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21世紀深夜アニメロワアイル3

1 : ◆PuVQoZWfJc :2010/11/26(金) 19:43:57 ID:ZUxUsHPH
ここは2001年以降に放送された深夜アニメのキャラクターを対象にバトルロワイアルを
行うリレー小説の企画でその続きの予定です。
この企画は性質上残酷な描写を含むので閲覧の際にはご注意下さい。

色々有りましたが何とか1度目の放送も終えて3スレ目、このままアイルの方向で

したらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14065/

wiki
ttp://www26.atwiki.jp/midnightanirowa/pages/1.html

前々スレ
21世紀深夜アニメロワアイル
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1282948522/
前スレhttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1285576204/1-10

2 : ◆PuVQoZWfJc :2010/11/26(金) 19:47:01 ID:ZUxUsHPH
参加作品と第1回放送終了時点での生存者数

4/9【蒼穹のファフナー】
○真壁一騎/○皆城総士/○遠見真矢/ ● 羽佐間翔子 / ● カノン・メンフィス/ ● 春日井甲洋/ ● 近藤剣司/ ● 小楯衛/○要咲良
6/8【ストライクウィッチーズ】
○宮藤芳佳/ ● リネット・ビショップ/ ○エーリカ・ハルトマン/○ゲルトルート・バルクホルン/○フランチェスカ・ルッキーニ/○シャーロット・E・イェーガー/ ● サーニャ・V・リトヴャク/○エイラ・イルマタル・ユーティライネン
3/8【武装錬金】
○武藤カズキ/ ● 津村斗貴子/ ● 中村剛太/ ● 早坂桜花 / ● 早坂秋水/○火渡赤馬/ ● ヴィクトリア・パワード/○ヴィクター
4/7【魁!!クロマティ高校】
○神山高志/○林田慎二郎/ ● メカ沢新一/ ● フレディ/○ゴリラ/ ● 竹之内豊/○マスクド竹之内
0/7 【ef - a tale of memories./melodies.】
● 広野紘/ ● 宮村みやこ/ ● 麻生蓮治 / ● 新藤千尋 / ● 久瀬修一/ ● 火村夕/ ● 雨宮優子
4/7【GUNSLINGER GIRL】
○ヘンリエッタ/○ジョゼッフォ・クローチェ/○トリエラ/ ● ヴィクトル・ヒルシャー/ ● アンジェリカ/ ● マルコー・トーニ /○ピノッキオ
1/7【瀬戸の花嫁】
● 満潮永澄 / ● 瀬戸燦 / ● 政 / ● シャーク藤代/ ● 江戸前留奈/○銭形巡/ ● 三河海
2/6【Angel Beats!】
● 音無結弦 /○仲村ゆり/○立華かなで/ ● ユイ/ ● 日向秀樹/ ● 直井文人
4/6【真・恋姫†無双】
○劉備/ ● 関羽/○諸葛亮/○趙雲/ ● 馬超/○曹操
3/4【エルフェンリート】
○ルーシー/ ● コウタ/ ○ナナ/○坂東
4/4【CANNAN】
○カナン/○アルファルド/○大沢マリア/○リャン・チー
2/4【Phantom 〜Requiem for the Phantom〜】
● 吾妻玲二(ツヴァイ)/○アイン/ ● ドライ○サイスマスター
2/3【DARKER THAN BLACK】
○黒/ ● 銀 /○蘇芳・パヴリチェンコ
39/80

>>1の前スレの前に「21世紀深夜アニメロワアイル2」を入れ忘れてました。すいません。

3 : ◆PuVQoZWfJc :2010/11/26(金) 19:49:56 ID:ZUxUsHPH
【基本ルール】
全員で殺し合いを行い、最後まで生き残った一人が勝者となる
生き残った一人だけが、元の世界に帰ることができる
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される
プレイヤー全員が死亡した場合、規定時間を超え複数が生き残った場合ゲームオーバー(勝者なし)となる


【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収(義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない)。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される
ゲーム開始直前に以下の物は「デイパック」などの鞄類、もしくはそれに類する持ち運び可能な物に詰められ支給される
「名簿」「地図」「コンパス」「懐中電灯」「筆記用具」「水と食料」「時計」「ランダムアイテム」
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1個〜3個入っている。
(回復アイテムや装飾品、補助武器など。バランスを崩しそうな物は書き手の自己責任で制限、ファフナーのような巨大ロボは制限が困難なので支給不可)

【予約について】
騙り防止のためにトリップ必須。書き込む前にトリップキーが割れていないか検索を推奨。
したらばの予約スレッドにトリップをつけて書き込んで予約する。
現在の予約期限は予約時間から3日。延長申請すればさらに1日期限を延ばせる。
※したらばの方で話になったので名無し投稿作品でも身請けする書き手さんが名乗りを上げれば
その人の作品として採用されます。但し修正責任は身請けした書き手さんに移ります。これを使って
後で自分で拾こともできます。

【禁止事項】
一度死亡が確定したキャラの復活
大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
時間軸を遡った話の投下
話の丸投げ
トリップ割れによる成りすまし
既に他の書き手さんの予約があるキャラを使ったSSの投下

また一度予約を破棄することになった書き手さんの予約独占防止のため
予約破棄から同キャラの予約には二日間の間を設ける事とする。

4 : ◆PuVQoZWfJc :2010/11/26(金) 19:52:41 ID:ZUxUsHPH
【議論・修正協議について】
したらばの議論スレにて発議。でも雑談スレでもやってしまっても良いかも知れない。
本スレは投下をメインとして、次に投下する人の邪魔にならないようにする。
これはリレー小説です、一人で話を進める事はなるたけ止めましょう。ただ書き手が大量に
いるわけではないので場合によってはある程度自己リレーも有りかも知れません。

【禁止エリアについて】
放送から1時間後、3時間後、5時間に2エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【首輪について】
参加者の首には首輪が装着され、首輪は以下の条件で爆発し、首輪が爆発したプレイヤーは例外なく死亡する。
・首輪を無理やり外そうとした場合
・禁止区域エリアに入った場合
・ロワ会場の外に出た場合

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。

【作中での時間表記】
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24

【地獄少女について】
会場内のパソコンや携帯電話などで地獄通信にアクセスが可能です。
アニメと同様に深い恨みなどを持ってアクセスをしたら、地獄少女に依頼をして相手を地獄に流す事が出来る。
地獄少女は一切の制限が掛かっていない為に、地獄流しの回避は不可能です。(死亡扱いになります)
ただし依頼をした側も死後に地獄へと落ちることになります。
島の施設及び支給品に上記の物があれば使用は可能です。

5 : ◆PuVQoZWfJc :2010/11/26(金) 19:54:59 ID:ZUxUsHPH
お騒がせしましたがまだまだやりますロワアイル。
3スレ目建てました。

6 :rikidamo@『ハムレット』の四人の亡霊:2010/12/02(木) 22:50:03 ID:2oYnIz7W
二人の学生は理不尽なゲームに巻き込まれる前から、楽園も地獄も知っていた。
ひとりは孤島に育まれた中学生。島外の地獄を目の当たりにし、故郷を守る戦いに身を投じた。
ひとりは闘争に明け暮れた犯罪者。逃亡先に楽園を見出し、なし崩し的に腰を下ろした。


「竹之内豊も死んだか」

マスクド竹之内は診療所のベッドの上に座っている。背中に何枚もの湿布を貼られていた。
成分にはサロンパ草という聞き慣れない、ある意味聞き慣れた材料が使われていた。

「名前がお前と酷似しているな。家族か」

総士は首を動かさずに、見張りを続けている。

「俺はあいつに成りすまして、日本で生活していた」

マスクドはすべてを打ち明けた。日本の航空機のハイジャックを試みたこと。
竹之内豊に説得されて海外に逃亡したはずが、なぜか自分達だけ日本に戻っていたこと。
覆面をしていたら、学校も家族も彼を竹之内として受け入れたこと。体格も声も全く違うのに。
本物が日本に戻ってきても、彼に土下座してそのまま一緒に暮らしていたこと。

「……誰もその異常な状況に異議申し立てをしなかったのか」
「林田以外は俺の正体に気づいていたらしい。林田というのは、ここに呼ばれた男だ。
 いつばれるかビクビクしていた自分がとんでもなく情けなく見えてくるぜ」
「ああそうか、そうだな。何と言ったらよいか分からないが、寛大な隣人に恵まれていたのだな」

総士はわざとらしく相槌を打った。
少年の視線はほのかに虚ろで、窓に向いていた。その先には青い空があった。

「お前さんも大切な人が亡くなったんじゃないのか」
「3人、いや4人だ。彼らは優秀なパイロットだったが、対人戦闘には不向きだった」
「それだけ死んで、随分とあっさりとした反応だな。フレディが死んだ時の方が感傷的じゃねえか」
「お前は僕たちの世界を何も知らない……犠牲者を最小限に留めることが戦友への最大の弔いだ」

マスクドは少年の言葉の端々に強烈な無念さを感じ取った。
総士にとって、この殺し合いはフェストゥムとの戦いの延長にあるのだろう。
有用な技術を手に入れて帰還できれば、敵に対して優位に立てる。
逆に、彼らが全滅すれば人類は苦境に立たされる。


7 : ◆wx6xn8zSMZnR :2010/12/02(木) 22:52:48 ID:2oYnIz7W
覆面の男はタバコを吸うような仕草をする。部屋はクロ高の教室のようにヤニの臭いがした。

「それにしても、6時間で参加者が半分になるとは予想外だな。お前さんは原因をどう考える」
「統計的に95%以上の人間は殺人に躊躇いを感じる。好戦性の高い参加者を集めたのだろう。
 加えて、初期配置も強者が弱者を狩りやすいように設定されていたと考えられる」
「万全の采配ってやつだな。認めたくはねえが、第一ラウンドは于吉の完勝か」

張り替えたばかりの壁紙に拳を打ち付け、そして男は言葉を続ける。
右腕全体に電撃で撃たれたかのような痺れが伝播した。

「ただ、それは諸刃の剣だ。短期決戦を促すほど、殺人者の消耗や共食いも激しくなる」
「だからこそ、放送で下手人を公開し、彼らのクールダウンを試みたのだろう。
 殺人者はより狡猾に振る舞う恐れがある。逆に報復の連鎖に走る参加者も増えるだろうが」
「どちらにせよ、厄介なことには違いねえ。こちらも早く同志を見つけて、戦力を高めにゃならんか」
「僕もそれは同意見だ。だが、成りすましや裏切りだけは警戒した方が良い」

総士は何かを思い出して苦々しい表情を浮かべていた。
マスクドは高校生らしくない体格に学生服を羽織り直し、ゆっくりと立ち上がった。

「さて、必要最小限の医薬品をかき集めて、とっとと出るぞ。
 ここは殺人者たちの格好の狩場になりかねん」

自分についてはどう思っているのか、という言葉が出掛るのを押し留めた。
恐らく、信頼はしているのだろうが、辛辣な評価が返ってきそうな気がしたから。


◇    ◇     ◇


二人は休み休み空港方向へ進むと、広場に半径20メートルほどのストーンサークルを発見した。
石柱は五芒星を描いており、真夜中に魔女が周回でも開きそうな雰囲気を醸し出していた。

「地図には描かれていないモニュメントだな。これと言った機能はなさそうだが」
「待ち合わせくらいには使えるんじゃねえか。いや、床に何かあるな」

円陣の中央に金属のレリーフが埋め込まれていることに気づく。

施設     所在  対価
修復フラスコ 研究所 首輪3つ
転送装置   塔   首輪1つ
銃弾補給    (以下省略)

マスクドは顎に手を当てながら、メモを取る。

「死人の首を切れってか。これを好戦的な人物に知られると厄介だな」
「碑文を消すのか、止めるつもりはない。鑢の類は持っていたか」
「いや、診療所の薬品を組み合わせて金属溶解剤を――」
「気をつけろ、北の草陰で誰かが動いた」

総士は彼の言葉を遮る。

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 22:53:42 ID:2oYnIz7W
あ、酉ミスってる、しばらくお待ちをorz

9 :『ハムレット』の四人の亡霊 ◆MS8eAoJleg :2010/12/02(木) 22:56:01 ID:2oYnIz7W
総士は彼の言葉を遮る。

「いや、西からもだ。敵は2、3、4人。これは――僕たちを集団で狩るつもりか」

マスクドの額に冷たいものが流れる。
ゲームに乗った者たちの連携、想定していた悪夢が現実となってしまった。
マカロフ拳銃安全装置を外して、グリップを握りしめる。

一刻の間をおいて、人影が飛び出してきた。
栗毛色の髪を持つ少女。フレディを殺した小さな死神。
彼が感情を働かせる余裕を与えずに、2人目が姿を現す。
人形のような茶色目の少女。関羽を殺した小さな死神。
続けて、血塗られたセーラー服、ではなくワンピースに身を包んだ少女。ルナを殺した小さな死神。
最後に繊細な白い肌を持つ少女。久瀬修一と三河海をも殺したトップマーダー。

みんな、ヘンリエッタだった。総士は思わず声を上げる。

「全員おなじ姿だと。これは奴の能力か、それとも支給品の力か」
「こいつらはデイバッグを持ってねえな」

おまけに首輪もしていない。この短期間であれを外せたとは思えない。
彼女たちは命知らずに、武器も持たずにジグザグに走りながら接近してくる。

マスクドは即座に偽物と判断。殺すつもりでトリガーを引く。
敵は流れるような俊敏さで左に飛び退き、弾丸を回避。足を止める。
だが、残り3人は依然として距離を詰めてくる。

「相手が徒手空拳ならば、こちらにも勝算はある」

総士はベルトに突いた紐を引く。緑の風船がいくつも射出される。
ボール大のニヤケ顔がマスクドの横を漂って通り過ぎ、四散する。
4人のヘンリエッタはこれを警戒し、速度を緩める。

風船が唐突に破裂する。軽い音を立てて灰色の煙を吐き出した。
次の瞬間、ニヤケ顔の数が何倍にも増えていた。割れれば割れるほど数が増える。
そして、微風とは反対方向に、ゆっくりと、確実に可憐な死神たちの進路を塞いでいく。

偽ヘンリエッタの一体が強引に、ゴム風船のスクラムを突っ切ろうとした。
刹那、付近の風船が連鎖爆発する。破裂ではなく、光を伴う爆発だった。
分身は泥人形のごとく吹き飛び、砂と消えた。

「鉄壁の防衛ラインが完成した。これが武装錬金『バブルケイジ』だ」

総士は満足そうに宣言する。
こと操作の一点に関しては、本来の所有者でさえ、彼のように巧みに扱えはしなかっただろう。
彼はミームの因子の対価として、とある天才的な資質を持っている。
それは複数のデータ、具体的には人間の思考や感情を並列して処理する能力。
ゆえに、複数のヘンリエッタの行動を読み切り、風船爆弾を適切に配置することかできた。

10 :『ハムレット』の四人の亡霊 ◆MS8eAoJleg :2010/12/02(木) 22:56:43 ID:2oYnIz7W

「これで、諦めてくれればよいんだが。そう、甘い相手じゃねえんだろうな」

その時、もう一人のヘンリエッタが姿を現す。彼が負ぶった小さな死神。
彼女の手にあるクリス・スーパーVを見て、マスクドは慌てて岩陰に伏せる。

「今度は首輪をつけている。ついに本人のお出ましだ」
「そうか……それなら、これ以上、状況は悪くならないな」

総士は隣の石柱に背を預けて、苦しげに声を漏らした。
彼の左手には青い水晶のようなものが生えていた。

「おい、大丈夫なのか」
「説明書には武装錬金は使い手の闘争本能と潜在能力で稼働すると書かれていた。
 それでフェストゥムの同化まで活性化するとは計算違いだった」

彼のぶしつけな口調が、ところどころ、いつにもまして平坦になっている。まるで亡霊のようだ。
マスクドは彼の腰からベルトを引き千切りたかった。だが、それは二人の死を意味する。
あの少女は前に遭遇した時よりも、精神の安定した様子で、隙が少なくなっている。

「マスクド、逃げ延びられたら、真壁一騎と接触してくれ。彼は信頼に足る、有用な人物だ」
「お前さんが死んだら、22世紀の人類はどうなる。もうしばらく、持ち堪えろ」

マスクドは気づいた。総士は自分を犠牲にしてマスクドを助けようとしている。
だが、少年は同時に生き残ることを諦めていない。ならば、それに答えるのが筋だ。
ストーンサークルの外に出る。そしてヘンリエッタが動くよりも早く口を開く。

「俺たちはここのモニュメントの暗号を解読した。
 言っておくが、簡単に解ける代物じゃねえぞ。特殊な技能が必要だ」

嘘7割のハッタリをきかせる。相手は彼の言葉に気を留めず、冷静に周囲の状況を観察している。
総士の集中力が下がっているのか、風船爆弾の陣形は徐々に崩れていく。

「それはお嬢ちゃんにとっても有用な情報だ。取引するつもりはないか」

彼女はマスクドに銃口を向ける。確実に殺せるよう、身体の中心線に照準を合わせる。

「自分とジョゼの両方を生かしたいなら判断を誤るな。後悔しても取り返しはつかんぞ」

彼は叫ぶ、何度あったか分からない一世一代の大勝負、チップは己の命だ。
勇気をもってダイスを振らねば、世界は何も変わりはしない。

そよ風が止む。ヘンリエッタの動きが止まる。
これまでの迷いのない機械的な動作に揺らぎが生まれた。
後ろで水晶が砕ける音がする。そして、道化の顔の鉄壁は少しずつ穴を修復する。

だが、彼女の表情はマスクドの望んだものではなかった。
なぜなら、それは誰かの指示を待っている顔だったから。
その直後、彼女とは別の方向から、ランチャーの放たれる音がした。

振ったサイの目はスネークアイズ、赤い目が二つ並ぶ、ファンブルだ。




11 :『ハムレット』の四人の亡霊 ◆MS8eAoJleg :2010/12/02(木) 22:59:53 ID:2oYnIz7W
◇    ◇     ◇


二人の公僕は地獄しか知らなかった。かつて楽園を知っていたが、砂上の楼閣のように崩れ去った。
一人の青年は爆弾テロ事件で家族を失い、一人の少女は暴行事件で家族と記憶を失った。


ジョゼは崩れたレリーフを厳しい表情で見つめる。先の爆発で文字が綺麗に吹き飛んでしまった。
彼は錬金の使い手を殺した後に、マスク男を拷問して暗号の内容を聞き出すつもりだった。
だが、少年は命の蝋燭を燃やして、バブルケイジを爆発させ、彼を北に逃がしてしまった。
信用性に乏しい情報はともかく、こちらの切り札を明かした相手を逃したのは痛手だ。

「ジョゼさん、ごめんなさい。あたしのせいで……」
「いや、君はよくやった。僕たちは爆発で死んでいてもおかしくなった」

縋るような目で見つめるヘンリエッタ。彼は彼女の頭を優しく撫でる。
少女は社会福祉公社の洗脳によって、ジョゼに好意を持つように条件づけられている。
だが、その幾分かは彼女の本心から来るもの。彼にとってそれは慰めでもあり、また重くもあった。

「大分慣れてきたから、次は分身を6体に増やせそうです」

彼女が使ったのは、武装錬金『サテライト30』。自分を最大で30人まで増殖させ、統一した意志でコントロールできる。
ただし、そこまでの増殖はホムンクルスだからできる芸当であり、人間には荷が重い。
また、多少の制限が課せられており、オリジナル本人が死んでしまえば全ての個体が消滅する。


「いや、それは最後の手段にしてくれ。エネルギーの浪費はなるべく控えた方が良い。
 ここでは参加者を殺すことよりも、生き残ることが重要だ」
「はい。分かりました」

ジョゼはこの島でヘンリエッタに再会した時のことを思い出す。
彼女は血塗れで、今にも壊れてしまいそうで、ただジョゼを求めていた。
彼は妹のように愛撫し、静かに語りかけ、薬で落ち着かせた。
石の花の蜜を吸った蜂には、麻薬に似た精神安定効果があるらしい。

彼は我ながら矛盾していると思った。
幾ら彼女の身体に気を遣おうと、最終的には手をかける必要があるのだから。

二人は舗装された道を歩き出す。
少女はバイオリンケースの代わりにデイバッグを抱えて傍についている。
ジョゼは思う。彼女は仕事仲間、いや、友人のアンジェリカを失っている。
顔には出さないものの、胸中は不安と悲しみでいっぱいだろう。
自分でさえ、マルコーやヒルシャーの死に思うところはあるのだから。

