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リリカルなのはクロスSSその120

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/13(日) 14:50:38.01 ID:WKJz/Up3
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
型月作品関連のクロスは同じ板の、ガンダムSEEDシリーズ関係のクロスは新シャア板の専用スレにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
本スレが雑談OKになりました。ただし投稿中などはNG。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその119
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1318596961/

規制されていたり、投下途中でさるさんを食らってしまった場合はこちらに
リリカルなのはクロスSS木枯らしスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1257083825/


まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはデータwiki】
ttp://www31.atwiki.jp/nanoha_data/

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/13(日) 14:52:29.77 ID:WKJz/Up3
【書き手の方々ヘ】
(投下前の注意)
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
  ttp://gikonavi.sourceforge.jp/top.html
・Jane Style(フリーソフト)
  ttp://janestyle.s11.xrea.com/
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認して二重予約などの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・鬱展開、グロテスク、政治ネタ等と言った要素が含まれる場合、一声だけでも良いので
 軽く注意を呼びかけをすると望ましいです(強制ではありません)
・長編で一部のみに上記の要素が含まれる場合、その話の時にネタバレにならない程度に
 注意書きをすると良いでしょう。(上記と同様に推奨ではありません)
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
 前の作品投下終了から30分以上が目安です。

(投下後の注意)
・次の人のために、投下終了は明言を。
・元ネタについては極力明言するように。わからないと登録されないこともあります。
・投下した作品がまとめに登録されなくても泣かない。どうしてもすぐまとめで見て欲しいときは自力でどうぞ。
 →参考URL>ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3168.html

【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、さるさん回避のため支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は、まとめWikiのコメント欄(作者による任意の実装のため、ついていない人もいます)でどうぞ。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
 不満があっても本スレで叩かない事。スレが荒れる上に他の人の迷惑になります。
・不満を言いたい場合は、「本音で語るスレ」でお願いします(まとめWikiから行けます)
・まとめに登録されていない作品を発見したら、ご協力お願いします。

【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
 議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
 皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
 追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
・携帯からではまとめの編集は不可能ですのでご注意ください。

3 : 忍法帖【Lv=15,xxxPT】 :2011/11/13(日) 15:15:17.03 ID:R/L8cpiH
>>1
スレ立て乙!

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/15(火) 11:58:44.90 ID:FzoFjR7m
1乙

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/17(木) 20:05:43.72 ID:8IsIP2gA
>>1
乙だが、誰もいない…

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/18(金) 19:35:02.42 ID:vbLoNrUo
ミン ナメ ガコ ハク イロ ニナ ッテ ドコ カヘ イッ テシ マッ タ

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/18(金) 20:31:33.53 ID:LFzcjbWX


8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/20(日) 21:04:20.20 ID:rMX2/Ibs
 ... ((● コロコロ

9 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 20:43:46.91 ID:y+EBojRc
どうも新スレ乙であります
21時半からEXECUTOR第11話を投下します

10 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 21:31:55.39 ID:y+EBojRc
■ 11



 割れて外空間に向かって開放された艦橋の窓を飛び越え、エリー・スピードスターはヴォルフラムの露天艦橋へ飛び降りた。
 次元航行艦でも、飛行魔法の使えない者や、あるいは艦全体の動力が落ちた場合に備えて物理的に移動するための梯子やラッタルが備えられている。艦橋から装甲司令塔外壁を伝って前甲板へ降り、はやての元へ向かう。
 あのドラゴンが撃ったプラズマ弾の被弾により主砲区画の甲板は大きくめくれ上がっており、足元に気をつけながら走らなくてはならない。
 走りながら、念話で艦橋要員を呼ぶ。

「──ロウラン航海長!モモさんを呼び出してください!」

『機関出力20パーセントまで回復、噴射ノズルは2軸ともいけます──副長どうしました!?艦長は!?』

「緊急処置の準備をお願いします!艦長負傷、ただちに治療が必要です!」

 念話がかすかに途切れ、回線にかすかにホワイトノイズが混じる。

『艦長がッ──まさか敵に!?副長、副長は大丈夫ですか!?』

「艦長を助け出さないといけません、とにかくモモさんに連絡を、受け入れの準備をお願いします!」

 ヴォルケンリッターが活動能力を奪われるということは、シャマルも動けなくなっているはずである。
 この状態では艦医はモモしか執刀できる者がいない。

 ヴィータはもはや意識喪失、ほとんど身動きがとれなくなっており、魔力供給停止を検出したSPTがオートパージされてシャットダウンし、ヴィータの身体は糸の切れた人形のようにだらりと甲板に横たわっている。
 騎士甲冑も強度を失ってただの布のようになっており、蒸発しはじめている。
 この状態では一刻の猶予も無い。バリアジャケットを維持するための魔力が尽きてしまえば、もはや再生成することができなくなる。

 リインフォースの姿をした幻影は、はやての傍らに跪き、胸に手をかざしている。
 表情は場違いなほどに、不気味なほどに穏やかで、慈しみに満ちたものだ。それはバイオメカノイドが人間を観察し模倣したと考えるには、一見して心を動かされすぎる。
 バイオメカノイドはただの機械ではなかったのか。人間を殺戮することのみを本能として与えられた人工生命体ではなかったのか。
 そうでないのなら、なぜ、彼らは生まれたのか。
 彼らの由来を知ることが、彼らと戦うためには必要だ。もし彼らの本拠地を探すことができるのならそこを叩くことで根絶できる。

 この期に及んでもまだ、ミッドチルダはバイオメカノイドの技術を入手することをあきらめていないのか。

「艦長ッ!!」

 あの触手で攻撃されたら、エリーではなおさらひとたまりもない。
 あれは次元干渉をそのまま実数空間に書き出して、相転位空間を生成するものだ。
 また、術者が幻術魔法を使用して偽者(フェイクシルエット)を生成する場合はこの方法を用いている。通常はこのまま目的の姿を形成するが、さらに相転位空間の“継ぎ目”を切り離すことで攻撃魔法に転化できる。
 それは多層次元の接触分裂を利用した攻撃だ。
 これで攻撃されると、アルカンシェルと同様、物質の強度や剛性といったものはまったく意味を成さなくなる。
 空間をそのまま切り取るため、分子間力もあらゆる粒子結合もひといきに分解されてしまう。いわゆる魔力結合といった場合、これは統一場理論における電磁気力に基づいた結合である。これをもとにしているバリアジャケットは当然、空間ごと切り取られれば切断される。
 はやての身体に残された、両腕両脚の切断面が非常になめらかに切り落とされていることがその証拠だ。
 筋肉や神経、骨などをほとんど破壊することなく切断した。生体組織の破壊が少ないため、血液は心拍の圧力によって自然に流れ出していくが、肉体のダメージはその様相から想像されるほど大きくはない。

11 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 21:35:04.74 ID:y+EBojRc
 なのはもフェイトも慄き、死が目前に迫る恐怖に襲われているが、エリーはあきらめてはいなかった。

「高町さんっ!!ヴィータさんを艦後部の居住区へ運んでください!まだ間に合います!!」

 エリーの必死の呼びかけに、なのははどうにか気を取り直す。
 破損したSPTの回収はあきらめ、ヴィータをかかえて再び飛び立つ。今のところ、リインフォースの姿をした幻影ははやてのそばから動く様子が無く、ドラゴン本体の方はクラウディアを追いかけるのに気をとられている。
 なんとかヴォルフラムを再起動し、スバルたちの班を回収しなくてはならない。
 あちらも、おそらくこの様子だとザフィーラがほとんど動けなくなっているはずだ。回収したグレイ入りのカプセルと、さらにザフィーラも担いで運ばなくてはならないので、スバルとノーヴェが戦闘機人だといっても腕力的に厳しいものがある。

 なのはが飛び立ったのを見届け、エリーははやてと幻影に向かいあった。

 はやての身体は夥しい量の血の海に浮かぶような光景の中、手足をもがれてとても小さくなっている。
 血液に浸って濡れた髪が、うなじや肩に張り付いている。

 リインフォースの姿をした幻影は、ゆっくりと顔を上げ、エリーの方を向いた。

「これが、闇の書の意志──」

 思わず口をついて呟きが出る。
 エリーも、闇の書事件の顛末ははやてから語って聞かされたことがあった。
 しかし、闇の書の意志──リインフォースのことについては、姿を収めた映像資料なども残っておらず、ただ、きらめく銀の髪をした美しい女性、という程度にしか聞いていなかった。
 はやてやヴィータの驚きようから、今目の前にいる幻影は、リインフォース本人とまさに見紛うほどに瓜二つの姿をしていると思われる。

 幻影に対して、言葉が通じるかどうか。
 呼びかけてみるしかない。

「艦長の命を救わなければならないんです──」

 リインフォースの姿をした幻影は、片膝をついて身体を上げ、エリーを見上げた。
 穏やかな表情だ。これが幻影などと、にわかに信じられない。
 しかし事実、この幻影はつい先ほど、この微笑みをたたえたまま、触手を振るいはやてを斬った。

 管理局次元航行艦隊の幹部士官として、これほど自分が切迫した行動をしていることは初めてだ。今まで、どんな訓練でも実戦でも、冷静に任務をこなしてきた。どんな状況に直面しても冷静さを失わない自信があった。
 しかしそれは、状況に対して無感動になるという意味ではない。
 愛する者を傷つけられて、怒りがわかない人間などいないだろう。そして怒りに駆られる自分を客観的に受け止め、それでいてなお自分を見失わないことが大切だ。

「──……ッ!?」

「エリーさん!?大丈夫ですかっ、幻術魔法が!」

 なのはが上空から呼びかける。なのは自身はどちらかといえば大出力の攻撃魔法で正面切ってぶつかり合う戦闘スタイルのため、補助魔法などを駆使した精神攻撃はもともと不得手であった。
 それゆえに、かつての機動六課では希少な才能を持っていたセンターフォワードのティアナに、ずっと目をかけていた。
 JS事件を解決し、教導隊での勤務に戻ってからも、六課時代に彼女に教えたことを自分でも実践し、無駄に魔力を消耗しないよう、レイジングハートをカスタマイズしてきた。

 エリーもまた、魔力量そのものは目を見張るような値ではないが、総合的な状況判断能力、高効率の補助魔法に優れる。
 ここで指揮官を損耗しては、ヴォルフラムの戦力は大いに殺がれてしまう。

「大丈夫です──相手は、少なくとも何か言葉を使いたがっているようです──!」

 リインフォースの姿をした幻影は、それ自体が声を発することはできない。
 見た目をそっくりに似せても、中身は均一な無機質粒子の塊であるため、声を出す仕組みが備わっていない。

 幻影は、ドラゴンが制御する魔法にしたがってエリーにテレパシーを送る。
 術式は異なっているが、これも一種の念話だ。

「これは──声──船が──?」

 ドラゴンが唱える呪詛が、ヴォルフラムの艦体をも低周波で振動させている。
 しかしそれまでの、音響定位を分散させたものから指向性が高くなり、ドラゴンの声として耳が認識できるほど、音の聞こえる方向がクリアになっている。これであれば耳が混乱しなくなる。

12 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 21:38:38.36 ID:y+EBojRc
 念話に音声だけではなく、映像信号をも載せて送ってくる。これを復号すれば直接情景を思い浮かべることができる。
 エリーが映像のデコーダを提示すると、リインフォースの姿をした幻影はただちにその形式に合わせたデータに信号を組みなおして送ってきた。
 人類が使う符号化方式、量子化方式などすべて知っていると言うかのようだ。

 エリーに見えたのは、かつてまだ惑星TUBOYが生命を持ち、水と緑の惑星だった頃の光景だった。
 空に舞うのは、あの人型機動メカ──エグゼクターである。
 宇宙空間から単独大気圏突入をしてきたエグゼクターは、対流圏まで降下すると主翼を展開し、戦闘モードに入る。脚部内に格納されたハンドガンを取り出し、惑星TUBOYの地上へ向ける。
 地上の森林や渓谷に隠されていたバイオメカノイドたちが、空を見上げて現れる。
 さまざまな姿をしたバイオメカノイドは、それぞれに武器を構え、エグゼクターを狙って撃つ。迎撃している。

 エグゼクターは、惑星TUBOYに由来する兵器ではないというのだろうか。
 惑星TUBOYの住人が、暴走したバイオメカノイドを止めるために作ったものではないというのだろうか。

「この宇宙船は──“スピンドリフト号”──?」

 軍艦ではない、民間船舶だろうか。船体の腹に書かれた船名の綴りは、“Spin Drift”とある。
 おそらく英語である。ミッドチルダ語ではほぼ似た書体のアルファベットで綴り、そしてこれは最初に惑星TUBOYに派遣されたカレドヴルフ社の輸送船の名前でもあった。
 ただし、今見えている船は、同社のものではない。
 スピンドリフト号は、青い海と白い雲を纏ったかつての姿の惑星TUBOY上空を周り、軌道上から戦闘の様子を監視している。

 やがて、惑星の夜の面から、もう1隻の艦が姿を現した。

「インフェルノ──!」

 赤い、楔形をした船体。
 外部に露出した艦上構造物を極力減らしたデザインは現代の次元航行艦にも通じるフォルムである。
 しかしその船体は、今エリーたちがいるはずのインフィニティ・インフェルノと見比べると明らかに小さく、また武装も少なく見える。

「これはかつての──まだ惑星TUBOYの住人が生きていた頃──?いや違う、最初の戦役があった頃──」

 惑星TUBOYの地表で発見された化石、破壊されたメカの残骸、土壌サンプル、そしてCW社が入手したエグゼクターのボイスレコーダーなどのデータから、この惑星はかつて大規模な宙間戦闘を経験したという予測が立てられていた。
 今見えているのはその頃の光景である。おそらく1万数千年は昔の時代──その頃には、古代ベルカ文明もまだ興っておらず、人類は原始時代を生きていたと、従来は考えられていた。
 しかし、一見してオカルトの領域であった宇宙考古学などの分野から出現してきた超古代文明仮説は、ロストロギアに分類されるオーパーツの発見によりその信憑性を急激に高めている。
 現代では滅んでしまった超高度技術文明が、かつて存在した。
 現代の人類にロストロギアを遺した文明は、かつてこの星で、バイオメカノイドたちと戦った。

 その戦争の終結がどのようにしてなされたのか──ミッドチルダだけではない、どこの次元世界の考古学者もまだ誰も知らないことである。

 スピンドリフト号は、あくまでも非武装の調査船のように見える。
 インフェルノは、この当時の船体でも、強力なビーム兵装を搭載した戦闘艦だ。

 やがてインフェルノ艦内で、動力炉か、制御装置か、とにかく内部から破壊された大爆発が生じ、エグゼクターが脱出してきた。
 制御を失ったインフェルノは、炎の尾を引きながら惑星TUBOY上に墜落していき、そしてエグゼクターはスピンドリフト号へ戻る。
 エグゼクターを収容したスピンドリフト号は、インフェルノが破壊されたことを見届けると、エンジンを噴射して軌道を離れ、宇宙のかなたへ消えていった。

 スピンドリフト号が去った後、惑星TUBOYが夜を迎えたとき、軌道上に小さな物体が周回しているのが見えた。
 それは破壊された別のエグゼクターの機体だった。惑星TUBOYの衛星を分析した当初の予測通り、バイオメカノイドとの戦闘で撃破されたエグゼクターが、惑星TUBOY上で人工衛星となって周り続けていたのだ。

13 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 21:41:26.07 ID:y+EBojRc
 スピンドリフト号──かつて1万数千年前の戦いで、インフェルノを撃沈した船──それは、いったいどこの星の住人のものなのだろうか。

 エグゼクターの機体のコンピュータには、彼らの母星のデータも収められていた。
 バイオメカノイドたちは、かねてより惑星TUBOYに接近していた探査機を撃破して入手した情報によって、彼らが、自分たちバイオメカノイドが侵攻予定だった惑星の住人であると確認した。
 宇宙船スピンドリフト号がやってきたことで、探査機を破壊したことによって自分たちの侵攻作戦が察知され、その阻止のためにエグゼクターが送り込まれたのだということを知った。
 それは、清黒の海と、碧色の大気を持つ、宇宙の瞳のような惑星である。
 次元世界全体を見渡しても他に類を見ないほどの、極めて高度な科学技術文明を持つ世界。

 時空管理局が“第97管理外世界”と呼ぶ惑星──地球。

 超古代先史文明はかつて地球にあり、そして惑星TUBOYと戦いこれを撃破したのは“当時の”地球人である。
 そして1万数千年後の今、先史文明は滅んでしまったが、惑星TUBOYとバイオメカノイドたちは生き続けていた。

 仇敵であろう、地球へ再び向かうために。

 しかし、長い刻を経て、その様相も大きく変わってしまった。
 惑星TUBOYが再び目覚めるまでに、人類はいったん滅び生まれ変わっていた。
 地球へ向かっても、そこにはかつての敵は、もういない。

 侵攻プログラムは、いったん凍結され、再検討が行われている。
 惑星TUBOYは未だ生きており、これを破壊しなければバイオメカノイドたちは止まらない。

 ここでインフェルノを沈めても終わりではない。まだまだ、ごく一部の先遣部隊を撃破したに過ぎないのだ。

『──さんっ!!エリーさんっ!!』

「──!!」

 ヴォルフラムに到着したなのはが念話で呼びかけ、エリーははっと我に返る。

 エリーの目の前、あと一歩踏み出せば届く間合いに、リインフォースの姿をした幻影は立っている。
 その足元にははやてがいる。
 血液のほとんどが流失し、失血死してもおかしくない状態──それでもはやてはギリギリで、残った魔力で傷口にバリアジャケットを張りなおし、出血を抑えていた。
 そしてそれは幻影にも察知できたようである。
 幻影は左手で氷結魔法を展開し、はやての胴体を包んだ。
 皮膚表面だけが瞬間的に冷凍され、切り落とされた傷口は切断面の組織を保持したまま凍結される。

 次第に、エリーも焦燥が落ち着き、思考が冷静さを取り戻してくる。
 この幻影がはやてを斬った理由が分かってくる。

 ──彼らは、進化の末に肉体を捨て去った種族だった。
 バイオメカノイドたちの内部に搭乗していたグレイでさえ、彼らが持っていたであろうかつての肉体を模して作った結果生まれた存在であった。
 先史文明人たちは、物理的な肉体を捨て去り、精神生命体にまで到達しようとしていた。
 それが何かのきっかけで失敗し、そして精神生命体はリンカーコアという形で自らのカタチを残して、ある程度巻き戻されたところから進化をやり直すことになった。
 遺伝子操作技術を駆使して、二足歩行の人型をつくった。そうして生まれた生物が、グレイだった。
 当時の地球人類にとって、もはや肉体とは好きなように作り変え、着替えるように変更できるものであった。

 かつての地球はそこまで、高度科学技術文明を到達させ、星の海を渡り歩いていた。
 もっと後になってのことだと考えられていた、ミッドチルダへの地球系民族の移住──それが、次元世界成立の極初期まで遡ることになる。

 はやての体内にある、2個のリンカーコア──バイオメカノイドはそれを目当てにした。
 夜天の書の主に選ばれ、リインフォース・ツヴァイを生み出した源となった稀有な魔力資質。
 魔力資質の高い人間とは、すなわちより先史文明人に近しい存在ということである。

14 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 21:45:41.06 ID:y+EBojRc
 邪魔な肉体を削ぎ落とし、より純粋な存在になれ。

 バイオメカノイドたちの、渇望が見える。

 人間にとっては異形にしか思えない、金属と無機質の身体を纏い、冷たい宇宙を漂っていた惑星TUBOYの“生命”たち──
 彼らにとって、次元世界人類の来訪とはまさに神の再臨にも等しかったであろう。
 自分たちの目指すべき約束の地は未だ失われておらず、そこを目指す旅路につくことが可能である。
 惑星TUBOYが目覚めるとき、それは彼らの生命圏の拡大であり、そして同時に人類にとっては外宇宙からの侵食となる。

 四肢の切断面を凍らせたのは、残った胴体だけでリンカーコアを維持するためである。
 この状態では、下手に治癒魔法をかけてしまうと傷口が歪に再生してしまい、かえって治りが悪くなる。
 リインフォースの姿をした幻影は、はやてを殺そうとしたのではない。リンカーコアだけの状態にしようとして、自分たちと同じ状態にしたうえでの会話をしようとしたのだ。

「だからって──!」

 リインフォースの姿をした幻影が、表情を穏やかにしたまま首を傾げる。
 バイオメカノイドには、外見を似せることはできても仕草までは真似られない。

「だからって、黙って言いなりにはなれない──!!」

「副長!!危険です、下がってください!」

 念話ではなく肉声で、CICの当直についていたレコルトが艦橋の窓から呼びかけてくる。

「ハラオウン艦長が来ます、下がって!」

「黙ってくださいガードナー!!私は、艦長を──ッ!!」

 リインフォースの姿をした幻影が、再び触手を突き出す。
 エリーのバリアジャケットは一般的な海軍士官用のもので、はやてのもののような強度はない。接触すれば間違いなく貫かれる。
 これに打ち勝つことが人間にはできない──

「ッッ!!」

 触手が、直前で異層空間から実体化し、エリーの身体を物理的に突き飛ばす。
 貫通せず、直接触れて打撃を加えた。

 突き飛ばされたエリーの身体はヴォルフラムの甲板に、滑りながら倒れる。
 触手がヴォルフラムの甲板を追撃で叩き、その衝撃で弾き飛ばされていたはやての腕や脚が、跳ねて艦の舷側に転がり落ちていった。とっさにバインドを放って捕まえようとするが、追いつけない。
 エリーが甲板に背中を打ち付けると同時に、はやての手足はヴォルフラムの船体から落ちていってしまった。腕から離れて転がっていたシュベルトクロイツだけが何とか拾うことができた。

 右腕で受身をとりながら体勢を立て直そうとしたエリーの目に、白い矢が走るのが見えた。

「スティンガーレイ・アイシクル──!」

 1本だけ飛んできた長大な氷の矢が、リインフォースの姿をした幻影の中心を、寸分違わず貫いた。
 幻影は冷却によって強度が落ち、自重で砕けるように崩壊する。
 細かい粒になって自然に溶けても、もはや魔力結合を保てるエネルギーを残していない。

 はやてを抱き起こし、振り返る。
 艦尾を向けてドラゴンの攻撃から庇うように陣取ったクラウディアと、魔法陣を展開して空中に立つクロノの姿があった。

「スピードスター三佐!八神艦長を本艦へ収容する、シグナム一尉と同時に処置をする」

「ハラオウン艦長!」

「君はヴォルフラムの指揮を引き継げ!今、竜に目を付けられたらひとたまりもないぞ!ウーノ、敵を牽制しろ!現在本艦ヴォルフラム共に動けん、一発も撃たせるな!」

15 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 21:48:56.41 ID:y+EBojRc
 念話でクロノはクラウディア発令所へ指示を出す。それにこたえ、クラウディアが艦を回頭させて5インチ速射砲による全門射撃の態勢をとる。
 大型魔導砲は発砲時の余剰魔力の噴出が激しいため、甲板員などへの被害を避けるためシールドが必要になる。もちろん、周囲にむき出しの人間がいる状態では発砲できない。

『了解です。バウスラスター始動、面舵30度、艦を回頭。砲塔旋回、右舷指向方位3-0-0』

 クラウディアの5インチ速射砲が連続発射され、ドラゴンの3つの首をそれぞれ叩く。プラズマ弾はドラゴンの口からブレスのように発射されることが判明しているため、首をこちらへ向けさせなければ攻撃を回避することが可能だ。

 クロノが不在の間、艦の指揮は副長であるウーノがとる。
 なのはにとっては、かつて戦闘機人ナンバーズとして戦い、敵であったはずの彼女が、自分の知り合いの艦に乗り組んでいるというのはこれも驚くべきことであった。

 インフェルノの後部へ退避していたミッドチルダ・ヴァイゼン連合艦隊の旗艦リヴェンジから、クラウディアとヴォルフラムに対し入電が届いた。
 破口周辺で外部観測を行っていた偵察機が、地球からの迎撃機と思われる機体の発進を確認した。
 念のため、戦闘配置のまま警戒を継続する。

「クロノくん、地球の戦闘機が!?」

「ロケット機かどうか──こちらクラウディア、発進した機体の識別は可能か!?」

『こちらリヴェンジ、偵察機の報告によるとおそらくジェット戦闘機とのことだ、今映像を送る』

 クロノの手元に、偵察機から撮影された地球戦闘機の映像が送られる。
 なのははレコルトの後を追って艦橋に出て、エリーを迎えている。

「──なのは、これを見ろ」

 クロノはなのはにも映像を転送した。
 雲海をはるか下に見送り、青い炎を噴いて飛ぶ機体が見える。
 なのはははやてほどには兵器に詳しくはないが、昔、父である高町士郎が持っていたアルバムの中に、これと同じ機体が映っていたのを覚えていた。

 現在でも現役で運用されているものとすれば、それは一つしかない。
 ミコヤン・グレビッチ設計局が造り上げ、ソビエト連邦防空宇宙軍が擁する、2023年現在、地球上で唯一の宙間戦闘が可能な機体。

 “MiG-25SFR Starfox”。

 MiG-25迎撃機をベースにエンジンを標準の低圧縮ターボジェットから熱核ロケットエンジンに換装し、酸化剤なしでの燃焼を可能にしている。
 ソ連ではこの技術をもとに、EUアリアンスペース社と共同で初のSSTO(単段式軌道往還機)を開発し、ソユーズ宇宙船と共に軌道上宇宙ステーションへの低コストな打ち上げシステムを実現している。

「間違いありません。地球の、ソ連の戦闘機──実用上昇限度無限大、事実上宇宙まで行ける戦闘機です」

『では地球は我々を──いや、インフェルノを迎撃しようと』

 クロノはクラウディアへのはやての収容作業と並行して、ミッド艦隊との通信を行う。

「いや、いかに宇宙戦闘機といえども単独で戦艦とはやりあわんだろう。これはあくまでも偵察だ。インフェルノがどのような軌道をとっているかは地上からの観測でもわかる。
地球に激突しないように軌道を変えたのなら敵の動きはある程度読める──減速して軌道に乗ってから、攻撃なり降下なりを行うということだ。
少なくとも地球人はこの巨大戦艦が恒星間マスドライバーキャノンの弾丸でないということは理解したはずだ」

 エリーははやての胸に、待機状態に戻したシュベルトクロイツを提げさせた。
 もはや血液量の減少により頬はとても冷たくなっている。だが、命はまだ残っている。

「エリー──わたしも見たよ、やつらの心を──」

「艦長、しゃべっちゃダメです、体力が」

「悔しいんや──人間の定義なんてそいつの主観で簡単に揺らいでまう──やつらは、人間を殺したとは思ってへん──
やつらにとって人間とはグレイ、バイオメカノイドのことなんや──!ホモサピエンスはやつらにとっちゃ、祖先かもしれんが人間やあない──
私やエリーに話しかけたのも、人間やない相手にどうにか言葉が通じるかもしれんと向こうが期待したからや──わたしらが試すのとおんなしように、異種族への対話をこころみたんや──
──そんな、そんな信頼のされ方なんか、されたってちっともありがたくもあらへん──!!」

16 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 21:51:38.87 ID:y+EBojRc
「はやて、気をしっかり持つんだ。すぐに処置をする」

「クロノくん──ああ、私はまだ地獄におちてへんな──」

 速射砲でドラゴンを牽制しながらクラウディアが艦を寄せ、クロノはクラウディアの後部艦載機ハッチへはやてを抱えて飛び上がる。
 それを見届け、エリーはヴォルフラムの艦橋へ急いだ。

 リインフォースの姿をした幻影は溶けて消え去り、甲板にははやての血が、血だまりをつくってゆっくりと艦の傾きに沿って流れ落ちていっている。

 操舵席は無事だった。フリッツが舵輪を握り、ルキノは機関室へ向かいエンジン操作を手伝っている。

「副長、スバルさんたちの班を収容しました!いつでも飛び立てます!」

「オーケイルキノ、フリッツ、舵を」

「まかせてください副長!」

 艦橋に戻ったエリーは、艦内放送のスイッチを入れる。

「こちら副長、艦長負傷につき現刻より本艦の指揮を代行します!機関室へ、エンジン始動、方位ベクトルを反転、アップトリム一杯機関逆進!浮上します!」

『了解、機関逆進よし!』

 飛行魔法が起動され、ヴォルフラムの艦体がゆっくりと身震いし、再始動する。
 微速で後進をかけ、頭からインフェルノ内壁に突っ込んだ状態から浮上をかける。みしり、みしりと艦がきしみ、フリッツは艦体構造に無理がかからないよう細かく艦の姿勢を調整する。

「アップトリム10度に修正」

「アップトリム10度よし、艦尾が浮き上がります!」

「よーしよしその調子だ……いけっ!」

 電測室で、ヴィヴァーロが艦の姿勢をモニターする。その情報をもとにエリーは操艦を指令し、ルキノとフリッツがそれぞれエンジンと舵を操作する。

「バウスラスター右舷全速、艦傾斜右15度!艦首を持ち上げてください!──、今!機関前進取舵一杯!反転上昇!」

「おっし……取舵一杯、アイ!おっりゃああ!」

 エンジンノズルから展開される飛行魔法のフィードバックが舵輪に伝わり、フリッツが気合をこめて舵を左へ切る。
 右に傾きながら浮上したヴォルフラムは、バウスラスターを使っていっきに艦首を左へ振り上げ、インフェルノ内壁を離れる。

 後方へ付いていたクラウディアも、ヴォルフラムが再浮上に成功したことを見て取り、ドラゴンへ止めを刺すべく戦闘位置へ進出していく。

「再浮上完了!艦底が内壁を離れました!」

「よろしい電測長、レーダーの作動状況は!?」

「対空警戒レーダーアレイは4面中、前方の2面が潰れました、ですが射撃管制装置は生きてます、マニュアル入力なら主砲を撃てます!」

『こちらCIC、2番主砲はユニットは無事ですが揚弾装置の故障でカートリッジロードが追いつけません、連続射撃はできないですよ』

「それだけ生きてれば十分です──」

 現在のヴォルフラムは、各種装置の損傷により使用可能な兵装も減り、エンジンも全力を出せない状態である。
 積極的な戦闘はできないが、それでもエリーには自信があった。
 主砲1門があればドラゴンの攻撃をしのぎ、脱出することが可能である。

 スバルたちが回収したグレイの遺体を持ち帰り、分析する。
 ここで一度、ヴォルフラムは本局へ帰還する。現在の状況では、このままインフェルノと交戦することは不可能である。
 地球近傍での戦闘は、地球上に被害をもたらす危険から大規模には行えず、破壊するにはできるだけ地球から離れたところで行わなくてはならない。

17 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 21:53:51.75 ID:y+EBojRc
 インフェルノの船体規模では、完全に破壊するにはまず次元潜行能力を奪わなくてはならない。これがある状態ではアルカンシェルの威力が大きく減衰されてしまう。
 次元潜行さえできなくすれば、通常出力のアルカンシェルで破壊、ないしは地球大気圏で安全に燃え尽きる程度の大きさの破片に崩壊させることが可能である。

 もちろん、次元潜行状態でも無理やり破壊できるほどの攻撃──アルカンシェルであろうと通常の魔法攻撃であろうと──を行えば、地球だけではなく太陽系ごと吹き飛ばしてしまうだろう。

 ミッド艦隊では、空母から攻撃機をインフェルノ内部に突入させ、艦載魔導師による上陸戦を行う準備をしている。そのために艦隊の各艦では上陸する兵の選抜を行っていた。
 全長数十キロメートルという、大都市に匹敵する規模の空間を捜索し、制圧しなくてはならない。
 空母や揚陸艦に乗り組んでいる陸戦隊だけではなく、小型の巡洋艦でインフェルノ内部の構造を掘り進み、道を作るという作業も必要になってくる。

 インフィニティ・インフェルノの外殻が、次元航行艦の存在を地球から隠してくれる。
 地球の目から逃れながら、地球のそばで戦うという、奇妙な状況である。

 ミッドチルダ・ヴァイゼン連合艦隊の兵員たちもようやく、これが管理外世界での作戦であり、自分たちの存在さえ知られてはならない世界へ踏み込んでいるということを理解しつつあった。



 謎の巨大宇宙船──地球との距離が38万キロメートルを切り、肉眼でも地上からの観測が可能になりそれは小惑星ではなく人工物であると認識された──は、地球大気層に接触して大きく減速を行い、圧縮衝撃波による巨大な炎の雲を纏って大西洋上空に現れた。
 長い部分で100キロメートル以上に達する大きさと、その全体を包み込む電磁妨害フィールドは、通信衛星などに電波障害を引き起こしていた。

 ソビエト連邦防空宇宙軍はこの事態を鑑み、偵察目的の迎撃機を発進させた。
 高度270キロメートルから撮影された巨大宇宙船は、赤い楔のような船体を持ち、地球上のあらゆるテクノロジーと隔絶しているように見えた。

 これは紛れもなく、異星人の乗り物である。

 既に地球接近の5時間ほど前から減速を始めており、地球軌道への進入が目的であるとみられた。
 外宇宙航行速度に近い猛スピードで飛んでくれば、地球をすり抜けてすっ飛んでいってしまう。
 減速した上で地球重力圏に入り、周回軌道に乗る。測定された速度から、巨大宇宙船のとる軌道は遠地点がおよそ40万キロメートル程度になる、対地同期軌道への進入を図っていると推測された。

 南側から地球へ向かってきたので、近地点が北半球、遠地点が南半球を見ることになる、いわば逆モルニヤ軌道ともいうべき場所である。

 北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)では、巨大宇宙船に対する地上からの核ミサイル攻撃が可能かどうかを検討していた。
 大出力の核兵器を宇宙空間で使用する場合、距離が近すぎるとシールドされていない衛星が強力な放射線を浴び、電磁パルスのエネルギーによって電子機器の故障を起こす危険がある。
 そのため、ヴァン・アレン帯の外で命中するように発射すべきとされた。
 また、発射可能なプラットフォームとして、大重量の弾頭を搭載可能なソ連のR-7、R-39、アメリカのピースキーパー、トライデントミサイルが候補にあげられた。これらは地上基地または潜水艦から発射される。

 一つ目のプランとして、巨大宇宙船が逆噴射による減速を行っている間に攻撃することが考えられた。
 地球への接近を許さず、あくまでも地球に衝突する危険のある物体を迎撃するための攻撃である。

