生の剣士によって眼前で虎眼が殺された記憶ではない。
もっと前、そう、伊良子清玄が師を討った時の記憶だ。
加えて、死の仇である清玄との、あの死闘の記憶、更に、己がこの新しい腕を得た記憶もまた……

208 :義手と偽手 ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 06:58:12 ID:dR/0q2GJ
木立ちの中、勢源が杖代わりにしていた二刀小太刀の鞘が、異物を踏み付けた。
「これは……木屑?」
そう、木立の一角、彼等が居る辺りに、木屑が散乱しているのだ。
「妖夢、頼む」「ええ」
その中心となる一般の木の傍で、吉宗に促され、妖夢が跳躍する。
この木は、下の部分は枝や足掛かりとなる物がなく登るのが困難そうな一方で、上方では太い枝が交わっており、
彼女のように身軽な者にとっては良い休憩場に、また作業場にもなりそうだ。
「しぐれ殿がここに?」
「うむ。余等がここに身を休めに来る前に、その者が使っていた形跡がある」
そう聞かされて勢源は少しほっとする。
あの高い枝の上に上れるくらいなら、祠で何があったにせよ、しぐれが更なる重傷を負ったという訳ではなさそうだ。
ここで休んでから移動したという事は、体力もある程度は回復できている可能性が高いし。

(忍びか……)
一方、月丹は妖夢の跳躍力から、そう推測した。それならば、常人とは何処か異なる気配にも納得が行くというもの。
忍びの女と、経験が豊富そうな老人。剣術に優れた貴人の護衛としては、まっとうな剣客よりも適任かもしれない。
そう、月丹は、徳川吉宗こそが、この御前試合の黒幕であり、小兵衛と妖夢はその護衛ではないかと疑っていた。
目の前にいる青年は、立ち居振る舞いからも高貴さが滲み出ており、彼が吉宗と言うのは嘘ではないだろう。
もっとも、吉宗は他の参加者と争うつもりはないと言うし、それが真実なら主催者では有り得ない事になるが。
だが、その言葉を月丹がいまいち信用する気に慣れない理由は、吉宗の二人の供。
魂魄妖夢から感じられる普通の人間とは異質な気配と、秋山小兵衛の自分に対する異常な関心だ。
特に、小兵衛は、あからさまではないものの、出会った時から月丹を伺っているのが感じられる。
或いは、月丹が吉宗を疑っているのを悟っているのだろうか……?
「これよ」
月丹が考えをめぐらしている間に、妖夢が枝の上から何かを取って下りて来た。
「多分、これは作り損じて捨てたんだと思うけど」
そう言って妖夢が見せたのは、作りかけではあるが明らかに……
「義手!?」

【へノ壱 木立の中/一日目/昼】

【徳川吉宗@暴れん坊将軍(テレビドラマ)】
【状態】健康
【装備】打刀(破損)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者の陰謀を暴く。
一:小兵衛と妖夢を守る。
二:主催者の手掛かりを探す。
三:妖夢の刀を共に探す。
【備考】※御前試合の首謀者と尾張藩、尾張柳生が結託していると疑っています。
※御前試合の首謀者が妖術の類を使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識及び、秋山小兵衛よりお互いの時代の齟齬による知識を得ました。

【秋山小兵衛@剣客商売(小説)】
【状態】健康
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】基本:情報を集める。
一:妖夢以外にも異界から連れて来られた者や、人外の者が居るか調べる
二:辻月丹が本物かどうか知りたい
三:主催者の手掛かりを探す
【備考】※御前試合の参加者が主催者によって甦らされた死者かもしれないと思っています。
 又は、別々の時代から連れてこられた?とも考えています。
※一方で、過去の剣客を名乗る者たちが主催者の手下である可能性も考えています。
 ただ、吉宗と佐々木小次郎(偽)関しては信用していいだろう、と考えました。
※御前試合の首謀者が妖術の類を使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識を得ました。

209 :義手と偽手 ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 06:59:12 ID:dR/0q2GJ
【魂魄妖夢@東方Project】
【状態】健康
【装備】無名・九字兼定
【所持品】支給品一式
【思考】基本:首謀者を斬ってこの異変を解決する。
一:この異変を解決する為に徳川吉宗、秋山小兵衛と行動を共にする。
二:愛用の刀を取り戻す。
三:主催者の手下が現れたら倒す。
四:自分の体に起こった異常について調べたい。
【備考】※東方妖々夢以降からの参戦です。
※自身に掛けられた制限に気付きました。楼観剣と白楼剣があれば制限を解けるかもしれないと思っています。
※御前試合の首謀者が妖術の類が使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識を得ました。

【富田勢源@史実】
【状態】足に軽傷
【装備】蒼紫の二刀小太刀の一本(鞘付き)
【所持品】なし
【思考】:護身剣を完成させる
一:香坂しぐれを探す
二:死亡した佐々木小次郎について調べたい
※佐々木小次郎(偽)を、佐々木小次郎@史実と誤認しています。

【辻月丹@史実】
【状態】:健康
【装備】:ややぼろい打刀
【所持品】:支給品一式(食料なし)、経典数冊、伊庭寺の日誌
【思考】基本:殺し合いには興味なし
一:富田勢源の探し人に付き合う
ニ:徳川吉宗が主催であるか探り、そうであれば試合中止を進言する
三:困窮する者がいれば力を貸す
四:宮本武蔵、か……
【備考】
※人別帖の内容は過去の人物に関してはあまり信じていません。
 それ以外の人物(吉宗を含む)については概ね信用しています(虚偽の可能性も捨てていません)。
※椿三十郎が偽名だと見抜いていますが、全く気にしていません。
 人別帖に彼が載っていたかは覚えておらず、特に再確認する気もありません。
※1708年(60歳)からの参戦です。
※伊庭寺の日誌には、伏姫が島を襲撃したという記述があります。著者や真偽については不明です。

210 :義手と偽手 ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 07:00:51 ID:dR/0q2GJ
佐々木小次郎が三つの斬撃を同時に放ち、しぐれに迫って行く。
だが、当然の事だが、放たれたのが全く同時であっても、軌道が異なる以上、しぐれへの到達は同時にはならない。
更に、しぐれは小次郎の縦斬りに対して自ら右腕を差し出し、接触を早めた。
腕一本を犠牲にして三つの攻撃の内一つを防ぎ、残りの二つを体術と小太刀で凌ぎ切るつもりか。
しかし、腕を砕かれる痛みを意志力で抑え込んだとしても、衝撃が身体に伝わる事による隙はなくせない筈。
そして、小次郎の木刀がしぐれに接触し……
「何!?」
小次郎の刀はしぐれの手首に命中したものの、砕く事はなかった。
と言っても、弾き返されたのではなく、逆に木刀が腕に切込んだのだ。
(義手か!?)
そう、小次郎が持つ木刀は明らかに通常の木刀を上回る鋭さを持ってはいるが、しぐれの手が生身であればこうはならない。
しぐれの右腕が木製の、それも粘性と柔軟性に富んだ木で作られた義手であった為に、木刀が食い込んだのだ。
今までそれを見抜けなかったのは、義手が精巧であった為もあるが、より大きいのは二人の立ち位置。
しぐれが日のある方向から小次郎に近寄って来た事もあって、小次郎は真っ向から太陽を見る形になっている。
ここまでは逆光の不利を全く感じさせずに闘っていた小次郎だが、彼の心眼もしぐれの義手までは見抜けなかったようだ。
そして、しぐれは義手に食い込む事で一瞬だけ動きを止めた小次郎の剣に、小太刀による一撃を浴びせた。
更に、木刀を受けた義手を外して吹き飛ぶに任せる事で、縦斬りの衝撃を本体に及ばせる事なくやり過ごす。
続いて襲って来る横薙ぎを、反動を利用して振るった小太刀で弾くしぐれ。
しかし、いくら小太刀が俊敏性と防御力に優れているとはいえ、瞬時に二撃を放つのは無理があり、しぐれは体勢を崩す。
小次郎の最後の一撃が弧を描いて防御が出来ない状態のしぐれを襲う……が、その前に木刀が折れる。
慌てて小次郎は跳び下がるが、しぐれも追い討ちをできるような状態にはない。

睨み合う小次郎としぐれ。
木刀が折られたとはいえ、その長さはしぐれの小太刀と比べてそう劣っている訳ではない。
義手を失って片手となったしぐれとどちらが優位かは定めがたい所だが……
「よそう」
小次郎は剣を引いた。
「続きはいずれまた。私も、その時までにより修練を積んでおこう」
そう言うと、しぐれに背を向けて歩き出す。
小次郎の新しい燕返し。これは、元々の燕返しと良く似ているが、大きく異なる点がある。
それは、三つの攻撃が全て同一の剣によってなされる事。
そして、相手にとっては三つの攻撃は同時だが、剣にとっては前後がある事だ。
おそらく、しぐれはそれを初手の応酬で知ったのだろう。
あの時、しぐれの肩を裂いた縦斬りは三つの攻撃の内、剣にとっては二つ目。
よって、その攻撃で付着した血液は一撃目には現れず、三撃目には技の出だしから既に付着済み。
それを見れば、勘の良い者には、剣にとっては燕返しは通常の連続攻撃と変わらない事は一目瞭然。
小次郎の次の燕返しに対し、しぐれはその剣にとっての順番を見切り、義手を犠牲にして一撃目の縦斬りに痛打を浴びせた。
結果、二撃目は既に損傷した木刀による一撃であった為に、体勢の十分でない小太刀に簡単に弾かれる。
三撃目は、一撃目で受けた傷と二撃目を弾かれた衝撃で始めから折れ掛けており、円軌道の遠心力に耐えられなかったのだ。
しぐれにとっては同時だった筈の攻撃の順番を当てたのは、小次郎の構えや眼つきから読んだのか、ただの勘か。
何にしろ、一撃目で完全な燕返しを出し損なって仕留め損ね技の性質を見切られた事、そして同時攻撃の順番を読まれた事。
どちらも小次郎がこの新技を十分に己のものと出来ていなかった事による失策と言える。
故に、小次郎はこれ以上の勝負を諦めた。不完全な技で戦い続けるのは相手に対しても非礼であるし。
更なる修練によって技を完成させなければ……。まあ、今はまず得物の調達が先決だが。
一方のしぐれは、小次郎を逃がしたくはなかったが、相手の技の正体がまだわかっていない状況で戦い続けるのは余りに危険。
仕方なく、小次郎が去るに任せて決着を先延ばしにする事とした。
まあ、苦労して作った自信作の義手があっさり破損した事に落ち込んで追う気にならなかった、というのも大きいが。
元のあの安全な作業場に戻って作り直すか、より良い材料がある所を探すか……
しぐれの心は己の新しい手の方に向かっていた。

211 :義手と偽手 ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 07:01:35 ID:dR/0q2GJ
【へノ陸 平地/一日目/午前】

【佐々木小次郎(偽)@Fate/stay night】
【状態】健康
【装備】妖刀・星砕き@銀魂(破損)
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:強者と死合
一:愛刀の物干し竿か、それに代わる刀を見つける。
二:燕返しを完成させる
三:完成したなら、近藤と土方に勝負を挑む
四:その後、山南と再戦に望みたい。
【備考】
※自身に掛けられた魔力関係スキルの制限に気付きました。
※多くの剣客の召喚行為に対し、冬木とは別の聖杯の力が関係しているのか?
と考えました、が聖杯の有無等は特に気にしていません。
登場時期はセイバーと戦った以降です。
どのルートかは不明です。
※この御前試合が蟲毒であることに気付き始めています。

【香坂しぐれ@史上最強の弟子ケンイチ】
【状態】右手首切断(治療済み)、肩に軽傷
【装備】蒼紫の二刀小太刀の一本(鞘なし)
【所持品】無し
【思考】
基本:殺し合いに乗ったものを殺す
一:新しい義手を作成する
二:富田勢源に対する、心配と若干の不信感
三:近藤勇に勝つ方法を探す
【備考】
※登場時期は未定です。

212 :義手と偽手 ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 07:02:52 ID:dR/0q2GJ
一筋の光も刺さぬ闇の中、すぐ傍では何やら人ならざる気配が蠢き、彼の身体に何かをしようとしている。
普段なら、そうと察すると同時に怪しい気配を叩き斬っている所だが、今は頭に靄がかかったようで、何もする気が起きない。
どれくらい経ったか、ふと前方に、やはり常人とは少し異なるが、間近にいる者ほどには禍々しさを持たない気配が現れた。
「果心殿、何を……ほう、これは御親切な」
新しい気配が妖しい気配に声を掛け、二つの存在の間に、殺気に近い緊張感が走る。
慣れた感覚に、夢うつつだった彼の意識も現実に戻りかけるが、未だ覚醒する程ではない。
「この調子で、この者の弟弟子や但馬守殿の息子にも眼を戻してやるおつもりか?」
「いや、大僧正。私は武には疎うございましてな。下手な手出しをすれば彼等の力を損なってしまうやもしれません」
「では、何故にその者だけ?」
「……藤木殿は連れて来られた時期に問題がありましてな。無論、この時期が最適と判断された故に選ばれたのでしょうが。
 ただ、“あれ”は武術の知識はあっても人間の心に関しては無知な筈、そこに陥穽があるやもしれません。
 死んだ筈の師や、決着を付けた筈の相弟子の生きた姿を見ればどう反応するか……」
師、という言葉に反応して彼……藤木源之助の意識は現実に戻りかけるが、直後に妖しい力が彼の心に侵入する。
「故に、藤木殿の識の一部を封じます。となれば当然、師の死後に失った腕も元に戻さなければならない訳です。
 この腕ならば、本来の腕に劣らぬ働きをしてくれる筈……さて、これで済みました」
そう言うと、果心と呼ばれた妖しい気配は、未知の力に脳を蝕まれつつある藤木を離れ、去って行く。
もう一つの、大僧正と呼ばれた気配は黙ってそれを見送り、続いて己も去るが、一言だけ呟く。
「成程。武に疎いというのは確かなようだな、居士よ」

藤木ははっとする。懐の珠が光ったと同時に心の中に生まれた忌まわしい記憶は現か幻か。
ふと腕を見やると、そこにあったのは生身の肉体ではなく、金属で作られた精巧な義手。とすると、やはりこの記憶は……
だが、藤木には過去の事を落ち着いて考えている暇はない。
細谷源太夫が、倒れた藤木に決死の一撃を叩き込もうと、早くも剣を突き出し始めている。
むしろ、時間的には一瞬だったとはいえ、藤木が急に蘇った記憶に惑乱している隙に攻撃されなかったのが不思議なくらいだ。
宝珠のいきなりの発光に、細谷も目を晦まされたという事だろうか。
とにかく、藤木は様々な疑問を一時棚上げにし、細谷の突きに合わせて自身も突きを繰り出す。
空中でぶつかる二人の突き。
体勢の差、また藤木が義手を使うのを厭うて片手で突きを放った為、細谷の突きが勢いで勝り、藤木の突きを弾く。
だが、それは藤木の計算の内。
折れた剣で諸手突きを放った細谷に対し、十全の剣で藤木が放った片手突きは、間合いの点で大きく勝っている。
弾かれつつも軌道の変化を最小限に留めた藤木の突きは、細谷の剣よりも先んじて相手の身体に達し……

213 :義手と偽手 ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 07:07:34 ID:dR/0q2GJ
(すまぬ……)
頭の中に響いた妖人の言葉を認識する暇もなく、無言で崩れ落ちる藤木。決死の突きで藤木を斃した細谷は、大きく息を付く。
その肩は藤木の剣に貫かれているが、すぐに致命傷になる程ではない。
本来であれば、藤木の剣は弾かれたとはいえ、ここまで大きく急所を外す事はなく、細谷は致命傷を受けていた筈だ。
そうならなかった原因は、藤木の右手首に刺さった刃。
これは、鍔迫り合いで折られた細谷の刀の切っ先が跳ね上がり、あの瞬間に落ちて来た物。
剣の切っ先が突きを繰り出す藤木の手に刺さった為、その軌道が大きく逸れ、細谷は致命傷を免れたのだ。
倒れた藤木への細谷の追い討ちが一瞬遅れたのも、それに機を合わせる為だが、細谷もここまでの効果は期待していなかった。
本来ならば、藤木程の剣客が、降って来る刃に、刺されるまで気づかないという事はまず有り得ない。
細谷が目論んでいた事は、切っ先を避ける為に藤木が迎撃の一撃を放つ時期を半拍だけ遅らせる事。
そうすれば、剣を弾いて軌道を僅かに急所から逸らした効果と相まって、藤木の剣に殺される瞬間をかなり遅らせる事が出来る。
これで稼いだ時間を使って、突きに充分な勢いを持たせ、相討ちに持ち込むか、せめて手傷を負わせようという策。
だが、不意の混乱により藤木が周囲の状況を察知し損ねた為、結果として藤木だけが死ぬ事となった。
果心が余計な事をせず、はじめから片腕で戦っていれば、おそらく悪くても相討ちにはなっていただろうに。
あの妖人が、最後の瞬間の藤木に謝罪の念を送る気持ちになったのも当然と言えよう。
まあ、果物居士が藤木の腕と記憶に細工をしなければ、その行動は島に来た当初から大きく変わっていただろうから、
そもそもここで細谷と死闘を演じるような事にはならなかった可能性が高いのだが。
だがどちらにせよ、果心が良かれと思って施した、記憶の封印と義手の装着が、藤木が実力を発揮する事を妨げたのは事実。
今頃、藤木の戦いの一部始終を見守っていた怪僧はほくそ笑んでいる事だろう。

藤木に装着された義手は、嘗て鋼の真実に最も近付いた、と称された刀工が使っていた義手を果心の魔術で返還したもの。
名工が使っていただけあってその質は極めて高く、果心居士がこれなら藤木の助けになると思ったのも無理ないかもしれない。
元は別人用かつ右腕だった義手を果心の術で藤木の左腕用に改造したが、その工程も義手本来の質を損なうものではなかった。
しかし、結果はあの有様。道具や武器の作品としての質が、使い手に与える力と比例する訳ではないという事だ。
これは、香坂しぐれが佐々木小次郎との闘いで使っていた義手と比べればわかり易いだろう。
しぐれの義手は、彼女が腕を失った後に、ありあわせの道具と材料を使い短時間で作った間に合わせの物。
当然、義手としての質では、藤木の義手とは比べ物になるまい。
しかし、そんな急造の代物でありながら、しぐれの義手は小次郎の心の眼に彼女の真正な腕と映る程、一体化していた。
対して藤木の義手は、剣を交えた訳ですらない坂田銀時に、あっさりと違和感を見破られる始末。
結局、道具の質や幻術でどう誤魔化そうとも、道具の真の優劣は、使用者がそれと心を一つにできるかで決まる。
なのに、既に別の人間の心が詰まった義手を、無関係な剣士に、本人に知らせずに使わせるなど愚の骨頂。
その程度の事すら知らず的外れな援助をした事により、果心は、己が謙遜ではなく本当に武に疎い事を怪僧に曝してしまった。
これが御前試合にどんな影響を与え、参加者達に何を齎すのであろうか……

【藤木源之助@シグルイ 死亡】
【残り四十五名】

【ほノ伍 北部/一日目/昼】

【細谷源太夫@用心棒日月抄】
【状態】手首、胸に軽傷、肩、腹部に重傷
【装備】打刀(破損)
【所持品】なし
【思考】
基本:勇敢に戦って死ぬ。
一:主催者の手下を探し出して倒す。
二:五ェ門に借りを返す。
【備考】
※参戦時期は凶刃開始直前です。
※桂ヒナギクに、自分達が異なる時代から集められたらしい事を聞きました。ちゃんと理解できたかは不明です。

214 : ◆cNVX6DYRQU :2011/02/09(水) 07:08:24 ID:dR/0q2GJ
投下終了です。

215 :創る名無しに見る名無し:2011/02/09(水) 22:59:15 ID:iRA/V3R5
乙でした。
ここでシグルイ組は全滅か。
あと、この展開だと天海の正体は・・・

216 : ◆cNVX6DYRQU :2011/02/16(水) 21:56:27 ID:u6Gk8ez+
芹沢鴨、沖田総司、細谷源太夫、緋村剣心、神谷薫、志々雄真実で予約します。

217 :創る名無しに見る名無し:2011/02/20(日) 21:21:48.79 ID:OQMC24MG
ええぇええ


218 : ◆cNVX6DYRQU :2011/02/27(日) 00:36:47.58 ID:fYD1t9g3
>>216のメンバーで投下します。

219 :燃え尽きるまで ◆cNVX6DYRQU :2011/02/27(日) 00:37:35.27 ID:fYD1t9g3
「剣心、しっかりして」
傷付き、半ば気絶した緋村剣心を抱えて必死に川を遡る神谷薫。
体力も気力も消耗した彼女には、鐘の音と共に辺りが俄かに霧に包まれた事を気にする余裕すらない。
だが、その霧を切り裂いて矢が飛来したとなれば話は別。
と言っても、彼女に達人の放った矢を叩き落す程の技量はなく、剣心に覆い被さるのが出来る精々の事だったのだが。
矢が薫の背に突き立つかに見えた瞬間、いきなり突風が起きて矢を阻む。
この矢は本来ならば突風程度はものともしない剛弓から放たれた物。
とはいえ、大気の揺らぎを利用して軌道を変化させる特殊な技法で放たれた為に風には敏感で、軌道が逸れて目標を外す。
それで懲りたのか以降は矢も飛んで来ず、一安心して再び進み始める薫。
だが、続いて彼等の前に姿を現したのは、矢の狙撃など問題にもならぬ災厄。
「よう、また会ったな」
「志々雄……」

咄嗟に剣心の腰にある打刀を取る薫だが、志々雄と自分の腕の差はよくわかっているだけに動けない。
そんな薫の事など歯牙にもかけず、志々雄は剣心に語りかけた。
「随分と酷い有様じゃねえか。どうせまた、不殺なんて甘え事を言ってるからそうなったんだろう?」
「薫殿……逃げろ!」
志々雄の凶悪な気配に刺激されたのか、気絶していた剣心が覚醒し、薫を押しやろうとする。
「駄目よ、剣心!その傷じゃ……」
庇い合う二人。だが、志々雄が緋村抜刀斎に望んでいるのはそんな姿ではない。
一気に踏み込むと、まともに動けない剣心を蹴り飛ばし、薫に向けて剣を振りかざす志々雄。
目の前で彼女を殺す事で、剣心を人斬りに引き戻そうというのだ。
だが、その寸前……
「!?」
危険を感じた志々雄はその場を飛び退く。
薫の危機を見た剣心が発した殺気に圧された訳ではない。そもそもそれこそが志々雄の望みだったのだから。
志々雄を警戒させたのは、その場に現れたもう一つの気配だ。
「ああ、気配を感じて来てみたらやっぱりやってますね。どうです、僕も混ぜてくれませんか?」

220 :燃え尽きるまで ◆cNVX6DYRQU :2011/02/27(日) 00:38:22.26 ID:fYD1t9g3
「新撰組一番隊組長、沖田総司……!?」
「おや、僕のことをご存知なんですか。ええと、貴方は……」
死んだ筈の嘗ての好敵手の出現に剣心が驚愕するが、もう一人の人斬りは、沖田に記憶を探る暇も与えず刀を抜く。
「名高い天才剣士様とやり合えるとは光栄だな。くれぐれも俺をがっかりさせないでくれよ」
沖田はそれに笑顔で応え抜刀するが、その剣を見て志々雄の表情が変わる。
「無限刃……。そうか、あんたが持ってたのか」
鋭くなる志々雄の眼差し、そして彼から漂ってくる炎の残り香から、沖田も事情を察した。
「ああ、これは貴方の剣でしたか。それならお返ししますから、その剣と交換してくれませんか?」
「俺の剣は、天才剣士様のお眼鏡には適わなかったか?」
「そんな事はないですけど、やっぱり使い慣れた人が使うのが剣にとっても剣士にとっても一番ですし」
と言って剣を差し出す沖田。
志々雄としては沖田を斬って無限刃を取り戻しても良かったが、斬鉄剣で戦えば無限刃を破損させてしまう怖れは捨て切れない。
有難く剣を受け取ることにした志々雄は、自分も斬鉄剣を差し出す……と見せかけて斬り付けた。
剣を受け取りつつの文字通り片手間での、不自然な体勢からの一撃。
志々雄とてこれで沖田を倒せるとは思っておらず、その腕を試してみようという側面が強かったのだが……
「何!?」
沖田は斬鉄剣の刀身に横合いから手を当てて軌道を逸らし、そのまま手を滑らせて柄を取る。
志々雄の斬撃が本気でなかった事や斬鉄剣に鍔がない事を考慮しても見事な無刀取りだ。
剣を取られまいとして更に術中に嵌まるのを厭うた志々雄は、あっさり手を話して斬鉄剣を明け渡す。
「味な事をしてくれるな」
「ええ、僕も今さっき勉強させてもらいましてね。まだまだ付け焼刃ですが」
「何、なかなかのもんだ。次は、剣の技を見せてもらおうか」
続けて剣のぶつかり合う音が響き、二人が馳せ違う。
「なるほど、そう使うのが正統ですか」
そう言う沖田の腰には浅い切り傷と火傷が出来ている。
打ち合いにより剣に炎を発し、炎の光と大気の揺らぎで剣の見切りを困難とし、命中すれば斬ると同時に相手の神経を灼く。
沖田も石舟斎との勝負では炎を利用したが、ここまで剣と炎を一体に操るのは無理だ。
「あんたの剣も、悪くねえな」
志々雄が言うと同時にその肩から血が噴き出す。
斬ってから出血まで一拍置くほどの鋭い剣。
確かに、こんな技の使い手には、剣がこそぎ取った血脂を力とする無限刃は相性の良い剣ではなかっただろう。
小手調べの一合で互いへの理解を深めた二人は、本気の一撃を放とうとし……
「沖田君、またか!」
剣鬼がまた一人、血の匂いに誘われてやって来た。

221 :燃え尽きるまで ◆cNVX6DYRQU :2011/02/27(日) 00:39:11.31 ID:fYD1t9g3
「芹沢さん。いや、違うんですよ」
現れた芹沢に怒鳴られた沖田は、慌てて言い訳する。
「君と石川君には城下の方を探るよう言ってあった筈だ。何故ここに居る?」
「ええと、実は芹沢さんにお知らせしないといけない事がありまして……」
「で、俺を探しもせずにこんな所で遊んでいた訳だな?」
「そ、それは、いい殺気を感じたのでつい……じゃなくて、てっきり芹沢さんかと思って」
すっかり芹沢の方に気を取られている沖田を見て、志々雄が苛立って話し掛ける。
「取り込み中に悪いが、先に俺の相手をしてもらいたいんだがな」
「あ、すいません。では手短に。芹沢さん、先程、桂さんが亡くなりました」
仲間の……不審な点はあったが一応は仲間であった娘の死を知らされて、芹沢の眼光が鋭さを増す。
「……斬ったのか?」
「いえ、柳生石舟斎様と立ち合って……。見事な最期でしたよ。石舟斎様も、殆ど桂さんが斬ったようなもので」
「柳生石舟斎?人別帳にはそんな名はなかった筈だが」
「はい。弓を持ってましたし、主催者側だったようです。主催の方々の居場所も教えてもらいましたよ。城の井戸に……」
石舟斎がもたらした情報を伝えようとする沖田だが、途中で芹沢が手振りを持って制する。
見回すと、周囲には志々雄の他に、緋村剣心と神谷薫もまだ留まっている。
まあ、剣心は志々雄の気が逸れてほっとしたか、体力の限界か、再び半気絶状態に戻っていたが。
「わざわざ部外者に余計な情報を教えてやることはない。……まあ、口を塞いじまえばどうせ同じ事だが」
そう言うと、剣に手を掛けて志々雄に歩み寄る芹沢。
「新撰組の筆頭局長か。悪くねえな」
「芹沢さん、この人とは僕が先に……」
志々雄まで芹沢とやる気になっているのを見て、沖田が慌てて抗議するが、芹沢が部下の不満など一々気にする筈もない。
「沖田君、君の持っている刀、それは石川君の言っていた斬鉄剣だろう?」
「え?ああ、そう言えば石川さんが言っていた特徴と似てますね」
「斬鉄か……。確かに、その剣には似合った名前だな」
芹沢に指摘されて沖田は漸く気付き、志々雄もその剣が斬鉄剣であろう事に同意する。
「じゃあ、これは石川さんに返さないといけませんね」
「うむ。だが、剣に随分と執着していた様子の石川君の事だ、帰って来た剣が刃毀れしていたとなれば、さぞ落胆するだろうな」
「こ、これは僕じゃありませんよ、最初から……」
「だとしても、君は剣を粗末に扱わん悪癖があるからな。その剣を使って戦うのは許可できんな」
そう言われると、沖田も反論できない。現に元々持っていた木刀は石舟斎との勝負で失ってしまっていたし。

「あれはあんたの仲間の剣だったのか。粗末に扱って悪かったな」
「何、気にするには及ばんさ。石川君は先祖伝来だとか言っておったが、どうせ何処やらから盗んだ物だろうしな」
五ェ門が聞いたら激昂しそうな事を言う芹沢。
ついさっき沖田の戦闘を禁じた理由を自ら否定するような発言に、沖田も抗議しようとするが……
「沖田君、君には近藤君からの伝言がある」
その隠し玉で沖田を黙らせつつ、芹沢は刀を……新藤五郎国重を抜き放った。

222 :燃え尽きるまで ◆cNVX6DYRQU :2011/02/27(日) 00:39:56.78 ID:fYD1t9g3
芹沢が沖田と志々雄の対決に割り込む少し前、彼は再会した近藤勇と向き合っていた。
「芹沢さんか。まさかこんな所であんたに会うとはな」
「何だ、つれないな。本来ならば、沖田君のように真っ先に俺の所に馳せ参じるのが筋だろうに」
「総司の奴が?相変わらず物好きな奴だな」
「ほう……そんな事を言っていいのかな、近藤君」
芹沢は、腰から刀……近藤の彼曰く虎徹を、鞘ごと抜き取ると、近藤に見せびらかす。
「それは……!?」
「俺が見付けて、苦労して手に入れたんだが、何なら君の剣と交換してやってもいいが?」
「……感謝する」
近藤は渋々ながら芹沢に頭を下げると、互いの剣を交換し……いきなり斬り付ける!

金属音が響き、抜き掛けの刀で近藤の一撃を止めた芹沢は、さすがに勢いに押されて一歩だけ後ずさる。
「何だ、いかんな近藤君。君は知らんだろうが、こういう時は木剣を渡してから斬り掛かるのが古法というものだぞ」
密かに、或いは剣を交換すると偽ってその剣を木剣に替え、そこを真剣で討つ。
大和武尊と出雲武尊の逸話をはじめ、日本書紀など古史に幾つか記録が見られる策略。
水戸学の立場を尊重してその史実性は問わないとしても、彼等程の達人ならば真剣と木剣など重さですぐに判別できる筈。
だから、そのような詐術はこの場では無意味であり、芹沢の台詞は文字通りのものではない。
虎徹と木剣くらい得物に差を付けてやっと対等な戦いになるという意味か、或いは近藤の無学さを揶揄したものか。
何にしろ、芹沢の言葉に挑発の意志を読み取った近藤は、芹沢に強烈な殺気を放つ。だが……
「温いな」
芹沢はあっさりと言い放つ。
「昨夜の君は、もう少しマシな殺気を放っていたが……おっと、君にとっては昨日ではないのか」
昨夜……真夜中にこの島に呼ばれて以来、芹沢と近藤は顔を合わせておらず、当然、殺気を向けた事などない。
となると、芹沢が言っているのはそれよりも前、即ち……
「芹沢さん、あの夜の事を覚えているのか」
近藤の感覚では、この島に来る直前は、板橋における自身の処刑。それが、近藤にとっての昨日となる。
とすると、芹沢が言う「昨夜」とは、おそらくは近藤が、土方や沖田と共に芹沢一派を襲ったあの夜だろう。
「ああ。あの時の君の剣はなかなかのものだったぞ。あれから時が経って弱くなったか?」
偉そうに言う芹沢だが、実際にはあの夜は泥酔していて、近藤達とどう戦ったかなどほとんど記憶に残っていない。
何しろ、先程、近藤の殺気を受けるまでは、彼等に襲われたこと自体をすっかり忘れていたくらいだ。
今でも芹沢はあの日の闘いの事を断片的にしか思い出していないのだが、その自信たっぷりの言葉は近藤に感銘を与えていた。
「そうか……。芹沢さん、悪いが勝負は後にさせてくれ。先に決着を付けなくちゃならない相手がいてな」
「ふむ。土方君か」
瞬時に言い当てる芹沢。もっともこれは彼の洞察力が優れていた事によるものではなく、その強い自負が言わしめた事だが。
芹沢にしてみれば、剣の腕で自身に勝る剣士など在る筈がない。
となると、近藤が芹沢よりも優先させるような相手は、個人的に深い繋がりがある土方以外に考えられない、という訳だ。
「ああ。それで、頼みがあるんだが……」

223 :燃え尽きるまで ◆cNVX6DYRQU :2011/02/27(日) 00:40:38.68 ID:fYD1t9g3
「土方君との決闘の見届け人として君を貸して欲しい、というのが近藤君の頼みだそうだ」
「はあ……。それは光栄ですが、行ってもいいんですか?」
「まあ、仕方あるまい。義輝公には俺から言っておこう。北西の村の址だそうだ」
「わかりました!あ、でも、斬鉄剣でしたっけ?これはどうしましょうか」
「それは置いて行け。何、君には代わりにその鋸刀をやろう」
事もなげに言って、芹沢は志々雄に刃を向ける。
頷く沖田。何時の間にやら、芹沢が志々雄と戦う事を既成事実として追認してしまっている事には気付いてないようだ。
「なるほど。壬生狼の頭だけの事はあるな。だが……剣の腕の方はどうかな!」
剣と剣がぶつかり合い、火花が炎を生んで二人の気迫によって派手に逆巻く。
数合の後、刃を防いでも炎で炙られるのに業を煮やした芹沢が性急な一撃を放ち、志々雄はそれを手刀で逸らし、剣を叩き込む。
「おおっと!」
芹沢は無限刃を辛うじて行李で受け止め、砕け燃え尽きんとする行李の中から、一本の酒瓶を掴んで救い出す。
「危うく無駄にするところだったな」
そう言って芹沢が酒を口に含むのを見た志々雄は、慌てて剣を引く。
匂いからして、芹沢の酒は焼酎……それもかなり強いものだ。少なくとも、火に接すればた易く着火する程には。
そして、志々雄は元々高体温のところに連戦、加えて乾燥化の力が働く場に長くいた事で身体から水気が相当失われている。
この川辺に来たのも水分補給の為だったが、次々と剣士達に出会った事でそれも果たせていない。
妖術によるものらしい霧は尋常の霧と違って、中に居ても肌を湿らせてくれる効果はないようだし。
この状況で、芹沢が口に含んだ火酒を炎が未だ消えない無限刃に向けて吹き出せばどうなるか……
それを慮って志々雄は剣を引いたのだが、芹沢はそのまま酒を呑み込み、剣を叩き付けた。
「ちっ!」
志々雄は咄嗟に素手で防御するが、十分な体勢から放たれた剣を素手で防ぐのはやはり困難で、手首を削られる結果となる。
更に、体勢が整わない志々雄を芹沢は蹴り飛ばし、地に転げたのを見下ろして笑う。
「馬鹿が。酒は飲む物に決まっておるだろう。要らぬ知恵など回しても休むより悪いわ」
言い返すかと思われた志々雄だが、静かに立ち上がって剣を構える。
「そうだな、悪かった。ここからは真面目にやらせてもらおう」

再び二人の剣が交わり、志々雄は無限刃を炎で包んだ。
それを見た芹沢は剣ごと体当たりを敢行し、鍔迫り合いに持ち込んで強く押し込む。
先程の反応から、志々雄が炎の使い手でありながら火に弱いらしい事は芹沢にも察しが付いていた。
となると、鍔迫り合いで火のついた無限刃を押し込まれ、身体と接触するのは志々雄にとって絶対に避けねばならぬ事の筈。
つまり志々雄は刀の火が消えるまでの数瞬間、無限刃を支える事に全力を注がなければならない訳だ。
その隙に優位な位置を占めておき、反撃の暇を与えずに斃すという目論見だったのだが……
「何!?」
志々雄が大きく刀を引き、不意を衝かれてつんのめった芹沢を貫き手が襲う。
「てめえ!」
手首の傷のせいで貫き手の速度が鈍り、背中を浅く裂かれただけで地に転がってやり過ごした芹沢は、志々雄を睨む。
「言ったろ、真面目にやると」
そう言う志々雄の身体には、刀を引いた時に着火した火が広まりつつある。
志々雄はこの戦いを生き残る事を諦め、芹沢を道連れにしようとしているのか。
いや、そうではない。要は、すぐに芹沢を斬り、返す刀で沖田と抜刀斎をも斃してから川の水で火を消せば良いだけの事。
当然、その後は北西に向かって新撰組の局長と副長の剣をまとめて楽しむ事まで、志々雄の目論見の内だ。
無謀な考えではあるが、危険を懼れて剣を縮こまらせるよりは、剣士として正しい考え方だと言えよう。
志々雄は無限刃の発火能力を完全に解放すると、芹沢に切り込んで行った。

224 :燃え尽きるまで ◆cNVX6DYRQU :2011/02/27(日) 00:41:27.58 ID:fYD1t9g3
「ぐっ!」
もう幾度目になるか、無限刃の火勢に押された芹沢が、辛うじてその切っ先を逃れて地を転げる。
「苦戦してますね。交代しましょうか?」
「青二才は引っ込んでろ!」
沖田を怒鳴りつけると芹沢は志々雄を睨み付けた。
「楽しいな。だが、そろそろ終わりにさせてもらうぜ」
包帯で表情は読み取れないが、さすがに限界が近いのだろう。志々雄は身体を捩り、強烈な一撃の準備をする。
対する芹沢も剣を上段に置き、全力で振り抜く構え。
身体が燃えつつある志々雄に抜き胴のような精密な技は不可能と推理しての、神道無念流の弱点とされる胴を曝しての全力攻撃。
炎によって生み出される激しい上昇気流をものともせず、二人は必殺の剣を放ち合う。
剣が衝突し、二人の動きが止まった瞬間、志々雄が剣を握っていた両手を放し、無限刃は宙を舞う。
当然、芹沢の剣が志々雄を切り裂く事になるが、一度勢いを止められた上に軌道を逸らされていた為、致命傷には至らない。
そして、志々雄は己の身体が斬られるのを気にも留めず、芹沢の間合いの内側に潜り込む。
先刻、 久慈慎之介が志々雄から脇差の鞘を奪うのに使ったのと同様の手法だ。
とはいえ、志々雄の狙いが鞘の奪取などである筈もなく、芹沢の心臓を狙って手刀を繰り出す。
元々素手でも高い攻撃力を誇っていた志々雄だが、高温な上に炎に包まれた今、その殺傷力は無限刃と比べても遜色ないだろう。
全力の剣を振り切った直後の芹沢にこれを回避する術はなく……

強い力で地面に倒される芹沢。
しかし、その力は前方にいる芹沢からの物ではなく、後ろからいきなり引き倒されたもの。
「爺い!」
「すまぬな。年の順で行かせてもらうぞ」
そう芹沢に笑いかけたのは、何時の間にか決闘の場に表れていた細谷源太夫。
沖田は気付いていたのかもしれないが、芹沢と志々雄には第三者の介入を気にする余裕などなかった。
細谷は、倒れた芹沢を外して己に深々と突き刺さった志々雄の腕を掴むと、雄叫びと共にそのまま前方に跳躍。
直後、既に限界を超えていたのか、志々雄の身体は完全に炎上し、細谷もそれに巻き込まれる。
炎の中から聞こえる雄叫びと哄笑が止んだ時、残ったのは僅かな燃えカスのみ。
炎の中に消えた二人の剣士は、最後まで戦い続けた事に満足して死んだのか、或いは修羅界にて改めて闘っているのか……

【志々雄真実@るろうに剣心 死亡】
【細谷源太夫@用心棒日月抄 死亡】
【残り四十三名】

【ほノ伍 川辺/一日目/昼】

【芹沢鴨@史実】
【状態】:健康、苛立ち
【装備】:新藤五郎国重@神州纐纈城、斬鉄剣(鞘なし、刃こぼれ)、丈の足りない着流し
【所持品】:なし
【思考】
基本:やりたいようにやる。 主催者は気に食わない。
一:城へ向かい、足利義輝に会う。どうするかその後決める。
【備考】
※暗殺される直前の晩から参戦です。
※タイムスリップに関する桂ヒナギクの言葉を概ね信用しました。
※石川五ェ門を石川五右衛門の若かりし頃と思っています。

【沖田総司@史実】
【状態】打撲数ヶ所
【装備】無限刃
【所持品】支給品一式(人別帖なし)
【思考】基本:過去や現在や未来の剣豪たちとの戦いを楽しむ
一:呂仁村址に行って近藤と土方の決闘を見届ける。
【備考】※参戦時期は伊東甲子太郎加入後から死ぬ前のどこかです
※桂ヒナギクの言葉を概ね信用し、必ずしも死者が蘇ったわけではないことを理解しました。
※石川五ェ門が石川五右衛門とは別人だと知りましたが、特に追求するつもりはありません。

225 :燃え尽きるまで ◆cNVX6DYRQU :2011/02/27(日) 00:42:08.33 ID:fYD1t9g3
「剣心、しっかりして」
志々雄真実、沖田総司、芹沢鴨……。
次々と現れる剣鬼達に危惧を感じた薫は、彼等が互いに斬り合う事に夢中になっている隙に、剣心を連れて場を脱していた。
志々雄は無論、芹沢や沖田も、斉藤が新撰組の中では良心的な存在だったのではと疑わせる程、危険な者達に思える。
あんな剣客が他に幾人もいるとしたら、傷付いた剣心と剣客としての腕に欠ける薫が生き残れる確率は、果たしてあるのか……

【ほノ伍 北部/一日目/昼】

【緋村剣心@るろうに剣心】
【状態】全身に打撲裂傷、肩に重傷、疲労大
【装備】打刀
【所持品】なし
【思考】基本:この殺し合いを止め、東京へ帰る。
一:傷の手当てをする。
二:志士雄真実と対峙しているかもしれない仲間と合流する。
三:三合目陶物師はいずれ倒す。
【備考】
※京都編終了後からの参加です。
※三合目陶物師の存在に危険を感じましたが名前を知りません。

【神谷薫@るろうに剣心】
【状態】打撲(軽症) 
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:死合を止める。主催者に対する怒り。
     一:安全な場所で剣心を手当てする。
     二:人は殺さない。
【備考】
   ※京都編終了後、人誅編以前からの参戦です。
   ※人別帖は確認しました。

226 : ◆cNVX6DYRQU :2011/02/27(日) 00:44:29.34 ID:fYD1t9g3
すいません、>>225
二:志士雄真実と対峙しているかもしれない仲間と合流する。

二:別れた仲間達と合流する。
に訂正します。

投下終了です。

227 :創る名無しに見る名無し:2011/02/27(日) 08:28:22.01 ID:KHH6d2jj
投下乙です。だが、大丈夫かな?
貴重なマーダーが次々に死んで。

228 :創る名無しに見る名無し:2011/02/27(日) 11:23:33.07 ID:sceKaNc6
投下乙です!