12 :『ハムレット』の四人の亡霊 ◆MS8eAoJleg :2010/12/02(木) 23:02:41 ID:ylTIOpy/

「見てごらん、レンギョウの花が咲いている」
「あ、本当ですね。小さく可愛い黄色い花。春によく見かけますね」
「レンギョウは自家受粉し辛いから、こうやって昆虫にアピールしなきゃいけない」
「ジョゼさんって何でも知ってるんですね」
「こんな素性の知らない世界でも、彼らは精いっぱい生きている」

ヘンリエッタは素直に耳を傾けている。
ジョゼはできるだけ優しい声になるように努めながら、

「マスク男の言ったことは気にしなくて良い。皆が幸せになれる方法はもう見つけている」
「それはどんな方法ですか」
「もう少し待てば分かることだよ。悪いようにはならない」

ジョゼは優勝の願いを心の内に秘めていた。それは時間を遡り、歴史を改変すること。
そうすれば、妹のエンリカは彼と共に和やかに暮らし。
エッタは普通の少女として殺人と無縁の人生を送ることができる。

だがそうなっても、別の少女が義体となり、殺伐とした任務に就くのだろう。
そう、世の中の仕組みも、残酷な運命もそう簡単に変わるものではない。

ジョゼは革命家ではない。かつては憲兵であり、いまは公社に所属する公務員。
日々、テロリストの末路を目の当たりにし、巨大な力の奔流に抗うことの難しさを、
リスクの大きさを嫌と言うほど思い知らされている。
ならば、その流れの中で、ほんの少しだけ向きを変え、小さな幸せをつかみ取ろうではないか。

「はい。それじゃあ、楽しみに待っています。
 わたしもジョゼさんのために戦って死ねるなら、何も怖くありません」

彼女は嬉しそうな声で言った。


ジョゼの同僚、ベルナルドは過去に、あるいは未来にこう言った。
他のイタリアオペラだって同じさ。病死、自殺、復讐――大概人の死で幕が下りる。
つまりだ、イタリア人は存外悲劇好きな国民で、死に対して何か感傷めいたものを感じる。
だから現在でも街には暴力が溢れ――血を流さない事には物事を解決できない、と。


【皆城総士@蒼穹のファフナー 死亡】
【残り38人】

【一日目 F-7 午前】

13 :『ハムレット』の四人の亡霊 ◆MS8eAoJleg :2010/12/02(木) 23:03:30 ID:2oYnIz7W
【一日目 F-7 午前】

【マスクド竹之内@魁!!クロマティ高校】
[状態]:内臓内出血 
[装備]:C4爆弾x7@現実(最初は15個あった) 一つ一つが携帯電話で起爆するタイプ、マスクドが
     持っているのはカナンに支給されたうちの予備の携帯電話。
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1 トイレットペーパー 、治療器具一式
    トランペット@現実、バブルケイジ@武装錬金、マカロフ拳銃(2+0)、
    首輪を使う施設に関するメモ、9mmマカロフ弾(9)*4
[思考]
基本:仲間と帰る為にますは首輪のタイムリミットを外す。
1:真壁一騎との接触を試みる
2:殺し合いが起きているかどうか確かめ、可能ならば説得を試みる。

【一日目 G-7 午前】

【ジョゼッフォ・クローチェ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:健康
[装備]:T/C コンテンダー(1/1)@現実、Vz.61 スコーピオン(20/20)@GUNSLINGER GIRL
    盗聴器(送信)@GUNSLINGER
[道具]:基本支給品×2、5.56NATO弾×17、スコーピオンの予備弾倉×2、 GIRL、M18クレイモア@現実×2、エクスカリバーMk2マルチショット・ライオットガン(4/5)@現実
石の花の蜜を吸った蜂×4@DARKER THAN BLACK

[思考]
基本:優勝して歴史を改変し、エンリカとヘンリエッタを救う
1:休息する
2:公社の人間は利用出来る
3:マスクドから情報を聞き出す
4:神山への報復の機会を待つ
[備考]
※盗聴器をヘンリエッタとの通信機代わりに利用しています

【ヘンリエッタ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:疲労(中) 両拳損傷 
[装備]:ゴシックロリータ風のドレス@現実 、盗聴器(受信)@GUNSLINGER
    TDI クリス・スーパーV "ベクター"ドットサイト付き(30/30)@Angel Beats!、
    ミネベア M60 “ニューナンブ”(5/5)@現実 、サテライト30@武装錬金
[道具]:基本支給品×3、久瀬修一の薬、クリス・スーパーVの弾倉×3、
    ニューナンブの弾丸×10、野田のハルバード@AngelBeats!
[思考]
基本:ジョゼさんのために参加者を殺す
1:休息する

14 : ◆MVYO7niwxE :2010/12/02(木) 23:04:29 ID:2oYnIz7W
投下終了。酉はこっちに変更します

15 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/03(金) 00:46:57 ID:RgFZjUpX
前スレ埋め乙

投下乙
ヘンリエッタも増殖したwwww
何時の間にやら衣替えして精神状態も回復したようで
ようやく本来のキャラに戻ったと思いきや、やられてしまったか総士…
様々な思いを受け継いで走るんだマスクド
ジョゼさんの願いが切ないな

16 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/03(金) 01:00:36 ID:6mg/uPPv
スレ移行しとる。んじゃ、まとめて感想

北斗君wwにゅうは和むな。
が、この状況でも裏のディクロニウス人格はちゃんと聞いてるんだよな
かなりの爆弾だ

天使ちゃん増えたw
サイスはこのロワには少なかったロワ充ですな
神山はパシリ状態か。黒はどうするんだろ

ヘンリエッタも増えたw
彼女だけでなくジョゼも持ち直した感じか
マスクドはゆりっべ以上の死神になってないか。頑張れ

17 : ◆MVYO7niwxE :2010/12/05(日) 10:05:04 ID:G+uw1qhv
一応支給品の補足を追加しておきます

サテライト30@武装錬金
月牙の武装錬金。使用者が30体に増殖するという特性を持つ。
統一された意志により行動するため、彼らをあまり遠い場所に移動させることはできない。
また、このロワでは調整がなされており、分裂体の顔は欠けず、首輪がついていないだけ。
その代り、オリジナルが死ぬと。全員が消滅する。

バブルケイジ@武装錬金
ベルトからボール大の風船爆弾を射出する。アニメ版は漫画と違って相手の身長を吹き飛ばす力はない。
その代りに、爆発すればするほど増殖して空間を圧迫する。
また、光と熱を伴う強力な爆発をさせることも可能。この場合は増殖は不可。

石の花の蜜を吸った蜂@DarkerThanBlack
ゲート内物質で作られた石の花の蜜だけを吸ったミツバチ。
その分泌物には麻薬成分が含まれる。

18 :◇PuVQoZWfJc:2010/12/06(月) 01:17:37 ID:fJgFQ2ZI
先ほどまで大声を張り上げて走っていた神山からすればそろそろちゃんと休んで睡眠の一つも取りたかった所だ。
それがどうだろう。目の前の少女は一般人どころか分身までするではないか。
自分を助けてくれた黒衣の男性の放った爆撃さえ物ともしない。彼はこの理不尽を誰かに問い正したくなった。

「反則です!首輪を付けてない人がいます!責任者の方ー!」
咄嗟に悲鳴に近い抗議の声を上げて泣きつくとさっき聞いたばかりの声が上空から響いてくる。
違っているのはその場でのみ聞こえるような声であることと少しの焦りが声に滲んでいることだ。

「え、どこですか、そんなはずは......!」
「なんかいきなり女の子が分裂したみたい。ちぎれるとかじゃなくて」

こんな些細なことでアノ主催を呼ぶ方も呼ぶ方だが応える方も大概だ。二人の立華かなでは
自分たちがルールに抵触することで本体とサイスマスターに累が及ぶ事を危惧して判断を待つ。
黒はこの間にフリーガーハマーを置く。

「......なんだ、ただの分身じゃないですかあ、驚かさないで下さい。こんな事なら別に反則でも
なんでもないですよ。本体を殺すなり分身を殺すなりすればいいでしょう、追尾ミサイルみたいなものです。
万一本体が死んで彼女たちが残っても分身が立華かなでに成り代わることはありません」

最後に「安心して殺し合って下さい」とだけ言うとそれきりいくら呼びかけても応えなくなる。
「待って下さい、そんな殺生な、っは!?」

気付いた時には腹を思い切り蹴飛ばされて神山は地面を転がる。服がボロボロの方のかなでが
口元に冷たい笑みを浮かべてそこにいた。

「ちょっとだけ冷やっとしたわ。そういう形で逃れようとするとは思わなかった。でも、残念だったわね」
そして地面に横たわる神山を石同然に蹴飛ばしていく。その表情はどこか楽しげだ。

「ぐっ、がっはぁ!ぇふっ」
如何にシルバースキンのおかげ致命傷は負わなくとも、自分の体が浮くほどの力で蹴り転がされては
たまったものではない。神山はこの少女の皮を被った州知事をどうやってやり過ごすか必死に考えていた。

「もし駄目だったらどうしようって思ったけど、問題ないみたいだし、他にも色々分かって助かったわ」
かなでは小さく呟くと手甲剣を先ほどのシルバースキンの帽子を貫いた三又槍へと変えて神山へ迫る。
横へ転がることで何とかこれを避けるが神山には最早余裕がない。意を決して起き上がるとかなでへ向け
手を突き出す。

19 :◇PuVQoZWfJc:2010/12/06(月) 01:18:52 ID:fJgFQ2ZI
「こうなっては仕方がありません。反則でない以上、僕も分身をする以外ないようですね」
デイパックに右手を差し入れると彼は「彼」を取り出す。かなでも神山の行動が読めずに「それ」を警戒する。
神山が右手に彼に差し込んだ瞬間、それは意思を持つ。そして彼は名乗りを上げた。


「こんにちわ、ぼくポールくん!」

神山高志に渡された最後の支給品、それがこの神山そっくりの腹話術人形、ポールくんだった。
「こっちはぼくのご主人です!」

ポールくんに促され神山が息を整え自己紹介をする。
かなでの目が驚愕に見開かれる。人形劇かと思ったがポールくんが喋る間に神山の口は動いていない。
しかし動揺したことで却ってかなでは攻撃を再開してしまう。

(アレが何かする前に仕留めないと)
吹き飛ばされた神山が左手とポールくんを前に出して待ったをかけるが聞く必要はない。止めに槍を
突き出した次の瞬間、神山が命乞いをする。

「          待ってください!         命だけは        ご勘弁を」
「ご主人、声、声!」

神山の発声と口の動きがちぐはぐな事にかなでは違和感を覚え、急いで神山を飛び越えてる。
「あなた、今一体何をしたの?」

神山からすれば何が起こったのかは分らない。腹話術を止めることが間に合わなかったのでそのまま続けて
しまったが、どうやら州知事は腹話術を警戒しているようだった。
(そういうことなら、やって見ますか)

「     あれ声が?    遅れてきますよ」「       ぼくの声も      遅れて     いますね」
神山(とポールくん)が声を送らせて出すという芸を披露した瞬間、かなでの顔から余裕の色が抜ける。

「あなたも、使えるのね、ディレイを......!」
どうやらこの芸は海外ではディレイというらしいとが彼女はそれを明らかに警戒している。
よく分らなかったが何にせよこれで蹴り回される状態からは脱出できた。ここからどうするか。


20 :◇PuVQoZWfJc:2010/12/06(月) 01:22:57 ID:fJgFQ2ZI
一方で黒はもう一人の、正確には三人目の立華かなでと対峙していた。
両方の裾から生えた半透明の手甲剣による攻撃を見た目からは想像できない力と速さで繰り出してくる。
神山と異なり黒は冷静だった。いや、どちらかといえば心ここにあらず、といった方がいいだろう。

先ほど助けたと思った少年はフリーガーハマーを食らわせた相手に蹴飛ばれてどこかへと運ばれてしまった。
今は彼を助けにいく方法はない。せめて時間稼ぎになってくれたと思うべきか。

紙一重で剣の切っ先を手持ちの短刀で弾き、捌くが殆ど防戦一方だった。
僅かな隙を突いてもそれはきっちり回避されてしまう。

(一度距離を取るか)
そう思いかなでが大ぶりに剣を振り抜くのに合わせて鼻先へと短刀でフェイントをかけて黒は飛び退こうとする。
しかし目の前の少女が何かを呟くのと同時に背後から重たい衝撃が伝わり体勢を崩してしまう。

(また増えたのか......!)
しかし視線を上げれば少女の姿はなく背後から声がかけられる。増えていない、一人のままだ。
「増えたと思った。残念外れよ」

瞬間移動、それは契約者の中にも見られる能力だった、しかし彼女は明らかに複数の能力を所持していた。
(分裂、瞬間移動、そしてさっきの攻撃に耐える能力、契約者だって一人一つだってのに)
今かなでが使ったのはガードスキル「delay」、高速で移動し、対象に少し前の自分を認識させる能力。

遠距離攻撃においては「ほぼ」無類の強さを発揮するかなでの懸案事項たる接近戦、そして咄嗟に防御を
行う為に強引に自分に時間を稼ぎ出す手段でもある。先のフリーガーハマーもこれで防御を間に合わせた。

黒が足元に置いておいたソレを再度使おうとした時、かなでが猛突進してくる。しかしそれは使わせまいと
する動きではなく勝機を見出した者の目であった。無防備に突っ込んでくるかなでに違和感を覚えながら
黒は蘇芳と分かれる前に拾っておいたガラス片を投げつける。

それは案の定当たっても割れて弾けるばかりで傷を負わせるには至らない。
不安を確信に正して黒もまたかなでへと突っ込む。

(遠距離攻撃は鴨ってことか、そしてこの瞬間移動は)
追い詰められた黒が取った行動は言ってみれば捨て身で同然のものであった。
しかし後は処理して終わりのはずのこの特攻に、かなでは怯んだ。

21 :◇PuVQoZWfJc:2010/12/06(月) 01:27:23 ID:fJgFQ2ZI
相打ちを覚悟で強引に拳や足、短刀を剣と剣の間に捩じ込もうと打って出る。
次第に黒の体の各所に浅傷が増えていくが傷の数に比例して黒の攻撃も激しさを増して行く。
「くっ、急に動きが、ガードスキル、delay!」

拳が残像の頭を打ち抜いたと認識した時にはかなでは少し離れた場所にいた。息がほんの僅かに乱れている。
(やはり、接近戦を嫌っている。奴自身は遠距離から敵を攻撃する能力はないようだ、おかしいとは思った。
重火器には無防備だが接近戦では回避行動をとる。攻撃が通じないならそのままこっちの攻撃を受けて反撃
すればいい。だが奴はそれをせず退いた。つまり近距離での攻撃は通る可能性がある。)

攻撃の瞬間に最も危険が高まる、その弱点を補うための能力の数々だったのだろう。
微かに見えた巧妙に黒は意識を研ぎ澄ます。今はこれでいいと自分に言い聞かせながら。
(あれが分身なのがせめてもの救いか)

敵を見据えながら黒は奥の手の一端を使うことにする。黒目の中が赤く染まり黒の体がから青白い光が
出始めると持っていた短刀に電流が走る。契約者と呼ばれる者達の中で、黒が持っている能力の一部である。

「あなたも使えるのね、ガードスキル」
帯電し火花を散らせる短刀を見てかなでは黒を自分と同類かと思案するが直ぐに思い直す。どうでもいいことだ。

「能力とは違うのか?まあいい、お前の手の内は知れた。さっさと助けを呼べ」
剣を構えなおし攻撃の機会を伺っていると黒が挑発してくる。ハッタリだと分かってはいたが
どこまで把握されたのかまでは分らない。だがこの「かなで」が本体よりもプライドの高い性格であったことが
災いして挑発に簡単に乗ってしまう。

「別にいいわ、何人でも同じ。私一人でも同じ」
そう告げると獲物を狩るべくかなでは黒へと跳びかかっていく。


その頃神山はというと三度追い詰められていた。
少女がディレイがどうこうと言った後に襲いかかって来て身体的な能力差から組み敷かれてしまったのだ。

「ディレイはあっても、武器もなければオーバードライブもない、思えばそんなに焦ることなかったわ」
最早どうにもならない。先程の男性が助けに来てくれる様子もない。
神山はダメもとでこの少女面したターミネーターへ命乞いをするほか無かった。

22 :◇PuVQoZWfJc:2010/12/06(月) 01:28:53 ID:fJgFQ2ZI
「お、お願いします。この防弾ジャケットは差し上げます。ですからこの場は見逃してもらえないでしょうか」
息も絶え絶えに声を絞り出す。こちらのかなでは少し思案すると要求を却下する。
「あなたが死んだ後に脱がせばいいだけじゃないかしら」

「そんなこと言わずにお願いします!三分でいいんです、見逃してくれませんか!」
神山の文字通り必至の嘆願にこちらのかなでは考える。どちらにせよこの戦利品の入手は確定だ。
これはサイスマスターの身を守るのに大いに役立つだろう。

そしてこの男を仮に三分釈放した所でなにも困らない、直ぐに追いついて始末できる。いや、服を
脱がせたらその時点で殺してしまってもいいだろう。そう思うと聞いてやってもいい気がしてきた。

「いいわ、三分だけね。じゃあ早くソレを脱いで」
実を言うと脱ぎ方は分らなくて四苦八苦していたのだがそんなことを言っている場合ではない。
付いてるだけで外せないホックはそのままに、ずるりと乱雑に脱ごうとしてもたついてしまう。

「そんなに焦らなくてもいいわ、ホックを外したらどうかしら」
至極当然の言葉をかけられるがホックが何故か外れない事を説明するとかなでが、試しに外しにかかるが
全く外れない。穴が小さいとかではなくある所から動かないのだ。仕様がないので神山にそのまま続けるように
言い渡す。

帽子を外し、肩周りの辺りがピッチリしていて脱ぎづらそうな上着を脱ぐと今度はズボンを脱ぐ。
数時間ぶりに学生服に戻ると外気が涼しかったが。状況が状況だけにまるで嬉しくない。

裏返しになったままの服を元にもどそうとするとかなでが警告を発する。
「何をしているの?」
「いえ、裏返しはだらしがないので戻しておこうと」
「変な真似はしないで、そういうのはあとで私がするから」

そうして神山に三分間の猶予を与えると今度は自分でそのジャケットを着込もうとする。
「付かぬ事をお伺いしますが、何をしようとしているんですか」
神山が聞くとサイズの合わないジャケットを着ようと苦労しているかなでが返事をする。

「これを着てあの子を手伝いにいくの、袖はまくれば大丈夫。あなたももう行っていいわ、三分だけだけど」
神山を動物にするように手でしっしと追い払うとぶかぶかの上着を着こむと異常がないか確かめる。
軽い。これなら充分使える。そう思った矢先、その変化は現れた。

23 :◇PuVQoZWfJc:2010/12/06(月) 01:32:05 ID:fJgFQ2ZI
服のサイズがかなでに合わせられたかと思った瞬間、服が縮み、めきめきと音を立てて肌にめり込むんでいく。
「これは、一体、あ、あなた、あ、なにを、した、の......?」
シルバースキンが更にかなでを締め付けると小さく悲鳴が上がり腕は後ろへと回る。

「い、言われた通りに脱いだだけですが」
シルバースキンは裏返すことにより着るものを拘束する「ストレイト・ジャケット」へと特性を変える。
持ち主が死亡していない、または解除されていない状態で裏返しのままこのジャケット着込んでしまったが
為にかなでは文字通り拘束されてしまった。

超人的な力を持っていたかなででさえその縛めを解くことはできない。藻掻いても一向にびくともしない。
次第に反応も弱まると何故か手甲剣が引込み、ぐったりとして動かなくなる。

神山は何が起こったのかは理解できなかったが明らからしいことは、この服を誤って裏返して着ていれば
自分もこうなっていた可能性があることと、全くの偶然だが危機を脱したということだった。
一息付いて思考をまとめようと思ったところ、かなでがばね仕掛けのように足の力だけで飛び起きると
猛然と走り去ろうとし、力尽きる。