 しかし、巨大宇宙船が軌道変更を行ったことでこのプランは不可能になった。
 相手は地球への衝突を避けようとした。そこへの先制攻撃は過剰防衛である。もし相手が知的文明を持つ種族であったなら一方的な攻撃はなおさら行えない。

 算出した軌道をもとにミサイルの発射諸元を計算し、常に巨大宇宙船の追尾を続けることが決定された。

18 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 21:57:00.65 ID:y+EBojRc
 とにかく相手の目的が何かを突き止めなくてはならない。
 友好的な訪問なのか、それとも攻撃か。
 もし攻撃が目的であるのなら、市民の安全を図らなくてはならない。
 宇宙からの攻撃に対し有効な防御手段が存在するかどうか──アメリカはそれ以前に、他の核保有国へ対し巨大宇宙船への攻撃をしないよう要請しなくてはならなかった。
 疑心暗鬼に駆られた小国が、反射的にミサイルを撃ってしまうかもしれない。
 そうなれば、どこの国が行ったことであろうとそれが地球人の総意ととられてしまう。

 毎年何本もつくられるハリウッド映画のように、そう簡単には地球はひとつにまとまってはくれない──事態を知らない人々が年忘れの祭事に浮かれる中、アメリカ国務省の外交官たちは慌しく各国の大使館を回ることになった。

 ボイジャー3号は、遭遇した惑星の観測を継続し、現在地球に接近している巨大宇宙船がそこから発進してきたことをほぼ確定した。
 巨大宇宙船の周辺を漂う岩石のスペクトルと、惑星のスペクトルを比較した結果、組成が一致していた。
 すなわち巨大宇宙船はあの惑星から飛び立ったということである。

 12月28日、国際天文学連合(IAU)は、ボイジャー3号が発見した新しい系外惑星を“キグナスGII”と命名し、NASA及びアメリカ政府、国防総省へ報告した。
 算出されたキグナスGIIの物理的性質は直径4530キロメートル、質量は地球の93分の1、主星からの平均距離2億8千万キロメートルの楕円軌道を周るエキセントリックプラネットである。
 この惑星が存在する宙域は地球から見ると天の川銀河のはくちょう腕の先にあり、距離はおよそ170万光年である。
 観測される電磁波が可視光よりも赤外線領域に偏っていることから、暗黒銀河によって隠されているため地球からは見えにくい場所であると予想された。

 FBI捜査官マシュー・フォードはロンドン郊外の草原の中のロッジへ赴き、連絡を取っていたある人物と待ち合わせていた。
 その人物は、かつて異星人の宇宙船による誘拐──アブダクションを経験したとされる男である。

 彼は以前に接触した別のFBI捜査官の調べに対し、およそ半年間、異星人の母星に滞在し、その行き帰りで異星人の宇宙船に乗ったと話していた。
 異星人は地球人に比べてのっぺりとした丸い顔立ちをしており、色素の薄い皮膚、原色の頭髪など、特徴的な風貌を持つ。
 体格は地球人よりも細く、頭部、特に眼球が大きく、背が高い者が多い。

 そして何より、異星人は超能力を持っている。彼らの携帯する武器は光線銃や熱線銃が主体であり、また浮遊・飛行能力まで持っている。

 音もなく、風が木のドアを動かすように現れ、黙ったまま、テーブルに着く。
 フォードの目の前に現れたその男は、意識が今も宇宙のかなたに取り残されているかのような、抑揚のない声で言った。

「連中はいくつもの星を従えているんだ。地球だって例外じゃない。地球が妙なことをしなければ向こうから手は出さないと俺に言ってくれたんだ」

 地球よりも数段上の科学技術を持った知的文明である。またそうでなければ、地球にまでやってくることはできないだろう。
 地球には、問題の異星人たちがすでにかなりの長期間にわたって滞在している。
 フォードが今回、この男に会うのを決めたのは、その異星人たちから、アメリカ政府に対し申し入れがあったからだ。
 ブレイザーがフォードへ手紙を送ってまもなく、アメリカ国家安全保障局(NSA)が対地球外文明交渉プログラムを開始した。
 地球に滞在している異星人からもたらされた情報として、未知の脅威が地球に迫っている。

 既にフォードには、ブレイザーからの手紙とは別に、今回の事件に対するアメリカ国防総省の計画に基づく指令が下されていた。
 すなわち、アメリカは独自に異星人とコンタクトをとり、技術交換の確約を取り付ける。
 異星人たちが求めた見返りとして、彼らの組織に対する地球人の参入を要請する。ついては、彼らの組織に敵対ないし反抗しようとする個人ないし組織の行動を、いかなる手段を用いても阻止せよ──というものである。

 つまるところ、地球にはもはや件の異星人の組織──“ビュロー”に参入するより他の道はないということである。
 もし地球が拒むのなら、地球人は永遠に宇宙へ飛び出すことはできず、この小さな星にへばりついたまま、資源を使い尽くして干からびる未来しかない。

19 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 21:59:07.07 ID:y+EBojRc
 宇宙空間は既に異星人たちのテリトリーである。
 外宇宙へ飛び出す能力を持たない世界は、なぞらえるならば交易を行わない原住民族のようなものである。
 外に出ようとしなければ害はないが、外に出ればたちまち遭難してしまう。

 国防総省以外にも、NASAでチーフディレクターを務めるシェベル・トルーマンが、個人的にフォードに知らせてくれたことである。
 このタイミングで異星人が地球にコンタクトをとってきたのは、地球人が外宇宙に出る手段を実現したからである。
 トルーマンの管轄しているプロジェクトは、無人の宇宙探査機をワープ航法を用いて天の川銀河の外へ送り出すことに成功し、そこで新惑星を発見した。
 そして、その惑星から飛び立った無人兵器が、地球へ向け航行中である。

 もたらされる被害の大きさから、地球人への警告が必要であると判断した──というのが、国防総省を通じて伝えられた異星人の言い分である。

 過去十数年間、アメリカやヨーロッパを中心とした先進国において発生していた行方不明事件を、フォードは独自に分析していた。
 不可思議な超常現象に巻き込まれたとしか思えない──今目の前にいる男も当時はそう言われただろう──人間の失踪、そのおよそほとんどが、彼ら異星人の仕業であると考えていた。
 一見して地球にとって有利な材料に見える、彼らの組織への地球人の参入という条件も、今回の件を通じて事実上合法的に地球人を彼らの星へ連れ去ることを可能にせよという意味であろう。

「──魔力、だ」

「魔力?」

 男は、鎖骨の付け根辺りを指で示しながら言った。

「連中は、色んなエネルギーを魔力と総称して呼んでいるんだ。電力も原子力も化石燃料も、連中は一緒くたに魔力と呼ぶ。そして連中が言うには、そのエネルギーは、人体から発生する──俺たち地球人は、連中よりも強いエネルギーを出せるというんだ」

「つまり地球人を電池として攫っていたというわけか」

 そう主張するのだな、とフォードは念を押した。
 国防総省からは、異星人は地球人との混血を要求しているとの情報がもたらされていた。かつて中世や古代のヨーロッパにも、天に召された人間というのは異星人に連れ去られた者が含まれている。
 彼らの星ではおそらく、進化によって肉体が脆弱になっており、そのために地球人の遺伝子を求めているのではないか──というのはNSAの意見である。

 とはいえ、フォードの目の前にいる男はそうは考えていないようだ。
 仮にひ弱な肉体を持つ種族であれば、たとえば地球人と腕力で勝負したら負けるだろう。
 彼らは、体力を超技術で──所謂ところの魔力で──補うことができ、さらに地球人よりも遥かに強靭に仕立てることができる。

 彼らの星は地球と比べても重力や大気組成は変わらず──少なくとも男の言い分では歩いたり跳んだりするのにも感覚は変わらず、呼吸も問題なくできたという──異星人は、あくまでも魔力をまったく取り去った場合にのみ地球人よりやや弱くなる、という程度だ。

 異星人にとって重要なのは肉体の強度ではなく、あくまでも魔力の強さである。

 地球人は、強い潜在魔力を持ちながら、それを利用する技術を持っていない。
 すなわち、魔力技術を教え、文字通りの“人材”として利用しようということである。

 異星人に魔力の扱い方を教えられた人間は、異星人のために働くようになるだろう。どんな教育手段が用いられるのかは想像に難くない。
 何しろ魔力は脳にさえ作用する。睡眠学習など必要ないほどの高効率の知識の蓄積や思考の練習が可能であり、さらに応用すれば幻覚を見せたり、刷り込みをかけることさえが可能だ。

 異星人たちの中でも、魔力だけあっても魔力を扱う技術を習得している者ばかりではないらしい。
 同じコストをかけて教育を施すならば、より魔力の大きい人間が適している……というわけである。

「ミスター・グレアムは俺に便宜を図ってくれた」

 色の落ちたデニムのジャケットをつまみ、男はその名を口に出す。

「俺だって自分がこんな目に遭うまでは宇宙人なんて信じてなかったんだ。だけど俺は実際に体験した。そしたら、自分の記憶が白昼夢じゃないかどうかを確かめるには、信頼できる人間に自分の記憶を検証してもらう必要がある」

「その、グレアム氏というのはどういった人物なのかね?」

「とぼけるのはよしてくれ」

 本当にフォードはとぼけて答えた。ギル・グレアムの行動についてはCIAとMI6がそれぞれ独自に接触と情報収集を図っており、また身辺を洗っていた。

20 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 22:03:25.34 ID:y+EBojRc
 グレアムが殺された事件では、異星人の組織内部での抗争が原因として考えられるとCIAは報告し、ブレイザーを通じてフォードに伝えられていた。
 数年前よりグレアムは自宅から滅多に出ることがなくなり、彼の自宅周辺で不審な車や黒スーツの男たちが目撃されることが時折起きていた。それまで参加していた医療福祉団体からも退き、資金の提供をやめていた。
 その医療福祉団体というのが、関連組織としてアメリカにサイバネティクス技術研究グループを持ち、実質NASAの下部組織であるという事実がある。
 彼らが研究する技術とは、すなわち異星人が持ち込んだオーバーテクノロジーだ。
 あるいは地球にたまたま墜落して軍に回収された彼らの宇宙船を調べて入手したものでもある。そして、グレアムはその宇宙船が、自分が所属している異星人の組織に関わる技術を秘めていることを当然知っていただろう。
 異星人に長年協力していたグレアムが、その協力関係を反故にするような行動を取ろうとしたため、口封じをされたという見方がある。
 彼の飼い猫が殺されていたのは、異星人は動物を人間に変身させる技術を持ち、使役していたからだ。
 グレアムと一緒に殺されていた二匹の猫は、人間の姿を持って彼とともに異星人の組織で働いていた。
 そして、彼が関わったとされる、2005年の海鳴市における事件──

 異星人の組織内部でも、この事件の事実を公表し現地政府(地球、すなわちイギリス、アメリカおよび日本)と協力して危機解決に当たろうという意見と、あくまでも秘密を守り地球人の前に姿を現すのは時期尚早であるという意見が対立している。

 知的文明を持ち、それなりの近代国家体制を標榜する組織が、彼らにとっても異星人である地球人を殺害するということは、国際問題に発展する危険があるのではないか──というのはフォードも意見した。
 しかし今のところ、アメリカとしてはギル・グレアムの行動はやはり冷静さを欠いた性急なものであり、現在の地球の状況では異星人の存在を公表するわけにはいかない、という考えのようだ。

 地球に接近した巨大UFOを迎撃しなかったことからもそれは明らかである。
 アメリカだけではない、地球の科学力や軍事力では、異星人と正面からやりあって勝つことはできない。何しろ相手は何億光年もの宇宙を自在に渡り歩く技術を持っているのである。
 太陽系の中でさえ何ヶ月もかけて低速で這いずり回るしかない地球の宇宙船では太刀打ちできない。
 そんなところに、地球の軍が手を出すことは、なおさら慎重にならなくてはならない。
 とはいえ、このまま異星人に巨大UFOの迎撃を任せ、借りを作ってしまうのはいかがなものかという意見もあることはある。
 巨大UFOの出現は、地球人に貸しを作るための異星人の自作自演ではないかと疑う声もある。

 だとしても、地球がこの事件の対策に参加するには、異星人の提示した条件──彼らの組織、“管理局”への参入が必須であることには違いがない。

 異質な価値観である。
 地球は人間を貢ぎ物として差し出せということだ。
 すでにグレアムをはじめ、地球人でありながら管理局に参加し働いている人間も少なくない数がいる。

 グレアムが殺されたのは、交渉の窓口を限定し、地球に選択の余地をなくさせる作戦ではないか──というものだ。
 ただ、もしグレアムを殺した組織が異星人のものなら、彼らの中にも、管理局に従わない勢力が存在することになる。
 彼らとしては地球人をまさに生体素材として使いたいが、管理局がそれを許してくれない。ならば独自に地球と交易を持とう、と考えるのではないかという推測だ。

 圧倒的に高い技術力を持つ異星人を相手に、彼らの組織内部での勢力争いを内偵するというのは困難な仕事である。
 同じFBI内部でも、オカルトだの何だのとうるさい捜査官がいる。彼らを何とか説き伏せ、情報を共有し分析しなくてはならない。

 フォードがウッドチェアに座って組んだ足を組みかえ、男はタバコを取り出そうとしたが手が震え、ジッポーが地面に落ちた。
 ジッポーを拾おうと身体をかがめた男のジャケットの下に、鈍色のきらめきがあるのをフォードは見つけた。

「地球を守らなくてはならないんだ」

 セーブ・ジ・アースというフレーズは、一般的には環境問題などについて語られる。
 ただしここでは、外宇宙での星間戦争の脅威から守るという意味になる。

「グレアムさんは地球を守ろうとしていたんだよ」

 抑揚のないまま、声の強さだけが上がっていく。

21 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 22:10:56.63 ID:y+EBojRc
「彼を殺したのはあんたらFBIじゃないのか!?グレアムさんは俺以外にも連中の星へ行った人間をたくさん知っている、アメリカ人もイギリス人も日本人も、男も女もたくさんいる。
もう地球は連中に支配されているといっても過言じゃないんだ。だっていうのにあんたら政府は、何てことをしてくれたんだよ!」

 舌をもつれさせながら、男は立ち上がりジャケットの裏側から拳銃を抜いた。
 口径の小さい、小型の護身用拳銃である。しかしこの至近距離であれば防弾着など意味を成さない。
 眼前に突きつけられた、鈍く光る銃口をフォードは見透かし、男の顔を見据える。

 銃口から眉間まで、1フィートもない。
 テーブルを挟んで向かい合い、右腕を伸ばす男の拳銃が、フォードの顔の前で震えている。

「答えろ!」

 男の顔に浮かんでいる感情は、恐怖だ。
 異星人たちの乗る宇宙船には、地球を一撃で焦土に変えられるような武器が積まれている。もし地球人が刃向かってくるならこれを撃つぞと脅すことができる。
 実際にそれをやるかはともかくとして──だ。

 国防総省が言うには、異星人はきわめて紳士的な振る舞いをしている、とのことだ。
 もちろんフォードとて彼らの言うことを頭から信用しているわけではないが、星間文明を築くことができる程の種族なら当然国家運営に長けていてしかるべきであり、たとえその志向が外征主義であったとしても表面上はそれを隠すだろう。

「私はそれを捜査するために君に話を聞きにきたのだ」

「ぐ……!」

 男の指がトリガーにかけられ、握られる手で銃身が揺れる。

 乾いた発砲音と共に、ガラス質の砂がはじけるような音が響いてフォードの目の前に閃光が生じた。
 空間に浮かび上がった光の膜のようなものに、撃ち出された銃弾がめり込み、空中で止まっている。

 やがて光が薄れ、銃弾は頭をひしゃげさせて床に落ち、湿った木材の音を立てて転がった。

「──」

「“連中”も、グレアム氏のことは痛く受け止めているんだ」

 頭で理解してはいたが、実際に自分に向かって撃たれるというのは恐怖である。
 冷や汗を気取られないように、フォードは静かに声を抑えて言った。
 男は震え、あごが定まらないまま言葉を失って、銃を取り落とした。

 フォードは椅子から身を乗り出し、銃のマガジンを外して弾を抜き、安全装置をかける。

 男は椅子に身体を戻せず、床にへたり込んだ。

「貴重な話が聞けた。──“捜査への協力、感謝します”」

 決まり文句を述べ、フォードはロッジを後にした。

 草むらをしばらく歩き、最寄の農道に止めていた車に戻ってくると、フォードをここに案内した若い男が、車のそばで気配を消して待っていた。
 彼らは、異星人の組織──管理局に所属する人間である。地球人ではない。
 今回の事件を聞きつけ、地球での捜査を命じられて赴いてきたのだ。

「どうでしたか」

 男はフォードに聞いてくる。見たところ年若いが、背丈はフォードと同じくらいはある。
 欧米系の顔立ちには見えない。時折、町の本屋に並ぶオカルト雑誌に「宇宙人の顔」として載せられるいかさま写真のものともやはり似てはいない。
 一見して人間だが、どこか違った雰囲気はある。

「完璧に作動してくれたよ。この──デバイスというやつは」

22 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 22:17:09.77 ID:y+EBojRc
 フォードはスーツの襟をめくり、縫い付けておいた金色の金属チップのような部品を見やる。
 特別に使用が許可された、異星人のオーバーテクノロジーによって製造された装置である。
 これを用いて、いわゆる魔法を使うことができる。
 ただし、何もしなくても勝手に発動してくれるものだけではなく、自分の意思で発動させるためにはそれなりの訓練がいる。

「彼は?」

「ウェンディがやっています。──終わったようです」

 男のほうが草むらの向こうを腕で示し、フォードが振り返ると、ここにフォードを案内してきたもう一人である若い女が、フォードの後を急いで追ってくるところだった。
 こちらはやや小柄だが、体つきはやはり地球人とは微妙に違う。違和感がない程度に偽装──もちろん魔法を用いて──できるらしいが、人間の第六感というのか、なんとなく違うという程度は嗅ぎ取れる。

「処置はばっちりッス。マシューさんがアイツと会ったことも、アタシたちがここに来たことも、アイツはなんにも覚えてません。アタシたちは今日この時間、ここにはいなかったってことになるッス」

「流石の手際ですね、──ウェンディ執務官補、でしたか」

「慣れてるッスから」

 執務官とは、異星人たちの星間国家を取りまとめるための組織、時空管理局における役職のひとつである。
 さまざまな惑星において、星間国家に参加しているか否かを問わず、事件の捜査を行う。
 地球でいうインターポールのようなものだろうか、とフォードは思った。ただし、その職務ははるかに困難が伴うものであるだろうことは想像に難くない。

 フォードが束ねているFBIのセクションでは、イギリス国内における異星人たちの活動をサポートすることになっている。
 すでにブレイザーが手紙を送ってきたとおり、アメリカは大西洋上で、長年研究してきたUFO──エイリアン・クラフトの技術実証試験を行う予定である。
 その上で、アメリカ国内に滞在している異星人たちに対する、地元警察や探偵気取りの民間人などからの警護を行うことになる。

 異星人の男のほうは、エリオ・モンディアルと名乗った。
 イタリア系の名前ではあるが、彼自身がイタリア系人種の外見を持っているわけではない。
 ヨーロッパ人というには顔の造形は彫りが浅く、かといってアジア系でもない。
 特に特徴的な頭髪は、エリオもウェンディも、一般的なメラニン色素による赤髪ではありえないようなあざやかな発色だ。これも、魔法を使って目立たない色に偽装している。

「では行きましょう。あの男の話から、ミッドチルダが独自かつ秘密裏に地球へのコンタクトをとっていたことが判明しました。
これは次元世界連合の人道協定に違反する行為です──自分たちの技術的優位を利用して、地球人を誘拐していたことになります」

 用意していた黒塗りのセダンに乗り、エリオが運転してフォードは助手席に、ウェンディは後席に座る。
 郊外の草原ともなると、通りがかる車や人間は少ない。ここももともとは牧場の一角だったらしいが、地主が土地の管理をしていなかったらしく手入れがされておらず、誰も近寄らない場所になっていた。

「次元世界連合、というのはあなたがたの所属している──国際連合と考えてよいのですか」

 セダンを走らせるエリオに、フォードは尋ねる。
 静かな走行音の車内では、落ち着いて、会話をすることができる。

「ええ。僕らの住む世界はいくつもの星があります。人間が住んでいる星だけでも50以上、また植民惑星も同じくらい」

「われわれの地球もその中に」

「いいえ、こちらから人間の住んでいる星を発見しても、基本方針としてコンタクトはとりません。彼らが外宇宙へ進出する技術を持って初めてその星の住人に僕らの姿を明かします。
これは僕ら管理局内での呼称ですが、次元世界連合に加入し、かつ軍事相互管理条約を結んでいる星は管理世界といいます。
そうでない星は管理外世界と呼ばれます。他にもいくつかの分類はありますが、おおむねこの2つの区分けがあると考えていただければ結構です」

23 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 22:24:20.66 ID:y+EBojRc
「地球は管理外世界であると──そうすると、先ほど仰られたように地球は未だ外宇宙航行技術は獲得していませんから、本来であればそちらから接触を持ってくることはなされないはずだった」

「そうです──もし何らかの事件が起きてその対処をしなければならない場合も、現地住民、この場合は地球の方々に、僕らの活動や存在が知られてはならないのです。
機密情報の漏洩のみならず、他の惑星の住人に無用の混乱をもたらすことは人道的に避けるべきことです。
しかしながら、協定違反を犯して管理外世界への接触を持とうとする企業や非合法組織は後を絶ちません」

「──やはり、どれだけ技術が進歩しても人の心はそう変わらないものなのですな」

「仰るとおりです」

 フォードたちももちろん、地球ではアメリカ政府などが中心となり、異星人の来訪に備えた対応方法の検討というのはこれまで行ってきた。
 イギリスなどは、寄せられるUFO目撃報告に対して空軍が公式にコメントを出すなど、政府間でもけして荒唐無稽なフィクションの世界の話、と切り捨てていたわけではない。

 ただし、まだまだ一般市民の理解は得にくいものであるのも事実だ。

 オカルトや陰謀論を扱ったドラマや小説で描かれるように、非公開組織が極秘裏に接触を持ち、異星人の存在を国民に隠蔽するというのは、“常識的に考えれば”そうせざるを得ないものである。

 地球における異星人来訪の伝説は、それこそ有史以前から存在する。
 数千年の昔に存在した古代文明も、他の星からやってきた者たちに技術を教えてもらったのではないかと思えるほど、その時代を考えれば高度すぎるほどの文明が突如として出現しているのである。
 そしてそういった文明は、天から降りてくる神々を、神話として語り残している。
 あるいは彼らは本当に、他の星から技術を持ってやってきた者たちだったのかもしれない。

 こういったいわゆる超古代文明については、異星人たちの星でもまさに解明途上のものだとフォードは聞いた。
 その過程で、彼らでさえも扱いに困るようなものが発掘されてしまうこともある。

 地球にも過去には、そういった物体が事件をもたらしていた。

「私の捜査していた件は、もちろんそちらに情報があるのでしょうな」

 エリオとウェンディは、ここイギリスにおける、管理局次元航行艦隊元提督、ギル・グレアム爆殺事件の捜査のために第97管理外世界を訪れた。
 地球に到着してすぐにインフィニティ・インフェルノの再起動と浮上が判明し、哨戒艦が撤退してしまったため、二人は当分地球にとどまらざるを得ない。
 グレアム提督の名は、エリオもよく聞いたことがあった。
 幼少の頃、エリオを実験施設から救出し、保護してくれた執務官フェイト・T・ハラオウンが、嘱託魔導師として初めて担当した事件の当事者であった。

 地球で発見された第一級捜索指定ロストロギア“闇の書”の封印のため、管理局はリンディ・ハラオウン提督の指揮のもと次元航行艦アースラを派遣した。
 闇の書の起動に先立って活動を開始していた守護騎士システムヴォルケンリッターと交戦し、幾度かの戦闘の末、闇の書を暴走させていた元凶である自動防衛プログラムの破壊に成功した。
 これによって闇の書はその機能の大部分を失い、最後の主となったはやてのもとに、デバイス1個ぶんの欠片を遺して消滅した。

 現在、はやてが使用している夜天の書は残されたデータをもとに新たにつくられたものである。
 守護騎士システムを用いてリインフォース・ツヴァイを作成したとき、既につくられていた4人のヴォルケンリッターのデータの中に、本来の夜天の書のバイナリが残されていることがわかった。
 機能としてはおそらく、万が一夜天の書自体が致命的な損傷を負う事態に備えて、分散バックアップをとるように設定されていたものと思われた。
 ただしソースコードではなく機械語に変換されしかも圧縮された状態であったため、どのような機能がありコアのどの部分に組み込まれていたのかがわからなかった。
 このバイナリを解凍し復元するには、本来の夜天の書に備わっていた自己修復機能が必要であり、またその機能がはたらくために用意していたデータがこのバイナリなので、おおもとの機能が失われてしまった状態では意味のないデータと化したことになる。
 いくら情報をCD-ROMやMOディスクに記録しても、読み取るためのドライブが無ければ意味がないのと同じことだ。

24 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 22:30:41.41 ID:y+EBojRc
 はやてのために新たに作成された夜天の書は、ハードウェアとしては単なる大型ストレージデバイスである。
 その容量は個人携行用としては最大級でありそれゆえに魔力消費も激しく、単発の処理速度よりも複数魔法の並列発動を重視した設計になっている。

 実際、はやてはこの夜天の書でじゅうぶんに戦うことができていた。
 ストレージデバイスとしての性能はあまりあるので、あとは必要になってくるのは、その性能でもって“本来の夜天の書”の姿を解析復元することである。

 もちろん、復元作業によって再び闇の書に変化してしまう危険はある。

 管理局としては、有用なロストロギアはなるべく原形を留めて確保したいものである。
 確かに闇の書は数あるロストロギアの中でも大きな被害をもたらしたものであるが、では完全に壊してしまい消滅させればそれでいいのかというと疑問が残る。
 どのような技術によってつくられ、どのような原理でその威力を発揮しているのか。なぜこのようなものが生まれることになったのか。
 それを調べれば、魔法技術のさらなる進歩が望める。
 今後新たなロストロギアに遭遇したときに、より有効な対処ができる可能性が高まる。

 ジェイル・スカリエッティにしてもそうであるが、この種のロストロギアにかかわる事件で被告とされる人物は、類まれな才能や重要な人脈を持っていることが多い。
 管理局には司法取引が制度として存在する。
 スカリエッティもグレアムもその適用を受け、極刑(次元世界においては冷凍封印処分をさす)を免れて生存していたのだ。

 そこへきて、グレアムが隠居先で出身世界でもある第97管理外世界で事件に巻き込まれ、命を落としてしまった。

 これは管理局としてはまったくの予想外の出来事である。

 犯人は誰なのか。地球での報道通り、偶然巻き込まれただけなのか。
 あるいは、次元世界のどこかの組織が、グレアムを亡き者にするために謀ったのか。

 エリオたちは地球へ到着すると、すぐさま現地の諜報組織との連携を取り、捜査を開始した。
 既にMI6とNSAについては管理局との連絡ルートがあったため、その線で人脈をたどった。
 そして、直接捜査を行っていたマシュー・フォードにたどり着いたというわけである。



 ロンドン市内に戻ってきたセダンは、テムズ川にかかるヴォクソール橋のたもとに建つ小さなオフィスビル地下駐車場へ入った。
 ここには表向きには民間医療福祉団体の事務所が入居している。
 ロビーの壁には、この団体のメインスポンサーでありイギリス音楽界では有名な歌手の一人であるアイリーン・ノアのポスターが掛けられていた。

 斜坑エレベーターで地下に降りたフォードとエリオ、ウェンディは、警備の職員にIDカードを提示し、厳重に隔離されたフロアに入った。
 フロアの中では、エリオやウェンディと一緒に来たもう一人の異星人、チンク執務官補がフォードたちを迎えた。
 彼女は黒い眼帯を付けており外見でやや目立つことが懸念されたため、外には出ず施設内での資料分析などを行っていた。また、エリオたちが外に出ている間、この施設内の監視を行う任務もある。

 壁と床と天井が一体化したチューブ状の通路を通り抜け、分厚いゲートが開く。
 よく見るとその動力も、モーターや油圧シリンダーではない。
 人工筋肉のようなリニアレールの上を、可動部のない扉板が浮上移動する。

 ほんの十数年前なら、未来の超ハイテクと呼ばれたものだろう。

 壁のつなぎ目の中には、シールドされた障壁発生装置が見えている。
 このフロアの中では、エリオたちも魔法の使用が制限される。
 地球人も、このような装置で魔法を防御できるとは思ってもみなかったことだ。異星人からの情報提供を受けて初めて判明したことである。

 グレアムの管理局入りに伴い、イギリスはアメリカに先駆けてこれら魔法技術を入手し、数十年を掛けて研究配備を進めてきた。
 アメリカも対抗上、独自の魔法技術開発を進めてきた。
 それは端的には、ネバダ州にあるグルームレイク空軍基地などで目撃される未確認飛行物体として人々に知られていた。

25 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 22:37:55.40 ID:y+EBojRc
 フォードたちが入ったフロアでは、全高4メートル半ほどの人型ロボットがハンガーに固定され、白衣を着た技術者の指揮によって数人の作業員が機体の各部を点検していた。

 銀色のロボットは、半透明のバイザーを被った頭部を持ち、中空構造の多いスケルトンのような外見だ。
 本来は背部に装着されている飛行ユニットはオミットされ、基礎フレームのみの状態だが、これでもここまで再現するのに何年もかかっている。
 この機体は、元々は“オートマトン(自動人形)”として、各地の教会などで聖遺物として保存されていたものである。
 教会で発見された機体はほとんど骨組みだけか、あるいは手足が欠損していたりなど不完全な状態であったが、日本の──海鳴市において、ほぼ完全な自動人形の機体が発見され、いっきにその技術の解明が進んだ。
 ギル・グレアム、月村忍、そして異次元より現れた“企業”の協力も得て、イギリス空軍の管轄の下、この戦闘用大型自動人形──エグゼクターの復元に成功した。

 まだ基礎フレームのみを動かすに成功しただけであり、オプション装備となる飛行ユニットや武装は全く搭載されていないが、こちらも復元に成功しさえすればいつでも装備できるところまではこぎつけている。

 イギリスに技術提供を行ったこの“企業”が、グレアム殺害事件に絡んでいるとウェンディはみていた。
 執務官補としてティアナとともに働き、次元世界の裏で渦巻く数々の陰謀をその目で見てきて、どんな世界でも表に出せないような争いを人間は繰り広げているのだということを理解した。
 それは管理世界でも管理外世界でも変わらない。
 そして管理局員、執務官であってもまた、その事実に目を背けてはならない。

 正義や法に盲目になってはいけない──ティアナがウェンディによく言い聞かせていたことである。
 法律違反だからただちに断罪してよいわけではない、ものごとが起きるには必ず原因と状況があり、人間の意思の連鎖の結果として出来事が起きる。それを広く見て取らなければ真実をつかめない。

 地球がこのような技術の開発を行っていても、それを邪魔することは内政干渉に当たるし、管理局にはそのような権限はない。

 このロボット──エグゼクターも、今から申請したとしても実際にロストロギアとして認定されるまでにはいくつもの審査を通る必要がある。そもそも人の手で復元できた時点でロストロギアの定義からは外れることになる。
 またそれで仮にロストロギアと認定されたとしても、ではただちに管理局部隊の出動が可能かといえばそうではない。
 外部文明との接触は非常な衝撃をもたらすものであり、安易に行ってよいものではない。
 もし第97管理外世界を訪れるどこかの民間企業があったなら、地球人との接触はまさにその衝撃を、身をもって見せ付けられることになるだろう。

 地球が次元世界連合との国交を開かないのであれば、“地球の要請に基づいて違反企業を告訴”ということはできない。地球とミッドチルダは犯罪者の引渡しなどの協定を結んでいるわけではないので、地球で発生した事件を捜査するには面倒な手続きが要る。
 あくまでも形式上は、管理世界所属企業の法律違反を管理局が管理世界内で摘発したという形をとる必要がある。

 さらにフォードと例の男の会話から、問題の企業は地球人を生体魔力炉の材料にしようとしていたことが伺えた。
 人間を魔力炉の材料にするなどということは管理世界であっても許されないことである。魔法技術が公式には存在しない世界の人間をそれに使うとあってはなおさらだ。

 従来の誘導コイル式と比較した場合の生体魔力炉の最大の利点とは小型軽量化が可能なことである。
 生体魔力炉の場合、人体もしくは生物の肉体から抽出したリンカーコアを魔力結晶内に封入固定し、蓄電池のセルのように連結接続する。
 リンカーコア1個ぶんではもちろん人間ひとり分の出力しかないが、リンカーコアは機械に比べて非常に小さい。よって、通常のデバイスサイズの筐体に、数百個ものリンカーコアを詰め込むことが可能になる。
 また生身の魔導師と違い肉体の負荷を考慮しなくてよいので、人体が内部から燃えてしまうような高出力を発揮させることが可能だ。
 リンカーコアは素粒子物理学的には、電子と陽電子の対である魔力素を電磁気力に変換する器官である。変換された電磁気力は攻撃魔法であればさらに炎や電気に変換され、機械の動力であればもっぱら電気として利用される。
 どんな魔導師でも、人体の負荷限界を超えて出力を発揮することはできない。リンカーコアにとっては魔導師の肉体は実は足枷ともいえるのだ。

26 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 22:43:52.00 ID:y+EBojRc
 生体魔力炉の製造には、文字通り数百人もの命が使われることになる。
 もし管理外世界から人間を集めていた場合、管理局は現地の人間がいなくなったことを把握できない。
 また管理世界であっても、ミッドチルダのように国勢調査を精密に行っている世界ばかりとは限らず、旧い王政国家などでは村ひとつが丸ごと消えても気づかないといったケースさえままある。
 そうやって製造された生体魔力炉は、これまでは炉の搭載が不可能であった小型武器──特に携行型デバイスの劇的な戦闘力向上を可能にする。

 ティアナがウェンディに預けていた捜査資料から、これら人体採集に関わっている企業として、第16管理世界リベルタに所在するヴァンデイン・コーポレーションの名前が挙がっていた。
 そして、生体魔力炉を製造しているのは同社よりリンカーコアの提供を受けた、第1世界ミッドチルダに所在するアレクトロ・エナジーである。