229 :創る名無しに見る名無し:2011/02/27(日) 22:01:07.87 ID:MjuTS6bY
おおお
投下乙です

230 :創る名無しに見る名無し:2011/03/04(金) 00:39:31.88 ID:tXa4zCWt
投下乙です

マーダーが死んでもまッたく安心できねえw

231 : ◆cNVX6DYRQU :2011/03/06(日) 17:35:10.00 ID:NHDrQYP4
新免無二斎、柳生十兵衛、オボロ、志村新八、赤石剛次、坂本龍馬、伊東甲子太郎、斉藤一、服部武雄、外薗綸花、富士原なえかで予約します。

232 : ◆cNVX6DYRQU :2011/03/17(木) 21:46:07.26 ID:uiHz8/AZ
投下します。

233 :決戦前 ◆cNVX6DYRQU :2011/03/17(木) 21:46:52.09 ID:uiHz8/AZ
城下の一角、二人の剣士が剣を手に睨み合っている。
僅かな時間の内に彼らは互いが己に匹敵する強い剣客である事を悟り、集中を高めて行く。
二人の気が充分に練られ、正に激発しようかと見えた時、そこに割り込む男の姿があった。
「ストーーップ!!斬り合いはいかんぜよ。事情はわからんが、ここはワシに免じてソードを引いてはくれんか?」
英語……対峙する片方にとってそれは未知の言語だったが、それが混じった妙な言葉を使う男の登場に二人は毒気を抜かれる。
「別に、俺達は斬り合おうとしていた訳ではないがな」
「ああ。あの程度は軽い挨拶のようなものだ」
「何じゃ、ワシの早とちりか。そりゃあすまんかったのう。エクスキューズしてくれよ」
そう言って笑い話のようにしてしまうが、実際には、三人目の男……坂本竜馬の介入がなければどうなっていたかわからない。
確かに、この二人……柳生十兵衛と赤石剛次にとっては、行き会った強そうな剣士と殺気をぶつけ合う程度はよくある事。
だから軽い挨拶と言うのも嘘ではないし、二人きりならば、いずれ共に剣を引き、礼をして別れたであろう。
しかし、十兵衛の側に同行者が居た事が、事態を複雑にしていた。

一人目の眼鏡を掛けた少年、志村新八は、十兵衛や赤石と比べれば、技においても心においても未熟な剣士。
先程も、十兵衛と赤石の間で交わされる殺気による「挨拶」に、すっかり呑まれてしまっていた。
また、もう一人の若剣士……オボロは、決して未熟な剣士ではないが、この島に来て以来の出来事で少なからず動揺している。
加えて、背に負うている少女の存在も、オボロの心から冷静さを奪う大きな要素の一つだ。
突然現れ、十兵衛等を苦戦させていた人斬りを斬殺して倒れた少女。死体の傍に放置する訳にもいかず、彼が運んで来たのだが。
戦闘になった時に少女を守らねばという責任感と、素性の知れぬ者に背を預けている事への危惧。
これらがオボロの心を不安定にし、普段なら受け流せる程度の殺気に対しても過敏に反応し易くしていたのだ。
そして、新免無二斎。
剣の腕でも経験でも十兵衛等に少しも劣らぬであろうこの男は、二人の睨み合いを興味なさそうに見ていた。
しかし、その立ち姿からは剣呑な気配が滲み出し、その禍々しさは、隙が見出されれば二人共を斬ろうとしていると思わせる程。
無二斎の険呑さが睨み合う二人に常以上の緊迫感を与え、新八とオボロを必要以上に脅かす。
この状況では、誰かが耐え切れずに暴発していたなら、そのまま入り乱れての乱闘に発展していたかもしれない。
だから、竜馬の登場は、早とちりどころか、彼等を無益な殺し合いから救ったとも言える訳だ。
加えて、竜馬の後から更に数名の剣士が現れた事で、戦いの気運は去り、彼等は情報を交換する事にした。

234 :決戦前 ◆cNVX6DYRQU :2011/03/17(木) 21:48:01.68 ID:uiHz8/AZ
「なるほど、確かに相当のもんだ」
一行は、城の近くに横たわる、師岡一羽の骸を訪れていた。
と言っても、彼等の興味の多くは一羽ではなく、その身に刻まれた剣筋にこそあったのだが。
そもそも、竜馬達が城下へやって来たのも、恐るべき剣客塚原卜伝を探す為。
竜馬達と甲子太郎達が合流した後、彼等が採り得る当面の方針は大きく二つ考えられた。
一つは川添珠姫を斬って去った小野忠明を追う事、そしてもう一つが城下に戻り塚原卜伝を探す事だ。
そして、二人の人斬りについての情報を交換した結果、より危険であり先に対処すべきと見定めたのは卜伝の方。
無論、忠明が危険でないという事では決してない。
その烈しく狡猾な剣は、甲子太郎達相手にやってのけたように、相手の連携が乱れていれば達人数人をも圧倒する程。
加えて、珠姫を斬ったような、無念無想の澄み切った剣すら会得しているようだ。
だから忠明も危険な相手には違いないが、彼の場合、激しさ狡猾さと無念無想が同時に現れる事はない。
激しく攻めている時には、珠姫との対戦で見せたように、少しの事で動揺して剣を乱す脆さが見られる。
無想の剣は、彼自身が無意識状態にある時しか使えない為、その兆候が見えたら攻撃を控え離れれば済む。
あんな不自然な状態をそう長くき続けていられまいし。
比べて、卜伝を名乗る剣士は、兵法者としての狡猾さと剣聖らしい清浄な剣を同時に発揮し、特に弱みは見出せなかった。
しかも、竜馬の言によれば、彼等と戦った時の卜伝は完全ではなく、更に恐るべき技を隠していたという。
弟子の一羽を斬った際には、その凄まじい剣の片鱗を見せたとか。
だから竜馬達は卜伝を探しに城下へ戻り、その直後に睨み合う赤石と十兵衛達に遭遇したという訳だ。
そして、「塚原卜伝」の名は十兵衛や赤石の興味も強く引き、彼等は揃ってここにやって来た。

「だが、肝心の卜伝殿は近くに居られないようだな」
十兵衛が呟くように、付近に卜伝らしい危険な気配や殺気は感じられない。
そもそも、城下町全体の様子が、竜馬達や赤石が前に此処に居た頃とは様変わりしていた。
感じられる気配の数も減っているし、それらはどれも静かで、殺気や戦闘を示唆する激しい気もなし。
その代わり、血の匂いと死の気配が町全体を覆っている。
人斬り達は既に一通り闘い終え、去るか雌伏している、というところか。
「なら、ここにいても仕方ないな。俺は行かせてもらうぜ」
赤石が踵を返す。
既に、ここに居る者達に明楽が得た情報は伝えてあり、これで鉄山に託された事は果たしたと言って良かろう。
ならば、後は己のすべき事をするのみ。
「なら、俺も同行させて貰いたい」「俺もだ」
この御前試合を開催した者達へと続く抜け道……そんな事を聞いては、他の剣士達も黙ってはいられない。
「好きにしろ。但し、足手まといは御免だぜ」
足手纏い……赤石からその言葉が発せられると、剣士達の一部の顔が不安げに曇る。
「それについてだが、誰か、この新八と、その少女を預かって守ってくれぬか?」
それは、十兵衛がこの少年と出会った時から考えていた事。
いよいよ主催者と、その一味である父と戦うならば、しかも素性の知れぬ剣客達と共闘するとなれば、新八は連れて行けない。
また、もう一つの集団も考えることは同様。
「そんなら、そのボーイアンドガールと、うちの綸花にガードを付けて、安全なとこに隠れといてもらうか」
「っ!?」
竜馬の言葉に反論しそうになる綸花だが、寸前で堪える。
先刻の小野忠明との勝負を思い出すと、自分を守る為に連携を狂わせた事が、伊東と服部が不覚を取る要因になっていた。
加えて、綸花の剣は高い攻撃力を誇るが、それだけに生身の人間相手、特に多対多の乱戦になったら使いにくい。
相手を殺すつもりで闘うなら話は別だが、綸花にそこまでの覚悟はないし。
「なら、護衛として伊東さんと坂本さんに残ってもらおうか」
「そうだな、その方が俺も戦い易い」
新八や綸花から反論がないのを見、斉藤が提案し服部が同意する。
「ワシもか!?」
「あんた達はいざという時に甘さを見せる事があるからな。女子供を守る戦いなら、少しは真面目にやるだろうが」
そう言われると、この島に来てからも甘さのせいで幾度か敵を逃したり危機に落ちている二人は弱い。
実際、彼等が甘さを捨てて本気で掛かっていれば、塚原卜伝の隙を突いて討つ機会すらなくもなかったのだから。
それに、斉藤は主催者を討つ好機を逃す気は全くなさそうだし、十兵衛や赤石も同様だろう。
無二斎を残して行くのは狼に羊の番をさせるような事になりかねないし、服部やオボロは本調子ではないらしい。
となるとやはり……

235 :決戦前 ◆cNVX6DYRQU :2011/03/17(木) 21:49:50.19 ID:uiHz8/AZ
「では、彼等の事は任せる」
「ああ、おんしらもグッドラックじゃ」
「……可能であれば、主催者を殺さずに生かして捕える事も考えてみて下さい」
「そいつは相手次第だな」
かくして、三つのグループが行き会って出来た集団は、すぐに二つに分かれる事となった。
「無二斎殿、どうなされた?」
自分達と主催者の許へ向かう筈の無二斎があらぬ方向の屋根を睨み付けているのを見て、十兵衛が声を掛ける。
「いや、どうもせぬ」
そう答えると、無二斎も十兵衛等に続いて歩き始めた。
「成程、この御前試合には面白い者が参加しているようだ」
無二斎のその呟きを耳にしたものはいない。居たとしても、竜馬か卜伝の事を言っていると思うだけだったかもしれないが……

【ほノ参 城下町/一日目/昼】

【赤石剛次@魁!男塾】
【状態】腕に軽傷
【装備】村雨@里見☆八犬伝
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を斬る
一:にノ参の道祖神に向かう
二:濃紺の着流しの男(伊烏義阿)が仇討を完遂したら戦ってみたい
※七牙冥界闘・第三の牙で死亡する直前からの参戦です。ただしダメージは完全に回復しています。
※武田赤音と伊烏義阿(名は知りません)との因縁を把握しました。
※犬飼信乃(女)を武田赤音だと思っています。

【柳生十兵衛@史実】
【状態】健康
【装備】太刀銘則重@史実
【所持品】支給品一式
【思考】基本:柳生宗矩を斬る
一:にノ参の道祖神に向かう
二:父は自分の手で倒したい
【備考】※オボロを天竺人だと思っています。
※五百子、毛野が危険人物との情報を入手しましたが、少し疑問に思っています。

236 :決戦前 ◆cNVX6DYRQU :2011/03/17(木) 21:50:38.14 ID:uiHz8/AZ
【オボロ@うたわれるもの】
【状態】:左手に刀傷(治療済み)、顔を覆うホッカムリ
【装備】:打刀、オボロの刀@うたわれるもの
【所持品】:支給品一式
【思考】基本:男(宗矩)たちを討って、ハクオロの元に帰る。試合には乗らない
一:にノ参の道祖神に向かう。
二:トウカを探し出す。
三:頬被りスタイルに不満
※ゲーム版からの参戦。
※クンネカムン戦・クーヤとの対決の直後からの参戦です。
※会場が未知の異国で、ハクオロの過去と関係があるのではと考えています。

【新免無二斎@史実】
【状態】健康
【装備】十手@史実、壺切御剣@史実
【所持品】支給品一式
【思考】:兵法勝負に勝つ
一:他者の剣を観察する
二:隙を見せる者が居たらとりあえず斬っておく

【斉藤一@史実】
【状態】健康、腹部に打撲
【装備】打刀(名匠によるものだが詳細不明、鞘なし)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を斬る
一:にノ参の道祖神に向かう。
二:主催者を斬る。
【備考】※この御前試合の主催者がタイムマシンのような超科学の持ち主かもしれないと思っています。
※晩年からの参戦です。

【服部武雄@史実】
【状態】額に傷、迷い
【装備】雷切@史実、徳川慶喜のエペ(鞘のみ)
【所持品】支給品一式(食糧一食分消費)
【思考】基本:この殺し合いの脱出
一:にノ参の道祖神に向かう。
二:主催者を切った後で伊東や坂本の所に戻る
三:剣術を磨きなおして己の欠点を補う
四:上泉信綱に対しては複雑な感情
【備考】※人物帖を確認し、基本的に本物と認識しました。

237 :決戦前 ◆cNVX6DYRQU :2011/03/17(木) 21:54:06.48 ID:uiHz8/AZ
二手に分かれて歩み去る剣士達を、屋根の上から眺める影が一つ。
「無二斎殿……」
呟いたのは、その新免無二斎の息子、宮本武蔵である。
上泉伊勢守が生きて参加しているというのに比べれば、無二斎が若い姿でこの試合に参加していても驚く事ではない。
理屈の上ではそうなのだが、そう感嘆には割り切れなかった為に、武蔵は彼等に勝負を挑まず、見送る事になった。
元々、多数の剣客の気配を感じた武蔵の目論見は、そこに斬り込んで皆殺しにする事。
単騎で十名もの達人と切り結ぶなど普通に考えれば狂気の沙汰だが、武蔵は大なる兵法、つまり軍略にも一家言ある剣士。
急造の集団など、その数を逆用して勝てるとの充分な自信を持っていたのだ。
だが、彼等に忍び寄った武蔵が最初に見付けたのは、明らかに父無二斎の、若き日の姿と思われる人物。
その存在によって武蔵は動揺し、気配が僅かに漏れて無二斎に察知され、戦いを避けて退かざるを得なかった。
無二斎も武蔵を見て多少の反応は見せたが、その度合いはごく小さく、あのまま闘えば武蔵の負けだったろう。
まあ、無二斎の記憶が姿と一致しているなら、武蔵の事がわかる筈もなく、単に自身に似た男だと思っただけかもしれないが。
無二斎は武蔵の事を仲間にも告げず、特に心を残す様子もなく歩み去って行く。
「俺は……三度勝った」
武蔵は小さな声で呟いた。
かつて、新免無二斎は、将軍家兵法指南の吉岡憲法と勝負して三本の内二本を取り、日下無双兵法者と讃えられたという。
それを知る武蔵は、兵法者として立つと、京に行って吉岡家に勝負を挑み、三度までこれを打ち倒す。
これをもって武蔵は、無二斎を越えたと自負しているのだ。
吉岡憲法家は、無二斎と試合した直賢と比べて武蔵と闘った息子達は兵法者として不肖だったとも言われているが、
己の息子に武芸者としての心得を植えつける事が出来ず、そんな子供に跡を継がせたのなら、それは直賢の不覚。
第一、血を分けた子を作ること自体が、剣客としては不心得な事ではないか。
己一代で剣を極められる自信があるのなら、後を託す子供など不要な筈なのだから。
「俺は無二斎を越えている!奴もこの試合に参加する有象無象の一人に過ぎん」
武蔵は、静かに、強くそう叫んだ。

【ほノ参 城下町/一日目/昼】

【宮本武蔵@史実】
【状態】健康
【装備】自作の木刀
【所持品】長柄刀の切っ先
【思考】最強を示す
一:一の太刀を己の物とする
二:一の太刀を完成させた後に老人(塚原卜伝)を倒す
【備考】※人別帖を見ていません。

238 :決戦前 ◆cNVX6DYRQU :2011/03/17(木) 21:54:50.44 ID:uiHz8/AZ
「ここが良いでしょう。守るに易い間取りだ」
十兵衛達と別れた坂本・伊東等一行は、城下のとある商家に居を定めた。
兵法に長けた伊東が主導して見張りやいざという時の防ぎ口や脱出経路を設定して行く。
もっとも、この家が人斬りに襲われるような事態をそう本気で心配している訳ではない。
何せ、こちらは眠っている少女を抜いても四人。
坂本・伊東・綸花は性格に甘い所があるとはいえ腕は相当のものだし、新八とてそれなりの心得はある。
不安といえば二手に分かれる前に武器の再分配を行い、攻撃組に厚く分配した為に武装面でやや貧弱な事くらいだろう。
それでも、多くが単独で行動していると思われる人斬りが、敢えてここに攻め込んで来るとは考えにくい。
なのに真剣に打ち合わせをするのは、仲間が死地に赴いている時に安全に隠れる事への忸怩さを紛らわす為か。

そんな中で、志村新八だけは、他の者達と少し違う事を考えていた。
もちろん、十兵衛達の事を考えていない訳ではない。
そもそも新八は、十兵衛が父親と殺し合うのを何とか防ぎたいと考えていたのだから。
しかし、あの場で十兵衛を制止したり自分も主催の所に連れて行けという度胸は新八にはない。
まあ、あの時は一羽という剣客の無惨な死体を見て気分が悪くなり、それどころではなかったというのもあるが。
どちらにせよ、十兵衛程の男の決心を覆すのは自分には不可能だという事は、はじめからわかっていた事。
とすればやはり……

「ヘイ、ボーイ、元気がないが、どうかしたんか」
「いえ、何でもありません。あ、そういえば、坂本さんと伊東さんには、辰馬とか鴨太郎っていう御兄弟か何かいませんか?」
「ワシにはブラザーもシスターもおるが、辰馬っちゅうのは知らんのう」
「私も、弟はいますがそのような名ではありません。そもそも、私は伊東家には養子で入ったのですが」
「そうですか、ならいいんです」
やはり、この二人も、十兵衛と同様に、よく似た名前の新八の知り合いとは関係ないようだ。
知り合いとよく似た名前の別人が何人も御前試合に参加しているのは一体何を意味しているのか。
それは不明だが、はっきりしているのはこの島には新八が思っていたほど知り合いが多く呼ばれているのではないという事。
そう思ってよく考えると、土方や沖田達の名前も、人別帖にあった名前は自分の知っているのと違ったような気もするし。
ただ、少なくとも一人だけ、確実にこの島に来ている知り合いが居る。
坂田銀時……新八にとって最も信頼に足るその男が、御前試合に参加させられているのは間違いない事実だ。
昨夜、あの白洲で御前試合開催を告げられた時には確かに銀時が傍に居て言葉を交わしたし、ついさっきも……
新八は、手の中にある物を見詰める。この家に来る少し前、城下の街中で拾った銀髪を。
老剣士も多く参加しているこの御前試合では白髪などそう珍しくもないが、この癖の強いパーマはそうそうあるまい。
銀時は確かにこの島にいるし、少なくとも一度はこの近くにも来ている。
「銀さん……」
銀時は今、どうしているだろうか。
やる時はやる人間だから、独自に主催者の居所を探り当てて向かっているかもしれない。
それなら、十兵衛とも会って、骨肉の殺し合いをどうにか止めてくれるだろう。
……やらない時は本当に駄目な人間なので、城下がほぼ無人なのをいい事に甘味の無銭飲食に励んでいるかもしれないが。
このように、新八は仲間と共に商家に隠れながら、その外の様子を気にし、仲間とは別の人間の事を考えていた。

239 :決戦前 ◆cNVX6DYRQU :2011/03/17(木) 21:56:03.52 ID:uiHz8/AZ
【ほノ肆 商家/一日目/昼】

【坂本龍馬@史実】
【状態】健康
【装備】日本刀(銘柄不明、切先が欠けている) @史実
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いで得る天下一に興味は無い
一:綸花と新八、眠っている少女を守る。
二:小野忠明(まだ名前を知りません)を強く警戒。
【備考】※登場時期は暗殺される数日前。
※人物帖はまだしっかり見ていません

【伊東甲子太郎@史実】
【状態】健康
   上半身数個所に軽度の打撲 後頭部にダメージ
【装備】打刀
【所持品】支給品一式(食糧一食分消費)
【思考】
基本:殺し合いを止める。
一:仲間を守る。
二:殺し合いに乗った人物は殺さずに拘束する…が、自分の力でできるだろうか?
【備考】
※死後からの参戦です。殺された際の傷などは完治しています。
※人物帖を確認し、基本的に本物と認識しました。

【外薗綸花@Gift−ギフト−】
【状態】左側部頭部打撲・痣 
【装備】木刀
【所持品】支給品一式(食糧一食分消費)
【思考】基本:人は斬らない。でももし襲われたら……
一:服部達の帰りを待つ。
二:過去の人物たちの生死の価値観にわずかな恐怖と迷い。
【備考】※登場時期は綸花ルートでナラカを倒した後。
※人物帖を確認し、基本的に本物と認識ました。

【志村新八@銀魂】
【状態】健康
【装備】木刀(少なくとも銀時のものではない)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:銀時や土方、沖田達と合流し、ここから脱出する
一:銀時を見つけて主催者を殺さなくていい解決法を考えてもらう
二:十兵衛と自分の知っている柳生家の関係が気になる
三:「不射之射」か…
四:天人まで?
【備考】※人別帖はすべては目を通していません
※主催の黒幕に天人が絡んでいるのではないか、と推測しています
※五百子、毛野が危険人物との情報を入手しましたが、疑問に思っています。

【富士原なえか@仮面のメイドガイ】
【状態】足に打撲、両の掌に軽傷、睡眠中、罪悪感
【装備】なし
【所持品】支給品一式、「信」の霊珠
【思考】基本:戦う目的か大義が欲しい。

240 : ◆cNVX6DYRQU :2011/03/17(木) 21:56:53.55 ID:uiHz8/AZ
投下終了です。

241 :創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 07:24:08.72 ID:QthaU1FF
投下、乙です

242 :創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 20:30:22.99 ID:yfdc9oyE
投下乙です

243 :創る名無しに見る名無し:2011/03/21(月) 03:47:57.33 ID:VtJ5WIx/
うーむ、ひさしぶりに来てみたが一人しか書いておらんのか
でも完結に向けて頑張ってくれ!

244 : ◆cNVX6DYRQU :2011/03/28(月) 01:22:33.28 ID:cB/rebYb
武田赤音、トウカ、烏丸与一で予約します。

245 :創る名無しに見る名無し:2011/03/28(月) 08:56:45.35 ID:PFq3GgwR
おー、久々に赤音か。
しかし、幸か不幸かトウカ顔焼かれているんだよな。
この二人に与一?わからん、まるで展開が読めん…。

246 :創る名無しに見る名無し:2011/04/07(木) 21:07:50.05 ID:ZT1tbs5E


247 : ◆cNVX6DYRQU :2011/04/08(金) 06:27:36.34 ID:mpi045qe
>>244の三人で投下します。

248 :理を超えて ◆cNVX6DYRQU :2011/04/08(金) 06:28:21.65 ID:mpi045qe
噎せ返るような血の匂いの中、武田赤音は一体の死体の傍で立ち尽くしていた。
幾十名もの剣客が殺し合うこの島に於いては死体など珍しくもないし、現にすぐ近くにももう一つ死体がある。
だが、この死体だけは、赤音にとっては特別な死体。他の剣士全てを合わせても問題にならないほどに。
伊烏義阿……赤音の同門であり、執着し続けた相手であり、剣の帰結点であり……つまりは全てなのだ。
彼との勝負を望んだ赤音は万難を排してこれを実現させ、その勝負をもって、赤音の人生は、いわば完結した。
赤音にとっては満足の行く終わりだったが、主催者はそれを尊重する事なく彼等を、赤音と伊烏を御前試合に招く。
そして、伊烏は死んだ。赤音の関知しないところで。
上でこの島では死体など珍しくないと述べたが、伊烏の死体はその死因に関しては少々珍しいともいえる。
その首には動脈を噛み切られた痕。それも、野獣の鋭い牙ではなく人間の歯で無理やりに噛み千切られたものだ。
加えて、すぐ傍に斃れている死体の、口元の鮮血と切り落とされた両手首を見れば何が起きたのか想像は付く。
……伊烏は死に、それをやった剣士もまた死んだ。全ては、赤音の与り知らない所で、終わってしまった。
何を思っているのか、伊烏の傍で立ち尽くす赤音。
しかし、そんな彼の想いとは無関係に、時間は進み、状況は動き始める。

「どうされた!?」
声と共に、一組の男女が駆け寄って来るのが赤音の視界に入る。
少年と若い女。その表情から読み取れるのは心配と、若干の警戒。
まあ、この状況を見れば警戒するのが当然で、心配が先に立っている方が甘すぎると言っても過言ではあるまい。
ただのお人好しか、或いはここにある死体の迷いのない殺し方と赤音の儚げとすら言える今の雰囲気のずれを敏感に悟ったのか。
……何にしろ、今の赤音にとっては、他者がどんな人間で何を考えているかなど、瑣末な事だ。
「……丁度いい。少し、遊んでもらうぜ」
言葉と共に赤音は、男女に向かって駆け出した。

249 :理を超えて ◆cNVX6DYRQU :2011/04/08(金) 06:29:08.42 ID:mpi045qe
藤木源之助の襲撃によって山南敬助を喪ったトウカと烏丸与一。
今この瞬間にも藤木のような剣士に脅かされている者がいるかもしれぬと、悲しみに浸る間もなく旅して来た二人だが、
彼等を迎えたのは、助けを必要とする者ではなく、死体と、またも殺人者の刃であった。
与一は負傷しているトウカを気遣って前に出ると居合いの気色を見せる赤音を木刀で迎撃する。
赤音が与一を居合いの間合いに捉えるよりも一瞬早く、与一の木刀が振られ、強風が発せられた。
「!?」
だが、与一の風は空振り。赤音が身を翻した事により目標を外し、無人の空間を抜きぬけたのみ。
赤音が与一が風を使うのを読んで身をかわした、という訳ではない。
初めから赤音が第一の標的として選んだのはトウカであり、与一に向かうと見せて直前で転進するのは既定の方針だったのだ。
無論、与一が風を操って迎撃してくるなどとは赤音も予想しておらず、風を回避できたのは偶然の結果でしかない。
しかし、今の赤音にとってはどんな達人もどんな凄まじい奇剣も無意味であり、予想外の技くらいで動きが止まったりはしない。
そのまま与一の脇をすり抜け、トウカに向かう赤音。与一も慌てて身を転じようとするが……
赤音は装備していた剣の一本を地に突き立て、与一の進路を塞ぐ。
咄嗟に剣の峰を蹴って突き進もうとした与一だが、寸前でそれが逆刃刀だと気付いて二の足を踏む。
それで出来た一瞬の間に、赤音はトウカに仕掛けられる間合いへと入り込んでいた。

迎撃の構えを取るトウカだが、こちらに向かおうとしている与一の存在が、全力で居合いを放つ事を躊躇わせる。
本来、彼女の力量をもってすれば、混戦の中で仲間を避けて敵だけを切り裂くのはさして難しい事ではない。
しかし、目前で仲間を殺されるという事を立て続けに体験した事が、彼女から思い切りを奪っていた。
結局、トウカは横合いから襲って来る赤音に対し、抜刀術の体勢から剣を抜ききらず、柄で突く事にする。
トウカの柄を野太刀で受ける赤音だが、こちらも与一を避ける為に体勢が不完全になっている点ではトウカと同様。
そのままなら、種族の違いに起因する身体能力の違いから、トウカが押し切っていたかもしれないが……
「は!」「ぐっ……」
赤音はトウカの剣の柄を素手で思い切りはたき、その衝撃で鞘を腹に叩き付けられる結果となったトウカは思わず呻く。
罪悪感と焦りから再出血した腹の傷の治療と血の処置を充分にしなかった事が、敵に傷を見抜かれ攻められる結果を生んでいた。
「何のお!」
精神を奮い立たせ、赤音の追い打ちをかわして再び居合いの構えを取るトウカ。
赤音が回り込みながら攻撃してくれたお蔭で、トウカから見て赤音と与一の居る方向は真逆。
つまり、次の一撃は与一を気にせず全力で放つ事が出来るという訳だ。
また、いくら精神力で傷の痛みを押し殺しているとはいえ、そんな状態で万全の攻撃が出来るのは一、二撃が限度だろう。
それで決着を付けるべく、渾身の一撃の準備をするトウカ。
対する赤音も、与一に対してトウカを盾にする位置を取ったとはいえ、時間を掛ければ回り込まれるのは間違いない。
トウカの渾身の一撃に対し、必殺の剣で応える事を決め、赤音は指の構えから思い切り剣を振り下ろした。

250 :理を超えて ◆cNVX6DYRQU :2011/04/08(金) 06:29:51.90 ID:mpi045qe
二人の剣がぶつかり合い、火花を散らす。
膂力ならトウカ、体勢では赤音が有利であり、押し合えば勝負は微妙だが、悠長に力比べをする余裕がないのは両者共通。
衝突の瞬間に微妙に角度を変える事で、二人の剣は正面衝突はせず、互いに弾き合って空を斬りながら振り切られる。
だが、この二人の必殺剣は一段では終わらない。すぐさま、二段目の攻撃が放たれた。
一撃目の居合いを振り切ってからほぼ零時間で納刀し、再び抜刀の構えを取るトウカ。
とはいえ、トウカの素早い納刀は基本的に、一撃目を当てた上で、素早く追撃するか他の敵からの攻撃に備える為のもの。
一撃を放ち終わってからの準備時間が短いとはいえ、一撃目を振り切る前に二撃目が発動する鍔眼返しに比べれば早さでは不利。
まして傷による焦りのせいで本来の俊敏さと脚捌きを奪われたトウカにこの魔剣がかわせる筈もなく……

「!?」
横合いからいきなり衝撃を受けて赤音は吹き飛ぶ。
トウカは何もしていないし、与一もまだ赤音を剣の間合いには捉えていない。
まあ、風を操るような技を操る剣士に間合いなど問題にならないかもしれないが、それでも明らかに方向が違う。
トウカも与一も、誰も居ない筈の左側からの攻撃。
痛みと衝撃の方向から考えて、まるで真横に並んでいる剣士に、峰打ちによる抜刀術をまともに叩き付けられたような……
(あいつか!)
赤音は直感的に真相を悟った。
上泉伊勢守……城下町に居た時、赤音はあの剣聖に、一瞬だけ完全に隙を見せた事がある。
宮本武蔵に伊烏の事を言われる事で赤音の心に空隙が生まれ、そしてその瞬間に聞こえた鍔鳴り。
あらかじめ相手を斬っておき、しかしすぐには効果を現さず、一定の時間経過や特定の条件によって相手を死に至らしめる秘技。
伝承……いや、御伽話としてはそのような技が語られているし、伊勢守がその技を使って無敵の忍者を倒したという話もある。
だが、そんな荒唐無稽な事を実際にやってみせるとは……
おそらくあの瞬間、伊勢守が赤音を峰で打ち、殺気を極限まで膨れ上がらせる事で痛みと衝撃が発現するよう仕掛けたのだろう。
痛みによって赤音が誰かを殺すのを防ぎ、衝撃で吹き飛ばして位置を変えさせる事で赤音が殺されるのも防ごうという事か。
以前、赤音は伊勢守のやり様を見て、神を気取っているのかと思った事があったが、それは認識が甘かったようだ。
伊勢守の技は、神の域など遥かに超越している。
そして、神仏ですら人に教えを垂れ戒律を授ける事を考えれば、彼程の剣士が他者を導こうとするのも無理ないのかもしれない。
だが……

251 :理を超えて ◆cNVX6DYRQU :2011/04/08(金) 06:30:51.18 ID:mpi045qe
赤音は立ち上がり、剣を構える。
先程の激しい痛みは嘘のように消え、強い衝撃を受けた割には身体の損傷も皆無。
痛みも衝撃も現実のものではなく、催眠か経絡に属する技で感じさせられているだけだという事だろうか。
だとすると、痛みは一度きりではなく、同様の状況になれば同じ症状が現れる可能性も低くないだろう。
そのせいで相手を殺すのが困難である以上、ここは退くしかないのだが……
赤音は、剣を構え直してトウカに向き直る。
何者にも……人や神仏は無論、たとえ相手が刀術を極めた剣聖であろうと、赤音は行動を強制されるつもりは毛頭ない。
状況が掴めない内に追撃の機会を逃し、傷の痛みが漸く響いて来たらしいトウカに仕掛けようとするが、
寸前に前方の地面が不可視の刃で切り裂かれるのを見て、横に向き直る。
そこに居るのは、トウカを回り込んで来た烏丸与一……強風の次は、真空を操って見せたというところか。
「トウカ殿、休んでおられよ。この者の相手は拙者が」

この場に居ない剣聖を挑発するかのように強烈な殺気を与一にぶつける赤音。
それに圧されるように、真剣の柄に手を遣りかける与一だが、すぐにそれを鞘ごと抜き取ると、投げ捨てる。
「何だ?俺の相手をするには木刀で充分だってのか?」
「……いや。真剣ではお主には勝てまい。故にこれで相手をする」
そう赤音に答えると、静かに木刀を構える与一。
確かに、風や真空を自在に操る剣士にとっては、真剣よりも軽い木刀の方が使い勝手がいいのかもしれない。
……遠距離戦ならば。

与一が構えた時点で、赤音は既に動き出し、トウカの方へ回り込もうとしている。
先程と同様に与一を無視してトウカに向かうつもりなのか、或いはトウカを風や真空に対する盾にしようという事か。
トウカも気付いて動き出そうとしているが、やはり傷のせいで動きが鈍い。
与一はトウカをカバーしようとその前に回り……その瞬間、赤音は跳躍した。
強烈な踏み込みで間を詰めると、鍔迫り合いに持ち込む。
接近戦になれば、浮羽神風流の特色の一つである、風を操る技は大きく制限される。
その意味では与一は不利な状況に追い込まれたと言えるが、実はこの展開は与一の予想の内。
だからこそ、彼は真剣を捨て、木刀一本で赤音に挑む事にしたのだ。

与一は木刀の刀身部分を掴み、赤音の力を逸らして組み伏せようとする。
木刀には刃も鍔もないが、それ故に使い方一つで剣だけでなく杖や棒にも変わるという特質を持つ。
その為、現在のように超接近戦に持ち込まれた状況では利点が多い武器だと言えよう。
無論、真剣の重量や切れ味、耐久性が有利に働く場面も多いのだが、与一には慣れた木刀の方がずっと使い良い。
そんな道理は与一が一番良く自覚している筈なのに、あの時、藤木源之助との対決で、与一は真剣を抜いてしまった。
あそこで、木刀を手にしていれば、如何に藤木が手練れであろうと、ああも一方的に押される事はなかった筈だ。
なのに思わず真剣を抜いてしまったのは、藤木の凄まじい殺気に圧倒されたが故の不覚。
今回、与一があらかじめ真剣を捨ててから赤音に向かったのはその反省から。
そして、与一が前回の藤木との戦いで得たものは、それだけではない。

252 :理を超えて ◆cNVX6DYRQU :2011/04/08(金) 06:31:37.36 ID:mpi045qe
与一は木刀を持ち替えて柄で喉を突こうとし、赤音は僅かに身を引いてそれをかわす。
それによって開いた僅かな間合い。無論、木刀をまともに振るえるような距離ではないが……
いきなりの突風に、赤音は後方に押しやられる。
風を起こしたのは与一の手。木刀を使えない距離で、与一は手刀でもって風を起こしてみせたのだ。
さすがに素手で起こした風は本来の「疾」に比べれば風圧は弱い。
それでも後退していたところで不意に力を受け、赤音は体勢を崩されるのを防ぐ為、已む無く自ら風に乗って後方に飛ばされる。
赤音が空中に居る間に、与一は木刀を振って数本の真空の刃を作り出し、相手の急所めがけて放った。

もしも剣術を殺人剣と活人剣に二分する事が出来るとすれば、与一の浮羽神風流は活人剣に属すると言って良いだろう。
しかし、殺人剣ではない、つまり不殺の剣でさえある事は、活人剣の必要条件でも十分条件でもない。
殺さないだけでなく、文字通り相手を活かしてこそ活人剣。
相手の何をどう「活かす」のかは剣士や流派によって様々だが、何にせよ、活かす対象を信じ認める事が必要となる場合が多い。
活かすに足る何かを相手が内在していると思えなければ、活人の難易度が跳ね上がるのは当然の道理。
そしてこの事が、御前試合開催以来、与一の剣を制約して来た大きな要因となっている。
今まで与一は、多くの場合、相手に共感する事で信頼し、それに基づいて全力の剣を振るって来た。
だが、この島で敵として相対して来た、殺し殺される事に全く忌避感を持たない剣士達に、与一は共感する事は出来ない。
そのせいで相手を信頼できず、剣に本来の鋭さを持たせる事が出来なかったのだ。
例えば土方歳三との勝負では、与一は真剣を鞘から抜く事も出来ず、殺傷力の高い「嵐」は急所を外して放つしかなくなる。
そんな中途半端な剣が一流の達人に通用する筈もなく、これでは与一が何度も不覚を取ったのも当然だろう。
ところが、藤木源之助に襲われた時には、与一は相手にまるで共感できなかったにもかかわらず、無意識に抜刀していたのだ。
藤木のあまりに禍々しい殺気を感じ、その強さを直感的に悟り、真剣を使えば殺してしまうなどとは考えなかった。
いわば、共感ではなく脅威や基づく相手の力への信頼と言い表せようか。
今回、赤音から藤木に劣らぬ禍々しさを感じた与一は、今度は自覚的に相手の腕を信頼して剣を振るっている。
直感だけを信じて一歩間違えば相手を殺してしまうような戦い方をする事に抵抗がない訳ではない。
かといって、手控えて戦えば、与一の剣は赤音に届かず、傷付いたトウカが殺される可能性が高くなるだろう。
敵の死と自身や仲間の死、その狭間にある紙一重の細い道の先にのみ、活人剣はあるのだ。

宙を舞う不自由な体勢に迫る不可視の数本の刃……武田赤音は与一の期待通りそれを野太刀で全て弾いてみせる。
ギンッ
しかし、最後の鎌鼬を切り裂いた瞬間、赤音の剣は砕け散った。
万全でない体勢でほぼ同時に数本の刃を防ごうとすれば、それが可能な防ぎ刃の軌道はごく限られ、あらかじめ予測可能。
与一は、赤音が完璧な受けを成す事を信じ、その場合に真空の刃が剣の芯を打ち、破壊するよう調節して「嵐」を放ったのだ。
結果、赤音は与一の期待通りに動き、剣を失った赤音に与一は突進し……
ピシッ
「嵐」を受け止めた事で勢いを増して吹き飛ばされた赤音の背中に行李が当たり、砕ける。
何時の間にか赤音は元の位置……伊烏の死体の傍まで吹き戻され、そこに放置されていた行李にぶつかったのだ。
衝撃によってぶちまけられる行李の中身。幾巻もの人別帳、大量の食料、そして……剣。

活人剣と言い、殺人剣と言うが、それらは原則として生きた人間を対象としたもの。
死者を活かすのはこの世の法に反するし、死者を更に殺すというのは理に合わぬ。
試し斬りで死人を切ったり、屍を武器や盾として活用する技法もあるが、それは単に器物としての死体を使っているだけの事。
真の意味で死者を殺し活かすのは、世の法理を超越した剣聖のみに可能な所業。
強い執着の対象を理不尽に失う体験が赤音を一時的にでも剣聖の域にまで押し上げたか、或いは全て奇跡的な偶然の為す所か。
ただ一つはっきりと言えるのは、この一瞬、赤音の精神が剣聖の技をねじ伏せたという事だ。
行李から現れた剣を見て赤音の神経は極限まで研ぎ澄まされ、それに反応して先程同様に痛みが走り身体が吹き飛ぼうと欲する。
だが、伊烏が死に、彼が遺した行李から己の剣が現れたこの状況で、痛みや生理反応に何の意味があるだろう。
赤音は全てを意志力で捻じ伏せると、己に可能な最速の剣撃を放った。

253 :理を超えて ◆cNVX6DYRQU :2011/04/08(金) 06:32:34.72 ID:mpi045qe
直前までは、確かに与一が優勢だった筈だ。
対手の剣を砕き、吹き飛ばし、体勢を整える前に相手を無力化する一撃を加えようという必勝の情勢。
だが、砕けた行李から剣が現れて吸い込まれるように赤音の手に収まり、長年愛用の剣の如く慣れた動きで一撃が放たれ……
必勝と見えた状況から一刹那にも満たぬ時が過ぎた後、与一は赤音の剣によって、両断されていた。
「――――――――――!!」
この様子を見ていたトウカは、声にならない叫びと共に、痛みも傷の事も忘れて突進を開始する。
頭が熱い。まるで、地獄の業火が脳の中で燃えているかのように。
だが、その熱さは、トウカの身体に常以上の力を与えてくれる、今の彼女にとっては福音とすら言えるもの。
このトウカの様子を見た赤音は、にやりと笑うと、与一を斬った剣を鞘に収めて腰に差し、柄に手を掛けたまま己も駆け出す。
二人の距離が縮まり、トウカが機先を制して必殺の居合いを放つが、その刃は空を斬り、赤音の姿は忽然と消え去る。
だが、トウカは驚かない。いや、闘争心に支配された今の彼女には、「驚く」などという無駄な機能は残っていないのだ。
視界の中に赤音が居ないという事は、つまり自身の死角に潜んでいるという事。
無数に繰り返してきた動作で自動的にトウカの剣は鞘に納まり、死角からの殺気を感じた瞬間、限界を超えた速度で放たれる。
そして……

「何故だ?」
トウカは呟いた。
心が静まって、傷と、限界を超えて酷使した腕が痛み始めているが、それ以上に痛いのは心。
「何故……」
四体……はじめからあった二体に、与一と、トウカ自身が斬った武田赤音の死体が加わり、四つの死体に囲まれた中で再び呟く。
何故、千石と山南に続いて与一まで自分の目の前で死んだのか。
自身が未熟であったから、という答え以外は有り得ないのだが、それにしても彼女を襲った状況はあまりに理不尽だった。
そして、この男……武田赤音の行動の動機もまた、彼女にはわからない。
いきなり斬りかかって来た理由もだが、より不可解なのは、彼の最期の動き。
突進と跳躍を混ぜた抜刀術。見事な技だが、赤音の身体能力や技の癖から考えると異質な感がある技。
何より、片手が動かない状況での抜刀術では、十全な速度が出せる筈もない事はわかっていただろうに。

あの時、いきなりの刀の出現によって与一は赤音に斃されたが、ただで斬られた訳ではない。
与一は既に相手の関節を打って動きを封じる「旋」を放っており、斬られる寸前に赤音の左肱を打っていた。
その効果で左腕が効かない状況で、抜刀術による短期決戦を挑むなど、明らかに理に合わない行動。
無論、片手が動かなくては、どう戦おうと赤音の不利は否めなかったろうが、少しは生き残る芽がある戦術もあった筈。
味方の死を受け入れられず、敵を理解できず、武人種族の娘は、傷の手当てを終えると半ば喪心したまま歩を再開する。

【烏丸与一@明日のよいち! 死亡】
【武田赤音@刃鳴散らす 死亡】
【残り四十一名】

【にノ参 街道/一日目/朝】

【トウカ@うたわれるもの】
【状態】:腹部に重傷(治療済み)、火傷数か所、疲労
【装備】:同田貫薩摩拵え@史実、脇差@史実
【所持品】:支給品一式
【思考】基本:主催者と試合に乗った者を斬る
一:精神的な打撃、迷い
二:山南殿の仇を討つ
三:センゴク殿の仇を討つ

254 : ◆cNVX6DYRQU :2011/04/08(金) 06:33:16.79 ID:mpi045qe
投下終了です。

255 :創る名無しに見る名無し:2011/04/08(金) 22:26:07.57 ID:Knpcqhy+
これは…いいのか?
いくらなんでも伊勢守無双過ぎる事になるぞ?