「.........念のためズボンと帽子も着せておきますか」

ふう、と息を吐くと作用を終えた神山は手をぱんぱんと払う。目の前にいるのは自分の何度か殺しかけた少女だが
今はずだ袋に入ったよう格好になっている。あの後ズボンを履かせてご丁寧に帽子まで裏返して被らせたので
仰向けに海老反りの状態で頭は孫悟空の金の輪っかのように帽子に絞めつけられている。

「もうこれで当面動けないでしょう」
まだまだ疑わしいがこれでいいはずだった。彼女の事は後回しにしてさっきの男性を
助けに行かねばならなかった。

そう思った時、向こう側から黒衣の男がとぼとぼと歩いて来る。服の右肩に
「あ、あなたは!よかった、ご無事だったんですね......うっ」
神山は安堵の声を漏らすすぐに顔を顰める。黒が微かに異臭を纏っていたからだ。

「手こずったがな、お前も......予想外だな、捕まえたのか」
黒の驚きの問にええまあ、と生返事をするが神山はさっきの少女をどうしたのか非常に気になった。
生きていて尚且つ異臭を纏っているということから見当はついたが聞きたくはなかった。

24 :◇PuVQoZWfJc:2010/12/06(月) 01:34:45 ID:fJgFQ2ZI
「こいつらの死体は消えないらしいな」
聞きたくないのに黒が説明してくる。どうやらもうひとりの少女は殺害したらしい。

神山が追い剥ぎに遭っている時には既に決着が付いていた。
飛びかかられてから、黒はあっさりと短刀を投げ捨てるとぎりぎりで剣が届く距離に身を置き
わざと刺されてからかなでのハンドソニックに直に高圧電流を流したのである。

感電のダメージから剣が消失すると急いで飛び退くが今度は投げ捨てた短刀を介した電流に
直撃される。直接黒に触れていないにも拘らず電流が自分を打っていることに驚愕するかなでに
黒は電流を止めることなく告げた。

「『触ったものに電流を流す』わけじゃない。生憎に俺にも俺の能力がある」
そのまま少女が白から黒に変わるまで感電させ続ける。真っ黒く染まり蒸気と共に人が揚がる匂いが
辺りに立ち込める。分身であるはずのかなでの体は消えずにその場へ崩れ落ちた。

人が内側から水分が蒸発する嫌な匂いが鼻腔を突き刺す
胸に苦いものを覚えながら、黒は蹴り飛ばされていった青年と新しい方のかなでを追った。
今は感傷に浸る時間はない。

だが追いついてみれば外見からは分かりづらいが少女は無傷、青年はぼろぼろと対照的な構図で
青年が勝利を収めていた。

「全くわからないんです。追い剥ぎされて、このジャケットをこの人が着たらこんなことに。何故なんでしょう」
経緯を説明してきた神山は疑問を口にする。

「恐らくは生体認証だろう。その服は最初に着た奴以外が着ようとすると拘束服へ変化するようになっていた、
大方そんなところだろう。兵器には珍しい作りじゃない」

そう言うとお互いに今更感が強かったが、自己紹介と情報交換を済ませて今後の方針を話し合う。
「一応聞いておくが、一緒にくるつもりはないか」
黒から同行を打診されるが神山は首を振る。

「そうしたい所ですが、半日歩きづめで、しかもこんなことがあった後では足手まといになります」
路上で寝るわけにはいかないので近くの建物で睡眠を取る旨を伝える。

「ならこの先の警察署へ行ったらどうだ、留置場に毛布くらいはあるだろう」
自分も装備を調達するつもりだと言うと神山は神妙な顔をして項垂れる。

25 :◇PuVQoZWfJc:2010/12/06(月) 01:37:33 ID:fJgFQ2ZI
「また留置場ですか、仕方ありません。そこまでご一緒願えますか」
そう頼むと二人は警察署へ向かい歩き出した。


「ところでこの人どうしましょう」
海老反りのままのかなでを小脇に抱えて神山が呟く。拘束が強すぎたためか今は気を失っている。
目の前で黒が手を下すのを諌めたまでは良かったのだが。

「いらないなら海でも、所内でも好きなところに捨てればいい。何だったらこっちで引きとるが」
その後どうなるかは想像するに難くないので神山は考えておきますとだけ答えた。


【一日目 G-4 道路 午前 】


【黒@DARKER THAN BLACK】
[状態]健康、肩に刺創(止血済み)
[装備]椎名の短刀×2@Angel Beats!
[道具]基本支給品×2、ロープ@現実、フリーガーハマー(残弾60%)@ストライクウィッチーズ
[思考]
基本:銀とともに殺し合いから脱出する筈だったが…
1:銀…
2:観測霊や時間を操る契約者(アンバー)との接触を図る
3:とにかく、なんとか逃げ延びる
4:警察署へ行く
[備考]
※一期最終回後から参加。契約能力使用可能。
※蘇芳の事は別の時間から来たと考えています

【神山高志@魁!!クロマティ高校】
[状態]:胸部に痣、疲労(大)、喉が痛い 打ち身多数
[装備]:拡声器@現実 ポールくん@魁!!クロマティ高校 立華かなで(B)@Angel Beats!
[道具]:基本支給品×1 未確認支給品0〜1
[思考]
基本:この島から逃げる為に仲間と協力者を集める
1:一刻も早くメカ沢くんを手に入れる
2:留置場(警察署)で休息を取る
3:この子どうしましょう

【立華かなで(B)@Angel Beats!】
[状態]:疲労(小)、制服ボロボロ、全身火傷、捕獲
[装備]:制服、エンジェルプレイヤー、核鉄「シルバースキン・アナザータイプ」(ストレイト・ジャケット状態)@武装錬金
[道具]:なし
[思考]
基本:マスターの命令に従い、参加者を駆逐する
1:神山高志を殺す
2:失神中

26 :◇PuVQoZWfJc:2010/12/06(月) 01:44:54 ID:fJgFQ2ZI
代理投下終了 タイトル名は 「カントリー・ロード」

乙。
むぅ、分身とはいえ劣化しないから全力で持ちネタを使わないと倒せないか…。
警察署の近くには林田君とピノッキオがいるし合流するのかな。
気絶中とはいえまだ生きてる天使ちゃんBがかなり不安要素だが。


27 : ◆/Fnde2WILg :2010/12/06(月) 03:11:06 ID:9oGPBvD2
とぅかします。

28 :再殺部隊、始動? ◆/Fnde2WILg :2010/12/06(月) 03:12:47 ID:9oGPBvD2

于吉の糞忌々しい放送が終了し、再び静寂の時がやってくる。
休みがてら木に待たれかかりセブンスターを吹かして一服中の火渡赤馬は
忌々しげに灰を地面に落とした。

「おいおい、錬金の戦士はもう俺一人かよ…。」

中村剛太に津村斗貴子。
まだ若いとはいえ相当に腕が立つ戦士だった筈だが。
やはり核鉄が無ければただの人間ということか。
ヴィクターが二人に人型ホムンクルスが一人。
もはや連中の危険性を知るものは自分だけになってしまった。

「けっ、本当に不条理だ。」

自分も先ほど敗北してこの様である。
少々先走りすぎたことは反省しよう。もはや独力でどうにかなるレベルの問題ではない。

「協力者が、必要だな……ん?」

なにか、木陰で音がするのが聞こえた。
まるで如雨露で水をやっている時のような。
案外直ぐ近くである。誰かいるのだろうか?
興味を引かれた火渡は煙草の火を消し音のするほうへこっそりと近づいていく。
やがて、背の高い草で覆われた場所を発見した彼は両手で思いっきり覆っている草を掻き分け、
少し開けた空間に足を踏み込んだ。



しー。


「………………え?」


そこに、下腹部を露出してしゃがみ込んだ少女が居た。
放送前からの長期に渡る尿意をついに我慢できなくなったのか、
シナジェティック・スーツを部分解除して用を足していた遠見真矢が。

「………………。」

目が合った火渡は予想外の事態に膠着する。
この場合どう声をかければいいのか全力で思考するか答えは出ない。
ようやく事態を把握したのか、真矢の顔が見る見る内に赤くなっていき―――。

「きゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!!」

……まったく、本当に不条理だ。

29 :再殺部隊、始動? ◆/Fnde2WILg :2010/12/06(月) 03:14:52 ID:9oGPBvD2
◇  ◇  


『ブルーン! ブルンブルーン!!』

けたたましい音(声?)を上げ、冷たい朝の風を切りながら一台のバイクが走る。
次なる殺し合いの場を求めて。

「……む?」

風に乗って、誰かの叫び声が聞こえた。
女性の悲鳴。何者かに襲われたのか、知り合いが死んだショックによる絶叫なのか。

「直ぐ近くだな……行くか。」
『メカラッタァ! メカラッタァ!!』
「お前は少し黙れ。」

バイクの頭を叩き、車輪を右にカーブさせる。
道路は無いが彼女の操縦テクニックの前には特に問題は生じない。
ごつごつした地面を走り抜けると、遠くで二人の人間が走っているのを目撃した。
何やら全身をぴったり覆うボディスーツに身を包んだ少女が、ライフルを持って
コートを着た火炎放射器を手に持つ中年の男を追いかけ廻していた。

「待てぇぇぇぇぇぇ!!ぶっ殺す!!」
「落ち着け!あれは事故だ!悪気は無かった!」
「うるさい!!この変質者!!」
「はぁ!?何でションベン臭い餓鬼のケツなんか見て興奮する趣味はねぇよ!」
「死ねぇぇぇぇぇ!!」

……事情はよく分からんが殺し合いの現場であることに変わりはないか。
このまま急停止して様子を見るのもいいが…。

「まぁ、それでは面白くないか。」

ちょうど目の前に突き出ている木の根っこに前輪をぶつけ、大きく空中へ飛び上がる。
そのまま弧を描いて、大きな衝撃音とともに、互いに銃口を向けた二人の男女の前に落下した。

「うお!何だ!?」

「やぁ、二人ともお取り込み中にすまない。しかし変質者とは感心しないな。」
「誰がだコラ!」
「どいてください、その変態を殺せません。」
「まぁまぁ、落ち着いて。」
「……あぁ?」

中年の男はまじまじとアルファルドが乗っているバイクを見つめる。

「おい、なんでそのロボットがバイクに変形してんだ?」
「知っているのか、こいつを?」
「訳が判らん…まさかこのドラム缶もトランスフォームするホムンクルスの一種とかじゃねぇだろうな…。」
「はぁ?何言ってんですかおっさん。」
「おや?…ホムンクルス…ねぇ。なんでその単語が真っ先にでてくるのかな?」
「そりゃオレが錬金の……。」
「ああ!ちょっと待ってくれ。」

30 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/06(月) 03:15:52 ID:XCgv40pk
sien

31 :再殺部隊、始動? ◆/Fnde2WILg :2010/12/06(月) 03:17:08 ID:9oGPBvD2
なにやら目を輝かせたアルファルドは懐から何かを取り出し、そのスイッチを入れた。

『―――部外者の君を巻き込んでしまってすまなかった。』

ボイスレコーダーである。その声を聞き、男が驚きの声を上げた。

「……戦士、斗貴子じゃねぇか!」
「なるほど、どうやら本物のようだな。」
「おい、これはどういうことだ?」
「いや、彼女の死に目に丁度私が居合わせてね。」
「お取り込み中悪いけど、邪魔なんだけど!」

二人を無視して真矢が銃を男に向け、それをアルファルドが叩き落とす。

「な!?」
「すまないな、少しこの男に用があるんだよ私は。」

バイクから降りたアルファルドは、男に手を差し伸べた。

「あなたを捜していましたよ。
 つかぬ事をお伺いするが、貴方は火渡赤馬、武藤カズキのどちらかな?」
「え?カズキ君?」
「戦士長、火渡赤馬だ。武藤カズキだと?あんな化け物と冗談でも間違えんじゃねぇ。」
「これは失礼。……しかし、確か武藤カズキは確実に白と聞いたが?」
「ケッ。」

苛立ちを抑えれない火渡は舌打ちをする。

「奴がシロなわけねぇだろ、あいつもヴィクターだぞ。」

―――そして火渡は、語り始めた。
協力者になり得るかもしれない人間達に。


【一日目 C-5 森の外 朝】

【アルファルド@CANAAN】
[状態]:軽傷(手当て済み)、疲労(小)
[装備]:青龍偃月刀@真†恋姫無双、核鉄「モーターギア・アナザータイプ」@武装錬金、メカ沢バイク@魁!!クロマティ高校
[道具]:基本支給品×2、ボイスレコーダー@DARKER THAN BLACK、自作のスリング、確認済み支給品0〜2、デイバッグ×2
    メカ沢の余りパーツ、首輪、ドライバー@現実
[思考]
基本:主催者と交渉に持ち込み、脱出する。他者の犠牲も厭わない
1:カナンに絶望を与える。
2:接触した錬金の戦士から情報を聞き出す。
3:ヴィクターの末路への興味。


※ボイスレコーダーには津村斗貴子との会話が録音されています。
※メカ沢バイクにはグレネード詰め合わせ(スタン、スモーク、白燐各種2個づつのグレネード6個セット)が搭載されています。
 スモーク弾は一発消費しました。

32 :再殺部隊、始動? ◆/Fnde2WILg :2010/12/06(月) 03:18:20 ID:9oGPBvD2
【火渡赤馬@武装錬金】
[状態]:疲労(中)
[装備]:携帯放射器(ゲル化油燃料付き)
[道具]:基本支給品×1、BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C4(時限信管 残り2個)@現実
    ランダム支給品0〜1(確認済み)、セブンスター@現実、工具セット@現実
[思考]
基本:優勝を目指す人間と人外を皆殺し
1:上記の参加者を庇う足手まといの人間も場合によっては殺害
2:中村剛太や津村斗貴子との合流および核鉄の回収
3:カズキとパピヨン(趙雲)、ヴィクター危険性をとりあえずこの二人に伝える
[備考]
※趙雲をパピヨンだと思っています


【遠見真矢@蒼穹のファフナー】
[状態]:疲労(小)、恥辱
[装備]:シナジェティック・スーツ@蒼穹のファフナー
[道具]:基本支給品×1、ワルサー WA2000(4/6)@GUNSLINGER GIRL、予備弾倉×2、ニーベルング・システム@蒼穹のファフナー
[思考]
基本:優勝し、アルヴィスの仲間達を全員蘇生する
1:え?カズキ君がどうしたの?
2:火渡をぶっ殺したいんだけど…この女の人はなんだろう?
3:知らない人間に会ったら、無力な少女のふりをする。
4:一人しか蘇生できなそうなら、翔子か一騎のどちらかを生き残らせて死んだ方を蘇生させる。


投下しゅーりょー。

33 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/06(月) 08:20:30 ID:1GM5t2/6
投下乙
今回はとりあえず対主催側勝利か
黒は戦闘センスに関しちゃトップクラスだからな

で、もう一つの方はヴィクター包囲網が徐々に形成されてるな
対主催同士の対立はロワではなかなか見られないので楽しみ

それから、ゲリラ投下の人は最近投下がないが規制食らってるのかな?
もしもそうで、どうしても、したらばを使いたくないなら

シベリア超速報
http://toki.2ch.net/siberia/

代理レスはここへ2
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/siberia/1283305503
に投下しても誰かが代理投下してくれるぞ

34 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/06(月) 22:46:47 ID:6Sni7uTc
投下乙
さすがここまで生き抜いた連中はしぶといな
天使ちゃんを退けたか
しかしまだ無力化出来たかどうかはわからんな

真矢はせめてどっかの建物の中でしろよw
しかし自分は全部脱ぎを想定していたが一部パージもエロいな…

>>33
確かに珍しく個別板規制されたけど、ここは大丈夫っぽい
投下は単に忙しくなってきたから休んでるだけ
心配してくれてありがとう
まぁ別にしたらばが使えないわけでもないのでほんとに規制されたら使いますわ

35 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 00:31:18 ID:ckG7Ma8D
銃弾よりも深く。
刃よりも鋭く。
声は如何なる武器よりも徹底的に心を打ち砕く。


その始まりは放送前のことだった。

36 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 00:38:05 ID:ckG7Ma8D


私は何をやっているのだろう。

アインは声に出さず自問する。
服や髪に纏わり付いた粉末を払い落としながら、消防署の壁に背をつけて空を見上げた。
青白い、虚空を見ていた。
不意に流れたそよ風に、ショートカットの黒髪が揺れる。

マリアの乗る自動車はもう見えない。
この情けないザマはなんだ。
この馬鹿馬鹿しいくらいの醜態はなんだ。
全身を包む不快感はなんだ。

わからない。
マリアに悪意が察知されていることは予測できていた。
疑われているだろうことは承知の上だった。
だから気づかれて、逃亡を選択されたこと、それ自体はいい。
しかしあまつさえ殺意を看破された挙句に、無様にも取り逃がすとはどういうわけだ。
相手が多少、鉄火場に慣れていることは分った。ただの一般人でない事は理解した。

とはいえ、だ。
”ただの一般ではない程度”の素人を、
しかも丸腰で武器も扱えないような少女を殺し損ねるほど、己は低機能ではなかったはずだ。
思い上がりやただの自信ではなく、自分の実力とマリアの正しい実力を計算しなおした結果の話だ。

馬鹿げている。これでは初手から全てが無意味だろう。
求められているのはファントムとしての役割。
マスターが用意した新たな手駒が表の兵だとするならば、アインは裏の兵。
知られてはならない殺意の影、
暗殺者と言う大前提があっさりと崩れてしまった。

無様。

いまの状況を言い表す言葉は他にあるまい。
笑ってしまいたくなるほどの間抜けを晒していた。
しかしアインは自嘲すら浮かべす、やはり無表情のままで、これからの行動を計算し直していく。

事態の挽回を図るなら、今からでも追いかけてマリアを消した方が良いだろう。
重々承知だ。

急務ではない、彼女がそうそう長く生きられるとはやはり考えられない。
彼女の代わりもこの島にはまだいるだろう。
所詮相手はただの少女。放置しておいてもさほどの危険はない。

とはいえ、一応危険の芽は摘んでおくべき。
ひとまずの行動目標としては悪くない。
揺らいでしまった自分の心にけじめをつける意味でも。


37 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 00:40:26 ID:ckG7Ma8D
しかし相手は車、追うことは可能か。
可能であるとアインには即答できる。
僅かな痕跡から追いつめてみせる。

心を冷え切らせていく、もう一度。
切り替える。
今度は上手くできた。
完全に切り替えることが出来た。

もう失敗はしない。
二度と心を乱したりはしない。

あんな少女に。
あんな言葉に。
こんな――物に。

アインは手に残ったあやとりを、少女の名残をきつく握り締めながら決した。
次は殺す。
その思いこそが、いまだ揺れ続けていることの証明なのだと、気づくことも出来ずに。



私は何をやっているのだろう。

トリエラは声に出さず自問していた。
構えていた銃剣を下ろし、誰もいない市街地の歩道で、ため息をつきながら空を見た。
青白い、朝の空を見ていた。

ピノッキオの姿はもう気配すら見えない。
これは失態だ。
これはミスだ。
自分の力不足が引き起こしたことだ。

やれやれとため息がこぼれ落ちる。
そもそも、警察署の屋上に至るまでに仕留め切れなかったことが失敗だった、と分析する。
最初は相手側に勝算があって、あの場所まで引き付けられたのだと考えていたけれど。
考えてみれば、もとより敵は戦いに消極的だったのだ。
ならばその狙いが逃走ただ一つであったことに、もっと早く気づくべきだったのだろう。

「フェイクの痕跡にでも引っかかったのかしらね……」

目標を追い続け、ここまで来たもののいまだ追いつけない。
敵がただ逃げただけ、とは限らない。こちらを撒くためにあらゆる手段を凝らしたはずだ。
罠の可能性だって多大にある。
自分がまったくの逆方向に来ている可能性もある。
もう追うのを止めて、あの怪しい女性のところに戻ってみるか。
それも放棄して、第一守護目標たるヒルシャーの捜索を開始するか。

38 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 00:42:17 ID:ckG7Ma8D
正直、こんなことをやっている場合なのか、という疑問がトリエラの中にもある。
いくら任務だったとはいえ、この不可解な現状はピノッキオを殺したところで何も解決しないのだ。
それならば別のことに、例えばヒルシャーのために、
脱出の為の手がかりを探すなり、やることはたくさんあるはずだ。