 いずれもそれぞれの世界で大きな業界シェアを持つ大企業だ。
 アレクトロ社はかつて開発途上の技術であった触媒式魔力炉で大事故を起こしたことがあり、ヴァンデイン社に至ってはエクリプスウィルスの研究過程で重大なバイオハザードを発生させるなど、その企業活動において黒い面が多々ある。
 それでも両社とも、特にヴァンデイン社はEC事件を経てなお、企業解体を免れ存続している。
 次元世界連合の運営にも両社は少なくない出資をしており、それが大企業のロビー活動に政府が振り回される原因となっている。

「──僕ら管理局の調べでは」

 2階のテラス状になった視察フロアからエグゼクターの機体を見下ろし、エリオがフォードに言った。
 階下では研究員たちがそれぞれの作業を行っている。

「ミッドチルダ人も地球人も、遺伝子の塩基配列を含め、その成り立ちにほとんど違いはないという結果が出ています」

「同じ人類と言っても過言ではないと──違う星で進化して生まれたのなら違う生物になっているはずだが、ということですか」

「ええ。これは地球だけではない他の世界の人間にも当てはまります。その理由が、もしかしたら今回の事件をきっかけにわかるかもしれません」

「──超古代文明がさまざまな星に人類を広めたというものですかな」

「まあそんなところです。しかし、地球でもそういった研究は行われているのですね」

「いえ、私の恩師といいますか、そういった仮説に興味のある者がいまして。考古学界では、疑似科学の域を出ていないものです」

「それはミッドチルダでも大体似たようなものです。ただ、僕らの世界ではロストロギアというものが発見されていますから、学者も認めざるを得ない状態です。何しろ目の前で現物を見せられたわけですからね」

 なるほど、とため息をついて、フォードは腕を組んだ。
 地球では幸いというべきか、そのようなオーパーツが甚大な災害をもたらした事例は起きていない。

 ただ、フォード自身が昨年調査に赴いた海鳴市で痕跡が見つかったように、全く存在しないというわけでもないようだ。
 ミステリースポッドのように呼ばれたり、人間が近づけない場所にそういった物体が存在する可能性は依然として残されている。
 海鳴市では、ジュエルシード──この名称はエリオから教えられた──が放射線異常を痕跡として残しており、CIAが発見した21箇所の痕跡が、海鳴市に落ちたとされる21個のジュエルシードの数と一致した。
 フォードが海鳴市内で発見した戦闘の痕跡も、管理局の記録を改めた結果、一致することがわかった。
 海鳴市では西暦2005年の春と冬に、計2回にわたって魔法による事件が起きており、管理局が対策部隊を派遣していた。

 その痕跡は、日本政府も気づかない振りはしているが、実際には概ねその内容を把握している。

 そして今回、地球に接近する巨大UFOが発見されるに至り、アメリカを始めとした先進各国はこれまで蓄積してきた地球外文明に由来する技術と地球外知的生命体の存在を確信した。
 巨大UFOはグリーンランド上空で地球に最接近した。大西洋上空を北から南へ通過して地球をぐるりと半周するように曲がり、大きな楕円軌道をとって地球周回を始めたことが観測されていた。
 空のかなたを、炎を纏いながら突き進む巨大UFOの姿は、北米やヨーロッパのほとんどの国から見えた。
 アメリカ南部のテキサス州やフロリダ州、また巨大UFOの軌道の真下に位置した中南米では、南の空に遠ざかる巨大UFOが太陽を呑み込むように映り、人々を震え上がらせた。

27 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 22:49:04.12 ID:y+EBojRc
 ついにこの世の終わりが来たのか。
 聖書に預言される審判の日が来たのかと、教会につめかける人々や、国外へ脱出しようとする人々などで各地にパニックが発生した。
 州政府は警察だけでなく州兵も出動させて警備を行っている状況である。

 巨大UFOが南半球側へ抜けていったため、現在、日英米ソ各国からは一時的に巨大UFOは見えなくなっている。
 オーストラリアやニュージーランドのアマチュア天文家が独自に撮影した巨大UFOの映像をインターネットを使用してリアルタイム配信を行い、最新情報に遅れがちな日本でも人々の間に今回の事件が知られつつあった。

「過去に同種の事件は」

 フォードの質問に、エリオは視線を強張らせるようにやや顔を伏せ、首を横に振った。

「いいえ。僕が知る限り初めてです。発掘された古代の宇宙船を誰かが勝手に動かしたとかいうのならともかく、人間の関与なしに動き出したという事例は、管理局がこれまで遭遇した事件にはありません」

「そうなると、あれをどう扱ったものかとなりますな。こちらから手出しをしなければ何もしてこないのか、それともいずれ地球に対して爆撃を始めようとするのか──単に月が2個に増えたというわけにはいきませんな」

「まずは相手の正体を知ることです。ここまで地球に姿を晒してしまった以上、僕らだけではない、艦隊もいつまでも隠れてはいられません」

「私個人としては、あなたがたの立場はじゅうぶんに理解しているつもりです」

「ええ。僕やウェンディとて、いつあなたがたに銃を向けよと命令されないとも限りません──それは絶対に避けたい事態の一つです」

 英語はミッドチルダ語と似てはいるがやはり細かい語彙などは違う。
 ミッドチルダ語では、デバイスとは武器全般のことを指すが、英語では装置一般という意味だ。
 なのはやはやてとの会話で、エリオも自然に覚えてはいた。フォードに対する言葉で、エリオはデバイスのことをガンと表現した。
 地球人にとっては、DeviceではなくGunが武器の一般的な表現である。

 管理局からの情報が一時的に途絶えているため、エリオたちも問題の巨大UFO──戦艦インフェルノに対しては下手に判断できない状態である。
 ミッドチルダとヴァイゼンが共同で艦隊を出撃させたということは情報が入っていたが、戦闘が発生したのかどうか、またその決着がついたのかどうかわからない。
 地球からは、ハーシェルU宇宙望遠鏡、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測で、火星軌道付近で大規模な戦闘が発生したことが判明していた。
 その後は巨大UFOの発する次元干渉が強まり光学観測ができなくなったため、地球はミッドチルダ・ヴァイゼン連合艦隊の行方を見失った状態である。

 艦数からみても残らず撃沈されたとは考えにくく、どこかに隠れて再攻撃の機会を伺っている可能性が高い。
 地球接近の際に、アメリカ軍およびソ連軍が保有する偵察衛星が、巨大UFOの撮影を行っている。
 その画像は今まさに分析が行われている最中である。
 分析結果によっては、効果的な攻撃方法が判明するかもしれない。

 地球最接近から12時間後、軌道傾斜角63.78度、遠地点高度7万4820キロメートルを通過したインフェルノは再び地球への接近を開始した。
 地上からの観測により、遠地点付近での減速が確認され、次の周回では遠地点がやや近づくことが計算された。これにより、対地同期軌道からは外れ、地球の自転よりもやや速く回ることで地球上の広い範囲を見渡せることになる。
 最終的には、地球を12時間で一周する準同期軌道へ入ると予想された。この軌道をとる場合、地球上のあらゆる地点を24時間以内に照準に収めることができる計算になる。

 直径100キロメートルの物体ともなれば、肉眼でも容易に観察できる。
 目で見えるものを、存在しないと言い張ることはできない。
 各国は軍事的な対策だけでなく、ヒステリックに情報をよこせとわめきたてるマスコミやジャーナリストたちへの対策も取らなくてはならなかった。

 次の接近では、最接近地点はラブラドル半島上空になる。
 数日もする頃には、ニューヨーク上空、自由の女神の頭上を巨大UFOが通過するであろうことを、もはやアメリカ国民は誰ひとりとして疑わなかった。

28 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 22:53:48.50 ID:y+EBojRc
 カスピ海のほとりに建設された即席の発射基地では、ソ連製ロケットに独特のチューリップ型ランチャーに吊るされたR-7ミサイルが発射準備を整えていた。
 巨大な食虫植物のように、錆止めの赤い塗料をむき出しにした鉄骨が、葉脈のように空に花を開いている。
 ソ連式の打ち上げシステムでは、日本やアメリカのロケットのように発射台にロケットを固定せず、支柱から吊るした状態で点火して空中に浮かばせる。
 この方式ではロケットが自身の重量に耐える強度を持つ必要がないため、軽量化した分を燃料搭載量にあてることができる。
 打ち上げに伴って、支柱の鉄骨が四方に倒される光景はソ連ロケットに独特のものである。

 総勢12基の発射台が突貫工事で据え付けられ、トレーラーで運ばれてきたR-7がランチャーにセットされる。
 弾頭には宇宙戦用に調整された核出力320メガトンのトリチウム爆弾が取り付けられ、宇宙空間でも減衰しない強力なβ線を放射する。

 現在ソ連は夜であり、夜明けとともに、南の空に浮かぶ赤い彗星のように巨大UFOの姿が見えてくるだろう。
 地球接近時に観測した画像では、巨大UFOは自らの引力で大気を持っていることが判明した。見かけの大きさと地球に接近したときの軌道から計算される質量では、自己の質量に由来する重力で大気をひきつけるほどの引力は生じない。
 このことから、巨大UFOは人工重力を発生させることができると考えられる。
 また減速時にロケットの噴射炎などが観測されなかったことから、エンジンは化学燃料ロケットではない可能性がある。
 宇宙空間を高速で飛行するための慣性制御が可能であり、それを推進器にも利用していると考えられた。

 ソ連防空軍のMiG-25偵察機が低軌道上から接近して撮影した画像では、巨大UFOは幅の太い側を大きく損傷しており、無数の破口が生じていることが確かめられた。
 天王星宙域への出現当初に周辺に観測されていた数百隻の小型宇宙船──といっても数百メートルもある大型艦だが──は現在見えなくなっており、巨大UFOの内部に収納された可能性がある。
 それが母船と子機という関係なのか、それともこの破口は戦闘で生じたものであり宇宙戦艦たちは巨大UFO内部へ突入した後なのか──は依然として不明である。
 ソ連側には異星人からもたらされた情報が少ないため、イギリスおよびアメリカへ情報提供を要求しているが外交ルートを通じてのやりとりはなかなか手間取っているようだ。
 特にこの二か国は、それぞれの情報機関に異星人が派遣され所属している。前世紀よりあらゆる意味で有名になったエリア51をはじめ、アメリカ政府は異星人とのコンタクトをすでにとっており、地球に異星人が来訪している。
 あの巨大UFOが彼らの母船であり大々的な訪問のためにやってきたのか、あるいはアメリカを通じて事前偵察を行ったのち準備万端整えて地球侵略のためにやってきたのか、ソ連は正確な情報を持てていないのだ。

 確実に安全であるという保障がない以上、ソ連軍としては迎撃準備をしなければならない。
 ミサイル部隊を指揮する将官たちは、12基の鉄の花弁に包まれた核ミサイルが飛び立たずに済むことを願いつつも、その刻がくれば発射命令を下さなくてはならない。

 司令官は、作戦規定に基づき発射管制キーの照合を行った。あらかじめ決定された暗号に基づいて取り出されたキーが一致しなければミサイルは発射できない。
また、多段階の暗号を順に正確に解除してキーを差し込まなければたとえエンジンを始動していてもただちにミサイルの発射は中止される。
 核兵器の発射には、“安全を期すために”非常に複雑な手順を経る。
 作戦時間を示す時計が120分にセットされ、カウントダウンを始める。
 このまま発射中止の命令が届かなければ、2時間後には、12基のR-7が巨大UFOに向けて飛び立つことになる。

29 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 22:58:22.42 ID:y+EBojRc
 クラウディア艦内でははやてとシグナムの、ヴォルフラム艦内ではヴィータ、シャマル、ザフィーラの懸命の処置が行われていた。
 はやては治療ポッドに全身を漬けて、外部から強制的に心臓を動かしている状態である。
 治癒魔法を使用しての血液造成加速を行っているが、塞ぎきれない血液が、両肩と腰の傷口から魔力溶液中に溶け出していっている。

 シグナム以下ヴォルケンリッターたちは、もはや手の施しようがない状態であった。
 魔力枯渇によって多臓器不全を起こした状態であり、通常の人間と同じ治療装置が使えない。

 はやても、ヴォルケンリッターも、ほとんど冷凍保存されたような状態である。
 淡い白色の魔力光を放つ治療ポッドは、傷口の変質を止めるだけの機能だ。これ以上悪化もしないが、回復もしない。あくまで現状に留めるための、応急処置用のものだ。

 装置そのものは時の庭園でプレシアが使っていたのと同じで、きちんと作動していれば既に死亡した遺体であっても数十年は全く劣化させず保存できる。

 フェイトやなのはは処置室へは立ち入れないと各艦の軍医から言われた。
 カプセルに詰められた生物標本のような状態のはやてたちの姿は、親友である彼女たちに見せるには酷に過ぎると判断した。

 クラウディアの発令所に戻ったクロノは、はやての回復は絶望的だとウーノに言った。

 ドラゴンはクラウディアの砲撃によって首の一本を吹き飛ばされ、外殻側に墜落している。
 現在、ミッドチルダ・ヴァイゼン艦隊が偵察機を出して行方を探っている状態である。
 ひとまず当座の脅威は凌いだわけだが、もしドラゴンがまだ生きていることが判明すれば、確実にとどめを刺す必要がある。

 あの幻術魔法をかけられたら、対抗できる魔導師はほとんどいないだろう。

「ただの幻術魔法ではないと思いますが」

 発令所のメインスクリーンに、インフィニティ・インフェルノの予想軌道を表示させたクロノの背中にウーノは言葉を投げる。

「あれはアコース査察官のレアスキルと似た魔法と推察します。すなわち、特定の思考を強制的に送信するものです」

「幻覚を見せることが可能というわけか」

「採取した音波のパターンから読み取れます」

「バイオメカノイドは我々に対話を試みていると?」

「その可能性は否定できません」

 クロノは振り向き、スクリーンを近くで見るようウーノを呼び寄せた。
 女性としては身長が高い方になるウーノは、クロノと並んでも目線がほぼ同じ高さだ。

「その通りだ、ウーノ。彼らは姿こそ異様だがれっきとした生命体だ。その事実をまず次元世界人類は認めなくてはならん」

「破壊という言葉が駆除と言い換えられるだけではない」

「命あるものを人間は特別視する。ゆえに命はそれだけで武器になる」

「その武器の強さゆえに」

 惑星TUBOYが伝説と呼ばれたのは、そこに居るのが生命の定義を塗り替える存在であるからだ。人間の一般的な生命の定義から外れる存在をもし生命と呼ぶのなら、人間は意識の変革を求められる。
 それが時代を下るごとに、命さえ操れる魔法、と変化して言い伝えられていった。

30 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 23:02:05.02 ID:y+EBojRc
 ミッドチルダで発見されたグレイの皮膚欠片から採取された遺伝情報と、インフェルノ内部から採取されたグレイの持つ遺伝情報を照合し、それが一致することをクラウディアでは確認した。
 グレイは、その内部に人間と同じ46基の遺伝子コードを持つ。
 金属でできている無機質の身体は殻を被っているようなものであり、正にバイオメカノイドとは無機物と有機物が混ざり合ったごく小さな芯だけがその姿である。
 フェイトが行った捜査で突き止められたこの事実は、バイオメカノイドの技術を入手しようとする次元世界の企業たちにとっては絶対に外部に知られてはならない機密情報である。
 それゆえに、その事実を知ってしまった鑑識官はグレイによって殺された。
 クラナガンでの一連の戦闘以前に、バイオメカノイド、そしてグレイがミッドチルダに持ち込まれていたことがこれで確実になった。

 クロノはサブスクリーンにマッピング済みのインフェルノ内部空間地形図を表示させた。
 後部のやや狭くなっている部分からは依然として強い魔力反応が検出されており、インフェルノの主動力炉がまだ生きていると予想される。
 インフェルノ内部の人工重力は複雑な分布をしており、ドラゴンの墜落地点を正確に計算することは難しい。
 偵察機も撃墜される危険を冒してまで深部へ潜りこむことはできず、捜索開始から2時間を経過しても未だドラゴンを発見できていなかった。

 破口から外部観測を行っていた別の偵察機が、インフェルノが地球周回軌道の遠地点を通過したことを報告し、月が見えていることを知らせてきた。

 月から反射された白い光が、インフェルノ内部に差し込んでくる。



 新暦83年12月28日23時15分、LS級巡洋艦ヴォルフラムは管理局次元航行艦隊司令部へ、敵バイオメカノイド搭乗者の身柄確保成功を打電した。

 加えて、敵大型バイオメカノイドとの戦闘によって艦長八神はやて二佐が負傷し意識不明の重体となり、副長であるエリー・スピードスター三佐が指揮を代行していることも報告した。
 通信ウィンドウの向こうで、レティは眼鏡のブリッジをつまみ、表情を隠すように顔を伏せた。
 元機動六課メンバーにおいて最大戦力であるはやてを緒戦で失う結果になったことは、レティ以下、元機動六課チームにとっても堪え難い痛手である。

 ヴォルフラムに収容されたヴィータ、シャマル、ザフィーラの3人は、現時点ではプログラムの実体化が解除されないように凍結するのが精いっぱいで、医学的処置はとれないとモモが報告していた。
 ヴォルケンリッターという、魔法技術史においても非常にまれな存在であるため、損傷時の治療方法というものが確立されていなかった。
 たとえ体内の臓器の構造や機能が人間と似ていても、その根幹となる動力が異なるのである。
 人間はあくまでも食物を消化して取り出したアミノ酸をエネルギーにしているが、ヴォルケンリッターは物質中に含まれる魔力素をエネルギーにしている。
 人間用の医薬品が通用するのは、魔力で再現できた臓器の機能に対してのみである。
 それ以上のレベルでダメージを受けてしまうと、これを修復できるのは夜天の書の主以外にいない。

 しかしその夜天の書の主たるはやてが、真っ先に戦闘能力を奪われてしまった。
 リンカーコアが無事だったことは不幸中の幸いというべきか、はやての身体は生命維持装置がきっちりと作動してさえいれば生命を保つことは可能であるとクラウディアからは連絡が届いた。
 ただし、はやてはもう今までのように歩いたり、自分でデバイスを持って戦うことはできない。
 魔力溶液を満たした治療ポッドの中に浮かんだまま、そのカプセルから外に出ることができないのだ。
 たとえ顔かたちが綺麗なまま残っていたとしても、生命維持装置のカプセルに閉じ込められたまま動けないのでは、かつての最高評議会の3人と同じようなものである。

 現在のところ、はやては心臓は何とか動いているが、出血多量による低酸素状態が起きていたため脳の活動が低下し、昏睡状態にある。
 もし奇跡的に意識を取り戻していても、脳に障害が残る可能性は高い。
 そうなれば、もはや今までのように魔法を操ることは永遠にかなわない。それどころか、なのはやフェイトたちと会話さえできなくなるかもしれない。

『わかりました──。本局への帰還はすぐに行えますか?』

 エリーはいったんレコルトの方を見て、このままドラゴン追撃戦に参加はできないということを確認した。
 現在のヴォルフラムが使用可能な兵装は5インチ速射砲1門だけであり、艦首魔導砲も対空誘導魔法も撃てない状態では戦闘は困難である。

31 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 23:06:27.75 ID:y+EBojRc
「現在、インフィニティ・インフェルノは地球周回軌道に乗り、遠地点を次第に地球に近づけつつあります。地球からの探知を避けて脱出するには、この軌道上で遠地点に到達したところを狙って飛び出す必要があります。
現在すでにインフェルノは最初の遠地点を通過して地球に近づきつつあり、およそ10時間後に再び地球へ最接近します。よって、次の遠地点通過を狙うためにはあと1日待つ必要があります」

『よろしい。ヴォルフラムは可及的すみやかにインフェルノ内部より離脱し、本局へ帰還してください。確保したグレイのサンプルを、確実に持ち帰るように。
──ハラオウン艦長はそこに居ますか?』

「──いえ、現在、敵大型バイオメカノイドの捜索を行っています。
八神艦長とシグナムさん、フェイトさんはクラウディアに収容されましたので、移乗手続きを取ります」

『できればクロノ君からじかに聞きたいと思うのだけれど、難しいかしら』

 エリーはポルテを見やる。ポルテはヘッドセットを右手で押さえ、首を横に振った。

「クラウディアからは現在応答ありません、次回の連絡は1時間後と予告したきりです」

「ロウラン提督、クラウディアはやはり独自に行動しているようです。我々に対しても、ミッド・ヴァイゼン艦隊に対しても、積極的な協力や対立を行おうという印象は見られませんでした──
少なくとも、ハラオウン艦長の行動は彼の独自の意志のようです」

『そうですか──。こちらでも、リンディをはじめ私たちの会派に対する追及の声が上がり始めています。
どんな形にしろクロノ君の言葉がきければ、彼らを少なくとも説得できるカードが手に入るのですが』

「──いずれにしろ、ハラオウン艦長は惑星TUBOYとバイオメカノイドをはじめとした次元世界超古代文明の存在を知らしめるべきであるという行動を示しています。
我々が第511観測指定世界で確かめた真実、そして──スクライア司書長が調べていたアルハザードの真実──これらを、真相を闇に葬るべきではないというのは、我々も同じ考えです」

「副長、それではミッドチルダと第97管理外世界の関係が──」

 レコルトが横から言ってくる。
 インフィニティ・インフェルノの真の目的地がミッドチルダではなく地球だと判明したということは、バイオメカノイドたちは最初から地球を狙って目覚めたことになる。
 カレドヴルフ社によってミッドチルダに連れてこられたバイオメカノイドたちは、そこが地球かどうかわからずに動きだし、地球でないことを知ると、宇宙港に大挙して押し寄せ、地球へ向けて飛び立とうとした。
 もしあの戦闘でバイオメカノイドがミッドチルダから惑星TUBOYまで連絡を飛ばせていれば、インフェルノはまずミッドチルダに来襲し、連れ去られたバイオメカノイド群を回収してから地球へ向かったと思われる。

 過去の地球が惑星TUBOYと戦っていたというのであれば、ミッドチルダからしてみれば、言ってしまえば完全なとばっちりである。

 そして逆に、地球から見ても、ミッドチルダがバイオメカノイドを目覚めさせてしまったせいで地球が襲われているということになる。
 インフェルノが地球到着と同時に即座に攻撃を開始しなかったのは、現在の地球にいるのがかつて自分たちと戦った文明ではないと気付いたからだ。
 もし彼らが新たに生まれた人類であるのなら、バイオメカノイドたちが今持っている地球の情報は全く古いものであり、まずは相手の分析からやり直す必要がある。

 しかしいずれ、現在の地球の戦力が星間文明の水準に達していないことを確認すれば、インフェルノは地球への攻撃を再開するだろう。
 クラナガンでの戦闘で回収されたバイオメカノイドの制御装置は、内部に組み込まれたわずか数十個のトランジスタの組み合わせから、ごく単純なロジックしか持ち得ていないことが判明していた。

 ──“あらゆる生命を抹殺せよ”──

 バイオメカノイドの本能はこれのみである。
 彼らにとっては、人類をはじめとした炭素系有機生命体は正しく畜生のような存在である。飼い育て、そして喰らうものである。
 人類は、生命圏たる水と緑と酸素のある地球型惑星でなければ生きることができない。
 しかしバイオメカノイドは、有機物、無機物問わずあらゆる元素を生命活動の材料にできるので、宇宙のどんな場所でも生きることができる。
 人類側の視点を抜きに、バイオメカノイドから見れば、人類は生態系における被食者にしか映らないだろう。
 首尾よく地球を滅ぼしたら、バイオメカノイドたちの次の目標は、かつての超古代文明の子孫たる次元世界連合となるだろう。

32 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 23:09:18.39 ID:y+EBojRc
 バイオメカノイドにとっては、炭素系有機生命体を殺すことは呼吸のようなものである。
 人間が酸素を吸うように、バイオメカノイドは有機生命体を探し、破壊する。おそらく彼らに殺人という概念は存在しないだろう。

 もしバイオメカノイドが人工的な兵器システムであるのなら、これを制御することは非常に困難である。
 惑星TUBOYに、もし本当にかつて一般的な人類が住んでいたのなら、なぜこのようなシステムを建造したのか──とても想像がつかないことである。

 そしてさらに、バイオメカノイドが人工物ではなく自然に生まれた、超生命体とも呼べる種族であるのなら──

 ──次元世界人類はまさに、宇宙における人類の存在意義を懸けた生存競争に挑まなくてはならない。

「今ここで判断を下すのは我々の職責を超えます──しかし、いずれ我々は決断しなくてはなりません。第97管理外世界の前に姿を見せ、敵バイオメカノイドを倒すために戦うことをです」

『ええ。私からも管理局首脳部には働きかけている──それと、ミッドチルダ・ヴァイゼン両政府にもね。聖王教会の協力も、今交渉中よ。
騎士カリムが次元世界政府を取りまとめてくれれば、管理局も動きやすくなる』

「ともかく、今は確実に本局へ帰還することですね。我々が入手した事実を正しく伝え、この次元世界で起きている出来事の真実を知らせなくてはなりません」

『待っています。スピードスター三佐、貴官がこれからヴォルフラムの全ての指揮をとるのです。期待しています』

「了解しました──」

 通信ウィンドウを閉じ、エリーは続けてクラウディアへの連絡をとるように言った。
 ヴォルフラムが一旦離脱するには、はやてとシグナムを置いていくわけにはいかない。
 艦内では治療設備も限られているので、本局の病院に収容し、どうにか手立てを考えなくてはならない。



 1時間後、クロノは予告通りにクラウディアをヴォルフラムに接舷させた。
 クラウディアが侵入してきたインフェルノ後部の破口は地球から隠れる面に大きく開いており、ここからならインフェルノの船体を盾にして地球から見えないように脱出することができる。

 インフェルノ内部の前方部分では、ミッド・ヴァイゼン艦隊がインフェルノ艦内の捜索と制圧作戦を進めている。
 慎重に慎重を期し、フロアを一つずつ確実に確保しながら部隊を進めていく。
 艦内に出現するまさに無数のバイオメカノイドたちには、武器の火力はいくらあってもありすぎるということはない。
 時には確保したフロアをいったん放棄して後退し、艦砲射撃で敵を根こそぎ吹き飛ばしてから再進出しなければならないような状況も生じている。

 甲板に出てクラウディアからの内火艇を迎えていたなのはは、沈痛な面持ちでタラップを上がってくるフェイトと、その後ろでクラウディアの乗組員たちに抱えられている大小二つの治療ポッドを目にした。
 治療ポッドは二つとも、不透明のシートでくるまれ、中が見えないようになっている。
 なのははふらふらと吸い寄せられるようにフェイトの前に歩み出て、言葉を吐いた。

「フェイトちゃん──はやて、ちゃんは」

 フェイトは何も答えない。
 伏せた顔は目線を合わせられない。なのはの後ろで、モモたちが受け入れの準備をしている。

「答えてよ──、見てたんでしょ、シグナムさんを助けたのはフェイトちゃんなんでしょ」

「──だめだよ」

「フェイトちゃん──」

 フェイトの声は慄きが拭えていなかった。
 彼女に衝撃をもたらしたのは、親友が大怪我を負ったことそのものではない。
 次々と発見される次元世界の成り立ちにかかわる事実が、管理局という組織の能力をはるかに超える水準で姿を現してきていることだ。

33 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 23:12:04.74 ID:y+EBojRc
 惑星TUBOYこそがアルハザードであるという説は、選抜執務官──エグゼキューターの噂と合わせて、既に何人かの執務官たちの間でもかねてよりささやかれていた。
 そして、無限書庫から持ち出された情報をもとにミッドチルダ政府が動いていたというタレこみも、過去に何度かあった。

 さらに、義兄であるクロノの突然の独断行動。
 クラウディアに収容されてからも、フェイトはクロノとほとんど話せなかった。
 艦内での行動はさほど制限されなかったので、行こうと思えば発令所に行って話をすることもできたのだが、艦橋でのクロノはずっとウーノと作戦についての相談をしていて、その間に割り込んでいく勇気がなかった。
 話に参加しても、バイオメカノイドたちを相手にした作戦に、自分は何も案を示せず話題に加わることができない。
 自分がまだまだ未熟であると思い知らされたのだ。

 立ち止まったフェイトの横を、治療ポッドを抱えたクラウディア乗組員たちが通っていく。
 なのはは思わず、横からシートをめくってしまった。恐怖に耐えきれなかった。中を見て確かめなければ焦燥でどうにかなってしまいそうだった。

「あっ、高町さん──」

 乗組員の一人が声をあげかけて、言葉を途切れさせた。

 なのはは、見てしまった。

 大きな治療ポッドには、左半身をほとんど吹き飛ばされたシグナムの身体が収められていた。
 傷口を洗浄して凍結処置をしただけでなので、流れ出して魔力溶液に混じった血糊が凝固して膜のようになり、ポッドの透明部分に貼りついていた。左腕は肩口ごと無くなり、腰は半分に割れた骨盤が露出してしまっている。
 左肩の傷口は胴体にまで達し、引き裂かれた騎士甲冑の下に、穴が開いて破れた肺と、筋肉ごともぎ取られた左乳房が無残にぶら下がっていた。
 顔面に比較的損傷が少ないことが、人体が欠損する衝撃をさらに増幅する。

 小さな治療ポッドには、四肢を失って胴体と頭部だけになったはやてがいた。
 このポッドは本来は乳幼児用のサイズである。はやては、見る影もなく小さくなってしまった。
 壊れた彫像のように、肌が薄白くなっているように見える。
 生きているのが不思議なくらいだ。

 身体が震えている。
 無造作に肩をつかむフェイトの手が、なのはを引き戻した。

 クラウディアの乗組員たちは申し訳なさそうになのはの前を通り過ぎ、モモたちに治療ポッドを渡す。

 よろけて倒れそうになり、フェイトに抱きかかえられたなのはは、目と鼻の奥と、胃のあたりと、腰の奥がきりきりと痛み、濡れてきているのを感じていた。
 衝撃と恐怖のあまり、身体のあちこちが漏れてしまった。
 手を下腹部にやり、かろうじて服の外にまで濡れが見えていないことを確かめる。

「なのは、もういい、もういいから──」

 絞り出すように言ったフェイトの言葉も、なのはは上の空で聞いていた。

 タラップの前でクロノと話していたエリーは、負傷者の引き渡しが完了したことを確認し、敬礼を交わして戻ってきた。

「高町さん、フェイトさん──行きましょう。本艦はこれより管理局本局へ帰還します」

「なのは、戻ろう──帰れるよ。私たちは任務を果たした──帰ろう」

 ヴォルフラムの損傷した甲板が、巨獣の傷口のように天に向かって牙をむいているように見える。
 真っ暗で何も見えないインフェルノの外殻を見上げ、なのはは目じりに浮かんだ涙が、それ以上流れ出そうとしないのを感じていた。

 身体が、異常事態に適応するために感情を殺そうとしている。
 心が変質して、凄惨な衝撃を受けても涙が流れなくなっている。
 教導隊の先輩のひとりが、引退間際になのはに語ったことを思い出していた。
 長く軍に勤めすぎてしまった者は、身を隠してひっそりと生きるしかない。ミッドチルダの市井で最近よく語られる、軟弱な若者を軍に入れて鍛えるなどという言説は、全く現実を見ていないたわごとである。

34 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 23:16:11.48 ID:y+EBojRc
 軍人は高度な専門職である。

 それゆえに、一度軍に染まった人間は、もう軍から離れて生きていくことはできない。
 闇の書事件が終結して嘱託魔導師になり、管理局に入ったころからずっと、はやてが、自分の行く末に思いを馳せていたのはそれを予感していたからである。
 管理局に入って、戦闘魔導師として戦うなら、一生をそれに懸けることになる。
 幸運にも定年まで生き延び勤め上げることができたとしても、そこから何ができるだろうか。基地警備や災害出動などばかりであればいいが、実戦に出撃した経験を持つ人間は、良くも悪くもまともではない。
 少なくともクラナガンの一般社会は、軍隊帰りの人間にとって住みよい社会ではない。

 もう、戻れない。
 クラナガンに帰ったところで、そこでまた今までどおりの生活ができる保証はない。
 バイオメカノイドという存在が、この世に存在することを自分は知ってしまった。
 そうなれば、これと戦い殲滅するまで平和は無い。
 表面上、戦闘が起きていなくても、いつまたクラナガンが襲われるかという恐怖に日々さいなまれることになる。そんな中でヴィヴィオを過ごさせることはできない。

 もう今までどおりの生活は帰ってこない。
 本局に帰っても、次の作戦のために準備と訓練をする。

 そうやって生きていくしか、もう未来は無い。

「……──!?フェイトちゃん、外が……」

 外殻の向こう側、破口から差し込む光が、かすかに揺らめいた。
 現在のインフェルノが向いている角度では、主に差し込んでくるのは地球表面で反射した光である。そのほとんどは大気上層や雲、海面で反射したものだが、人口密集地のビルの明かりなど、強い点光源があるとそれは宇宙からでも見える。

 切迫する予感を的中させるように、ミッド・ヴァイゼン艦隊からの通信がヴォルフラムとクラウディアへ届いた。

『総員艦内へ退避!総員、大至急艦内へ退避!高町さんも、急いでください!地球からミサイルが発射されました!!』

 ポルテが念話で呼びかけてきた。
 ミサイル発射。地球が──アメリカかソ連かはわからないが──、インフェルノへの攻撃を開始した。
 この超巨大宇宙船が地球への攻撃目的の軍艦だと判断したということだ。

 続けて、ミッド艦隊所属の偵察機がミサイルの分析を行う。

『シエラ4、現在の地球までの距離は!』

『距離およそ5万3千、ミサイルは現在高度1500キロメートルを突破!数は……12!まっすぐこちらへ向かってきます!』

『弾頭はわかるか!』

『お待ちを、ミサイル弾頭より高レベル魔力反応を確認、スペクトル照合──とっ、トリチウム、ミサイル弾頭はトリチウム爆弾、推定魔力値──12兆以上!センサーの測定限界を超えています!
核出力に換算したら、艦載魔導砲とは比べ物になりません!』

 驚愕に声を張り上げる偵察機パイロットの声は、なのはにもフェイトにもエリーにも届いた。
 文字通り桁外れの破壊力を持つミサイル。
 地球が保有する兵器でそのようなエネルギーを持つものは、ひとつしかない。