256 :創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 17:59:31.99 ID:13/wbq1J
正直凄く悩んだけど、どうしても違和感が消えなかったので。

伊勢守の後催眠らしきものですが、いくらそういう事が実際に出来たとしても、
消耗も何もなしで時限爆弾的に使えるのはあまりにも便利過ぎて制限の対象になりやしないかと?
主催側にすれば、こんなもの乱用されれば平和的に事を収められかねない訳ですし。
「心ノ一方」より始末に負えず、これを通りがかる全ての剣客にやられると
ほとんどの場合解除不能です。そもそも伊勢守を超える事自体がまれだから。

それと最後に赤音が「昼の月」を使った所ですが。
原作で赤音自身が訓練中に「理論は理解出来ても自分を含めて誰にも実行不能」と断言しています。
鍛練で剣速が速くなるとかならまだいいですが、一切の伏線も何もなしにそれが出るのは不自然ではないかと。

あと、トウカが抜刀をかわされてから即応してもう一度納刀して抜刀するにしても。
鍔眼返しよりもロスタイムが大幅に出る為、赤音が遅れて抜刀したとしても良くて相討ちにしかなりません。
そうでなければ、トウカの連続抜刀術が鍔眼返しよりも遥かに速いという事になるので、もはやそれは魔剣の領域です。
まだ剣心の「双龍閃」でも使い宙転中の赤音の首の骨を折ったとかの方が説得力があります。

第一、原作で赤音は疾走する抜刀術に対して、最適の戦術として待ちうけて鍔眼返しで応じてます。
抜刀術の第一人者に、同じ抜刀術を用いても勝てず、構造上の問題として最初から抜いたほうが速いとして。
例え「昼の月」が使えたとしても、トウカが疾走してくれば同じ対応をするのでは?
「卜伝に昼の月を侮辱されたから本人に完全なものを見せつける為」とかならまだ理解出来ますが、
あえて「昼の月」を使う動機としてもあまりにも弱すぎます。

まだ鍔眼で応じようとしたら伊勢守の後催眠とかで足を引っ張られて負けたとかの方が
流れとしては自然なものかと?後ろに吹き飛ばされようと、疾走して襲いかかってきたら
バランス崩れた所を狙われますし。

原作やった身として、トウカではないけど「何故あんな奇行に走ったか」かが理解できません。
苦言ばかりでもうしわけないですが、お聞きしたかったので。

257 :創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 21:22:53.10 ID:nTPtclXl
かったりー長文感想ありがとうございましたー
不満点は適当に脳内解釈してくださいねーお疲れッスー

258 :創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 21:24:55.60 ID:TgsxLX+2
はいはい

259 :創る名無しに見る名無し:2011/04/10(日) 04:22:39.70 ID:xGs6U7SV
そんな誰も読まないいちゃもん書いてる暇があるなら、一作でも書いたらどうかね

260 :創る名無しに見る名無し:2011/04/10(日) 07:16:24.77 ID:Qts8xtas
どんな意見、疑問も「読み手様乙!」。こんな空気でごり押しばかりするから書き手も読み手も離れたんだな

261 :創る名無しに見る名無し:2011/04/11(月) 01:52:43.76 ID:YQyLlOSi
伊烏死んでどうでもよくなったから自分も死のうと思ったんだろ

262 :創る名無しに見る名無し:2011/04/11(月) 02:59:09.02 ID:xTW4GCav
伊烏贔屓すぎてワロタ

263 :創る名無しに見る名無し:2011/04/11(月) 09:53:02.85 ID:3Vhp1eO3
それなら周りなど気にせずに、さっさと原作再現で割腹自殺するんじゃね?
伊烏のすぐそばで。

264 :創る名無しに見る名無し:2011/04/11(月) 10:07:37.75 ID:3Vhp1eO3
周りには野太刀やら伊烏の握ってる真改やらで切腹用の太刀には事欠かないし。
それで自殺者が出て測らずしも主催側が泡を食うほうがらしいと言えばらしいし。

265 :創る名無しに見る名無し:2011/04/11(月) 10:55:22.66 ID:rdJgkN0Q
まあ原作把握してなかったとしても。

登場話で「生きる目的がないから」といきなり自殺を考えていた上に、なおかつ二話目で「自分が死ぬのは構わないが、
誰かに敗れるのは自分と伊烏の剣が無意味になるから絶対に嫌だ」って名言しているからね。

誰かに殺して貰おうとは考えない。戯れでも敗れる事になるから。ましてや伊烏の魔剣を模倣して誰かに殺されようとするのは、
二重に自分のアイデンティティを自ら否定するようなもんだし。流れ的にも矛盾する。

「やる気をうしなった」なら、さっさと割腹自殺するのが一番自然な線かと。

266 :創る名無しに見る名無し:2011/04/11(月) 21:43:00.75 ID:/6vJuwg2
だったら書けばよかったのに

267 :創る名無しに見る名無し:2011/04/11(月) 22:52:09.52 ID:rdJgkN0Q
今回は全員把握してたからね。二人は概ね問題なかったから、逆に赤音だけ違和感が目立った。

268 : ◆cNVX6DYRQU :2011/04/18(月) 06:03:52.94 ID:GXxhinI4
白井亨、土方歳三、柳生宗矩、倉間鉄山で予約します。

269 :創る名無しに見る名無し:2011/04/18(月) 07:49:14.28 ID:sgCvbi5g
反論も釈明も無しに次の予約か

270 :創る名無しに見る名無し:2011/04/18(月) 16:49:46.63 ID:8DbVLs9O
何一つ答えるにも値しないって意思表示なんでしょう。

271 :創る名無しに見る名無し:2011/04/18(月) 20:17:16.90 ID:59GOklot
粛々と進めて問題なし

272 :創る名無しに見る名無し:2011/04/18(月) 22:15:16.37 ID:MsyJR/3A
まあ問題だらけだけど、この先一人でやりたいならいいんじゃない?自分一人で風呂敷畳めるなら
下手に口聞けば間違いなくボロがでまくるだろうし。

273 :創る名無しに見る名無し:2011/04/19(火) 02:59:11.65 ID:SuIQi3s0
気に入らないなら他の奴も書けばいいんじゃないの。
なんで書きもしないくせに文句だけは挟むかね。

274 :創る名無しに見る名無し:2011/04/19(火) 06:20:42.34 ID:z55yCO8W
書かないなら文句言うなという理屈が理解不能

275 :創る名無しに見る名無し:2011/04/19(火) 08:24:21.46 ID:Tbdrzk9Y
気に入らないというより、あまりにも特定キャラに便利過ぎる怪しい能力と。
未把握通り越して前回からの話の展開からの矛盾が多すぎて、
展開に強引さが目立つのが問題なのだが。文句じゃなくて。
キャラがいきなり何の説明もなしに他人の手を使って自殺しているし。

正直、まだ注意してくれるうちが華だと思うよ。

276 :創る名無しに見る名無し:2011/04/21(木) 21:38:28.61 ID:HfRItPrj
はいはいお爺ちゃん、向こうでお茶が入ってますよ

277 :創る名無しに見る名無し:2011/04/22(金) 01:17:27.14 ID:RJyrj7rN
まだ注意してくれるうちが華だと思うよ(キリッ

普通に楽しんでる俺みたいなやつもいるんですが
合わないなら無理して読むこたねーんじゃねーの?

278 :創る名無しに見る名無し:2011/04/22(金) 02:42:12.39 ID:RJyrj7rN
うぜえええええええええええええええええええええ

279 :創る名無しに見る名無し:2011/04/22(金) 07:37:52.88 ID:cWVti3n4
いつか書く為に把握しようと合わないものを無理して読み続けたり、
書き手自身が殆どやらなかったwiki編集等で協力する意味はないか。
普通に苦痛でしかなくなってきた自分みたいなのもいるし。
これまで挙げたのはあくまでリレーとしての問題だし、
一人で書くなら元々何一つ問題はないわけだから。

うん、悪かった。

280 :創る名無しに見る名無し:2011/04/22(金) 09:25:27.37 ID:2kr235Aq
去るなら黙って去ればいいのに、どんだけ構ってちゃんなんだよw
去るよ、去るよ、去っちゃうよーって何度主張してるんだ

281 :創る名無しに見る名無し:2011/04/22(金) 09:39:45.38 ID:tkDT4aj+
リレーを無視するのが今のパロロワトレンドだしな
ここみたいに人が少ない場所ならむしろ特徴になっていいと思う

282 :創る名無しに見る名無し:2011/04/22(金) 11:07:38.03 ID:G/k238zs
自演か。

283 :創る名無しに見る名無し:2011/04/24(日) 08:57:30.03 ID:4pk/rC3i
・まだ書いていない
・いつか書くつもりだった
・wiki編集はやっている

だから口出す権利がある? アホかw

284 :創る名無しに見る名無し:2011/04/24(日) 20:31:31.89 ID:UPTM6vRx
そう思うなら何故トリを出さない?
書き手として通したい意見があるのにトリをだすリスクを怖がって勇気もたないなら誰も聞かないよ

285 :創る名無しに見る名無し:2011/04/24(日) 21:16:51.87 ID:c+oKQ/zI
>・まだ書いていない
>・いつか書くつもりだった
書き手じゃない

>・wiki編集はやっている
読み手様
コピってペタするだけの簡単なお仕事です

286 :創る名無しに見る名無し:2011/04/30(土) 08:19:43.59 ID:TuMkDQHP
>>284
すごい異次元レスを読んだ
ビックリしたわ

287 :創る名無しに見る名無し:2011/04/30(土) 08:53:31.48 ID:fX51s7Ug
多分、ここで煽っているのも書き手なんだろうな

288 : ◆cNVX6DYRQU :2011/04/30(土) 09:12:18.68 ID:G8In2FUd
白井亨、土方歳三、柳生宗矩、倉間鉄山で投下します。

289 :相討ち剣 ◆cNVX6DYRQU :2011/04/30(土) 09:13:15.66 ID:G8In2FUd
一面に草が生い茂る中、近藤勇との約束の地を目指して歩いていた土方歳三は、いきなり剣を抜いた。
剣を抜く特段の理由があった訳ではなく、己の中にふと生じた漠たる欲求に従ってみただけだったのだが……
「お見事」
声を掛けられた土方は、驚愕を面に出さないよう勉めつつ振り向くが、果たして成功したかどうか。
いきなり現れた男……いや、この言い方は適当ではないだろう。
その男は今まで隠れていた訳でも気配を隠していた訳でもなく、最前からそこに立っていたのだから。
ただ、男は動きを周囲の風景に溶け込ませ、気配を土方が無意識に発していた殺気に紛れさせていたのだ。
その為に、土方は男の姿を見、気配を感じていながら、それを意識する事ができなかった。
ただ人斬りとしての直感が危険を察知して土方に剣を抜かせ、結果として不意打ちだけは免れた事になる。
だが、形の上では対等でも、気持ちの面で後れを取っているのは否めない。
「で、あんたは誰だ?」
「私は白井亨と申します」
気を取り直す時間を稼ぐ為にした問い掛けへの答えが、更に土方の心を揺らがせる。
白井亨と言えば、土方にとっては伝説的な剣士。
まあ、この御前試合では伝説級の剣豪など珍しくもないが、その中でもやはり白井亨の名は格別だ。
時代がごく近いだけに、土方は白井の超人的な剣技の伝説を、直接の目撃者から聞かされた経験が幾度もある。
一方で、白井は土方が少年だった頃に死に、その後継に相応しい弟子も遺さなかった為に、実際にその技を見た事はない。
名高い剣士と戦う気負いと、その虚名のみしか知らない事への戸惑いが、僅かに土方の剣を鈍らせる。
その為、また先程の近藤戦の疲れが残っているのか、土方の構えが定まらぬ内に白井の足は間境を越えようとし……
「ちっ!」
土方は舌打ちと共に白井の足元に剣を叩き付けた。
試衛館時代、他流派との抗争の中で盗み取った柳剛流の一手。
江戸を席巻して名を上げ、様々な受け手が考案された柳剛流だが、それは白井が活躍した時代よりも後の事。
相手にとって未知である筈の技で惑わせ、気を取り直す時間を稼ごうとしたのだが……
「くっ」
白井は足元への剣を簡単に受け流しつつ柄で顔面を突き、土方は咄嗟に転がってかわすが避けきれずに刃で肩を掠られる。
後代ほどに有名ではなかったが、白井の生前から柳剛流は存在しそれなりには広まっていた。
研究熱心な白井が柳剛流も学んで対応策を考えていたのか……いや、そうでなくとも白井が脛切りへの受け手を持つのは当然。
脛打ちは江戸後期の剣術界でこそ奇手だったが、戦国の頃の足軽剣術や、槍術薙刀術では一般的な攻め手。
だから戦国期の剣術には足を守る技が含まれており、過去の剣術を深く学んでいた白井なら修得していない方が不思議だ。

「はあっ!」
素早く立ち上がって仕掛ける土方。
この時点で、土方にもわかっていた。
白井は土方と比べて剣士としての積み重ねが遥かに大きく、その為に死角が少ない、より完全に近い剣士だという事を。
そのような剣客と戦うとなれば、相手の隙を探すのではなく、己の得意の技と策をぶつけるしかない。
土方は渾身の力と気合を込めて激しく打ち込み、白井を僅かに退かせると、漸く息を付く。
「天然理心流ですか」
その言葉と同時に白井は気合いを発し、それを浴びた土方は猛然と斬り込んでいた。
土方が白井から浴びせられた今の気合は、先刻、近藤から浴びせられたのと同質……つまり、これは天然理心流の気合術なのだ。
開祖近藤内蔵之助に直接会って学んだのか、それとも内蔵之助の死後に研究して気合術を再現したのか……
どちらにせよ、天然理心流の師範達が学ぶ事も再現する事も出来ずにいた気合術を他流の白井が使って見せた。
もっとも、白井の気合術は質は近藤の物と同一だが、気合の絶対量では劣り、これでは多少の心得がある剣士には通用すまい。
そして、素人や初心の剣士を気迫で圧倒して動けなくする程度は、それなりの兵法者なら気合術など使わずとも容易い事。
故に、白井の気合術は実用面から見れば無意味なものなのだが、天然理心流に強い思い入れを持つ土方には最高の挑発。
土方の性格ではそんな挑発を見過ごす事など出来る筈もなく、全力で白井に襲い掛かるしかない。
当然、使う技は天然理心流のものであり、白井は気合術を使ってみせた事からもわかるように、天然理心の剣を良く知っている。
打ち合い始めてすぐ、土方は自分が白井の術中に嵌った事を知った。

290 :相討ち剣 ◆cNVX6DYRQU :2011/04/30(土) 09:14:00.80 ID:G8In2FUd
柳生宗矩の構えを見た倉間鉄山の視線が鋭くなる。
その構えは、相討ちを厭わぬ……いや、むしろ積極的に相討ちを狙う類のものと、鉄山には読めた。
確かに、負傷して不利な状況に追い込まれた剣士の選択としては、相討ち狙いはそう奇異なものではない。
しかし、柳生但馬守宗矩という人物について伝わる事蹟と照らし合わせると、目の前の老人の行為は腑に落ちぬものとなるのだ。
穏やかで無益な争いを避け、周囲に気を遣い、禅など精神修養と剣の融合を目指した……それが柳生宗矩の筈。
その通りの人物ならば、相討ちを狙うどころか、このような状況では自ら剣を引いても良さそうなもの。
無論、歴史上の人物に関する伝承の真偽は見極めがたく、この宗矩の人格が伝えられるものと全く異なってもおかしくはない。
だが、明楽との勝負で見せた剣から推察される人格も、相討ちを好む過激さよりも、伝承にある穏やかさに近かったのだが……

宗矩が相討ちの構えを選択した事を訝しむ鉄山だが、実は宗矩の側は、これ以外に選べる選択肢を持っていなかったのだ。
そもそも、宗矩はこの御前試合の参加者の中でも、特に剣客としての経験が乏しいという弱みを持っていた。
確かに、合戦場で鎧武者を斬り伏せた経験はあるし、将軍の戯れでその近習と試合した事もありはする。
しかし、それらの対戦相手はいずれも専門的に武芸を学んだ兵法者ではない。
武芸者との勝負という点では宗矩の経験は皆無に近く、その点では真剣勝負の経験がない少女剣士にすら宗矩は遥かに劣るのだ。
柳生家を背負い、その興隆を父から託された宗矩にとって、武芸試合における敗北は決して許されぬ事。
そして、不敗を求めるならばその最良の手段は、はじめから戦わぬ事、となる。
故に、宗矩は御留流と称して他流との勝負を避け、更には同じ新陰流、また甥や、息子とすら本格的な試合はしていない。
その宗矩が経験した、一流の武芸者との数少ない勝負で用いたのが、これから宗矩が行おうとしている戦法。
負傷し、不利な状況で己の同等の剣客と闘うとなれば、やはり試合で使った事のある技を使うべきだと宗矩は考えた。
特に、この技を使った時……金沢一宇斎との勝負の瞬間だけは、宗矩は己が一端の剣士として闘えたと自負しているのだし。

自身と同等の剣客と立ち合い、打ち込めば相討ちという状況になった時、どうするか。
かつて宗矩が子息十兵衛にこれを問うた所、返って来た答えは、「互いに武器を置き、礼を交わして下がる」というもの。
宗矩には、十兵衛のこの答えが不快であった。
何故ならば、十兵衛の性格からして、実際に強敵に出会ったとして、退く事など決してないと思えるからだ。
そもそも、敵が強いから剣を引くというのなら、初めから剣を抜かないに如くはない。
そして、宗矩は実際に剣を抜かない事で不敗を保ち、将軍家指南役としての柳生家の体面を保って来た。
だから、宗矩には十兵衛の答えが、父である己に対する阿り、或いは憐れみの発露だと思ったのだ。
……兵法者としての父への尊敬の表れとは思い付きもしなかった事が、今の宗矩の立ち位置に繋がったと言えるかもしれない。
とすると、一宇斎に勝負を挑まれて気軽に受けてしまったのも、同様の蟠りから現れた、いわぱ破綻の兆しと言えるだろうか。
だが、客観的に見てどうあれ、宗矩にとって一宇斎との勝負は、立場を捨てて一介の剣士として虚心に戦えた満足の行く物。
故に、宗矩は今回も、大事を為さぬ内の死を前にして迷う事のないように、あの時と同じ構えを取ったのだ。
気合いと共に、宗矩は鉄山の肩を目掛けて切り込んで行った。

291 :相討ち剣 ◆cNVX6DYRQU :2011/04/30(土) 09:14:46.59 ID:G8In2FUd
激しく切り結ぶ白井亨と土方歳三。
位置を変え、様々な技を用い、千変万化の様相を見せる斬り合いだが、土方には先の展開があらかじめ読めていた。
と言って、土方に予知能力がある訳でも、白井の動きを読みきったという訳でもない。
ただ、若き日に諸方の同情を巡っていた頃、これと全く同じ展開の形稽古を見たのだ。
ちなみに、その時の仕太刀の動きが今の白井の動きと一致し、土方は打太刀、つまりこのまま型通りに進めば斬られる事になる。
だからと言って、型に定められた打太刀の動きを外しても、この場合は無意味。
古流においては、型で上級者が仕太刀を務める場合、打太刀は如何様に動いても自由とされていた、という。
それでも形稽古が成り立っていたのは、型における打太刀の動きがその状況における最善の動きを再現しているからこそ。
例えるなら詰将棋のようなもので、受け手が想定されているのと違う動きをしても、それは詰む手数を減らす事にしかならない。
つまり、型の流れに取り込まれた時点で、土方の死は定まったと言えるのだ。
だが、土方は嘗て、この型に一つの瑕疵を見出していた。それは、仕太刀と打太刀の生死を逆転させる程のものではないが……

土方の剣を押し流した白井は、素早く己の剣を正眼に構えると、対手の鳩尾を目掛けて突き出す。
当然、相手は退く以外になく、それによって可動域を狭め、白井必勝の状況を作れる筈だったのだが。
「ぐっ!」
土方は下がらない。退こうという欲求を意志力で抑え込み、その場にとどまって白井を剣撃で迎撃する。
この状況では土方が如何に速く剣を振ろうとも、白井の剣が先に届くのは動かせない。
だが、突きによって土方の命が奪われる前にその剣が白井に届き、相討ちに持ち込まれる恐れはそれなりにあった。
このままでは己の必敗だと悟った土方が、相討ち狙いに出たという事か。
そして、相討ち・両者死亡……これこそが、白井の最も恐れていた展開であった。

昔、白井亨は剣術に絶望し、剣を学んだ事そのものが全て無駄であったとまで思い詰めた事がある。
それは、廻国修行から江戸に戻り、元の兄弟子達を訪ねて、彼等が老いによって嘗ての剣技を失っているのを知った時の事。
漸く修めてもごく短い期間しか保てず、老境に至れば消えてしまうような術に意味はあるのかと、白井は懊悩した。
そんな白井を救ったのは、兄弟子でありその時から師と仰いだ寺田宗有。
寺田に老いてなお進歩し続ける技を見せられ、剣には老いなど問題としない境地がある事を知り、白井は救われたのだ。
だが、老いは人生の終着点ではなく、その先にあるのは死。
死んで屍になれば、如何な剣客も無力。こればかりは如何ともし難い。
これを克服する法としては、生き残る者に己が剣を伝える事で、身が滅んでも術だけは生き残れるようにするくらいか。
現に、寺田は、白井という弟子を得、全ての技を伝え得た事により、心安らかに逝った。
しかし、白井には寺田にとっての白井のような優れた弟子は居ないし、何よりここで死んではこの島で悟った事は伝えられない。
まだ、敗れて死ぬのであれば、勝者が己の剣を盗み取ってくれる事を期待できるが、相討ちではそれも適わぬ。
そして、前の細谷戦でもそうだったが、白井は相討ちを狙って来る相手に対する対応法を確立できていないのだ。
相討ち必至の状況において、相ヌケなどと称し、互いの精神を共鳴させて剣を引く流派も学んだが、この島ではそれも無意味。
この土方のように、土壇場で相手を殺す事を全てに優先させるような剣士に、どう対処すべきか。
無論、細谷に後れを取った反省もあり、何も対策を考えていなかった訳ではない。
白井は、手の内で剣を操り、切っ先を跳ね上げて土方の顔に向かわせる。
如何に心で死を決しようと、生存本能や生理反応を完全に打ち消す事は不可能。
いきなり顔に刃先が向かう事で土方の防衛本能を刺激し、毛一筋程でも仰け反らせる事が出来れば、白井必勝の状況は不変。
土方の決死の心を鍛え上げた技で打ち破る為、白井は剣を握る手に力を籠め……

292 :相討ち剣 ◆cNVX6DYRQU :2011/04/30(土) 09:15:33.28 ID:G8In2FUd
この結果は道理に合わない。
土方歳三は、白井亨の屍を見てそう思考する。
本来であれば生死は逆か、良くても共に死亡していた筈。なのに何故こうなったのか。
無論、理由を捻り出す事は出来るだろう。
白井が土方の防衛本能を刺激したのに対し、近藤の気合を受け続けた土方の本能が麻痺し、刺激を感じにくくなっていたとか。
或いは、既に一度、敗北し友や仲間の殆どを失った中での無惨な死を体験し、それを悪くないと思っていた土方の方が、
剣客として功成り名を遂げた生しか知らぬ白井に比べて、死の覚悟という点で勝っていたとも。
だが、そんなものは後付けの理屈でしかない。
白井は剣客としての積み重ねに於いて土方より優っており、土方はその挑発に乗って正面からの技の競い合いを挑んでしまった。
この状況では土方が死に、白井が生きるのが道理であり、結果が逆になったのは完全に理不尽。
……それが真剣での戦いだ、というのが、土方の出した結論だ。
真剣での斬り合いでは、素人が滅茶苦茶に振り回した刀に掠られ、熟練者が致命傷を負ったというのもよくある話。
だから実戦では腕の優劣などあてにならないと、土方自身も常々部下に言っていた事。
だが、心の何処かで、それは二流以下の剣士の話で、達人同士の勝負となれば話は別だと思っていなかったか。
「……それか」
土方は今回の白井との戦い、そして近藤との死闘でも、それを勝負と捉え、技の優劣を競い合うという意識を持っていた。
近藤と相討ちになるのを避けようとしたのも、真剣勝負の結果に何らかの意味があると考えたからこそ。
だが、実戦では弱肉強食も優勝劣敗も幻想に過ぎない、と土方は白井との勝負で学んだ。
強者が咎なく死に、弱者が功なく生き残るのならば、実戦では生死勝敗など気にするに足らぬものと言える。
ただ己の全てを剣に籠めて叩き付けさえすれば、結果として勝とうが負けようが、また相討ちだったとしても、瑣末な事だ。
次に近藤と戦ったとして、結果がどうなるかはわからない。
或いは、近藤と会う前に別の誰かによって斬られて果てる可能性もあるだろう。
だが、結果はどうあれ、自分が自ら剣を止める事は決してない……土方は、それだけは確信を持って断言する事が出来た。

【白井亨@史実 死亡】
【残り四十名】

【とノ伍/草原/一日目/昼】

【土方歳三@史実】
【状態】肩、顔に軽傷
【装備】 香坂しぐれの刀@史上最強の弟子ケンイチ
【道具】支給品一式
【思考】基本:全力で戦い続ける。
1:正午に呂仁村址で近藤と戦う。
2:強者を捜す。
3:志々雄と再会できたら、改めて戦う。
※死亡後からの参戦です。
※この世界を、死者の世界かも知れないと思っています。

293 :相討ち剣 ◆cNVX6DYRQU :2011/04/30(土) 09:16:18.77 ID:G8In2FUd
防御を忘れ、渾身の力で倉間鉄山に切り掛かる柳生宗矩。
だが、鉄山に接敵する直前、その勢いが急速に弱まり、あっさりと受け流される。
宗矩の相討ちの剣を止めたのは、鉄山の動き。
その剣舞を思わせる動きが、宗矩に短兵急な攻撃を躊躇わせたのだ。
元々、柳生新陰流は舞踊と縁が深い。
柳生石舟斎は猿楽師の金春七郎を弟子として愛育した上に、新陰流の奥義と交換に金春流の秘奥を学んだという。
また宗矩自身も猿楽を愛好し、その執着ぶりは諸大名の間で噂になった程に度を越していた。
それは全て舞踊の奥義に剣術に通じるものがあり、柳生家がそれを取り込む事で剣の冴えを増そうとしたからこそ。
舞いの名手が流れるような動きで人を魅了するように、舞うような動きで敵を流れに乗せ、死へ導こうというのだ。
そして、自身が舞踊の剣術への応用を深く考えていただけに、宗矩は鉄山の同様の思想に基づく仕掛けを無視できなかった。

嘗て、金春八郎の舞を鑑賞した宗矩が、将軍に八郎を斬れるか戯れに下問され、なかなか隙を見出せなかったという。
実際には八郎に特段の武芸の心得がある訳でなく、如何に舞に武に通じるものがあるとはいえ、宗矩なら容易く斬れた筈。
なのに切り込む機を見出せなかったのは、宗矩が舞の妙と美を深く理解できてしまい、それを壊すのに躊躇いを覚えてしまう為。
つまり、宗矩の内にある心理的要因が、舞踊の妙技を披露する者に切り掛かる事を阻害しているのだ。
八郎ならともかく、仮に舞い手が七郎であれば、実際にその舞いの最中に斬り付けても、勝負は危うかったやも知れぬ。
そして、目の前に居る倉間鉄山は、少なくとも剣術に関しては明らかに金春七郎を上回っている。
剣舞の二人舞のような状況に持ち込まれた今、その流れを無理に打ち破れば心に動揺が生じ、動揺は剣の隙を生む。
ただでさえ負傷し不利な現状で、更に隙を見せれば、鉄山に殺されるまでもなく戦闘力を奪われてしまうだろう。
已む無く、宗矩は鉄山に付き合って舞い続けるのだった。

図らずも……いや、鉄山が宗矩より四百年近く後の人物である事を考えれば、八郎の話を聞き知っていて図ったのかもしれぬが、
ともかく、金春八郎を斬る隙を探して見付けられずにいた時と似た状況に追い込まれた宗矩。
だがあの時、宗矩は八郎に隙を見付けられぬまま終わった訳ではない。
ひとしきり舞った八郎が、脇に退いて息を付いた瞬間、宗矩は仮想的にだが確かに八郎を斬った。
今回も同様。鉄山とて永遠に舞い続ける事が出来る筈もなく、何時かは動きを止めざるを得ない筈。
しかし、あの時と違うのは、今回は宗矩も共に舞っており、体力勝負となれば先に力尽きるのは負傷した宗矩の方であろう事。
となれば宗矩としては、疲労以外の要因で鉄山の気息を乱し、その動きを先に破綻させるしかない。
その為の手段はある。鉄山が求めているものをくれてやれば良いのだ。
「事の始まりは、大御所秀忠公の病死と、同日の将軍家光様の急死。
 ……いや、正確にはそれは始まりではなく、その時になって漸く儂が異常に気付いたというだけの事。
 実際にはそれより以前、少なくとも、寛永六年、駿河城にて御前試合が開催された時には既に始まっていたのであろう」
思惑通り、鉄山の呼吸が僅かに荒くなったのを確かめ、宗矩は語る。己の知る、この御前試合開催までの経緯を。

【へノ壱/森/一日目/昼】

【倉間鉄山@バトルフィーバーJ】
【状態】健康
【装備】 刀(銘等は不明)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を打倒、或いは捕縛する。そのために同志を募る。弱者は保護。
一、柳生宗矩の思惑を見極め、倒す。
二、にノ参の道祖神から主催を目指す。
三、十兵衛、緋村を優先的に探し、ついで斎藤(どの斎藤かは知らない)を探す。志々雄は警戒。
四、どうしても止むを得ない場合を除き、人命は取らない。ただ、改造人間等は別。

【柳生宗矩@史実?】
【状態】腕に重傷、胸に打撲
【装備】三日月宗近@史実
【所持品】「礼」の霊珠
【思考】
基本:?????
一:倉間鉄山を斬る
二:?????

294 : ◆cNVX6DYRQU :2011/04/30(土) 09:17:11.97 ID:G8In2FUd
投下終了です。

295 :創る名無しに見る名無し:2011/05/01(日) 07:26:54.24 ID:Rnya+uT0
乙〜
諸方の『同情』を巡っていた頃 → 諸方の『道場』を巡っていた頃、かと

296 :創る名無しに見る名無し:2011/05/02(月) 06:39:34.05 ID:YhWwDvei

鉄山将軍の剣が舞踊に近いのはダンス戦隊&中の人が日舞の家元だからか

297 :創る名無しに見る名無し:2011/05/07(土) 03:44:18.21 ID:LJlXRx7n
ロワが存続するだけ幸せってもんだぜ

298 :創る名無しに見る名無し:2011/05/07(土) 07:38:15.76 ID:IAJj9f7M
ほとんど俺ロワ化しているけどな。

299 :創る名無しに見る名無し:2011/05/07(土) 19:53:44.81 ID:Qs+9JhVW
取り扱いキャラがコアすぎたんだろ

300 : ◆cNVX6DYRQU :2011/05/10(火) 07:21:16.98 ID:LYt5RV+4
>>295
すいません、そのように訂正します。

芹沢鴨、石川五ェ門、千葉さな子、足利義輝、犬塚信乃、剣桃太郎、坂田銀時、近藤勇、沖田総司、土方歳三、辻月丹、
富田勢源、徳川吉宗、秋山小兵衛、外薗綸花、果心居士で予約します。


301 :創る名無しに見る名無し:2011/05/10(火) 08:54:26.56 ID:Zsf0zvGG
前から思ってたんだけど、安易に主催側を動かし過ぎじゃない?
他のロワだと基本的にはNGだよ。
自分は構わんが、先に一言ことわりぐらい入れてから
予約に入るのが周りへの礼儀でないかい?

302 :創る名無しに見る名無し:2011/05/10(火) 11:27:38.81 ID:GxerqLRJ
動かない主催のが珍しい
それがパロロワ!!!

303 :創る名無しに見る名無し:2011/05/10(火) 15:38:40.77 ID:B7qDiv4K
ロワの進行よりも一人の剣客としての戦いを望む主催、ってのも十分にありじゃないか

304 :創る名無しに見る名無し:2011/05/10(火) 21:40:36.80 ID:llsfyPaB
周りって誰のことだよ
ほぼ一人で書いてるじゃねーか
自分は構わん?何様なんですかw

305 :創る名無しに見る名無し:2011/05/10(火) 22:30:49.12 ID:IWe5sfv9
今更リレーでもあるまいしなあ

306 :創る名無しに見る名無し:2011/05/11(水) 02:10:29.39 ID:KfgQM31G
>>304
読み手様です(キリッ

307 :創る名無しに見る名無し:2011/05/13(金) 04:37:45.06 ID:rUFwphSR
他に書き手がいない現状こーしろあーしろ言いたいなら自分が書き手となって意見すりゃええんでないの?
一人しかいないんだもん、やりたいように進めてもらうしかないべ

308 :創る名無しに見る名無し:2011/05/13(金) 04:42:10.13 ID:spnXxsMY
一人の書き手が我を通した結果他が全部いなくなったわけだしね……
もうご機嫌をとって書いていただく他ないだろ、ニコニコβみたいにはなりたくないしな

309 :創る名無しに見る名無し:2011/05/14(土) 07:00:31.74 ID:IahMljJt
>もうご機嫌をとって書いていただく他ないだろ

書いてもらうつもりなら、そんな書きかたしないよな普通。
そんな書き方しかできないなら黙ってりゃいいのに無駄に自己顕示欲だけはあるのな。

310 :創る名無しに見る名無し:2011/05/14(土) 08:06:29.32 ID:zB6pjS+4
これまで何度ともなくまともに指摘に答えようともせず、
自分の作品ごり押しし続けて顰蹙買っているトップ書き手に
まともに説得しようとする気もなくなるのは当然でしょ?
それこそが今ある結果なんだし。

というか、名無しで指摘に罵倒しているのもこの人でしょ。
だからトリップ付きで反論しないというか、すでにしているからしない。

311 :創る名無しに見る名無し:2011/05/14(土) 11:06:53.21 ID:zxTZW7yL
その指摘をまともと思ってるのがおまえだけなんだろw
>>295みたいにする必要のある修正はきちんとしてる
ごり押しだろうがなんだろうが投下し続けてる書き手に対して「まともに説得しよう(キリッ」っておまえ、それはギャグのつもりかw

312 :創る名無しに見る名無し:2011/05/14(土) 11:48:44.12 ID:zB6pjS+4
とうとう馬脚を出したな…。
やっぱりその程度の書き手か。
了解

313 :創る名無しに見る名無し:2011/05/14(土) 11:48:54.16 ID:Rxz7z/1s
>>301>>310(=>>308?)