「さて、と」

比較的に条件付けが少ない義体であるトリエラは、その程度の思考が働くほどに達観している。
しばらく考えながら市街地の歩道を進み、これから始める行動をまとめた。

「やっぱり、あいつを追い続けるかな」

結果、いま一番近くにある目標を遂げるべきだと判断した。
トリエラは他の義体よりも条件付けが緩く、冷静さを持ち、達観している。
だからこそ、より義体らしく行動しようとするのだ。
あくまで任務に忠実に、融通を利かせず、義体である事に徹する少女だった。

「必ず見つけて、今度こそ任務を達成する」

完遂したと思っていた殺害任務。
しかしそれが為されていないと知ったならば続けよう。
一度命じられた任務か何があろうと完遂するのが勤めなのだから。

「だからそれまで、無事でいてくださ――」

彼女にしては珍しく、
そんな素直な言葉をここにいない彼に向けようとした時だった。
背後に、轟く銃声を聞いたのは。

「――――ッッァ!?」

そして次の刹那、鋭い衝撃がトリエラの背中に突き刺さった。



早朝の市街地にて、静寂を打ち砕くように鳴らされた発砲音が一つ。

「なっ……に……ッ!?」

前のめりにたたらを踏んだトリエラから、驚愕の声が発せられる。
不意に背中を襲った衝撃によって、身体が大きく前方に傾くのを感じ取った。
しかしこの程度、義体の身ならば踏みとどまれる。
体勢の崩れた全身を支えきり、振り返りながら両手で構えたウィンチェスターM1897を背後に向かって発砲した。

39 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 00:43:29 ID:ckG7Ma8D
閑散とした市街地に、再び銃声が轟く。
今度は一度目よりも大口径、より大きな音だ。
市街地全体に漂っていたどこか透明な空気を叩き壊して、これより戦場へと作り変える。

身体を反転させ終え、トリエラは背後の襲撃者を見極めようとした。
しかし、捉えきることが叶わない。
トリエラが見たものは、歩道と道路の間に植えられていた一本の植木が、ウィンチェスターの散弾によって大きく抉られる光景と。
今しがた、歩道から脇の喫茶店へと飛び込んでいく敵の足。

「――そこかッ!」

トリエラは迷わず駆け、追った。
敵が逃げ込んだ喫茶店の入り口のガラス戸へと、散弾を一発、二発、とぶちかます。
銃口から吐き出された銃弾は拡散し、鉄塊の雨となりて難なく扉を破砕した。
粉々に砕けて弾け飛ぶガラスの破片がトリエラの身にも降りかかるが、頓着せずに三発目を撃ち放つ。
それはさながら暴風の如き破壊の侵略。
店内に配置されていた机をひっくり返し、椅子を跳ね飛ばし、カーテンをズタズタにして、壁を貫き粉砕する。
数秒前は洒落た店内であったのに、一瞬にしてもう見る影もない有様だ。

しかしそこまでやっておいて、トリエラの表情は苦いものであった。
仕留め切れていない確信がある。反撃の気配が感じて取れる。
だから一度飛び引き、喫茶店の外壁に身を隠した。
その直後、銃弾が店内から飛び出し、トリエラのすぐ横を掠めていく。

「……馬鹿な」

荒い息を吐く。
新たな銃弾をウィンチェスターに込めつつ。
トリエラが思わず呟いたのはそんな一言だった。

自分の背中を片手で触る。
その指を見ると、べったりと赤い液体がこびり付いていた。
何が起こったのかなどと考える必要もない。
背後から撃たれていたのだ。

40 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 00:44:38 ID:ckG7Ma8D
普通の人間ならば間違いなく即死の一撃。
叩き込まれた一発の弾丸は体内で止まっている。
トリエラの身体の防御性が貫通を防ぎ、だからこそ生きている。
普通の人間では致命となる攻撃も、彼女の命は奪えない。

けれど、トリエラはこの攻撃に、撃たれるまで気づくことが出来なかった。
いつの間に接近されていたのか。
少し考え事をしてはいたが、油断した覚えなどない。
撃たれた程度では死なないからと言って。撃たれる事を容易く許すような、温い訓練を受けてはいないと自負している。
万全の体勢で動いていたはずだ。この不意打ちを受けた要因はトリエラ自身の中に無い。

つまり、単純な話だ。
敵の驚異的な暗殺の手腕。
気づかれず、気づかせず殺す。
その技術によって為された必殺。

「強い、みたいね」

銃を強く、握りなおす。
どうやら仕事が増えてしまったらしい。
一瞬、敵はピノッキオかと思ったが、どうやら違う。
店内に散弾を撃ち込んでいた数間に見えたシルエットは、自分と同じか、もう少し上くらいの年齢の少女だった。

正体不明の敵、戦力は未知数。
けれど退く理由はない。
むしろここで仕留めなければ、トリエラが守るべき人物が危険に晒される可能性がある。

敵の居場所は限られているし、目算は付いている。
おそらく、店内奥のカウンターに身を隠しているのだろう。
そこ以外に先の掃射をやり過ごせる場所は存在しない。

ここで倒してみせる。
少女はその意志を決め、店内へと飛び込んだ。

41 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 00:46:12 ID:ckG7Ma8D


その数秒前。
トリエラの読み通り。
喫茶店内部、カウンターの内側に彼女はいた。

馬鹿な。

そのトリエラの言葉が彼女――アインに聞こえていたとすれば。
おそらく彼女は「こちらのセリフだ」と心中で毒づいたことだろう。
馬鹿げているのはいったいどちらの方か。

確実に殺した。その筈だった。
慎重に慎重を重ねあわせながら接近を成し遂げた。
必殺の間合いから、ベレッタの銃撃を少女の心臓に叩き込んだ。
にも拘らず、敵は踏みとどまり撃ち返してきた。

心臓を撃たれて死なぬ人間などいない。
現実的に考えて、例外があるとすれば防弾チョッキを着込んでいた場合くらいだろう。
しかしそれは無いと、状況が示した。
でなければ着弾の瞬間、トリエラの背中から吹き上がった血液の説明がつかない。
ならば非現実的に考えて、例外があるとすれば、それは相手が人間ではなかった場合に他ならない。

マリアを追っていた途中、偶然捕捉した金髪でツインテール、褐色の肌が特徴的な少女。
その足運び、武器の扱い方、目の配り方。
全てが常人ではないと告げていた。
銃器を持って戦うために教育、さらには調整されたような無駄のなさ。
まさにアインと同一の気配があった。

何にしても、利用対象には当たらず、交渉にも危険が伴う相手。
周囲に人影もなし。
そして何よりも殺せる確信があったからこそ、アインは殺害に踏み切った。

「……」

その結果がこの有様である。
咄嗟に身を隠すことが出来たから良かったものの。
死なない可能性を考えていなければ、殺し返されていたかもしれない。
銃弾が通じなかったのはこれが始めてではない。その経験が活きたのだ。

僅か数時間前に戦った天使にも、拳銃の攻撃は無効化されていた。
けれど先の戦いでは逸らされていたが、今回の場合は銃弾が命中している。
この差が何に繋がるのか。
完全なる無効化ではないとしても、致命の攻撃に至る事が出来なければ、アインの不利は揺るがない。
敵の有利を崩しえない。

だからこそ、まず活路を見つけなければ。
見つからなければ、生き残る道は開かれない。

42 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 00:47:51 ID:ckG7Ma8D
▽ ▼ ▽

突入戦とは呼吸が要にある。
中にいる仲間やサポートしてくれる味方。
共に動く全ての呼吸を読み、合わせて踏み込むことで、より効果的に作戦を遂行できる。
この時、相対する敵もまた例外ではない。トリエラはこの点を良く心得ていた。

丁度アインがカウンターから顔を覗かせた瞬間に合わせて、店内に踏み込みをかける。

室内戦、最初の一撃はトリエラが放った銃弾であった。
荒れた喫茶店を再度揺らす轟音と共に。カウンターの石材が砕け飛ぶ
すんでの所で身を屈めたアインの頭上を数発の鉛球が通過していった。

未だ入り口付近のトリエラにとって、アインが身を隠す石製のカウンターまでは距離がある。
遮蔽物の有無により位置的な優劣はあちらに劣っている。
武装の差ならこちらに軍配が上がると言えど、甘く見るつもりはない。
ショットガンの間合いに持ち込むことを最優先として立ち回る。
セオリー通りに、迅速に有利な距離へと詰めていく。

トリエラは銃を連射しながら、前方へと一直線に疾走した。
最大効率の弾数使用でアインの動きを封殺しながら、ぐんぐん距離を詰めていく。
既に装弾数五発中の二発を放ってしまっているが、かまわない。
残りの三発でカタをつけんと走りこむ。


しかしアインとてそれをただ待つはずがない。
トリエラの銃器、ウィンチェスターM1897はポンプアクション式の散弾銃。
一発一発の威力は盛大なものであるが、連射力では他の種類の銃器に比べて低い部類だ。
ここに、アインが付け入る隙がある。

幾度目かの銃撃の瞬間。
突き出したトリエラの手の平が握ったフォアエンドを引き寄せる僅かな隙に、
カウンターからアインの腕が飛び出してきた。

敵前に晒された右腕。
カウンターの上で水平に伸ばしたアインの右手が拳銃――ベレッタM92FSを握っている。
アインはカウンターの内側にて。
沈めた姿勢からほんの少しだけ腰を浮かせ、
狙いを付けるために頭の四分の一ほどをカウンターの影から晒し、片目だけでトリエラの姿を捉えた。
床につけた左足と右膝で全身のバランスを制御する。

「……!」

反撃の三連射が放たれた。
ベレッタの銃口が閃光を放ち、鉛の礫がトリエラを喰らうべく飛翔する。

「ちぃっ!」

やむをえず、トリエラは前進を打ち切った。
アインの腕が見えた段階で既に真横に跳んでいた。
カウンターへ四発目の散弾を撃ち返しながら、回り込むようにそのまま右に走る。
結果、アインの反撃は先ほどまでトリエラがいた辺りの空間を貫くに留まり。
それに対抗するトリエラの反撃は、再び伏せたアインの頭上を掠め、更に奥の食器棚を砕いただけに終わった。

しかしカウンターから伸ばされたアインの腕は完全に引っ込まない。
直接目視せずとも足音から位置を予測しているのか、銃口だけが目でも付いているかのように旋回しながらトリエラを追う。
右へと逃げるトリエラの足元の床が撃ちぬかれ、散乱していた木材が跳ね上がる。
敵の銃口がこちらを捉えきる前に位置を誤魔化すことは不可能。
そう判断したトリエラは咄嗟に床を転がって、近場に合った柱の裏側に飛び込み、追いすがる銃弾をやり過ごした。

43 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 00:50:54 ID:ckG7Ma8D
「まだ遠いっ……」

柱を抉る銃弾の音を聞きながら、しゃがんだ体勢でトリエラは思考する。
距離は、ほとんど詰まった。
けれどもあと少しだけ足りない。
近接戦に持ち込んでしまえば、拳銃が主武器の相手にこちらが負ける要素はありえない。
あと少し、あともう少しだ。その少しをどうやってゼロにするか。
思考しつつリロードを済ませる。

そして、トリエラは一つ息を吸い込み、柱から飛び出してウィンチェスターを構えた。
狙いは、カウンターよりも僅かに手前の床だった。
再び店内を揺るがす銃声。
度重なる散弾の命中によって積もっていた椅子や机、カウンターなどの木材石材の破片が巻き上がる。
更に続けてカウンター奥の食器棚を銃撃し、中に収められている食器を砕き、その下にいるであろうアインの頭上に降らせた。
疑似的な煙幕と間接攻撃。いまこそ、一気に距離を詰める。
二歩三歩四歩、絡め手が効果を発揮したのだろう予想通り敵の銃撃は来ない。
ここまで来ればこっちの間合いだ。ノーガードで突き進む。トリエラはカウンターに足をかけ、登り、そして。

「…………!」

しかし覗き込んだ遮蔽物の内部に、アインは既にいなかった。
見えたものは無人の床。
積み重なった割れた食器類。
そして、その上にポツンと残された、一発の手榴弾。
当然の如く、ピンは抜かれている。

「やられたっ……!」

トリエラは振り上げていた銃剣を引き戻すよりも早く。
何よりも優先して後ろへ飛ぶことを選んだ。
渾身の力でカウンターを蹴り飛ばし、跳躍する。
その瞬間、これまでの戦闘で最大級の轟音が響き渡った。

トリエラは腕をクロスして、顔面を守る体勢のまま後方に吹っ飛んだ。
背中への衝撃。
それが床に落ちた衝撃だとすぐに理解し、そのままゴロゴロと床を転がって追撃から逃れるべく移動する。
入り口付近まで自分が飛ばされたことを認識し、体のダメージを確認する。
トリエラの咄嗟の判断はどうやら間に合ったようで、服が煤けはしたが深刻なダメージは未だない。


一方で、アインは小休止など挟まない。
トリエラが食器棚を狙い撃った時には既にカウンターから抜け出して、左の壁際の柱に潜んでいた。
そこから手榴弾を投げ込んだ後は、仕留め切れなかった対敵を狙い打つべく拳銃のリロードを済ませ、
床を転がるトリエラへと追撃する。

追ってくる連射撃に、
トリエラはひっくり返っていた大き目のテーブルの内側に転がり込む。
木製のテーブル一つでは盾として不十分、むかってくる銃弾は貫通するも、それには頓着しない。
姿が隠せれば、それで十分だ。

「あああああああッ!!」

テーブルの足を二本、両手で掴み。
食いしばるような声と共に力を込める。
少女ではありえない怪力でもって、四人用のテーブルを持ち上げた。
流石に驚愕するアインの顔面に向けて、思い切りぶん投げる。

44 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 00:53:03 ID:ckG7Ma8D
「…………っ!」

横に転がって避けるアインを仕留めるべく。
トリエラは床からウィンチェスターを拾い上げる。
今度こそ逃がさない。
その意志で銃口を前へと向けた瞬間だった。

「なっ!?」

トリエラは虚を突かれることになる。
アインは逃げるどころか、こちらへと一直線に駆けて来る。
ベレッタをトリエラの膝と胸部と顔面に一発づつ、薙ぎ払うように撃ちながら。
自殺行為だ。
普通の人間相手ならそれで十分に殺すことが出来るだろうが、トリエラは義体の身体を持つ。
正面きっての撃ち合いで勝てる見込みなどないだろう。
銃弾への対抗策として、トリエラは左腕を顔の前にかざしながら、右腕でウィンチェスターを突きつけた。
アインが放った銃弾は全てトリエラに命中したものの、やはりどれも致命打には至らない。
膝と胸部、左腕に銃創が刻まれただけだ。

チェックメイト。トリエラは引き金を引く。
しかしアインも食い下がる。
発砲の一瞬前。
足が一本欠けた状態の椅子がアインに蹴り上げられ、飛来し、トリエラが握るウィンチェスターに激突した。
装着していた銃剣が仇になり、またトリエラが両手ではなく片手で銃を支えていた事も相まって、射線が強制的に押し上げられる。
アインから僅かにずれる射線。その直後にウィンチェスターは発砲した。
散弾の雨を潜るように、姿勢を低くしてアインは走り続ける。
頭上を通り過ぎていく幾度目かの散弾を見送って、自ら間合いを詰め切り。
臆す事無く腰を捻り、トリエラへと回し蹴りを打ち込んだ。
正確にはトリエラの右手が掴むウィンチェスターへと。

「やらせないッ!」

トリエラはそれに、顔の前に翳していた左手で応戦する。
伸び上がってくる蹴りを裏拳で払う。
重い音が鳴った。
十分に溜め込んでから放たれた蹴りが、裏拳の初速によって迎撃された。
例えるならば全速力の自転車と発進したばかりのバイクが激突したかのような威力の格差だった。
アインは弾き返された足を床へと戻しつつ、その足に仕込んでいたナイフを左手で抜き取る。
そのままの距離で飛来したトリエラの蹴りを上半身と首を捻って回避。
反撃として、ナイフをトリエラの顔面に向けて突き出していく。
だがこの体勢では、その更に次にくるだろうウィンチェスターの銃剣による一撃を、確実に避けられない。

「――――!!」

瞬間、ウィンチェスターを投げ捨てたトリエラの右手が、アインの左手首を掴み取っていた。

「――――!!」

みしみしと音が鳴るくらい締め上げられたアインの手から、ナイフが零れ落ちそうになり。

(こいつ……まさか……!)

けれど、手首から力が抜けきる前に、トリエラの背には悪寒が走り抜けていた。

(義体の……)

滑るような動作で、アインの右手が動いていた。

45 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 01:23:00 ID:ckG7Ma8D
ペレッタの銃口が緩やかな軌道を描き。

(弱点を突くつもり……!?)

トリエラの眼球に合わせられた。

「――!!」

義体、唯一の急所。
人体と言う構造を持つ以上、眼球だけはどうやっても脆くなる。
その先に続く脳へと、攻撃を通してしまうのだ。

ベレッタの引き金が絞られていく。
トリエラの右手はアインの左手を留める為に動かせない。
蹴りの対応として動かしてしまっていた自分の左手を戻そうとするが。
果たして間に合うのか自分でも分らない。
間に合えば勝てる。
しかし間に合わなければ、敗北となる。

(……くッ!)

咄嗟の判断。
トリエラは掴んだままのアインの左腕を思い切り引きよせた。
義体が発現する力の全てをじかに敵へと伝えてやる。
そのまま身体を反転させて、アインの胴体に自分の肩を差し込んだ。

「……っ!!」

獣の顎に食いつかれ、引き込まれるように、アインは大きくバランスを崩す。
ベレッタから発せられた銃撃はトリエラ頭の横を通り過ぎ、天井だけを撃ち抜いた。

「らああああああッ!」

アインの体が持ち上がり、そのままトリエラの全身の力によって投げ飛ばされる。
砲弾のように。少女の体は喫茶店奥に向って宙を飛んだ。
空中ではアインにも為すすべはなく。
速度を維持したまま背中から食器棚に直撃し、

「か……はっ……!」

うめき声と共に、アインはカウンターの内側に落下した。

46 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 01:24:02 ID:ckG7Ma8D


意識を保つ事に全力を尽くした。

ここで落ちたらアインの負けだ。
それだけは揺るがない。
だから彼女は途切れそうになる意識を全力で繋ぎとめる。

勝てる。

その確信がアインにはあった。
天使との戦いの時とは違う、確かな勝算がある。
だから撤退など選ばないし敗北などもっての他だ。

起きろ。
起きて準備をしろ。
勝つために、戦うために、生きるために。
自分に言い聞かせて奮い立たせる。

――だって、あの人はまだ戦っているのだから。

その想いが、唯一の希望が。
とっくに凍てついたはずの心に火をつける。

「く……あ……」

アインはゆっくりと身体を起こす。
割れた食器の上に落ちたせいか、体のあちこちが切れていた。
痛みに意識を回す。そうする事でおぼろげな意識からの覚醒を果たす。

(放送が、鳴ってる……)

ようやく耳に飛び込んでくる女性の声に意識が及んだ。

第一回定時放送。

現在までの死者の発表と、禁止エリアの発表。
今はどうやら死者の発表を行なっているらしい。
けれど今はそれ以上に重要な事がある。

まだ戦いは終わっていない。
このカウンターの向こうにいる敵との戦いがある。
アインが殺すか、殺されるまで終わらない。

敵の殺し方はもう分った。
攻撃が命中するにも拘らず、死なない少女。
その弱点は十中八九、眼球だ。
複数の事象がこれを物語る。少女自身が示した近い。

アインが戦闘のさなかに行なったベレッタの三連射。
敵の膝、胸部、顔面。その三箇所を同時に狙った攻撃。
いずれも人体急所。
天使にも同じ攻撃を行い、弱点を探ろうとしたが失敗に終わった。

しかし今回、これに対して敵は唯一、顔面だけを腕で守っていた。
あの時、敵は顔面への攻撃をも無視して銃を両手で掴んでいれば、アインを殺せていたかもしれない。
それでも顔面の守護を優先した。
しかも方法は片腕で守るという、明らかに範囲の足りない盾を用いたものだった。
この不可解、ならば逆に考えて、片腕で足りる面積が急所だとすればどうか。