 核ミサイル。

 偵察機のパイロットはトリチウムと言った。
 すなわち、三重水素を使用した水素爆弾である。確かにこれは高いエネルギーを持ち、さらに周辺空間の魔力素を増大させる作用を持つ元素だ。
 ミッドチルダでは、AMF環境下での戦闘方法としてバリアジャケットにトリチウム生成機能を持たせてAMFを中和する方法が研究されているが、そもそもトリチウムを生成するために必要な魔力量が大きくなりすぎてしまい実用化は困難とされていた。

 水素爆弾をはじめとした核兵器は、地球でも制御しきれない破壊力と環境汚染著しい兵器として前世紀より忌避され続け、廃絶すべしとされてきた。
 宇宙空間で核兵器を使用するなら、その性質上直撃狙いのはずだ。
 物理的な破片を撒き散らして攻撃する通常のミサイルと違い、宇宙空間では爆風が生じないため、核兵器の威力を最大限に発揮させるには目標に直撃させて起爆させ、発生した熱線エネルギーを余さず目標に浴びせる必要がある。
 メガトン級の爆弾でも、数十キロメートルも離れてしまえば威力は極端に減衰する。

35 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 23:20:50.81 ID:y+EBojRc
『高町さん、フェイトさん、早く艦内へ!』

 エリーが念話で呼びかける。
 なんとか我に返ったなのはは、フェイトに手を引かれてヴォルフラム艦内へ急いだ。核爆発の熱線と放射線は金属の船体とシールド魔法でかなり遮蔽できる。さらにインフェルノの船体が巨大な盾になる。
 今宇宙空間に出てしまえば、核爆発の余波でいかに次元航行艦といえども吹き飛ばされてしまうだろう。

 ヴォルフラムに戻ったなのはとフェイトは、エリーたちが指揮を執っている発令所へ急いだ。

「エリーさん、戻りました!甲板員も艦内へ退避完了してます!」

「よろしい!タラップ収納、発進用意!」

 クラウディアとの舫い綱を放し、それぞれ機関を始動して動き始める。
 ミッド・ヴァイゼン艦隊では核ミサイルの追跡を続け、ミサイルはインフェルノに向かうコースをとっており、命中は17分後と計算した。

「インフェルノの外には──」

「ここからでは間に合いません。外に出たとたんに熱線で溶かされます」

「もしミサイルがインフェルノに命中したら」

「外殻に大穴が開いて──どこに命中するかによります。もし私たちのすぐそばに当たったら、外壁がいっきに崩れてきます……埋められないように祈るしかありません」

 電測室から、ヴィヴァーロは独自にミサイルの追跡を行っていた。
 ポルテが偵察機のパイロットを呼び出し、それぞれの観測データを確認している。

「副長、ミサイルは計12本が来ます。1本あたり12兆以上の魔力値、これが全部爆発したら──!!」

「──機関室、魔力炉出力は何パーセントまでいけますか?」

「副長」

 ポルテが不安げに呼びかけ、しばらくの沈黙をおき、機関室からの返答が返ってくる。

『出力18パーセントまでは安定、それ以上は短時間しか無理です』

「わかりました。結界魔法出力に全エネルギーを回して、防御態勢をとります。砲雷科員は後部居住区へ退避。全兵装を停止して結界を張ります」

「──了解!」

 地球はこの巨大戦艦インフィニティ・インフェルノが地球を攻撃しようとしていると判断し、迎撃のためにミサイルを撃ったはずだ。
 また、ミッド・ヴァイゼン艦隊も、クラウディアもヴォルフラムも地球にその存在を知らせていない。だとすれば、いくら巻き添えを食らう危険があるといってもこのミサイルを打ち落とすことはできない。
 そんなことをすれば、こちらがインフェルノの味方だと地球に思われてしまう。

 あるいは地球の発射したこの12本のミサイルは威嚇であり、起爆させずに自爆させるか──少し考えて、その可能性はありえないとエリーは考えを振り払った。
 ミサイルには実物の核爆弾が装填されている。威嚇ならば弾頭を外して撃つはずであり、貴重なトリチウムを満載したミサイルをわざわざ12発も空打ちするはずがない。
 こちらの索敵装置では、ミサイルの頭部に核物質が詰まっているかどうかを外部から観測できるが、地球の技術ではそれはできないはずだ。

 予想されるミサイルの破壊力は、おそらくインフェルノを完全に包み込む火球を発生させるだろう。

 次元航行艦の発生させるシールドの出力は、と思い出そうとしたが、エリーはすぐにその思索をやめた。実戦の現場では、そのような机上の計算は役に立たない。実際にミサイルが爆発してみなければ、シールドに熱線を浴びせてみなければ本当の防御力は分からない。
 どちらにしろ、このミサイル攻撃を凌がなければ脱出はできない。

 ミサイル着弾まであと、15分。
 インフェルノ艦内にいるヴォルフラムからは、外部を直接観測することはできない。
 ミッド艦隊の偵察機も、核爆発から退避するために帰艦している。ひたすら息をひそめて待ち続ける、押し潰されそうになる時間だ。

 レコルトが居住区に戻っていてはどうかとなのはたちに言ったが、なのはもフェイトもレコルトの申し出を断った。
 今更、逃げ隠れしてもどうしようもない。この戦いの行く末をきっちりと見届ける。
 地球人類が、この超巨大戦艦に──バイオメカノイドに、戦いを挑もうというのなら。

36 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/11/21(月) 23:25:25.75 ID:y+EBojRc
第11話終了です

マシューさんは自分のデバイスを手に入れました!やったー(棒)
というかエリオとキャロの存在をナチュラルに忘れ(ry
…別にミッド人がアヌメ顔というわけではないと思いますがリアル二次元のナニカ…

なのはさんが毛布をめくると
箱の中にははやてがぴつたりと入って…アワワワワ

インフェルノの地球襲来は某ID4(汗)

幻影が見せた映像は原作のOPムービーですねー
謎のポージングをして変形するロボ(汗)

ではー

37 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/22(火) 11:13:52.54 ID:+2jP6chs
乙です
Xファイルから始まったと思ったらいつのまにかインデペンデンスディになってたでござる
大抵の宇宙人には核は無駄フラグだというのにとうとう核撃っちゃった


38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/23(水) 18:08:09.44 ID:uOXQIr97
乙です
水爆にも魔力反応が出るとは
実は地球も結構強くなっていたんですね

39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/23(水) 19:29:58.28 ID:gtw2tjzH
乙です
どっかの地球軍みたく倫理も尊厳も蹴飛ばした超兵器を持ってるわけじゃなく
あくまでも現実世界の延長程度の科学力しか持たないこの世界の地球がバイオメカノイド
に対抗できるのだろうか?


40 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/24(木) 08:04:23.96 ID:ltMvBul4
デバイスやAMFの技術を渡していますが
のちのち地球が魔法兵器で武装する予感

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/24(木) 13:14:43.26 ID:4+Ozi/Bn
そういえば管理世界になるには質量兵器廃止が絶対条件だっけ?
管理世界でありながら質量兵器を保有してる世界はあったかな

42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/24(木) 21:35:39.49 ID:Ihwu/0ys
Forceの後なんだからそんなもん実質形骸化してるだろうな>質量兵器禁止
一部に魔力使用でおk、燃料電池で動くラプターや化学薬品による爆薬がおkになってるんだから。

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/25(金) 08:50:02.71 ID:cqQqePIZ
エリア51には墜落した次元航行船や管理局員の遺体が隠されているのですね

44 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/25(金) 18:39:52.00 ID:GUzXhEH7
エリア88?

45 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/25(金) 21:21:00.41 ID:KKk6LJi8
>>44
エリア51って機密テストやってたせいで
UFOだの宇宙人だのが居るんじゃないかと噂されてた空軍基地

46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/25(金) 21:39:27.54 ID:Sr3XquE2
そういえばバニングス家ってリンディたちが地球で活動するときの仲介をやってたんだよね
ということはそこからアメリカ政府に管理局の情報が伝わって・・・というのは十分にありうることだ

47 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/25(金) 22:20:31.97 ID:KKk6LJi8
>>46
闇の書事件の最終段階はさすがに全地球レベルで観測されちゃったとおもうんだがどうだろう

48 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/25(金) 23:03:13.67 ID:fC/iwR9/
第五話で出てるね
国際宇宙ステーションは幸運にも回避したようだ
アルカンに巻き込まれて吹っ飛んだ衛星もかなりありそうだ
そしてNASAはデビッドの会社を指名してボイジャー3号をつくらせた・・・
まさにスカリーこれは政府の陰謀だよ

49 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/26(土) 03:48:41.47 ID:7iEitwj+
きっとインフェルノが地上に迫った時
飲んだくれのおっさんが戦闘機に乗って
特攻してくれるに違いない

50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/26(土) 11:35:16.29 ID:N/jHNW+B
魔力を持たない戦闘機が!
質量兵器が管理世界を救う!

・・・という展開にはならないだろうなw

51 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/26(土) 12:29:53.02 ID:NDJrztYN
エリア51が話題になった時期からすると開発期間はじゅうぶんにとれそうだな
変態開発チームことスカンクワークスが開発した地球製魔法戦闘機がインフェルノに突入するんだ

52 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/27(日) 14:28:40.96 ID:ax7xgICr
>>51
team R-TYPE「開発チームと聞いて!!」
キサラギ社「開発ならウチに任せろー!!」

しかしこの世界、R−TYPEシリーズと同じで、敵も味方も外見以外大差無くなって来てるな

53 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/27(日) 21:54:35.44 ID:UuhBCsbT
まあ同じ人間ですから

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/28(月) 19:19:34.44 ID:rfDHyiLk
どういう意味?

55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/29(火) 18:50:46.92 ID:nbH94kvv
都築マダー?(・ν・ )ノΛ*

56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/29(火) 20:39:31.04 ID:er2Ozq9j
>>51
その地球製魔法戦闘機とやらは、ディーンドライブを搭載して数機製造されたけど、
最後の一機とそのパイロットも一人の少女しか残ってない状況で、その少女の心の支えになる存在を探す子犬作戦が展開されるんでしょうか?w

ユーノはこう言った。「トイレ」

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/29(火) 22:55:49.12 ID:rxX0yxnU
>>36
箱の中にははやて・・・まさかこれhttp://hiwihhi.com/uedakana/status/8060626991583232

ギャー!

58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/30(水) 00:22:22.53 ID:gd4vGnYf
箱詰め・・・エンジェルパック?

59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/30(水) 09:02:30.32 ID:6ZBE4haT
はやてちゃんは天使

スバル・スラスター旧姓ナカジマ
トーマ「この戦闘機…スゥちゃん!?まさか、スゥちゃんなのか!?」

60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/30(水) 14:13:48.98 ID:bvPzggqr
原作がもう質量兵器気にしなくなっちゃってるからね
Λはもう話が成り立たないんだろ
このままエターでFAだな

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/30(水) 20:58:55.35 ID:wtxIpx0f
例え質量兵器肯定してもバイド含めた地球の連中肯定する奴はいないw

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/30(水) 21:16:03.00 ID:FMNu5i65
まったくだw
R戦闘機に使われてる非人道的なシステムに比べれば、
AEC装備なんてチームR-TYPEが「手抜きだ!」といいそうなぐらいなレベルだ。
それに考えてみると、AEC装備はゼロエフェクト対策のために開発されたものだし、作中の描写が無いから分からないが、
もしかしたら、普通にデバイスを使ったほうが強いかもしれない。少なくともStsまでの戦法の差別化はもっとAEC装備の数が増えないと難しいから、活躍するキャラに偏りが出そなんだが。

まぁ、連載を追っかけてなくて単行本派なので、もう描写されて、完全にデバイスがいらない子になっちまったかもわからんが。

63 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/30(水) 21:30:59.44 ID:9RVzAqhx
Λの時間軸はStSの2年後だぞ。

64 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/30(水) 21:55:03.96 ID:FMNu5i65
>>63
ああ、そういうことじゃないんだ。ただリリカルなのは原作の兵器事情とR戦闘機を比較してみただけ。
あとは、完全な蛇足で書いた。個人的にリリカルなのはの魔導師は相棒のデバイスを使ってこそ面白いと思ってるから、
どれだけAEC装備が格好良くてもあまり受け入れ難いんだ。

65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/11/30(水) 22:10:01.57 ID:7/+zusnz
>>57
匣の中にははやてがぴつたりと入ってゐた・・・か

前に語るスレでネタが出てたな
闇の書事件以後も足の麻痺を治さず
リンカーコアを維持するための胴体だけあればいいと脚も腕も麻痺が進行してダルマと化したはやて
見た目はバジリスクの地虫十兵衛だそうだ

「おうおうわたしの大事な車いすをバラバラにしおって・・・どないしてくれるんやあんたら」

66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/01(木) 00:01:32.75 ID:cxPGEKwm
わざわざR-TYPEに張り合わなくてもいいからw
どんな二次設定付けたところで所詮リリカルなのはなんだからwww

67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/01(木) 00:36:34.70 ID:C8Alon15
基本的にエロい格好をしているくせに妙にストイックなフェイトさんが居れば何でもいい

68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/01(木) 04:10:46.40 ID:FGUBjEE5
おっと俺が居た

69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/01(木) 11:46:26.98 ID:mSheOfRc
その分、全体の面白さは激減してそうだから、
漫画になってから買わなくなった俺もいる…。

70 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/01(木) 15:19:52.04 ID:vTyWvkLX
R-TYPE Λって漫画化されてたの?

71 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/01(木) 19:11:33.86 ID:mSheOfRc
>>70
いやリリカルの方

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/01(木) 19:55:15.49 ID:B565CGbh
>>60
Forceの方もエタリそうですけどね。

73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/02(金) 13:44:14.93 ID:trr3dT2e
リリカルなのははよく知らないんだけど、そのForceってのは公式なの?
後出しで対抗しようとするなんて大人げないな

74 : 忍法帖【Lv=9,xxxP】 :2011/12/02(金) 14:14:05.92 ID:BjmJp6Cs
えっ?

75 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/02(金) 15:42:54.20 ID:3rqpM1Ma
なぜよく知らない人がこんなスレに来るんだか

76 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/02(金) 15:47:21.84 ID:TKd8GP0d
原作知らないけど頑張って書きました!(キリッ ってタイプの二次創作書きなんじゃね?

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/02(金) 17:11:22.93 ID:wsq24NR0
>>76
そういうのは、物語の導入を思わせるだけの一発ネタなら許されるんだが(実際コレは俺もやったことある。続きは書くつもり一切無い)、
マトモにストーリー作るとなったら、原作ファンの側からしたら「ふざけるんじゃねぇ!」だよな。
あとはΛに関する書き込みへのレスへのレスだから、R-TYPEしか知らないでΛ読んでる奴かもしれない。

78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/02(金) 18:42:23.27 ID:trr3dT2e
>>76
俺は自分で書いてはいないけど
知りたいのはそのForceってのがR-TYPEに対抗してつくられたのかどうかだよ
せっかくの良作が原作者?の権力につぶされるなんてやりきれないよ

79 : 忍法帖【Lv=9,xxxP】 :2011/12/02(金) 19:42:04.84 ID:BjmJp6Cs
……(;゚д゚);゚д゚);゚д゚)ジェットストリームポカーン
お 前 は 何 を 言 っ て い る ん だ ? !(AA略

80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/02(金) 20:03:23.46 ID:kE2Qkmq4
ID:trr3dT2eが何を言ってるのか、本気でさっぱりわからない
もしかして、SSを信奉するあまり原作者に凸するたぐいの基地外信者なのか?

81 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/02(金) 20:32:56.61 ID:/uuCpIn8
>>78
しけた餌だクマー(AA略)
どっかの誰かが趣味でやってる2次創作のためにそんなこと(新ネタ投下)する奴はまずいない筈だ。
大体、文句があるなら作者のところに文句言いに行く方が余程安いよ。

82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/02(金) 20:33:03.13 ID:CK4qitGD
多分もう触らない方がいいと思う

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/03(土) 08:18:02.45 ID:269g0TEX
本当Λ儲は碌な奴が居ないな

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/03(土) 08:55:02.60 ID:98NSoPxu
さすがにこのレベルは騙りアンチか、そうでなくば池沼だろう。
自分もΛ儲だけど少なくとも同じ扱いしてほしくないレベル

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/03(土) 12:42:00.67 ID:2CWWkvJO
エグゼクター地球だと、現実の2018爆撃機みたいなションボリな物じゃなくて、こういう計画も生きてるんだろうなぁ。
http://www.f5.dion.ne.jp/~mirage/message11/hypersonic.html


86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/03(土) 13:32:59.45 ID:mqn+uCJz
>>85
やばいかっこいい

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/03(土) 21:38:25.89 ID:JOX8DrtI
>>83
Λのコメント欄って明らかに異質だよね

88 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/03(土) 22:56:22.24 ID:eahr5Gqm
>>81
「賢者の石はハガレンのものです。真似しないでください」
「「撃って良いのは撃たれる覚悟のある奴だけだ』」はルルーシュの(ry
実際に凸ったらこの連中の伝説に並ぶな

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/03(土) 23:13:05.30 ID:P65xQmBo
深刻なバイド汚染だ
きっと彼の眼にはもう琥珀色の世界しか見えていない

90 :81:2011/12/03(土) 23:30:33.42 ID:U9Yq4d6/
>>88
>実際に凸ったらこの連中の伝説に並ぶな
うへぇ。そんなアホが居たんですか?世の中は広いなぁ。

91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 08:37:32.86 ID:40LqDKHb
>>88
いたんだ、そんなやつ……

92 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 17:05:49.70 ID:JzaKcyx5
>>84
>>66みたいなR-TYPEとなのは比べてなのはは甘いみたいに言ってる輩についてはどう思う?

93 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 17:19:36.72 ID:oF0+ww8F
>>92
そりゃ種族あげての生存競争やってる世界と比べたら甘いですがな

94 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 18:14:28.53 ID:Gmcu8pF0
>>93
>>83>>87

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 18:19:39.60 ID:JzaKcyx5
>>93
つまりR読者は心の中ではなのはを見下してて、なのはが公式でそういう硬派()なストーリーをやるのはおかしいと
そう言いたいんだね

96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 18:29:21.39 ID:oF0+ww8F
>>95
なんでそーなるの?それって君自身がそう思ってるってこと?
世界観の違いも許容できないならクロススレなんかみなきゃいいのに

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 18:36:13.04 ID:bKGEvWt1
まぁ、とりあえずどこのファンであろうと、その作品を持ち上げるために他の世界観をこき下ろすようなファンではなくアホかアスペか基地外か、と言うことで
本当のファンもそんなのとは一緒にされたかないだろうし。


98 : 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 :2011/12/05(月) 21:15:10.14 ID:/2fbgcWd
……だんだん、釣られてる気分になってきた件

99 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 21:31:13.56 ID:JzaKcyx5
>>96
世界観の違いは別にいいんだよ
クロスSSにかこつけて蹂躙を正当化しようとする儲がうざいんだ
>>97のいうとおりだ
もともと違ってるのに、わざと悪い方向に違いを広げているように見えるんだよ

100 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 21:59:03.87 ID:DhEfpXni
そもそも>>84のレスに答えが入ってるだろw
この手の奴はアホか釣りか、
どっちにしても一緒にされたくないわって言ってるじゃん

101 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/05(月) 22:05:59.07 ID:7CFhV60a
クロスSSを面白くするのはそれぞれの世界観をどうつなげるかだよな

特にここなんてなのは中心だからクロス元の世界観の説明やそこからどんな行動原理が考える事ができるかとか

Aの描写があるからBになるをきちんと説明して元ネタではこうだったからこうじゃなきゃいけない!ってのはおかしいし読んでて面白くない

まぁつまりどっちの元ネタも知らない人が読んでも面白い風になればいいんじゃねーの

102 : 忍法帖【Lv=16,xxxPT】 :2011/12/06(火) 01:19:44.08 ID:XPcQtk2c
>>101
禿同

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/06(火) 08:43:05.29 ID:83KOYGcc
>>101
そうそう
R-TYPEではこうだったからこうならなくちゃおかしい!はおかしいし読んでて面白くない
ここはなのは中心のスレなんだから

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/06(火) 16:46:44.88 ID:YnuULtmg
STGが好きで、R-TYPEも好きだけど、なのはも大好きな俺には耳が痛い話だぜ・・・。
だけど、個人的にはΛはやりすぎだと思う。
というかそもそも科学技術のベクトルが全く違う世界だし、バイドが出てきた時点で物語に終わりが見えないので、クロスさせる必要性が感じられなかった。
まぁ「作者が書きたいから書いた」といわれてしまえば終わりなんだが・・・

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/06(火) 18:17:06.44 ID:bKdLEqT/
クロスさせる必要性とか言い出したらキリがないというか
クロススレの存在意義に関わってくるぜ
SSは書きたいから書いたが全てなんだから
それを面白いと思うならそれでいいし
合わないと思うなら切り捨てればいい
だが好きだろうと嫌いだろうとお互い過度に押し付けるのはやめてくれ

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/06(火) 18:45:34.18 ID:83KOYGcc
お互い?
???
お互い?????


…はぁ

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/06(火) 19:34:53.93 ID:ZnKv4g4F
つまり誰かが別のR-TYPEクロスを書けばいいわけか
でも絶対「Λは〜なのにこっちは〜」とかいちいち比較して見下しそうだな

108 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 19:48:40.02 ID:4+Lw/8Zg
どうもずいぶん遅くなってしまいました
EXECUTOR12話を21時半ごろから投下しますー

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/06(火) 20:07:35.29 ID:bKdLEqT/
待ってました


110 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 21:32:06.01 ID:4+Lw/8Zg
■ 12



 海鳴市から、沖合いの水平線に上昇していく光が見えた。
 日本南方、小笠原諸島付近にいたアメリカ海軍のイージス艦「ケープ・セント・ジョージ」は、ソ連のミサイル発射を偵察衛星により探知してから6分後、迎撃用スタンダードミサイルSM-3を発射した。
 大推力で地球重力を振り切っていくR-7ミサイルを追いかけ、SM-3は軽量な弾体を生かして加速していく。

 迎撃ミサイル発射と同時にケープ・セント・ジョージはハワイ真珠湾にあるアメリカ海軍太平洋第3艦隊司令部へ報告した。さらに27秒後、真珠湾司令部からもケープ・セント・ジョージへ、ソ連のミサイル発射を確認したと連絡した。

 さらにその19秒後──SM-3が目標に命中するまでの予想時間98秒前──、迎撃中止が真珠湾司令部より命じられた。
 ケープ・セント・ジョージではただちにその理由を質問した。
 このやりとりに3秒を要した。

 SM-3迎撃ミサイルは、ロケットモーターで加速しある程度の距離まで接近した時点で衝突体を切り離し、敵ミサイルにぶつけて破壊するシステムである。
 ミサイルの最上段までは推力の大きいロケットエンジンが装備されているが、衝突体には姿勢制御用のスラスターしか装備されておらず自爆機構は持たない。
 衝突体が切り離されてしまえば、その時点で攻撃を中止することはできなくなる。

 ソ連は巨大UFOに向けたミサイル攻撃を決定しNATO諸国へ報告を行っており、地上を攻撃する目的のミサイルではないと発表している。
 そのため、ただちにSM-3を自爆させR-7へのダメージを避けよという命令だ。

 通信終了より5秒後、艦長とCICの間で命令の復唱が行われ、飛翔中のSM-3へ向け自爆信号が送信された。
 迎撃ミサイル発射から69秒後、目標命中までの予想時間75秒前の時点で、R-7を目指して飛んでいたSM-3は、沖縄諸島上空の成層圏で自爆した。
 破片のほとんどは風に流され、海上に落下するとみられた。



 同じころ、アメリカ・カリフォルニア州にあるパロマー山天文台では、口径200インチ(約5メートル)を誇るヘール望遠鏡を南天に向け、巨大UFOを狙っていた。
 元々同天文台で行われていた地球近傍小惑星観測プロジェクトの兼ね合いもあり、地球に接近した小惑星様の物体である巨大UFOを観測することに好都合であった。
 巨大UFOは遠地点がほぼインド洋の中央付近で、アメリカ大陸から見上げた場合、北西の空からゆっくりと昇り、地平線付近をスピードを上げながら移動して高速で北の空を突っ切り、徐々に進路を南に変えて南東の空へゆっくりと沈んでいくという動きをする。

 これほど極端な動きをする天体を、大型望遠鏡の赤道儀で追跡することはできないが、天球上の見かけの動きが遅くなる、昇ってきた直後とアメリカ大陸を通過して南側へ出た後の時間帯を狙って望遠鏡を向けることが可能だ。
 ヘール望遠鏡の解像度なら、地球から2万キロメートル程度の距離にある直径100キロメートルの物体を、表面の模様や色まで読み取れる。
 パロマー山天文台にはNASAからも技術者が緊急派遣され、観測技師たちと、望遠鏡のオペレーションについて打ち合わせを急いだ。

 ヘール望遠鏡の鏡筒先端には暗幕が掛けられ、核爆発による強烈な光線で反射鏡や撮像センサーにダメージが及ばないよう防護されている。
 もう数分ほどで、カスピ海から発射された12基のR-7ミサイルが巨大UFOに命中する。

 ソ連は先制攻撃を主張した。

 もし巨大UFOが地球にやってきた目的が侵略攻撃であるならば、後手に回ってからでは勝ち目はない。
 宇宙空間から砲爆撃をされ、都市が破壊されてからでは遅いのである。
 ソ連中央共産党書記長は、アメリカ大統領とのホットラインでそう言った。

 両国首脳が電話を繋いでいる間にも、ミサイルは宇宙空間をまさに驀進し続けている。
 R-7の場合、最終突入体を分離する直前まで軌道制御が可能であり、地上からの指令で攻撃を中止することができる。
 さらに弾頭には安全装置がかけられており、最終突入体を分離させた後でも装填された核爆弾を不活性化させることができる。

 アメリカは、異星人との戦争を起こさないことを最優先するべきだと主張した。

 互いの意思がどうあれ、先制攻撃をしてしまっては戦闘を止める大義名分を失ってしまう。
 こちらから仕掛けたのであれば、常識上、相手には反撃をする権利が生じてしまう。
 地球の国際法慣習が異星人に通用するかはわからないが、彼らがこちらからの先制攻撃を受けてもそれを許してくれる寛大な種族とは限らない。

111 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 21:35:37.26 ID:4+Lw/8Zg
 ソ連首脳部には焦りがあった。
 そして、アメリカ首脳部には油断があった。
 異星人からの情報提供があるという事実が、彼ら異星人とて万能ではないというもうひとつの事実を忘れさせていた。
 あの巨大UFOは異星人たちの船ではなく、現在地球上空では異星人たちが無人機動要塞たる巨大UFOを撃破するために戦っている。
 そこへ核ミサイルを撃っては、異星人の艦隊を巻き添えにしてしまう可能性がある。

 しかし、ハワイ・真珠湾にある太平洋艦隊司令部では、ホワイトハウスとは逆の決断をした。
 地球に接近する未確認飛行物体を、全く無視して迎撃しないということはできない。それは軍の存在意義を否定してしまう行動である。
 街の上空に未知の航空機が飛んでいるのにスクランブルをしないというのは、もし敵の爆撃機が街に爆弾を落とそうとしても防衛をしないと言っているのと同じである。
 軍とは国民を守るための組織である。
 地球に──すなわちアメリカ領空に接近する敵宇宙船に対しても、防衛のため、攻撃を加える必要がある。

 よしんばそれで抗議を受けても、正当防衛であると主張しなければならない。

 他の星では知らないが地球ではそうなのだ。
 この攻撃には地球の防衛の意志がこめられており、地球だろうが宇宙だろうがそれを主張しない者は生きていけない。

 意識が、太平洋の真ん中の小島から、銀河系にまでいっきに広がっていったように感じていた。
 真珠湾に建設された太平洋艦隊司令部では、これまでかつてないほどに、司令室に詰める将官たちの意識は高まっていた。
 軍人として、避けられない試練である。立ち向かわなければならない試練である。
 たしかにアメリカはこれまで異星人に数々の便宜を図り、さまざまな技術を学び、研究してきた。
それは時に陰謀論として語られ、政府を批判する材料となっていた。そういった批判の対象に所属する人間は、市民の糾弾に心を痛めながらも、その研究がアメリカの、ひいては地球の役に立つことを信じていた。
 それを証明するときが来たのではないか。

 自分勝手な市民は軍の隠蔽工作だ何だとうるさいかもしれないが、そんな市民であっても守らなくてはならない。
 それが軍人として、国を運営していく組織の人間として為すべきことではないのか。

 真珠湾基地からの問い合わせに対し、ホワイトハウスは正式に迎撃中止を伝達した。結果的に独自判断となった太平洋艦隊のSM-3自爆を追認した形になる。

 司令室の大スクリーンには、飛翔するソ連R-7ミサイルの軌道がマッピングされていた。
 もうまもなくあと20秒ほどで巨大UFOに命中する。命中予想地点は、インド洋上空、高度2万1700キロメートルだ。
 水素爆弾によって発生するβ線とγ線はそのほとんどがヴァン・アレン帯とオゾン層によって遮蔽され、地表に降り注ぐことはない。また放射性降下物も人体への影響はほとんど無視できるレベルと予想された。

 ハワイからはインド洋の空は見えないが、ニューヨークからは、南東の空に新星のように火球が輝く光景が見られるだろう。



 ミッドチルダ・ヴァイゼン連合艦隊は、それぞれの戦隊ごとにインフィニティ・インフェルノ内部の空間に分散して待機し、重力アンカーを展開してしっかりと艦を固定した。
 このインフェルノが、地球の核ミサイルでどれだけのダメージを受けるのかはまったく予想が出来ない。
 シールドですべてはじき返してしまうか、それとも破壊されるか。
 もしインフェルノに対し核ミサイルが有効であった場合、これまでの戦闘でダメージが蓄積していた外殻がいっきに崩壊してくることが考えられる。

 その場合、艦内の人工重力にしたがって外壁は内部に向かって落ち込んでくる。
 外殻の厚さは数キロメートルもあり、これに巻き込まれれば次元航行艦であってもひとたまりもない。生き埋めになって脱出できなくなることが考えられる。

 艦を分散させて、艦隊が丸ごと埋まってしまう事態を避ける。
 クラウディアとヴォルフラムは外空間への脱出に備えてインフェルノの後部に待機していた。

 ミサイル命中まであと15秒。
 全艦の乗組員たちに緊張が走る。

 10秒。5秒。エリーは懐中時計を取り出し、命中予想時間を読み上げた。

「弾着──今です!」

 発令所に、張り詰めたような緊張と沈黙が満ちる。

112 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 21:38:38.83 ID:4+Lw/8Zg
 インフェルノは静かにたたずんでいる。

 不発か。あるいは無弾頭だったか。
 乗組員たちが安堵しかけたそのとき、計器をにらんでいたヴィヴァーロが発令所を呼び出した。

「副長、こいつは遅発信管です!ミサイルの弾頭は12発全弾、インフェルノの外殻にめり込んでます!」

 前方にいたミッド艦隊の艦では、大質量核爆弾の激突によってインフェルノの外殻が揺れ、細かい破片を散りばめながら外殻が軋んでいるのが見えていた。
 時速数万キロメートルという猛スピードで飛んできたミサイルは、命中の8秒前に最終突入体を切り離し、そしてインフェルノの全長に対し満遍なく、均等に命中させた。
 強固な球形の圧力容器に装填された水素爆弾は、命中して敵の船体──対地攻撃であれば敵陣地の地中深く──にめり込んでから起爆する。
 インフィニティ・インフェルノの船体に、起爆用原子爆弾が放つ崩壊熱によって赤みを帯びた12個の球体がめり込んでいる。
 このデザインは、かつてソ連が打ち上げた人類初の人工衛星、スプートニク1号を模して作られたものだ。
 球形は最も堅牢な形状であり、その球体に4本の制御用アンテナが取り付けられている。これは地上からの指令を受信し、また弾体の重心から離れた部分の質量を回転させることでスピンによる姿勢制御を可能にしている。
 この構造のため、最終突入体は目標命中まで精密な制御が可能であり着弾誤差も小さく、また安全に運用することができるようになっている。
 ソ連は特に堅実な設計を好む。
 それがこの、球体にアンテナが生えた独特の形状の核爆弾を生み出している。

「命中箇所は!魔力反応の逆探知はできますか!?」

「全艦、全域にわたってます!本艦至近には、左30度上方25度、距離8000メートル!こいつが爆発したら支柱が折れます!」

「艦長、ミッド艦隊が巻き込まれます」

「この際構っていられません、本艦の脱出を最優先します!
ルキノ、機関室へ魔力炉出力全開、ミサイル爆発と同時に結界魔法へ出力を切り替えてください!フリッツ、ただちに離床、全速反転して外空間へ向かいます!
重力アンカーは私の合図で解放してください!」

「了解……航海長、エンジンの具合はどうですか!?フルスロットルで何秒もちます」

「こちら機関室、魔力炉出力は33パーセントで30秒が限界です!それ以降は出力を18パーセントに落とします。
エンジンノズルは2軸とも無事です、フリッツ、目いっぱい吹かして大丈夫よ!」

「副長」

「それだけあれば十分です──電測長、地球ミサイルの監視を継続!爆発の兆候を見逃さないでください!」

「わかりました!おそらく30秒単位のカウントです、信管は電流爆破式かと、これなら起爆直前に大電流が出ます」

「了解──ポルテ、一応ミッド艦隊に連絡を!ベルンハルト司令に伝えてください」

「はい副長!」

 ポルテが無電を打ち、エリーは懐中時計のストップウォッチをセットしなおす。
 ミッド艦隊の側でも、探知したミサイルの命中箇所から、少しでも離れるように各艦が移動しつつあった。

「(シールドが有効なら弾頭が突入してきた時点で防いだはず──ということは!)
電測長、本艦より後方に命中したミサイルはありませんか!?」

「いえ副長、最も後部に命中したのは先ほどのものです!」

「了解、フリッツ、重力アンカー解放!ただちに全速反転、インフェルノ後部へ向けて全速で走ってください!ルキノ、魔力炉出力33パーセントで運転開始!30秒きっちりもたせてください!」