314 :創る名無しに見る名無し:2011/05/14(土) 11:50:45.20 ID:zxTZW7yL
ついでに>>275>>279もだなw

315 :創る名無しに見る名無し:2011/05/14(土) 12:31:49.11 ID:6FKiNV9G
>>310
名無しで罵倒してるのは書き手本人じゃないでしょ。
粘着度が明らかにおかしい。言動が不自然で私怨臭がする。
そういう人物の粘着行為は歪んだ同一化願望の現れでもあるから
自分自身のことを相手のことであるかのように主張しているのが特徴。


・ロワの空気が自分に合わないのに無理して読んで文句を垂れてる(>>277
・去るよ、去るよと何度も主張して結局去らない(>>280
・SS書かない、いつか書くつもりだと言い訳、文句だけは言う(>>283
・ほぼ一人で書いている書き手に対し、身の程をわきまえない文句を言う(>>304
・読み手様のレッテルを貼るのが大好き(>>306
・ごり押しだろうがなんだろうが投下し続けてる書き手に対してしたり顔でいちゃもん(>>311


こういう人物に他ロワで絡まれたことはない?

ついでに言うと、歪んだ同一化願望を抱えている人物は
なりすまし行為に手を染めている可能性が高い。

316 :創る名無しに見る名無し:2011/05/14(土) 20:32:47.35 ID:laTFRRY0
>>315
いや、ないね。
ちなみに半分は外れだが。

317 :創る名無しに見る名無し:2011/05/15(日) 00:07:31.04 ID:+njsgf55
>>315
自己紹介?

318 :創る名無しに見る名無し:2011/05/15(日) 19:42:50.01 ID:3L7Ib9ry
第二回放送前にロワとしての体裁が崩壊してるのはなんだかなー

319 :創る名無しに見る名無し:2011/05/16(月) 08:29:56.39 ID:unkdFktw
短期決戦にすれば終盤だから問題ない
3回も4回も放送する意味も義理もない

320 :創る名無しに見る名無し:2011/05/16(月) 09:48:41.37 ID:oCh3BVWa
というより、そうせざるを得ないのが問題という事か。

321 :創る名無しに見る名無し:2011/05/18(水) 01:49:43.68 ID:LxHCUgeN
リアル剣豪より2次元のB級キャラのがキャラ立ちしてるしエピソードも豊富だから他のロワは無駄話を書いて膨らませやすいだけ

ぶっちゃけ、リアル人物は設定とかがペラペラだからその分サクサク行くしかない

322 : ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 19:53:50.14 ID:jLo0/tVK
>>300で投下します

323 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 19:54:46.46 ID:jLo0/tVK
(この男の礼には険がある)
犬塚信乃は、それを見て取った。
ここは帆山城近傍の井戸の前。信乃が、そしてその仲間達がここに来たのは、目の前に居る男の言葉によるもの。
芹沢鴨……沖田達新撰組の首領と自称するこの男、その所作作法は概ね礼法に適っている。
だが、ところどころで感じる違和感。
それは、芹沢が礼法を違えたことによるものでも、数百年に及ぶという時代の違いに起因する差異によるものでもない。
端的に言うと、芹沢の礼には誠心が籠もっていないのだ。
表面的には義輝を将軍として尊重して見せているが、内心では何処か義輝を侮っている所がある。
その倨傲の性が言動の端々から染み出し、信乃に違和感を感じさせているのだろう。
加えて、芹沢に不信感を募らせているのはどうやら信乃だけではない。
銀時も胡散臭げに芹沢を見ているし、芹沢が引き連れて来た男女も不信を感じているのが見て取れた。
同行者――桃太郎によると、その名乗りが真実ならば彼等は後世の高名な忍びと剣士だそうだが――の、
特に御前試合開始の直後に合流したという五ェ門の信を得られていないのは、芹沢の人格に問題があるせいと思える。
故に、信乃は芹沢をすぐに仲間として信じる気にはなれなかったが、ただ、彼のもたらした情報は信用できると考えた。

城外南西の井戸に飛び込めば、主催者への道が通じる。
日の出の際に立ち入りを禁じられたほノ伍に現れた主催者側の刺客から沖田が得た情報だという。
主催者側の者がわざわざ本拠への道を知らせるのは理に合わず、普通なら偽報や罠の可能性をまず疑うところだ。
だが、その可能性は低いと信乃は考えている。
主催者の刺客であったという柳生石舟斎なる剣士は、偽情報を掴ませる為に捨石にするような軽い存在ではないと、
これは石舟斎より後世から来た、その剣名を知る者達の意見が一致するところだ。
刺客が本物の石舟斎なのかという問題もあるが、芹沢は沖田には偽者を見抜く程度の眼力はある筈だと請け負ったし、
沖田と知り合いだという銀時もそれを否定せず、短い接触だったが信乃や義輝も同様の印象を持った。
もっとも、沖田から石舟斎の話を聞いたのは芹沢のみであり、五ェ門などはその点に疑いを持っているようだったが、
信乃は芹沢が虚言で自分達を騙そうとしている可能性は低いと見る。
芹沢は尊大で己を恃む面が大きすぎる人物と思えるが、それだけに主催者の走狗となり卑劣な罠を用いる策に加担はすまい。
それ以外に、芹沢が信乃等を欺く理由は思い付かないし、芹沢がその傲慢さから主催に強い反感を抱いているのは確かだろう。
ここは、芹沢とも、またその連れの男女とも協力して主催者を攻めるしかない。
だが、主催者が自ら己等に繋がる道を伝えたという事は、それなりの備えをして待ち受けていると考えるべきだろう。
そんな所に、新たな仲間との信頼関係を築けていない自分達が攻め込んで、果たして勝ち目があるのか……

「あの、主催者が立ち入りを禁じた場所は三箇所。という事は、他にも二つ、こうした道があるのではないでしょうか」
ここで、芹沢に同行して来た千葉さな子が疑問を呈す。それは、この場に居る誰もがある程度は考えていた事ではある。
三つの道の内の一つしか知らない状況では、攻め込んでも他の道から逃げられでもしたら面倒になるが……
「何、その点は心配要らぬぞ、さな子殿」
芹沢が一人前の軍略家の風を見せて言う。
「そう思うて、呂仁村址には近藤君と沖田君を向かわせたし、土方君も向かっているそうだ。
 午の刻になれば、連中が主催者の刺客から情報を聞き出して斬り、主催の許に向かうであろう。
 へノ壱も、真っ先に立ち入りを禁じられただけに誰かしら向かっておろう。つまり、連中は袋の鼠」
そう言って己の戦略眼を誇る芹沢。先程は、近藤の要請で沖田を呂仁村址に送ったと言っていた筈なのだが。
「近藤さんって、試衛館の?」
「うむ。さな子殿のような方にはあのような田舎道場の者達では不安に思えようが、あれで実戦では少しは使える者共でな」
そう言って笑う芹沢。見下した言い方だが、この不遜な男にとっては賞賛しているつもりなのだろうか。
「まあ、あの三人なら腕に関しては心配ないだろうがな」
銀時がそっと呟く。
「ただ、大丈夫かねえ。あいつ等、喧嘩は強くても揃いも揃って馬鹿ばっかだからなあ」

324 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 19:56:06.32 ID:jLo0/tVK
近藤勇は、剣を正眼に構えたまま、ゆっくりと歩を前に進める。
前方にいる男の構えは防御寄りだが、瞬時に攻撃に転じる余地も残したもの。
足場の見えない草地で近藤がよろめけば、いや、僅かに重心がぶれるだけの隙でも晒せば、そこに付け込んで来るだろう。
故に慎重な足取りでゆっくりと間を詰めて行く近藤だが、このまますんなりと近付けるとは思っていない。
そもそも、近藤がこの男と出会った時、男は近藤を避け、すり抜けようとするような動きを見せた。
近藤がそれを許さずに剣を抜くと男もすぐに応じたが……
自分と行き会う前の確固とした足取りと、今の仮借ない気迫が、近藤に男が本来、戦いを厭うような剣士ではないと確信させる。
ならぱ、最初に近藤を避けようとしたのは、男に何らかの目的……近藤の土方との決闘に類する用があるからだろう。
となると、防御の構えを取ってはいても、男は手早くこの戦いを決着させる成算を持っていると考えるのは必然。
だから、近藤は不測の事態が起こる可能性は充分に認識しながら、ゆっくりと男に近付いて行く。

「ああ、追い付きましたね、近藤先生」
「総司か」
上で述べたように、近藤はこの戦いに変調をもたらす存在の出現を充分に警戒していた。
まして、沖田総司を自分と土方の決闘の見届け人として派遣するよう芹沢に頼んだのは近藤自身なのだ。
故に、近藤は沖田の登場に集中を乱す事なく、それを機に跳躍して斬りかかって来た男を、万全の状態で迎え撃つ。
男の切り下げが近藤の鬢を掠め、近藤の切り上げが男の袴を僅かに切り裂く。
この会合における応酬はまずは五分。しかし、跳躍という行動の最大の隙は、着地の瞬間に訪れる。
だから、近藤が即座に駆け出して、着地体勢にある男を襲っていれば、かなり確率で痛手を与えられただろう。
しかし、沖田の存在が近藤の動きを抑えた。
彼は近藤の愛弟子だが、剣に真摯で近藤を敬愛するだけに、隙を見せれば一種の「礼」として襲って来るかもしれない。
為に近藤は沖田の方にも注意を向けざるを得ず、結果として、男がすり抜けるのを許す事になる。

「柳生の方ですね」
さすがに沖田は瞬時に見抜く。
男の刀法、それは彼が直前に手合わせした柳生石舟斎のそれと顕著な類似を見せていた。
「柳生兵庫助利厳と申す」
男……兵庫助は簡単に名乗り、人別帖にはなかった筈のその名に、沖田は僅かに眉を顰める。
「あれ、もしかして貴方はろノ弐で正午まで待機する役じゃないんですか?もしかして、わざわざ僕達を迎えに?」
人別帖にない、柳生の剣士となれば、沖田が兵庫助を主催の刺客と見たのは当然だし、実際にそれで正解でもあった。
「いや、私用があってな。それが済んで命があれば村址に戻ろう。その間に貴殿等は己の闘いを済ませておかれよ」
それだけを言い残すと、兵庫助は去って行く。
近藤としては、既に兵庫助より沖田が近くなったいる為に兵庫助を追いにくく、沖田も師の獲物を横取りする真似は慎んだ。
「じゃ、行きましょうか。土方さん、先に着いてお待ちかねかもしれませんし」
「ふむ……」
近藤としては兵庫助をみすみす行かせる事に不満がないでもなかったが、ここは沖田の言葉に従う。
何にしろ、今の近藤にとっては誰よりも土方が、土方との決闘こそが大事なのは間違いないのだから。

では、兵庫助けにとってはどうか。
祖父であり師である石舟斎を斬った沖田総司を捨ててまで為さねばならぬ用とは一体何か。
この島には、兵庫助が深く縁を結んだ相手は大勢居る。
息子、叔父、従兄弟、流祖、剣友……。だが、兵庫助が目指している相手は、そのどれでもなかった。

325 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 19:57:03.87 ID:jLo0/tVK
「柳生兵庫助利厳と申す」
兵庫助の名乗りは、ここでも先程と同じく極めて簡潔であった。
だが、名乗られた方の反応は異なる。近藤や沖田とは違い、今度の相手の目的は御前試合の打破と主催者の打倒。
当然、人別帖に名が記載されていない参加者という要素に注目しない筈がない。
「貴方もこの御前試合の参加者なのか?」
一同を代表して訪ねたのは徳川吉宗。兵庫助と同じく新陰流の剣士であり、尾張柳生家とは浅からぬ縁を持っている。
「いや、主催者に招かれてここに来た」
その宣言を聞き、一同は身構えた。
「儂等を斬る為にかね?」
辻月丹がそう訊いたのは決して自意識過剰ではない。彼等は主催者に特に命を狙われてもおかしくはない者の集まりなのだ。
吉宗達は当初から主催者の打倒の為に動いていたそうだし、富田勢源は主催の一味に傷を負わせたといい、更に月丹自身も……
「正午にろノ弐の村址へ行き、そこに現れた参加者を斬れ、との事だったのだがな」
それはもう良かろう、と兵庫助は言う。
「主催者の命に反してかまわぬと?」
小兵衛が聞く。主催者が武芸者を擁する事はわかっていたが、思ったほどの支配力がある訳ではないのか……
「不手際の元は居士にある。あの者が、旅籠から通じる抜け道を記した書を見逃した故に」
言われて、小兵衛達の目が鋭くなる。
月丹が廃寺で見付けた日記。その最後の部分に、確かに旅籠やませみの物置から城に続く抜け道について書かれていた。
襲撃者から逃れる為、村の民と共に抜け道を通って城に逃げ込むと。
今、島に参加者以外の人の姿がない事から、それを書いた僧侶も村民も結局は殺されるか拉致されたと見るべきなのだろうが。
とにかく、その抜け道が怪しいと見た彼等は、香坂しぐれの一応の無事を確認した後、連れ立って旅籠へ向かっていたのだ。
「抜け道を知らせる事が、ろノ弐に来て勝負し、勝った参加者への賞として考えられていた。
 だが、それが別の所から知られ、貴殿等に先に乗り込まれてしまえば、褒賞としての用を果たすまい」
それは、やませみの抜け道を目指す彼等の着眼が正しいと暗に……いや、あからさまに認める発言。
「故に、最早あの場で待つ事は不要と存じ、我が為すべき事を為す為に参った」
己の言葉が主催者の敵を益している事など無頓着に、兵庫助は結論を言う。
「為すべき事とは?」
「償い……我が指導の拙きにより、後嗣共が尾張柳生の真価を見せられず、無様を曝した事の償いを致す」
そう言った兵庫助の視線の先にいるのは、徳川吉宗。
確かに、吉宗の治世下で、尾張柳生は主の宗春に従って幾度も吉宗に挑み、そして敗れて来た。
償いなどと言っているが、要は己の手で吉宗を倒して後裔達の恥を雪ごうという事か。
「良かろう」
吉宗は答えて剣を抜いた。

326 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 19:58:04.28 ID:jLo0/tVK
「上様お一人を残して良かったのかの?」
「はい。我等があの場に残ったところで、吉宗公をお助けできる訳ではありませんから」
月丹の問いに小兵衛が答える。結局、彼等は吉宗を兵庫助との対決の場に残してやませみへ向かう事にした。
実際、剣士同士の、しかも同じ新陰流の、江戸柳生と尾張柳生の意地を懸けた決闘に、他流の剣士が介入する余地はない。
手助けできないなら、傍にいても、志々雄真実との戦いの時のように、吉宗の気を逸らす道具に使われる危険があるだけで無益。
それに、兵庫助が寺の日誌の件を知っていた事から、主催者が参加者の行動を細かく把握しているのは確実。
当然、彼等が切り込もうとしている事もとうに知られている筈で、準備の時間を与えず急襲する事が必要となる。
背後の仲間に心を残しつつ、一行は旅籠へと向かうのだった。

【にノ伍/街道/一日目/昼】

【秋山小兵衛@剣客商売(小説)】
【状態】健康
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を倒す。
一:やませみの抜け道から主催者を目指す
二:主催者を倒したら戻って吉宗の勝負を見届ける
三:辻月丹が本物かどうか知りたい
【備考】※御前試合の参加者が主催者によって甦らされた死者、又は別々の時代から連れてこられた?と考えています。
※御前試合の首謀者が妖術の類を使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識を得ました。

【魂魄妖夢@東方Project】
【状態】健康
【装備】】打刀(破損)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:首謀者を斬ってこの異変を解決する。
一:この異変を解決する為に秋山小兵衛と行動を共にする。
二:主催者を倒したら戻って吉宗の勝負を見届ける
三:愛用の刀を取り戻す。
四:自分の体に起こった異常について調べたい。
【備考】※東方妖々夢以降からの参戦です。
※自身に掛けられた制限に気付きました。楼観剣と白楼剣があれば制限を解けるかもしれないと思っています。
※御前試合の首謀者が妖術の類が使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識を得ました。

【富田勢源@史実】
【状態】足に軽傷
【装備】蒼紫の二刀小太刀の一本(鞘付き)
【所持品】なし
【思考】:護身剣を完成させる
一:やませみから主催者を目指す
二:香坂しぐれを探す
三:死亡した佐々木小次郎について調べたい
※佐々木小次郎(偽)を、佐々木小次郎@史実と誤認しています。

【辻月丹@史実】
【状態】:健康
【装備】:ややぼろい打刀
【所持品】:支給品一式(食料なし)、経典数冊、伊庭寺の日誌
【思考】基本:殺し合いには興味なし
一:やませみの抜け道へ行き主催者の正体を確かめる
二:困窮する者がいれば力を貸す
【備考】※人別帖の内容は過去の人物に関してはあまり信じていません。
 それ以外の人物(吉宗を含む)については概ね信用しています(虚偽の可能性も捨てていません)。
※椿三十郎が偽名だと見抜いていますが、全く気にしていません。
 人別帖に彼が載っていたかは覚えておらず、特に再確認する気もありません。
※1708年(60歳)からの参戦です。
※伊庭寺の日誌には、伏姫が島を襲撃したという記述があります。著者や真偽については不明です。

327 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 19:59:05.09 ID:jLo0/tVK
「あの者達が御心配か?」
「いや、彼等ならば心配ないだろうが……」
「左様。彼等の心配はまったく御無用」
兵庫助は、吉宗に対して力強く断言する。
「大納言の許には、最早さしたる使い手は無い。狂人と左道使いを討つのに、あれ程の剣客が四人とは、過剰なくらいであろう。
 まして、あの場を目指す剣客は貴殿等以外にも多い。それより、目前の敵に集中すべきであろう」
己の仲間である主催者達の敗北をあっさりと予言する兵庫助。
主催者がそんなに弱体であるなら、どうして抜け道の情報を参加者に伝えて招くような真似をしているのか。
或いは、吉宗の心配を除いて全力で戦わせる為の兵庫助の虚言とも考えられるが……
疑いは尽きないが、吉宗には深く考えている余裕はない。
尾張藩と長く抗争して来ただけあって、吉宗は尾張柳生の達人と数多く出会い、或いは闘って来た。
目の前に居る兵庫助の名を継いだである柳生兵庫、四天王などの高弟達、また藩主宗春自身も相当の達人と吉宗は見抜いている。
しかし、この兵庫助がそれらの達人達と比べてすら一線を画す存在だと、対峙する内に吉宗にもわかって来たのだ。
妖夢から預かった剣を強く握り、ここで懸命に戦う事が仲間と共に戦う事にもなると信じて、吉宗は気合を籠め直す。
そして、辺りに正午を示す鐘と太鼓が鳴り響いた。

【にノ陸/街道/一日目/正午】

【徳川吉宗@暴れん坊将軍(テレビドラマ)】
【状態】健康
【装備】無名・九字兼定
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者の陰謀を暴く。
一:柳生利厳と勝負する。
二:小兵衛や妖夢と合流して手助けする。
【備考】※御前試合の首謀者と尾張藩、尾張柳生が結託していると疑っています。
※御前試合の首謀者が妖術の類を使用できると確信しました。
※佐々木小次郎(偽)より聖杯戦争の簡単な知識及び、秋山小兵衛よりお互いの時代の齟齬による知識を得ました。

【柳生利厳@史実?】
【状態】健康
【装備】柳生の大太刀
【所持品】「義」の霊珠
【思考】基本:?????
一:徳川吉宗と勝負する
二:呂仁村址に戻り、そこに居た者と勝負する

328 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 20:00:15.84 ID:jLo0/tVK
手近にあった石を拾い、井戸の中に落としてみる。
しばらく待ったが、水音も、また石が井戸の底に当たる音も聞こえて来ない。
井戸が恐ろしく深いのか、或いは何らかの手段で井戸の中が外界とは隔てられているのか。
「では石川君、頼んだぞ」
あっさりと言って、どんな危険が待っているかわからない井戸の中に五ェ門を送り出そうとする芹沢。
まあ、伝説的な上忍百地三太夫から忍術の奥義を盗んだと伝わる石川五右衛門ならば、こうした任務には適任だろうが。
五ェ門自身も、芹沢には思うところもあるが、体術には自信があるし、自分が偵察に赴く事に異論はない。
彼が身軽に井戸へ飛び込むと、数秒の後、井戸の中から石が一つ飛び出して来る。
よく見ると、それは先程、彼等が井戸の中へ投げ入れた石。
「さして深くはないようだな」

五ェ門に続いて他の者達も井戸に入る。
思った通りさして深くはないがある時点から急に外からの光が遮られ、辺りは闇に包まれた。
彼等はそうした事態も予想して明かりを用意していたが、それとは別に、闇の中で光る物が一つ。
「これは、毛野の!?」
思いがけず発見した霊珠を慌てて拾い上げる信乃。
だが、信乃以外の多くが先に注目したのは、霊珠よりも、その傍に転がっていたもの……少年の骸であった。
参加者同士の殺し合いで死に井戸へ落ちたのか、彼等に先んじて主催者に挑み返り討ちにあったのか。
他にも可能性は無数に考えられるが、一つに確定させるには情報が足りないし、そんな暇もない。
「このような年若い少年を殺すとは……」
義輝が憤るが、芹沢はそれを挑発的に見やって言う。
「子供だからと言って甘く見ておると、有馬喜兵衛の轍を踏む事になりますぞ」
言われた義輝は眉を顰める。
「御存じないか。有馬喜兵衛と言えば、かの宮本武蔵に討たれたという武芸者だが」
芹沢のその言葉に、幾人かは不得要領な顔をし、幾人かは芹沢の意図を悟って目を鋭くした。
宮本武蔵が十三歳で有馬喜兵衛と試合したのは文禄年間の事であり、義輝や更に過去から来た信乃が知る筈もない。
石川五右衛門の処刑も同時期だが、武蔵が剣名を上げるのは更に数年は後で、五右衛門もまず宮本武蔵の名は知らなかったろう。
故に、五ェ門は意識して宮本武蔵という名に反応するのを慎む。
初代石川五右衛門と間違われたのは元々芹沢達の勘違いだが、決戦を控えたこの時期に誤解を解くのは険呑と判断したのだ。
同時に、芹沢と同様の疑念を抱いていた五ェ門は、義輝と、特に信乃の反応を伺い見る。
架空の物語である「南総里見八犬伝」の登場人物である犬塚信乃。
実在の剣豪とは違い、主催者がタイムマシンやクローン技術を擁していたとしても、本人を連れて来れるとは考えられない。
催眠術か何かで自分を犬塚信乃と思い込んでいるのか、主催者の手下なのか、それとも……

329 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 20:01:35.89 ID:jLo0/tVK
五ェ門は首を振って不毛な考えを打ち切る。
これから得体の知れない力を持つ相手と戦おうと言うのに、仲間を疑う事に頭を使うのが良い筈もない。
主催者を倒してその資料を調べれば、信乃や他の参加者の素性もわかる筈だ。そして芹沢についても……
五ェ門が離れている間にヒナギクと細谷が敵と戦って斃れ、更に近藤と再会してその依頼により沖田を貸し出した。
それを全て信じるのは五ェ門には不可能であり、むしろ芹沢が全員を斬ったのではないかとすら疑っている。
まあ、斬鉄剣が返り、その持ち主であった炎を使う怪人の話がさな子のそれと一致している事から、全てが嘘ではなさそうだが。
主催者は隠しカメラなどで試合の様子を監視している筈であり、その記録を調べる事は、五ェ門の大きな目的の一つ。
だからひとまずは疑心を収め、主催者を倒す事に集中しようと改めて決意する五ェ門。
その時、正午を告げる鐘と太鼓の音がこの外界と隔絶された地下にも響く。
更に、日の出の時と同様に、男の声が頭の中に響いて来た。

「御前試合参加者の皆様、試合開始より半日、お疲れの中、励んで下さりし事を御礼申し上げます。
 参加者も大分淘汰され、残りしは一騎当千の達人ばかりなれば、更に奮起される事を期待致しておりまする。
 日の出より午の刻の間に斃れし方は、以下の通りに……」
「この先だ!」
五ェ門が指差したのは、井戸の下から続いている暗い地下道の先。
日の出の時と同様に男の声は頭に響いているが、今回はそれとは別に、微かだが、耳にも声が届いたのだ。
一同は、地下道の先へと向かって駆け出す。
当然、犬塚信乃も同時に走り出したのだが……
「……犬坂毛野殿……」
死者の一人として呼ばれたその名前に、信乃は走りつつ愕然とするのであった。

【???/井戸の中/一日目/正午】

【足利義輝@史実】
【状態】打撲数ヶ所
【装備】備前長船「物干竿」@史実
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を討つ。死合には乗らず、人も殺さない。
一:主催者を討つ。
二:信綱と立ち合う。また、他に腕が立ち、死合に乗っていない剣士と会えば立ち合う。
三:信乃の力になる。
四:次に卜伝と出会ったなら、堂々と勝負する。
【備考】※黒幕については未来の人間説、松永久秀や果心居士説の間で揺れ動いています。
※犬塚信乃が実在しない架空の人物の筈だ、という話を聞きました。

【犬塚信乃@八犬伝】
【状態】顔、手足に掠り傷
【装備】小篠@八犬伝
【所持品】支給品一式、こんにゃく
【思考】基本:主催者を倒す。それ以外は未定
一:毛野の死の真偽を探る。
二:義輝を守る。
三:義輝と信綱が立ち合う局面になれば見届け人になる。
四:村雨、桐一文字の太刀、『孝』の珠が存在しているなら探す。
【備考】※義輝と互いの情報を交換しました。義輝が将軍だった事を信じ始めています。
※果心居士、松永久秀、柳生一族について知りました。
※自身が物語中の人物が実体化した存在なのではないか、という疑いを強く持っています。
※玉梓は今回の事件とは無関係と考えています。

【剣桃太郎@魁!!男塾】
【状態】健康
【装備】打刀
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者が気に入らないので、積極的に戦うことはしない。
1:銀時、義輝、信乃に同行する。
2:向こうからしかけてくる相手には容赦しない。
3:赤石のことはあまり気にしない。
※七牙冥界闘終了直後からの参戦です。

330 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 20:02:41.21 ID:jLo0/tVK
【坂田銀時@銀魂】
【状態】健康 額に浅い切り傷
【装備】木刀、
【道具】支給品一式(紙類全て無し)
【思考】基本:さっさと帰りたい。
1:当面は桃太郎達に付き合う。
2:主催者から新八の居所を探り出す。
※参戦時期は吉原編終了以降
※沖田や近藤など銀魂メンバーと良く似た名前の人物を宗矩の誤字と考えています。

【芹沢鴨@史実】
【状態】:健康
【装備】:新藤五郎国重@神州纐纈城、丈の足りない着流し
【所持品】:なし
【思考】
基本:やりたいようにやる。 主催者は気に食わない。
一:とりあえずは義輝に協力する。
二:五ェ門を少し警戒。
【備考】
※暗殺される直前の晩から参戦です。
※タイムスリップに関する桂ヒナギクの言葉を概ね信用しました。
※石川五ェ門を石川五右衛門の若かりし頃と思っています。

【石川五ェ門@ルパン三世】
【状態】腹部に重傷
【装備】斬鉄剣(刃こぼれ)、打刀(刃こぼれ)
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:主催者を倒し、その企てを打ち砕く。
一:主催者を倒し、芹沢の行動の記録を探す。
二:千葉さな子を守る。
三:芹沢を警戒
四:ご先祖様と勘違いされるとは…まあ致し方ないか。
【備考】※ヒナギクの推測を信用し、主催者は人智を越えた力を持つ、何者かと予想しました。
※石川五右衛門と勘違いされていますが、今のところ特に誤解を解く気はありません。

【千葉さな子@史実】
【状態】健康
【装備】物干し竿@Fate/stay night 、童子切安綱
【所持品】なし
【思考】基本:殺し合いはしない。話の通じない相手を説き伏せるためには自分も強くなるしかない。
一:主催者を倒す。
二:主催者から仲間達の現状を探り出す。
三:芹沢達を少し警戒
四:間左衛門の最期の言葉が何故か心に残っている。
【備考】
※二十歳手前頃からの参加です。
※実戦における抜刀術を身につけました。
※御前試合の参加者がそれぞれ異なる時代から来ているらしい事を認識しました。

331 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 20:03:36.34 ID:jLo0/tVK
正午を告げる鐘と太鼓が鳴った時、近藤勇と沖田総司は未だ呂仁村址には着いていなかった。
「遅れちゃいましたね。土方さん、待ち兼ねているでしょうか」
沖田は言うが、近藤は約束の時間に遅れた事はさして気にしていない。
それよりも大事なのは今度こそ全力で土方と戦う事であり、この点に関しては近藤は自信を持っている。
ならば、多少の時間のずれくらいは土方も気にしないだろう。
もっとも、あまり遅れれば、その間に土方が別の剣士と出会い、手傷を追ったり討たれたりする危険があるが。
沖田によれば正午以降に呂仁村址に行くのは、主催者が挑発的な言葉で禁じた事だとか。
主催者が送った刺客は既に村址を去ったが、それを知らない好戦的な参加者が呂仁村址に向かう事は十分に有り得る。
そんな事を考えた近藤は、心持ち足を早めた。

「犬坂毛野殿、伊烏義阿殿、細谷源太夫殿……」
男の声が日の出からの死者の名前を読み上げて行く。
「……川添珠姫殿、桂ヒナギク殿、烏丸与一殿、武田赤音殿、小野忠明殿、奥村五百子殿、山南敬助殿、藤木源之助殿、
 高坂甚太郎殿、明楽伊織殿、斎藤弥九郎殿、佐々木只三郎殿……」
盛名のみを知る過去の剣豪、一定の親交と敬意を交わした剣客、島で出会った仲間、共に剣を学んだ盟友。
様々な名が呼ばれるが、今の近藤と沖田にとって最も重要な名はそのどれでもない。
土方歳三。これから会う筈の男の名が、もしここで呼ばれたなら、彼等は一体どうすべきか。
「白井亨殿、志々雄真実殿……」
死者の名はいろはの順に呼ばれており、「し」は「ひ」の直前になる。
近藤と沖田は一瞬、男の声に意識を集中させ……
「……以上十七名の方……」
死者の読み上げが志々雄真実を最後に終わった事を示すその言葉は、この場では激しい金属音にかき消された。
「なるほど、尾けてやがったのか、歳」
そう、いきなり現れて近藤に斬り付けたのは、呂仁村址での再会を約して別れた筈の土方歳三。
元々は近藤とは別の方向から呂仁村址に向かった土方だが、白井との闘いを経て近藤と離れている必要はなくなる。
むしろ、他の剣士に自身や近藤が討たれる可能性を考えると、早く近藤と合流する方が望ましい。
そう思いつつ、歩を進めて川にぶつかると、川の水が殆どなくなり、水位が低くなっているのを発見したのだ。
瞬時に戦略を立て直した土方は、一気に川を遡る事にする。
途中、霧に包まれた区域も却って都合が良いと駆け抜け、その上流で川が通常の水量に戻っている事に気付く。
そこからは歩いて街道へと向かったが、近藤の方も芹沢や兵庫助と会って時間を取っていた為に、追い付く事ができた。
先んじて近藤達を視界に捉えた土方は、距離を取って後を尾け、声が死者の名を呼び近藤達の気が逸れた隙に駆け寄ったのだ。
「さすがに、この程度の奇襲じゃ通用しねえか」
「いや、悪くないぜ。得物が並の剣ならそれごとぶった切られてたところだ」
飛び退き、距離を取って睨み合う二人。
「場所が予定と違ってしまいましたけど、まあいいですよね。では、始め!」
沖田の掛け声と共に、二人は互いに剣を叩き付けた。

332 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 20:04:20.08 ID:jLo0/tVK
【はノ伍/街道/一日目/正午】

【近藤勇@史実】
【状態】軽傷数ヶ所
【装備】虎徹?
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:この戦いを楽しむ
一:土方と勝負を決する。
二:強い奴との戦いを楽しむ (殺すかどうかはその場で決める)
三:老人(伊藤一刀斎)と再戦する。
【備考】
死後からの参戦ですがはっきりとした自覚はありません。

【土方歳三@史実】
【状態】肩、顔に軽傷
【装備】 香坂しぐれの刀@史上最強の弟子ケンイチ
【道具】支給品一式
【思考】基本:全力で戦い続ける。
1:近藤と戦う。
2:強者を捜す。
3:志々雄と再会できたら、改めて戦う。
※死亡後からの参戦です。
※この世界を、死者の世界かも知れないと思っています。

【沖田総司@史実】
【状態】打撲数ヶ所
【装備】無限刃
【所持品】支給品一式(人別帖なし)
【思考】基本:過去や現在や未来の剣豪たちとの戦いを楽しむ
一:近藤と土方の決闘を見届ける。
【備考】※参戦時期は伊東甲子太郎加入後から死ぬ前のどこかです
※桂ヒナギクの言葉を概ね信用し、必ずしも死者が蘇ったわけではないことを理解しました。
※石川五ェ門が石川五右衛門とは別人だと知りましたが、特に追求するつもりはありません。

333 :決戦の刻、来たる ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 20:05:01.99 ID:jLo0/tVK
「……志々雄真実殿。以上十七名の方々です……」
参加者に死者の情報を伝えていた果心居士は、急激に近づいて来る複数の気配を感じ取る。
足利義輝と芹沢鴨達の一行が、遂に御前試合主催者の本拠にまで乗り込んで来たのだ。
「参加者が減り、皆様方が仕合うべき相手を見付けるのも難しくなって来ている事と存じます。
 後程、支給致した人別帖と地図の権能を強化致しますれば……」
「いたぞ、あそこだ!」
「……各自御確認願います」
剣士達が来る前に伝えるべき事を伝えてしまおうとした果心だが、僅かに目算が狂って最後の部分に参加者の声が入ってしまう。
未来の言葉だと放送事故と言える事態だが、果心はさして気にしていない。
問題は御前試合の根幹部分が成功するかで、そこは数々の困難を乗り越えて順調に進んでいる……と果心は見ているのだから。
そして、その見込みが正しいかどうかは、もうすぐ確かめる事が出来るだろう。
果心は、駆け寄って来る剣士達に向き直る。
真っ向から戦えば一人でも妖術使い一人くらいは易々と斬り捨ててしまえるであろう達人、それが七人。
その圧倒的な戦力の到来に、果心は会心の笑みを浮かべて向き直るのだった。

334 : ◆cNVX6DYRQU :2011/05/22(日) 22:24:51.64 ID:jLo0/tVK
投下終了です。

335 :創る名無しに見る名無し:2011/05/23(月) 01:18:57.45 ID:jzqUV62w
乙〜
今回は多人数をさばく回でしたか。次回からの下準備が整った戦いが楽しみですわ

336 :創る名無しに見る名無し:2011/05/23(月) 02:30:47.97 ID:ZE/UqQVB
乙でした。
いよいよクライマックスか、あるいは更に仕切り直しか。

337 :創る名無しに見る名無し:2011/05/23(月) 12:15:57.66 ID:f6QnwdmW
乙!

338 :創る名無しに見る名無し:2011/05/24(火) 04:44:24.56 ID:8/HmzR/L
まさに決戦の時、来るだな
さてどうなるか…

339 :名無し:2011/05/29(日) 20:11:22.71 ID:untKrP2O
上様vs如雲斎!