47 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 01:31:09 ID:ckG7Ma8D
という予測に基づいて、アインがナイフの一撃を眼球を狙って加えようとしたところ。
敵は銃を手放してまで止めにかかった。
極めつけに銃で狙えば、最早隠すつもりも無く対応してきたのだ。
明らかにその部分だけ敵の意識が違った。

なるほど幾ら頑丈とは言えども、人の形をしている以上はその部分が脆くなるのも頷ける。
これで確定だ。
顔面、高い確率で眼球に対して、敵は肉を切らせて骨を絶つような戦法が使えない。

こちらが敵の弱点を知ったことは悟られているだろう。
敵は今まで以上の警戒をもってぶつかってくるはず。
近接戦の力勝負で勝ち目が無いのも思い知らされている。

それでも勝てる。
近接戦において。一瞬でいい。
敵の不意を突いた上で、こちらが手数で上回りさえすれば、暴いた急所に一撃を叩き込むことが出来れば勝てる。
合計四本の手足に拳銃とナイフ一本。切り札の手榴弾を温存するとなると確かに不可能だろう。
しかし切り札はまだある。
手数を増やし、敵の防御を突破するという一点ならば、これ以上ないほどの奥の手が。

だから行こう。
行って倒す。
行って殺す。
今、この身はそれだけの為にある。

身を取り巻くものは、辛くて苦しいことばかりの世界だった。
今も、闇だけが目の前に広がっている。
だけどまだ生きているから。
自分も、もう一人の自分であるあの人も、生きている。
辛いばかりの世界でも、そんな世界のどこかで、彼はまだ戦っているのだ。
ならば自分も生きないと。戦わないといけない。
たった一つの希望をくれた彼がこの世にいる限り。
自分の意志で、生きることができる。
それだけがアインにとっての希望だった。

光は胸に仕舞って、目には殺意だけを灯す。
もう準備は整った。
今こそ、決着をつけよう。

そう、意を決して。
アインがカウンターの上に手をかけようした途端の事だった。

それが聞こえたのは。

「――――ぇ?」

48 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 01:32:51 ID:ckG7Ma8D
聞くまいとしていたのだろう。
無意識のうちに、意識から追い出そうとしていたのだろう。
けれど最終的には、無視する事も出来なかったのだろう。
アインは自分の全思考が漂白されていくのを感じていた。

第一回定時放送。

死者の発表。

吾妻玲二。

彼の名が呼ばれることの意味。

銃弾よりも深く胸を抉られる。
刃よりも鋭く心に突き刺さる。
その声は如何なる武器よりも徹底的に、少女の心を打ち砕いた。



荒い息を吐きながら銃を拾い上げ、トリエラはもう一度柱に身を預けた。
流れてきた放送を聞きながらも、気を抜くそぶりは見せない。

大丈夫だ。勝てる。もう少しだ。

自分に言い聞かせるように繰り返す。
酸素を吐き出して、また吸い込む。その繰り返しを何度も行い。
気持ちを落ち着けていく。
残弾の確認、損傷の確認、状況の確認。
再戦準備を整える。

敵はまだ倒れていないだろう。
だから戦わなければならない。
撤退などもっての他だ。

(ヒルシャーさん……)

消費した分の銃弾をウィンチェスターに込めていく。

(ヒルシャーさん……私は……)

戦況はほぼ振り出しに戻った。
敵との距離は数メートル。
阻む物は木製の柱が一本と、石製のカウンターが一つ。
警戒しなければならないものは。

(私は……怖くなんかありませんよ……)

49 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 01:35:08 ID:ckG7Ma8D
義体の弱点が知られていること。
知られていること自体が問題なのではない。
問題は敵が知った上で、的確に狙ってくるという脅威性だ。
敵は強い、ではそろそろ済まなくなってきた。
あの少女は間違いなく、身体上は普通の人間だ。
力勝負で終始自分が圧倒していたことが証明になる。
だからこそトリエラはあの少女をより脅威と見なす。
生身単独で義体と勝負に持ち込めるほどの実力者など、それこそピノッキオくらいしか見た事がない。
先ほどの攻防。
まかり違えば殺されていたかもしれない。
少なくとも銃口が片目の視界を覆った瞬間には本気で死を感じさせられた。

(むしろ、幸せなくらいです)

だが、勝てる。勝てるとも。
もう負ける道理がない。
次で殺す。同じ手は二度も食わない。
そして、こちらはまだ奥の手を残している。
今度こそ確実に、仕留めてみせる。

(私はいま、あなたの役に立てている)

死が迫るのを感じる。常に感じている。
トリエラ自身が戦いに身を投じるまでも無く、どうせこの身は長くない。
機械の肉体はトリエラに強さと同時に短命を確約していた。
それでも、怖くはない。むしろ希望を感じてすらいた。
今、戦っている。彼のために戦っている。彼の役に立っている。
その事実がこの胸にある限り、何も怖くない。

(きっと……あなたの役に立ってみせる)

必要とされている限り、体が動く限り戦える。
義体の少女達共通の理念。
ここで命を燃やせるならば、本望であるとすら思えていた。

けれども、同時にトリエラは決めていることがある。
精一杯生きること。
守るべき彼は絶対に守る。役割を果たす。そのために生きる。それは当然として。
けれど同時に、手抜きはしないと決めていた。
出来うる限り彼の意に添えるように、こんな時に彼が何を望むのかを考えて動く。
本当に彼の為というならば、それくらい出来て当然なのだ。

「だから、死にませんよ」

50 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 01:38:28 ID:ckG7Ma8D
だからこんな所ではまだ死ねない。
命を燃やすのは今じゃない。
精一杯生きて、彼に褒めてもらってから。
満足して死ぬのはそれからだ。

準備は完了した。
後は挑むだけ。
挑み、そして、勝利するだけだ。

そう、トリエラが意を決して。
柱の影から飛び出そうとした瞬間の事だった。

それが聞こえたのは。

「…………ぇ?」

何も意図せぬ間に、両の腕から力が抜けていた。
ウィンチェスターがするりと両手から零れ落ち、床に銃剣が突き刺さった。
けれどトリエラは見向きもしない。
金縛りなったように、全身が膠着する。

ただ目を見開いたまま、ゆっくりと両手が頭部に伸びていく。
耳を押さえながら、金髪の髪をクシャリと掴んだ。

「そんな……」

自分の中で様々な思いが燃え上がり、吐き出される前に燃え尽きる。
強烈な吐き気と、眩暈が襲い来る。激痛が脳を締め付ける。
けれど一番心を満たしたのは、何もない、ただの空虚感だった。

「そん……な……」

やがて足も力を失った。
柱に背を付けたまま、滑り落ちるように座り込む。
何もかも、一切が無に還るようだった。

すべてが終わる。
こんなにも呆気なく。
こんなにも唐突に。
子供の玩具を壊すくらい簡単に。

トリエラの精神は動きを止める。

第一回定時放送。

死者の発表。

ヴィクトル・ヒルシャー。

彼の名が呼ばれることの意味。

銃弾よりも深く胸を抉られる。
刃よりも鋭く心に突き刺さる。
その声は如何なる武器よりも徹底的に、少女の心を打ち砕いた。

51 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 01:40:56 ID:ckG7Ma8D


トリエラは時間の感覚がよく分らなくなっていた。
あれからどのくらい経過したのか。
自分はどれくらいここに留まっているのか。

ずっと柱に身を預けていた。
身体に力が篭らない。
何をしようという気にもならない。

理由は分りきっている。
彼が死んだから。
ヴィクトル・ヒルシャーを失ったから。
ただ一人の”兄妹”が、代えの効かないただ一つの希望が失われたからだろう。

「ああ……」

ここには記憶を消してくれる人も、眠らせてくれる人もいない。
他の義体ならば、パニックを起こして自らを撃ち殺していたかもしれない。
事実トリエラがそうなる可能性も十二分にあったのだ。
だけどトリエラは死ぬ気にもなれなかった。

「そっか……まだ終わってないから……」

いま彼女が生きているのはきっと。
彼女が義体の中でもかなり精神的に落ち着いている傾向があり、自分を客観視できたことと、
そしてなによりも、まだ残された任務を全うしていないからだろう。

「まだ……任務は終わってない……」

もう何の生きる希望もない。
兄を失った義体は義体としての機能を失うに等しい。
つまり正しい任務の遂行が不可能になる。
そして、少女が喪失の記憶を持ちながら生きていくことは非常に難しい。
けれどここに一つ、為されていない任務があるとすればどうか。

「あいつを……殺してない……だから……」

兄が死んでも、生前の任務はまだ生きている。
それがトリエラにとって生きる理由になりえた。

「ははは……」

虚しい笑いが口から漏れていた。
理由があるからなんなのだろう。
人に生きる理由があろうとも、希望が無ければどこまでも空虚だ。
理由だけで生きられるほど心は単純ではない。

もう二度と会えない。
二度と彼に触れることも、触れてもらうことも出来ない。
ぬいぐるみを貰う事も、名前を呼んで貰う事も出来ない。
その事実が胸を締め付けるだけ締め付けて、空虚感だけを残して去っていく。

「ヒルシャー……さん……」

トリエラにとって彼は必要な人物だった。
名前をくれた。存在をくれた。生きる希望をくれた。
それだけは揺るがない事実だった。
だから彼を失ったいま、今までのように生きていけるほど、彼女は強くない。

52 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 01:42:59 ID:ckG7Ma8D

「……」

立ち上がる。
力ない動きで銃を掴み、ふらふらと歩き出した。
戦いを終わらせるために、そして全てを終わらせるために。

カウンターの向こうにいるであろう敵にものもとへと進む。
理由があるから死ねないけれど。
希望がないなら生きていたって仕方ない。

どうせこんな心で戦いを続けたところで、結果は分りきっているのだから。
ならば行こう。楽になるために、死神のとろに行こう。

カウンターに手をかけて、足をかけて上り、向こう側を覗き込んだ。
銃を構えて、力の入らない指をトリガーに引っ掛ける。
そして、見た。

「……どう……して……?」

ガラスの破片が散らばった床に、力なく横たわる少女。
四肢を投げ出して、完全に戦意喪失している敵の姿を。



53 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 01:45:43 ID:ckG7Ma8D



どうしてと聞かれても困る。
アインはぼんやりした意識でそう思った。

ただ、なにも出来なくなっただけだ。
戦う事も、立ち上がることも、なにもかも億劫になった。
アインが胸に秘めていた唯一の希望は打ち砕かれた。
もう、何もしたくない。

生きる理由はある。
サイスマスター。彼が与えてくれる。いままでもこれからも。
理由だけならば幾らでもくれるだろう。
だけど、もう希望がない。
吾妻玲二。彼が死んでしまったから。もうこの世界にいないから。
一人では生きられない。
彼のいない世界になんて、生きていたくない。

決して自分の意志を捨てない彼の強さに憧れていた。
彼がいたから、希望があったから、今まで生きてこれたのだ。
だけどもう、彼はいない。
空っぽの自分に意志をくれた。憧れをくれた。
殺しの道具じゃない、一人の人間としての名前をくれた。
ただ一つの希望をくれた彼は、もういない。

理由があるから死ぬ気にはならない。
そもそもアインは自分の意志一つでは誰も殺せない。
サイスマスターの命令があったからこそ、誰でも殺すことが出来たのだ。
だけど今、自分ひとり殺すことが出来ない。それほどに本来の彼女は弱い。

だからここで、終わらせて欲しいと願う。
上から真っ直ぐに向けられる銃口に。金髪の少女が放つ銃弾で幕を引いて欲しいと。
けれどいつまで待っても終わりは来ない。
少女がやりやすいようにと、ベレッタを突きつけるけれど、それでも銃声は鳴らなかった。

「どうして……?」

今度はこちらが聞きかえす。
どうして撃たない。どうして終わらせてくれないのだろう。
それを聞いたとき、アインにも分ってしまった。
少女にも伝わったらしい。

互いに、同時に、銃を下ろす。

すべてが無駄だと知ったのだ。
幕引きなんて、この相手には期待できない。なぜなら。

「そう、あなたも……失くしたのね……」

この瞬間、二人はまったくの同時に、希望を失い。
理由だけが残ったのだと。
生かされているだけの、空っぽな存在なのだと。

二人は同じ存在だと、知ったのだから。

54 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 01:50:20 ID:ckG7Ma8D
▼ ▽ ▼


荒れ果てた喫茶店の内部に、二人の少女がいた。
石製のカウンターを一つ挟んで、背中合わせに床に座っていた。
生きる理由と銃だけを抱えて、少女達はそこにいる。
互いに、互いへの害意や敵意は死に絶えている。
もっと大事なものを失ったから。そんなことはもう、どうでもよくなってしまった。

「ねえ、あなたは……」

背を付けたまま、金髪ツインテールの少女、トリエラが口を開く。
向こう側の少女に告げるようで、その実自分自身に告げるように。

「あなたは……どう思います……?」

それを聞いた。

「もしも願い事が、一つだけ叶うとすれば……」

トリエラが何を指して言ったのかは明白だろう。
優勝、その見返りとして支払われる報酬。
本当かどうかも分らない。その言葉。

「……そうね」

返事は返された。
反対側で、背を付けたまま、黒髪ショートカットの少女、アインは答える。
たった一つ、願いが叶うとすれば――

「私には分らない。あなたは……?」
「私にも……分りません」

二人とも、答えは出せなかった。
もし彼を生き返らせたとして、それが望みなのか。
彼が望まない方法で、彼を取り戻しても良いのか。
自分はそれで満たされるのか。
かまわないと思うようで、何かが違う気もする。

ハッきりとした事はひとつだけ。
ただ嘘であればいいのにと、二人は矛盾した願いを抱いていた。
この放送、彼の死が嘘であればいい。
嘘にするのではなく、最初から嘘であってくれれば、どれ程に救われたことだろう。



希望を失った二人の少女。
差し伸べられた一つの言葉。

果たしてそれは、新たな希望に為りえるのか。


【一日目 F-3 市街地の喫茶店内 朝】



55 :◇5YzaoxPYTw:2010/12/07(火) 02:12:41 ID:ckG7Ma8D
【トリエラ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:膝、胸部、左腕に銃創、空虚感
[装備]:ウィンチェスターM1897(3/5)@GUNSLINGER GIRL、M1897用のバヨネット@GUNSLINGER GIRL
[道具]:基本支給品×1、予備弾×5、ランダム支給品0〜2(確認済)
[思考]
基本:任務を果たす
1:願いが叶うとすれば……
2:ピノッキオを探す



【アイン@Phantom 〜Requiem for the Phantom〜】
[状態]:背中に切り傷、空虚感
[装備]:ベレッタM92FS残弾(2/15)飛び出しナイフ@現実、核鉄「バルキリースカート・アナザータイプ」@武装錬金 
     紐@現実
[道具]:基本支給品、手榴弾セットx2、ハンディトランシーバー@現実
[思考]
基本:どのような形であれ、サイスマスターを勝利させる。
1:願いが叶うとすれば……。
2:利用できる者は利用し、このゲームを有利に進める。
3:使えない者、マスターに害ある者はリスクに応じて速やかに排除する。
4:マスターの優勝または脱出に繋がる情報を得る。
5:マリアを追う。
※サイスマスターとは今後の方針などを事前に決めました。
※第二部からの参戦。


代理投下終了です
タイトルは『2つの想い』で

な…長かった…。
さるさん二回も喰らうとは。

乙。
激しい戦闘、その実力は互角、だが…。
似たもの同士な二人に奇妙な共感が生まれたか。

56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/07(火) 02:45:37 ID:/ppcuEZM
投下乙!
代理投下も乙!

激戦
心を打ち砕かれた二人の少女はこれからどうなっていくのだろうか
これからが楽しみですな

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/07(火) 20:39:26 ID:2T2qVGLE
神山の荷物一つ増えてね?

58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/07(火) 20:55:09 ID:2T2qVGLE
投下乙
アインとトリエラは希望を失ったか
これからどうする

59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/07(火) 20:57:34 ID:nEbObtSa
投下乙
アイン、トリエラの落胆から、バトルそして望の流れがお見事
マーダーコンビが徐々に構築されていく
南の対主催は地獄だなw

60 : ◆PuVQoZWfJc :2010/12/07(火) 22:41:24 ID:YmyUaapZ
投下乙です。
それと言われてみればそうでした。
持ち物の修正についてはポールくんの加入で
未確認支給品の項目を削除します。

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/12(日) 23:54:24 ID:NfXJr0RI
そういえばファフナー劇場版やるんだったな

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/13(月) 23:37:35 ID:BZ8aTS9i
最近、劇場版アニメ多いなw

63 : ◆PuVQoZWfJc :2010/12/15(水) 22:06:52 ID:ezd8M4Xi
投下します。

64 : ◆PuVQoZWfJc :2010/12/15(水) 22:09:04 ID:ezd8M4Xi
「あ"あ"あーーーあぁー、生きてて良かったああぁー」

そこは日が登っても依然として湯けむりの衰えぬ温泉だった。
その湯船に今緊張感の欠片もない声を挙げて浸かっているのは、放送時点でもう一人と
並んでトップマーダーに輝いた女だった。

既に五人は殺害しているというのに気後れや後ろめたさは微塵も感じられない。
寧ろそれ故にこの短時間にこれだけの人間を殺せたのだとも言える。というよりも彼女にとって
はたかが五人、たったの五人ということが些か不満であった。

しかしそれでも放送時に下手人が告知され出したとき、彼女は表彰台に登ることが確定した女優かアイドルの
ような高揚感と多幸感に包まれた。

結果は自分の独り勝ち、一番多く名を呼ばれるだろう。そう予想していたのに蓋を開けてみれば
聞いたこともない奴が自分と同着タイと来た。その事実に約束された栄光にミソが付けられたような
気分になった彼女、リャン・チーは折角落ち着いた気分をもう一度かき乱す事となった。

思わずに自分が殺したばかりの少年の死体に再度八つ当たりしたくらいだ。
極めつけに自分のいる場所が禁止エリアに指定され移動を余儀なくされたことでここに来るまでに
リャン・チーは怒りに顔を歪めながら悪態の限りを吐いていた。

「姉さまの一番に成り損ねた......これじゃ姉さまに褒めてもらえねえじゃねぇかよぉおおおーーー!」

途中から自分の盲愛する女性への申し訳なさから思わず涙ぐんだほどだ。
目的地へと着いた時には全力で走ったせいもあって裸に近い体に汗を浮かべ息切れを起こしていた。

場所を移す際に何の考えもなくこの温泉を選んだ訳ではない。少年の来たであろう方角を考えて
アルファルドが同じ場所に留まる可能性は低いだろうと洋館か温泉のどちらかへ当たりを付ける。

次に合流した時の可能性、その場合はアルファルドの命に従うつもりだった。その上である物の存在が
リャン・チーの足を温泉へと向かわせた。

即ち風呂である。洋館になければ例え会えたとしてもこの状態のままという事になる。
血と硝煙に塗れているならまだしも泥と汗で汚れたまま再会するのだけは絶対に避けたかった。

よって確実に「禊」の行える方へとリャン・チーは向かったのである。
結果から言えば空振りに終わったのだが彼女にとってはこの上ない戦利品に在り付くことができた。
それは

65 : ◆PuVQoZWfJc :2010/12/15(水) 22:12:06 ID:ezd8M4Xi
「これは......!間違いない!姉さまの髪の毛!他には、他にもっとねえのか!ここは風呂だろが!」

脱衣所と覚しき東屋で自分だけは絶対に間違えないと自負している女性、アルファルドのものらしき毛髪を発見
すると彼女は一気に興奮して他の籠をひっくり返し始める。

ここで他人の縮れ毛でも見つかっていれば或いは何か違っていたのかも知れない。しかし何も見つからなかった
ことで彼女はまた別の確信を得てしまう。

(姉さま以外はまだ入ってない?まだ?まだ......まだ!?)
ゴクリ、と生唾を飲んで目の前の湯船を見る。あって無きが如しの黒い上下の下着を外し一糸纏わぬ姿となると、
最低限に核鉄を持って湯に近づいてゆく。湯をじっと睨む。ここで他の誰かが入った痕跡が全てが台無しだ。
しかし幸か不幸か誰の毛も見つからない。

ゴクリ、ともう一度唾を飲む。禊に使うにこれ以上ない素材だ。武器と趣味と美容には自費と公費双方の
金に糸目を付けなかった彼女がどうしても手に入れられなかった物の一つが確かに目の前にあった。