「はい!」

 後部メインノズルから魔力光を激しく吹き、ヴォルフラムは上昇していく。
 クラウディアはこのままインフェルノ艦内に残るつもりのようだ。

113 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 21:41:59.98 ID:4+Lw/8Zg
 インフェルノの後部は、並んでそびえている巨大なエンジンのうち1基がアルカンシェルの被弾によって脱落しており、直径2キロメートルほどの穴が開いていた。
 クラウディアはここからインフェルノ内部に進入してきたのだ。
 この穴なら船体構造が頑強な部分なので、ある程度は耐えられる。
 巨大な植物が根っこごと引き抜かれたように脱落したエンジンノズルは、直径が800メートル近くにわたり、スカート部分だけでも1キロメートル以上はある。
 エンジンにはジンバル機構が備わっており、円弧状の金属の塊が、ノズルに絡みつくようにしてアクチュエーターの役割を果たしていた。
 これも歯車や油圧シリンダーではなく、鉱物が結晶を成長させていくように増殖した金属元素が固まってできたものだ。内部の樹脂を移動させることで駆動している。

 この戦艦自体が、巨大なバイオメカノイドであり、金属生命体のようなものである。
 ノズルの根元に見える潤滑油のような脂状の液体は、培養した有機物細胞を金属と金属の隙間に塗りこんだものだ。
 人間が、筋肉と骨の間に脂肪細胞が充填されるように、バイオメカノイドは無機金属の外骨格を有機物油脂で潤滑している。
 彼らが体内で生成するグリースの成分は反応性の高いアルカリ金属なので、これはスライムの材料として排泄し、別に有機物を食べることで油脂を摂取している。
 まさに異形の生命体である。

 そして彼らには、もしかしたら生物と機械を区別する概念がないのかもしれない。
 このインフィニティ・インフェルノは、全長100キロメートルの宇宙戦艦であると同時に、全長100キロメートルの巨大生命体でもある。
 機械のように見える部分も、あくまでも彼らバイオメカノイドの肉体である。
 だとすれば、艦船としては一見無駄に見えるような二重の中空構造も、艦内の複雑な通路の入り組み方も、一見何の役に立つかわからないような動く床や脈動する通気孔も、それが生物であるが故の現象ということになる。
 インフェルノは小型のバイオメカノイドをいわば寄生虫のように宿し、彼らを自分の肉体に住まわせることで生命活動を手伝ってもらっている。
 艦内の通路はインフェルノの血管であり、その中をバイオメカノイドが赤血球や白血球のように流れるのだ。

 そして、艦内に侵入したものがいればただちに急行し、排除にかかる。

 生物ならば、脳や心臓は存在するだろうか。
 全身の運動を司り、ここを破壊されたら死んでしまうというような箇所は存在するだろうか。

 エリーは士官学校でも、人並みにSF小説を読んではいた。
 あくまでも読み物として、考証の正確さなどはあまり気にせずにいたが、その中でたまたま覚えていたアイデアがあった。

 人類が進化の末、惑星サイズの巨大な身体を手に入れるというものである。

 そのアイデアが、バイオメカノイドの生態に恐ろしいまでに合致するのではないかとエリーは直感した。

 バイオメカノイドは人類の姿、超古代先史文明人が進化の果てにたどり着いた姿だ。
 今の人類にとっては異様に見える姿も、彼らにとってはそれが当たり前なのかもしれない。
 バイオメカノイドの内部から見つかる、小さなマイクロマシンのような金属粒は、内部にトランジスタを内蔵し簡易なコンピュータのように振舞える。
 しかし、半導体でできているからといってそれがただちに人工物であると断定することはできない。
 これも、スケールを拡大すれば1個の神経細胞に見立てることができる。
 そう考えた場合、バイオメカノイドは神経細胞がシナプスをつなぐようにマイクロマシン同士が連絡を取り合い、単体では意味を持たない個体が集まって群体になることで、あるひとつの知能を持つことが可能になる。

 それはもはや人工知能というよりは、人工生命と呼べるものかもしれない。

 バイオメカノイドは、惑星TUBOYの住人たちをも自らに取り込み組み込んで、金属と有機物が融合した生命体へと進化を遂げた。
 あの幻影が見せたかつての惑星TUBOYの姿、あそこにいたバイオメカノイドたちは、山林に隠して配置された兵器というよりは、ただその場に住んでいる野生動物のようにさえ見えた。
 それは彼らが彼ら自身の生態系を築いていたということだ。
 惑星TUBOYは人類のための惑星ではなかった。

 人類よりはるかに強大な原住生物が跋扈する星だったのだ。

114 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 21:46:17.84 ID:4+Lw/8Zg
「前方に飛行型バイオメカノイド発見、多数出現しています!」

 ヴィヴァーロが知らせてくる。
 壁が崩れて穴の開いた通路から、ガのような姿をしたバイオメカノイドが、耳障りな羽ばたき音を響かせて飛び出してくる。
 テレビの砂嵐のような青い色をした個体と、それよりひとまわりほど大きな、紫色の目玉模様をした個体がいる。

 ガは触角から電撃を放ち、羽から金属粉のようなものをこぼしている。

「発令所よりCICへ、対空戦闘用意。前方目標群アルファへ2番主砲照準してください」

「こちらCIC、対空戦闘用意、前方、目標群アルファ、方位0-0-0。2番主砲射撃用意よし」

 2番主砲の射撃室には、作動不良を起こした他の砲塔からカートリッジを移しかえ、可能な限り連続射撃をできるようにしている。
 艦載魔導砲のカートリッジはデバイス用のものに比べて非常に大型であり、人力装填も不可能ではないがどうしても時間がかかってしまう。

 連続発射可能な弾数は32発だ。カートリッジはリング型のマガジンに格納され、ターレット直下に据え付けられる。これを撃ちきると、いったん空カートリッジを外して新しいカートリッジを取り付けなおす必要がある。

「発令所よりCIC、ガードナー、前方の敵機群を最短距離で突っ切ります。CIC指示の目標、主砲、撃ちー方はじめ」

「了解、CIC指示の目標、トラックナンバー3-6-2-0、主砲、撃ちー方ーはじめ」

「撃ちー方はじめ!」

 両舷全速で航行しながらの射撃のため、照準は真正面の敵だけに絞る。
 レーダーが探知し自動的に射撃管制システムに入力された照準数値に、トリガーを握るレコルトの操作で、ヴォルフラムの主砲は次々とバイオメカノイドに砲撃を命中させていく。
 金属が燃焼する激しい閃光を散らし、破壊されたバイオメカノイドの破片が飛び散っていく。
 回避運動を行わず、全速力で突進するヴォルフラムの舷側や甲板にバイオメカノイドの破片や、砲撃をかわしたバイオメカノイドが取り付こうとして弾き飛ばされ、金属がこすれる音が艦橋にも響き渡る。

「前方より敵機接近!緊急回避!」

 掛け声とともにフリッツが舵輪を右へ押し込み、ヴォルフラムの艦体が鋭く右ロール運動をする。
 傾いた艦橋のすぐ脇を、紫色のガ型バイオメカノイドが突き抜けていく。明かりに誘われるように艦橋に突っ込もうとしていた。触覚がアンテナの表面に触れ、細い金属が電流によってはじけるように燃える。

 エリーは自分のデバイスを起動させ、ディスプレイを傍らに出す。
 このデバイスで、外部の電磁波の量、放射線の量を測定できる。

 地球ミサイルの起爆する瞬間を逃さず捉えなくてはならない。

「舵戻しますよ砲雷長!」

「了解、自動追尾は問題なしだ。引き続き目標群ブラヴォーへ主砲照準」

 ヴォルフラムクルーの絶妙なコンビネーションを、なのはは発令所の後ろで固唾を呑んで見守っていた。
 訓練しぬかれた技量と同時に、それは艦の乗組員全員が互いに信頼しあうことで生まれる意思統一の結果である。
 乗り組んでいる全員、ヴォルフラムの乗組員総員53名が、それぞれの仕事をきっちりとこなすことで意思をひとつにし、ヴォルフラムというひとつの艦を操る。
 自分もこれまでに何百人という魔導師を教導してきたが、ここまでの連携をさせることができただろうか。
 かつて機動六課で新人たちを訓練したときも、ここまでの錬度を持たせることができていただろうか。

 あれから8年、はやてが育てたこの艦のクルーは、今、はやてがいなくても自分たちでしっかりと、戦っている。

「電離イオン濃度上昇、外空間に出ますよ!」

 地球に接近するインフェルノの艦体を、ヴァン・アレン帯が包み込む。

「ミサイル起爆!本艦後方右舷160度、距離37000!」

「!!」

 ヴィヴァーロの声と同時に、前方の宇宙空間が白く染まった。

115 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 21:49:37.77 ID:4+Lw/8Zg
「撃ち方やめ!エンジンストップ、惰性で航行!機関室、全エネルギーを結界魔法へ切り替え!最大出力でシールド展開!!」

「シールド展開よし!」

「衝撃波、本艦到達まであと12秒!」

「結界魔法、可視光透過率0.75パーセントまでカット!ヴィヴァーロ、対地スキャンレーダーを注意して!」

 インフェルノの巨大なエンジンノズルに遮られ、炎の壁が出現しているように見える。
 外殻内部で爆発した核爆弾は火球で船体を抉り取り、莫大な熱エネルギーで金属を燃やし、イオン化させ、プラズマガスを吹き飛ばす。
 放出される大量の電磁波にレーダーが一時的に利かなくなり、通信回線も切れる。

 爆風に巻き込まれたバイオメカノイドたちが炎の中をのたうちまわり、塵のように飲み込まれていく。

 惑星TUBOYから大気を抱えて持ってきたインフェルノの艦内は、一瞬にして数万度にまで熱せられた。
 宇宙空間には本来存在しないはずの大気があることにより、窒素や酸素の原子が励起され、β線のエネルギーを電磁波に変換し、大量の熱と光を放出する。
 外殻の内側を満たす光に包まれ、黒い宇宙空間が雲のように、白い月を包んでいる。

 それはまさに、INFERNO──煉獄のような光景だった。



 ミサイル命中、起爆成功を確認したソ連は、アメリカへも確認を要請した。
 この攻撃は人類の総意で行われたものである。
 もし万が一にも地球への訪問が目的であったとしてもこのような接近の仕方では攻撃されてもやむを得ないことである。

 現状、宇宙空間における軍事力ではアメリカはソ連に遅れを取っている状態である。
 大気圏外まで進出して弾着観測を行える戦闘機はMiG-25以外に事実上なく、アメリカの保有する戦闘機では過去に『F-104 StarFighter』が大気圏離脱に成功していたが、基礎設計が古く実戦には耐えられないとされていた。

 アメリカ宇宙軍はレーザー衛星を中軌道に配備しているが、ソ連はさらに月軌道まで到達する衛星を持ち、事実上この宙域を支配している。
 また各国の保有する対宙ミサイルはこれらの衛星もしくは武装した宇宙船を破壊するためにつくられている。
 もし巨大UFO──敵宇宙船が月軌道以遠まで離れてしまった場合、アメリカの持つミサイルでは届かなくなってしまう。

 巨大UFOの追跡を引き継いだアメリカ海軍第5艦隊では、巨大UFOの先端部分から長さ2キロメートルほどの大きな破片が脱落したことを観測した。
 さらに1キロメートル程度の破片も数個が分裂し、地球大気圏への落下コースをとっていることが確かめられた。
 これほどの大きさの物体となると、大気圏で燃え尽きることなく地上への激突は必至である。
 もし破片が市街地へ落下した場合の被害は想像を絶する。

 アメリカは直ちにASM-135ミサイルによる大気圏外での破片迎撃を発令した。
 同時に、ASM-135で撃ち漏らした破片に対しては世界各地に展開しているイージス艦によるスタンダードミサイルで迎撃する。

 SM-3の最大到達高度はおおよそ数百キロメートル程度であり、宇宙空間より落下してくる物体に対してはここが最終防衛ラインとなる。
 この高度を突破されてしまうと破片の破壊は困難になる。
 可能な限り破片を小さくし、地上への激突時のエネルギーを分散させなくてはならない。

 日本海上自衛隊も、舞鶴および横須賀に待機していた護衛艦を緊急出撃させ、対空ミサイルの冷却を解除して迎撃態勢をとった。
 海鳴市に程近い航空自衛隊小牧基地からはE-767空中管制機が発進し、巨大UFOから分裂した破片の追跡を行う。

 インフェルノの軌道が上空を通過する、東南アジア・日本・アラスカやカムチャツカ地方への破片落下が予想された。

 日本近海に展開した日米ソの全艦艇が、上空監視レーダーのデシベルをいっぱいに上げての捜索を続ける。
 分裂した破片は地球の重力に捕まり、秒速数キロメートルの猛スピードで大気圏に突入する。
 ヘール望遠鏡による観測で、インフェルノはなお船体の形を保ち、航行を続けていることが確かめられた。
 パロマー山からは、南東の地平線に燃え上がる、黄銅色に焼けた空が見えた。水素爆弾による強烈なγ線とβ線が大気を加熱し、放射線の高いエネルギーで電離したイオンが、蛍光を放っている。
 上層大気は赤や緑の色とりどりに輝き、混ざった光は大気によって青色の周波数領域を散乱され、淡い茶色の原子雲となって地上へ届いた。
 東南アジア各国や日本では、西の空に茶色く変色した領域が現れ、太陽を包み込んだ。
 アメリカでは、真夜中であったにもかかわらず東の空が夕焼けのように黄色く輝いた。

116 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 21:53:05.33 ID:4+Lw/8Zg
 その光は、かつて18年前、2005年の海鳴市上空に輝いた光と同じであった。

 2005年の日本におけるクリスマスの夜は曇りであり、夜空が黄銅色に輝いていたことを覚えていた人間はそれでも少なかった。
 しかし、当該時刻に日本上空を飛んでいた人工衛星にみられた不自然な軌道の乱れ、また10基以上を数える中軌道衛星の通信途絶から、この夜の日本上空で大規模な爆発現象が起きたことは、宇宙進出能力を持つ先進国軍の間では確信されていた出来事だった。

 ソ連空軍はTu-95長距離偵察機を東シナ海に飛ばし、弾着観測と宇宙から降り注ぐ放射線量の観測を行っていた。
 その結果、今回の核攻撃ではβ線が最も強く、過去の爆発現象とは異なることがわかった。過去の爆発では、光子およびγ線の量が多く、これは高エネルギー電磁波が放出されていたことを示す。
 2005年の海鳴市上空で起きた爆発は核融合ではなく、対消滅によって起きたことがこれでほぼ確実になった。
 対消滅の場合、通常物質と反物質の衝突ではエネルギーは高いエネルギーを持った光子(フォトン)として放出される。
それに対して、水素爆弾によって生じる電磁波にはβ線が大量に含まれるので、これによって爆発した物質がなんであるかをある程度特定できる。

 今回の核攻撃で、爆発の生じた場所までの距離を正確に測定できたことは、過去の爆発で生じた痕跡が、どのようにして地上に届いたかを推測することに役立つ。

 2005年の海鳴市上空で起きた爆発では、放出された電磁波が非常に大きなドップラーシフトを起こしていた。
 すなわち、強力な重力場によって歪曲された空間を通過してきたということである。
 これについて、ソ連宇宙アカデミーでは異星人の持つ重力制御技術が鍵を握っていると考えていた。
 恒星間航行を実現するには重力制御技術は必須であり、またその技術があるならばワープ航行ができるはずである。重力制御技術を応用することで、大威力の兵器の危害半径を必要なレベルに抑えることもできるだろうと予想される。

 ソ連はは前世紀から、大出力核兵器の威力制御に力を入れてきた。いかに核爆発が非常な破壊力を持つとはいえ、1発の爆弾だけでは熱線は一瞬にして通り過ぎてしまうため、頑丈に作られた基地建造物などは被爆しても残ることがある。
 また、核出力の向上はそのまま危害半径の拡大に繋がるため、出力を上げすぎてしまうと影響を受ける範囲が広がり、兵器として使いにくくなってしまう。
 20世紀中ごろに開発されたツァーリ・ボンバ水素爆弾でも、核出力50メガトンで20キロメートル以上の危害半径を持っていた。
 現在、対宙ミサイルとして配備されているトリチウム爆弾は爆風よりも電磁波としてエネルギーを放射するように作られているため、核出力の割には危害半径は小さくなっているがそれでも地上では使えないものである。
 単純に核出力を落とすだけではなく、出力を維持したまま攻撃力を狭い範囲に絞り込むことができないかというのは長年の課題であった。

 異星人の兵器は、それを実現している。
 2005年の冬に観測された爆発現象のエネルギーは、地上で観測された電磁波と放射線の量から単純に逆算すると、地球の半分ほどを抉り取ってしまうような巨大なものであると計算された。
 そのような爆発が、高度わずか1200キロメートルで起きていたなら、日本どころか太平洋が無事では済まなかっただろう。
 しかし現実には、オゾン層が傷つくようなこともなく、わずかな放射線は大気圏ですべて吸収され、人々には影響はなかった。
 巨大な爆発が、わずか数十キロメートルの範囲に押し込められ、その中でだけ攻撃力を発揮した。
 おそらく巻き込まれた衛星もあっただろうが、少なくとも、あれだけの規模の爆発で、衝撃波で吹き飛ばされたり太陽電池パドルが折れたりといったような現象は観測されなかった。
 それだけでも、異星人の技術力がはるかに高いレベルにあることは間違いない。

 巨大UFOは地球接近を続け、船体は日本上空を通過して北極へ向かった。
 分裂した破片は減速して軌道を下げ、日本近海への落下がほぼ確実となった。

 若狭湾と相模灘に展開した海自イージス艦から、SM-3迎撃ミサイルが破片に向けて発射された。
 偵察衛星による照準と組み合わせ、破片を確実に破壊する。
 イージス艦のレーダーに映った破片は、全長が数百メートルほどの、楔のような形状をしていた。

117 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 21:54:57.10 ID:4+Lw/8Zg
 アメリカ政府は太平洋艦隊へ新たな命令を伝えた。
 落下した巨大UFOの破片をすみやかに回収せよ。日本やソ連よりも先に、破片を確保せよ。

 大西洋で回収復元されたエイリアンクラフトの試験を行っていた戦略指揮艦『エルドリッジ』から、横須賀を母港とする同級『ブルーリッジU』へ向け作戦指令が伝達された。
 この任務発令に従い、ブルーリッジUが旗艦を務めるアメリカ海軍太平洋第7艦隊が、破片回収のため日本南岸へ進出していった。
 破片の一部は陸上にも落下する可能性がある。
 その場合、日本領土内の陸上であるために米軍は手が出しにくい。

 アメリカから要請を受けたイギリスが、陸上での破片回収のために諜報員を招集した。
 彼らにとっては、巨大UFOの破片が降ってくる場所がまさに自分たちが潜伏している場所であるということは深い因縁を感じさせることだった。
 この街、海鳴市はいくつもの数奇な運命が交わる街である。
 それはこの数十年間、様々な技術を研究し、それらの由来がやがてひとつの地球外知的文明に収斂していった様を象徴しているかのようであった。

 ケープ・セント・ジョージを含む第7艦隊の任務部隊は、日本南岸に展開し、落下してくる破片を待ち構えた。
 やがて、その中の特に大きな破片が、海鳴市北部の山林地帯に落下する軌道予測が算出された。
 その破片は大気圏突入による空気抵抗よりも大きなペースで減速しており、それが何者かによって制御されている物体であることが予想された。

 第7艦隊はただちにアメリカ本土へ報告し、やがてそれが異星人の宇宙戦艦かもしれないとの返答を受け取った。

 まさにエイリアンクラフトの実物である。

 かつてニューメキシコ州ロズウェルに墜落し、有名なロズウェル事件を引き起こしたのは、地球探査任務を帯びていた異星人の宇宙戦闘機であった。
 地球──異星人が「第97管理外世界」と呼ぶ──は特に異星人にとっても未知の物理現象や科学技術をもたらす世界であったらしく、当初は彼らも地球で活動するのには一苦労をしていた。
 地球現地文明調査任務と地球における宇宙戦闘機開発のプロジェクトに伴い、異星人側の殉職者も少なくない数が出た。
 それでも、彼らは米軍と協力して地球で起きていた数々の超常現象にまつわる事件を解決に導いた。
 最も最近になって起きた事件は2005年冬、日本の海鳴市において発生した異層次元航行型機動兵器の出現である。
 いくつもの次元を──地球において一般的に想像されてきたいわゆる並行世界ではなく、幾何学上の空間次元でもなく、ブレーンワールド理論に基づいて分割されたいくつかの宇宙の領域のことを指す──渡り歩いてきた自律機動兵器。
 異星人の技術をもってしても対抗困難であったこの超兵器は、地球においてついに完全破壊され、その機能を喪失した。
 このときには、地球人の協力者が即席ながらも魔法技術を学び、異星人の提供した携行武器を用いて実戦に投入された。

 異星人の宇宙戦艦は高度なステルス性能を持ち、低軌道や大気圏内に滞在していても地球からの観測を回避する能力があるが、それでも時には人々の目に留まってしまうことがある。
 それら、宇宙戦艦や宇宙戦闘機は、未確認飛行物体すなわちUFOとして目撃される。
 そしてさらに、その中には異星人の艦だけではなく、彼らから技術を学んだ地球人が建造した宇宙船も含まれている。

 元々、北米大陸と欧州大陸の対立からあまり協力関係をとりたがらないアメリカとイギリスが、この異星人問題については手を握っているのも、異星人に対する地球人の協力者であるギル・グレアムの存在が大きかった。

 グレアムはロズウェル事件の当時アメリカに住んでおり、墜落した戦闘機の搭乗員であった異星人を救助したことで、後に彼らの星へ向けて派遣された使節団の一人に選ばれた。
 表向きには──アメリカ国内の関係機関に対しての表向きである──彼らは様々な理由で死亡したと発表され、身分は抹消されたが、そのほとんどはグレアムと同じように異星人の星へ移り住み、それぞれの仕事に就いて活動をしていた。
 グレアムは、その中でも特に出世したひとりだった。
 異星人たちの組織で外宇宙探査と防衛、星間文明同士の紛争解決を任務とする「次元航行艦隊」に所属し、提督にまで上り詰めた。
 グレアムの指揮する艦隊は、異星人──彼らの呼称ではミッドチルダと呼ばれる星の住人──と他の異星人文明との紛争でも大きな活躍をし、数々の戦闘で軍功を挙げてきた。

118 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 21:57:09.12 ID:4+Lw/8Zg
 アメリカは、半世紀以上をかけて解析復元に取り組んできたエイリアンクラフトの実証試験に際し、グレアムの協力を得たいと考えていた。
 異星人の艦隊でまさに艦を指揮した経験のあるグレアムならば、この地球にとってはオーバーテクノロジーの塊である戦闘機を操る術を知っていると期待されたからだ。
 しかし、2023年の12月、グレアムはイギリスの首都ロンドンで爆弾テロに巻き込まれ、その命を落とした。
 ロンドンの新聞社に郵送された犯行声明は、アイルランドに対するイギリスの政策への不満をIRAの名を使って述べていたが、それはIRAを騙ったものであると推測された。

 アメリカをはじめとする先進各国が取り組む異星人からの技術習得を邪魔しようとする勢力が存在する。
 NSAによる捜査で、彼らは極端な人類至上主義を掲げる者たちであるとみられていた。
 ここでいう人類とは地球人のみをさす。
 彼らは異星人は地球人を見下しているのだと説き、家畜のように飼育するのが目的であり人類はそれに対抗しなければならないと主張した。
 既にいわゆるUFO研究家たちの間に彼らは浸透しているとみられた。

 地球に滞在している異星人にとって脅威となるのは彼らのような過激な勢力である。
 フォードも、エリオやウェンディ、チンクたち異星人の官吏を、そういった勢力による襲撃から守らなくてはならない。
 ここでもし地球に異星人の戦艦が墜落したとなれば、なおさら事情を知らない周辺住民との接触を避けなくてはならない。
 そのためには墜落地点をすみやかに捜索特定し、対策人員を派遣することが必要である。

 日本国内であれば、まさか付近の沿岸に揚陸艦を送るわけにもいかない。中京地方ではそれなりの大都市である海鳴市には、ホバークラフトやヘリコプターなどを使用した大規模な兵員輸送は不可能だ。
 必然的に、少人数の諜報員を動員することになる。

 そして、それが可能なのはイギリス特殊部隊のみである。彼らはかねてより海鳴市に研究拠点を所有しており、そこの人員を出動させることが可能であるとアメリカの質問に対し回答した。
 ホワイトハウスでは緊急の閣僚会議が開かれ、検討の結果、イギリス陸軍特殊部隊──SASへの任務依頼が決定された。
 在日米軍の部隊を動かすことは、日本国民への配慮から行えない。
 よって、すでに日本へ入国している、“身なりは一般の外国人ビジネスマンにしか見えない”彼らの出動が最適である。

 落下してくる破片は南大東島上空で高度35キロメートルを切り、オゾン層を通過した。
 この時点で、スタンダードミサイルによる迎撃は中止された。問題の宇宙戦艦と思われる機体は、他の破片よりも遅れておよそ時速6000キロメートル程度まで減速し、最初の破片から14秒後に海自イージス艦の上空を通過した。
 これほどの高度になると、肉眼でも閃光を放ちながら落下してくる物体の姿が見える。
 大気圏突入の際の衝撃波により、高温のプラズマが発生して船体を流れ星のように包み込んでいる。

 海自艦と米軍艦からの迎撃ミサイルにより、破片は3分の1ほどが大気圏で燃え尽き、残りは空中で塊を作って落下していった。
 あとはなるべく人の少ない場所に落ちてくれることを祈るしかない。
 さらに、落下軌道の観測から、宇宙戦艦らしき物体は船体をコントロールしようとしている様子が伺えた。
 つまり、時速6000キロメートルで落下し船体がプラズマに包まれながらも内部では乗組員がまだ生きており、船を操縦しようとしていることを示す。

 現場海域に出動していた海上自衛隊のイージス艦「ゆきなみ」の艦長は、宇宙戦艦の進路前方に無弾頭のスタンダードミサイルを発射するよう命じた。
 SM-3の最大速度は宇宙戦艦の落下速度よりも速いので、ミサイルの軌跡を辿らせることで民家や市街地から離れたところへ誘導することを意図した。
 ただちにセル内のミサイルへ不活性化指令が入力され、VLSから無弾頭ミサイルが発射される。
 不活性化されたミサイルは信管が作動せず、炸薬が爆発しない。SM-3はロケットモーターの応答性が鋭く、マニュアル誘導に切り替えることである程度自由に軌跡を設定して飛ばすことができる。

 ゆきなみから発射されたSM-3は、高度8キロメートルで巡航し、宇宙戦艦を下方から追い越して前方3キロメートルまで出た時点で上昇して速度をあわせ、宇宙戦艦の前方に位置取ってロケットモーターを最大出力で燃焼させた。

119 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 21:59:17.52 ID:4+Lw/8Zg
 SM-3は最上段の速度が時速2万キロメートル近くに達する。
 数十秒ほどで、ゆきなみから発射された無弾頭ミサイルは海鳴市上空を通過し、北部の森林地帯へ落下した。
 異星人の宇宙戦艦がこの軌跡を追うことができれば、市街地への墜落を避けることができる。

 北の水平線に消えていく炎の尾を見送りながら、ゆきなみの乗員たちは、海と宇宙という違いはあるが、宇宙戦艦の乗組員たちの無事を祈っていた。
 地球でもかつて、スペースシャトル・コロンビアが大気圏突入時に空中分解を起こし乗員が全員死亡した事故があった。
 地球よりもはるかに優れた技術を持つ異星人とはいえ、やはり人間が作るものに完璧はない。
 そのような緊急事態に際し、一人でも多くの人間を救いたいと考えるのは、おそらく人類共通の感情である。

 破片のすべてが日本南西諸島沖上空を通過し、海自艦は横須賀司令部へ、米艦はハワイ司令部へ、迎撃作戦の終了を報告した。



 西暦2023年12月29日未明、東の空が白み始める頃。
 海鳴市の西の空に、猛煙の尾を長く空に横切って、巨大な火球が出現した。

 既に日本でも、巨大小惑星の接近により大量の隕石が落下してくる可能性が高いと緊急ニュースで報道され、民間航空会社が運行する旅客機、貨物機は前日の午後からすべて運休していた。

 12月28日の夕方にソ連が発射した対宙ミサイルが小惑星に命中し爆破され、小惑星の軌道を逸らすことに成功したとタス通信を経由して発表された。
 報道では、あくまでもUFOではなく小惑星と伝えていた。
 これまでの戦闘で被弾多数を受けていたインフェルノはエンジンや照明灯などの光を放っておらず、地上から望遠鏡を向けた場合、外見としては金属質の隕石に見えなくもない。

 29日午前2時ごろから流星の数が目に見えて増え始め、午前5時過ぎに紀伊半島沖で海に落下する隕石が目撃された。その後、近畿地方を中心に隕石の落下報告が相次ぎ、中にはビルの屋上に落下して天井に穴を開けたものも報告された。

 そして12月29日午前5時39分、空気が圧縮される衝撃波の音を轟かせ、海鳴市上空に巨大な火球が姿を現した。

 尋常ではなく巨大なサイズの物体が、大気圏に突入してきた。
 あれは隕石なのか。クレーターをつくるような巨大隕石なのか。
 地上から空を見上げても、比較対象物が無いので大きさを目測できない。
 それでも、吹き飛ばされる雲の様子から、火球はかなりの低高度を、浅い突入角で飛んできたことが見て取れた。
 さらに、隕石にしては速度が遅すぎる。
 大気圏外から地球の引力につかまって落ちてくるのならば秒速数キロメートルから10キロメートル以上という猛スピードであり、飛んでくる軌跡を目で追えるほどまで減速するようなことはありえない。
 しかし火球出現からわずか十数秒でそこまで気づくことは、天文学、さらに軍事技術に詳しい者でなければできないことだった。

 多くの人は年末の休暇で自宅で休んでおり、さらに夜明け前の時間では外に出ている者はほとんどいなかったが、それでも数日前より既にインターネット上で騒がれていた巨大隕石接近のニュースを聞いて、望遠鏡をベランダに出して待ち構えていた者もいた。

 そんな市民の頭上を、海鳴市の中心部から見て西側、岬の温泉の上空を、高度おそらく500メートル前後でその火球は突き抜けていった。
 海鳴市は温泉が多いことで有名な街で、海水浴場のそばに隣接するものとさらに内陸部の山間にそれぞれ温泉があり、さらに市内にはスーパー銭湯もある。
 このまま火球が飛んでいけば山間の温泉があるあたりに激突するかと思われたが、火球は高度200メートル程度でわずかに浮き上がるような動きを見せて、山の尾根を飛び越えた。
 ここまで地表に近づくと、火球の大きさを推定することができる。
 山の頂上をすり抜ける瞬間の様子から、火球の大きさは直径300メートル程度に見えた。
 激しく噴出を繰り返す炎を吹き散らして、山肌に掠るように火球が落着する。

 市街中心部からおよそ4キロメートル程度の山間に火球は落下した。
 飛行機の墜落のような爆炎は上がらない。数十秒を置いて、激突時の轟音が小さな地震を伴って海鳴市の市街地を通過していった。

 黒い空に薄青く伸びた火球の跡が、ゆっくりと風に流されていく。
 町は再び、早朝の沈黙に戻る。
 冷たく澄んだ冬の空気に、新聞配達のバイクだろうか、縮れたエンジン音が響いていた。

『目標の停止を確認。各員、行動開始』

 海鳴市北部の山林に隠れていたSAS部隊が、墜落した宇宙戦艦へ向けて接近を開始した。

120 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 22:03:48.72 ID:4+Lw/8Zg
 宇宙戦艦はステルス効果が解けたようで、白色の船体を森の中に晒している。
 艦首や安定翼のような部分は、大気圏突入時の高熱で褐色に焦げていた。なぎ倒された木々が、冬の乾燥した空気で発火してパチパチとくすぶっている。

 SAS隊員たちは煙に紛れて宇宙戦艦に近づき、付近に他の人間がいないか捜索した。
 重要なことは、宇宙戦艦の乗組員が他の事情を知らない民間人、または他組織の工作員に見つかってしまうことである。
 地球には、まだまだ異星人の来訪を歓迎しない勢力が数多い。

 火の手が上がっていれば、地元の消防隊がやってくる可能性がある。
 日本政府による根回しがうまくいっていれば、本件は極めて高度な国際案件であるため自衛隊が管轄する、と説明し民間組織の接近を許していないはずだ。

 宇宙戦艦の船体には、識別番号と思しき文字と、所属を表す国旗だろうか、つるはしのようなものを図案化したエンブレムが描かれていた。
 文字は独特のものだったが、あらかじめアメリカから提供があった、英語のアルファベットと10進法のアラビア数字に読み替えるための対照表に従うと、英語に似た文章を読み取ることができた。
 それによると、船体に書かれた文字は“Vaizen Naval Force 33-071”。ヴァイゼン海軍の33番目の設計案に基づく71番艦、という意味である。
 もちろん、現在地球上にはヴァイゼンという名前の国はない。
 隊員たちは慎重に、宇宙戦艦の船体を捜索し、ハッチのような場所がないか調べた。もし船体機能に深刻なダメージがあり、乗組員が脱出しなければならないとしたら、早急に身柄を保護する必要がある。

 太陽が昇れば、白い船体は隠せなくなる。ビニールシートなどで隠すには、宇宙戦艦の船体は大きすぎる。
 幸いというべきか、墜落地点は海鳴市中心部からは山をひとつ隔てた場所だったので、山道を封鎖することで一般人の目を隠すことは可能だ。宇宙戦艦の乗組員もそれを察し、できるだけ人の目に付かない場所に着陸できるよう山を飛び越えた。

 やがて、船体に穴が空いている箇所が見つかり、そこがエアロックの外部ハッチが脱落したものであることがわかった。
 隊員のひとりが、銃把を使って内部ハッチをたたく。

 数秒後、内部から鍵を外す金属音がして、軋みながらハッチが開いた。

 ここにいるすべての人間にとって、初めての体験となる異星人との接近遭遇である。

 宇宙戦艦の乗組員である異星人は慎重に、外部の大気で呼吸ができるかどうかを確かめながら、一人ずつ外に出てきた。
 SAS隊員たちはあらかじめ用意しておいた毛皮のコートを配る。
 彼らにとって、地球の環境は生存に適したものであるかどうか。
 英語で、寒くないかと質問する。異星人の使用する言語は英語に似ているといわれている。
 出てきた乗組員の中でそこそこ階級の高い士官と思われる者が、大丈夫だ、とやや訛った英語で答えた。
 異星人たちは、一見して地球人とそっくりな姿をしているように見えるが、よく見ると、皮膚の表面の構造や、顔面の骨格などが異なっているように見える。
 特に、肌は非常に白く、やや濃いめの肌をしている者も、その発色具合が地球人とは異なっている。
 また色白な地球人によく見られる、血管が青く浮き出るといったことも異星人には見られない。
 おそらく略式の軍服であろう、厚手の生地の作業着を着た乗組員たちは、腕まくりをしたところに見える肌が、奇妙なほどにつるりとしていた。