しかし、まさか上様がライダーと共闘する時が来ようとは。まるで、2chが原作みたいだ。

340 : ◆cNVX6DYRQU :2011/05/29(日) 21:15:28.32 ID:zj63CEW2
伊東甲子太郎、坂本龍馬、志村新八、外薗綸花、富士原なえか、緋村剣心、神谷薫、宮本武蔵、柳生十兵衛、天海で予約します。

341 : ◆cNVX6DYRQU :2011/06/08(水) 20:33:12.12 ID:ue8FN5lM
投下します。

342 :武蔵襲来 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/08(水) 20:34:04.54 ID:ue8FN5lM
志村新八は、商家の窓から街を見つめていた。
無論、ただ景色を眺めているのではなく、怪しい者が近づいて来ないか見張る重要な役目。
その最中にも拘らず、新八の意識は半ば以上、背後……部屋の中に向かっている。
原因は、少し前にやって来て彼等の仲間に加わった女性、神谷薫だ。
元攘夷志士だという緋村剣心なる男と共に、半ば行き倒れるような形で商家の付近にいるのを発見された女性。
剣心の方は未だに意識が戻らず隣の部屋に寝かされているが、薫は大きな怪我もなく、一休みしてかなり気力を回復した様子。
「成程、その傷の男のせいでさな子さん達とは別れたっちゅう訳か」
先程から、龍馬は薫のこの島での体験について聞いており、そこにはここの面子とも縁の深い名が幾つも出ていた。
「はい。それで、もしかしたら志々雄に……」
「何の、あん人は見かけはキュートなレディじゃが、内面はオーガの如きお人じゃ。まず滅多な事はないじゃろ」
気楽そうに言う龍馬だが、実際には不安がない訳ではあるまい。
確か、薫がさな子と共に志々雄なる人斬りの前に残して来たという、久慈や座波の名は死者として呼ばれていなかったか。
綸花も心配そうに見ているが、龍馬の方はそうした危惧を毛ほども表に出す事なく、話を継ぐ。
「そんで、沖田君はノースウェストに向かったんじゃったな」
「ええと、近藤勇と土方歳三の決闘を見届けに呂仁村址に行くという話でした。」
「こんな時に決闘とは、まあ、あの連中らしいかのう」
新八にとっては、千葉さな子とかいう女性の話よりは、馴染みのあるこの名前の方が気になるところだ。
もっとも、さな子の話をしていた時とは一転して難しい顔になった龍馬とは逆に、決闘云々は心配していない。
あの近藤と土方が本気で斬り合う事などある筈もなく、決闘というのもつまらない理由で喧嘩でもしただけだろう。
ただ、内心ではそれなりに恃みにしていた真選組が、このシリアスな状況でも馬鹿な事をしているのか、という失望はある。
それに、気になる事はもう一つ。
「こりゃあ、後で斉藤君に仲裁してもらうしかないかのう」
「斉藤ですか。確か、お爺ちゃんになっちゃってるんですよね?」
「うむ。何でも、俺らが来たエイジよりもメニーイヤーアフターから来たらしくてな」
そう、この島に来ている剣客は別々の時代から来ているらしいという事だ。
宮本武蔵の父親が来ている時点で予想できた事ではあるが、同世代の者でも出身時間がずれている事があるらしい。
斉藤一を龍馬から紹介された時には、真選組幹部にしては見覚えがないと訝しみつつも、眼光に射竦められて何も聞けなかった。
だが、彼が新八より数十年も未来から来たのであれば、互いに見分けられなくても特に不思議はなくなる。
そして、この時代のずれは斉藤だけに限らず、他の新八の知り合いにも当てはまるかもしれないのだ。
例えば近藤達と再会出来たとしても、彼等が数年も過去から来ていれば、向こうは新八を知らず助けを得られないかもしれない。
となるとやはり……
(銀さん……)
坂田銀時。あの男とは御前試合開催の時に普通に話が通じている事からも、同じかごく近い時期から呼ばれたのは確か。
またそもそも、銀時ならば知り合いであろうとなかろうと、助けを必要とする者を見捨てる事はないだろう。
薫の話から、人斬りが跋扈する島の現状を聞き、やはり銀時に頼るしかないかという思いを強くする新八。
その時、鐘と太鼓の音が響き、日の出の時と同じ声が島に響き渡った。

「犬坂毛野殿、伊烏義阿殿……」
能書きの後に死者の名が読み上げられ始めると、見張りの新八を含め、どうしても注意が聴覚に行きがちとなる。
島に来る前に親しく付き合っていた者や、島で出会った仲間は果たしてまだ無事なのか……
「……志々雄真実殿。以上十七名の方……」
死者の読み上げが終わった時、新八はそっと息を付いた。
今回は、新八の知り合いや仲間が呼ばれる事はなく、一方で危険な人斬りと聞いた志々雄真実は死んだという。
ほっとして見張りに意識を戻そうとした新八の耳に、その声が飛び込む。
「いたぞ、あそこだ!」
「銀さん!?」
そう、それは確かに坂田銀時の声。
銀時の声が主催者の声に被さって聞こえたという事は、考えられる状況は一つ。
新八は見張りも忘れて、耳を澄ます。
もっとも、主催者の話は数瞬後には終わり、銀時についてはそれ以上はわからなかったのだが。
しかし、新八が元々怠りがちであった見張りを完全に失念したその数秒の内に、事態は動いていた。

343 :武蔵襲来 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/08(水) 20:35:57.56 ID:ue8FN5lM
商家一階の入り口を見張る伊東甲子太郎は、上で彼を補完している新八よりも遥かに集中して見張りを行っていた。
もとより、新八が時々手元を見詰めて余所事を考えているのを察知していたからこそ、甲子太郎は自分が新八と組んだのだ。
それだけに、甲子太郎は如才なく見張りをこなしていたのだが、それでもなかなか完璧とはいかない。
特に、主催者の話の最中に、別の何者かの声が被さってきた時には、さすがにそちらに意識の一部が向く。
正にその瞬間、甲子太郎を長大な木刀が襲った。
襲撃者が襲って来た方角は、ちょうど新八の位置から最も見え易い位置。
甲子太郎が新八をあまり当てにしていないとはいえ、どうしてもその担当範囲に対しては注意が薄くなる。
まして甲子太郎自身も主催者の言葉に注意を削がれていた状況であり、敵に先手を取られたのは止むを得まい。
それでも、嘗て一度は不意討ちで殺された経験が活きたか、甲子太郎の身体は咄嗟に動いて木刀をかわす。
驚愕が冷めやらぬまま、それでも稽古で幾度も経験したように、間を詰めて長木刀の届かぬ内側に入っての一撃を放つ。

渾身の一撃を紙一重でかわされ、反撃の切り上げを辛うじて回避して下がる甲子太郎。
「無二斎殿……いや、宮本武蔵殿か」
はじめの交錯の折、襲撃者の顔を見た甲子太郎は相手を無二斎かと思ったが、よくよく見ると無二斎とは少し違う。
新免無二斎によく似た顔、巨大な木刀、そして何よりあの技……
間違いない、甲子太郎が対峙しているこの男は、伝説的な剣豪、二天一流宮本武蔵。
「何ゆえ……」
甲子太郎は呻くように問うた。
この状況を早く二階の坂本達に伝えねばならぬのだが、他所に向けて大声を上げるような余裕は甲子太郎にはない。
全気力を正眼に構えた刃先に籠めて向けていなければ、上段に構えた武蔵の木刀が瞬時に甲子太郎の頭を砕くだろう。
通常ならば、このまま黙って睨み合っていれば、上段の武蔵が先に疲れる筈だが、今回は甲子太郎が先に力尽きる。
せめて低声で問答を挑み、その気配に坂本達が気付いてくれる事を願うのが精一杯だった。
「無二斎は立ち合いの機会を滅多に逃さぬ男……」
会話を避ければ却って甲子太郎が気力を盛り返すと見たか、武蔵は甲子太郎の問いに答える。
「奴が如何なる思惑でお前達と組んだのかは知らぬが、実態がどうあれ、仲間を討たれれば奴は必ずその仇を討たんとする。
 無二斎を斬るには、こちらが狙うよりも奴にこちらを狙わせる方が、俺にとってはやり易いからな」
元からこちらに理解させる気はないのだろう、甲子太郎には今一つ意味が掴めない答えを返す武蔵。
ただ、武蔵が自分とは相容れない考えの持ち主である事はわかった。
戦いが戦いを生み、仇討ちが仇を生む果て無き連鎖。
それを断ち切り平和な世を作る事が甲子太郎の志だが、武蔵は永遠に続く戦い、無限の連鎖をこそ糧とする剣士らしい。
争いを厭う甲子太郎が剣を一流の域まで磨いたのは、そうした修羅に抗する為と言っても過言ではないのだ。
故に、ここでも、たとえ相手が史上最強を謳われる剣豪であろうとも、何とか一矢報いるのが甲子太郎の剣道だろう。
だが、それは不可能であろう事を、水分を含んで重くなり始めている甲子太郎の袖と、そこから垂れる血の滴が示していた。


344 :武蔵襲来 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/08(水) 20:36:39.50 ID:ue8FN5lM
先程、武蔵が甲子太郎を襲った際、明らかに武蔵の側に利点があった。
第一は主催者の事に気を取られた甲子太郎の不意を襲った事、そしてもう一つは武蔵の顔だ。
好悪の念はともかく、己の面相に父無二斎と似た部分が多い事は、武蔵自身も認識している。
無二斎の仲間である甲子太郎が武蔵に襲われれば、無二斎が裏切ったのかと疑い、その疑念が一瞬の隙を作る筈。
仮に相手が無二斎の本質を既に見抜いて警戒していたとしても、その場合は無二斎を観察して当理流の一端を掴んでいる道理。
武蔵を無二斎と見違え、当理流用の技を大きく異なる思想に基づく二天一流に対して使えば、それは裏目に出る。
こうした事から、武蔵は初手の一撃にこそ最大の勝機があると考え、そこに勝負を賭け、勝ったのだ。
武蔵の木刀の一撃をかわした甲子太郎だが、木刀の長大さと勢いから、それを両手を使った攻撃と錯覚したのは無理ないだろう。
しかし、武蔵は片手で剣を振るう修練を深く積んでおり、その木刀は片手で振るう事をも考えて自作したもの。
武蔵のその一撃も片手打ちであり、それをかわして間を詰めても、そこには長柄刀の切っ先を握ったもう片腕が。
いわば、今回の武蔵の構えは、大木刀と小刀による変則二刀流。
驚愕によって僅かに鈍った剣を紙一重で見切った武蔵は、手の内に隠した切っ先で、甲子太郎の手首の動脈を裂いたのだ。
武蔵の気迫と隙のない構えによって手当ても許されなかった甲子太郎からは、既に相当の血が流れ出している。
その血の匂いに誘われたか、単に意見を求めようとしたのか、遂に二人の均衡を破る者が現れた。

「のう、甲子太郎……どうした!?」
階段の方から坂本の驚いた声が響いた瞬間、武蔵の木刀を握っていない方の手が動き、光る物が二階へ向かい飛ぶ。
甲子太郎の手首を裂いた切っ先を手裏剣打ちに投げたのだが、龍馬はそう易々と手裏剣を受ける男ではない。
だから、本来ならそれを無視して片手が遊ぶ形となった武蔵に斬り込むのが甲子太郎の最善手だったろう。
しかし、武蔵との対峙によって多くの血と気力を失った甲子太郎は、既に背後の気配を感じ取るのも困難になっていた。
万全な状態ならば龍馬は手裏剣の一つくらい防げるが、或いは油断して無手で様子を見に来たのかもしれない。
また新八や薫、気絶していた男女を伴って来た可能性をも、甲子太郎は考えない訳にはいかないのだ。
甲子太郎の剣は敵を殺す剣ではなく、あくまで守りの剣。
故に、剣を伸ばして武蔵の投げた切っ先を叩き落すのが、甲子太郎に可能な唯一の選択。
対して、武蔵にとっては、甲子太郎が剣を振るい見せざるを得なかった隙に付け込むのが当然の選択だ。
それでも、木刀の一撃はどうにか避ける甲子太郎だが、続いての体当たりで吹き飛ばされ、階段にぶち当たる。

「くっ!」
立ち上がろうとする甲子太郎だが、武蔵の拳を鳩尾に受けた為に身体が痺れてすぐには動けない。
もしも今の一撃を頭に受けていたら、頭蓋を砕かれた可能性も低くないだろう。
武蔵が敢えてそうしなかった理由ははっきりしている。
「甲子太郎!!」
(いけない!)
川添珠姫の話では、新撰組は甲子太郎の屍を囮として服部達を誘い出して討ったという。
それでも弟の鈴木三樹三郎をはじめ幾人かが逃げ延びられたのは、その時の甲子太郎が既に死んでいたからこそ。
生きて動けずにいる者は見捨てる機を判断しにくく、囮としては死体よりも有効だ。
特に龍馬は、生きている限り決して甲子太郎を見捨てない性格。
そして、人間一人を担いで階段を上がるような大きな隙を武蔵の前で見せれば、結果は火を見るより明らか。
だが、屍となってしまえばどうしようもないが、生きてさえいれば、仲間の枷とならぬよう行動する事ができるのだ。
「―――――――!!」
甲子太郎は身体の痺れを意思の力で無理矢理に捻じ伏せると、刀を階上に投げ渡しつつ武蔵へと突進する。
その甲子太郎の決死の行いを見た武蔵は……つまらなそうに彼を打ち殺した。
甲子太郎が命を捨てた事で彼を囮として仲間を誘い出す策は破れたが、それでも武蔵の勝利への確信は揺らがない。
次の戦術を練りながら武蔵は龍馬と、戦いの気配を漸く感じて出て来た男女と対峙するのであった。

【伊東甲子太郎@史実 死亡】
【残り三十九名】

345 :武蔵襲来 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/08(水) 20:37:27.51 ID:ue8FN5lM
綸花が二階から七つ胴落としを放ち、階下の武蔵がそれを回避する。
さすがに、奥義とはいえ離れた位置からの飛び道具が武蔵ほどの剣客にそうそう通じる筈もない。
それでも、武蔵も正体不明の綸花の技を警戒し、自分から階段を上がろうとはせず一階に留まっていた。
膠着状態に見えるが、実際には明らかに綸花が不利。
奥義を放つ事による気力体力の消費もあるが、何より生身の人間と殺し合う事による精神の消耗が大きい。
このままではいずれ綸花が力尽きる……そうとわかっていながら、龍馬達は手を出せずにいる。
龍馬が階下に下りて武蔵に白兵戦を挑み、そこを遠距離から綸花が補助する体勢さえ作れれば……
そう思いつつも、この状況で一階に下りるのは容易な事ではないのだ。
階段を駆け下りれば、武蔵は下りて来る者の身体を綸花に対する盾としつつ迎え撃つだろう。
そうでなくとも、階段での戦いは下側にいる者が圧倒的に有利と言われているし。
かと言って飛び降りても、着地の瞬間に大きな隙が出来、武蔵はそれを見逃すまい。
いっそ階段を壊してしまえば綸花が一方的に攻撃できるのだが、それで火でも点けられたら厄介だ。
龍馬はちらりと背後に……通りへ面した窓へと目を遣る。
窓から外へ逃げる、というのも手の一つだが、今の龍馬達の面子ではそれも難しい。
この窓はそう大きなものではなく、女性や、男でも華奢な剣心はともかく、巨漢の龍馬が通るのはどう見ても不可能。
加えて、剣心と少女は未だに意識が戻らず、窓から落とすのは危険だし、外に出しても連れて逃げるのは至難。
綸花が武蔵を牽制していなければ、窓から出てもすぐ回り込まれてしまうし、薫と新八だけ降ろしても武蔵相手に何が出来るか。
……いや、それでもやってみる価値はある。

「新八、薫さん!十兵衛殿や斉藤君達の所へ行け、援軍を呼んで来い!」
龍馬の声に、薫はすぐさま反応する。
ここから、斉藤達が向かったという道祖神までは距離があるし、そこから主催者の本拠までどれだけあるかもわからない。
また、彼等に追いついたとしても、こちらに援軍を出す余裕があるかどうか。
下手をすると、援軍は間に合わず、徒に主催者に向けるべき戦力を削ぎ各個撃破の危機を生む恐れもあろう。
それでも、ここにいても薫に出来る事はないのだ。
綸花の戦いを手助けも出来ずに見ているよりは、斉藤達の所へ向かう方が剣心を助けられる可能性は間違いなく高くなる。
「剣心……」
今、この島は武蔵のような剣鬼の跋扈する修羅場であり、剣の腕に欠ける薫が斉藤達の許へ無事に辿り着けるかもわからない。
それでも、覚悟を固めた気絶したままの剣心にそっと口付けすると、窓から飛び降り、駆け出した。

【ほノ肆 城下町/一日目/午後】

【神谷薫@るろうに剣心】
【状態】打撲(軽症) 
【装備】打刀
【道具】なし
【思考】基本:死合を止める。主催者に対する怒り。
     一:斉藤達の所へ行き、助けを呼ぶ。
     二:人は殺さない。
【備考】
   ※京都編終了後、人誅編以前からの参戦です。
   ※人別帖は確認しました。

346 :武蔵襲来 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/08(水) 20:38:08.38 ID:ue8FN5lM
「新八!」
「あ、すいません、何か、僕の身体じゃ通らないみたいです。仕方ないので、僕はここに残りますね」
薫に続くよう促す龍馬に軽い調子で答えて窓から離れる新八。
確かに、薫に比べれば逞しい新八が窓を通らなくともおかしくはないが、今の新八は真剣に窓を抜けようとしたとは見えない。
一瞬、龍馬は新八を怒鳴りかけたが、その眼鏡の下の強い光を見て言うのをやめる。
新八が一人の士としてここに残るという決断をしたのなら、無理強いしても無意味。
思考を切り替えると、龍馬はこの状況を打破する戦術を考え始めた。

(僕のせいだ……)
新八は、武蔵の侵入を知った時から、その事を考えていた。
この商家は、死んだ甲子太郎が構造と周囲の地形を確認した上で守るに易いとして撰んだ塞。
一階と二階の窓から連携して見張っていれば、奇襲を受ける事はまずないと。
しかし、二階からの見張りを担当していた自分が上の空だった為に、武蔵の不意討ちを許し、甲子太郎は死んだ。
その責が自分にあると認識していたからこそ、新八はここに残る事に固執した。
責任を感じるならば薫と共に行き、力を合わせて十兵衛達に追い付くよう努めるべきという考えもあろう。
主催者の所へ辿り着きさえすれば、そこ居るには十兵衛達だけでなく、銀時と再会できるかもしれないのだし。
なのに新八が薫と同行する事を肯んじ得なかったのは、龍馬が助けを呼ぶ事を口実に自分達を逃がそうとしていると感じたから。
今のところ、綸花は武蔵と渡り合えているように見えるが、長くは保つまい。
薫達が来る前、龍馬と綸花が見張りを担当し、綸花が一階に行っている間に甲子太郎が言っていた。
綸花の技は非常に強力だが、彼女は人斬りの経験に乏しくそれを好みもしない為に、その強力さが重圧となっていると。
だから襲われた場合は自分と龍馬が前面に出ると言っていた甲子太郎は死に、綸花の技に頼っているのが今の現実。
慣れない真剣勝負のストレスがどんなに辛いものかは、新八も身をもって知っている。
敵の刃に斬られるかもしれない恐怖もそうだが、人を殺せる武器が自分の手の中にある事への懼れも強かった。
まして、新八とは比較にならない攻撃力を持つ綸花が、そう長くこの場を支えていられる訳がない。
このまま外へ出れば、十兵衛達の所へ辿り着く前にここにいる者は皆死に、自分が逃げただけになってしまう。
或いは、龍馬は最後には綸花達をも逃して一人で武蔵に立ち向かう覚悟かもしれないが、その場合でも龍馬の死は不可避。
無論、技量の劣る新八が残ったところで、そう大した事が出来る訳ではないかもしれない。
それでも、新八とて剣士の端くれ。
命を捨ててかかれば出来る事もあるだろうし、誰かが命を捨てる必要がある場面では、龍馬より己が行くべきだ。
罪悪感と無力感に苛まれる中、新八は密かに悲壮な決意を固めていた。

347 :武蔵襲来 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/08(水) 20:38:49.69 ID:ue8FN5lM
闘いの続く中、眠り続けている緋村剣心。
だが、薫の口付けの後、その頬には薄らと赤みがさし、心拍数も上がり、徐々に覚醒へと近付いて行くのがわかる。
異性の口付けを受けて目覚めるとは、西洋の御伽噺に見られるような浪漫に満ちた体験。
だが、実際には、剣心の眠りを醒ましつつある最大の要因は、薫の唇ではなかろう。
その証拠に、もう一人気絶している富士原なえかもまた、剣心と同様に目覚めようとしているのだから。
辺りを覆う宮本武蔵の強い殺気と剣気が、眠れる剣士達の本能を刺激し、血の饗宴への参加を促しているのだ。
宮本武蔵という刺激によって掻き立てられる、闘いから半ば脱落していた剣士達の闘志と活力。
それは武蔵をも呑み込むのか、或いは、逆に呑み込まれて糧となるのだろうか。

【ほノ肆 商家/一日目/午後】

【宮本武蔵@史実】
【状態】健康
【装備】自作の木刀
【所持品】なし
【思考】最強を示す
一:無二斎に勝つ
二:一の太刀を己の物とし、老人(塚原卜伝)を倒す
【備考】※人別帖を見ていません。

【坂本龍馬@史実】
【状態】健康
【装備】日本刀(銘柄不明、切先が欠けている) @史実
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いで得る天下一に興味は無い
一:宮本武蔵から仲間を守る。
【備考】※登場時期は暗殺される数日前。

【外薗綸花@Gift−ギフト−】
【状態】左側部頭部打撲・痣 
【装備】打刀、木刀
【所持品】支給品一式(食糧一食分消費)
【思考】基本:人は斬らない。でももし襲われたら……
一:宮本武蔵の襲撃を防ぐ。
二:過去の人物たちの生死の価値観にわずかな恐怖と迷い。
【備考】※登場時期は綸花ルートでナラカを倒した後。
※人物帖を確認し、基本的に本物と認識ました。

【志村新八@銀魂】
【状態】健康
【装備】木刀(少なくとも銀時のものではない)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:銀時や土方、沖田達と合流し、ここから脱出する
一:命を捨ててでも失態の償いをする
【備考】※人別帖はすべては目を通していません
※主催の黒幕に天人が絡んでいるのではないか、と推測しています

【富士原なえか@仮面のメイドガイ】
【状態】足に打撲、両の掌に軽傷、睡眠中、罪悪感
【装備】なし
【所持品】支給品一式、「信」の霊珠
【思考】基本:戦う目的か大義が欲しい。

【緋村剣心@るろうに剣心】
【状態】全身に打撲裂傷、肩に重傷、気絶
【装備】なし
【所持品】なし
【思考】基本:この殺し合いを止め、東京へ帰る。
【備考】※京都編終了後からの参加です。

348 :武蔵襲来 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/08(水) 20:39:59.23 ID:ue8FN5lM
同じ頃、柳生十兵衛は、仲間達が重大な危機に曝されているとは知る由もなかった。
無論、島の状況を考えれば、安全な場所などある筈もなく、心の隅に危惧はある。
しかし、今の十兵衛には、彼等の事を意識する余裕などない。
その原因は、仲間と共に道祖神の下に潜り主催者の許へ向かう途中で立ち塞がった人物。
父の存在や御前試合という言葉から、今回の件に高位の者が加担している事は予測の内。
しかし、十兵衛の前に現れた相手については、全く予想の外。
確かに高位の人物ではあるが、それ以上に高徳の人であり、この御前試合のような狂気の沙汰に関わるとは思えない。
「何故……貴方がこのような所に居られる、大僧正!」
そう、十兵衛達の前に主催者の藩屏として現れたのは、黒衣の宰相・大僧正天海であった。

【???/道祖神からの抜け道/一日目/午後】

【柳生十兵衛@史実】
【状態】健康
【装備】太刀銘則重@史実
【所持品】支給品一式
【思考】基本:柳生宗矩を斬る
一:天海に事情を問い質す
二:父は自分の手で倒したい
【備考】※オボロを天竺人だと思っています。

349 : ◆cNVX6DYRQU :2011/06/08(水) 20:40:43.82 ID:ue8FN5lM
投下終了です。

350 :創る名無しに見る名無し:2011/06/09(木) 04:31:49.90 ID:W+AqXfS6
乙でした
様々な出身を高レベルで融合させる手腕は本当に凄いです
やはり、武蔵は放送直後と新八の油断を狙ったか。ここも決戦ですな

351 :創る名無しに見る名無し:2011/06/09(木) 09:59:41.41 ID:qpptU0SW


352 :創る名無しに見る名無し:2011/06/09(木) 11:10:39.67 ID:FiMclx4+
投下乙です

353 :創る名無しに見る名無し:2011/06/11(土) 02:13:52.32 ID:7h6Yy62e
乙でした。
そういえば十兵衛も天海と面識があるのか。
忠長の顔だって知ってるわけだし、色々膨らみそうだな。

354 : ◆cNVX6DYRQU :2011/06/14(火) 21:27:18.69 ID:bYUn+T2X
伊藤一刀斎、塚原卜伝、香坂しぐれで予約します。

355 :創る名無しに見る名無し:2011/06/25(土) 21:15:37.37 ID:BfapUoQm
ほしゅ

356 : ◆cNVX6DYRQU :2011/06/28(火) 20:18:06.55 ID:wowV9kRX
投下します。

357 :剣士の道 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/28(火) 20:18:49.21 ID:wowV9kRX
己の気が取り敢えずは鎮まったと判断した伊藤一刀斎は、瞑想を止めて立ち上がった。
剣の道を捨て、悟りを求めて寺に向かっていた一刀斎だが、正午に聞こえて来た声によって心を乱され、足を止めたのだ。
それは、死者の名前が読み上げられる中で、小野忠明なる名が呼ばれた時の事。
一刀斎には忠明などという知己は居らず、動揺する理由などないのだが、その時、ふと弟子を思い出したのだ。
弟子の善鬼が小野姓を名乗っていた事、また神子上典膳の母方の姓が小野であった事が影響しているのだろうか。
「小野」と聞いた一瞬、一刀斎は弟子が死んだのかと連想して心を乱し、その事実が一刀斎を動揺させた。
一刀斎は既に剣の道を捨てたと自負しており、そうであるならば弟子が何時何所でで死んだとしても関知しない事の筈。
しかし、実際に弟子が死んだかと思って一刀斎は驚き慌てたのだ。
そして、一刀斎は己の心を探り、その動揺が弟子への愛よりも、己の剣技が絶える事を惜しむ気持ちに起因すると知る。
剣を捨てる事を決意した一刀斎は、最後に弟子に奥義の全てを授け、決闘により跡目を決める事を定めた。
それは即ち、愛弟子に嘗ての己と同じ修羅の道を歩ませる事。
そして結局、弟子に剣を継がせ、託す事で自身が剣を捨て易くする為にした事ではなかったか。
剣の道を離れたつもりでいながらも、弟子という分身を残して来たのでは、悟りなどとても適わぬのではないか。
そのような思いで心を乱した一刀斎は、暫しの瞑想によってその迷いをどうにか抑え込む。
無論、それは一時的なものであり、早く寺へと言って本格的に己の心を見詰め直す事が必要だが……

寺への歩を再開しようとした一刀斎の視界に、一人の女が入って来る。
若く美しい娘だが、その手の刀と眼に映る影が、内面の剣呑さを表していた。
もっとも、相手も同じ事を考えているのかもしれない。
一刀斎とて剥き出しの太刀を握っているし、先程までの荒れた心を鎮める為の瞑想中は殺気に似た気が漏れ出ていたやもしれぬ。
そうであれば……いや、相手が血に飢えた人斬りだとしても、何とか戦いを避けるのが一刀斎の方針。
とはいえ、声を掛けようにも、警戒する相手に大声で呼びかければそれ自体が闘いの呼び水になる危険もあろう。
また、相手の肢体には会話に適した間合いの外からでも一跳びで斬り付けて来るだけの力が秘められているようだ。
そう見て取った一刀斎は、例の……この島で会った最初の剣客に対して使った手をここでも使う事にした。

358 :剣士の道 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/28(火) 20:19:36.03 ID:wowV9kRX
人斬り。香坂しぐれは、目の前に居る老人をそう断じた。
抜身の剣を提げている事、先程までこちらの方向から荒々しい気が流れて来ていた事もあるが、最大の根拠は血の匂い。
と言っても、現の臭いではなく、いわば目の前の男の人生に染みついた血と死の気配を直観で感じたのだ。
出会った相手が血に塗れた人斬りだとすれば、しぐれのする事は一つ。
老人が口を開きかけた瞬間、しぐれは跳躍し、老人に斬り付け……
寸前、迎撃に出た老人の予測を超える瞬速の一撃に、しぐれはあっさりと両断されたのであった。

「はっ!?」
そこで老人が歩いて目の前まで来ている事に気付いて慌てて飛び退き、剣を構え直すしぐれ。
確かに斬られたと思ったが、現実のしぐれの身体には傷一つない。
強烈な気当たりによる錯覚……それが、しぐれの推論だった。
一級の達人ならば、気当たりによって心得の浅い者を吹き飛ばしたり気絶させる事は不可能ではない。
また、気当たりによって分身して見せたり触覚すら錯覚させる使い手とも、しぐれは手合わせをした事がある。
しかし、こうまでリアルに死を錯覚させる程の達人が居るとは……
刃に切り裂かれる感触、血が噴出す音と匂い、内覚は心臓が止まるのを感じ、視界は濁って闇へ落ちて行こうとしていた。
下手をすると死の認識に引かれてそのまま本当に死んでしまうのではないかと思う程の現実感。
いやむしろ、矛盾する言い方だが、現実よりも更にリアルだったのではないだろうか。
死ぬまでいかずとも、放心した隙に本体に斬り付けられれば防ぐ術はあるまい。

再び、老人の姿が膨れ上がり、しぐれに刃が迫る。
先程同様に錯覚か、或いは今度こそ老人が本当に斬り付けて来たのか、それを見定める余裕はしぐれにはなかった。
全神経を集中させて老人の動きを探るしぐれ。
老人の気当たりによってしぐれの神経が刺激され、世界がリアルさを増す。
言い換えれば、刺激によって感覚が研ぎ澄まされ、普段は見えないものが見えるようになっているという事。
それをフルに利用して老人の動きを読み、両断しようとして来た剣を紙一重でかわし、致命の一撃を加える。
……瞬間、老人の姿が掻き消え、背後に気配を感じたしぐれが振り向くと、そこに剣を構えた老人の姿が。
また錯覚……しかし、今ので老人に対抗する端緒は掴んだ。
しぐれは、更に感覚を研ぎ澄ませて老人に立ち向かう。

359 :剣士の道 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/28(火) 20:20:18.85 ID:wowV9kRX
(何とも未熟な……)
一刀斎は静かに自嘲した。
近藤勇に対した時と同様に、殺気によって相手を幻覚の中で殺し、その隙にこの場を脱するのが当初の目算だった筈。
近藤の時は彼が根負けするまで幾度も殺し続けなければならなかったが、あの時と違い、今の一刀斎には剣がある。
それだけで気迫は強くなり、斬られる側が感じる迫真性も遥かに増す。
一度目はすり抜ける寸前で我に返られたが、二度目に殺気をぶつければ今度こそ上手く逃げられる筈だった。
いや、実際、しぐれが幻と渡り合っている間に、一刀斎はしぐれの横を抜け、そのまま走れば十分に逃げられただろう。
しかし、一刀斎はしぐれが幻の己を完璧に斬った事を悟り、それによって立ち去る事が出来なくなったのだ。
剣客を捨てたつもりで居ながら、己の技を脅かす相手に出会えば決着を付けずにはいられない。
剣に生きる者の業は、未だ一刀斎の魂に深く深く根付いていた。

剣を交え、時に激しく打ち合い、時に互いの出方を読み合う一刀斎としぐれ。
時の経過と共に、二人が剣を振るう頻度は減り、じっと睨み合う時間が増えて行く。
だが、多少の心得がある者が見れば、二人の闘いの激しさは少しも減じていないのがわかっただろう。
互いの動きを読み合い、殺気で牽制し、隙を見付けたと思った時のみ攻撃に転じ、相手の予想以上の動きに防がれる。
一部では技撃軌道戦などとも呼ばれる駆け引きを交えつつ戦う二人。
当然、戦いが進んで相手に対する理解が深まれば、より正確に先の展開を読む事が出来るようになる。
結果として、簡単に防がれる無駄な攻撃が減り、傍目には静かに睨み合っているように見えるという訳だ。
ただ、このまま技撃軌道戦が続いていれば、この読み合いによる死闘も自然と終わっていたかもしれない。
相手の技を読み意図を読むという事は、その根にある心や人生を読むという事に通じる。
為に、彼等は互いに相手がただの人斬りではない事に気付き、内に秘めた想いを読み取り始めていた。
一刀斎の人を斬り続けた上で到った悟りを希求する境地や、しぐれの活人剣の誓いとこの島に来てから宿した迷いを。
互いを理解し合えば自然と戦いは収まり、相反する剣道を歩んできた者の悩みを知る事は自らの悩みを断つ助けとなったろう。
しかし、それは全て有り得たかもしれない仮定の話。
現実には、二人が相手の迷いの正体を悟るより前に、その場に現れた怪物が、彼らを更なる迷いと惑いへと突き落したのである。

360 :剣士の道 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/28(火) 20:21:21.95 ID:wowV9kRX
「温過ぎる……」
渡り合う二人に近付く老人が呟く。
その存在には二人とも気付きながら、目の前の相手との勝負に忙しく目を向ける暇もなかったのだが……
「少しはマシな剣士が居るかと思うたが、これではこの塚原卜伝の相手には、到底ならぬな」
塚原卜伝……その剣名は二人も聞き及んでいるが、彼等を振り向かせたのはそれより、言葉と共に噴出したあまりに剣呑な殺気。
一刀斎のように武器として磨き上げた殺気ではなく、ただ老人の内にある危険さが滲み出た結果によるもの。
それを悟った故に、二人は目前の敵を捨て置いて、揃って横合いから歩み寄って来る卜伝に剣を向けたのだ。
二人に剣を向けられながら、卜伝はそれを歯牙にもかけず冷笑すると剣を抜く。

近付いて来る卜伝に対して一刀斎が殺気を放ち、一刀斎の剣が卜伝を貫く姿が幻視される。
だが、卜伝は微かなの反応すらも見せず、何事もなかったかのように近付いて行く。
熟練の剣客ならば斬られたのが錯覚だと気付き、敢えて無視する事で受け流す手を取ってもおかしくはない。
しかし、錯覚とわかっていたとしても、自分が殺される感覚にああも無反応でいられるとは……
一刀斎の仕掛けが無駄に終わったのを見て、今度はしぐれが仕掛ける。
卜伝に向かって跳躍……と見せて、実際に飛んだのは上衣のみ。しぐれ本人は転がって足元から仕掛けた。
「くっ!?」
だが、卜伝はしぐれの偽攻を全く無視して足元を払い、無視された服はそのまま卜伝の顔に掛かる。
視界を塞がれた形の卜伝にしぐれが再び仕掛けるが、卜伝はまるで心眼でも開いているかの如く完璧に防ぐ。
これでは、目線や表情で次の手を読めない分だけしぐれが一方的に不利。
思わずしぐれが退くのを見て、今度は一刀斎が前に出ようとする。
とはいえ、しぐれも一刀斎に譲るつもりも共闘する気もさらさらなく、二人は先を争うように卜伝に剣をぶつけて行く。
卜伝も二本の剣に迫られながら動じる事なく、防御を省みぬ必殺の剣を放つ。

361 :剣士の道 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/28(火) 20:22:25.96 ID:wowV9kRX
一刀斎としぐれの剣が卜伝の顔に掛かっていた上着を切り裂き、その身に届く……寸前、急停止する。
二人が止めたのではなく、止められたのだ。止めたのは、二人の間の地面に刻まれた刀痕。
彼等の刀が卜伝に届くより早く、卜伝の剣が振り下ろされて地面を切り裂き、それを知った二人は咄嗟に剣を止めたのだ。
それはつまり、卜伝が二人のどちらかに攻撃対象を絞っていれば、その者は死んでいたという事。
もっともその場合、無視されたもう片方は剣を咄嗟に止める事はなく、卜伝も斬られていた公算が高いが。
しかし、彼等は二人掛かりで卜伝と戦っていたつもりはなく、一対一の戦闘だとすれば、今回は一刀斎としぐれの完敗。
無論、勝敗は時の運であり、まして相手が塚原卜伝となれば、二人が敗れたとしてもおかしくない。
だが、彼等も一流の剣客であり、万全な状態であれば敵が何者であろうとも、こうも完全な形で負ける事は有り得ない筈。
なのにこのような結果になったのは……
「迷うておるな」
卜伝はその原因を見抜く。その上で、
「無益な事だ」
そう断じて見せた。
「剣は悟道とは違う。仏道の如く、定められた正道がある訳でもなく、解脱という終着点がある訳でもない。
 道なき無限の荒野を永遠に開拓し続ける、それが剣士の生涯というものだ」
あっさりと断言する卜伝。
その意見は一刀斎やしぐれの見解とは必ずしも一致しないが、迷いを抱えた二人は咄嗟に反論できない。
「己の道が正道か迷うなど、終わりなき剣士の道行きに疲れた弱者の逃げに過ぎぬ」
そして、卜伝は二人を冷たく睨む。
「お主等の如き凡百の剣客では、生涯励み続けようとも、切り拓けるのは広大な剣の野のほんの断片のみ。
 でありながら疲れて立ち止まるようでは、斬り捨てるにすら足りぬ」
言いたい事を言い放った卜伝は、ふと振り向いて「公方様か?」と呟くと、もう二人を一顧だにせずに立ち去った。

卜伝が察知したのであろう異変については二人も漠然と感じ取ってはいた。
島に満ちていた妖気のようなものの感触が、先程から微妙に変化しているのだ。
そして、卜伝の向かった東方からは、少し前までは感じなかった奇妙な気配が微かに感じられる。
誰かが島全体に影響を与えるような何かをしたのか……だが、今の二人にとってそれより大事なのは己の心。
一刀斎としぐれは、今まで歩んで来た剣の道から外れようとし、その事で迷い、迷いの中から新たな境地に到ろうとしていた。
その二人の懊悩をあっさりと否定し揶揄しててみせた卜伝。
だが、剣の競い合いで遅れを取った以上、今の二人には卜伝に反論する資格も、卜伝を追う資格もないだろう。
その資格が生まれるのは、彼等が新たな境地に辿り着いて今度こそは卜伝に勝てる見通しが付いた時のみ。
塚原卜伝という存在は、剣の道に惑っていた二人の剣士に強い刺激を与え、結果として早い脱皮を促した。
但し、脱皮した後に生まれようとしている剣の姿そのものも、卜伝の影響を受けて大きく歪められているかもしれない。
果たして、殺人剣を捨てようとする老剣士と活人剣から外れようとする女剣士が掴むのは、どんな剣の形なのか……

362 :剣士の道 ◆cNVX6DYRQU :2011/06/28(火) 20:23:41.07 ID:wowV9kRX
【にノ陸 街道/一日目/午後】

【塚原卜伝@史実】
【状態】左側頭部と喉に強い打撲
【装備】七丁念仏@シグルイ、妙法村正@史実
【所持品】支給品一式(筆なし)
【思考】
1:この兵法勝負で己の強さを示す
2:勝つためにはどんな手も使う
3:妙な気配を探ってみる
【備考】
※人別帖を見ていません。
※参加者が様々な時代から集められたらしいのを知りました。

【伊藤一刀斎@史実】
【状態】:頭部に掠り傷
【装備】:村雨@史実(鞘なし)
【所持品】:支給品一式
【思考】 :もう剣は振るわない。悟りを開くべく修行する
一:刀を決して使わない
二:新たな境地を拓き卜伝に示す

【香坂しぐれ@史上最強の弟子ケンイチ】
【状態】右手首切断(治療済み)、肩に軽傷
【装備】蒼紫の二刀小太刀の一本(鞘なし)
【所持品】自作の義手
【思考】基本:殺し合いに乗ったものを殺す
一:塚原卜伝に勝つ
二:富田勢源に対する、心配と若干の不信感
三:近藤勇に勝つ方法を探す
【備考】※登場時期は未定です。

363 : ◆cNVX6DYRQU :2011/06/28(火) 20:26:16.88 ID:wowV9kRX
投下終了です。
それと、柳生宗矩、倉間鉄山、足利義輝、犬塚信乃、剣桃太郎、坂田銀時、芹沢鴨、石川五ェ門、千葉さな子、果心居士、
徳川忠長で予約します。

364 :創る名無しに見る名無し:2011/06/29(水) 01:38:37.19 ID:gxSkgx8i
乙でした

365 :創る名無しに見る名無し:2011/07/01(金) 02:10:49.99 ID:s85KqECR
乙でした〜

366 :創る名無しに見る名無し:2011/07/01(金) 11:51:34.83 ID:RazI/79W
内容に感想つけてやれよ。

367 :創る名無しに見る名無し:2011/07/01(金) 23:30:26.04 ID:s85KqECR
面白い作品は面白いの一言ですむから”乙でした”だけ返したんよ
丁寧にクライマックスへの土台が作られていくから、読むほうでも徐々に高まる緊張感で背筋がゾクゾクとした

ただ、香坂しぐれは彼女の背景、何を土台にした剣士なのか、いまいち想像できにくいかな

368 :創る名無しに見る名無し:2011/07/02(土) 06:12:38.04 ID:waoDVAHh
必殺 剣客動画
「煩悩シュレッダー(Shredder House)」Suicide control program (後半グロ注意)
http://www.youtube.com/watch?v=fUWWvuynfYI

369 :創る名無しに見る名無し:2011/07/10(日) 21:42:44.05 ID:k72k4Q/4
避難所の方に投下きてた
規制かな?

ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12485/1236399950/303-313

370 :創る名無しに見る名無し:2011/07/11(月) 19:21:40.48 ID:g8vzWUOT
>>369
情報ありがとう。感想は本投下時に。
しかし、あれはガチで本物かい。良いハッタリですわ

371 :創る名無しに見る名無し:2011/07/17(日) 18:00:44.13 ID:9xlvivee
代理投下します

372 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 18:01:30.80 ID:9xlvivee
倉間鉄山は、首筋に迫る柳生宗矩の剣を辛うじてかわし、崩れかけた体勢を何とか立て直す。
危うい所だったが、徳川秀忠と家光が同日に死んだと聞かされては、動きが多少乱れるのも仕方ないだろう。
それは、鉄山が知る歴史とは明らかに食い違う流れであり、そうでなくても将軍と大御所が同時に死ぬなど相当の異常事態。
今回の異様な御前試合が開催された原因と何らかの関連があるとみて気を取られるのも当然。
それを見越した宗矩は、更に言葉を継ぐ。
「幕閣の評議の結果、跡目は弟君の忠長公と決まった」
忠長に関しては素行に芳しからぬ噂が多く、御三家等の他の血縁者から英明な者を選ぶ案もありはしたようだ。
しかし結局は、議論はさして紛糾する事もなく、比較的すんなりと忠長が将軍家を継ぐ事が決まった。
まあ、徳川家の天下を長く安定的に保って行こうとすれば、器量より血筋を重視する選択は不自然ではないだろう。
しかし、伝え聞く忠長の行状は限度を越えるものがあったし、何より忠長には兄家光に対する謀反を企んでいたとの噂がある。
特に、今回は秀忠と家光の親子が同日に、しかも家光は七孔噴血し全身が黒ずんで死ぬという異様な死に方をしているのだ。
医師の見立てでは毒殺などの徴候はないと言うが、状況的に疑いを抱いてしまうのが人情というもの。
特に、近頃の忠長は妙な妖術師を側近くに置いて重用していたらしいし……
それにしては話が簡単に決まり過ぎている……それが、宗矩の政治家としての経験に基づく勘であった。
「腑に落ちぬものを感じ調べを進めた結果、浮かんで来たのが駿河城で行われた御前試合であった」

忠長の狂気と乱行はかなり前から聞こえて来ていたが、ある時期からその質に変化が見られたという。
妖術師を重用し、妙な儀式に耽り、今までの側近を遠ざけ、駿府に潜入していた幕府の諜者を悉く見破って斬り捨てたとか。
その変換の境に当たる時期を調査した所、丁度その頃、駿河藩において妙な事件が起きていた事がわかった。
数名の者が藩から脱出しようとし、追手との激しい闘争の末、数十名の死者を出したと言うのだ。
事件の真相は不明だが、当時はまだ駿府に残っていた間者の報告により、ある程度の事はわかっている。
追手として戦って死んだ者については葬儀が行われており、片岡京之助・笹原修三郎というのが追手の頭の名だと知れた。
加えて、戦場となった向田村に住む目撃者によると、追われていた者の一人は隻腕の剣士で、どうも虎眼流を使ったらしい。
虎眼流については宗矩も知っているが、開祖である岩本虎眼が弟子に討たれて以来、この流儀は衰えた筈。
その虎眼流の熟練の遣い手、しかも隻腕となると、駿河城御前試合で師の仇を討った藤木源之助とみて間違いなかろう。
そして、追手側の片岡と笹原と言うのも、同じ御前試合に参加していた武芸者だとか。
御前試合の参加者同士の斬り合い、そしてその直後の駿河藩と忠長の変貌……偶然では片付けられない何かがある、そう思えた。

「とはいえ、幕閣が決を下した案件について、あからさまには調べにくい。そこで、まずは松岡左太夫殿に話を聞く事とした」
駿河城御前試合には様々な武芸者が参加していたが、中でも新当流の剣士は二十二名中四名と、かなり多い。
特に、最後の試合で駿河藩の剣道師範の座を賭けて、かの塚原卜伝の甥である卜部晴家と闘い勝利を納めた水谷八弥と、
その晴家の子であり当初は八弥の相手になる筈だった新太郎、そして試合後に八弥を討った卜伝の後裔である塚原阿由女。
彼等はいずれも御前試合の少し前に江戸に上り、新当流松岡道場に泊まったというのだ。
更にまた、左太夫の弟子である多田右馬之助は、土井大炊頭の間者として駿河に入り、御前試合の少し前に斬られている。
そして、彼が駿府に赴く際、朋輩に告げた表向きの理由は、卜部新太郎に斬られた同門の甲頭刑部の仇討であったとか。
このように左太夫は駿河城御前試合と深く縁を持っており、彼に聞けば何かわかるかと思えたのだが……
「松岡殿は何処までも剣士として生きて来られた方。そのような政治向きの話を持ち込んでも困惑させただけであった」
どうも、左太夫は多田が大炊頭の密偵となった事すらも知らなかったようだ。
新太郎や八弥についても、わかったのは彼等が剣士として相当の技量を持っていたらしい、という事くらい。
「だが、結局、松岡殿のおかげで、かの御前試合が尋常な物ではなかったと、知る事が出来た」

373 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 18:02:08.40 ID:9xlvivee
「おいおい。まさかこいつが黒幕なのかよ?」
思わず呟いた坂田銀時の目前に居るのは妖人果心居士……しかし、銀時の言葉は彼に向けられたものではない。
果心の背後、無数の鏡が浮かぶ広間の中央に座る、貴人らしい装束を纏い、侍女を侍らせ黄金の杯で酒を飲んでいる男。
状況からして、この男が御前試合主催者の首領と考えるのが妥当であろう。
「でも、この人……」
「小者だな」
断言する芹沢。それに関しては他の者も同感であった。
無論、人の器の大小など簡単に量れるものではないが、内に何かを秘めた者なら、多少は外面に漏れ出て来る物がある筈。
しかし、目の前の男から感じられるのは、ただ狂気と底の浅い嗜虐心のみ。
はっきり言って、恐るべき力を持った主催者との対決を覚悟して来た彼等にとっては拍子抜けする程度の相手である。
「相手が如何なる者であろうとも、我等の為すべき事は変わらぬ」
「ああ。それに、ボスが雑魚でも、部下には手強そうな奴がいるしな」
そういう訳で気合いを入れ直す一同だが……

「無礼な!」
貴人風の男……徳川忠長は、己を侮る参加者たちの態度に、顔を赤くして怒り出した。
空になった黄金の杯を投げ出すと、もう一つの、酒に満たされた杯から酒を飲みながら喚く。
「果心、そちは紀州の山猿の供の者共を相手せよ。此奴等は、我が力で直々に切り刻んでくれる!」
意外な発言に戸惑う義輝達を尻目に、果心はその言葉を予期していたかのように一礼すると、影と化してその場を去る。
影は広間から繋がる通路の一本に入って行くが、誰も敢えてそれを追おうとはしない。
特に武芸の心得があるようにも見えない忠長が、この場に居る一流の剣客達を討つなと、無謀としか思えないが、
逆にそのあまりの無謀さと、あっさり忠長にこの場を譲った果心の態度が、剣士達を警戒させた。そして……
「気を付けろ!」
神の加護を受ける犬士である犬塚信乃が、突如生じた妖気の塊に真っ先に気付いて仲間達に警戒を促す。
だが、信乃以外の剣士達も、直後に妖気が気配となり風となって渦を巻く頃には、その存在を感知して構えを取る。
そして、風は数瞬の内に固体へと変わり、武器を持った人間……若い娘の姿に変じて行く。
「何だ、こいつは?」
その問いに答えられるものはこの場には居ない。
もしも、参加者の一人である座波間左衛門が健在でこの場に居れば、瞬時にそれが誰であるか見抜いたであろうが。
「行け、切り刻め!」
忠長の意志と言葉に従い、妖気から生まれた女は動き出す。
磯田きぬ……駿河城御前試合参加者の中で最後に命を落とした武芸者の姿を取った妖女は、剣客達に向けて薙刀を振り下ろした。

374 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 18:02:53.50 ID:9xlvivee
「ちょうど松岡殿を屋敷に呼んだ日、金沢一宇斎殿が訪ねて参った」
一宇斎は、宗矩の数少ない剣友。
昔、一度立ち合い、軽い助言をしただけだが、その時の事は快い思い出として宗矩の胸の奥に残っている。
だからこそ、宗矩は初め、一宇斎との面会を断ろうとした。
その日の宗矩は邪念なき剣客ではなく、政治家として動いており、一宇斎にそのような己の姿を見せたくなかったのだ。
しかし、同席していた松岡左太夫が剣客として知られた一宇斎に強い興味を示し、宗矩も一宇斎を招き入れる事となる。
左太夫としては宗矩から政治向きの話を振られる事にうんざりしていて、一宇斎はそれから逃げる方便だったのかもしれない。
宗矩もその時点で左太夫が大した情報を持たないと悟っていたし、悪い事をしたとも思っていたので、その要望に応えた。
以後、その日一日は宗矩も余計な事を忘れ、三人で剣談をしたり軽く試合したりして過ごす。
だが、別れ際の一宇斎の言葉が、宗矩を政治の世界へと引き戻す事になる。

「一宇斎殿の夢枕に、弟子であり駿河城御前試合で斬死した黒川小次郎が立ったと言う」
夢の中で小次郎は師に、大納言に仕える妖人に最も大切なものを奪われたと訴え、直後に苦しみ出して急死したとか。
奇妙な夢だが、一宇斎が気にしたのは夢の内容よりも、出て来た弟子の立ち姿。
黒川小次郎と言えば、御前試合では武運拙く敗れたとはいえ、一宇斎の弟子の中でも指折りの剣士。
だが、夢の中に出て来た小次郎は剣の心得など全くないただの男としか見えなかった。
生きている間に如何に剣を磨いても、死して魂魄となれば身に付けた技は失われてしまうのか。
剣技を失って存在し続ける事は剣客にとって非常な苦痛であり、それが死後の運命であれば死を厭わぬ虚心の剣を振うのは困難。
夢がそんな迷いを生み……或いは、元々迷いがあったからそんな夢を見たのかもしれないが、一宇斎は悩んで宗矩を訪ねたのだ。
宗矩や左太夫との語らいで一宇斎は己なりの答えに辿り着けたようだが、宗矩は黒川小次郎の幽霊の言動が気になった。

宗矩は合理的な人間ではあるが、魂魄や亡霊の存在を信じていない訳ではない。
剣の修練をする中で己の内にある神的なものの重要さを痛感していたし、父石舟斎や子の十兵衛は実際に亡霊を見たという。
剣客として宗矩よりも遙かに多く死に接して来た彼等が言うのならば亡霊の存在自体に疑いはあるまい。
ただ、彼等はその亡霊を斬ったとも言っており、剣客の剣が魂魄をも斬るのなら、決闘に敗れた剣士が亡霊となる事はない筈。
とはいえ、黒川小次郎だけは、亡霊となってもおかしくはない特別な理由があるのだ。
報告によると、御前試合で小次郎と闘った月岡雪之介は、峰打ち不殺剣なる、真剣で敵を殺さずに倒す剣を使う剣士だったとか。
だが、不殺ほ通すには小次郎が手強すぎたのか、何らかの事故か、雪之介は小次郎を殺し、その亡骸を抱えて叫んだという。
雪之介が小次郎を斬った剣が、必殺の意志の籠もらないものであったとすれば、身体は滅んでも魂魄は残ったかもしれない。
そして、一宇斎が話した夢の中での小次郎の亡霊の死に様。
「急に苦しみ出し、七孔噴血し、全身が黒ずんで倒れる」……それは、先日の家光の死に方と酷似していた。
あまりに異常な状況であった為、家光の死に関しては厳しい箝口令が敷かれている。
いずれ漏れるのは避けられないかもしれないが、その時点では未だ秘密は守られていた筈。
だから、一宇斎の夢はただの夢ではなく、小次郎が言った妖人が家光の死に関わっている……それが、その時点での宗矩の推理。

375 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 18:03:32.70 ID:9xlvivee
宗矩の剣が鉄山の腕を掠め、また一つ傷を付ける。宗矩の思惑通り、鉄山は話に聞き入って動きが乱れ、多くの傷を受けていた。
辛うじて重傷は避けているが、これ以上傷付けば、その戦闘力は腕に重傷を負っている宗矩以上に下がる事になろう。
「それで?」
己の不利を悟っていながら、鉄山は先を促す。それだけ御前試合の真相を探る事を重視していたからだが……
「話はここまでだ」
いきなりの宗矩の宣言に、鉄山は怪訝な顔をする。
「その夜、妖人果心が儂の前に現れてこの御前試合について話して参加を誘い、儂はそれを受けて一介の剣客に戻る事とした。
 ただの剣士ならば、余計な事を詮索する必要などなく、故にそれ以上の探索はしておらぬ」
そう言って剣舞の激しさを増す宗矩。
ここまでで鉄山にかなりの傷を負わせており、御前試合の情報を与えて気を乱す策は成功したと言って良かろう。
だが、鉄山にとっては半ばで話を打ち切られた形であり、悪いと思ったのか、宗矩は小耳に挟んだ情報を付け加える。
「御前試合の参加者を異なる時と世界から集めたのは、果心が作り忠長公が持ちし呪具によるものだとか。
 呪具が死んだ駿河城御前試合参加者の精髄……即ち武技を奪い、それを力として其許等を呼び寄せたそうだ」
参加者を様々な時代から呼び寄せた呪具……それは鉄山にとっては最高度に重要な情報の一つだ。
主催者を倒したとしても、それがなければ各時代から攫われた参加者を返せず、歴史に重大な影響が及びかねないのだから。
「その呪具とは?」
「確か、果心等はこう呼んでいた……聖杯、と」

【へノ壱 森の中/一日目/午後】

【倉間鉄山@バトルフィーバーJ】
【状態】軽傷多数
【装備】 刀(銘等は不明)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を打倒、或いは捕縛する。そのために同志を募る。弱者は保護。
一、柳生宗矩を倒す。
二、にノ参の道祖神から主催を目指す。
三、聖杯を確保する
四、十兵衛、緋村を優先的に探し、ついで斎藤(どの斎藤かは知らない)を探す。志々雄は警戒。
五、どうしても止むを得ない場合を除き、人命は取らない。ただ、改造人間等は別。

【柳生宗矩@史実?】
【状態】腕に重傷、胸に打撲
【装備】三日月宗近@史実
【所持品】「礼」の霊珠
【思考】
基本:?????
一:へノ壱に侵入した者を斬る
二:?????

376 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 18:04:30.83 ID:9xlvivee
妖女の殺気が膨らみ、右から斬り付けられると見た芹沢鴨は防御の構えを取るが、右から来たのは気配のみ。
薙刀の実体は左から芹沢を襲い……
「何なんだ、こいつは?」
あっさりと左からの横面切りを弾き返した芹沢は怪訝そうに呟く。
実際、目の前の女の戦いぶりは奇妙だ。
得物は薙刀だが、妖女は時に剣術・槍術・体術の技法を織り交ぜて闘っており、その全てに関して一流の技を持っているようだ。
しかし、肝心の薙刀は……
妖女の薙刀には天流や一羽流、卜伝流の技が含まれており、それはまあ、それなりの腕ではある。
もっとも、これら新当流系の流派は、戦国期の武術らしく、薙刀を含めあらゆる武器の扱いを併修するのが一般的であり、
この妖女の薙刀術も、新当流の剣を学ぶついでに、余技として身に付けた程度のものだろう。
それとは別に、この女は薙刀術を専門的に学んだ形跡があり、この戦いでは当然、それを主に使っていた。
ところがその主戦力になる筈の薙刀術があまりに拙いのだ。
奥義どころか大抵の流儀で共通の基礎となる部分すら完全には修めていない為、流派を特定する事すら困難な程。
無論、人には得手不得手があり、他の武術では一流の技を身に付けた者が、別の武器・流儀ではまるで駄目という事もある。
だが、それなら何故、わざわざ薙刀を得物としたのか。
この妖女が剣や槍を持っていれば、もう少し苦戦しただろうに。
その奇妙さ故に戸惑っていた一同だが、何時までも様子を見ていても仕方がないと、覚悟を固めた。

「ここは私が!」
千葉さな子が、物干し竿で妖女の薙刀を抑え込む。
それに頷いて彼女の仲間達は側を駆け抜け、五ェ門だけが側に控えて不測の事態に備える。
さな子の剣が妖女の薙刀に勝っているのは無論、さな子が薙刀でも相当の腕である事は、芹沢や桃太郎が説明済み。
皆、妖女が何か仕掛けて来てもまず封殺できるだろうと考え、さな子に加えて五ェ門が残れば戦力としては充分と見なしたのだ。
もっとも、残り全員が忠長に向かった訳ではなく、過半の者はもう一人に対する警戒に向かったのだが。
「ええい、何をしておる!」
女達に怒鳴りざま、忠長が傍に置いてあった大小二刀を抜き放って向かって来る剣客達に立ち向かう。
刃の妖しい光はそれが何らかの曰くある逸品なのであろう事を示していたが、持ち手が素人同然ではどんな名刀も無意味。
「おらよ!」
先頭に立つ銀時が軽い蹴りを放つと、それだけで吹き飛び、刀を放り出して痛みに転げ回る。
拍子抜けを通り越して呆れ果てる一同だが、忠長がどんな人間であろうと、この男が開催した御前試合の深刻さには変わりない。
「この御前試合とやら、中止して戦いを望まぬ者はすぐに帰れるように手配してもらおうか」
忠長に剣を突き付けて静かに告げる義輝。
尋常な人間ならば威に圧されて屈服したかもしれないが、半ば……いや、殆ど狂った忠長にはそのような感性は既にない。
「何をしておる!この無礼者共を殺せ!」
義輝に従うのでも命乞いをするのでもなく、忠長はただ怒りに任せて喚き散らす。
「如何なる願いも適える力を持つのであろう!?ならば、その全ての力を以って、この者共を皆殺しにせよ!」
杯……黄金の物ではない、もう一つの、見た目はごく普通の杯を掲げて叫ぶ忠長。そして……

「な!?」
忠長を見張っていた義輝と銀時が驚愕する。
忠長の叫びと共に杯が光り、それを掲げていた忠長が急激に干からび、老い、枯れ果てて行くのだ。
「た、助けてくれ、友矩い!」
己の身に起きた異変に動転した忠長が傍らの侍女に縋り付くが、侍女は座ったままそれを冷たく振り払う。
振り払われた忠長は空中で更に急激に干乾びて木乃伊の如くなり、地に倒れた衝撃で砕け風化して塵となって消え去る。
あまりの事態にさしもの剣客達も息を呑む中、侍女……いや、侍女に化けていた柳生友矩は、忠長の事など一顧だにせず、
投げ出されたままになっていた金色の歪な形の杯を拾うと、愛おしそうに撫でながら立ち上がった。
「友矩……柳生友矩殿か」
侍女に化けているのが只者ではないとは見抜いて警戒していた芹沢は、忠長の末期の言葉からその正体に辿り着く。
「私よりも……お仲間の身を気になされるべきではありませんか」
言った友矩の視線の先に目を遣ると、そこではさな子に抑えられていた妖女が光り出し、姿を変えようとしていた。
それに一瞬気を取られた芹沢達が気付いて振り向くと、友矩の姿は黄金の杯と共に消え去っていた。

377 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 18:05:15.86 ID:9xlvivee
背後から強大な魔力が開放されるのを感じ、果心居士は笑みを浮かべた。
「さすがは忠長殿。貴方なら、必ず聖杯の真価を発揮して下さると見込んでおりましたぞ」
聖杯……それは元々、耶蘇教の伝説に登場する宝貝である。
南蛮人に神の子とも顕現とも崇められる人間が処刑された際、流れる末期の血を受けた杯が聖杯だという。
その伝説は耶蘇教に抑圧され吸収された数多の神々の伝承を取り込み、聖杯は様々な効能を持つと信じられた。
耶蘇の国ではその名声は高く、無数の世界の中には、聖杯を願望実現器を示す一般名詞として使う者達もいたとか。
そうした者達の一部が行っていた聖杯戦争なる儀式……その存在を知った時、果心は己の願いを実現させる端緒を掴んだ。

果心居士に関しては様々な怪しい話が流布しており、正体は見極め難い。
陰陽術や修験道の術を使った逸話が伝わっているし、服装からして道術・仙術をも修めていると考えて良いだろう。
服部半蔵や飛び加藤と交流して忍術を盗んだ、耶蘇教異端の修道士から悪魔の力を借りる技を学んだ、といった話もある。
他にも朝鮮の妖術、婆羅門の呪術、波斯の幻術、更には南海の海底に眠る蕃神の邪術まで、果心が使うと噂される術は数多い。
だが、居士を名乗っている事からもわかるように、果心の術の根本は仏道。
仏道の法術にも様々あるが、その最大の目的は悟りを開いて仏となる事。
もっとも在家の修行者が自力で仏にまでなるのは困難であり、即時の成仏を目指すのなら基本的には他力によるものとなろう。
仏の中でも特に慈悲深く偉大な者は、充分な修行を積まず戒を守っていない者をも、成仏させてくれるという。
遥か十万億土の彼方、或いは遠い未来に現れるという強大な仏の許に赴き、その力で仏になるのが、いわば居士の奥義。
果心も修行の末、時と世界を越えて旅する術を身に付けたが、果心は居士と言っても外道の術師。
修得した術で仏国土を目指そうとはせず、穢土を渡り歩き、その過程で聖杯の事も知った。
時と世界を越えられる果心には、耶蘇教の開祖が処刑される瞬間に赴き、その血を杯に受け聖杯とするのは容易な事。
あの男が本当に神だったのか、或いは多くの人々の信仰の力か、出来た聖杯は神性を帯びていたが、果心の目的にはまだ不足。
そこで、果心は聖杯戦争と同様の儀式を行い、聖杯を強化する事とした。

聖杯戦争とは、歴史上の英雄の一側面を切り出した英霊を互いに戦わせ、敗れた英霊の魔力を聖杯に注ぎ活性化させる儀式。
もっとも、時を越える力があるとはいえ、多数の英霊を召還し制御するような芸当は果心には困難。
そこで、果心は手を下すまでもなく既に行われようとしていた殺し合い、即ち駿河城御前試合を利用する事にする。
様々な時代の多様な英霊ではなく、同じ時代に、多くは元々駿河に居た、武芸者同士の対決。
安易な手法に思えるが、同じ時代の者達を争わせる事による因縁と愛憎の深まりは、聖杯に予想以上の力を与えた。
だが、参加者の英霊という枠を外した以上、効果的に聖杯に力を与えるには別の枠を設定する事が必要となる。
そこで果心が新たに嵌めた枠の一つが、「御前試合参加者が聖杯の力となるには、剣で死ぬ必要がある」というもの。
剣術は当時の武士の表芸と言って良い地位にあった為、多くの武芸者が太刀・脇差・懐剣など剣によって命を断たれはしたが、
御前試合の参加者には槍や薙刀、手裏剣など剣以外を使う武芸者も多かったせいもあり、剣以外で死んだ者も少なくない。

378 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 18:06:08.09 ID:9xlvivee
まずは第二番試合において座波間左衛門が、磯田きぬの薙刀によって頭を割られて斃れたのが一人目。
二人目は第四番試合で、笹原修三郎が投げた槍によって貫かれ死んだ屈木頑之助。
また第六番試合の勝者である児島宗蔵は、試合中に重傷を負い、進退もままならぬ所を間者として鉄砲で射殺された。
第九番試合は少々事情が込み入っている。
記録上、九番試合の試合者は芝山半兵衛と栗田彦太郎という事になっているが、駿河城内で闘った二人はどちらも身代わり。
そこでは、彦太郎の父である栗田次郎太夫が、半兵衛の子である芝山新蔵を槍によって刺殺。
公式の参加者である半兵衛と彦太郎の対決は御前試合終了後に城下で行われ、そこでは半兵衛が彦太郎をやはり槍で斃している。
しかし、この御前試合の肝は闘う場所でも試合者の名でもなく、深い因縁と愛憎で結び付いた強者同士の対決という点。
その意味では、御前試合の翌日に行われた芝山半兵衛と栗田次郎太夫の決闘こそが、真の第九番試合と言って良かろう。
この決闘では二人は互いの脇差によって命を落としたので、彼等は果心が決めた条件を満たした事になる訳だ。
よって、果心が設定した「剣による死」という条件から外れたのは、座波・屈木・児島の三人。
彼等の武技を吸収できなかった分だけ聖杯は不完全となった。
それでも残り十九名の力を得た聖杯は大部分完成し、その時点で今回の御前試合を開催するのに充分な力を得ている。

但し、それで果心が聖杯を完成へ近付ける事を放棄した訳ではなく、座波と屈木をこの御前試合に招いたのは、聖杯の補完の為。
彼等に関しては、他の者と違い、死んだ時にはまず聖杯にその力が行くように特別な仕掛けが施されていた。
この二人がこの島において剣で死を迎えた事により、聖杯の力は更に増し、ほぼ完成形となっている。
だが、もう一人の児島宗蔵は呼ばれておらず、その力を得られない以上、聖杯が完全なものとなる事はない。
それは果心が敢えてした事。
完成した物は衰退するのみである事から、一点だけ未完成な部分を残しておくのが良いとする呪術的な思想による仕掛け。
伝承によればこの呪術の始まりは古く、例えば秦の始皇帝が中華を統一した際、この考えによって衛という小国を残しておき、
二世皇帝が父の考えを理解せずに衛を滅ぼしてしまった為に、間もなく秦も滅亡する事になったという。
また、日光東照宮に一本だけ逆柱があるのも、南光坊天海がこの呪術を採用して考案したものだと言われ、
その為か幕府が滅んだ時にも東照宮は豊国大明神のように破却される事もなく、数百年を経ても栄え続けたとか。
果心が聖杯を未完成としたのも、この考えに従って聖杯の機能を強化する為。
実際、聖杯の力は未完成な事によるただ一点の瑕疵を除けば、完璧なものとなっている。
その瑕疵もごく些細な物……聖杯の力を全開にすると、不完全さを補う為に使用者の精気が吸われる、というだけの事。
そして、この小さな瑕疵を補う為に果心によって選ばれた使用者が徳川忠長。
普通の人間ならば、聖杯の全ての力を使おうとすると、命の危機を本能的に感じ、思い留まってしまう公算が高い。
対して、果心の見込みどおり、狂気に侵された忠長の生存本能は麻痺しており、躊躇なく聖杯の力を使ってくれた。
果心は初めて忠長に感謝する。これで、果心がその全てを賭けた儀式の成否がはっきりするだろう。

背後での事態の成否が気になる所だが、そろそろ前方に注意を向けねばなるまい。
辻月丹や秋山小兵衛達、旅籠の抜け道に入った剣士達がそろそろ果心のところに辿り着く頃だ。
その中には富田勢源もいる、と思うと、治り切っていない背中の傷が疼く。
意趣返しをしようという訳ではないが、多少は驚いてもらおうか。
そんな事を考えながら、果心は懐に隠し持っていた武器を取り出した。

379 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 18:06:48.97 ID:9xlvivee
聖杯によって生み出された妖女の変貌に驚愕する剣客達。
中でも、妖女を直接抑え込んでいた千葉さな子の動揺は大きい。
何故なら、変身後の女の姿は紛れもなく、彼女の仲間である筈の……
「薫さん!」
のものであったのだから。

聖杯によって作られた戦士が神谷薫の姿を取ったのは、何もさな子を驚かす為ではない。
元々、それが磯田きぬの姿をしていたのは、彼女が駿河城御前試合の参加者の中で最後まで生き残った武芸者であったからこそ。
そして、神谷薫は、磯田きぬの異なる世界における写し身……二人は所謂、平行存在と呼ばれる関係にあるのだ。
きぬと薫では容姿も性格も流派も生涯も生きた時代も大きく違うが、世界が違えばその程度の差は当然。
共に座波間左衛門を強く惹き付けた事に見られるように、魂の奥底には似通った物があるのだろう。
そして、それこそが、他の参加者と比べれば大きく腕が劣る神谷薫がこの島に呼ばれた理由であった。

共に徳川忠長に主催された武芸者同士の殺し合いという点で、今回の御前試合と駿河城御前試合には似た点がある。
そこで、果心は駿河城御前試合をこの御前試合の前哨戦として組み込む事で、儀式の効果を高めようと目論んだ。
座波と屈木に加えて、藤木源之助、伊良子清玄等を参加させたのは、駿河城御前試合との縁を更に強固にする目的もあった。
もっとも、剣によって死んだ藤木や伊良子の術技は既に聖杯の中にあり、取り出せば聖杯が弱体化するので、
虎眼流の面々は、この御前試合の主催者である忠長が居たのとはよく似た別世界から呼んだのだが。
だが、駿河城御前試合を前哨戦と位置付けるには、誰よりもその最後の生き残り、即ち優勝者である磯田きぬの参加が必須。
そうなると、問題となるのはきぬの心根。
前述したように、駿河城御前試合で参加者の力を得る為に、参加者が剣で死なねばならないという制限を設けた。
しかし、今回の御前試合の場合、参加者の殆どが剣を第一芸とする剣客であり、そのような環境ではこの条件は緩過ぎる。
代わりに果心が決めた条件が、「参加者は自死ではなく、他者によって殺されねばならない」という枠。
そして、駿河城御前試合最後の武芸者である磯田きぬは、忠長の伽を拒む為、自害によって人生を終えたのだ。
他の参加者に比べれば大きく腕が劣るとはいえ、きぬとて一通りの技は身に付けた武術家。
懐剣を持ち込めたのなら……いや、素手であっても忠長を捻り殺すくらいの事は容易かった筈。
それを試みもせず死んだきぬの心は、戦国期の、松永弾正のような癖のある武士を間近に見て来た果心には柔弱に見えた。
そこで、果心と聖杯はきぬの平行存在を探り、武芸は似たような物でも、心の強さでは上回ると思えた神谷薫を発見。
つまり、神谷薫は、自身では何も知らない内に、磯田きぬの身替りとして呼ばれたのだ。
ただ、自ら死を選ぶのではなく、恋人と共に生き延びようと足掻き、殺される事だけを期待されて。

380 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 18:07:18.78 ID:9xlvivee
聖杯の化身が姿を磯田きぬから神谷薫に変えたのも、やはり二人が平行存在である事による。
きぬと薫、腕前には大差ないが、聖杯に記録された技の多くは剣技であり、剣士である薫の身体の方が効率的と判断したのだ。
そして、神谷薫に化けた事で、聖杯の計算にはなかったもう一つの効果を生む。
この場に居た他の剣士達とは違い、妖女と対峙していた千葉さな子にとって、神谷薫は島で出会った仲間。
もう一人、芹沢鴨も薫とは面識があるのだが、芹沢にとっては印象の薄い経験だったようで、反応は他の者と変わらない。
だが、さな子は薫が三合目陶器師に攫われて以来、ずっと気にかけていたのだ。
目の前の敵がいきなりその姿になれば驚愕で動揺は倍化し、不穏な動きを見せても斬る気にはなれなかった。
妖女はさな子の心の隙を突いて素早く腕を交差させ、物干し竿を白羽取りに掴む。
その体勢から石突きで襲い、さな子が咄嗟に剣を放し倒れ込んでかわすと、妖女は薙刀を捨てて物干し竿を奪う。
さな子も逆に妖女が捨てた薙刀を空中で掴み、妖女の追い打ちを防ぐが……
(この技は、座波さんの……)
腕の痺れと共にさな子は見抜く。それは確かに、昨夜さな子が死闘の末に破った座波間左衛門の天流の一撃。
しかも、太刀筋は確かに座波のものでありながら、膂力・脚力・剣速は明らかに彼を上回る。
さな子が座波との対決を通して天流への対処を学んでいなければ、今の一撃も凌げたかどうか。

「拙者が相手だ!」
さな子の危機を見た石川五ェ門が割って入り、斬鉄剣による渾身の一撃を、妖女に繰り出した。
二本の剣が絡み合い、火花を散らす。二人が繰り出した必殺の一撃のぶつかり合いは、まず互角。
無論、物干し竿とて並の剣ではないが、切れ味という点では、やはり斬鉄剣には一歩も二歩も譲るだろう。
そして、本来の持ち手である五ェ門の手に戻った今、斬鉄剣はその能力を余す所なく発揮できている筈。
にもかかわらず五分という事は、剣の切れ味を、その本来の潜在力を超えて引き出す技では、妖女が一歩優っているという事。
加えて、剣が絡み合って引く事もできず、普通ならその切れ味を発揮できない状況にありながら、
妖女は更に剣に力を加え、斬鉄剣ごと五ェ門を圧し切りにしようとして来る。
その鋭さには、斬鉄剣に絶対の信頼を置く五ェ門ですら危惧を感じ、咄嗟に拳撃を放って事態の打開を狙う。
だが、無理な体勢からの一撃がそうそう通じる筈もなく、あっさりと外され、直後に五ェ門は敵の姿を見失った。

「下です!」
さな子の言葉に反応して跳躍した五ェ門の足元を剣が通り過ぎた。
長剣による大降りのお蔭で脛斬りはかわせたが、続いての跳躍しながらの突き上げではその長さが武器となる。
五ェ門とて跳躍力や空中戦では滅多に後れは取らないが、ここは天井のある室内。
広間ゆえに天井は低くないが、彼等の跳躍力からすれば決して高くもない。
天井付近まで上がっての戦いでは、明らかに下から突き上げる妖女が有利。
「!?」
五ェ門もどうにか迎撃しようとするが、妖女の顔に似合わぬ鬼のような眼光に曝されて半瞬だけ動きが鈍る。
そこを妖女が貫くかと見えた瞬間、その体躯が横に吹き飛ばされた。
異常事態を悟った仲間達が駆け寄り、桃太郎が氣を放って五ェ門に加勢したのだ。
だが、岩をも砕く暹氣虎魂を受けながら、妖女はダメージを受けた様子もなく軽やかに着地。
華奢なようでありながら、その身体には上質の甲冑に匹敵する防御力を秘めているらしい。
「こいつは、面白くなりそうだ」
先程までは相手が碌な心得もない狂人という事で拍子抜けしていた者も、この敵は全力で闘うに値する相手だと悟る。
もっとも、主催者の首領と見えた忠長があっさりと死んでしまっては、この妖女を倒しても御前試合中止への道は険しいが。
しかし、目の前の女は先の事を思案しながら戦うには危険な相手。
とりあえずは余計な事は忘れ、一同は妖女との勝負に集中する事とした。

381 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 19:14:51.39 ID:9xlvivee
【???/主催者の本拠/一日目/午後】

【足利義輝@史実】
【状態】打撲数ヶ所
【装備】備前長船「物干竿」@史実
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を討つ。死合には乗らず、人も殺さない。
一:主催者を討つ。
二:信綱と立ち合う。また、他に腕が立ち、死合に乗っていない剣士と会えば立ち合う。
三:信乃の力になる。
四:次に卜伝と出会ったなら、堂々と勝負する。
【備考】※犬塚信乃が実在しない架空の人物の筈だ、という話を聞きました。

【犬塚信乃@八犬伝】
【状態】顔、手足に掠り傷
【装備】小篠@八犬伝
【所持品】支給品一式、こんにゃく
【思考】基本:主催者を倒す。それ以外は未定
一:毛野の死の真偽を探る。
二:義輝を守る。
三:義輝と信綱が立ち合う局面になれば見届け人になる。
四:村雨、桐一文字の太刀、『孝』の珠が存在しているなら探す。
【備考】※義輝と互いの情報を交換しました。義輝が将軍だった事を信じ始めています。
※果心居士、松永久秀、柳生一族について知りました。
※自身が物語中の人物が実体化した存在なのではないか、という疑いを強く持っています。
※玉梓は今回の事件とは無関係と考えています。

【剣桃太郎@魁!!男塾】
【状態】健康
【装備】打刀
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者が気に入らないので、積極的に戦うことはしない。
1:銀時、義輝、信乃に同行する。
2:向こうからしかけてくる相手には容赦しない。
3:赤石のことはあまり気にしない。
※七牙冥界闘終了直後からの参戦です。

【坂田銀時@銀魂】
【状態】健康 額に浅い切り傷
【装備】木刀、
【道具】支給品一式(紙類全て無し)
【思考】基本:さっさと帰りたい。
1:当面は桃太郎達に付き合う。
2:主催者から新八の居所を探り出す。
※参戦時期は吉原編終了以降
※沖田や近藤など銀魂メンバーと良く似た名前の人物を宗矩の誤字と考えています。

382 :駿河大納言散る ◇cNVX6DYRQU 代理:2011/07/17(日) 19:15:40.32 ID:9xlvivee
【芹沢鴨@史実】
【状態】:健康
【装備】:新藤五郎国重@神州纐纈城、丈の足りない着流し
【所持品】:なし
【思考】
基本:やりたいようにやる。 主催者は気に食わない。
一:とりあえずは義輝に協力する。
二:五ェ門を少し警戒。
【備考】
※暗殺される直前の晩から参戦です。
※タイムスリップに関する桂ヒナギクの言葉を概ね信用しました。
※石川五ェ門を石川五右衛門の若かりし頃と思っています。

【石川五ェ門@ルパン三世】
【状態】腹部に重傷
【装備】斬鉄剣(刃こぼれ)、打刀(刃こぼれ)
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:主催者を倒し、その企てを打ち砕く。
一:主催者を倒し、芹沢の行動の記録を探す。
二:千葉さな子を守る。
三:芹沢を警戒
四:ご先祖様と勘違いされるとは…まあ致し方ないか。
【備考】※ヒナギクの推測を信用し、主催者は人智を越えた力を持つ、何者かと予想しました。
※石川五右衛門と勘違いされていますが、今のところ特に誤解を解く気はありません。

【千葉さな子@史実】
【状態】健康
【装備】物干し竿@Fate/stay night 、童子切安綱
【所持品】なし
【思考】基本:殺し合いはしない。話の通じない相手を説き伏せるためには自分も強くなるしかない。
一:目の前の女と薫の関係を探る。
二:主催者から仲間達の現状を探り出す。
三:芹沢達を少し警戒
四:間左衛門の最期の言葉が何故か心に残っている。
【備考】
※二十歳手前頃からの参加です。
※実戦における抜刀術を身につけました。
※御前試合の参加者がそれぞれ異なる時代から来ているらしい事を認識しました。

代理投下終了です。感想は後程

383 :創る名無しに見る名無し:2011/07/18(月) 03:41:33.29 ID:0NoMRstw
作者さん、乙でした〜
代理投下の人もご苦労様です

仏教と耶蘇教の知識と融合がたまらんですわ、このケレン味こそが剣客小説には大事だよなぁ

384 :創る名無しに見る名無し:2011/07/19(火) 14:08:27.14 ID:XpqMxeYD
投下乙です。
いやぁ、突入組の方も面白くなってきたなぁ。
何故ロワ開催に至ったかに関する怒涛の理屈づけには
感心を通り越してワロタ。すげぇよあんたw

385 : ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 21:56:15.22 ID:h60hgB87
代理投下ありがとうございました。
今になってミスに気付いたので、訂正を。
>>382の千葉さな子の装備から「物干し竿@Fate/stay night」を削除し「磯田きぬの薙刀@駿河城御前試合」を追加します。

それと、柳生十兵衛、新免無二斎、斉藤一、赤石剛次、服部武雄、オボロ、天海、
宮本武蔵、坂本龍馬、緋村剣心、外薗綸花、志村新八、富士原なえかで予約します。

386 : ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 21:56:57.49 ID:h60hgB87
書き込めるようなので今の内に投下してしまいます。

387 :絶望の光景 ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 21:57:42.37 ID:h60hgB87
「何故、貴僧ほどの御方が、このような愚行に加担される!?」
主催者の一味として現れた天海に詰め寄る柳生十兵衛だが、天海は全く動じない。
「言った所で無益。汝等は所詮、武術者の業に生きる者なれば」
「なら、……死ね」
声は天海の背後から。十兵衛の後ろに控えていたオボロが、話し合いは無意味と判断し、回り込んで天海に斬りかかったのだ。
「待て!」
十兵衛の制止を無視してオボロの剣は振るわれ……空を切る。
天海が、齢百にならんとする老人とはとても信じられぬ動きで跳び、一撃をかわしたのだ。
まあ、回峰行などの激しい修行を行う天台宗の高僧である天海が高い身体能力を有していてもそう不思議ではないが……
何にしろ、今の一撃を天海がかわせたのも、その剣撃が、オボロにとっては様子見の手加減したものであったからこそ。
天海の予想外の動きを見たオボロは瞬時に速度を上げ、分身して見える程の速さで跳躍し天海を追うと、一気に寸刻みとした。
全身から血を流しながら着地する天海。
その動きにも息遣いにも全く乱れがないのを悟り、オボロの眼光が鋭くなる。
オボロとて、如何に非道な主催者の一味とはいえ、重要な情報を持つかもしれない天海をいきなり殺そうとした訳ではない。
故にオボロは敢えて急所を外して斬ったのだが、それでも本来ならまともに動けなくなる程度の傷を負わせる筈だった。
実際にそうならなかった原因の一つは天海の動き。
オボロの刃を回避しきるのが不可能と悟ると、天海は自ら身体を刀に当てに行き、それで打点をずらして急所を外したのだ。
この老人には何らかの武術……それも正統な物ではなくオボロのものに近い裏の技法の心得があるらしい。
無論、身体機能を損なう程ではなくとも傷の痛みはある筈だが、それを感じさせないのは高僧ならではの精神力と自制心ゆえか。
だが、天海が紛れもなく高僧であるならば、どう考えても仏の心に適わぬ御前試合の主催者にどうして与するのか……
十兵衛が更に問い質そうとした時、背後から駆けて来る人の気配と足音を察知し、振り向いた。

「斉藤……!」
駆け込んで来た女剣士、神谷薫は、一瞬だけ迷ったような顔をするが、すぐに斉藤一を見分けて駆け寄る。
「大変なの、とんでもない奴に襲われて!剣心は大怪我してるのに……」
「何だ?あんたは」
捲くし立てる所を冷たく問われ、薫は漸く幾分かの冷静さを取り戻す。
考えてみれば、老人となった斉藤にとって、自分は何十年も前に僅かに接触したに過ぎない相手であり、忘れていても当然。
説明しようとする薫だが、分別を取り戻したその瞳に、斉藤の横に居る不動明王の如き剣士が映る。
「あ……」
自分達を襲って来た殺人鬼によく似た男の存在に薫はたじろぎ、咄嗟に言葉が出ない。
襲撃者が宮本武蔵だという推測は坂本から聞かされていたし、襲撃の前に、武蔵の父無二斎が仲間に居る事も知らされていた。
だから、武蔵に似た男がここに居ても怪しむには足らないのだが、薫にあらかじめそれを予測しておく余裕はなかったのだ。
「誰だ、お前は!?何があった!」
オボロに強く質されて、薫はどうにか言葉を紡ぎ出す。
「私と剣心は坂本さん達に助けられて、そうしたら、籠もっていた家が襲われたんです。そいつに伊東さんが……」
「伊東さんが!?」
薫に掴みかかる服部。
「伊東さんがどうした!?一体、誰に襲われた!」
「襲って来たのは多分……宮本武蔵。伊東さんは……」
そう言って目を逸らす薫。
「くっ!」
脇目も振らずに駆け出し、元来た道を戻って行く服部。坂本達が何処に居るかすらまだ聞いていないというのに。
「おい、坂本達が居るのは何処だ」
「城下の北東の、確か神余屋っていう、大きな商家です」
「オボロ、頼む。服部を追って手助けしてやってくれ」
「な!?」
主催者を目の前にしての転進を指示されて反論しかけるオボロだが、言った十兵衛の真剣な眼を見て口を閉ざす。
「武蔵殿は、俺が知る中でも、親父殿を除けば並ぶ者がない程の剣客だ。頼む」
「……わかった」
相手があの宮本武蔵となれば、冷静さを失った服部一人では餌食になるだけだと十兵衛は見たのだ。
そして、元々の健脚に加えて、仲間を救う為に本来の限界以上の速度で走る服部に勝る俊敏さを持つのはオボロだけだろう。
「わ、私も一緒に!」
薫も既に後姿が見えなくなりつつあるオボロを追い掛けて駆け出そうとする。
無論、俊敏さが段違いの上にここに来る迄に既に息切れしている薫がオボロに追い付ける筈もないが……
「それは待ってもらおう」
言葉と共に、今まで成り行きを見守っていた天海から薫に向かって刃が飛来した。