手に入らなかったというのは忠誠心から敢えてやらなかった事を除けばアルファルドにプライベートと
言える部分がかなり少なかったことや採取ができない場所で行われることが殆どなのが原因である。

少なくともリャン・チーが手を出せる範囲でそれらをした事など恐らく一度もない。
だからこその衝撃だった。だからこその感動だった。

アルファルドの前では反吐が出るような乙女に早変わりする彼女からすれば正に黄金の泉だった。
そして今、自分の周囲には誰もいない。他ならぬアルファルドさえも。

(姉さまの湯に私が一番乗り、そーよ日頃の行いってのはこういうとこに出るもんよ!)
丸出しのままガッツポーズをとると手近にあった桶に湯を汲んで頭からかぶる。

「ふう......」

そのまま数回湯を浴びて頭と体の汗を流した後には湯あたりとは全く別の意味で体を火照らせていた。
残るはメインディッシュだけである。恥じらいながらもしずしずと爪先を湯船へ付けるとその温もりに
思わず身を引いてしまう。畏れに近い感情に二の足を踏んでしまう。

(やれ!イケ!ここが正念場だって分かってんだろ!ビビってんなダボ助が!)
「フー、フー、姉さま、私も今行きます..................っ!」
自らに発破をかけて気を高めると、リャン・チーはタイミングを合わせ思い切り大地を蹴り、吠える。

「ゲッサム!」

荒ぶる鷹は勇気を奮い立たせると、遂に獲物へと飛びかかったのである。全裸で。

66 : ◆PuVQoZWfJc :2010/12/15(水) 22:15:14 ID:ezd8M4Xi
そして今に至る。

始めの内は何かを克服した事に歓喜して年甲斐もなくはしゃいだり厳かな気持ちになったりしていたが
最後にはだらしなく湯船に浮かんでは体を大開きにしてすっかり寛いでいる。時折恍惚に身を震わせては
子猫が甘えるような声を出す。

「あ"あ" あーーーあぁー、生きてて良かったああぁー」
もう何度目か分らない台詞を口にすると何かに気付いたかのように頭を振る。
飛び散った水滴が湯船へと戻って行く。

「いや、私は今、新しく生まれ直したんだぁ。この姉さまの泉でぇ」
でろでろに締まらなくなった顔で粘ついた足し湯をしながらそんなことを言う。彼女の頭の中からは
今までの緊張感が嘘のように無くなってしまっていた。

(姉さまが死ぬはずないし、シミとかできたら最悪だから休んじまうかあ
私が一番殺れなかったのはムカツクけど頑張ってくれちゃってるのが他にいるみたいだし、
このまましばらく楽してズルして、その後オイシク頂いちまおっかなあ。)

品のない笑いを浮かべると肌に擦り込むように湯を浴びる。湯気の中に惜しげもなく
開かれた均整のとれた彼女の体は朝の光と湯の照り返しを受けて艶めかしく輝いていた。

「もうずっと!このまま!姉さまの湯から出たくなぁ〜い」


【一日目 D-5 温泉 朝】

【リャン・チー@CANAAN】
[状態]:恍惚 
[装備]:核鉄「ニアデスハピネス・アナザータイプ」@武装錬金、グロック17(16/17)@現実
[道具]:基本支給品 ×3、マイクロUZI、チェーンソー@現実、核鉄「アンダーグラウンドサーチライト・アナザータイプ」@武装錬金
    ドライバー@現実 、核鉄「アリス・イン・ワンダーランド・アナザータイプ」@武装錬金、メカ沢改造マニュアル@オリジナル
[思考]
基本:アルファルドのために他の参加者を皆殺しにする
1:アルファルドと合流する
2:打倒カナン
3:はいてない奴らに復讐する
※ニアデスハピネス・アナザータイプの火薬量が半分を切りました。

67 : ◆PuVQoZWfJc :2010/12/15(水) 22:17:18 ID:ezd8M4Xi
仮投下終了
タイトル名は「知らぬが仏」

68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 01:34:18 ID:LTJGlxp+
投下乙
核鉄持ち過ぎなリャン・チーさんは湯船でくつろぎ中。
この人が出てきた頃には何人死んでるやら…

69 :子供たちの午後 ◆MVYO7niwxE :2010/12/20(月) 00:24:59 ID:m3kdzl1l
「ウチは厳格な家庭でよ。親の前じゃ、カツラを外しているんだ」

林田は手際よくモヒカンを被り直す。ピノッキオはこの東洋人を慎重に観察している。

「そこまでして、その髪型に拘る必要はあるの」
「クロ高のワルがサラリーマンみたいな七三分けじゃ恰好つかねえだろ」
「ふぅん、大変だね」

心のこもらない声で相槌を打つ。
ピノッキオの関心は彼の外見から、呼吸や姿勢、仕草へと移行していた。
初めに見かけたときは、その全身から恐怖と混乱がにじみ出ていた。
だが、今はどうだ。異常なまでに肝が据わっている。この短期間で心境にどんな変化があったのか。
などと、思い巡らしていた時、林田は馴れ馴れしく語りかけてきた。

「話は変わるけどよ。この殺し合いって、実はたいしたことないんじゃねえか」
「素人が優勝できると思ってるの。馬鹿じゃない」

会場で見た異能力者に加え、福祉公社の連中までいるのだ。
一流の殺し屋のピノッキオでさえ、彼らの皆殺しをするのは困難だと認識している。

「いや、そういう意味じゃねえ。あれは飯を食ったり、授業中に昼寝したり、
 ヨソの高校と喧嘩したりするのと変わらない、退屈で平凡な日常じゃねえかってことだ」

モヒカンが風でそよぐ。生き物のように捉えどころなく動く。
ピノッキオは彼の突飛な問いかけを前に、つい考え込んでしまう。

自分にとって平凡な日常とはなんなのか。暗殺稼業だろうか。殺しは得意だが別に趣味ではない。
ただ、育ての親、命の恩人であるクリスティアーノのためにやっている。あの人はそれを喜んでいるのかよく分からない。
それでも、自分にできることは他にないから、任務に従い人を殺す。自分の意思で選んだ道だ。

逆に平凡な日常でないものはなんだろう。それは農村でやったブドウ畑の世話かもしれない。
あれは悪くない。ずっと続けていたいと思う。けれど、それでは暗殺者の牙が鈍る。
二つの世界は大きな隔たりがあり、両立できない。だから、

「君にとって、この世界は日常とは別モノさ」

そして、ピノッキオにとっては、ありふれたルーチンワーク、変わらない日常。
ここは生と死の境界がせめぎ合う空間。喪失、怨嗟、殺戮が満ち溢れている。


70 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/20(月) 00:25:55 ID:m3kdzl1l

「いや、違うな。それは認められねえ。
 てめえはムードに流されて、ここが平凡な日常じゃないと思い込まされてるんだ」

なぜか強気に出るモヒカン男。

「いつもと違うから、いつもと違うルールに従え。オレはそういう考え方が大嫌えだ。
 ワルってのは、食いたいときに食って、寝たい時に寝る。人殺しなんざに手は染めない」
「面白いことを言うね。でも、口先だけじゃ、現実は変わらない」


ピノッキオは相手を小馬鹿にしたように言った。だが、林田は鼻息荒く反論する。

「人間ってのは、先入観から解放されれば何だってできる。
 現にオレは英語を喋れない思い込んでいたが、お前と話せている」
「……それは別の理由だと思う。あと、ボクが話すのはイタリア語だよ」
「えっ、そうだったのか」

林田はモヒカンを抱えて膝をつく。ピノッキオは眉を潜めて考える。
この東洋人はからかっているのか。それとも規格外の馬鹿なのか。いずれにせよ、只者ではない。


――だったら……アンタが私様を守りなさいよっ!


ピノッキオは江戸前留奈を守るために雇われている。あの少女もまた、破天荒だった。
彼女ならば、奇妙な東洋人の使い道が分かるかもしれない。
彼をオーナーの元に連れて行こうと決意する。


その直後、両者の針路を決定づける放送の刻が訪れた。


○   ○   ○



「神山、竹之内、フレディ、3人とも死んじまったのか。ちくしょう、ちくしょう……」

林田は公園のベンチに両手を強くたたきつける。号泣、男泣き。

(神山はまだ、呼ばれてないけど)

というツッコミを、ピノッキオはするつもりはなかった。ただ、冷めた目で見守っていた。
眼前の涙はありふれていて、殺し屋の興味を引くものではなかった。


71 :子供たちの午後 ◆MVYO7niwxE :2010/12/20(月) 00:26:47 ID:m3kdzl1l

自分の目的はクリスティアーノの元に帰ること。そのための手段はどうでもよかった。
確かに、少女を殺すのは気分は悪い。けれども、勝手に死ぬ分には仕方ない。
ただ、江戸前留奈は彼にとって興味深い人間だった。彼女の中に、元の世界での現クライアント、
フランカに似たものを感じ取ったからかもしれない。だからこそ、彼女の取引に乗った。

けれど、その少女は死んでしまった。彼はふたたびフリーになった。
下手人は名前と虐殺数からして、おそらく福祉公社の人間だろうか。
公僕が一般市民を虐殺とはお笑い草だ。

この東洋人が言うように、ここは『好きに振る舞える世界』かもしれない。
ウキツと仕事の契約を結んだ覚えはない。誰を殺しても、殺さなくても自由だ。

ピノッキオは林田の態度次第で行動を変えようと思った。
もし、失意に囚われたままならば、一緒にいても鬱陶しいだけだ。
当初の予定通り、首をはねる。ポケットに隠したナイフを軽く握り締める。その刹那、

「頼む、俺を弟子にしてくれ」

林田は砂利道の上で土下座していた。ピノッキオは呆気にとられる。
彼はこれまで、誰かの下で働くことしかしていない。

「いきなりそんなこと言われても困るんだけど」
「アンタは喧嘩のプロかなんかだろ。カツラを掴んだ時の動きでわかったぜ。
 今だって、殺気をビンビン飛ばしてやがる」

彼は自分の正体を察したうえで、虚勢なき余裕を見せていたのか。
ピノッキオは林田の胆力に関心する。それとも、これまで忘れていただけなのか。
もしそうだとしたら、やっぱりただのバカだ。

「意外とよく見てるんだね。でも、君と一緒にいることに何のメリットがあるの」
「……ああ、そうだ、メカ沢だ。メカ沢に会えば首輪を外せる」

おそらく、メカが得意だからメカ沢。きっとニックネームなのだろう。
ピノッキオも首輪の枷はできるだけ早く外したいと考えていた。
殺しを強制する者に逆らうことは、これまでにない奇妙な興奮を覚える。
そして、いつもと変わらない声で答える。


72 :子供たちの午後 ◆MVYO7niwxE :2010/12/20(月) 00:27:45 ID:m3kdzl1l

「外見の特徴は?」
「言葉で説明するのは難しいというか、触れちゃいけない部分があるんだが。
 簡単に言うと声が渋くて、やたら丈夫で、顔が大きい男子高生だな」

イマイチ要領を得ないが、一目で識別できるユニークな容姿なのだろう。
林田は地面ギリギリまで顔を近づけ、殺し屋の少年に懇願する。

「オレは自分の弱さに腹が立ってるんだ。
 もっと強くなりてえ、仲間を酷い目に遭わせた連中を一発ぶん殴りてえ、友を助けてえ。力を貸してくれよ、師匠」

ピノッキオは林田をカミソリのような視線で貫いた後、ゆっくりと口を開いた。

「君に暫く付き合うよ。ただ、師匠になるのは御免だけどね」
「すまねえ。師匠、恩に着る」

少年は興奮した様子で顔を上げた。
二人は北へと向かう。首輪探知機の利用はある程度近づいてからだ。

ただ、林田は言葉足らずだった。
メカ沢に出会っても、神山の助力がなければ何をすればよいのかわからない。
だが、当の本人は神山は死んでしまったと勘違いしている。
そして、ピノッキオ自身、生存を告げる必要を感じていない。
この齟齬はいつ、解消されるのだろうか。

【一日目 E-4 朝】



73 :子供たちの午後 ◆MVYO7niwxE :2010/12/20(月) 00:28:50 ID:m3kdzl1l

【林田慎二郎@魁!!クロマティ高校】
[状態]:健康、疲労(大)、自責
[装備]:首輪探知機残り@バトロワ 使用回数4回
[道具]:基本支給品×1 未確認支給品1〜2
[思考]
基本:とにかくクロ高の仲間を集める
1:神山の遺志を継いでメカ沢たちを見つける
2:神山の敵を討つ
3:ピノッキオを師匠呼ばわりする
備考:神山が放送で呼ばれたことに気づいていません


【ピノッキオ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:健康
[装備]:ゆりっぺのナイフ@Angel Beats!、黒のナイフ(ベルトのギミック付き)@DARKER THAN BLACK、コルト ガバメント(7/7)@Phantom 〜Requiem for the Phantom〜
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0〜2 、コルトガバメントの弾倉×2
[思考]
基本:おじさんの元に帰る
1:林田と共にメカ沢を見つける
2:トリエラとは二度と会いたくない
3:武器が欲しい

74 : ◆MVYO7niwxE :2010/12/20(月) 00:29:44 ID:m3kdzl1l
投下終了。遅れてすみませんでした。

75 : ◆/Fnde2WILg :2010/12/20(月) 02:53:03 ID:FtaZAT+0
投下乙。
ピノッキオの傍には常に誰かが居る。これは運命らしい。

こちらも大分遅れましたが、投下します。

76 :MOTER ◆/Fnde2WILg :2010/12/20(月) 02:54:21 ID:FtaZAT+0

羽佐間翔子
近藤剣司
小楯衛
カノン・メンフィス


春日井甲洋。


(……畜生!)

仲間が、友達が、自分の知らない場所で次々と死んでいく。
……甲洋も死んだ。結局、まともに話し合うことすらできなかった。
彼は俺の知っている甲洋だったのか、ホムンクルスというコピーだったのか。
衛と翔子は本当に生き返ったのか、……きっと、もう知る術は無い。
剣司、カノン。フェストウムとの戦いの中で最後まで一緒に生き延びた友達ももう居ない。
そして真矢は、誰かを殺した。

(今まで何をやってたんだ、俺は!?)

地面に拳を打ちつける一騎の前には顔を押さえて苦しそうに俯くシャーリーが居る。
さっきまでの惨殺ショーは一体なんだったのか、幻覚の一種だとでもいうのか、
彼女はピンピンしている。無事で良かった事は幸いだが……。

「そんな、馬鹿な……!?」

――――この人がこんなに動揺するなんて。

温泉で自分を励ましてくれた、あの何事にも動じそうな包容力を備えたシャーリーさんが
尋常でないほど狼狽している。それほど大切な人が死んだというのか。

「あの……シャーリーさん、ひょっとして……。」

サーニャ・V・リトヴャク。

真矢が殺したらしい、恐らくシャーリーさんと同じ世界から来た仲間。
心臓が跳ねる音がする。
自分の友達が、この人の大切な人を奪ったというのだろうか?

「サーニャさん、て……。」
「近藤剣司、君の友達か?」
「!?」

俯いたままのシャーリーに剣司の名前を告げ、思わずその場で立ち止まる。
そういえば、剣司を殺したというのは――。


77 :MOTER ◆/Fnde2WILg :2010/12/20(月) 02:56:22 ID:FtaZAT+0
「……ルッキーニが人を殺したって?ははっ、そんな馬鹿な。」

サーニャとリーネが死んだこともショックだったが、
彼女をかつて無いほど困惑させているのはその後続いた内容である。
エイラは言いたくないが、仕方が無い。
あの娘は普段はヘタレだけどこういう場に放り込まれたら
サーニャを助ける為にたとえ501全員を敵に回してでも戦うだろう。
サーニャが絡んでいる状況ならそれだけの覚悟がある筈だ。
でも、ルッキーニは……。

「私の、せいなのか?だとしたら、とんだ監督不届きだな。」
「……シャーリーさん。」

現場を知らない者は、殺した側と殺された側の状況は判らない。
淡々とした放送のみで想像されるのは常に最悪なイメージでしかない。

「俺の友達も、きっとあなたの友達を殺しました。」
「……全員を殺すしか、確実に帰れる方法が無いみたいだからな。
 嫌味なくらいよくできたゲームだな、本当。
 で、友達を殺した奴の仲間の私を殺したくなったかい?一騎君。」
「そんなこと、できる筈が無いです!」

報復の連鎖。わざわざ下手人を公開した主催者の狙いは正にそれだろう。
ここで乗せられてせっかく心を許したものを憎み、
疑心暗鬼になってしまっては完全に思う壺である。

「そうか、じゃあ、私も、少し冷静にならないとな。」

両手で自分のほっぺを叩いて、シャーリーは立ち上がる。

「私はルッキーニを捜すよ。絶対、なにか事情がある筈なんだ。
 私が信じてあげなくてどうする。真矢って娘も、きっと何かある筈だよ。」
「ええ!」

いつの間にか、自分が知っている彼女の顔に戻っていた。
過去の事を悔やんでも仕方が無い。前に進むことが、生き残った者の義務である。

「……と、言ったものの、ちょっと問題ありだなー、こりゃ。」

問題というのは、幻覚から目覚めた時に一騎が発見した置手紙である。
『逃げた少年を追う為に、これを借りる』と書かれた内容どおり、シャーリーが装備していた
武装錬金「モーターギア・アナザータイプ」がなくなっいていた。
放送の無いようだとアルファルドが甲洋を殺した訳ではないというのは不幸中の幸いであったが
今自分達には高速移動の手段が無い。探索するには不十分だ。

「アルファルドが戻ってくるのを待つか?いや、多分戻ってこないだろうなー。」

一時的に手を組んだ、それだけの知り合いである。
あっさり見捨ててしまう可能性も十分考えられる。

「あーあ、やっぱ、歩くしかないかな。」
「そうですね。……ん?」

78 :MOTER ◆/Fnde2WILg :2010/12/20(月) 02:58:55 ID:FtaZAT+0
病院の外で、蹄の音がする。
二人で壁越しに外の様子を見た。
そこに居たのは……。

「な、なんだありゃ!?」
「……咲良!!!!」

一騎は病院から飛び出し、女性を乗せた馬に駆けつけた。

「ちょっと、一騎君!?」
「仲間です!あの人は俺たちの!」
「そ、そうか、それはいいんだが……。」

シャーリーも後に続いて駆け寄る。
その女性、馬に跨る要咲良の様子もまた尋常では無かった。
なにせ全裸である。服を何も身に着けていないのだ。
ぶつぶつと何かを呟きながら、
まるでフェストゥムに同化されたかのような虚ろな瞳で黒竜号にまたがる
その姿にかつて要流の師範代を務め、竜宮島最強の女と呼ばれていた面影は
微塵も残されていない。

「……これは酷いな。一体何をされたんだ?」
「咲良!しっかりしろ!」
「……き。」
「え?」

「……嘘つき。」

剣司が、死んでしまった。
いつか自分よりも強くなって私を護ると言ってくれたあいつが。
ゴリラに強姦されそうになるような地獄における、唯一の希望が失われた。
もう、何を信じればいいんだろう。何もわからない。もうどうでもいい。

「と、とにかく、病院に戻ろう。」

二人掛りで馬から下ろされている時もまるで現実感が無かった。
片方は、ひょっとして一騎だろうか?……ははっ結局一勝もできないままだったね、剣司。
もう片方の胸の大きい女の子は黒竜号を希望に満ちた瞳で見つめていた。
一体なにがそんなに嬉しいのか。

「……馬!乗り物っ!」
「シャーリーさん?」
「……すまない一騎君。必ず戻ってくるから、この娘と一緒に少し待っててくれないか?」
「気持ちは分かりますけど、でも。」
「頼む、私はルッキーニを捜さなきゃいけないんだ!」

その名前を聞いて、咲良の瞳に生気が戻った。

79 :MOTER ◆/Fnde2WILg :2010/12/20(月) 03:03:26 ID:FtaZAT+0
ルッキーニ、フランチェスカ・ルッキーニ。

剣司を殺した奴の名前。

なんでその名前が今出てくる?