 SASでは海鳴市内から山道を経由してマイクロバス2台を持ち込んでおり、宇宙戦艦の乗組員たちはそこの車内へ避難した。
 やや落ち着いてきたのか、乗組員の一人が、地元(自分たちの母星)よりは暖かいとSAS隊員のひとりに言った。ここ日本は現在は冬であり、海鳴市も今朝の気温は摂氏3度まで下がっている。

 乗組員たちの話によると、現在地球に来ている異星人たちは大きく分けて二つの惑星の種族があり、ひとつはミッドチルダ(Midchilda)、そしてもうひとつはヴァイゼン(Vaizen)という。
 この宇宙戦艦はヴァイゼンに所属する艦であり、現在地球に接近している巨大無人機動要塞を破壊するために出撃していた。
 無人機動要塞が地球に近づきすぎてしまったために破壊が困難になり、内部から制圧する作戦を立てていたが、核ミサイルの爆発に巻き込まれて外に弾き飛ばされ、地球に墜落したのだという。

121 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 22:09:28.64 ID:4+Lw/8Zg
 異星人たちとの対話を担当したSAS部隊の隊長は、過酷な作戦任務にあたり心中お察ししますと述べた。
 ミサイルを撃ったのはソ連であり、それに対して通常ならイギリスは責任を持てないが、現状では、みだりに謝罪の言葉を使うべきではない。

 地球はあくまでも自衛のためにミサイルを撃ったのだから、それ自体を非難される謂れはない。
 その意志を示すことが重要だ。
 そして、互いに未知の文明に接触するのなら攻撃を受ける可能性は覚悟してしかるべきである。
 中世大航海時代でも、探検家が原住民との戦いで命を落とす事例はいくつもあった。

「われわれの敵は未知のモンスターエイリアンだ」

 宇宙戦艦の艦長だという、禿頭をした壮年の異星人が言った。
 あの無人機動要塞は未知の生物が巣食っている人工惑星のようなものであり、その内部にいるのは人間のようなヒューマノイドタイプの生物ではなく、意志の疎通が不可能な、怪獣のような生命体である。
 そして、この生命体の襲撃により、異星人たちの母星も少なくない被害を受けている。
 この人工惑星様の無人機動要塞はごく最近発見されたものであり、ヴァイゼンの宇宙戦艦はこれを追撃して地球へやってきたのだ。

「つまり、我々が本当に対処しなければならないのはそのエイリアンというわけか」

「奴らはおそらく真空中でも生きられる。あの巨大な要塞を残さず根絶やしにしなくてはならない」

 SASの隊長は、異星人──ヴァイゼン人、とでも呼べばいいのか──たちの言葉に、非常に切迫した現実感のある恐怖を感じ取った。彼らはまさに戦場の真っただ中から生還してきたばかりなのだ。

 人間が恐れるのは、自分よりも強い力である。
 猛犬に民家の留守番をさせるのは、犬が人間よりも強い力を持っているからである。
 異星人は確かに高い科学技術力を持っているが、それは人間の力ではない。科学技術によって作られた武器は、道具として使うことはできても、人間自身を強くしてくれるわけではない。
 彼らの魔法も、あくまでも超ハイテクを駆使した道具を使って魔法のように見える力を利用しているだけであり、彼ら自身が地球人と違う力を持った肉体を備えているわけではない。

「艦を再び飛ばすことは可能ですか」

「困難です」

 艦長はやや憔悴した顔で、山の斜面に沿ってつんのめるように傾いで止まっている艦の姿を見上げた。
 船体はそれほど歪んでいないように見えるが、乗組員の話によると、核ミサイルの爆発の余波を受けたときにエンジンがオーバーヒートを起こし、出力が上がらない状態だという。
 確かにこの船体には、ロケットエンジンのようなものは見当たらない。
 地球で使われるロケットや航空機のような反動推進ではない。異星人たちの用語では「飛行魔法」と呼ぶ重力制御・慣性制御技術を利用して船体を浮かせているのだ。

「まもなく夜が明けます。取り急ぎ、我々の基地へいらしてください。幸い、我々の基地はこの近くにあります。警護は万全です」

「感謝します」

「あなたがたの艦には、誰も近づけさせません。地球には、あなたがたの──管理局の執務官が滞在しています。
彼らに連絡をとり、対処方法を検討しましょう」

「──わかりました」

 管理局の名前を出したとき、艦長はやや逡巡するように言葉を待ったが、すぐに、肯定の返事をした。
 異星人たちにとっても未知の星である地球で、何はなくともまず生き残るためには、現地住民である地球人の協力を頼るしかない。
 最悪、修理できなければ自分たちの艦はいったん置いたまま、他の艦に救援に来てもらうという方法もある。

 東の空が明るくなり始め、小牧基地より急行してきた航空自衛隊所属のUH-60Jブラックホークが宇宙戦艦を隠すためのブルーシートを被せる作業を始めていた。
 異星人たちは、ひとまず海鳴市内にあるイギリス資本の民間軍事企業が所有する訓練施設へ移ることになった。
 宇宙戦艦には当初76名が乗り組んでいたが、墜落時の衝撃で13名が死亡し、さらに半数ほどが負傷していた。
 彼らの手当てと、遺体の搬出も行わなくてはならない。そしてそれは夜が明ける前に完了しなくてはならない。

 SASは車両の応援を要請し、異星人たちはマイクロバスに分乗して訓練施設へ出発した。

 西暦2023年12月29日早朝の、わずか十数分間の出来事である。

122 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 22:18:20.19 ID:4+Lw/8Zg
 インフィニティ・インフェルノは、命中した12発のトリチウム爆弾によって外殻がほとんど破壊され、内側の船体が分離しようとしていた。
 外殻全体が、一種の増加装甲のような役割を果たしていたのである。内殻部分は全く健在であり、外殻をパージして、内部から新しい艦が出現することになる。
 粉砕された外殻はインフェルノ自身の人工重力によって依然として内殻を取り巻いているが、おそらく次の地球接近で破片は地球の重力に引き寄せられ落下してしまうと予想された。
 もしインフェルノの外殻がすべて地球に落下した場合、その質量は6万ギガトンにも達する計算になる。
 インフィニティ・インフェルノの持つ質量はまさに想像を絶する。

 ミッドチルダ・ヴァイゼン連合艦隊では、トリチウム爆弾の余波を受けて損傷した艦の確認を行っていた。
 艦隊のうち、第97管理外世界へ進出しインフェルノ内部へ突入した艦は296隻である。このうち、188隻が少なくとも何らかの損傷を受け、さらに3隻の通信が途絶えていた。
 艦隊ではただちに広域探査魔法(ワイドエリアサーチ)を使用して捜索を行い、インフェルノ艦首部付近の瓦礫に埋まった2艦を発見した。
 それでも行方が発見できなかった残る1艦については、トリチウム爆弾の爆発前に付近にいた僚艦の報告から、インフェルノの外へ吹き飛ばされた可能性が高いと報告された。

 どのみち、このままインフェルノが地球に接近していけば、もう艦隊は隠れることができなくなる。
 いやおうもなく、地球人の前に姿を見せる決断をしなくてはならない。

「カザロワ司令、行方不明になっているのはわが艦隊の33級巡洋艦です」

 ヴァイゼン海軍では、次元航行艦の艦級を計画案の連番である数字で表す。
 1〜3文字のアルファベットを使用するミッドチルダ海軍との混同を避ける意味もあるが、33級はアルファベットの並びから、ミッドチルダ側からはAE級と呼ばれている。
 これは単純にアルファベットの先頭から数えたものを連番と対応させたものである。ミッドチルダ語では28文字のアルファベットを使うので、28番目まではアルファベット1文字で表し29番目以降はAA、AB、ACと数えていき33番目はAEとなる。

「交信回復の可能性はあるか」

「極めて低いです。この距離では念話は届きません」

「第97管理外世界の軍に拿捕される可能性は」

「予測は不可能です」

 副官は淡々と答えた。
 ミッドチルダはともかく、ヴァイゼンは第97管理外世界の情報をあまり持っていない。
 次元間航路も、ヴァイゼン海軍の制海権はミッドチルダとは離れた方向にあったため、第97管理外世界の近傍に進出することが少なかった。

「よろしい……『リヴェンジ』への回線を開け。ベルンハルト司令に打電しろ。
わがヴァイゼン艦隊の1艦が、先の攻撃により損傷し、地球へ墜落した。本艦はこれより地球へ降下し、遭難艦の捜索を行う。インフェルノ内殻部の制圧作戦には巡洋艦戦隊を充てる」

「了解です」

「降下するのは本艦のみだ。巡洋艦戦隊の指揮はニーヴァ一佐にとらせろ」

「わかりました。『ウリヤノフ』へ打電します」

 通信士が打電の準備にかかる。

 命令を伝えてから、副官はおそるおそるカザロワに尋ねた。

「管理外世界の人間の前に本艦が姿を現すことは軍事相互管理条約に抵触する可能性があります」

 時空管理局がその名の由来とする、各次元世界共同での軍縮条約。
 先の次元間大戦の反省に立ち、過剰な軍備の蓄積を避けるために締結されたこの条約は、各次元世界の軍事バランスの観点から、軍縮とは厳密に管理され各次元世界の歩調を合わせなければ行えないとしている。
 そのため、異なる次元世界間での戦力の移動は厳しく制限されている。

123 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 22:24:24.50 ID:4+Lw/8Zg
 管理世界の正規軍が、管理外世界へ進出する。

 それだけでさえも平時であれば厳しく批判追及される行動である。
 ましてや行き先は、公式には魔法技術が存在しないことになっている世界である。
 しかしながら、そのような世界であっても民間企業や国家組織が独自にコンタクトをとり、魔法技術の開発を行っていることは、もはや公然の秘密である。
 そしてそれは管理局であっても例外ではない。

「次元干渉結界を解除しろ。わが艦は逃げも隠れもしないということを地球の住人にまず知らせねばならん」

 カザロワが座乗しているヴァイゼン艦隊旗艦17級航空戦艦『チャイカ』は、インフェルノを右手に見上げる軌道を取り、日本列島上空へ向け降下していった。

「カザロワ司令、ベルンハルト司令が待機を要請してきていますが」

「断れ」

「ですが」

「墜落したのはわがヴァイゼン海軍の艦だ。同胞を見殺しにすることはできん」

 通信士席のコンソール上で、念話回線の接続待ちを示す緑色のランプが点滅している。

「敵巨大戦艦の撃沈には地球の協力が必要だ。有人惑星上にこれほどまで接近している目標を攻撃するには現地惑星に了承をとらねばならん。
わが艦隊がその作戦立案能力を見せ付ければヴァイゼンはミッドチルダに対して貸しを作れる」

 降下するチャイカの艦橋から、インフェルノの後方で隊列を離れつつあるヴォルフラムの姿が見えた。
 ヴォルフラムには、管理局執務官フェイト・T・ハラオウンが乗り組んでいるはずである。
 ヴァイゼンが擁する次元世界有数の兵器開発企業、カレドヴルフ・テクニクス社に対する捜査のメスを最初に入れたのが彼女であることはよく知られている。

 ヴォルフラムはこのまま管理局へ帰還し、インフィニティ・インフェルノ内部で発見した真実を白日の下に知らしめるだろう。

 そうなれば、ミッドチルダもヴァイゼンも、他次元世界からの非難は免れない。
 ここから先、重要になってくるのはこの第97管理外世界に対する艦隊派遣に、いかに正当性を持たせるかということである。

 次元世界各国が最も警戒するのは、現在のミッドチルダ・ヴァイゼン両世界による二党体制の軍事バランスが崩れることである。
 もしどちらかの陣営が勢力を弱めた場合、対抗する陣営に属している次元世界が相対的に力を強め、その経済力、軍事力によって周辺次元世界を侵食していくことになる。
 二大超大国による調和から、単一国家による世界支配へと移行していく恐れがある。

 そうなってしまうと、もはやどこの次元世界もミッドチルダに対抗することができなくなる。

 それをよしとしない少数の次元世界が、ヴァイゼンに賛同し結束を強めているのだ。ミッドチルダの影響に縛られない経済圏、独自の国際安全保障を、中小次元世界は求めている。
 ヴァイゼンとしては、ミッドチルダに対する牽制役という立ち位置を退くわけにはいかない。

「ミッドチルダの独占体制に我々は対抗せねばならんのだ」

「第97管理外世界がその防波堤になると」

「現在のところこの世界に対するコネクションではわがヴァイゼンは残念ながらミッドチルダの後塵を拝している。地球人にとって次元世界人とはミッドチルダ人という認識のはずだ。
このまま第97管理外世界がミッドチルダ陣営に下るならそれはヴァイゼンにとって非常な脅威となる」

「管理外世界における違法な魔力兵器開発を──ミッドチルダは現地世界の企業を使って行っている」

「常識だ」

「では本艦は」

「連中に見て見ぬふりはさせん。あの小僧──ハラオウン艦長は最初からそのつもりで我々をこの世界に誘い込んだのだ」

 クラウディアは次元潜行にかかり、こちらも艦隊から離れて独自に低軌道へ降りつつある。
 チャイカは日本列島を目指し、クラウディアはインフェルノに先行して大西洋へ向かう。

124 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 22:32:54.95 ID:4+Lw/8Zg
 必然的に、ミッドチルダ艦隊も決断を迫られる。

 このままインフェルノ内部の制圧作戦を継続するか、それともチャイカを追って艦を向かわせるか。
 もしミッドチルダ艦隊がチャイカを追ってくるなら、それは自分たちが第97管理外世界で行っていることに後ろめたい部分があると認めることになる。

 ミッドチルダは動けない、とカザロワはにらんでいた。

 ミッドチルダ艦隊はインフェルノから離れることができない。
 ヴァイゼン艦隊も本隊をインフェルノ制圧作戦に残しているので、これはミッド艦隊を牽制する。
 連合艦隊という体裁ではあるが、実質にはミッドチルダ側はベルンハルトの、ヴァイゼン側はカザロワのそれぞれの指揮下である。互いに命令系統は重ならず、共同作戦をとる独自の艦隊が二つあるという状況である。

 カザロワは発令所のマイクを全艦放送に切り替え、スイッチを入れた。

「同志諸君!我々は現代次元世界人類として初の試みに挑む。第97管理外世界、地球への接触である。
敵バイオメカノイドは地球を目指し、我々はそれを追ってここまで来た。敵巨大戦艦は強大なる力を持って地球を狙い、それはアルハザードの力である。
ミッドチルダがその拠り所にしている魔法とはアルハザードが人類にもたらしたものである、我々は今、その力の源たる存在に対峙しているのだ。
我々が直面したこの状況は次元世界人類にとって大きな変革をもたらすであろう、我々はその第一歩を踏み出す先駆けとなるのだ!」

 決断。
 おとぎ話や伝説などではない、アルハザードの存在は超古代先史文明とそれがもたらした巨大生命体の出現という形で現実的な脅威を目の前に現した。

 バイオメカノイドの出現、そして第97管理外世界を巻き込んだ先史文明技術(ロストロギア)の復元計画。

 そこには、多くの人間たちが待ち望み、しかし目を逸らし有耶無耶にしてきた、次元世界の真実がある。

「下げ舵3分の2、艦傾斜左60度!大気圏突入姿勢をとれ!」

「下げ舵3分の2、艦傾斜左60度!」

「現在高度7800キロメートル、降下速度、毎秒7.5キロメートルに増速!」

 軌道を左へ大きくとり、チャイカは地球へ向かう。
 インフェルノは日本の南海上から太平洋沿岸をかすめるように北へ抜け、ベーリング海を越えてアラスカ上空からバフィン湾へ向かう。
 この軌道では、ラブラドル半島上空で地球に最接近したのち、高度およそ650キロメートル前後でニューヨーク沖を通過する。
 約20時間後にやってくる次の周回では、軌道はやや西へ動き、接近時には日本海上空を通過、そしてニューヨーク上空で地表に最接近することになる。
 その時の近地点高度は360キロメートル程度になると予想された。

 アメリカにとっては、まさに自分たちの目と鼻の先をすり抜けられることになる。

「結界魔法解除完了しました!現在、紫外線およびガンマ線防御レベルは正常です!」

「よろしい、艦傾斜戻せ、アップトリム15度に修正。大気圏突入角を35度にとれ」

「アップトリム15度に修正よし!」

「突入進路に乗ります、大気圏突入角35度」

「高度1000キロメートルを切りました、地球の人工衛星が飛んでいます!」

「衛星は全てマッピング、軌道交錯を正確に回避しろ」

「司令、ヴォルフラムが離脱していきます」

 艦橋からも見える位置だ。インフェルノの向こう側に、太陽の光を受けて星のように輝くヴォルフラムが見える。
 管理局きっての大魔導師、八神はやて二佐が指揮する艦だ。
 はやてのような強大な個人魔力は、管理局にとってはその力の象徴であると同時に目の上の瘤でもある。

125 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 22:39:00.96 ID:4+Lw/8Zg
「構う事はない。艦このまま、降下軌道を維持せよ」

「了解」

 大気圏に突入し、衝撃波を纏いはじめるチャイカの艦影は、ヴォルフラムでも探知していた。
 索敵レーダーが損傷し精度が落ちていたが、それでも艦級を特定する事はできた。
 ヴァイゼン海軍の17級航空戦艦といえば、次元間大戦後の冷戦が最も緊張していた時期に建造された艦で、ミッドチルダや管理局の使用する艦に比べて非常に重武装、重装甲を誇る。
 搭載される魔法兵器の種類も多く、またシールドの強度も高い。

 チャイカの地球降下を探知したヴォルフラムでは、ヴィヴァーロがエリーに報告を行っていた。

「副長、ヴァイゼンの航空戦艦が地球に降りていきます」

 マルチスクリーンに投影された17級航空戦艦のデータに、なのはが発令所の前段に降りてきてスクリーンを見上げる。
 管理局でなじみのあるL級やXV級のようなスマートでシンプルなデザインではなく、手当たり次第に火砲を詰め込んだというような武骨な威圧感を持った外観で、むき出しの機械式魔法陣が前甲板に背負い配置で据え付けられている。

 以前、ヴァイゼン出身の武装局員から広報映像を見せてもらったことがあった。
 対地砲撃を想定した実弾訓練の様子で、その発砲の様子はあたかも艦全体が噴火しているかのような激しい魔力光を放ち、標的として設置されていたダミーの都市群を跡形もなく吹き飛ばしていた。
 また、機械式魔法陣から発射される長距離誘導魔法は数億キロメートルもの射程距離を持ち、偵察機と組み合わせた照準が必要という条件付きながら惑星間での攻撃が可能なほどである。
 第97管理外世界には偵察衛星などもおらず、照準が付かないために撃てなかったがこのような兵器も次元世界は持っているのだ。

「エリーさん、ヴァイゼンは地球へ降りるつもりです」

「そのようですね」

 発令所を振り返り、なのはは胸を押さえてエリーを見上げた。
 ミッドチルダの首都クラナガンに自宅を持っているという環境から、普段目にする報道やジャーナリズムなどではヴァイゼンがミッドチルダに対抗して軍拡を進めているという論調で語られる事が多い。
 その実態がどうあれ、ミッドチルダにとってはヴァイゼンは暴力的な軍事国家と喧伝されている。

「先程の核ミサイル攻撃により、ヴァイゼン海軍所属の巡洋艦が地球へ墜落したとの連絡がありました。
カザロワ司令自ら地球に降りて遭難艦の捜索を行うとの事です」

 ポルテが通信を伝える。

「地球が管理世界の艦に……」

 なのはは血の気が引くのを感じていた。
 地球が次元航行艦に被害を与えた。
 あれほどの規模の爆発で、まさか艦隊全艦が無事では済んでいないだろう。けが人や、もしかしたら死者も出ているかもしれない。地球の攻撃によって、管理世界の人間に死者が出た。地球の武器が、質量兵器が、管理世界の人間を殺した事になる。

「エリーさんっ、あの艦を追いかけてください!」

 発令所の階段を駆け上がりながら、なのははエリーに呼びかける。
 エリーは士官学校時代によく見せていた、慇懃な表情を浮かべた。

「追いかけて……追いかけて、どうするんですか?」

「──っ、もしかしたらヴァイゼンは地球に報復をしようとしてるのかもしれません、だとしたら」

「だとしたらどうするんです。本艦もヴァイゼンに加勢せよというんですか?」

「違いますっ!そんなんじゃなくてっ」

「現時点では攻撃権はヴァイゼン側にあります。事情を汲まないのならばそれが道理です」

 なのはは思わず声を荒げてしまった。
 あの艦は地球を攻撃しようとしているのではないか。核ミサイルが発射されたおおよそのエリアは特定できているはずだ。地上に接近して見下ろせば、次元航行艦の性能ならすぐに発射地点を探し出せるだろう。

126 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 22:45:31.63 ID:4+Lw/8Zg
 事前に偵察機を飛ばしていたことから考えて、おそらく撃ったのはソ連だ。
 また、宇宙空間の高軌道領域にある目標を攻撃できる能力を持つのはアメリカかソ連のどちらかしかない。
 はやてが言うには、爆弾を飛ばすだけならM-6ロケットの先端に誘導装置を取り付ければ……ということだったが、なのはは日本がこのような攻撃を行うとは考えたくなかった。
 日本が攻撃され、人々が魔法の雨を浴びる。
 そのような事態など想像したくない。

「でも、地球は」

「事情を汲まないのならばということです。道理であれば、先に攻撃を受けたのは私たちであり、私たちは次の一手として反撃を行うことができます。
しかし、私たちは地球が私たちの存在を知らないであろうことを把握しています。つまり、地球は私たちを撃つつもりはなかったのだと推測することができます。
地球の立場に立って考慮することが私たちはできるのです」

「エリーさん……」

 論戦になると、エリーは丁寧語を強調するような喋り方になる。
 ミッドチルダ語と英語は文法も似ているので、なのははまだ海鳴にいた頃に感じていた、英語に独特の言葉の組み立て方を思い出していた。

 “地球の立場に立って”という言葉を、エリーは“自分たちが地球人になる”と表現した。
 英語ではそのような構文になるし、そのように喋る方が自然になる。

 それはミッドチルダ語でも同じだった。言語体系が似ているのはそれこそ偶然であろうが、ここでこうしてエリーの言葉を聞くことができたのは、なのはにとっては大きな意味を持っていた。

「航海長、針路2-7-0、速力20、太陽南磁極へ向かいます。本局への帰還ルートを作成してください」

 なのははエリーの前に回り込んで立ち、背の低いエリーを屈んで見上げるようにして食い下がった。
 エリーはミッドチルダ人としては体格が小さめであり、はやてと同じくらいだ。年齢の割に幼く見えることを気にしてはいるようだったが、あるいはそれが堅い身持ちにつながったのかもしれない。

「エリーさん!地球が攻撃されるかもしれないんです、せめてカザロワ司令に確認だけでも!」

 エリーの肩に手を置き、なのはは口角泡を飛ばした。
 自分の故郷が攻撃される、それは非常な恐怖と悲哀である。
 今の地球には、次元世界の魔法兵器に対抗できる力はない。いや、少なくともなのはは無いと思っていた。
 地球においては少なくともなのははただの喫茶店の娘であり、何か特別な知識や伝手があるわけでもない。しいて言えば、士郎がかつて身を置いていた公安警察(Security Police)の世界で、外国の秘密兵器として何かの写真を見たことがある程度だった。
 あるいははやてに聞けば、それがどこの国がいつ頃から開発していたなんという兵器なのかくらいは聞けたかもしれない。
 しかし、なのははそれをしなかった。それが必要になるとは思っていなかったし、普段の話題にするようなものでもないと思っていた。

 本当に映画のように、地球の秘密兵器で魔法に対抗できるのか。そんなことは所詮空想である。

「本艦はただちに本局へ帰還します」

「どうして!」

「なのはっ、やめなよ」

 遅れて発令所に入ってきたフェイトが、なのはを宥めようとする。
 ルキノは機関室から戻ってきて航海の指揮をとっており、フリッツの操舵でヴォルフラムは地球軌道を離脱し、太陽に向けて針路をとっている。

「作戦目標物であったバイオメカノイドのサンプル入手に成功しました。作戦任務を達成するには、これを確実に本局に持ち帰る必要があります。
私たちの受けた命令とはバイオメカノイドの捜索と制圧、確保です。地球を防衛せよという命令は受けていません。地球を攻撃しようとしているのがバイオメカノイドでないのならなおさらです」

「そんなっ、黙って見過ごすなんて、管理世界が、他の世界と戦争になるかもしれないのに、それを見過ごすんですか!?
話せばきっとわかってくれるはずです、それなのに何も、言葉を一言も伝えずに、わかるわけないじゃないですか!!」

「なのは──」

「──高町一尉!!」

 発令所の先頭、艦長席があるところまで歩き、エリーは手すりを握りしめて声を張った。
 普段、冷静に決して昂ぶることのなかったエリーが大声を出したことに、艦橋内は一瞬緊張し、ポルテは自分の席で身を縮こまらせている。

127 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 22:50:28.00 ID:4+Lw/8Zg
「現在の本艦の最高責任者は私です。本艦内では誰であっても、私の指示に従ってもらいます。
──高町一尉を艦橋から退出させてください。デバイスはロッカーにしまって施錠し、居住区から出さないように」

 指を鳴らすフィンガースナップの合図──これは海軍においては武装してここへ来いという意味である──に従い、ヴォルフラムの乗組員が二人がかりでなのはを拘束し、発令所から出させる。
 艦の指揮に支障をきたす人間を、艦の首脳部に入れさせるわけにはいかない。
 いくらはやての友人であっても、艦の規律が保てないようではいけない。

 なのははもう逆らえなかった。幼い頃、見たことがある光景だった。偉い人間が指を鳴らすとすぐにSPがやってきて、不逞者はつまみ出されてしまう。
 士郎が仕事をしていた相手は、そういう世界の人間だった。

 フェイトに宥められながらなのはは発令所から出ていき、やがてドアが閉まると、エリーは手すりに両手をついて、小さく鼻でため息をついた。

 正直、これが自分の柄だと言われればそうなのかもしれない。
 どうしても、意地の悪さが先に出てしまう。
 理論立ててきちんとなのはを説得するべきだった。なのはは故郷が危険に晒される恐怖に襲われており、それを説得するべきだった。
 確かに、管理外世界とのむやみな接触は避けるべきであるがそれは防衛せよという意味ではない。
 それを、狼狽えるなのはをいたぶるような物言いをしてしまった。

 この掛け合いにはやてはむしろ積極的に乗ってくる方であり、お互いに腹の内も分かっていたので黒い笑いを交わすことができていたが、なのはにとってはそうではなかった。

 故郷が災禍に見舞われるというなら、クラナガンが既にそうである。
 忘れてはならないのは、最優先すべき相手というのはバイオメカノイドである。
 それも目の前の端末個体ではなく、制御中枢のような母体が、未だ惑星TUBOYに眠っている可能性がある。

 スバルたちの班が採取に成功したグレイの個体と、撃破されたバイオメカノイドの内部構造から、これは独立した生命体ではなく、群れをつくって初めて意味のある意思を持つ形態の生物であると考えられた。
 一般的な生物の場合、ひとつの意識にはひとつの肉体が必ず備わっており、肉体が二つに分裂してしまうと、それは二つの意識を持った生物になる。
 また、発達した脳を持つ高等生物の場合、脳を分裂させることはできず、肉体がちぎれて二つに分かれてしまうと、脳が備わっていない方の切れ端は意識を持たなくなってしまう。

 しかし、バイオメカノイドは最初から分裂した状態で生まれている可能性がある。
 これまでの調べで、バイオメカノイドは中心に埋め込まれたマイクロマシンによって制御されていることが分かっているが、ではこのマイクロマシン1個がバイオメカノイドの脳なのかというと疑問が残る。
 このマイクロマシンは機体を動かすのに最低限の──たとえば前進せよとか攻撃せよとか──命令を出す機能しか持っておらず、細かい姿勢制御や索敵、状況判断などの機能が備わっていない。
 にもかかわらず、クラナガン宇宙港や中央第4区に出現したバイオメカノイドは、全体的に統率されたような、あるひとつの意思を持っているような行動を見せていた。

 個体間の連携によってそれが実現されている可能性がある。
 たとえば先に出ている個体が敵を見つけたら、目の前に敵がいるという情報が他の個体に送信され、そして複数の個体がそれぞれ見た敵の位置を共有し合うことで、具体的な距離や方向を算出し、全体として狙いをつけることができる。
 それはまさに群体生物の真の姿と言えるのかもしれない。
 ひとつの巣に何万匹もが集まり、一匹の女王の下ですべての個体が統率される──
 そういった社会性昆虫のような生態を、バイオメカノイドは持っている。

 もしこの仮説が当たっているのなら、端末個体をいくら破壊してもきりがない。
 資源がある限りバイオメカノイドは次々と生まれ続け、いくらでも湧き出してくる。
 その根元を叩かなければ根絶はできない。惑星TUBOYにおそらくその中枢が存在する。

 バイオメカノイドを倒すためにどのようにすればいいかということを、これからヴォルフラムが本局に持ち帰るサンプルを分析して調べなくてはならないのだ。

 決意を確かめるように、エリーは両手をきつく握りしめていた。

「副長」

「──大丈夫です。カザロワ少将は冷静な軍人です。高町さんが心配しているような事態にはならないはずです──」

128 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 22:54:32.42 ID:4+Lw/8Zg
 インフェルノはやがて地球の夜の部分に入り、太陽の光から隠されて暗闇の中に沈んでいく。
 時折、航跡に尾を引くように大気圏に突入する細かい破片が輝き、流星になっているのが見える。

 ひとまず、ヴォルフラムはこの現場から離脱する。
 次元航行艦が初めて、地球人の前に姿を現す。
 それは第97管理外世界のほとんどの人間にとって、生まれて初めて遭遇する衝撃的な出来事となるだろう。

 異星人の存在が、目の前にそのものが現れるという事実を持って証明される。

 翻ってミッドチルダでは、恒星間文明というものは既に数百年も昔から存在していた。
 魔法による次元間移動が可能であったため、外宇宙航行能力が無くても他の星に行くことができたのである。
 しかし現代になって、次元航行艦による宇宙探査が進んでくると、実は魔法によって移動していた次元世界というものは、これまで多くの人々に信じられていた姿とはあまりにもかけ離れていたのだということが分かってきた。
 異次元とは、ひとつの宇宙の別の領域であった。物理定数や宇宙の法則が異なる世界は存在せず、あくまでもひとつの宇宙が、何らかの力によって分離させられていた。それを、異次元とみなしていたのだ。
 宇宙探査機によって発見される未知の次元世界、そしてそれが従来の魔法で発見できなかった理由。
 そういった、次元世界人類にとっても未知の世界が存在するという事実は、この世にはまだまだ強大な存在がいるという可能性を高くしていく。

 伝説の地としてその存在が言い伝えられていたアルハザードは、確かに魔法を用いた航行ではたどり着けない世界だ。
 しかし、現代では、魔法によらず、科学の力でそこを目指すことが可能になっている。

 ミッドチルダが進めていた外宇宙探査プロジェクトは、究極的にこのアルハザード発見を目的にしていた。

 だからこそクロノは、ミッドチルダの思惑を見越した上で任務を引き受け、そして今回のこの行動を起こした。
 エリーのこの予想は、はやても同じことを考え、そしてレティたちもやがて同じ結論にたどり着くだろう。
 ミッドチルダ政府の深部の考えは、管理局の調査の手も届かない。



 ボイジャー3号によるキグナスGIIの観測データを分析していたNASAでは、惑星表面上に新たな噴出物が現れつつあることを確認していた。
 このクラスの岩石惑星では、重力の小ささと岩石の成分組成により大規模な火山活動は通常起きない。
 唯一、木星の巨大な潮汐力を受けるイオが火山活動を起こしている程度である。
 キグナスGIIは主星からの距離が遠く、近くに別の大きな惑星もない。

 すなわち、この火山活動は重力が由来ではなく、惑星内部に何らかの別の動力源──それも人工的な──が存在するということだ。

 現在地球に接近している巨大UFOは、このキグナスGIIから分裂して飛び立ってきたことが、スペクトル分析の結果判明している。
 170万光年もの距離をどうやって一瞬で移動してきたのか、ということについては、これはボイジャー3号が用いたのと同じ方法であることは想像に難くなかった。

 さらに、巨大UFOはワープ航法をより自由に使えるであろうと予想された。

 太陽系内に出現して地球に向かってくる間も、各国の天文台だけでなく何千人というアマチュアが望遠鏡を向けていたにも関わらず、幾度にもわたって観測の目を逃れ、そのたびにいっきに長距離を移動して、わずか数日で地球まで接近してきた。
 同じくらいの遠日点に軌道をとるハレー彗星は実に76年という公転周期を持つが、この巨大UFOはわずか4日で天王星から地球までの距離を駆け抜けてきた。

 しかも、もし仮にその速度で飛んできたとすると一瞬にして地球をすり抜けるはずが、減速して地球軌道へ入った。
 宇宙空間にある物体は、惑星や恒星の引力によって通常、近づくにつれてどんどん加速していく。
 しかしこの巨大UFOは地球の手前で大きく減速した。
 反動推進ではない。もし通常の化学燃料ロケットなら、巨大UFOの船体の98パーセント以上が燃料タンクでなければ止められないだろう。
 もちろん恒星間を自在に飛べる宇宙船がそのような設計になっているなどあり得ないはずだ。

129 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 22:59:08.16 ID:4+Lw/8Zg
 地球接近後も、ソ連が撃った核ミサイルの命中後に飛び散った破片の軌道を分析した結果、巨大UFOは明らかに人工重力を放っている形跡がみられていた。
 巨大UFOの破片の飛び方が、地球の重力と、巨大UFOの質量から計算される重力だけでは説明のつかない軌道をとっている。
 すなわち、巨大UFOは自分の質量以上の重力を人工的に発生させ、飛び散った破片を引き寄せている。
 このことから、地球のごく至近でミサイルを命中させたにもかかわらず、地表に降り注いだ破片は当初の予想よりはるかに少なくなっていた。