388 :絶望の光景 ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 21:58:29.15 ID:h60hgB87
【???/道祖神からの抜け道/一日目/午後】

【服部武雄@史実】
【状態】額に傷、迷い
【装備】雷切@史実、徳川慶喜のエペ(鞘のみ)
【所持品】支給品一式(食糧一食分消費)
【思考】基本:この殺し合いの脱出
一:伊東や坂本の所に戻り、宮本武蔵を斬る
二:剣術を磨きなおして己の欠点を補う
三:上泉信綱に対しては複雑な感情
【備考】※人物帖を確認し、基本的に本物と認識しました。

【オボロ@うたわれるもの】
【状態】:左手に刀傷(治療済み)、顔を覆うホッカムリ
【装備】:打刀、オボロの刀@うたわれるもの
【所持品】:支給品一式
【思考】基本:男(宗矩)たちを討って、ハクオロの元に帰る。試合には乗らない
一:服部に追い付き、同行する。
二:トウカを探し出す。
三:頬被りスタイルに不満
※ゲーム版からの参戦。
※クンネカムン戦・クーヤとの対決の直後からの参戦です。
※会場が未知の異国で、ハクオロの過去と関係があるのではと考えています。

389 :絶望の光景 ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 21:59:25.17 ID:h60hgB87
薫に向かって飛ぶ、鎖付きの鎌。
だが、彼女に届く寸前、傍らに居た斉藤の剣が閃き、鎌の柄が切り落とされる。
「あっ!?」
しかし、天海は元々薫を殺すつもりではなかったのか、鎌の喪失にも構わず、鎖で薫を絡め取ったのだ。
今度は斉藤も助けない、いや、助けられない。
斉藤を妨げているのは無二斎の視線。
元々、無二斎には剣呑な気配があり、斉藤はこの男といずれ斬り合う事を予感していた。
新撰組時代から斉藤は、仲間を斬る事、またいずれ斬り合うであろう者と仲間として付き合う事には慣れている。
故に無二斎を潜在的な敵と認識しながら、密かな探り合いを楽しみさえしていたのだが、そこに薫が齎したのが宮本武蔵の名。
無二斎と共に主戦力が離れている隙を、無二斎の子に襲われたとなれば、どうしても疑いを抱くのは避けられない。
武蔵の名が出た瞬間から、一同の無二斎への警戒心は高まり、無二斎もその空気の変化には気付いているだろう。
また、服部とオボロが去り、怪僧と足手まといの娘の出現により、無二斎が裏切った場合に対応できる戦力は減っている。
思いのほか早く、無二斎との対決の機運が高まっているのを斉藤は感じ、無二斎も同様に感じていると確信していた。
現に、斉藤が鎌を切断した瞬間、無二斎は異様な程の熱心さでその動きを見つめ、斉藤の技を見極めようとしていたのだ。
そんな気配を感じてしまった以上、斉藤としても、薫が殺されるというのでもなければ不用意に剣技を披露するのは難しい。
だが、さりげなく身体の位置を変えて仲間達と無二斎の間に割り込み、彼等を無二斎の視線から隠す。
それを察知したのか、或いは尊敬する天海が大した心得もないと見えた娘を襲ったのが許せなかったのか、十兵衛が動いた。
「御免!」
本気に近い一撃を放ち、天海の腕を切り落とさんとする十兵衛。
天海の年齢を考えれば……いや、頑健な青年であっても腕を切断されるのはそれだけで致命傷になりかねないが。
「何!?」
だが、斬り付けた十兵衛が、一撃をかわされた訳でもないのに驚愕の声を上げた。
それもその筈、天海の腕に切り込んだ剣が、次の瞬間には十兵衛の手を離れ、天海の身に食い込んだまま残されたのだ。
「忍法一ノ胴……」
それは、嘗て十兵衛が対戦した忍者が使って来た技の名前。
敵に敢えて己を斬らせ、その瞬間に筋肉を鋼のようにして致命傷を防ぎ、あわよくば相手の刀を己の身でもぎ取る恐るべき術。
天海が使って見せたのも、名は異なってなまり胴と称したが、仕組みとしては同じ。
今回、十兵衛が刀を取られたのは、心中に天海を斬る事への躊躇があったせいも大きいが、天海の術が優れていたのも確か。
オボロの剣を凌いだ事といい、天海にこれ程の忍術の心得があったとは。
そんな相手の眼前で無手でいる危険を悟った十兵衛が動こうとした瞬間、天海の手から霞が起きて十兵衛を包んだ。

剣の鞘を抜いて霞に叩き付けた十兵衛は、それが恐ろしく繊細に編み込まれた網であることを悟った。
「女人の髪か」
柳生の里の地勢上、また宗矩の子という出自上、忍者との接触が多かった十兵衛は、忍びが女の髪を様々に用いる事は知ってる。
綱、刃、結界……そして今回、天海は女髪で出来た網を牢として使っているようだ。
各忍軍の秘伝の処方で強化された髪は鋼よりも硬く、如何に十兵衛でも真剣なしで破るのは難しい。
天海が十兵衛を絞り殺そうと網を動かしてくれればともかく、不動に保たれては手を出す余地がなかった。
地面に穴を掘る手もあるが、脱出までにどれだけの体力と時間を消費する事か。
無益な消耗を避けて十兵衛は座り込む。
「頼んだぞ」
今は、仲間達に望みを託すしかないだろう。
だが、仲間を信頼しない訳ではないが、彼等にあの得体の知れない黒衣の宰相の策を打ち破る事ができるだろうか……

【???/道祖神からの抜け道/一日目/午後】

【柳生十兵衛@史実】
【状態】健康
【装備】太刀銘則重の鞘@史実
【所持品】支給品一式
【思考】基本:柳生宗矩を斬る
一:しばらくは仲間の救出を待つ
二:父は自分の手で倒したい
【備考】※オボロを天竺人だと思っています。
※五百子、毛野が危険人物との情報を入手しましたが、少し疑問に思っています。

390 :絶望の光景 ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 22:00:38.25 ID:h60hgB87
「ほう。なかなか手強いな。次はあんたがやってみるかい?」
「いや、既に半ば死んでいる者を斬っても仕方あるまい。譲ろう」
天海との勝負を促し合う斉藤と無二斎。もっとも、要は天海を当て馬に相手の技を見極めようとしているのだが。
「俺が行こう」
そう言って前に出たのは赤石剛次。
天海は妙な技を使い、十兵衛から一本取った形にはなったが、腕自体は一流の剣客に比べれば数段劣る。
だから斉藤や無二斎が関心を示さないのはわかるが、赤石は天海の心にいくらか興味を引かれていた。
色々と手を考えているようだが、天海とてこの面子が相手ではどう足掻いても最終的には生き残れない事はわかっていよう。
この老人は命を捨てて、一体何を為そうとしているのか……
天海の心を量りながら近づいて行く赤石だが、天海の方はひとまずこれを黙殺し、鎖で捉えた薫に話し掛ける。
「最早、戻った所で無駄な事」
「何を……!」
「見せて進ぜよう」
言うと天海は懐から一枚の鏡を取り出して、薫や剣士達に示す……鏡に映し出された、絶望の像を。

【???/道祖神からの抜け道/一日目/午後】

【赤石剛次@魁!男塾】
【状態】腕に軽傷
【装備】村雨@里見☆八犬伝
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を斬る
一:天海を斬る
※七牙冥界闘・第三の牙で死亡する直前からの参戦です。ただしダメージは完全に回復しています。

【新免無二斎@史実】
【状態】健康
【装備】十手@史実、壺切御剣@史実
【所持品】支給品一式
【思考】:兵法勝負に勝つ
一:他者の剣を観察する
二:隙を見せる者が居たらとりあえず斬っておく

【斉藤一@史実】
【状態】健康、腹部に打撲
【装備】打刀(名匠によるものだが詳細不明、鞘なし)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を斬る
一:無二斎を警戒、怪しい素振りや隙が見えたら斬る。
二:主催者を斬る。
【備考】※この御前試合の主催者がタイムマシンのような超科学の持ち主かもしれないと思っています。
※晩年からの参戦です。

391 :絶望の光景 ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 22:03:10.21 ID:h60hgB87
綸花の放った居合いから衝撃波が放たれ、宮本武蔵に迫り行く。
だが、武蔵は僅かに半歩動くだけでかわし、その間近を過ぎた剣風によって幾本かの鬢の毛が散った。
武蔵が綸花の剣を見切り始め、また気を闘わせる内に綸花が武蔵の拍子に呑み込まれつつある、という事か。
加えて、髪の毛とはいえ、己の剣が人を斬り、あと半歩ずれていれば命を奪っていたという事実に綸花は怯む。
実際には、このまま戦って綸花が武蔵を斬ってしまう可能性は極小になっていると理解してはいるのだが……
綸花の怯みを見た武蔵は、気迫を高めて押し込みつつ、階段へと進む。
「くっ!」
綸花が迎撃の剣を放つが、武蔵は歩みを止めず僅かな動作でかわし、それが更に綸花を怯ませる。
「綸花、そんアーツは木刀では使えんのか!?」
状況が手詰まりになりつつある事を悟った龍馬が叫ぶ。
木刀で、斬るのではなく叩き付ける型の衝撃波を放てれば、相手を殺す心配をせずに済み、また動きも軽くできるという発想。
だがそれは、龍馬が鷹爪流の理合いを知らぬが故の、無責任な言葉。
真剣と木刀では大きな違いがあるし、そもそも鞘がない木刀では本来の形での居合いは不可能。
木刀で七つ胴落としが使えるなら居合いでなくても放てる事になり、それならそもそも連続で撃てない為の苦労もないのだから。
ただ、そんな無理を押し通すくらいでなければ、今回の敵には勝てないと、綸花にもわかっていた。
そして、この島で、ある意味ではナラカなどより遥かに人間離れした剣鬼達との闘いを通して成長している自覚もある。
人を殺す覚悟はまだ出来ていないが、剣技に関する難題ならば、どうにか出来るのではないか……
どのみち、このままではジリ貧。
綸花は剣を鞘ごと外して脇に置くと、木刀を腰に差して居合いの構えを取った。

「はあ!」
渾身の気合を込めて木刀を振るう綸花。そして……
「出来た!?」
綸花の必死の思いが通じたか、木刀から衝撃波が発し、武蔵に向かう。
「ふん!」
だが、武蔵は歩みを止める事なく自身の木刀を振り、衝撃波を真っ向から打ち砕く。
理屈としては城で師岡一羽がやったのと同じだが、今回は武蔵に傷を与える事も出来ずに七つ胴落としが一方的に打ち消された。
武蔵と綸花の腕の差というより、木刀という武器への思い入れと理解の差がはっきりと現れた形だ。
だが、二人の剣客が渾身の剣気をぶつけ合い、拡散させた事が、彼等の意図しない事態を引き起こした。
会心の一撃を防がれてたじろぐ綸花の横を通り過ぎる一箇の影。
影は跳躍して武蔵に向かって飛び、空中で叩き落さんとする木刀を、飛燕の如く宙で転回してかわす。
そのまま、綸花の傍らにあったものを持ち去った刀で神速の抜刀術を放ち、武蔵をたまらず退かせる。
「緋村君か?」
そう、それは、神谷薫の同行者であり、重傷を負って寝ていた筈の緋村剣心。
この騒ぎ、或いは剣気の放射で目覚めたのか……いや、そもそも彼は本当に覚醒しているのか。
武蔵と激しく斬り合う剣心の動きには人間性が感じられず、失神したまま殺気に対して剣士の本能で反応してるように見える。
「……なるほど」
だが、そんな剣心の姿に、龍馬は何処か納得していた。
緋村剣心……龍馬には覚えのない名だったが、最初に見た時から、見覚えがあるような気がしていたのだ。
今の剣心は、龍馬の同郷の友人だった岡田以蔵に似ている……姿形ではなく、その闘い方、そこに表れる哀しさが。
身を庇わず、手負いの修羅の如く、ひたすらに相手の急所に喰らい付こうとする鋭い刃。
あまりに素早く目まぐるしく動き、跳び回っている為に、綸花も不用意に手を出せずにいる。
或いは武蔵にすら届くかもしれないと思わせる程の攻めだが、彼のような完璧な剣客に守りを捨ててかかれば、最良でも相討ち。
目的の為の道具に過ぎない人斬りの剣としては、それでも問題ないのだろうが……
「新八、ウェポンを交換してくれ、綸花のディフェンスを頼む!」
龍馬は刀を新八に投げ渡し、跳躍して空中で新八の木刀を受け取ると大きく振り翳し、二人に対して振り下ろした。
それは、剣術の型稽古などで、技と技の切れ目に相手を退かせて間を繋ぐ、いわば見せ太刀。
だが、正面の強敵と激戦中に上空から攻撃を受ければ、咄嗟に見破るのは至難で、二人は大きく身を引く。
武蔵だけでなく剣心も退いたのを見て、龍馬は笑みを浮かべる。
真の人斬りならば、今の状況でも己の無事など気にせずに、武蔵の隙を突こうと前に出た筈だ。
そうしなかったという事は、剣心にはまだ防衛本能が、人としての本性が残っているという事。
今の暴れようは、凶暴な剣気で叩き起こされた為に寝惚けているようなものか。なら……

392 :絶望の光景 ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 22:03:57.77 ID:h60hgB87
「緋村君、起きろ!!」
強敵の目の前にいる事も忘れ、剣心の方を向いて大声で呼び掛ける龍馬。
当然、武蔵がそんな隙を見逃す筈もなく、龍馬の頭を目掛けて木刀が振り下ろされるが、それを横合いからの剣が受け止める。
その目は最早、人斬りのものではなく……
「坂本さん!?ここは、拙者は……薫殿は!?」
「やっと起きたか、緋村君。詳しい話は後じゃ。薫さんにはヘルプをコールしに行って貰うた。
 彼女が帰って来るまで、ワシ等でこのモンスター、宮本武蔵を抑えておかねばならん」
この危険な島で薫が一人でいる……そこに不安を感じた剣心だが、今は気にしている状況でない事は理解できる。
そして、目の前の敵へと向き直る。モンスターと呼ばれるに相応しい、不世出の剣客へと。

龍馬と剣心の剣が武蔵を挟み込み、そこから逃れようとする道に綸花の衝撃波が放たれた。
少し前から、綸花は新八と交換した、元々は龍馬が使っていた真剣で七つ胴落としを使っている。
先程は強い必死の念のおかげで成功したが、やはり木刀での奥義には無理があったようだ。
それはつまり、今の状況は綸花にとって必死になる必要がない、余裕のある状態であるという事。
やはり三対一という数の差は大きく、綸花は武蔵に当てないよう配慮しつつ牽制の一撃を放つ事が可能になっていた。
さしもの武蔵も、このまま抑え込まれるのか……
だが、その状況を望まない者が武蔵の他にもう一人、緋村剣心だ。
彼は島に居る危険な人斬りが武蔵のみに留まらず、それ故に薫がどれ程の危険に曝されているのか、それを憂慮している。
無論、この強敵相手に無理をするつもりはないが、剣心は武蔵の戦法に、援軍を待たずとも倒せるだけの隙を見出していた。
武蔵は、剣心に対しては頭を抑え、その跳躍を妨げるように動いているのだ。
夢うつつの状態で武蔵と斬りあった時、龍槌閃など跳躍技を幾つか見せたような、朧気な記憶がある。
そして、一階の二剣士と二階からの少女の飯綱に追い詰められている今、剣心が空間を三次元的に使えば武蔵には対応できまい。
だから武蔵が剣心の跳躍を警戒するのも当然だが、上への動きを過度に警戒すれば、下への動きはやり易くなるのが道理。
武蔵の横面をかわした剣心は大きく身を屈めると、龍翔閃を繰り出した。

「綸花、気を付けろ!」
龍馬が叫ぶが、言われなくとも、二階へと跳躍してくる武蔵の狙いが自分だという事はわかっていた。
剣心が大きく屈んだ瞬間から、その狙いが下からの攻撃である事は武蔵にとっては自明の理。
跳躍力に優れた剣心ならばわざわざ屈まずとも武蔵の上を取るのは容易な事。
あれだけ屈んでから跳んだのでは屋根に衝突してしまう程の勢いになる筈で、通常の跳躍技では有り得ない。
屋内戦や道場での試合に慣れた幕末の剣士なら天井を使っての三角跳び等を想像したかもしれないが、
未だ鎧武者が行き交う時代を生きた武蔵にとっては、甲冑の隙間を突き易い下からの攻撃の方が馴染みがあった。
武蔵は己の推測に基づき、剣心の下方からの攻撃を待ち受け、龍翔閃を真っ向から受け止めると同時に下へ蹴り飛ばしたのだ。
剣心の跳躍力と武蔵自身の脚力を合わせれば、剣心より目方の重い武蔵にとっても、二階へ跳ぶ十分な推進力となる。
剣心もすぐに跳躍して後を追おうとするが、ここで跳躍と着地で過負荷を受けていた床が壊れ、その足を止めた。

393 :絶望の光景 ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 22:04:56.75 ID:h60hgB87
二階へと降り立った武蔵に対し居合いの構えを取る綸花。
綸花の腕ならば武蔵にもそうは後れを取らぬ筈であり、まして龍馬や剣心が救援に来るまで支えるなど、本来なら容易な事。
だが、事態の急な展開への戸惑いと、真剣で武蔵をどう迎撃するかへの迷いが、綸花の動きを縛る。
その隙を見逃さず、綸花へと殺到する武蔵。
「おおおおおお!」
だが、その武蔵に横合いから志村新八が仕掛けた。
新八が繰り出した駆け寄りつつの突きは思いのほか鋭く、その場の者達の彼への評価を変えさせる程のもの。
だが、遠間からの突きをより長い剣を持つ相手に放つのは如何にも無謀。突き出した武蔵の木刀が新八の心臓を貫く。
新八は貫かれつつも木刀を投げるが、武蔵は首を傾けるだけでそれをあっさりとかわし……
「今だ!」
新八は己を貫く木刀を抱え込みつつ叫ぶ。
命と引き換えに武蔵の武器を封じる……それが、身を捨ててでも伊東の死の責任を取る事を決意していた新八の咄嗟の戦術。
木刀を投げたのも、それで武蔵を倒そうとしたと言うより、武蔵に利用されない為に捨てたという側面が強い。
実際、綸花が即座に攻撃していれば、武蔵は少なくとも武器を捨てて無手にならざるを得なかっただろう。
だが、一人で戦う事が多かった上に新八とさほど親交を深めていない綸花にそこまでの即断を求める方が無理。
綸花が動く前に、武蔵は木刀を叩いて衝撃を新八の体内に直接伝え、心臓を打ち砕いて殺す。
それでも剣を放さない新八だが、武蔵は構わず両手で木刀を掴み、新八ごと綸花に向かって叩き付ける。
さすがに、人一人の重荷を剣先に抱えてはその振りも神速には遠く、ここで綸花が七つ胴落としを放てば新八ごと切り裂けた筈。
もっとも、綸花に仲間の死体を、しかも死をきちんと確認した訳でもないのに斬れる訳がなく、無意味な仮定だが。
新八の屍ごと木刀をぶつけられた綸花は、その勢いで吹き飛ばされて二階から落下。
「綸花!」「おおおお!」
慌てて綸花を受け止める龍馬と、怒りに燃えて跳躍する剣心を横目に、武蔵は新八を天井に思い切り叩き付ける。
そして天井に開いた穴から屋根の上に出ると、間髪入れずに剣心も追って来た。
剣を振り、振り回され天井にぶつけられた衝撃でボロボロになった新八の死体を飛ばすが、剣心はあっさりかわして前に進む。
場慣れしたこの男は、仲間の死体を道具に使われて怒りを増しはしても、動きを止められたりはしないようだ。

だが、剣心が怒りを燃やして前のめりに攻めて来てくれるのは、武蔵にとっても好都合。
新八の重さを加えた木刀を振り回した事で、武蔵の腕にもかなりの疲労が溜まっている。
龍馬達が追って来る前に剣心を短期戦で倒してしまわなければ、苦しい状況になるのは間違いない。
飛燕の如き軽捷さを持つこの敵を短期で討つ……それに最適な技を武蔵は知っていた。
燕返し。巌流佐々木小次郎が編み出した必殺の剣。
その凄まじさは、燕返しを破って小次郎を倒した武蔵が、以後、これ以上の兵法勝負は不要と見なした程のもの。
また、巌流島以後の決闘を避けたのには、小次郎との勝負の強烈な印象を、余計な試合で薄めたくなかったというのもあろう。
この島に来て以来、武蔵は小次郎に劣らぬ幾人もの剣客と闘って来たが、心配したように小次郎の印象が薄れる事はなかった。
だから、今の武蔵は……燕返しを使える。
武蔵が必殺の一撃を放とうとしているのを察した剣心は、回避を考えるよりも、自身も奥義で迎え撃つ事を決意。
燕返しと天翔龍閃が、屋根の上で真っ向からぶつかり合う。

394 :絶望の光景 ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 22:05:52.07 ID:h60hgB87
右足での踏み込みによる超神速の居合いを、一の太刀の理合いをも加えた大上段からの振り下ろしが打ち落とす。
一撃目は二人の剣が互いの軌道を変えて空振り。
振り下ろした剣を切り上げようとした武蔵を、龍の息吹が捕らえようとする。
対する剣心は、回転しながら刀を峰に返した。
武蔵ならば、天翔龍閃の一撃目を凌ぐだろうと見込んで、敢えて全力で居合いを放ち、ここで初めて不殺の為の処置をしたのだ。
地上であれば、それでも良かったかもしれない。だが、ここはただの商家の屋根の上。
剣心の強烈な踏み込みと燕返しの振り下ろしの衝撃を耐えられる筈もなく、屋根は砕け、二人の身体は落ち始める。
無論、一流の剣客の動きに比べれば自由落下の速度など問題にもならないが、それでも二人の位置がずれ始めているのは確か。
元々下段にあった武蔵の剣は、落下によって風と真空の束縛からかなりの程度まで逃れ、強烈な勢いで振り上げられた。

再びぶつかる燕返しと天翔龍閃。
しかし、今回の天翔龍閃は峰打ちにした分だけ勢いが弱まり、逆に刃のない直刀による燕返しは剣を返す必要がなくなっている。
結果、勢いで勝る燕返しが競り勝ち、剣心の刀はへし折られつつ上空に跳ね上げられた。
だが剣心から見れば、剣を峰打ちにしたのが間違いだったとは言えないだろう。
競り負けたとはいえ、天翔龍閃によって燕返しの軌道は逸らされ、今回も剣心の身には届いていない。
また、仮に全力で斬り付けたとしても、武蔵の木刀を撥ね退けて斬るまではとても無理。
どうせ第三撃での勝負になるのなら、下手に木刀を止めるよりも振り切らせてしまった方が得。
武蔵が振り上げた剣を回して燕返し第三撃の横薙ぎを放つより早く、刀を放した剣心は鞘による居合いを放つ。
飛天御剣流・双龍閃。剣心の一撃が先んじて武蔵に届き、問題は鞘の一撃で頑健な武蔵にどれだけの痛手を与えられるか。
そう、見えたのだが……

二人が戦っていた場所は屋根の上。崩壊し、落下しようとはしていても、未だ二人の身体は屋根よりも上にある。
そこは、城下の中でも櫓などに邪魔される事なく、城の辺りまでを見渡せる、景色の良い場所。
伊東達がここを籠もる場所に選んだのには、そういう理由も少しはあった。
勿論、決闘の最中に、屋根の上に居るからといって景色を見る余裕などある筈もない……普通ならば。
しかし、視線の先、視界の端に居たのが、剣心にとって何よりも優先すべき人であれば話しは別。
彼の、剣客の中でもとりわけ優れた眼は、はっきりと見分けてしまう……心臓を剣に貫かれた神谷薫の姿を。
必ず守ると誓った人の死を見た、そう思った剣心の剣筋は乱れ、双龍閃は武蔵の素手の片腕にあっさり防がれる。
燕返しは本来、両手で放つ技だが、武蔵の木刀による燕返しは、残る片手による第三撃でも十分に剣心を殺す威力を保っていた。

【志村新八@銀魂 死亡】
【緋村剣心@るろうに剣心 死亡】
【残り三十七名】

395 :絶望の光景 ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 22:07:35.29 ID:h60hgB87
【ほノ肆 商家/一日目/午後】

【宮本武蔵@史実】
【状態】健康
【装備】自作の木刀
【所持品】なし
【思考】最強を示す
一:無二斎に勝つ
二:一の太刀を己の物とし、老人(塚原卜伝)を倒す
【備考】※人別帖を見ていません。

【坂本龍馬@史実】
【状態】健康
【装備】木刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いで得る天下一に興味は無い
一:宮本武蔵から仲間を守る。
【備考】※登場時期は暗殺される数日前。

【外薗綸花@Gift−ギフト−】
【状態】左側部頭部痣、失神
【装備】日本刀(銘柄不明、切先が欠けている) @史実
【所持品】支給品一式(食糧一食分消費)
【思考】基本:人は斬らない。でももし襲われたら……
一:宮本武蔵を倒す。
二:過去の人物たちの生死の価値観にわずかな恐怖と迷い。
【備考】※登場時期は綸花ルートでナラカを倒した後。
※人物帖を確認し、基本的に本物と認識ました。

【富士原なえか@仮面のメイドガイ】
【状態】足に打撲、両の掌に軽傷、睡眠中、罪悪感
【装備】なし
【所持品】支給品一式、「信」の霊珠
【思考】基本:戦う目的か大義が欲しい。

396 : ◆cNVX6DYRQU :2011/07/25(月) 22:08:19.47 ID:h60hgB87
投下終了です。

足利義輝、犬塚信乃、剣桃太郎、坂田銀時、芹沢鴨、石川五ェ門、千葉さな子、服部武雄、オボロ、東郷重位で予約します。

397 :創る名無しに見る名無し:2011/07/26(火) 01:18:50.53 ID:Ex5Yhlkp
乙でした〜
投下、はや……剣心と新八は死んじゃったか。流石、武蔵、強いなぁ。

なえかは本文で一切触れられず、悲惨やな。

398 :創る名無しに見る名無し:2011/07/26(火) 20:57:54.02 ID:G8Wd6bvA
感想はずぼらだから付けてないけど読んでるよ
毎回毎回楽しみにしてるよ

399 : ◆cNVX6DYRQU :2011/08/04(木) 21:53:13.27 ID:+PMjQGF3
>>396で投下します。

400 :砕ける世界 ◆cNVX6DYRQU :2011/08/04(木) 21:54:40.79 ID:+PMjQGF3
聖杯から生まれた妖女が手を一振りすると、瞬時に十二もの手裏剣が現れ、妖女はそれを石川五ェ門に対して投げ付けた。
風車十字打ち……手裏剣十字投げは五ェ門の故郷である伊賀にも伝わるが、この技は十字を傾け、更に回避を至難にしている。
加えて、飛び来る手裏剣の一つ一つが光よりも速く正確な、飛竜の如き鋭さを持って五ェ門に喰らい付かんとしているのだ。
だが、五ェ門とて厳しい修行の末にあらゆる飛び道具を防ぐ術を身に付けた程の剣客。
「たぁっ!」
居合いの構えから斬鉄剣を振るうと、飛び来る手裏剣の全てを切り落とす。
「何!?」
だが、妖女の攻めはそこで終わらず、五ェ門が振る剣の陰から、飛竜剣以上の速度で駆け寄り、斬り付けようとする。
「ぼさっとしてるんじゃねえ!……ちっ!」
五ェ門の危機を、駆け寄った芹沢鴨が妖女を蹴り飛ばして救うが、相手の見た目以上の硬度と重量に体勢を崩す。
その隙を突こうとする妖女の長剣を、割って入った足利義輝の刀が止め……その時、何かが起きた。

「何だ!?」
気配の乱れから何らかの異常事態が起きている事を悟り、戸惑う剣士達をよそに、妖女は剣を振り翳す。
咄嗟に千葉さな子はその前に立ち塞がり、手にした薙刀をもって妖女に立ち向かった。
剣術ならともかく、薙刀術への造詣の深さに関しては、明らかにさな子の方が遥かに上。
それでも、なまじ心得があるだけに、妖女は自身の知識を元にさな子の手を読もうとしてしまう。
斬り付けると見せ掛けたさな子は薙刀の柄を回して相手の防御の裏を取り、石突きを妖女に叩き込む。
「!?」
しかし、必殺の一撃になるかと思えたさな子の石突きは妖女の表面で滑り、いなされる。
戦国の頃の甲冑武者が使う介者剣術にはそのような受け技があると、さな子も知識としては知っていた。
だが、今の一撃は妖女の正中線を完璧に捉えており、そんな事で防げるような代物ではなかった筈。
でありながらさな子の攻撃は凌がれ、勢いを逸らされた彼女は妖女に薙刀なしの身体を曝し、危機に陥る。
「させるかあ!……って、うおっ!?」
追い打ちはさせじと背後に回った坂田銀時が木刀を叩き付けるが、妖女は微かな動きだけでこれをかわす。
敵に横腹を見せるのを避ける為に前に大きく跳ぶ銀時だが、今度はさな子に衝突。
それでさな子共々妖女の前から転がり去る事になり、結果としては彼女を救うという目的は達成できたが……
「どうなってやがる!?」
今の銀時の一撃はああも簡単にかわせる物ではなかったし、その後の銀時の跳躍もさな子の位置とは別方向だった筈。
明らかにおかしい……まるで、世界が壊れかけてでもいるかのような。
剣客達の迷いに反応したのか、犬塚信乃が懐に持っていた、「智」の文字が入った珠が光を発する。
その曲がりくねった軌跡を見て、漸く剣桃太郎が悟る。
「空間が……歪んでいるのか!?」

401 :砕ける世界 ◆cNVX6DYRQU :2011/08/04(木) 21:57:46.74 ID:+PMjQGF3
光線は直進する……それは、真空や均質な媒質中という、ごく限られた環境下での事。
自然環境では光が屈折や反射で曲線を描く事など珍しくもない。
しかし、大気の状態や光線の複雑な軌跡から、桃太郎はこれが反射でも屈折でもなく、空間の歪みによるものだと判断した。
それにより捻じ曲げられた光の道筋……それとて、空間の歪みのせいで実際より捻じ曲がって見えている筈。
だが幸いな事に、宝珠から出た光はただの光ではなく、神気とでも呼ぶべき気配を伴っていた。
無論、空間が乱れた中で気配の伝達もまた歪められている可能性も否定は出来ないが……
桃太郎は剣先に氣を集めてみるが、特にいつもと変わりはない。
現れた虎の姿はいつもより歪に見えるが、それは光の歪みのせいだろうし、感じる気配に異常はないようだ。
空間の歪みの中でも気配は精確に伝わる……その仮定の下に、桃太郎は空間の現状を頭の中に描く。
そして、神気が感じられる経路、加えてそれと眼で見える光線の軌跡の比較を元に、歪みの中心を割り出した。
「は!」
推測した中心を目掛けて虎魂を飛ばし……次の瞬間、「智」の珠から出る光線は直進し、周囲の異様な気配も去る。
「何とかなったか。だが、今のは一体……」

空間の歪みに剣客達が翻弄されている間も、妖女の方は元々視力に頼っていないのか、意に介する事なく攻撃を続行。
対して、見える像と現実の差から迂闊に反撃も出来ず防戦一方だった剣客達も、漸く反撃に移れるようになる。
まずは「智」の珠を持ち、それ故に歪みの解消にいち早く気付いた信乃が最初に猛撃を加えた。
敵がいきなり攻勢に出るのを見た妖女は防御に徹し、信乃の連撃を必要最小限の動きで次々と回避。
二階堂流・垂れ糸の構え。その技自体は知らぬ剣士達にも、妖女の狙いが信乃を疲労させる事にあるのは一目瞭然。
だが、一同は敢えて加勢しない。
信乃が風車の如く剣を振り回している中への下手な加勢は邪魔になるというのもあるが、何よりも数の利からの余裕の表れ。
仮にこちらの剣がかわされ続けて疲れ果てたとしても、そうなる度に入れ替わって行けば済む事。
だから一同は信乃の闘いを見守る事としたが、信乃としては仲間に譲る気などなく垂れ糸の構えを破る法を探っていた。
妖女の回避が、常に動きを最小限にする方角に向いている事を利用し、信乃は相手を誘導して広間の隅に追い詰めて行く。
遂に妖女の背が壁に接しようかという所まで追い込んだ信乃は、もう下がって避ける事のできない敵に必殺の横薙ぎを放つ。
「!?」
妖女は屈んで信乃の剣をかわし、下を取られた信乃は素早く剣を回して突くが、妖女は下への突きをかわすと同時に足指で挟む。
思いがけない力に信乃の動きが止まった瞬間、妖女が剣を構え……
「やらせん!」
五ェ門が咄嗟に渾身の勢いで斬鉄剣を振るうが、妖女は跳躍して逃れ、斬鉄剣の強撃は囚われていた信乃の剣を折ったのみ。
そのまま妖女は忍びの如き軽快な動きで壁を蹴り、天井を二歩三歩と駆けて二人の背後に回り込む。
「くっ!」
背後を取られた信乃と五ェ門のカバーに入った桃太郎が妖女を見ると、彼をも含めて三人をまとめて薙ぎきらんとする構えで……
(虎眼流か!?)
それは、昨夜に城下で見た虎眼流・流れ星の構え。確かにこの長刀、妖女の膂力で薙がれれば防御は困難。
ただ、城下で見た銀時と岩本虎眼との立ち合いから、桃太郎は流れ星への対応策を学んでいた。
即ち、間合いを大きく外す事で、流れ星は防ぐ事が出来る。
とはいえ、虎眼流には間合い騙しの法がある上、敵の得物は長剣、加えて後には壁を背にした仲間達。
故に間合いを開けてかわすのは難しく、桃太郎は逆に大きく相手の手元に飛び込む。
相手の得物が常識外れの長刀、かつ桃太郎が格闘を得意とする事もあり超接近戦に持ち込めば有利との計算もあっての選択だ。
妖女が前進して桃太郎の背後の二人をも流れ星の刃先にかけようとしていたお蔭でこれは成功。
しかし、妖女が一撃に鍔で敵を斬らんとする気合を籠めていた為、接近して柄を止めた桃太郎は予想以上の衝撃を受ける。
バランスを崩しつつ必死の蹴りを放つが、妖女は軽捷に遠く跳び下がり、剣を背に負う如くに高く振り翳した。
「獅子反敵!?」
闘いを見守っていた千葉さな子が、悲鳴のような声を上げた。

402 :砕ける世界 ◆cNVX6DYRQU :2011/08/04(木) 21:58:50.28 ID:+PMjQGF3
獅子反敵は一刀流の秘剣であり、さな子も型だけは学んでいる。
だが、その技は千葉周作が流儀を興す際の取捨選択で弾かれ、北辰一刀流では基本的に用いられていない。
あまりにも攻撃一辺倒の技である為に、道場の試合で使うには不安が残ると判断されたのだ。
ただ、実戦で……しかも、この妖女のような強力な敵に使われればどうか。
竹刀による試合では敵の刀の打点や刃筋をずらせば一本を免れるが、真剣、特にあの長剣では掠られただけでも命に関わろう。
試合なら相手より半瞬でも早く一撃を当てる手もあるが、実戦でそれをやれば相討ちになる公算が高い。
だから相手の技の正体を知りつつ、さな子にはそれ以上の有益な助言は出来ず。
それでもさな子の切迫した様子を察した芹沢が、更に銀時も桃太郎を庇って立ち塞がるが、妖女は駆けつつそれを避ける。
弁慶の攻撃を避ける牛若丸のような、軽やかで、複雑に動きつつも加速をやめない力強い動き。
そのまま、妖女は迎撃の構えを取る桃太郎に対して必殺の一撃を叩き込んだ。

剣が折れ、桃太郎が跳ね飛ばされる。だが、その身は辛うじて無事。
刀を犠牲にして妖女の剣の勢いを削いだ事、鉢巻に氣を注いで瞬間的に鉢金の如き強度を与えた事。
それらも桃太郎の命を救った一因ではあるが、最大の原因は妖女の首に刺さった刃。
仲間の危機を見た信乃が、折れた小篠の刃先を投げて必殺の一撃を妨げたのだ。
首に刺さった刃を抜いて捨て去る妖女。
人間なら致命傷になってもおかしくない傷だが、この妖女にはまるで堪えていないらしい。
相手の不死身性に怯みかける剣客達だが、ここで信乃が声を張り上げて一同を励ます。
「見ろ!傷を負っても血の一滴すら流れない。奴は所詮は化生。万物の霊長たる人には及ばぬ存在だ!」
陳腐とも言える人間礼賛の言葉だが、信乃が自身をも化生の存在ではないかと疑っている事を知る者には聞こえ方が違う。
中でも島に来て以来、信乃と行動を共にしその苦悩を見て来た義輝が、信乃の叫びを受けて前に出る。
「おい……」
思わず止めかける銀時だが、義輝の眼を見て考えを変えた。
先程の奇妙な空間の歪み、あれは義輝と妖女が打ち合った瞬間に起き、桃太郎が撃った中心地も二人の剣が交わった位置。
同じ「物干し竿」の名を冠する、出会う筈のない二本の剣の有り得ざる接触が原因とまではわからずとも、
義輝が妖女と闘ったのが悪かったとは見当が付いており、だから義輝はここまで前に出ず仲間の戦いを見守っていたのだ。
その義輝が急に前に出たのには、果たしてどんな成算があるのか……
見守る一同が瞠目する。
彼等の面前には剣を上段に構えた義輝……だが、仲間達が驚いたのは、妖女も全く同じ構えを取っていたからこそ。
そのまま、二人は鏡に映る像の如く同時に同様に動き出し、振り下ろした剣が真っ向から衝突した。

403 :砕ける世界 ◆cNVX6DYRQU :2011/08/04(木) 21:59:45.99 ID:+PMjQGF3
妖女の戦い方から、その多彩な技の中で新当流系の剣がかなりの比重を占めている事を、観察し続けた義輝は見抜いていた。
相手は他にも多彩な技を身に付けている為に苦戦しているが、信乃の言が正しければ、新当流のみの勝負なら義輝が優る筈。
故に義輝は新当流の奥義である一の太刀で勝負を挑み、予想通り、妖女も同じ技で対抗。
剣がぶつかり合った瞬間、先程と同様に空間の歪みが発生した。
空間が歪み視覚があてにならない状況では、盲人の察気術や神道流陣幕突きの奥義を究めた妖女が絶対に有利なのだが……
ぶつかり合った二つの「一の太刀」が互いを弾き、二人はすぐさま相手に対して袈裟懸けに斬り付ける。
次の瞬間、肩から切り裂かれて倒れたのは妖女の方。
歪みが発生し始めたばかりの、位相が定まらない中では、視力に頼らない妖女でも精確に敵に剣を当てるのは難しい。
対する義輝の方は、前に帆山城で塚原卜伝が見せた、歪みをも切り裂き真っ直ぐに敵を討つ剣を使った。
互いに必殺剣を繰り出して競い、その鋭さで優る事で相手を切り裂いた義輝の、完全なる勝利。
次の瞬間、床に投げ捨てられていた聖杯が爆ぜ割れる。
剣客達を倒す無敵の戦士を願われ生み出した妖女の敗北により、願望実現器としての矛盾を起こし、存在を保てなくなったのだ。
杯の中に蓄えられていた武芸者達の精華が飛び散って、この島で死んだ剣客達のそれと混じり合う。
だが、剣士達にはそれを察知し観察する余裕はなかった。
いきなり周囲の景色が砕けて塗り替わり、自分達が城の天守閣の屋根の上に居る事に気を取られた為に。