そうか。

「仲間なんだ、ルッキーニの。」
「咲良?」

その瞬間、一騎の体を突き飛ばした咲良は、鞍に引っ掛けていた散弾銃を手に取った。

「このぉ!!」
「……シャーリーさん!?危ない!」
「え?」

子気味良い発砲音と共に、散弾銃が火を噴いた。
不意を突かれたシャーリーの体に、12ゲージショットシェルの雨が降り注がれる。
避ける間もなくそれらをすべて豊満な身体に受けたシャーリーは、
血を撒き散らしながらその場へ崩れ落ちた。

「シャーリーさん!!!!」
「どいて!一騎ぃ!」
「なんてことを!」
「そいつの仲間が殺したのよ!剣司を!」
「こんなことしたって意味が無い!」
「うるさい!邪魔すんなぁ!」

間髪居れずに一騎にも銃口が向けられる。
反応とした避けようとした一騎が、何かに服を引っ張られた。
息も絶え絶えなシャーリーである。

(……すまない一騎君。)

口から血を流しながら、何かを小さな声で何かを伝えていた。

(ルッキーニは、殺し合いに乗る娘じゃない。もし遭えたら、ちゃんと話を聞いてあげてくれないか?)
(シャーリーさん?何を!?)

シャーリーの身体が光り、ウサギの耳がぴょこんと生える。
その発光はいつの間にか一騎と、もう片方の手で触れていた黒竜号にも移っていた。

(……頼む、最期の、お願いだ!)
「うわっ!?」

一騎はシャーリーの手によって黒竜号の上に投げ出され、背中に乗せられた。
それと同時に、立ち上がったシャーリーが黒竜号を思いっきり蹴り飛ばす。
その衝撃に驚いた黒竜号は思わず走り出し、異常な速さでその場から姿を消していった。

80 :MOTER ◆/Fnde2WILg :2010/12/20(月) 03:07:47 ID:FtaZAT+0
「……えぇ!?」

その場に取り残された咲良は呆然と立ち尽くす。
全身から血を垂らしながら立っているシャーリーは語りかけた。

「なぁ、私を殺したら、ルッキーニにを殺しにいくのか?」
「あ、当たり前じゃない。」
「……そっか。」

言葉を終えた直後、一瞬でシャーリーの身体が膨張した。
錯覚させる程の速度で彼女は咲良の目の前に立っていたのだ。
慌てて散弾銃の引き金を引こうとするが、手に感触がない。
何事かと慌てふためく咲良はそれに気付く。
目を離した覚えは無いのに、銃口を向けていたはずのシャーリーが、
逆に散弾銃をこちらに向けていることを。

「……なに、これ?」
「種も、仕掛けも無い、ただの、魔法だよ。」
「……剣っ!」

原始的な発砲音が鳴り響き、全裸の咲良に非情な散弾が降りかかる。
散弾は撃つ距離が近づけば近づくほど一部を集中して破壊する。
助かる可能性は、0だった。

(……けん、じ……。)

信じられないような顔をしたまま、咲良の身体は空を見上げて倒れ込む、そのまま動かなくなった。

「……すまないな……でも……私もあの娘には死んで欲しくないんだよ。
 君と君の彼氏の対価は……私一人の命で勘弁してくれないかな?」

シャーリーの通った場所は、異常な速度で噴出した彼女の血液で道が作られていた。
即死しなかったとはいえ、この状態で加速の魔法を使うことは自殺に等しい行為だったのだ。
咲良の死体を悲しそうに見つめながらシャーリーは皮肉そうに嗤う。

(……これで私も一緒だな、ルッキーニ……。)

そしてシャーリーもまた、空を見上げながら大の字になって倒れこんだ。
太陽が眩しい。夜が明けて朝になっていたのだ。

――もし地獄があるのなら、私はそこで待ってるよ。
――私も罪人なんだ、同じ場所で、また遭えるさ。寂しくないだろう。
――でも、でも出来ればやっぱり生き延びてくれ。
――何があっても、私だけは最後までルッキーニの味方だからさ。
――空の上から、ずっと見守って……。

ゆっくりと、目を閉じる。
それが開かれることは、二度と無かった。

【シャーロット・E・イェーガー@ストライクウィッチーズ 死亡】
【要咲良 @蒼穹のファフナー 死亡】
【残り36人】

81 :MOTER ◆/Fnde2WILg :2010/12/20(月) 03:11:25 ID:FtaZAT+0

【一日目 D-5 道路 朝】


【真壁一騎@蒼穹のファフナー】
[状態]呆然自失、深い喪失感
[装備]宝剣・靖王伝家@真・恋姫†無双 、黒龍号@魁!!クロマティ高校
[道具]基本支給品×1、不明支給品0〜1
[思考]
基本:竜宮島の仲間を島に帰す
1:咲良…シャーリーさん…
2:総士、翔子を守る
3:竜宮島の仲間を探す

※現在南へ向かって通常の三倍の速度で移動中です。
※C-4の二人の死体の傍にに散弾銃、ランダム支給品0〜3が放置されています。

投下終了。
どうやら欝なときに欝な話を書くのは相当辛いらしい。


82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/20(月) 20:55:00 ID:vROTKBei
3作投下乙

リャン様はとりあえず変態モードのようで
なんか、支給品が核鉄だらけで地味に怖い

ガンスリ生存者の中でピノッキオだけが対主催と言うのは皮肉だ
林田神山の生存にはいつ気づくんだろうか

そして、油断してたら2人の死者が。どちらも切ない
鮒もいつの間にか残り2人になってしまったな
あと一騎の状態表、翔子の訃報を聞いているのでは

83 : ◆MVYO7niwxE :2010/12/21(火) 18:28:07 ID:+jUAyPUA
午前中のSSに午後も何なので
タイトルを「子供たちの午後」から「世界の蝶番はうめく」に
変更しておきます

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/26(日) 10:36:56 ID:ZSngMPKX
保守

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/28(火) 22:07:40 ID:GfGyYpOw
急にスレの流れが止まったな。保守

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/30(木) 00:14:38 ID:KQgfxWuh
年末だしね保守

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/31(金) 00:54:00 ID:Uwg82PVw
見てる人結構多いし誰か投下すれば良いのにね
ほしゅ

88 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/01(土) 00:07:40 ID:QXr1WgbK
明けましておめでとー
果たしてこのロワは今年中に完結出来るのか!?

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/02(日) 12:20:50 ID:6Dx6QwqR
第一放送までっていう書き手が多かったのかな
◆x/氏は自己リレーになっちゃうパートが多いから仕方ないかもしれないけど

90 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/02(日) 13:43:00 ID:9WKeXacT
誰かが書けばそれに続いて予約するって人もいるんじゃない
いったん流れが止まると先陣を切るのが難しい

91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/03(月) 01:59:53 ID:KrNwMR+i
シャーリー死亡か
ルッキーニに影響がでるな
母性がない華琳じゃ、宥め切れないだろうしなあ

92 : ◆PuVQoZWfJc :2011/01/08(土) 20:12:32 ID:QVCBbPBk
投下します。

93 : ◆PuVQoZWfJc :2011/01/08(土) 20:15:26 ID:QVCBbPBk
朝靄は晴れ、室内に差し込む光もその強さを増して行く。しかしそれとは裏腹に室内を選挙している
少女の瞳は夜が明ける前よりもずっと濁っていた。じっとりと濡れた瞳は空を睨んで動かない。

(銀が死んだ......)

先程の放送を聞いた時、彼女の胸には達成感に近い歓喜が湧いた、だがその昏い喜びはすぐに
自己嫌悪と怒りによって打ち消された。

(違う、銀はたぶん、もっと早くに死んでたんだ。でも銀は死なない。意味が無いんだ)

先程撃ち砕いた洗面台に銀はいたのだ。だからこそ蘇芳は彼女の訃報に苛立ったのだ。
亡くなった女性は少女、蘇芳の嫉妬の対象だった。いつも蘇芳の求める男性、黒の心中に居続ける。

(足りない、足りないんだ。銀が死んだって、黒はきっとずっと、銀の事を......)

蘇芳は黒に張られた頬を触る。既に痛みは無かったが、それでもさっきまでの痛みと熱さを忘れることはできなかった。
黒は自分に何もするなと言って出ていってしまった。銀との決着は流れてしまったがどちらにせよ
黒が戻ってきてくれるかは疑わしかった。

(黒はずっと銀のことを思い続けるだろうな......ボクよりも、ずっと。あいつが死んでも意味なんか、ううん、
死んだから前よりもっと黒の中にいるんだろうな。黒......)

黒に縋りつきたくなったがここにはいない。それに嫌われてしまったとも思った。
蘇芳はふと考える。この先二人で生き残って、島から脱出できたら、その後どうなるだろう。
黒と一緒に生き残ってもその隣に自分は立てず、黒の中にはいつも銀がいて、それを思い知らされる。

堪え切れないほどの怖気と憎しみがこみ上げて来ると、蘇芳は耐え切れずに悲鳴を上げて壁を殴った。
拳が痛むのも気にせず、片手で髪を掴み、片手で壁を殴り続ける。

(嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!そんなの嫌だ!)
小さく嗚咽を漏らしながら蘇芳は何とかしなければと必死に考える。
どうすれば黒に自分を見てもらえるか。どうすれば黒の隣に立てるか、どうすれば黒の中にいられるか、
そして、どうすれば黒の中から銀を消せるか。

それは淡い恋心であり幼い独占欲だった。しかしその気持ちに落とし所を見つけるには
蘇芳は若すぎたし余計な知識も多すぎた。

94 : ◆PuVQoZWfJc :2011/01/08(土) 20:19:03 ID:QVCBbPBk
(どうすればあいつを消せる、どうすれば黒に振り向いてもらえる、どうすれば・・・!)
焦る気持ちを表すかのように思考は空転し続ける。

結局何も思い付かず、気疲れした蘇芳はまず荷物の整理をすることに決めた。
デイパックの中身を取り出しては確認し、自分の取り出しやすいように詰め直す。

黙々と作業をこなしながら蘇芳は、「そういえば」と心の内でつぶやいた。

(黒、帰ってこないな、当たり前か、言う事聞かなかったもんな)

明らかに冷たくなった黒の態度を思い出してはまた気分が沈む。

(もう嫌われないように、やっぱり待ってた方がいいのかな......)

最後の言いつけを守ることを優先するかどうかを迷いながら、自分の契約の対価の為に
破いたルールブックの残りのページ数を確認する。手付かずの分も含めてまだまだ余裕がある。
確認を終えて閉じようとした時、開いていたページの一文が目に映る。

『優勝者の帰還は保証し、ありとあらゆる願いを一つ叶える』

死者の蘇生も含むと補足された文章から蘇芳はふと、真逆のことを考える。
もし優勝すれば、銀を完全に世界から、黒の中から全て消すことができるのだろうか。
黒の中の銀を自分にすることができるのだろうか。

突然湧いた思考に蘇芳の心臓は徐々にだが脈打つ早さを増して行く。
もしも、黒が自分の望みどおりになったら?
もしも、黒にふさわしい自分になれたとしたら?
もしも、最初から銀じゃなくて、自分が黒の隣にいられたとしたら?

追い詰められた少女の思考が支えにもなりそうな欲望へ頭を振ることはなかった。
ただ優勝するための絶対条件が行動に出ることを躊躇わせた。

(黒を殺さないといけない。でもそんなことはできない。黒は......できるのかな......
優勝したら、やっぱり銀を生き返らせるのかな。ボクは......)

不安になってくる。こんな事ならせめて別れる前に本人に聞いておくべきだったかも知れない。
返答の内容を考えれば聞かないほうがいい可能性もあったが。

95 : ◆PuVQoZWfJc :2011/01/08(土) 20:22:07 ID:QVCBbPBk
どうしたいかも、どうするべきかも分らなくなってしまった。黒といっしょにいたいがそれは
拒絶されてしまった。追いかけたとしてもう一度同じことがあったら耐えられる自信はない。

優勝するには黒を殺さなければならない。しかしそれもできない。結局蘇芳はここで黒の
帰りを待ちながら、この建物の近くを遠った者を殺すことを続けることにした。既に半数の人間が
死んでいるのだ。ならば残っているのは元の世界でも殺す側だった者ばかりのはずだ。

なら数を減らすのが一番堅実な黒の安全を得るための方策だった。代替案が思い付かなかった
こともあって彼女のこの考えは変わらなかった。失われた信頼を取り戻すことは容易ではない。
その為にはせめて言いつけを守りながら当面は出来ることをするしかない。

殺人への抵抗が消えた訳ではないが既に自分は自分とそう年の変わらない少女を撃っているのだ。
後戻りできるとは思えなかった。

(何もするなって言ってたけど、黒の為だから)

万一成功したなら自分と関係ないように何かしなくては、と頭の片隅に書き留めると蘇芳は
窓から外の様子を伺った。誰もいないが晴れた空の下での狙撃は自分の居場所を報せやすく
するので危険だった。行動にでるなら一層の注意が必要となる。

遅まきながら、少女は一人になったことに不安と孤独を思い出していた。

「黒......」

いくら名を呼んでも、彼は帰っては来なかった。

【一日目 G-4 ビル 朝】

【蘇芳・パヴリチェンコ @DARKER THAN BLACK】
[状態]疲労(中)、頬に腫れ 不安
[装備]なし
[道具]基本支給品×1、特別支給品0〜1個(確認済)、ルールブック2冊(黒と蘇芳)、核鉄@武装錬金
[思考]
基本:黒と旅を続ける
1:黒と一緒にいたい
2:これ以上黒に嫌われたくない
3:もしも優勝できたら......
[備考]
※二期最終回、銀に魂を吸われた直後からの参加。
※ルールブックのページを数枚消費

96 : ◆PuVQoZWfJc :2011/01/08(土) 20:25:33 ID:QVCBbPBk
投下終了
タイトルは「留守番」

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/10(月) 22:21:50 ID:ugc9/0CA
投下乙
銀の死を知り、少し落ち着いた蘇芳
この周囲は危ないから少し大人しくしてる方が安全かもね

98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/16(日) 01:09:57 ID:iRFiwWwj
二回連続月報一位オメwwww

99 : ◆PuVQoZWfJc :2011/01/19(水) 20:04:29 ID:n7J4r1Pm
投下します。

100 : ◆PuVQoZWfJc :2011/01/19(水) 20:06:40 ID:n7J4r1Pm
日も昇ったというのにその場はひどく血なまぐさかった。先程大勢の人間の訃報があったが
彼に何の感慨も齎しはしなかった。フレディの名が呼ばれた際は僅かに顔を曇らせたが
それもすぐに消えてしまった。

ゴリラは考えていた。何故自分が振られたのか。何故黒龍号が裏切ったのか。
自分はこの島の中で当然のことをしただけだし、メスは強いオスに従うものだ。それが
何故にこうまで拒絶されるのか。ゴリラはしばし考えた。

そしてすぐにあることに思い至った。前にいた場所では強いオスは多くいたが不思議なことに
誰一人として連れ合いを持っていなかったのだ。どの群れにも、あのフレディにさえ
いなかった。そしてその理由に気付いたのは自分が寿司屋の見習いとして働いていた時の事だ。

兄弟子や店長の下で寿司の握り方を学び、寿司のネタを腕力によって奪うのではなく、
技量や交渉によって手に入れていた日々に答えはあった。
自分たちほどの力はなくとも魚市場の人々の中には伴侶を持つ者はいた。

自分と何が違ったのか、違ったのはメスの方だとゴリラは解する。オスを選ぶ基準が腕っ節ではない
何かだったのだろう。ゴリラはその時は物好きな奴だと思ったがこの基準がさっきのメスにも
当てはまったのなら振られたのも納得だった。

つまりさっき殺したオス(竹之内)は腕っ節以外の何かであのメス(咲良)に選ばれたのだ。
そして自分はそれを持っていなかったが為に所有権が移らなかった。

未だに顔に蹄鉄の後を付けながら、ゴリラは真剣に考えていた。その何かとは何だったのか。

今となっては分らないがメスの好みが異なるということは理解した。あとはどれだけそれを知り、
集められるか、ゴリラは前にいた街で連れ合いのいたオスの姿を片っ端から思い出す。

街の中で見かけたのは車に乗ってる奴、金を持ってる奴、飾りをたくさん付けている奴、
逆にメスに使われている奴などなど。このゴリラに限った話ではあるが車や金を持ってる奴というのは
よくわかる。セリでいいのを落としては大型の車に載せて持って行ってしまう。

「力」があるのだという事はゴリラにも分かった。飾りの奴は鳥と同じだ。最後のはたまたまだろう。
確かに考えて見れば腕力でくっついているケースは全くといっていい程なかった。

101 : ◆PuVQoZWfJc :2011/01/19(水) 20:10:56 ID:n7J4r1Pm
つまりこの島であの手の小さいメスを得るにはそれぞれの好みを持っていなければいけない
ということになる。他のオスを力で排除しながらその一方で力以外のものでメスを手に入れなければ
ならない。ゴリラは面倒臭く思ったがやらない訳にはいかない。

おまけにメスは軒並み小さかった覚えがある。最初のは子ザルとすぐに分かったがその辺も要注意だ。
好みのメスがいそうにないのがゴリラに一層義務感を募らせた。

他のオスに分かりやすく自分の強さを知らせる物が必要だった。
他のメスの好みにあった物を手に入れる必要があった。

後者は心当たりがなかったのでこれから集めるしかないが前者はすぐに思いついた。以前いた場所
で相手の穿いているものを奪うという連中が出たことがあったがあれと同じだ。参加者と自分に共通した
飾りを集めておけばいいのだ。集めた数が多いほど差は歴然となる。

ゴリラはそれを手早く手に入れることができる場所へ急いだ。体の中に埋まった散弾が気持ち悪かったが
取れず、触れば出血がひどくなりそうなので今は放っておくことにした。

そしてゴリラは以前来た場所へと戻ってきた。そこでは6人の人間が死んだ場所だったが遺体は3人分
しか残っておらずいずれも子ザルの集まりだったが贅沢は言っていられない。

ゴリラは彼らの飾りを取るためにデイパックの中から両刃の伐採斧を取り出すと細い首を次々と刎ねていく。
切る際に力任せではなく僅かに角度を合わせて引くように振り下ろす様は素材を捌くような手つきだ。

躊躇うこと無く死体の細い首に斧を振り下ろす。
既に死体だったせいか刎ねられた首がきれいに放物線を描くことも
勢い良く血が吹出すということもなかった。空いた傷口からは濁濁と血が流れたがそれにも勢いはない。

ゴリラは首を斬ることを決めた時、切るための道具が包丁しかなかったらその時は諦めようかとも
思ったのだ。幸か不幸かにも出てきた物は包丁ではなかったが。彼の中では包丁は争いに使う道具ではない。

このゴリラは決して無法者ではない。それは彼のこれまでの暮らしぶりからも伺えることで今は
この島のルールに従っているだけだ。ゴリラは思う。その場のルールに合わせてに生きることは
何も悪いことではない。掟の中で全力を尽くすのは生き物としては当たり前のことだった。

ゴリラは今までとの掟の変容を敏感に察知したがその内容は掴みきれなかった。故に考えながら
あれこれと試している。考え直すこともなく。

102 : ◆PuVQoZWfJc :2011/01/19(水) 20:13:27 ID:n7J4r1Pm
手際よく文字通り首だけ切って目的の首輪を入手したゴリラは血糊のついたそれをデイパックにしまい
最初は拾わなかった子ザルの基本支給品も回収する。

その内の一つの食料と水を食べきり一心地つくと地図を見た。これからどこへいくか決めようというのだ。
メスか敵対するオスの集まりそうな所を思い浮かべたが自分の状態を鑑みるとそれは得策ではない。

先程銃で撃たれた時もそうだし、失ってしまったあの大きな武器も戦う上では欠かせない要素だ。
非力なメスでも危険になりうる道具が有る以上自分の手持ちの道具をちゃんと把握する必要がある。
ゴリラはここまで理解すると今いる位置から北上し始めた。

確か「調べれば分かる場所」という程度に記憶している所へ向かって。


【一日目 B-1 遺跡 午前】

【ゴリラ@魁!!クロマティ高校】
[状態]:ダメージ(小)、出血(小)、(疲労)、小頭に軽度の打撲、顔面に蹄鉄の跡
[装備]:伐採斧@現実
[道具]:基本支給品×3、ランダム支給品×5、首輪×3
[思考]
基本:弱肉強食。
1:?(何考えているか解らないが、ルールだけは把握できている様子)
2:首輪とメスの好みそうな物を集める
3:図書館へ向かう

備考:秋水、直井、リネットの首を刎ねました。

103 : ◆PuVQoZWfJc :2011/01/19(水) 20:16:55 ID:n7J4r1Pm
投下終了。
タイトルは「順応」

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/20(木) 13:32:39 ID:U8abA4H0
投下乙です

メスにモテたい一心で知恵を振り絞ったなw
本当にこいつはただのゴリラか?
しかし本当に順応してるな…

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/01/30(日) 17:02:55 ID:YRC+sCA7
保守

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/02(水) 23:37:10 ID:pzhwBd+Z
保守

107 : ◆PuVQoZWfJc :2011/02/05(土) 21:00:53 ID:ReQO8LCX
投下します。

108 : ◆PuVQoZWfJc :2011/02/05(土) 21:03:16 ID:ReQO8LCX
島の全土に響き渡った盛大な訃報は、ある男にも影を落とした。

ヴィクトリアの名前が呼ばれた時、ヴィクターはその意味をすぐには理解できなかった。
いや、理解することを拒否したという方が正しい。
ただ既視感はあった。以前錬金の戦士たちによって似たような事をされた為に今のヴィクターと
ヴィクトリアの関係があったのだから。

(どうして、あの子が)

それは以前にも思ったことだ。最低の事態に自分の家族が巻き込まれることをどこか想像できない。
『自分の子に限って』などという考えは無かったがそれでも、死んでいるなどとは思いたくなかった。
ようやく今までの埋め合わせをできる時を、家族の時間を取り戻せたと思ったのに。

(何故、殺されなければならなかったのか)

粘つき止まりかけた思考のままヴィクターは別室にいる少女に声をかけずにふらりと外に出た。

辺りに人影はなく、戦いの音も聞こえない。本当にこの島のどこかで娘は死んでしまったのか、
本当は呼ばれたのは自分だけで娘はこの殺し合いに参加などしていなかったのではないか、
自分でも信じられなかったが、それでもそう思いたかった。

質の悪いことに娘の敵は既にいないらしいということだった。体に起こる衝動に任せて島中を
捜し回ることもできない。自分のことでもないのに走馬灯のように娘のことが脳裏に過る。
悲惨なことが思い過ごしであったことは、彼に人生にとってはただの一度もない。
それ故に他者から告げられた死を、何一つ軽減できずに受け止めてしまう。

(ヴィクトリア......)