 北大西洋に展開していたアメリカ第2艦隊では、ボーフォート海を通過した巨大UFOを高度570キロメートルで探知した。
 地平線が丸く見え、それでもなお地球大気層を押しのけるようにして巨大UFOが通過していく。
 第2艦隊の空母『ジョージ・H・W・ブッシュ』では、実地試験中だった新型Xプレーンズ『X-62』による偵察飛行を行うことを決定し、搭載されていた5機のX-62試作戦術戦闘機を発艦させた。

 本機は1947年にアメリカ・ニューメキシコ州に墜落した異星人の宇宙戦闘機の技術をもとに、推進システムを既存の戦闘機に移植することでつくられた機体である。
 機体のベースとなったのはボーイング・X-48であり、これは異星人の使用する戦闘機に機体形状が近いことから選ばれた。
 21世紀初頭から地球での目撃例が増えていた、“ドローンズ”と呼ばれる特異な形状を持つUFOはほとんどがこの異星人の無人戦闘機であり、異星人側の呼称は『ドローンGD2』という。
 異星人たちの用語では、無人戦闘機を総称してガジェットと呼ぶ。
 ガジェットドローン2型と呼ばれたこのUFOは、特に米空軍によるインターセプトを受けて撃墜された機体がいくつかあり、それらは厳重に保管されていた。

 ロズウェル事件の後、このドローンGD2の母艦であった次元航行艦は少数の技術者と兵を米軍基地へ極秘に派遣し、機密に触れる部品の回収と引き換えに技術供与を行った。
 それから数十年、アメリカは地道な研究を続け、ついに地球独自での宇宙戦闘機製造にこぎつけていた。

 もちろん、それはソ連側でも、MiG-25型に宙間戦闘能力を付与することができたのはこれらの技術が用いられた結果である。

 グリーンランド上空を越えたX-62編隊は、冬の北極圏の荒天を避けるために高度75キロメートルまで上昇し、バフィン湾上空へ向かった。
 このX-62以前に開発されていた機体はそのほとんどが無人戦闘機であったが、X-62に至って再び、パイロットを搭乗させることに成功していた。
 コスト的には無人機のほうが有利ではあるが、空軍の予算を獲得するためには有人機の方が支持を得やすかった。
 かつてなら近未来と呼ばれていた時代になっても、やはり戦闘機パイロットというのは現場の花形である。

 X-45やX-47で研究された自律作戦行動システムと、X-48の全翼形状、そしてX-51のウェイブライダーシステムを組み合わせて、これらの集大成としてX-62は建造された。
 サイズ的には従来のF-22戦闘機とそれほど大きく変わらないが、特に機体の全高は低く抑えられ、全翼機という平べったい形状でありながら前方投影面積は非常に小さくなっている。

 X-62に搭乗するのは各地の航空団から選りすぐられたパイロットたちだ。
 彼らは何度かの選抜試験を受けたが、合格が通知され部隊に配属される直前まで自分たちが乗る機体がなんなのかということは知らされていなかった。
 所属する飛行隊は海軍の編制表には載らず、このジョージ・H・W・ブッシュも、2隻の護衛潜水艦以外は僚艦を伴わず極秘に出航していた。
 このプロジェクトは諸外国だけではなく自国民にさえ知られてはならないものである。

 従来の戦闘機にあったたくさんの計器類は、このX-62では非常に少なくシンプルにまとめられ、基本的にはヘッドアップディスプレイに表示された情報だけで操縦が可能である。
 X-62の機体は無人航空機の技術を応用した高度な自律飛行能力を持っており、パイロットに求められるのは機体を有機的に運用し移動させることである。
 すでに米空軍が開発していた無人戦闘機は、その気になれば遠隔地からの無線指令だけで作戦任務を遂行可能なレベルまで到達していたが、これも実は早くも頭打ちしかけていることは現場の研究者たちには知られていた。

130 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 23:02:25.44 ID:4+Lw/8Zg
 無人戦闘機の性能の限界とは、すなわち遠隔操作ができる距離の限界である。
 地球上でなら、米軍の戦力をもってすれば制海権を確保して空母が進出し、近隣国に駐留基地をつくって空中管制機などと組み合わせて運用することが可能だが、では自軍の勢力圏外で同じことが可能かというとそうではない。
 現代の地球には、そのような領域は存在しないと考えられていた。

 しかし、宇宙がある。
 宇宙にはいまだ人類の手が届かない領域が広がっている。
 人類は、地球という惑星のほんの表面だけを占めているにすぎないのだ。

 宇宙空間から地球上を攻撃する能力を持つ衛星は、すでに数百基以上が打ち上げられ、全世界の上空を24時間飛び続けている。
 ニューヨークもワシントンも、モスクワもロンドンもパリも、東京も北京も、その上空には常に攻撃衛星が待機しており、指令を受信すればただちに硬X線レーザーを地上へ向けて砲撃することが可能である。
 ルーツをたどれば前世紀、ロナルド・レーガン大統領が提唱した戦略防衛計画に基づいて開発された数多の技術が、この21世紀でも生き続けているのだ。

 地上では、既に米ソの軍拡競争は限界に達し、さらにその場を宇宙へ求めつつあった。

『視界に見えてきた』

「確認した。座標と速度を送信する」

 X-62とジョージ・H・W・ブッシュとの間で交わされる通話は、従来の無線に比べてノイズは格段に少ない。
 すでに宇宙探査機で実用化されている量子スピン通信は、何よりもそのタイムラグの少なさから、航続距離や作戦行動半径が格段に広がる宇宙戦闘機での使用にはうってつけだ。

『地球が半分に割れているように見える』

 ちょうど地球の昼夜境界が真下に来ている。X-62のコクピットからは、地球の夜の面は背景の宇宙と見分けが付かない真っ黒に見えている。
 境界付近は大気層が青い膜のように光っているのが見え、雲がうっすらと形を見せている。

『サンタクロースのソリは空っぽだ』

「これまで見えていなかったブリップが続々と出現している。おそらく異星人の宇宙戦艦だ。先ほど、日本列島にそのうちの1隻が不時着したと日本政府から通報があった」

『流星は降り続けている。大気圏に光の針が刺さっているようだ』

 5機のX-62は、北大西洋からグリーンランド上空までおよそ1500キロメートルをひといきに駆け抜ける。
 惑星表面における航続距離は事実上無限に近い。

「相対速度を3万5千ノットに維持、ちょうど30秒でミートするぞ」

『了解した』

 秒速十数キロメートルもの速度からX-62はいっきに停止、反転することができる。従来の航空機の常識からはかけ離れた、桁外れの機動力を発揮することができる。
 また、NASAが研究し何年もかけて実験を行った結果、現代の戦闘機や宇宙ロケットではパイロットにかかるGをおよそ70G程度まで許容できるようになっていた。これは純粋に地球の技術である。
 そしてその許容荷重に釣り合うだけのパワーを、X-62は手に入れている。
 もしこの機体が人々の目の前を飛んでいるのが目撃されたら、人々はこれをUFOと呼ぶだろう。

 異星人の技術を用いるにあたり、これまで地球で使われてきたレーダーシステムというものも大きく変化を遂げようとしている。
 レーダーというものは、その名の通り電波を使用した索敵方法である。目標に向けて電波を発射し、反射して返ってきた電波を検出することで目標の位置を知る。さらに反射波の変化の具合から、目標の大きさや形状も分かる。
 異星人の戦闘機では、索敵システムの原理そのものは似ているが、使用する電磁波が電波ではない。
 異星人の用いる、“魔法”と呼ばれる技術体系によれば、この世のあらゆる物質はそれぞれに特有の波動を放つ。
 これを受信することで目標の位置や性質を知る。
 どちらかといえば、潜水艦のパッシブソナーに近いやり方だ。
 こちらから探信波を打つ場合も、何らかの電磁波を放射して反射してくるのを調べるのではなく、波動を打ち、それによって物質が励起されると、相手が波動の放出を抑えていても強制的に放射させることができるのでそれを拾う。
 これにより、あらかじめ登録しておいた波動のスペクトルと突き合わせることで、調べたい目標の性質や、兵器であれば大きさや質量、材質、搭載している動力炉の出力などもある程度分かる。
 異星人はこの波動を、“魔力光”と呼んでいた。

131 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 23:05:00.47 ID:4+Lw/8Zg
 魔力光に関しては、現在のところ、可視光線以外にも全領域に渡ってのスペクトルを持った放射があるという程度が分かっているだけだ。
 目下最重要視されたのはとにかく宇宙空間での機動力を持った航空機をつくることで、それに載せる武装は現行のものでもとりあえずは何とかなる。
 現在出撃しているX-62には、SDI計画によって開発された戦術高エネルギーレーザー砲が搭載されている。
 これは出力96キロワットのパルスレーザーを発射して目標を焼き払うことができる武器だ。ICBMなどの弾道ミサイルや、ソ連の重装甲ミサイルなども破壊できる性能がある。
 実弾を使用しないため従来の機関砲に比べて重量やスペースの面で有利であり、アメリカ海軍がこれまで使用していたファランクス20ミリ機関砲からの置き換えが現在進んでいる。
 また、F-15E戦闘機でもM61A2バルカンに代わって搭載され、運動性能の向上をもたらす軽量化や、特に低空侵入をはかる対地攻撃任務で非常な効果があると期待されている。

 このようなレーザー兵器も、かつては必要なエネルギー量が莫大になり実用的ではないとされたが、2023年の現在ではそのエネルギー需要を満たすだけのエンジンが作れるようになっている。

「安全装置を解除せよ」

『解除した』

「ようし、次はIRSTだ。シーカーは十分に冷えているか」

『問題ない』

 ヘッドアップディスプレイの下部に、現在照準を向けている巨大UFOが、熱を持った影となって投影されている。
 X-62では攻撃動作時の逆探知を避けるために電波式のFCSは装備せず、完全なパッシブスキャンによって目標を照準する。

『目標はきれいに映っている。“フェレット”は獲物の巣穴を見つけた、いつでも飛び出せるぞ』

「お盛んだな、今回は狩りはお預けだ。巣穴の位置だけ見てこい」

『YGBSM、それだけで済まないことを期待してるよ』

 別のパイロットが、無線に割り込んで冗談を飛ばした。
 第二次世界大戦当時、敵のレーダー網を破壊するための作戦に従事していた戦闘機は、狩りをする食肉獣になぞらえてフェレットと呼ばれた。
 やがてミサイルの時代になると、ワイルド・ウィーゼルとして特別に編成された戦闘機部隊が敵対空ミサイル陣地の捜索と破壊を行うようになった。

 未知の敵に向かうというのは非常に危険な作戦である。

 邪魔者はいない大気圏外での戦闘だ。このX-62の性能をもってすれば、いかにエイリアンの宇宙戦艦といえども振り切って見せる。

 巨大UFOに距離10マイルまで接近し、周囲を大きく旋回するコースに入る。ソ連のR-7ミサイルによって破壊された外殻が砕けながら船体を取り巻き、その周辺を数十隻、いや百隻以上もの宇宙戦艦が取り囲んでいるのが見える。
 間違いなく、これは小惑星ではなく異星人の操る宇宙船だ。
 正体を確認したので、UFOではなくなり、これは宇宙船であると識別できたことになる。
 5機のX-62と5人のパイロットたちは、それぞれに散開し、巨大UFO──無人機動要塞の周囲を、画像撮影と光学分析のために飛び回り始めた。

 これらの動きは、もちろん宇宙戦艦に乗っている異星人たちにも見えているだろう。
 こちらが地球上から発進してきたということは見えているはずだ。
 だとすれば、彼らがこの無人機動要塞の仲間でないのなら、こちらを攻撃しようとはしないはずだ。

 もし宇宙戦艦がX-62に砲を向けていても、少なくともレーダー電波では逆探知できない。
 彼らの使用するレーダーシステムは地球のものとは異なるので互いに互換性はないはずだ。

 現時点では、彼らは敵でも味方でもない。

 距離を近づきすぎないようにあくまでも慎重に、宇宙戦艦の正面を横切ったり、対向して直進飛行する。

 これでも撃ってくる気配がなければ、向こうにとっても自分たちは敵ではないということになる。

 X-62のパイロットたちは、もし自分たちが50年前にタイムスリップして当時の戦闘機を相手に同じことをしたら、当時の戦闘機パイロットたちに自分たちの機体はUFOだと言われるだろう、と思っていた。
 それは、5人だけでなく、地上で管制を行っているオペレーターたちも同じだろう。
 ブリップの輝点を敵味方逆にしてみれば、正体不明の飛行物体に翻弄される艦船、に見える。
 進歩した科学は魔法と見分けがつかなくなる──そういわれるように、現代の最先端科学は、それを知らない者にとっては超常現象のようにさえ見えてしまうだろう。

132 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 23:09:13.93 ID:4+Lw/8Zg
 グルームレイクの狭い滑走路でテストをしていた時はまだそれでも飛行機の体裁を保っていたが、今こうして大気圏外を飛び回るX-62の姿を前にしてみると、それはまるで別世界だった。
 ジョージ・W・ブッシュに乗り組み、大西洋から見上げている技術者たちも、当のパイロットたちも、この機体がまさにエイリアンクラフトと呼ばれてもおかしくないほどの驚異的なテクノロジーを現出させてしまったのだということを今更のように思い知らされていた。

 バフィン湾上空で、X-62編隊は敵巨大無人機動要塞から再び大きな破片の塊が分裂したことを確認した。
 外殻の破片を周囲にくっつけている様子は、スペースオペラなどで描かれるアステロイドシップのようだ。無数の隕石に覆われた内部に、要塞の本体が存在する。
 そしてそれは依然健在である。
 異星人の宇宙戦艦が数百隻がかりで挑んでも破壊しきれないほどの巨大さだ。
 そこに、地球の戦闘機が突っ込んでいくのはさすがに無謀に過ぎる。

 X-62編隊はただちにジョージ・H・W・ブッシュに分裂した破片の画像を送信した。
 分裂した破片は、大西洋北部を横断してヨーロッパ方面へ向かっていた。
 さらに、異星人の宇宙艦隊からも何隻かが破片を追って降下していく。敵無人機動要塞が、地球へ向け攻撃機を送り込んだ可能性が高くなった。

『どうする、追いかけるか?』

「酸素の残りに問題がなければ可能だ、やれるか?」

『タンクを確認する──オーケーだ、これより大気圏内に再降下する』

「落ち着いていけ。訓練どおりにだ」

『宇宙戦艦の一隻から発光信号のようなものが送られている、確認を頼む』

「少し待て、映像をまわす」

 X-62編隊の隊長機が目撃したのは、破片を追ってヨーロッパに降下しようとしていたXV級巡洋艦クラウディアだった。
 さらにその後にやや間隔をあけ、ミッドチルダ艦隊のXJR級が続く。
 どちらも艦の画像を撮影し、ジョージ・H・W・ブッシュを経由してグルームレイク基地へデータを送信して照合を依頼する。

 これらが間違いなく異星人──ミッドチルダ人の操る艦であれば、少なくとも交渉の窓口はある。

 現在地球には、日本の海鳴市へ宇宙戦艦が1隻不時着し、さらにこれを捜索していると思われる別の艦が日本上空に進入している。
 また、無人機動要塞から分裂した破片がヨーロッパへ向かい、こちらも異星人の艦隊が追撃に向かっている。
 アメリカの宇宙戦闘機編隊もこれを追跡し、敵の正体をつかむためにヨーロッパへ向かった。

 状況を分析し、現在の地球上で最も強い魔力を放っているであろう物体──ロンドンの地下基地にて修復中の自動人形『エグゼクター』に、敵バイオメカノイドは引き寄せられている可能性が高いとエリオは判断した。
 ミッドチルダにおける幾度かの戦闘から、バイオメカノイドは特に魔力炉に対して強い攻撃性を持つことが判明している。
 地球上では魔力炉は建造されていないので、可能性があるとすれば地球を訪れている魔力エンジンを積んだ艦船を狙ってくることが考えられる。
 現在地球上でそれに該当するのは、海鳴市に墜落したヴァイゼンの巡洋艦と、ロンドンの地下に存在するエグゼクターの動力炉ということになる。

「つまり──敵はここを目指していると」

「それが最も考えられる可能性です。魔力反応は、長波長領域なら地殻も貫通します。正直なところ、僕らもどうやったらあれの目をくらますことができるかというのはわからない状態です」

「遮蔽に成功した事例はありませんか」

 フォードもやや焦りを見せる。
 もし敵がここを目指しているのであれば、通り道として敵はロンドンの市街地に突っ込んでくることになる。

「難しいです。ミッドチルダにおける戦闘でも、通常のレーダーやソナーにかからないほどの放射レベルでも敵バイオメカノイドには探知されてしまいました。
残る可能性としては、電磁波以外の手段によって彼らは魔力反応を嗅ぎ付けているのかもしれません」

「おそらく米ソは独自に迎撃作戦を展開するでしょう」

「ええ。さらに日本に不時着した艦はヴァイゼン所属です──こちらがどう動くかも注意が必要です」

「イギリスにはアメリカと連絡を密にするよう言ってあるはずですが」

「テムズ川のドックを準備しておいたほうがいいかもしれませんね」

133 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 23:12:07.66 ID:4+Lw/8Zg
 日本とイギリスと大西洋、それぞれのエリアで、ミッドチルダ、ヴァイゼン、そして地球、それぞれの世界が、遭遇する。
 それは手探りのようでいて、お互いに確信を持った行動だ。

 西暦2023年12月28日、アメリカ東部標準時午後9時24分、日本時間12月29日午前11時24分。インフィニティ・インフェルノは地球へ最接近し、アメリカ・ロングアイランド沖の上空を通過して大西洋を南下していった。

 インフェルノの後を追うように、多数の流星が空を彩る。
 かつて中世の時代、空に走る彗星は凶兆であるとされた。
 燃えさかる大気を纏い、空を横切っていく巨大機動要塞は、まさに紅の彗星のようだった。

 地球に災いをもたらす、天の煉獄。

 地上から見上げる人々にとっては、要塞を取り囲む宇宙戦艦たちも、地獄に巣食う死神のようにしか見えなかった。



 ねずみ色の雲が低く垂れこめ、視界は100メートルもない。
 かろうじて見える山脈のふもとは、山肌が削られて白い石灰岩がむき出しになり、ところどころが水を吸って燻っている。
 空気はひどく湿っている。
 地上近くまで降りてきた雲の粒が、空気中を漂う水滴となって肌にくっつく。

 愛用の狙撃銃型デバイスを肩に、時空管理局航空武装隊隊員ヴァイス・グランセニックは苦く口元を歪めながらその光景を見渡した。

 管理局の部隊が布陣した丘の上はひとまず陣地を確保したが、さてここからどう攻めたものかと、派遣部隊の佐官たちはもう何時間もテントの中で会議を続けている。
 ヴァイスたちの所属する班の班長を務めているギンガ・ナカジマも、作戦案の検討のために一緒に行っていた。
 いつでも出動できるように準備はしているが、どちらにしてもこの有様では敵を倒したからといって何が得られるのかというものだ。

 横を見やると、小型形態に変身して周囲を警戒している白いドラゴンがいる。
 使役竜フリードリヒ、かつて機動六課においてヴァイスとは共に戦っていた。
 その召喚士たるキャロ・ル・ルシエは、怯えるフリードを庇うように前に立ち、ケリュケイオンを握りしめながら、変わり果てた村々の残骸を見下ろしている。

 つい数時間前の出来事だ。

 森の奥深くから突如として出現した大量の正体不明生物に襲われたという通報を受け、管理局の現地駐留部隊が現場の確認に向かった。
 しかし、いうところの正体不明生物の数がすさまじく、まさに森から湧き出した大海嘯のようであった。
 駐留部隊はほとんどなすすべなく全滅し、この時点で、この正体不明生物が森の中だけでなく空からも、宇宙からも現れ始めた。
 惑星のごく至近に次元断層が出現し、正体不明生物はその中から湧き出してきていた。

 神話に描かれる地獄の釜としか表現しようがないほどの、電撃的な出現と襲撃だった。

 正体不明生物たちは数にものを言わせて次々と村を踏み潰していき、大都市であっても構わず突っ込み、人々を押しのけ、捕まえて噛みちぎり、喰らっていった。

 ミッドチルダに出現したときとは違い、今回は彼らははっきりと人間をめがけて襲ってきた。
 そして、人間を喰っていた。
 彼らにとって人間の肉が栄養になるのかどうかなど、考えている余裕はなかった。

 第6管理世界、アルザスにバイオメカノイド出現。

 その第一報が──正確には正体不明生物がバイオメカノイドであると確認された──届いた時点で、もはやアルザスは手の出しようがないほどに、バイオメカノイドたちに制圧されてしまっていた。
 個体数は、数えるよりも面積で計った方が早かった。
 バイオメカノイドに覆われた土地の面積と、単位面積あたりにバイオメカノイドが占める割合から、個体数はおよそ30億体以上と計算された。

134 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 23:15:19.35 ID:4+Lw/8Zg
 このとき、初めてバイオメカノイドが増殖する瞬間が観測された。
 最初に出動していったアルザス現地駐留部隊の隊員が、バイオメカノイドの体節がちぎれて卵のような物体に変化するのを目撃した。
 地面に埋まって根を張った卵は、鉱物の結晶が成長するように大きくなり、数分ほどでそこからマイクロマシンが転がり出てきて、周辺の金属元素を吸着して小さなバイオメカノイドを排出した。
 卵は簡易的な金属圧延装置のようになっており、これで原型を作れば、あとは自分で金属や岩石を食べて成長が可能なようだった。
 バイオメカノイドはある程度栄養をため込むと、簡易製造プラントのような装置を自分の身体の一部を使って作り、そこから幼生を次々と生み出す。
 この方式だと、材料さえ供給し続けられるなら、ねずみ算式以上に急激なペースでの増殖が可能な計算になる。

 アルザスに出現したバイオメカノイドは、そのほとんどがワラジムシとアメフラシで、少数、ガやマリモが混じっていた。
 さらにこれらを率いるように、三つ首のドラゴンが現れていた。
 しかも複数である。
 第97管理外世界に派遣されたヴォルフラムからの報告にあった、現地で彼らが遭遇した個体とは別のものだ。ドラゴンは、確認されただけでも60体以上がアルザスの全域に出現していた。

 ドラゴンは、大きな個体では全長70メートル以上、翼長が100メートル以上に達する個体も発見された。

 キャロは、ル・ルシエの里にいた頃もこんな大きな竜の存在は聞いたことがなかったと言った。
 彼女にとっては、複雑な心境である。
 ここは故郷なのだろうか。ここは、自分が帰ってくるべきところだったのだろうか。どこか別の、違う遠くの世界ではないのだろうか。

 キャロやヴァイスが乗ってきた次元航行艦がアルザス上空に達したとき、既に軌道上からでもはっきりと見えるほど、アルザスの地表は黒く変色してしまっていた。
 バイオメカノイドがひしめいている土地は、その体表の色から、宇宙からは黒褐色に見えた。

 アルザスの空、太陽の光の下に出た三つ首ドラゴンは、光に透かされて赤紫色に変色していた。
 ヴォルフラムが遭遇した個体は青かったが、他にもさまざまな色の個体がいた。

「ヴァイスさん…………アルザスでは、このあたりでは昔から雨はほとんど降らなかったんです。山を昇ってくる空気はふもとに雨を降らせて水分を失って、山を越えてくるときにはすっかり乾いているんです。
それなのに、今はこんなに雲が出ている──わかりますか、雲に石灰の匂いがついてます──これは、山が削れたんです。削れた細かい岩石の粒が、雲の粒の芯になっています。
あの生き物が、山を噛み砕いて、土を食べて、水分と一緒に吐き出しているんです──」

「バイオメカノイドが──」

「山が、大地が、──食べられています。あれはもう、星さえも食べつくしてしまいます」

 キャロの言葉は、直感だが計算上ありえない話ではなかった。
 アルザスの大きさは直径7200キロメートルであり、直径が小さい割にコアが大きく重力も強い、第97管理外世界太陽系でいえば水星に近い組成の惑星だ。
 バイオメカノイドの個体数からいくと、この程度の大きさの惑星はすぐに飲み込まれてしまう。

 惑星TUBOYが、かつて直径1万7千キロメートルという、地球やミッドチルダよりも巨大な惑星であったにもかかわらず現在ではミッドチルダの月より少々大きい程度に、そして質量は軽石のように穴だらけになっている──バイオメカノイドは惑星を食べてしまう。
 アルザスの質量は、おそらくバイオメカノイドの腹を満たすには足りないだろう。
 彼らは、今も増え続けている。

 新暦83年12月30日。
 ──第6管理世界アルザス、壊滅。

 時空管理局は、そして次元世界連合は、わずか13時間で、生存者の捜索をあきらめてひとつの次元世界を放棄することを、苦渋ながら決断しなくてはならなかった。





135 :EXECUTOR ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 23:25:50.38 ID:4+Lw/8Zg
12話終了です

カザロワ少将はもしかしてかつての戦傷でフライフェイスCV小山茉美・・・いやまさか

エルドリッジってあのフィラデルフィア計画のあれですかねー
かべのなかにいる事件を引き起こしたあの艦
あの計画が進行していれば地球艦もそのうちワープできますねー
グレアムさんがミッドに行ったのはプロジェクト・セルポですか
セルポは太陽が二つあるらしいですがミッドは月が二つありましたね

ドローンって言ったら個人的にはうふぉ・・・UFOのほうが思い浮かびます

・ヴァイゼン33級巡洋艦・・・33→AE、トヨタ・AE86
・航空戦艦チャイカ・・・ゴーリキー自動車工場・チャイカ(マツダコスモ以外に存在した唯一の3ローターロータリーエンジン車)
・ニーヴァ一佐・・・ラーダ・ニーヴァ
・ウリヤノフ・・・ウリヤノフスク自動車工場


136 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/12/06(火) 23:29:50.39 ID:4+Lw/8Zg
キャロさん・・・ι
いくらなんでも背はおっきくなりましたよね?(汗)

なんとなく、アルザス人はその強い重力のために平均身長が低いとか思いついてしまいましたが
Vividでルーテシアさんちとミッドに時差があると・・・時差?(汗)

ではー

137 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/06(火) 23:47:07.53 ID:bKdLEqT/

流れ的に地球上空でのインフェルノ内部で最終決戦!
とか思ってたらまだ中ボス戦程度のところだったようですな
地球も冷戦続けてたせいかそこそこなら抵抗できる技術を持っているようだ
と思ったらバイオメカノイドが本気出し始めてワロタw

138 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/07(水) 14:26:41.31 ID:odo+z3xy
ロズウェル事件キタ━━(゚∀゚)━━━!!
そっそういえば12月13日にCERNが重大発表をというのはまさか地球もついに魔力素を発見とかワクワクしますな

139 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/07(水) 14:49:39.83 ID:FR77WJkM
アルザスまさかの瞬殺
キャロ山さんは実家帰りとかしてたんでしょうか
まさか自分を追い出した里の人が死んでザマミロとかキャロに限って無いですよね…ないよね?

140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/08(木) 08:26:11.55 ID:Vrk8EMAl
【速報】地球終了 水星の隣に超巨大宇宙船が存在していることが判明
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/news/1323267625/


ま、まさかインフェルノが・・・(*゚Д゚)

141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/08(木) 09:59:19.47 ID:ATE85cmH
地球終了のお知らせか・・・

142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/08(木) 13:43:59.23 ID:g7iiuFBy
太陽ノ使者?
R戦闘機の開発を急ぐんだ

143 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/08(木) 13:54:54.36 ID:Vrk8EMAl
なのはさんのおうち消滅の危機
海鳴市に次元航行艦が着陸したらパニックになるな
ヴァイゼンは管理局のように穏やかではなさそうだし
はやてさんはもう地球は捨てた気持ちですかね
心はミッドチルダ人…


144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/08(木) 20:53:54.38 ID:ATE85cmH
とりあえず西側は存在を認知してるがソ連さんが又先走りそうな気が
上手くいけば共同戦線、下手を打つと地球とヴァイセンがインフェルノ無視して殴り合いか


145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/09(金) 20:37:59.80 ID:6oXidiXk
グリーンインフェルノ?

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/09(金) 23:09:37.26 ID:BocJo8Xr
>>145
それ地球破壊されちゃう…

147 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/09(金) 23:39:51.12 ID:WGYNounc
乙です
いよいよ大戦争の予感がしてきましたね
地球はXプレーンズとエグゼクターを
次元世界はSPTを使って
インフェルノ撃沈に向け共闘するか、それとも・・・?

148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/10(土) 08:49:39.47 ID:FtCpGjYJ
地球由来のG緩和システムにワロタ。
NASAが金出した怪しげな研究のヤツでしょ。

アメリカはホモ爆弾とか、怪しげな研究によく金だすよなぁ。
真空からエネルギーを取り出せ | 日経サイエンス
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/9803/zero.html

日本は精々、常温核融合とか、こんな↓とか、研究室か個人レベルだし。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/7506/case_nec_ufo.html

149 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 18:44:24.22 ID:F82haQfO
職人の皆様方お疲れ様です。
23時ごろにマクロスなのは第26話を落とすのでよろしくお願いします。
なお、本編中「 &ruby(〜){〜} 」という記述がありますが、保管庫にてルビをふるためのものなのでご了承ください。

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/10(土) 18:49:18.78 ID:3FB9UTT/
>>149
それ、記述削除した投下用のものを別途用意すれば良いだけじゃないの
つーか、ルビのプラグインとか勝手に使っていいんだっけ?
確か最低限の機能以外は話し合い→許可制だった気がするけど

151 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 19:12:53.28 ID:F82haQfO
>>150
最低限以外許可制なんですか?
わかりました。運営議論スレにて許可をもらってこようと思います。
時間がかかるかもしれませんのですみません。予約を取り消します。

152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/10(土) 19:20:55.03 ID:3FB9UTT/
>>151
以前、誰だったか忘れたけどアンケート機能とか色々なプラグインを許可無く使用して、
ページを乱立させた挙句に揉め事を起こした人がいるから許可制になったはず
なまじプラグインを利用すれば大抵のことは出来るwikiですし、細かいこととはいえ、
勝手にやると後になって騒ぐ人が沢山出てくるかも知れませんし。このスレの慣習的に

153 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 19:29:02.60 ID:F82haQfO
>>152
はい、ご忠告感謝します。もうあんなことはこりごりです・・・・・・


154 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 21:54:52.74 ID:F82haQfO
管理人さんの素早い対応により許可が下りたので、当初の予定通り23時頃に投下したいと思います。
またルビは>>150さんの進言に従って投下用は従来方式に改定させていただきます。
お騒がせしました。

155 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:16:38.99 ID:F82haQfO
では時間になりましたので投下を開始します

マクロスなのは第26話「メディカル・プライム」

八神はやては部隊長室で、今後の六課の運用について思索をめぐらせていた。
脳内会議の議題に上がっているのはカリムの預言の事だ。
設立から半年。六課はその任務を忠実に果たし、今に至る。現状に不満はない。しかし不安要素はあった。それは『事≠ェ、六課の存続する内に
起こるのか』という問題だ。
六課はテスト部隊扱いのため、あと半年足らずで解体される。1年という期間は何もテキトーに決めた期間ではない。聖王教会と本局の対策本部が
議論の末導き出したギリギリのラインだ。
今より短い場合の問題は言わずもがなだが、逆に長いとそれはそれで問題がある。今でこそガジェットの出現から出動数が多く、各部隊からの信
頼も厚い六課だが、当時は必要性の認識が薄かったため本局でさえ設立には渋ったのだ。それは予算の問題のみならず、当時対立関係にあった
地上部隊が黙っていない。という意見もあったからだ。しかしこの問題は『地上部隊のトップであるレジアス中将が賛同した』というイレギュラーな、し
かし嬉しい出来事から片づいている。
だがもう1つ問題が上げられていた。それは六課への過剰な戦力集中だ。地上部隊20万人の内、4万人は事務・補給・支援局員である。
そして残る16万人を数える空戦魔導士部隊や陸士部隊である純戦闘局員の内10人ほどしかいないSランク魔導士を八神はやて、高町なのは、ヴ
ィータ、シグナムと4人も六課に出向させている。
このランクの持ち主は『北海道方面隊など6つある地方方面部隊、5個師団(2万7千人)に1人いるかいないか』という希少な戦力であり、本局ですら
少ないSランク魔導士のこれほどの集中投入は極めて思い切った人事だった。
そのため『気持ちは分かるが、そう長くは留めて置けない』というのが周囲の本音だった。
仮に1年後に同じような部隊を本局主導で再編する場合を考えても、地上部隊を頼れない分、生み出されるであろう戦力の低下は憂慮すべき問題
であった。
そこで『何か妙案がないだろうか?』と思考をめぐらせていたはやてだったが、その思索は打ちきられることになった。
空中に画面が浮かび、電話の呼び出し音が締め切った室内の空気を震わす。画面の開いた場所は左隣の人形が使うような小さなデスクだ。本来
なら補佐官であるリインが受けるはずだが、今ここにいないことは承知済み。右の掌を空中にかざして軽く右に滑らせると、その動作を読み取った
部屋が汎用ホロディスプレイを出現させる。この部屋だと電灯のスイッチなどの操作を行うものだが、こんな時のために電話もその機能に加えてい
る。おかげで次のコールが鳴る前に通話ボタン触れることができた。

「はい。機動六課の八神二佐です」

サウンドオンリーの回線だったが、 直接外部から電話がかかることはなく、地上部隊のオペレーターを経由したルートが普通だ。しかし聞こえてき
た声はオペレーターの声ではなく、レジアスのものだった。

『はやて君か。いきなりで悪いが1330時頃にこちらに来てほしい』

「え? ほんとにいきなりやなぁ・・・・・・もちろん何か買ってくれるんよね?」

はやての冗談にレジアスは電話の向こうで豪快に笑う。


156 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:18:00.47 ID:F82haQfO
『なるほどな。グレアムのヤツがそうやって「部下がいじめてくる」と嬉しそうに嘆いていた意味がようやくわかったよ』