「おおっと」
危うく転落し掛けた銀時が屋根にしがみ付き、他の者達もどうにか屋根の上で体勢を整える。
井戸の底から通じる道は城に元々あった抜け道を基にしているが、非常用の抜け道にあんな広間がある筈もない。
あの空間は、果心居士が聖杯を用いて創ったものであり、それ故に聖杯の崩壊と共に消失し、剣士達を島に弾き出したのだ。
そこまでの事情は知る由もなかったが、主催者の中核の一つを破壊した事ははっきりしており、剣客達も一応の達成感を味わう。
無論、あの広間から去った居士や白洲に居た老剣客など、闘うべき敵はまだ残っているが……
「勝てたのはそなたの助言のおかげだ。礼を言う」
義輝が最初に声を掛けたのは、折れた刀を見詰めていた信乃。
それを正面から受け止められなかった信乃は刀を持つ下方に目を逸らし……それによって彼の剣の異常に気付く。
「見せてみろ」
信乃が小篠を鞘に収め義輝の剣を手に取って見ると、その刀身には無数の小さな亀裂が走っている。
自身の同一存在との接触は非常な負担であり、さしもの備前長船も耐え切れなかったのだろう。
「この剣はもう使わない方が良いな」
そう軽く言った信乃だが、義輝は大きな衝撃を受けていた。
元々、義輝は無数の名刀を蕩尽して果てた最期からもわかるように、足利家重代の多数の剣を代わる代わる使える立場にあった。
しかもそれらの剣は、それぞれに名工の手になり、足利家が手に入れる前に高名な武士の手を経て様々な曰くを持つ代物ばかり。
となると、名刀など滅多に手に入らず漸く手に入れた愛刀を長く大事に使う剣士達と比べ、剣との一体感では劣るのは当然。
だがそれにしても、剣がこのような状態になっている事に気付けなかったのは、一流の剣士としては不覚。
と言っても、義輝が愕然としたのは、何も己の不覚を羞じたからではない。
妖女との闘いで、義輝は相手を完璧に斬った……と思っていたが、それはあくまで剣が完全であるという前提での話。
剣に瑕があったのであれば、あの一撃も、致命傷とはなっても不死身の化生を即死させるには至らないかもしれない。
そう義輝が思い至った時には、妖女は既に、音も気配も無く駆けて、彼等に迫っていた。


404 :砕ける世界 ◆cNVX6DYRQU :2011/08/04(木) 22:00:45.21 ID:+PMjQGF3
最強を求める願いにより聖杯から生み出された妖女は足利義輝に敗れ、その矛盾の為に聖杯は砕けた。
しかし、妖女の力となった武芸者達の多くは、敗れ、致命傷を負おうとも、最後の瞬間まで足掻き続ける不屈の武士。
故に、存在の源たる聖杯が砕け、己の滅びが間近に迫った状況でも尚、妖女は敵に刃を向ける。
袈裟に斬られた傷は致命傷だが、人ならざる彼女の動きはこの程度の損傷で鈍ったりはしない。
得物の物干し竿も、燕返しにより自身の平行存在との出会いに慣れていた為か、義輝の剣とは違ってほぼ無傷。
勝利と急な空間移動によって生じた剣客達の心の隙を縫い、妖女は必殺の突きを放った。

無音で迫る妖女に気付けたのは、剣の亀裂から自身が相手を仕留め切れていないと察した義輝のみ。
その動きは未だ鋭く、槍術を応用した突きで義輝と信乃をまとめて串刺しにしようとしている。
防御しようとしても、信乃に預けた剣を取り戻して受けるのが間に合うかどうか。
仮に間に合っても、壊れかけた刀で受ければ、今度こそ、妖女の勢いを殺す事すら出来ずに砕けてしまうかもしれない。
そうでなくとも、城の屋根の上という不安定な場所であの空間の歪みを起こせば仲間を危険に曝す事になるし。
かといって義輝が避けても、未だ危機に気付いていない信乃は対応しきれないだろう。
そんな事は……己の不手際の為に仲間が犠牲になる事は、武士の棟梁たる者が決して許してはならぬ事。
故に、義輝は信乃を突き飛ばし、その腰にあった、半ばから折れた刀を引き抜きつつ妖女に向かって跳んだ。

剣の刃先が信乃の肩を刺し、血が噴き出す。
仮に信乃が、彼が心配していたように物語の画や文章の精であるならば、刃を受けて噴き出るのは血ではなく墨であるべき。
負傷して血が流れ出たという事は、信乃が、少なくとも血肉を備えた生類である事を示す何よりの証拠。
であるのに、今の信乃にはそんな事を気にする余裕は無かった。
何しろ、信乃の肩を刺している剣は、その前に、義輝を……その心臓を貫いていたのだから。
貫かれながらも、義輝は自分も剣で妖女の心臓を刺し、そのまま押し込んで妖女が信乃を深く刺すのを防ぐ。
押し合ったまま凝固したかと見えた瞬間、二人は体勢を崩し、横倒しに屋根から転げ落ちんとする。
「ちいっ!」
駆け寄った芹沢が妖女の腕を切り落とし、さな子が義輝の身体を抱き止めてどうにか落下を防ぐ。
この時になって漸く我に返った信乃が義輝を掻き抱くが、心臓を貫いた傷には既に手の施しようもない。
「後は頼んだ」
そのたった一言だけを遺して、征夷大将軍足利義輝は息を引き取った。

【足利義輝@史実 死亡】
【残り三十六名】

【ほノ参/天守閣の上/一日目/午後】

【犬塚信乃@八犬伝】
【状態】肩に軽傷、精神的ショック
【装備】小篠の鞘@八犬伝、備前長船「物干竿」@史実(亀裂)
【所持品】支給品一式、こんにゃく
【思考】基本:主催者を倒す。それ以外は未定
一:義輝の死に呆然
二:毛野の死の真偽を探る。
三:村雨、桐一文字の太刀、『孝』の珠が存在しているなら探す。
【備考】※義輝と互いの情報を交換しました。義輝が将軍だった事を信じ始めています。
※果心居士、松永久秀、柳生一族について知りました。
※自身が物語中の人物が実体化した存在なのではないか、という疑いを強く持っています。
※玉梓は今回の事件とは無関係と考えています。

405 :砕ける世界 ◆cNVX6DYRQU :2011/08/04(木) 22:01:48.64 ID:+PMjQGF3
【剣桃太郎@魁!!男塾】
【状態】健康
【装備】折れた打刀
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者が気に入らないので、積極的に戦うことはしない。
1:銀時、信乃に同行する。
2:向こうからしかけてくる相手には容赦しない。
3:赤石のことはあまり気にしない。
※七牙冥界闘終了直後からの参戦です。

【坂田銀時@銀魂】
【状態】健康 額に浅い切り傷
【装備】木刀、
【道具】支給品一式(紙類全て無し)
【思考】基本:さっさと帰りたい。
1:当面は桃太郎達に付き合う。
2:新八の居所を探り出す。
※参戦時期は吉原編終了以降
※沖田や近藤など銀魂メンバーと良く似た名前の人物を宗矩の誤字と考えています。

【芹沢鴨@史実】
【状態】:健康
【装備】:新藤五郎国重@神州纐纈城、丈の足りない着流し
【所持品】:なし
【思考】
基本:やりたいようにやる。 主催者は気に食わない。
一:義輝の元部下を統率する。
二:五ェ門を少し警戒。
【備考】
※暗殺される直前の晩から参戦です。
※タイムスリップに関する桂ヒナギクの言葉を概ね信用しました。
※石川五ェ門を石川五右衛門の若かりし頃と思っています。

【石川五ェ門@ルパン三世】
【状態】腹部に重傷
【装備】斬鉄剣(刃こぼれ)、打刀(刃こぼれ)
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:主催者を倒し、その企てを打ち砕く。
一:主催者を倒し、芹沢の行動の記録を探す。
二:千葉さな子を守る。
三:芹沢を警戒
四:ご先祖様と勘違いされるとは…まあ致し方ないか。
【備考】※ヒナギクの推測を信用し、主催者は人智を越えた力を持つ、何者かと予想しました。
※石川五右衛門と勘違いされていますが、今のところ特に誤解を解く気はありません。

【千葉さな子@史実】
【状態】健康
【装備】磯田きぬの薙刀@駿河城御前試合、童子切安綱
【所持品】なし
【思考】基本:殺し合いはしない。話の通じない相手を説き伏せるためには自分も強くなるしかない。
一:主催者の部下として現れた女と薫の関係を探る。
二:主催者から仲間達の現状を探り出す。
三:芹沢達を少し警戒
四:間左衛門の最期の言葉が何故か心に残っている。
【備考】
※二十歳手前頃からの参加です。
※実戦における抜刀術を身につけました。
※御前試合の参加者がそれぞれ異なる時代から来ているらしい事を認識しました。

406 :砕ける世界 ◆cNVX6DYRQU :2011/08/04(木) 22:04:04.56 ID:+PMjQGF3
獲物を求めて城下を彷徨う東郷重位。
なかなか斬るべき敵に巡り会えずにいた重位だが、城の前に来た所で足を止める。
漸く、闘うに足る存在の気配を察知したのだ。しかも、少なくとも二組。
その中でまず重位に迫って来たのは、上空から落下して来た女。
片手を失い袈裟懸けの傷を受け、更に心臓に剣を刺された、常人なら三度は死んでいる重傷者。
それでも、ぎこちない動きながら、空中で己に刺さった刀を抜き取ると、それを構えた。
死に瀕しながら尚、目に映る剣客を一人でも道連れにせんとする強靭な意志。
半死人を討つのは重位の本意ではないが、これだけの意地を見せる相手ならば、斬ってやるのが礼儀だろう。
剣を蜻蛉に構える重位。お世辞にも、上空から迫る敵を迎え撃つのに適した構えとは言えないが……
女は重位に向けて落下し、互いに相手の剣の間合いに近付く。
剣の長さでは破損していない重位の村雨が上だが、体勢では女が圧倒的に有利であり、結果、相手を間合いに捉えたのは同時。
だが動き出すのは、ほんの僅かだけ重位が早く、その瞬間、女は微動だにする間すらなく両断される。
相変わらず常識外れの速度を持つ雲燿の太刀。
だが、太刀を振り抜いた重位は剣を納めもせず、続いて現れた者達に向き直った。

「何だ!?」
声を上げたのはオボロ。横には服部武雄の姿もある。
危急にある仲間を救う為に駆けていたオボロと服部。
本来なら、重位のような剣呑な人物には関わらず、足を止めずにそのまま駆け抜けるのが正解であったろう。
だが、人が斬られる場面を見てしまえば、しかも斬られたのが仲間の危機を知らせた女となれば話は別。
そして、一度足を止めてしまった以上、そして重位の凄まじい気迫を浴びてしまえば、無視して通り過ぎるのは困難。
二人は剣を抜く。
こうして、主催者の中核の破壊もまた、彼等が目論んだ剣客同士の斬り合いを促進させる一因となったのであった。

【ほノ参/城の前/一日目/午後】

【東郷重位@史実】
【状態】:健康、『満』の心
【装備】:村雨丸@八犬伝、居合い刀(銘は不明)
【所持品】:なし
【思考】:この兵法勝負で優勝し、薩摩の武威を示す
   1:次の相手を斬る。
   2:薩摩の剣を盗んだ不遜極まる少年(武田赤音)を殺害する。
   3:殺害前に何処の流派の何者かを是非確かめておきたい。

【服部武雄@史実】
【状態】額に傷、迷い
【装備】雷切@史実、徳川慶喜のエペ(鞘のみ)
【所持品】支給品一式(食糧一食分消費)
【思考】基本:この殺し合いの脱出
一:伊東や坂本の所に戻り、宮本武蔵を斬る
二:剣術を磨きなおして己の欠点を補う
三:上泉信綱に対しては複雑な感情
【備考】※人物帖を確認し、基本的に本物と認識しました。

【オボロ@うたわれるもの】
【状態】:左手に刀傷(治療済み)、顔を覆うホッカムリ
【装備】:打刀、オボロの刀@うたわれるもの
【所持品】:支給品一式
【思考】基本:男(宗矩)たちを討って、ハクオロの元に帰る。試合には乗らない
一:服部と同行する。
二:トウカを探し出す。
三:頬被りスタイルに不満
※ゲーム版からの参戦。
※クンネカムン戦・クーヤとの対決の直後からの参戦です。
※会場が未知の異国で、ハクオロの過去と関係があるのではと考えています。

407 : ◆cNVX6DYRQU :2011/08/04(木) 22:04:57.13 ID:+PMjQGF3
投下終了です。

それと、柳生十兵衛、斉藤一、新免無二斎、赤石剛次、神谷薫、天海、中村主水で予約します。

408 :創る名無しに見る名無し:2011/08/05(金) 00:20:35.56 ID:sPTXmeAb
>加えて、飛び来る手裏剣の一つ一つが光よりも速く正確な、飛竜の如き鋭さを持って五ェ門に喰らい付かんとしているのだ。
どんな戦いだよ
光って時速10億kmぐらいなんだぞ?

409 :創る名無しに見る名無し:2011/08/05(金) 05:47:00.14 ID:UXC0vpJl
さすがに超人すぎるな

410 :創る名無しに見る名無し:2011/08/05(金) 12:26:35.36 ID:aw89u7j9
投下乙でした
剣豪将軍散る…しかしよう生き残ったなさな子さん


>>408
すごくかしこいですね!
りかのつぎはこくごもがんばりましょう!

411 :創る名無しに見る名無し:2011/08/05(金) 15:10:59.98 ID:9kx3FBZc
乙でした〜

412 :創る名無しに見る名無し:2011/08/05(金) 16:02:12.06 ID:TgP2za8v
>>410
30万×60×60は算数ですが?

413 :創る名無しに見る名無し:2011/08/05(金) 17:42:26.19 ID:9kx3FBZc
あのう、比喩表現と飛竜の”如き”ですから、そこのところは普通にね

414 :創る名無しに見る名無し:2011/08/07(日) 21:58:11.88 ID:A8PUME3O
直喩するとこ足りてないだろ
普通は、「光のような(に)云たらかんたらな飛竜」の「如く」ってするから

飛竜が比喩になってない
比喩になってるのは手裏剣だけ

日本語的には「光よりも速く(時速10億kmオーバー)正確な飛竜」のような手裏剣
以外の解釈は存在しない

415 :創る名無しに見る名無し:2011/08/07(日) 23:16:04.17 ID:mSQTjUvw
元々この人は表現において足りない部分が多々ある書き手だし、その程度は多目に見てやれよ。
真面目に読み出して突っ込み出すときりがない上に、そもそも批評すると馬鹿にして聞かないか無視する人だから言うだけ無駄。

全部黙って気持ちよく書かせてやれ。ただまあ、なんというかF剣向きだよな。やりたそうな事が。


416 : ◆cNVX6DYRQU :2011/08/16(火) 21:21:31.27 ID:K3KHsaUM
>>408>>413
その場面の手裏剣は、「駿河城御前試合」における未来知新流の脇差投げを模しているという設定です。
なので、手裏剣の速度は普通に光速以上を想定しています。
アニメの「ルパン三世」ではルパンがレーザーを防御していましたし、五ェ門ならこれくらいは問題なく対処可能でしょう。
物体が光速を超える事で起こる問題や副次的現象は、ここが物理法則が通常と異なる異世界だから起きなかった、という事で。

417 : ◆cNVX6DYRQU :2011/08/16(火) 21:22:29.36 ID:K3KHsaUM
>>407で投下します。
容量がギリギリのようで、新スレは立てられなかったので、もし途中でオーバーしたら仮投下スレに投下しておきます。

418 :主水、天海を始末し損なう ◆cNVX6DYRQU :2011/08/16(火) 21:23:27.85 ID:K3KHsaUM
「剣……心…?」
天海が懐から取り出した鏡に映し出されたのは、神谷薫の想い人である緋村剣心の姿。
果心居士が造り、主催者が剣士達の動きを監視し闘いを鑑賞する為に使っていた鏡。
その中から、天海は緋村剣心を映し出す鏡を取って、ここへ持って来たのだ。
天海が柳生十兵衛等の迎撃を志願してここへ来る時、緋村剣心と神谷薫は、城下の商家に居てここに来る予定はなかった。
しかし、天海は薫がこの場に必ず来ると予測して鏡を持ち込み、その読みは見事に的中。
もっとも、全ての出来事は因果の法則に縛られているという仏の教えを究めた天海ならば、この程度は当然かもしれない。
あの時点で薫達の居る商家を伺う宮本武蔵が鏡に映っており、その襲撃の意図は明らか。
薫の力量では、武蔵のような一流の剣客の死闘に巻き込まれればひと堪りもなく、その場を逃れるのが最上の安全策。
但し、薫は恋人や仲間を捨てて一人逃げるのを肯じる性格ではないし、人斬りが幾人もうろつく城下に一人で出るのも危険。
その点、ここならば居るのは主催者を討たんという正義の志を胸に宿した剣士ばかり。
危険な剣客としては新免無二斎がいるが、無二斎とて他により腕の良い剣客が多く居る中で薫に食指を動かす事はまずない筈。
薫が敵視する御前試合主催者の一員たる天海も居るが、この場の強豪達に比べればあまりに無力な老人に過ぎぬ。
だから、薫が援軍を呼びにここまで来るのはただの必然。
彼女を生かし、願いを適えようとする加護の計らいによって、薫はここにやって来たのだ。
そして、同様に彼女を助ける加護により、この鏡には緋村剣心の決定的な場面が映っている事もまた、必然。
そもそも、この空間は外部とは隔絶した、いわば小さな異世界と言える。
当然、時間の流れも外と同一とは限らず、竜宮城に行った浦島子や邯鄲の夢の如き事態になってもおかしくはない。
この空間における現在が、島のどの時間軸と重なるかは、鏡を見て観測するまで定まっていなかった事。
ならば、鏡に映るのは薫が知る事を望んでいる光景……即ち、剣心達への武蔵の襲撃の帰結の場面となるだろう。
剣士同士の闘いの結末までは天海にも読めないが、宮本武蔵という修羅の人柄については、幾らか知っていた。
あの男が勝算なしに襲撃を決意する事はあり得ず、単純に剣心達が武蔵を撃退するという流れは考えられない。
武蔵が剣心を殺すか、さもなくば剣心が人斬りに戻って武蔵を殺すというのが、ありそうな決着。
どちらにしろそれは薫の望みとは大きく外れており、天海の用は充分に果たす。

「嘘、剣心が……」
案の定、鏡に映ったのは武蔵の木刀によって命を断たれる緋村剣心。
それを見た薫の心は、己の見た物を否定せんとする願望のみに占められている筈。
しかし、如何な大天魔とて、死者を、しかも武蔵の如き剣豪に殺された者を黄泉還らせるなど絶対に不可能。
ピシッ
天海が持っていた、剣心の死を映し出した鏡が割れる。
無論、鏡を割ったところで、それが示した事実までなかった事に出来よう筈もないが。
それでも、鏡の破損は、薫を加護するものが、薫の意志に応じて剣心の死を打ち消そうと励んでいる事の一つの証左。
そして、加護の力が不可能事に注がれている今、薫自身の身を保護する余力はなくなり、薫は無防備となっていよう。
天海の眼が怪しく光るのを見た赤石が前に出ようとするが、次の瞬間、周囲の風景が突如として切り替わり、思わず足を止める。
中央の広間での聖杯の破損による空間の崩壊が、遂に彼等の居た場をも巻き込んだのだ。

419 :主水、天海を始末し損なう ◆cNVX6DYRQU :2011/08/16(火) 21:24:13.38 ID:K3KHsaUM
丁度、天海が仕掛けようとした時に起きた異変。これは偶然ではない。
実は、聖杯破壊による空間の崩壊は少し前から始まっており、天海の法力によりこの周辺でだけ抑えられている状況だったのだ。
だからこそ天海は薫に仕掛け、他の剣士の介入を防ぐ為、絶妙な時機に力を抜き、空間移動を誘発した。
いきなり景色が全く変化した事で、天海の目論見通り、赤石は警戒して攻撃を中止。
また、この変化が刺激となったのか、遂に斉藤一と新免無二斎が刃を合わせ、激しい斬り合いへと発展して行く。
更に、ここで彼等の闘いに新たに加わる影が一つ。
周囲の草むらの中から、一羽の鷹が現れ、鋭い爪で鎖に囚われた神谷薫に襲い掛かる。

聖杯によって作られた空間が崩壊した時、そこに居た者が島の何処に弾き出されるかは、あらかじめ定められていた訳ではない。
しかし、その中心たる広間に居た剣士達が城の天守閣に飛ばされたように、一定の法則は存在していた。
そして、江戸という数百年続く一大呪術都市を築く程に風水の奥義に通じた天海ならば、それを予測するのは容易な事。
故に、天海は初めから聖杯の破壊をも計画に組み込み、鷹の潜む此処へ薫達を誘導する為、あの位置で迎え撃ったのだ。
鷹も天海が前もってこの場に伏せさせて置いた、いわば伏兵。
元は伊賀で育てられた忍鳥、それを更に天海が仕込んだだけあって、動きの鋭さは相当のもの。
もっとも、そうでなくとも、剣心の死の光景に心を捉われている薫に鷹の攻撃を避ける事など出来る筈もないが。
「あっ!」
悲鳴と共に血が飛沫く。
鷹は周囲の変化にすら気付かないでいる薫の肩に爪を立て、その体内から大粒の珠を抉り出す。
球の表面には「心」の文字。それは、本来は犬田小文吾の持ち物である、「悌」の宝珠。
当初の予定では、「礼」や「義」の宝珠と同様に、一人で多数の剣客を相手取る為の補助として石舟斎に授けられていた筈の物。
しかし、石舟斎は霧を使い敵を攪乱する戦法を考えており、霧を晴らす力を持つ魔性である玉梓と縁の深い珠の所持を拒否。
それを聞いた果心は、「悌」の珠を支給品としたり島に配置するのではなく、珠に玉梓の力を注いで薫に埋め込んだのだ。
「如是畜生発菩提心」の八文字で一度は成仏した玉梓と感応し、珠の文字は「心」へと変わり、玉梓と薫を繋げる媒介となる。
駿河城における御前試合の生き残りの代理として選んだという薫が、あまり呆気なく退場しては問題だという事か、
或いは、本来はこの島に呼ばれるような剣客ではない薫を呪術的都合により巻き込んだ事への償いのつもりなのか……
どちらにしろ、薫は体内の宝珠を通して玉梓の加護を受ける身となり、そのお陰もあって今まで生き延びて来た。
そして彼女の生存が今、この御前試合による蠱毒を叩き潰す為の最大の好機を、天海へもたらしているのだ。
身を抉られた痛みで漸く我に返り、周囲の状況を把握しようとする薫に、天海が優しく語りかける。
「緋村剣心は、死んだ」

420 :主水、天海を始末し損なう ◆cNVX6DYRQU :2011/08/16(火) 21:24:58.23 ID:K3KHsaUM
薫から奪った「心」の珠を素早く呑み込んだ鷹は、そのまま赤石の牽制に掛かった。
猛禽類としての優れた資質に加え、厳しい訓練と、服部半蔵の遺産の名残、加えて玉梓の加護まで手に入れたのだ。
赤石剛次を相手に、勝つ事までは無理でも、しばらく時間を稼ぐ程度の事は出来る筈。
無二斎と斉藤の勝負もそう簡単には決着が付きそうにないし。
その間に、天海は薫に説く。
「緋村剣心は死んだ。その責は汝にある」
「嘘、剣心は死んでなんか……」
反論する薫の声は、しかし弱々しい。
高徳の仏僧として多くの衆生を導いて来た天海の言葉の説得力は、心身未熟な上に打ちのめされた薫が抗える代物ではなかった。
「汝を守る為にあの男は避けるべき闘いを避けられず、負うべきでない傷を負い……結果、力尽きた」
「そもそも、史上無数の剣客の中から緋村剣心が御前試合の参加者に選ばれたのも、汝と深き縁を持っていたが為」
「汝の為にあの男は死に、汝への想いを重荷として背負ったまま、輪廻すらも許されず永劫に苦しむ事となろう」
「苦しみからあの者を救う方法は唯一つ。汝が自裁する事。それで、汝もあの男も、また世の全ての衆生も救われる」
唐突な事を言い出す天海だが、弱った薫の耳にはそれが絶対の真実であるかのように聞こえる。
いや、或いは本当にそれこそが真理であるのかもしれないが……
「さすれば、拙僧の積んだ功徳の全てと引き換えにしてでも、汝と緋村剣心が和合仏となって永遠に共に在れるよう計らわん」
「剣心と……一緒に…?」
凶悪な罪人すらもた易く改心させる高僧の威と言。
元々心に隙がある上に、支えである剣心を亡くしたと疑っている今、薫が天海に操られ自死するのも時間の問題であろう。
それでも、周囲の二組の闘いが決着する前に薫を死なせ果心の儀式を破壊せんと、天海は圧力を強める。
だが、自身の薫への働き掛けが、すぐ傍での闘いの帰結へ大きな影響を与えようとしている事には、まだ気付いていなかった。

剣と剣が火花を散らす中、斉藤一は新免無二斎の動きに、ごく小さいながらも確かな隙を見出していた。
(だが、こいつは……)
本物の隙であろうか、それとも罠か。
偽の隙を作り敵を誘い込む戦法は、相手が乗って来ずに慎重に攻められれば偽の隙が本物になる可能性もある危険な手。
この若い癖に老獪な剣士が使いそうな戦術には思えないが、斉藤は、自身の中に焦りが生まれている事を自覚している。
十兵衛が天海と呼んだ老人は、どうも武芸の心得も大してなさそうな女を惑わし、自害させようとしているらしい。
女学生を多く見る中で、あの年頃の娘の危うさ脆さをよく知る斉藤としては、これを黙って見過ごす事は出来なかった。
とはいえ、無二斎との決着を付けなければ、天海の行動に介入するなど不可能であり、それが斉藤の心に焦りを生む。
隠しているつもりだが、もしも無二斎がこの焦りを見抜いているのなら、偽の隙を曝す戦術を選ぶ可能性もある。
斉藤が迷う内に、へたり込んでいた薫の手が動き出し、抱えている剣の柄に近付く。
既に迷う余裕はなく、斉藤は無二斎の隙を目掛けて渾身の片手平突きを繰り出した。

「!?」
紙一重で平突きを避けた無二斎を追って剣を薙ぐ斉藤だが、やはりそれは無二斎の誘いの策であった。
隠し持っていた十手で斉藤の剣を絡め取り、動きを止めた所に剣を振り下ろす無二斎。
咄嗟に剣を手放して逃れた斉藤は、必死に左手を伸ばして薫が抱えている剣の柄を握る。
この体勢、まして左手で武器を掴んだところで、それを持ち直して無二斎の攻撃を防御するのは無理な筈。
或いは、自身の命は既に諦め、薫の武器を奪って自害を防ごうという事だろうか。
まあ、斉藤の思惑や薫の運命など無二斎にとってはどうでも良い事。
無二斎は、斉藤を討つべく壺切御剣を振り下ろした。

421 :主水、天海を始末し損なう ◆cNVX6DYRQU :2011/08/16(火) 21:25:41.96 ID:K3KHsaUM
天海の威に無自覚の内に圧され、遂に剣を抜こうとした薫は、その剣が忽然と消えるのを目にする。
すぐ傍で戦っていた斉藤一が引き抜いたのだが、その動きはあまりに速く、薫の眼には捉えきれない。
薫が見たのは、引き抜かれつつある剣の側面、そこに自身の顔が写っているのをほんの一瞬見ただけ。
故に彼女の動体視力ではそれが自分である事すら判別できず、印象に残ったのは、その頬に付いた赤い血痕。
それは宝珠を抉り出された時の返り血が飛んだもの。
玉梓の加護の最後の置き土産か、血痕は、薫の大切な人を思わせる、十字の形をしていた。
「剣心……?」
薫は、恋する乙女らしい盲目さでそれを剣心と信じ、自害の失敗を剣心の意志による現象だと考える。
実際、論点を意志の有無だけに限定すれば、剣心が薫の自害を許さず生かそうとするのは充分に有り得る事。
少なくとも、仮に剣心が薫のせいで死んだのだとしても、それで薫の死を望むようになる事は有り得ない。だから……
「私は……死なない!」
薫は自殺の意志を捨てて立ち上がる。
「剣心はそんな事を望まないし、私も剣心が死んだなんて信じない!私は生きて、剣心にまた会うの!」
天海の説得とは逆に、生きる事を強く決意する薫。
不運もあったが、そもそも仏道においても自殺は推奨されるべき事ではなく、それを仏僧が強いるのには無理があるのだろう。
しかし、無理であろうと何だろうと、天海はやめる訳にはいかない。
と言っても、無二斎と斉藤の闘いは動き始めており、赤石を抑える鷹もそろそろ限界が近そうだ。
一から薫を説得し直す猶予はなく、天海は少々強引な手を使う事にした。

「愛欲に囚われた哀れな女よ。ならば、生きたまま餓鬼道に堕ちるが良い」
天海が言うと、大地が割れ、裂け目から、痩せ細りしかし腹だけは異様に膨れた小鬼……即ち餓鬼が幾匹も現れる。
薫は手にした鞘を投げ付けると、素早く辺りに眼を走らせ、近くに木刀が落ちているのを見てそれを拾い上げた。
「はっ!」
必死に木刀を振るって餓鬼を二体、三体と打ち倒すが、遂に一体の餓鬼に首元に飛び付かれ、慌てて剣を己の側に向け……

天海は、己の術に囚われた薫が、渡された則重の太刀を木刀と思い込んで振り、居もしない餓鬼と闘う姿をじっと見ていた。
幻術で相手を操り、自分の手で自分を斬らせ、死に至らしめる。
参加者が一人でも自害すれば果心の術が破綻するのは確かな筈だが、こんなやり方で薫を死なせても自害という事になるのか。
下手をすると意味無く命を一つ奪う事になりかねないが、天海の幻術が通じる相手など、この島では薫くらいのものだろう。
試してみて損はあるまいと、天海が更に薫に対して意識を集中した瞬間、天海は小さな衝撃を感じる。
何が起きたのかと周りの状況を確認した天海は、己が背後から刃で刺され、心臓を貫かれている事を発見した。

422 :主水、天海を始末し損なう ◆cNVX6DYRQU :2011/08/16(火) 21:26:26.48 ID:K3KHsaUM
無二斎は大きく跳んで下がると、鍔元から切断された壺切御剣を投げ捨て、十手に絡めていた打刀を手に取る。
「抜刀術か……」
抜刀術や居合の技は、無二斎が活躍した年代にも既に存在していたが、本格的に発展したのはより後の時代。
合戦がなくなり、室内や道端でいきなり襲われた場合くらいしか、武術を実戦で使う機会として想定しにくくなってからだ。
江戸時代には様々な状況下で敵に襲われた場合を想定し、難を逃れる技が無数に考案された。
もっとも、居合は試合で実用性を確かめる事が難しいだけに、実用に耐えない技も多くあり、それが淘汰されたのは幕末期。
天誅や暗殺が頻繁に行われた幕末には、居合技が多く使われ、最前線で活躍した人斬りには抜刀術の達人も少なくない。
中でも新撰組で暗殺や暗殺からの防護を多く請け負った斉藤は、考え得るほぼあらゆる事態に対応する術を知っている。
体勢を崩した状況で、他人が抱えた剣を咄嗟に掴んでの居合……それすらも、斉藤にとって未知の状況ではなかった。
加えて、左利きという、無二斎が現れてからは固く秘して来た隠し武器をも使っての、左手による抜刀術。
だが、居合と利き手という二つの切り札を切ったにもかかわらず、剣は無二斎の身体にまでは届かなかった。
その最大の要因は、斉藤が体勢を崩した時、無二斎が引き気味で攻めて来た事。
斉藤の反撃を予測した訳ではなく、斉藤を討った後に、既に鷹を圧倒し始めている赤石に襲われるのを避ける為の準備だ。
少し前の無二斎なら、斉藤の次には赤石をも討とうと考え、前のめりに斉藤に斬りかかり、居合の餌食となっていただろう。
だが、今の無二斎には、斉藤や赤石への興味はあまりなく、むしろあの剣客……天海の鏡に映った男に強く惹かれていた。
単に顔が自分と似ているからではなく、その剣筋に、今まで追い求めながら未だ完成していない当理流が目指す型があった故。
本音としては、すぐに城下へ向かいたいくらいだったが、斉藤が簡単には去らせてくれまいと自重していたのだ。
結果、斉藤だけを斬ってすぐにこの場を離れようという姿勢が、無二斎の命を救う事になる。
ある意味では、本人達の意識自覚とは無関係に、息子が父を助けたとも言えようか。
もしくは、武蔵への関心を表に出さず、斉藤が隠れた気配に気付き隙を見せるまで待った、無二斎の自制心の勝利とも言える。

無二斎は、斉藤と軽く剣を合わせながら、少しずつ後に退がって行く。
斉藤も既に無二斎の真意が退散にあると見抜いたが、この危険な男を、しかも切り札を見られた以上、黙って行かせる気はない。
だが、無二斎の方もまた、斉藤が天海に翻弄される薫をかなり気に掛けている事を、見抜いていた。
闘いながら少しずつ薫達から離れて行くと、それだけ天海が何か仕掛けた場合の対応が困難になり、斉藤を焦らせる。
薫が、天海から渡された十兵衛の剣を無意味に振り回し始めたのを気配で感じつつ、斉藤は無二斎と渡り合う。
そして、薫が剣先を自分の首元に向けた時、無二斎は斉藤の気の乱れを利用して大きく距離を取った。
その後、潜んでいた気配が天海を刺し、薫の動きも止まって辛うじて危機は去る。
もっとも、天海を刺した者の正体や思惑が不明である以上、斉藤にとっては油断して良い状況ではない。
斉藤と無二斎は暫く睨み合うが、そうしながら無二斎は徐々に間合いを広げて行き、やがて斉藤も遂に諦めて剣を引く。
二人は踵を返し、逆方向に歩き出す。
無二斎は斉藤が見せた抜刀術と利き腕を偽装する工夫を手土産に、息子を探しに城下へと向かう。
一方、技を見られ刀まで取られた斉藤だが、間接的にとはいえ孫のような年の娘を守れたのがせめてもの慰めか。
……もっとも、玉梓の加護も失った今、漸く守った薫の命が、この危険な島で何時まで保つかはわからないが。

【とノ伍/草原/一日目/午後】

【新免無二斎@史実】
【状態】健康
【装備】十手@史実、壺切御剣の鞘@史実、打刀(名匠によるものだが詳細不明、鞘なし)
【所持品】支給品一式
【思考】:兵法勝負に勝つ
一:宮本武蔵を探す
二:他者の剣を観察する

423 :主水、天海を始末し損なう ◆cNVX6DYRQU :2011/08/16(火) 21:27:16.09 ID:K3KHsaUM
心臓を貫かれた身体では後ろを振り返る事すら困難だが、それでも天海は心眼で己を刺した者の正体を把握する。
何故、この男がこの場所に居るのか。
この場所は忍鷹が見張っていたのだから、天海達が現れる前から此処に居て待ち伏せる事は不可能な筈。
広間を出る前に鏡で確認したこの者の位置を思い出そうとする天海だが、思い出せない。
日の出時の死者の通告で監視されている事を悟り、自らの存在感を殺したというところか。さすがは……
「中村主水、一流の仕事人よの」
「やっぱり知ってやがったか」
主水が此処に居るのは、天海達を待ち伏せていたのでも、偶然でもなく、神谷薫を尾けて天海達の所へ行っていたから。
城下で緊迫した様子で走る薫を見付けた主水は、その後を追う事にした。
そして、主水は薫によって地蔵の下の抜け道に導かれ、その先で天海と十兵衛達が対峙しているのを発見。
隠れたままずっと様子を伺い、空間の崩壊で天海達が此処に来た時、主水も共に飛ばされて来たのだ。
この際、さしもの主水も動揺して気を乱し、斉藤や無二斎に感付かれてしまったが、それも怪我の功名。
主水の気配が誘い水となって斉藤と無二斎が戦い始めた事で、ぐんと動き易くなった。
二組の闘いを隠れ蓑として使い、誰にも姿を見られる事なく、天海の背後に回り込んだ。
その途上で斉藤によって切断された無二斎の刀の刀身を拾えたのは、主水にとっては幸運。
天海を殺すだけなら元々持っていた剣の切っ先でも充分だが、致命傷を与えつつ即死させず話を聞くにはこちらの方が好都合。
斉藤・無二斎や赤石は気配で主水の動きに気付いたろうが、姿さえ見られなければまあ問題ない。
一方、武術においては一流には遠い上に、薫に気を取られていた天海は、背後から刺されるまで主水の存在に気付けなかった。

「お前以外に、その事を知ってる奴は、誰が居る?」
いつでも剣を捻ってとどめを刺せる体勢を保ちつつ、主水は問い質す。
「忠長殿と果心居士と……その辺りは既に死んでいよう。後は柳生の二人か。だが、左様な事を気にしても既に無意味」
「何だと?」
「果心の邪法により、汝等の存在は既に一つの世界にはとても収まりきらぬものとなっている。
 聖杯が滅びし今、汝等が帰る術は無いし、帰れば汝の故郷の世界は汝の存在に耐え切れずに砕け散るだろう」
理解不能な事を語る天海。主水は、それを致命傷を負った事による惑乱と判断し、とどめを刺してやろうと決意。
「とにかく、柳生の二人だな。そいつらも俺が始末するから、先に地獄で待ってな」
「すまぬが、拙僧は汝には討たれぬし地獄にも行かぬ。まだこの島で為すべき事があるのでな」
天海の言葉に反論しようとした主水は、既に天海が事切れているのに気付く。
また、天海の身体があまりに軽く、乾燥し切っている事にも。

即身仏。それは、五穀を断ち、水を避け、衆生救済の為、自ら入定して仏となった聖者の事である。
天海はその修行をほぼ成就させていたのだが、生きている間は迸る強い気力に誤魔化されて誰も気付かなかった。
……いや、無二斎辺りは気付いていて、だから天海を半ば死んでいると評したのかもしれないが。
とにかく、穀断ちの上の荒行で、天海の身体は本当ならばとうに死んでいる筈の状態にまでなっていたのだ。
それでも天海が生きていたのは、即身仏となる前に為すべき事を果たさんとする強い意志の力によるもの。
丁度、地蔵や観音が既に仏となる修行を完遂していながら、衆生を慰め救う為、敢えて菩薩の位に留まっているのと同様に。
そして、主水によって殺されようとした時、天海は意志の力を緩め、自ら死んだ……いや、成仏した。
仏法を守り、衆生を救済する。それを今までとは異なる方法で為す為に。

424 :主水、天海を始末し損なう ◆cNVX6DYRQU :2011/08/16(火) 21:28:19.06 ID:K3KHsaUM
天海の入定と共に、十兵衛を閉じ込めていた牢は只の網となって崩れ落ちた。
また、ほぼ時を同じくして赤石は鷹を切り落とし、斉藤は無二斎との勝負を切り上げて戻って来る。
「ちっ!」
主水は、天海の言葉と死の意味を掴みきれないまま、剣客達に姿を見られぬよう、素早く叢に身を隠し、立ち去るのだった。

【とノ伍/草原/一日目/午後】

【柳生十兵衛@史実】
【状態】健康
【装備】太刀銘則重の鞘@史実
【所持品】支給品一式
【思考】基本:柳生宗矩を斬る
一:事態を把握する
二:父は自分の手で倒したい
【備考】※オボロを天竺人だと思っています。
※五百子、毛野が危険人物との情報を入手しましたが、少し疑問に思っています。

【赤石剛次@魁!男塾】
【状態】腕に軽傷
【装備】村雨@里見☆八犬伝
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を斬る
※七牙冥界闘・第三の牙で死亡する直前からの参戦です。ただしダメージは完全に回復しています。

【斉藤一@史実】
【状態】健康、腹部に打撲
【装備】打刀
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者を斬る
一:薫のような無力な者は殺させない。
二:主催者を斬る。
【備考】※この御前試合の主催者がタイムマシンのような超科学の持ち主かもしれないと思っています。
※晩年からの参戦です。

【神谷薫@るろうに剣心】
【状態】打撲(軽症) 
【装備】太刀銘則重(鞘なし)@史実
【道具】なし
【思考】基本:死合を止める。主催者に対する怒り。
     一:剣心の所に戻る。
     二:人は殺さない。
【備考】※京都編終了後、人誅編以前からの参戦です。
   ※人別帖は確認しました。

【中村主水@必殺シリーズ】
【状態】頭部に軽傷
【装備】流星剣の切っ先、壺切御剣の刀身@史実
【所持品】なし
【思考】基本:自分の正体を知る者を始末する
一:自分の正体を知っているらしい柳生の二人を始末する
二:できるだけ危険は避ける

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