レジアスのセリフに、はやては「バレてたか」と苦笑いする。
グレアムは以前本局の提督を勤めていた人物で、当時足が悪く両親のいなかったはやての、いわゆるあしながおじさんであった。
またはやて自身、『闇の書事件』の責任を取って自主退職するまでのほんの1年だけ彼の元に嘱託魔導士として配属されており、当時同事件で主
犯者扱いされていたはやてが管理局に慣れるよう手を尽くしてくれていた。
彼女を学費面での援助によってミッドチルダ防衛アカデミーに入学させてくれたのも、管理局で風当たりの悪かった当時の身の振り方を教えてくれ
たのも彼だった。

閑話休題。

『・・・・・・まぁ、実際買ったのだがな。きっと君も驚くだろう』

「え、いったいなんなのや?」

『ああ、─────だ』

レジアスが口にしたその名は、確かにはやてが驚くに十分値するものだった。その後はやては2つ返事で了解し、身支度のために席を後にした。

(*)

同日 1200時 訓練場

午前中に行われた抜き打ちの模擬戦になんとか勝利した六課の新人4人は、一時の休憩に身を任せ、地面に座り込んでいた。そこへなのはに
ヴィータ、そしてフェイトを加えた教官陣がやってきた。

「はい。今朝の訓練と模擬戦も無事終了。お疲れ様。・・・・・・でね、実は何気に今日の模擬戦がデバイスリミッター1段階クリアの見極めテストだっ
たんだけど・・・・・・どうでした?」

一同の視線が集まるなか、後ろのフェイトとヴィータに振る。

「合格」

「まぁ、そうだな」

2人とも好意的な判断。そしてなのはは─────

「私も、みんないい線行ってると思うし、じゃあこれにて1段目のリミッター解除を認めます」

その知らせを耳にした4人はやったぁ!≠ニうれしさのあまり座り込んでいた地面から跳ね上がる。

「お、元気そうじゃないか。それじゃこのまま昼飯抜きで訓練すっか」

ヴィータのセリフに4人の子ヒツジは青ざめ、一様に首を横に振った。
彼ら新人にとって唯一の平安といっても過言ではない食事の時間は絶対不可侵の聖域であり、守らねばならぬ最終防衛ラインだった。

「も〜、ヴィータちゃんったら」

なのはに言われヴィータは

「冗談だよ」

157 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:19:23.59 ID:F82haQfO
と、猫を前にしたハムスターのような目をした4人に言ってやる。
しかし彼女の目が本気(マジ)≠セったことを書き添えておこう。
落ち着きを取り戻した4人にフェイトが指示を続ける。

「隊舎に戻ったらまず、シャーリーにデバイスを預けてね。昼食が終わる頃にはデバイスも準備出来てると思うから、受け取って各自しっかりマニュ
アルを読み下しておくこと」

それにヴィータの補足が付く。

「明日≠ゥらはセカンドモードを基本にして訓練すっからな」

しかしその補足を聞いた4人は、自分達が間違っていると思ったのか空を仰ぐ。真上に輝く真夏の太陽はまだ時刻が正午であることを知らせていた。

「明日≠ナすか?」

「そうだよ。みんなのデバイスの1段目リミッター解除を機会に、私とヴィータ教官のデバイスも&ruby(フルチェック){全面整備}とアップデートをする
ことになったの。だから今日の午後の訓練はお休み。町にでも行って、遊んでくるといいよ」

なのはセリフに、4人は先ほどを数倍する大声で、喜びの雄叫びを上げた。

(*)

同時刻 フロンティア航空基地 第7格納庫

「あと30分で出撃だ。しっかり頼むぞ」

愛機であるVF-25を引っ掻き回している整備員達に檄を飛ばす。 彼らはそれぞれの仕事をこなしながらも

「「ウースッ」」

と、まるで体育会系のような返事を返す。そして点検項目を並べたチェックボードを効率よく埋めて、整備のために開けたパネルやスポイラーを定位
置に戻していった。
そんな中、こちらへと1人の整備員がやってきた。しかし他の整備員と違ってそのツナギはあまり機械油に汚れていないように見える。どうやら新人
らしい。

「どうした?」

「はい、アルト一尉。恐縮ですが、モード2のバトロイドのモーション・マネージメント比は今までの1.50倍で良いでしょうか?先ほど戦闘のデータを見
る機会があったのですが、自分の見立てではあと0.04増やした方が動かしやすいように思います」

幾分か緊張した様子の新人に言われて初めて思い出す。そう言えば確かに前回戦闘の最中、そのような違和感を覚えたような気がする。もっと
もSMSへの先行配備の段階から乗っているVF-25という機体なので多少の誤差など十分カバーできるが、修正するに越したことはなかった。

「よく気付いたな。そうしてくれ」

答えを聞いた新人は満面の笑みを作って

「はい!」

という返事とともに敬礼し、再びバルキリーに繋がれたコントロールパネルに返り咲いた。そこで航空隊設立当初からVF-25のアビオニクスを任せ
ている担当者が

「やっぱり言ってよかったじゃねぇーか」

と、入力する新人の肩をたたく。

「俺達でもコイツのことは完全には把握してないんだ。だからこれからも新人とか専門外とか関係なしにどんどん聞いてくれよ!」

「はい!・・・・・・じゃ先輩、さっそくひとついいですか?」


158 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:22:47.29 ID:F82haQfO
「おう、なんだ?」

「明日地元から彼女が来てくれるんです!それでクラナガンでデートしたいと思うんですが、どこかいいスポット無いですか?」

「え・・・・・・彼女とデート?あ・・・・・・いや、俺はそういうのよくわからなくて・・・・・・その・・・・・・だな」

こういう事象に対しては知識がないのか大いに困っているようだ。そこへ彼の同期がデートと言う単語を聞きつけたのか機体越しに呼びかけてきた。

「どうしたんだよシュミット?お前俺たちと違ってモテるだろ?意地悪しないでデートスポットの一つや二つ教えてやれよ!」

「そういうわけじゃねぇんだよ加藤!」

「じゃあなんだよ?」

「だって・・・・・・なぁ?」

困ったように言うシュミットに安全ヘルメットを外してポニーテールの長髪を垂らした新人が

「ふふふ」

と蠱惑的に微笑んだ。

(*)

その後彼女は

「キマシタワー!」

と叫びながらやってきた女性局員や、

「なになに?諸橋(その新人)に彼女≠ェいるって!?」

とVF-25の整備を終えて集まった整備員集団に囲まれていた。しかしその顔触れはアビオニクス担当者であるシュミット、そして新人を含めて全員
自分と同年代ぐらいだった。別に特殊な趣向を持った人間がそう、というわけではない。この航空隊に所属する整備員はほとんど同年代なのだ。
これはこのミッドチルダでOT・OTMという新技術に、最も早く順応したのが彼らのような若者であることの証左であった。
もっとも教養としての現代の技術はともかく、OTMはゼロスタートであったおかげで3カ月前まで整備の質はあまり良くなかった。それが第25未確認
世界でも最新鋭機であったVF-25なら尚更だ。
しかし最近ではアビオニクスを整備するシュミットのような人材が育ってきてくれたおかげでなんとか乗り手である自分や、たまに技研から出張して
くる田所所長などに頼らなくても良いぐらいの水準に到達していた。
しばらく馴れ初め話を語る諸橋とデートスポットの位置について真剣に話し始めた彼らの様子を遠巻きに眺めていたが、整備が終わった彼らとは
違い、自分の仕事は目前に差し迫っている。名残惜しいが列機を見回ることにした。
まずはVF-25の対面で整備が急がれている天城のVF-1B『ワルキューレ』だ。
純ミッドチルダ製であるこの機体は、製作委任企業であるミッドチルダのメーカー『三菱ボーイング社』の技術者が、わざわざ整備方法を懇切丁寧
に講義していた。そのため比較的整備水準は初期の頃から高かったようだ。
現在パイロットである天城はコックピットに収まり、ラダー等の最終点検に余念がなかった。
まるで魚のヒレのようにヒョコ、ヒョコ≠ニ垂直尾翼や主翼に付けられている動翼であるエルロンが稼動する。

「あ、隊長」

こちらに気づいた天城は立ち上がると、タラップ(はしご)も使わずコックピットから飛び降りる。
コックピットから床まで3メートルほどあり、生身なら体が拒否するところだが、その身に纏ったEXギアが金属の接触音とともに彼の着地をアシストした。

159 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:23:38.93 ID:F82haQfO
「今日のCAP任務が8時間ってのは本当っすか?」

「そうだ。今日はだましだまし使ってきた機体の総点検らしいからな。六課にいて一番稼働率が少なかった俺たちで時間調整するんだと」

「・・・・・・ああ、そうですか」

気落ちした表情に続いて小声で

「俺は六課でも出撃率100%だったのに・・・・・・」

という天城の嘆きにも似た呟きが聞こえたが、どうしようもないので

「まぁ、頑張れ」

と肩を叩いてその場を離れた。
次にVF-1Bの隣りに駐機するさくらのVF-11G『サンダーホーク』に視線を移す。
こちらは元の世界でも整備性が高い機体なので、性能に比べて整備が容易になっている。そのためかこちらにはもう整備員の姿はなく、さくら自身
が最終点検を行っていた。
サーボモーターなどを使い、電子制御で機体の操縦制御を行う形式であるデジタル・フライバイ・ワイヤの両翼の動翼に、順番に軽く体重を乗せて
動かない事を確認する。
そして次に『NO STEP(乗るな)』という表示に注意しながら上に昇ると、整備用パネルが開いていたり、スパナなど整備員の忘れ物がないか確認し
ていく。
よほど集中しているのかアルトが見ていることには気づいていないようだった。しばらくその手際眺めていると、後ろから声をかけられた。
相手はVF-25を整備していた整備員だ。どうやらようやく全ての点検・整備が終わったらしい。
アルトはもう一度点検を続けるさくらを流し見ると、自らの愛機の元へ歩き出した。

(*)

1330時 機動六課 正門

そこにはヴァイスのものだという、このご時世には珍しい内燃機関の一種である、ロータリーエンジン式のバイクに跨がって六課を後にしようとして
いるティアナ達と、見送るなのはがいた。

「気をつけて行ってきてね」

「は〜い、いってきま〜す!」

なのはの見送りに後部座席に座るスバルが返事を返すと、ティアナは右手に握るアクセルをひねった。
石油ではなく水素を燃料とするそれは電気自動車や燃料電池車の擬似エンジン音だけでは再現できない振動やエンジン音を轟かせて出発する。
そして狼の遠吠えのようなエキゾーストノートを振り撒きながら海岸に続く連絡橋を爆走していった。
なのはは背後の扉が開く気配に振り返る。するとそこには地上部隊の礼服に袖を通したはやての姿があった。

「あれ? はやてちゃんもお出かけ?」

「そうや。ちょっとレジアス中将に呼ばれてな。ウチがおらん間、六課をよろしく」

「は!お任せください!八神部隊長」

わざと仰々(ぎょうぎょう)しく敬礼するなのはに、

「似合えへんなぁ」

とはやてが吹き出すと、なのはもつられて笑った。
その後はやてはヴァイスのヘリに乗って北の空に消えていった。


160 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:24:39.35 ID:F82haQfO
(*)

その後ライトニングの2人を見送ったフェイトと合流したなのはは、

「(フェイトの)車の鍵を貸してくれ」

というシグナムに出くわしていた。

「シグナムも外出ですか?」

フェイトがポケットから鍵を取り出し、シグナムの手に置きながら聞く。

「ああ。主はやての前任地だった第108陸士部隊のナカジマ三佐が、こちらの合同捜査の要請を受けてくれてな。その打ち合わせだ」

「あ、捜査周りの事なら私も行った方が─────」

しかしフェイトの申し出は

「準備はこちらの仕事だ」

とやんわり断られた。

「お前は指揮官で、私はお前の副官なんだぞ」

そう言われてはフェイトに反論の余地はない。

「うん・・・・・・ありがとうございます─────でいいんでしょうか?」

「ふ、好きにしろ」

そう言ってシグナムは駐車場の方へ歩いていった。
なのははそんな2人を見て、『知らない人が見たらどっちが上官なのかわかるのかな?』と思ったという。

(*)

その後デスクワークをしなければならないというフェイトと別れ、なのはは六課隊舎内にあるデバイス用の整備施設に到着した。

「あ、なのはさん」

画面に向かっていたシャーリーが振り返って迎え、その隣にいたヴィータも

「遅かったじゃねーか」

といつかのように婉曲語法で自分を迎えた。

「ごめん、ごめん。それでどう?上手く行ってる?」

なのはは言いながらシャーリーの取り組んでいる画面を後ろから覗き見る。
自らのデバイス『レイジングハート(・エクセリオン)』は昼飯前からシャーリーに預けられており、アップデートは開始されているはずだった。

「はい、あと2時間ぐらいでアップデートは終わる予定です」

プログラムを構築したシャーリーの見立てにミスはない。ディスプレイに表示された終了予定時間は1時間以下だったが、こういう終了時間は信用で
きないのが世の常。それを証明するように次の瞬間には3時間になったり30分となった。
ヴィータの方も似たり寄ったりで、プログラムのアップデート率をみる限り、自分の1時間後ぐらいに終わるだろう。
しかしなのはは画面を眺めるうちにあることに気づいた。

161 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:26:32.00 ID:F82haQfO
自分とヴィータだけでなく、まだもう1つデバイスのアップデート作業が進行しており、もう間もなく終わりそうなことに。
検査兼整備用の容器に入った待機状態のそのデバイスはブレスレット型≠セった。

「ねぇシャーリー、あのデバ─────」

デバイスは誰の?とは問えなかった。その前に持ち主がドアの向こうから現れたからだ。

「あ、なのはさん、お久しぶりです!」

地上部隊の茶色い制服に身を包み、ニコリと嬉しそうに挨拶する緑の髪した少女、ランカ・リーがそこにいた。

(*)

ランカは本局の要請で無期限の長期出張に出ていた。
行き先は戦場≠セ。
第6管理外世界と呼ばれる次元世界で行われていた戦争は、人対人の戦争ではなく、対異星人との戦争だった。
本来管理局は非魔法文明である管理外の世界には干渉しないのが基本方針だったが、その世界の住人は管理局のもう1つの任務に抵触した。
それは次元宇宙の秩序の維持≠セ。
彼らは70年程前に次元航行を独自に成功させ、巡回中だった時空管理局と遭遇したのだ。
運の良いことに極めて友好的で技術も優秀な人種であったことから、1年経たないうちに管理局の理念に賛同した彼らと同盟を結ぶに至った。
以後管理局は次元航行船の建造の約8割をその世界に依存しており、管理局の重要な拠点だった。
しかし2ヶ月前、その世界で戦争が勃発した。
その異星人は我々人間と同じく炭素<xースの知性体(以下「オリオン」)であったが、彼らは突然太陽系に入ると先制攻撃を仕掛けてきたのだ。
当然管理局に友好的だったその惑星(以下「ブリリアント」)の住人は必死に応戦する。
管理局との規定により魔導兵器縛りだったが兵器の技術レベルではなんとか拮抗。戦力は圧倒的に劣っていた。しかしブリリアント側にはある
技術≠ェあった。
次元航行技術だ。
この技術は実は超空間航法『フォールド』と全く同じ技術で、第25未確認世界(マクロス世界)とオリオンの住人達は知らなかったが、空間移動より
次元移動に使う方が簡単だった。
この技術によってオリオン側の先制攻撃と戦力のメリットを塗り潰し、比較的戦いを有利にすすめた。
しかし所詮防衛戦でしかなく、オリオン側の恒星系の位置がわからないため、戦いは長期化の様相を呈していた。
だが捕虜などからオリオンの情報がわかるにつれて、戦争の必要がないことがブリリアント側にはわかってきた。
彼らの戦争目的は侵略ではなく自己防衛≠セという。
何でも彼らの住む惑星オリオンからたった数百光年という近距離にあったため、

「ベリリアン星の住人が攻めてくる!」

という集団妄想に駆られたらしい。
それというのもブリリアント側が全く気にしていなかった、それどころか最近までまったく観測すらしていなかったものが原因であった。それは次元
航行に突入する際に発生してしまう短く超微弱なフォールド波だ。
これを次元航行発明から70年間完全に垂れ流しつつけ、これを受信したオリオンが盛大に勘違いした。
彼らにはまだフォールド技術は理論段階で、空間跳躍以外の使用法を全く思いつかなかった。そのため管理局に造船を任されてどんどん新鋭艦
を次元宇宙に進宙させていったブリリアントの行為は、オリオン側にとって奇怪に映った。船を造ってどんどんフォールドするのはわかる。宇宙開
発というものだとわかるからだ。しかし恒星外にフォールドアウトするでもなく、ただため込んでいるようにしか見えないその行為は、オリオンの住
人にとって艦隊戦力の備蓄と思われてしまったのだ。
そう勘違いしてしまったオリオンは半世紀の月日をかけてフォールド航法を理論から実用に昇華させて、のべ一万隻もの宇宙艦隊を整備。そして
今、万全の準備をして先制攻撃に臨んだようだった。
しかし実のところ彼らのことはまったく知らなかったし、『協調と平和』を旨とするブリリアントは知ったところで侵略するような野心もない。
そこで和平交渉のためにまず戦闘を止めようと考えたブリリアントは、次元宇宙で超時空シンデレラ≠ニも戦争ブレイカー≠ニも呼ばれる
ランカ・リーの貸出しを要請したのだ。
管理局としても戦争による新鋭次元航行船建造の大幅な停滞は困るし、70年来の大切な盟友を助けたいという思いがあった。
こうして1ヶ月前、六課に対し最優先でランカの出張を要請したのだ。
六課やアルトは危険地帯へのランカの出張に渋ったが、ランカの強い思いから根負けしていた。

162 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:27:35.03 ID:F82haQfO
こうして第6管理外世界に出張したランカは、本局の次元航行船10隻からなる特務艦隊と航宙艦約100隻から成るブリリアント旗艦艦隊に守られ
ながら局地戦をほぼ全て歌で制≠オて行ったという。
確かなのはが最後に見た関連ニュースは「全オリオン艦隊の内、50%がブリリアント側に着いた」というものだった。
そのランカがここにいるということは─────

「戦争は終わったの!?」

ランカは頷くと続ける。

「みんないい人達なんだよ。ただ誤解があっただけなんだ」

そう笑顔で語る少女は、とても恒星間戦争を止めた人物には思えぬほど無邪気であった。

(*)

1424時 クラナガン地下

そこは戦前は半径10キロメートルに渡って巨大な地下都市があり、戦時中は避難民が入った巨大な地下シェルターだった。
一時は全区画にわたって放棄されていたが、今では歴代のミッドチルダ政府の尽力によって大規模な地下街が再建されている。
しかしその全てに手が届いたわけではない。一部の老朽化や破壊の激しい区画は完全に放棄され、そうでなくともただのトンネルとして利用されていた。
そこを1台の大型トラックが下って(クラナガンから出る方向)いた。
そのトラックのコンテナには『クロネコムサシの特急便』のロゴとイメージキャラクターがペイントされ、暗いトンネル内をヘッドライトを頼りに走って行く。
運転手はミッドチルダ国際空港近くの輸送業者の新人で、この道は彼の先輩から教わったものだ。
地上のクラナガンに繋がる道はどこも渋滞であり、拙速を旨とする彼ら輸送業者はこの廃棄区画を開拓したのだった。
しかし残念ながら路面状態はよくない。
その運転手はトラックの優秀なサスペンションでも吸収できなかった予想以上の縦揺れに驚く。

「いかんな・・・積み荷が揺れちまうじゃねぇか」

彼はシフトレバーについたつまみを操作すると、ヘッドライトをハイビームにする。
すると少しは視認範囲が広かった。しかし─────

(しっかし、いつ来ても廃棄区画は気味悪りぃな・・・・・・)

右も左も後ろにも他の車は見えない。それが彼に昨日見た映画を思い出させた。
それはベルカ(位置は第97管理外世界でアメリカ合衆国)のハリーウッド≠ナ撮影された映画で、タイトルは「エイリアン」だ。
ストーリーは時空管理局の次元航行船が、新らたに発見された世界の調査のために調査隊を派遣する所から始まる。
そこには現代の技術レベルを持った町があったが、人の姿がない。調査が進むにつれてこの惑星の住人が、ある惑星外生命体の餌食になってい
たことがわかった。
しかしその時には遅かった。
魔法の使用を妨害するフィールドを展開する敵に対し、調査隊には腕利きの武装隊が随伴していたが、また1人、ま1人と漆黒のエイリアンの餌食
になっていく。
また、次元航行技術があったらしいこの世界は、厳重に隔離されていたが次元空間へのゲートが開きっぱなしだった。
このままではエイリアン達がこちらの世界に来てしまう。
何とか現地の質量兵器を駆使して次元航行船に逃げ延びたオーバーSランクの女性執務官リプリーと、1人の調査隊所属の科学者の2人は、艦船
搭載型の大量破壊魔導兵器であるアルカンシェルによるエイリアンの殲滅を進言。そのエイリアンの危険性は認められ、それは決行される。
大気圏内で炸裂したアルカンシェルは汚染された町をクレーターに変え、船は次元空間に戻った。
しかしリプリー達が乗ってきた小型挺には小さな繭が─────!
という身の毛もよだつ結末だ。
さて、問題のシーンは物語の終盤。先の生き残った2人と、3人の武装隊員が現地調達した軽トラで、小型挺への脱出を試みた時だった。
その名も無き(劇中ではあったと思うがいちいち覚えていない)武装隊員はこのようなだれもいない地下の道を走っていた。

しかし賢しいエイリアン達は天井に潜んでいた!

ノコノコやってきた軽トラに飛び乗った奴ら≠ヘ2人の武装隊員の断末魔の悲鳴とともに運転席を制圧。危険を感じ取ったリプリー達3人は荷台
から飛び降りた─────というシーンだった。


163 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:28:16.87 ID:F82haQfO
(・・・・・あれ、俺って名も無き犠牲者その1じゃね─────)

彼の背筋に冷たいものが走る。

「ま、まさかな。そうだよ、杉田先輩だって10年以上この道を使ってたんだし、前にも先輩と1回通ったじゃないか」

わざと声を出して自らを勇気づける。
そして彼はラジオを点けると局を選ぶ。すると特徴的なBGMと共にCMが聞こえてきた。

『─────毎日アクセルを踏み、毎日ブレーキを踏み、毎日荷物を積み降ろす。・・・あなたのためのフルモデルチェンジ。新型ERUF(エルフ)
登場─────!』

彼はそれを聞きながらそのBGMを歌い出す。

「いぃつ〜までも、いぃつぅ〜までも〜、走れ走れ!ふふふ〜のトラックぅ〜」

それを歌うと何故か恐怖も飛んでいった。

(やっぱこの曲はいいねぇ〜。でも─────)

彼はこのトラックのフロントにあるシンボルマークを思って少し申し訳なく思った。
そこには『ISUDU』ではなく、『NITINO』のマークがあったりする。

(どっちが悪いってわけでもないんだが・・・・・・)

彼はそう思いながらも歌い続けた。

「ど〜こぅ〜までも、どこぅまでも〜、走れ走れ! ISUDUのトラック─────」

(*)

5分後

『そろそろクラナガン外辺部かな』と思った彼は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム。全地球無線測定システム)で位置を確認する。
その時、一瞬サイドミラーが光を捉えた。

「?」

再び確認するがなにもない。

(勘弁してくれよ・・・・・・映画のせいで敏感になってるんだな・・・・・・)

彼はそう結論を出すと運転に意識を集中する。しかし今度はコンテナの方から無理に引き裂かれているのか、それを構成する金属が悲鳴のよう
な悲鳴を上げる。

「ちょ・・・・・・マジで・・・・・・」

積み荷は食料品や医療品などで勝手に動くものは積んでいないはずだ。

(ということは・・・・・・!)

 彼の頭に映画のシーンがフラッシュバック!あの武装隊員の断末魔の悲鳴が頭に響く。



(落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け、 落ち着け、落ち着け─────!!)


164 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:28:57.53 ID:F82haQfO
彼はもはやパニック寸前だ。しかし無慈悲にもその時は訪れた。
一瞬静かになり、彼が振り返えろうと決意した瞬間─────
耳をつんざく轟音と眩いまでの黄色い閃光が閃光手榴弾のように彼の視界を奪った。
すでに冷静さを欠いていた彼は驚きのあまりハンドル操作を誤り、トラックを横転させてしまった。

(*)

横転事故より15分後、トラックに搭載されていた緊急救難信号を受信した救急隊が現場に急行していた。

「・・・・・・おい、あれか?」

救急車を運転する救急隊員が助手席に座ってGPSを操作する同僚に聞く。

「ああ、そうらしい。しかし、こんな薄気味悪い場所で事故らんでも・・・・・・」

「こんな場所だからだろ。・・・・・・運転席に付けるぞ」

救急車は横転したトラックの本体─────牽引車近くに横づけする。

「大丈夫ですか!?」

ドアを開けて助手席の同僚がトラックに呼びかけるが返事はない。車を離れているのだろうか?
後ろではもう1人の同僚が救急車の後部ハッチを開けて、懐中電灯でトラックを照らす。
どういう訳かコンテナだけがひどく損傷していたが、運転席付近は無傷だ。シートベルトさえしていれば助かりそうだが─────

いた!

エアバックで気絶しているらしい。トラックの左側を下に横転しているため、宙吊りになったまま項垂れている。
外に出た同僚2人はデバイスで超音波を発生させてフロントガラスを1秒足らずで割ると、センサーで彼の状態を調べる。

「・・・・・・大丈夫だ。バイタル安定、骨も折れてない」

2人は運転手を事故車両から引き離していく。
その間に運転席に残っていた彼は、どうも妙な事故なため、無線で1番近い治安隊に事故調査隊の派遣の旨を伝えた。

(*)

20分後

「通報を受け派遣されました第108陸士部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です」
『地上部隊 第108陸士部隊』と書かれたメガ・クルーザーのHMV(ハイ・モビリティ・ヴィークル。高機動車)に乗ってきたのは3人で、内2人は白衣を
着、もう1人は挨拶をした地上部隊の茶色い制服を着た1人の女性隊員だった。整備されていないこの地下空間は世間では犯罪者の温床にもなっ
ていると言われていることから、治安隊の代わりに陸士部隊の調査隊として派遣されたとのことだった。

「この事故はただの横転事故と聞きましたが・・・・・・」

「はい。それが事故状況がどうも奇妙でして、それほど大きな衝撃でもないはずなのにコンテナだけが吹き飛んでいて・・・・・・」

確かに救急車のヘッドライトに照らされたコンテナは、原型を止めないほどにひどく損傷していた。

「運転手の方(かた)は?」

ギンガの質問に救急隊員は困った顔をする。

「・・・・・・それが運転手も混乱していまして・・・・・・お会いになりますか?」

165 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:29:45.33 ID:F82haQfO
「できるならお願いします」

ギンガは同乗者の2人に現場検証を頼むと、運転手が手当てを受けているという救急車に入った。

「本当なんだよ!あのエイリアン≠ェ出たんだ!!」

そう手当てしながら困った顔をする救急隊員に喚く運転手に、ギンガはギョッ≠ニする。

(そうかぁ、あの映画を見た人かぁ・・・・・・)

彼女は彼に、一気に親近感を覚えた。
彼女も実は1年ほど前にその映画を劇場でみていた。人には言えないが、その後1ヶ月ぐらい1人で真っ暗な部屋に入る時には、デバイスをその腕
に待機させねば安心できなかった。

「すみません、そのエイリアンのお話をお聞かせ下さい。私はそのために管理局から派遣されました」

「なんだって!・・・・・・それじゃあの映画は!?」

思わせぶりに頷いてやると運転手の口はようやく軽くなり、やっと事故の状況が判明した。

(*)

「コンテナが勝手に爆発ねぇ・・・・・・」

救急車から出たギンガが腕組みして考える。
地面に散らばる積み荷は食料品などで爆発するような物はないし、クロネコムサシの本社から預かったそのトラックの輸送物リストもほとんどが医
療品や食料品と書いてある。
しかし本当にエイリアンが来たなどということはあるまい。
鑑みるにこれはテロで郵便爆弾の誤爆という可能性があるが、どこかの政府系機関に届ける予定の荷物は─────

「・・・・・・あれ?」

ギンガの目がリストの一項目で止まる。

(これがベルカのボストンで?)

内容物は、輸入品としては珍しくないとうもろこし。しかしベルカの比較的北にあるボストンでは寒すぎて生産していない。
ビニールハウスという手もあるが、最近赤道付近の地価は安く、補助金も出るためそんなところで作るメリットはない。
それどころかボストンでは10年前からあるベンチャー企業の進出が進んでおり、農業をやるような場所はもう残っていないはずだった。

(確かその企業がやっているのは医療用のクローン技術─────)

そこまで考えた時、一緒に来た調査隊員の自分を呼ぶ声が耳に入った。

「はーい。今行きます!」

ギンガはリストを小脇に添えると声の主の元へ走る。

「どう─────」

どうしました?と問うまでもなかった。
彼は顔を上げるとそれ≠ライトで照して見せる。
そこには他の積み荷と違って無粋な金属の塊『ガジェットT型』の大破した姿があった。

「他にもこんな物が」


166 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:30:36.84 ID:F82haQfO
少し離れていたもう1人が、床に転がっているそれを指先でトントンと叩いて見せる。

「それは・・・・・・生体ポット!?」

ギンガは目を疑うことしかできなかった。

(*)

『君はいったい何をやっているのかね!?管理局に感づかれたらどうする!』

画面の中で怒鳴る背広を着た中年男にスカリエッティは涼しい顔をして答える。

「あれ≠ェ本物かどうか試しただけですよ。それに、管理局など恐るるに足らない」

その軽い態度に更に熱が入ったのかまた怒鳴ろうとした中年男だが、画面の奥の人物に制される。

『しかし社長!』

中年男は社長と呼ぶ30代ぐらいの若い人物に異議を唱えようとするが、彼の鋭い視線だけで黙らされてしまった。
社長は中年男が席に座るのを確認すると、今度は彼自ら詰問し始めた。

『スカリエッティ君、我々はもうかれこれ7年間君の研究のために優秀な魔導士達の遺伝子データを提供してきた。だが我々が君に嘘をついた事
があるか?』

「いいえ。おかげさまで研究は順調に進んでますよ」

『なら今後、このような事は無いようにしてくれたまえ。・・・・・・それとあの子≠フ確保は後回しでも構わないが、一緒に送った3つのレリックの内
12番≠ヘ必ず回収したまえ。あれがなければこの計画は失敗だ』

「仰せのままに」

スカリエッティの同意に社長は通信リンクを切った。
画面に『LAN』という通信会社の社名が浮かぶ。この回線はミッドチルダから太平洋を横断し、ベルカの大地まで繋がった長大な有線回線だ。
現在MTT(ミッドチルダ電信電話株式会社)に市場で敗れたこの会社はもうなく、海底ケーブルは表向き放棄されている。しかし海底ケーブルという
ローテクさ故に注目されず、盗聴も困難なため、水面下で動く者達の機密回線にはもってこいだった。

「またスポンサーを怒らせたの?」

いつものように気配なく彼女はスカリエッティの背後に現れた。

「まぁね。しかし必要なことさ。それに、彼らにはあれ≠フ重要さがわかっていない」

スカリエッティは肩を大仰に竦めると首を振った。

「そう・・・・・・。まぁ、私はあなたの副業には干渉しないけど、せいぜい頑張ってね」

グレイスは微笑むと退室していった。

「・・・・・・ウーノ」

スカリエッティの呼びかけに、彼の背後に通信ディスプレイが立ち上がり、彼の秘書を映し出す。

「はい」

「あれは本物だったか?」

167 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/12/10(土) 23:31:53.87 ID:F82haQfO
「確定はできませんが、恐らく本物でしょう。」

スカリエッティはその答えに陶酔したように

「すばらしい・・・・・・」

とコメントすると、それ≠フ追跡を依頼した。

(*)

『ベルカ自治領 マサチューセッチュ¥B ボストン』

その地域は最近発展してきた医療科学系企業『メディカル・プライム』が席巻していた。
この企業はミッドチルダでは禁止されている「クローン技術」を用いて、要請を受けた本人のクローンの臓器を作っている。無論これは移植のためだ。
この『クローン臓器移植法』は、移植時の拒絶反応が全くないことから定評があった。
しかし従来の全身のクローン体から、移植のため一部を取り出すという行為はクローン体を殺す事を意味し、倫理上の問題があった。
そこでこのベンチャー企業は必要な臓器を必要なだけ、ある程度瞬時に<Nローン化する技術を開発し、これを武器に発展してきていた。
社名の「メディカル・プライム」も「最上級の医療を!」という熱い思いを込めて付けられたもので、お金さえあればパーツ≠フ交換で脳を含めた
若返りすら可能だった。
現在、その企業内では深夜に関わらず、上級幹部達が緊急会議の名目で集っていた。
ある幹部が通信終了と同時に口を開く。

「全く、あの男の腹の内は読めん」

それに対し、スカリエッティに怒鳴っていた中年男が彼に怒鳴る。

「なにを言っている!やつなど野心丸見えじゃないか!だから犯罪者と手を組むことには反対だったのだ!」

「・・・しかしあいつにしかこの計画は遂行できないだろうな」

5,6人の幹部達が思い思いに意見をぶつける。今までこの議論が何度重ねられたことか。しかしやっぱり最後の結論は決まっている。

「諸君、すでに賽(さい)は投げられたのだ。この計画にスカリエッティを巻き込んだことを議論しても仕方がない。それに管理局には非常用の鈴が
着いている。不本意だが≠烽オもの時は彼女に揉み消してもらおう。我々はスカリエッティを監視しつつ、ベルカの誇りであるあの船≠フ浮上
を待てばよいのだ。あの船さえあれば、ミッドの言いなりになってしまったこの国の国民達も、目が覚めるはずだ!」

社長の熱を含んだスピーチに幹部は静かに聞き入る。そして社長は立ち上がると、会議室に飾られた今は無きベルカ国の国旗に向き直り、掛け声
を上げる。

「偉大なるベルカ国に、栄光あれ!」

「「栄光あれ!!」」

幹部達も立ち上がり、彼に続いた。

――――――――――
以上です。ありがとうございました。

168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/12/11(日) 00:55:42.61 ID:o1Xe+6Hq
乙〜
ルビの件に関しては今回みたいに投下用と編集用をあらかじめ
分けて置けば問題ないと思うよ

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>>1-10000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 get="_blank">>>22r★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

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