思考が纏まらなかった。まるで全ての配線が切れ燃料も尽きて、心身が錆びてしまったかのようだった。
もしも出会ったら、守ってやろうと思った。もしも望まれなくても味方でいようと思った。他の参加者
も主催も何もかも皆殺しにしても、その決意の全てが、音もなく崩れていく。

(済まない、ヴィクトリア、済まない......)

とうの昔に人の身では無くなっていたが、それでも自分の子どもの死に対して何も感じ無いほど
化物ではなかった。それでもヴィクターは人の親だった。項垂れた彼を撫でるように風が吹く。
風に持ち上げられるように顔を上げると、視界の遠く先からこちらへ向かってくる影が二つあった。

その内の一つは彼に取って、遠目であっても間違えようのない男のものだった。自分も津村斗貴子を
殺害している。それを思い出すと、なんとも誂え向きなお迎えだと、思わずにはいられなかった。

109 : ◆PuVQoZWfJc :2011/02/05(土) 21:05:08 ID:ReQO8LCX
「パピヨンさん、その、なんて言ったらいいか」

塔へと向かうカズキとパピヨンマスクこと趙雲の気持ちは火渡を撃退した時とは打って変わって
通夜のように落ち込んでいた。自分の知り合いは連れてこられていない様なのでそこだけは安心だったが
あれだけの数の人の名前が呼ばれたのだ。案の定、趙雲の仲間も命を落としたようだった。

放送の後趙雲は息を飲むと厳しい表情を浮かべ静かに眼を閉じた。そしてしばらくの間、
佇みやがてカズキを促して歩き出したのだ。

(俺が、俺がもっと、ちゃんと何かできてれば......)
「気に病むな、君のせいではないんだ。言ってしまえばこれは、仕方のないこと、とも言える」

趙雲は俯き何も言えないカズキの心情を察して逆に気遣う。流石に今はマスクを外している。

「仕方がないって、何が仕方ないんですか。こんなことになって、それで死ぬなんて」

告げられた言葉に噛み付くと趙雲はああ、と言って手をぱたぱたと振る。

「そういう意味じゃない。確かにこんな事態に納得なんかいかない。だがなカズキ君、私たちは互いに
戦う為に武器を取った身だ。戦となればこの手を汚さざるを得ない」

空を見上げるとこの状況を関係ないと言わんばかりの晴れ空が広がっている。

「使い道をどうしたところで力が暴であることには変りない、人より多めに恨みも買うさ、だから
私たちは自分の死に方に文句を言える立場じゃないんだ。それは彼女たちも分かっていたはずさ」

カズキに言い聞かせるように話す横顔には悲嘆も憎しみも見えない。

「心残りがあるとするなら一つ、最後を看とってやれなかったことだろうな......」
「パピヨンさん......」

少しだけ寂しそうな笑みを浮かべると、行こう、とカズキを促してまた歩き出す。

大きい、とカズキは思った。僅かに前を歩く女性は、自分と背格好も年も然程離れてはいない。それなのに
趙雲の背中はとても大きく見えた。そうして彼女の背中を見ながら歩いていると急に止まったので
危うくぶつかりそうになる。

110 : ◆PuVQoZWfJc :2011/02/05(土) 21:07:11 ID:ReQO8LCX
「どうしたんですか、パピヨンさん」
問うが趙雲は答えない。視線を辿ればこちらにゆっくりと歩いて来る大男に注がれている。

前に出ようとするカズキを無言で制すると趙雲は火渡の時よりも強く警戒した。
目の前の男、いや人かどうかの判断にも自信が持てないくらいの驚異を放つアレは何者なのか、
カズキを襲っていた男が可愛く見えるほどの重圧、それとは裏腹に幽鬼のような空虚さと容貌から
発せられる違和感、どれ取っても普通でないその男に趙雲の中のあらゆるものが警報を鳴らしていた。

(此奴、人間なのか、恐ろしいまでの危険を感じる......!)
友の死を悼む時間をぶつ切りにされてなおそれを仕方ないと思えるほどの驚異を前にして、気を張り詰めて
いると大男、ヴィクターの方からこちらに声をかけてくる。

「久しいな、武藤カズキ。まさかこのような形で再会することになるとはな」
名を呼ばれてカズキが動揺する。また自分の名前を知っている、自分の知らない人がいた、と

「放送を聞いていただろう、ヴィクトリアは死に、津村斗貴子は俺が殺した。お前には俺を殺す
理由がある、と言えばお前はどうする」

問いかけながら歩み寄ってくるヴィクターを見て二人は大男のイメージを訂正した。巨人といった方が正しい。
瞳に悲しみの色を浮かべた巨人が眼前まで来たとき、どちらも動けなかった。敵意こそ感じられないが
逃げ出せるものとも思えない。

「どうした、お前も胸に核鉄を宿しているのならそれで俺の首を突け。それとも他の者を犠牲に
しなければならんか」

「ま、待ってくれ!あ、あんたもオレのこと知ってるのか!いや、ですか」
一応初対面の目上ということで言葉遣いを直す。ヴィクターはカズキの言葉に小さく眉を寄せる。

「何を、言っているんだ......お前は」

「さっきもオレの事を知ってる人がいた、でもオレはその人は知らない......教えてくれ!オレは一体なんなんだ!」

カズキの言葉にヴィクターの中に一つの怖れとも焦りともつかない感情が湧く。咄嗟にカズキの胸に手を当て
自分のと比べる。ない。彼と自分に共通してあるはずの物が。核鉄という偽りの心臓が。

111 : ◆PuVQoZWfJc :2011/02/05(土) 21:09:27 ID:ReQO8LCX
「ッ!離れろ!」
ヴィクターの行動を見て趙雲がカズキから受け取った鈍器を首に突きつけるが彼は意にも介さない。

「あ、あの、なにを」
カズキが戸惑っていると神妙な顔をしていたヴィクターが小さく肩を震わせる。震えが大きくなりやがて
声を上げて笑い出す。滑稽で醜悪な事実に気づくといよいよもって全てが莫迦らしくなる。

「お前は、あの武藤カズキではないのか」

その言語が二人の疑問の答えだった。

カズキに彼自身のことを教える代わりにこの島へ連れてこられるまでを含めたこれまでの経緯を聞くと
ヴィクターは納得したように頷くと一つの答えを導き出す。

(恐らく異なる時間の中で「始めの」彼がここに連れてこられたのだろう)
そう思うといくつかのことに合点がいく。武藤カズキがまだ戦士でなく核鉄を宿していなければ錬金の戦士たち
との接触もない。彼が自分以外の人物を知らず、彼の周辺人物が彼を知っている。

(他のブロック分けされた人物との接触や検証ができないのでなんとも言えないが)

だか少なくとも彼が津村斗貴子の事を知らないと言うには他に有り得そうにない。そして既に自分が殺めた
彼女もまた自分のことを知っているはずなのに知らないようだった。

ヴィクターは、カズキ達に錬金の戦士とホムンクルス、自分とヴィクトリアのこと、そして
自分が知っている限りのカズキのことを隠さずに話した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「お、オレってそんなにエラいことになるのか」

素直にヴィクターの言う事を信じるカズキに趙雲が待ったをかける。

「待ちたまえカズキ君、君はこの男の言う事を真に受けるのか。いやまあ丸きり嘘とは私も思わんが」

そう言いつつヴィクターをちらと見る。言ってることはほとんど分らなかったがこの男が人食いであることだけは
分かった。ある意味いらぬ告白だった。

112 : ◆PuVQoZWfJc :2011/02/05(土) 21:11:30 ID:ReQO8LCX
「信じろとは言わん、だが俺の言えることはこれだけだ」
衝撃を受けるカズキとは対照的に沈黙するヴィクター。結局この男は何をしに来たのかと趙雲が
訝しんでいるとヴィクターはデイパックから徐ろに何かを二人に差し出す。

「前置きが長くなったな」
カズキが手渡されたのはボタンが一つだけついた小さなリモコンだった。

「なんですか、これ」
カズキが聞くとヴィクターは首輪の起爆装置らしくそれを自分に向かって押せと言った。

いきなりのことに二人はヴィクターを見る。先程から表情に変化がない。

「本当は、万一に備えて娘の為にとっておいたのだがな。丁度いいだろう」

最悪の事態に陥ったら娘を優勝させようと思っていた。そしてもしも先に娘が死んでいたらと、自分が優勝
しようと考えなかったわけではない。ただカズキの話を聞いていて死者の蘇生に見当が付いた辺りから
その気も失せてしまった。

(異なる時間の者を連れ出せるのなら、異なる時間の当人を拐ってくればいい。ホムンクルスとは別の
技術でもあるかと思えば、期待はずれだった)

異なるいつかの娘を拐った所で自分は彼女の父にはなれないし、やはり「自分」が娘を失うことは避けられない。
そう結論付けたヴィクターはカズキと会ったことを幸いに終わりにしてしまおうと思った。

「だ、駄目に決まってるじゃないか!そんなこと!」

案の定反対の声を上げるカズキにヴィクターは趙雲の方を見る。首を横に振ると同じように反対する。

「恐らくそうするのが私たちにとっても良いのかも知れん、だが妖怪の類であっても自殺の手助けはできん」
気の強い眼差しで睨み返してくる。

「しかし俺が人を喰うことは変わらない。ここで始末せねば被害が増すだけだぞ、それとも
更に犠牲者を出してからでないと押す気にならんか」

ヴィクターがそういうとカズキは違うと声を張り上げた。

113 : ◆PuVQoZWfJc :2011/02/05(土) 21:13:57 ID:ReQO8LCX
「オレからは何て言えばいいのか分らないし、言う資格もないかも知れない、でもそれで
あんたが死んでいいことにはならないだろう!」

「ヴィクトリアはもういない、そして俺が人を喰うことも避けられない、それでもいいとお前は言えるのか」

否定するカズキに問い掛けるヴィクター、それに対してカズキは答えられない。
「良くない!もしアンタが襲ってきたら、オレ達は戦うしか無いかも知れない、だけど、それでもやっぱり
アンタが死んでいい理由になんかならないんだ!」

ひたと巨人を見据える少年の瞳は、強い意思を秘めていた。ヴィクターはこの目に見覚えがあった。
「諦めるなよ!もう取り戻せなくたって、それでも諦めたら、それで死んじゃ駄目なんだ、絶対!」
「武藤カズキ......」

間違いなくこの少年は武藤カズキだ、そしていつかあの日の武藤カズキになる。元の世界に戻れば
成り行きは異なってもいずれ戦いの日々に足を踏み入れるだろう。そしていつかの日の自分を
救ってくれる。ヴィクターはそう思った。

不思議な気持ちだった。先程まで何も考えられない状態から少しだが持ち直している自分に気付く。
もう少しだけ生きてみようという気持ちが湧いてくる。

「こんなもの!」
渡された起爆装置を海へ向けて投げ捨てるとカズキはヴィクターへと向き直る。

「殺し合いなんかいけないけど、それで自殺なんてやっぱり駄目だ、その、子どもに悪いと思うし」
言われてようやくヴィクターは気付いた、そういえば彼もまだ少年だったのだ。子どもに自殺幇助をさせようと
していたことが分かり彼の良心は遅まきながら痛んだ。

「しかし、それでこの男はどうするんだ。戦って勝てる相手じゃないんだ。今のが最後の好機だったかも分からん」
今まで成り行きを静観していた趙雲がカズキに聞くが流石に答えは出ない。そもそも出せるような問題でもない。

「分かった」

あれこれ思案しているとそう呟く声が聞こえた。見ればヴィクターが少しだけ疲れた笑みを浮かべている。

「もう少しだけ生きてみよう、だがそれでも駄目なら今度こそ終わりにする」

114 : ◆PuVQoZWfJc :2011/02/05(土) 21:16:10 ID:ReQO8LCX
そう言うと巨人は踵を返して歩き去ろうとする。趙雲にやはり人を喰うのかと聞かれると小さく頷く。

「まだ俺用の食料も『ここ』にあるし、それなりに我慢もできる。それに幸いに、と言ってはなんだが
これだけの死人が出た以上死体の一つや二つは直ぐ手に入るだろう」

デイパックを軽く叩く彼の言わんとしていることが分かると二人はなんとも言えない表情になる。

「虫のいい話だが、もし私と同じ年頃の娘の死体を見つけたら遺髪を取って葬ってやって欲しい。
余裕があればでいい、どちらも髪が長かった......から、すぐ分かると思う」

趙雲がそう頼むとヴィクターは「ああ」とだけ返して歩み去る。その背中にカズキが声をかける。

「ヴィクター!オレは死なないから、ヴィクターも死ぬな!いや、オレがもし死んでも、お前は早まるなよ!」

「武藤カズキ!覚えておけ、俺の心臓はお前の心臓でもある。俺が先に死んだら連れていくがいい!」
辺りに誰かいるかも分らない中で大声で互いを見送る。それが済むとカズキと趙雲は目の前の塔へと
歩き出す。

塔の入り口まで来るとカズキは趙雲が自分を見ていることに気付く。何か聞く前に先に言われてしまう。
「君は人が良すぎるな、私の知人にもそういうのがいたよ」

若干トゲのある言い方だったがカズキとしては言い返せる言葉がない。素直に誤ろうとすると人差し指を
口に当てられて言葉を遮られる。

「謝らなくていい、悪いことをした訳でもあるまい。たぶん......ただ、どう転んでも受け止めなければいかんぞ」
趙雲にそう言われるとカズキは短く、しかしはっきりと返事をする。そこで二人は会話一度終わらせた。

趙雲は思い出す。親友の姉となった人、そして自分を率いた少女のことを。
(せめて二人とも無事でいればな)

一方でヴィクターは研究所の少女の事を話し忘れていたことを思い出すが、あの二人ならおそらく大丈夫だろう
と先を急ぐことにする。彼は良くも悪くも行動に迷いが無かったがそれも今では一層そうなったようだ。

(武藤カズキ......元の世界に戻ってもまた、私と娘を救って欲しい)
少年が、再びいつかの自分たちの救いとなることを願うとヴィクターは塔を後にした。

115 : ◆PuVQoZWfJc :2011/02/05(土) 21:19:17 ID:ReQO8LCX
【一日目 B-6 塔 朝】


【趙雲@真・恋姫†無双】
[状態]:健康
[装備]:バールのようなもの@現実 、ヘルメスドライブ@武装錬金、
    パピヨンのマスク@武装錬金
[道具]:基本支給品×1、ピリ辛メンマのレトルトパック×20@現実、ランダム支給品0〜1
[思考]
基本:美と正義の使者として振る舞う
1:ヘルメスドライブの扱いに慣れる
2:カズキを仲間に加える
備考※ヘルメスドライブを上手くコントロールする事が出来ません

【武藤カズキ@武装連金】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考]
基本:生き残る
1:真矢ちゃんの所に戻る。
2:友好的な参加者を探す。
3:殺し合いが起きているかどうか確かめ、起きていれば止める。
4:パピヨンさん蝶格好いい……。
[備考]
※一話にて、斗貴子を助ける為に飛び込む寸前からの参加です。

【ヴィクター@武装連金】
[状態]:疲労(小)
[装備]:核鉄@武装連金
[道具]:基本支給品×1、確認済み支給品0〜1(核鉄はありません)
    アレクサンドリアのミートパイ×12@武装連金
[思考]
基本:もう少し生きる
1:生存優先だが殺し合いに乗った者や錬金の戦士などは排除する。
2:万一の時は武藤カズキの優勝
3:死体の確保
※ 26話、ホムンクルスになった後での参戦。既にヴィクター化していません。
※ 核鉄は本人の心臓として一体化しています
※ 食人衝動は通常のホムンクルスよりも強まっています
※ 首輪の起爆装置はB-6の海に投げ込まれました。

116 : ◆PuVQoZWfJc :2011/02/05(土) 21:20:57 ID:ReQO8LCX
投下終了
タイトルは「シンデレラ・ファーザー」

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/07(月) 17:12:23 ID:UZA1eYJu
投下乙です

これは意外
てっきりヴィクターがマーダーになると思ったら…武藤のおかげ…だろうな
それにしても危険視されてる武藤やヴィクターが純粋対主催で頑張ってて自称正義の連金船団の連中は死んだやつら含めて…
再殺の連中は危険対主催だけどな

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/14(月) 00:12:04 ID:dxyw2Df1
かそだなーほす

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/02/19(土) 22:06:34.76 ID:xr7ZqN2l
それでもぽつぽつ来てるだけマシ

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/01(火) 05:17:57.49 ID:zn6Cqijf
何か急激に過疎ったな保守

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/02(水) 16:26:33.17 ID:a3PxD8Wf
蒼穹とストパンはアニ4まで待って欲しかった

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/02(水) 19:41:40.80 ID:c+zl2m5B
これ開催がかなり遅れてたら絶対に屍鬼とまどかマギカ出てたな

123 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/05(土) 22:29:39.97 ID:nNFxc6l5
投下します

124 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/05(土) 22:32:06.99 ID:nNFxc6l5
とある宿泊施設の一室に二人の男女がいた。片方は背の高い、成人してから久しいような男。
片方は未だあどけなさが濃く残る女学生といった姿だった。

施設の構造と相まってあたかも営利によって情事に及ぼうとする物事を連想させるが
そこで行われたのは色事とは縁遠い、もしかすればその方がまだいいような「実験」であった。

「それでは、あの青年はもう一人のあなたに任せて、こちらも休息をとることにしましょうエンジェル」

自らがそう名付けた少女を彼、サイスマスターは呼んだ。エンジェルと呼ばれた、彼に本当の名を奪われた
少女、立華かなでは小さく返事をする。

「でも、本当にいいの?」と小さくエンジェルが聞き返す。
「私がもっと増えて島中にいけばきっと早く終わるわ」

ああ、とサイスマスターは小さく頷くと彼女の疑問に答える。

「だからですよ、これはこれで興味深い出来事なのですから、もう少しことの推移を観察しましょう」
折角ですしと付け加えると彼は何事か思い出したようにエンジェルを見る。

「そういえばあなたの持っているガードスキル、でしたか。アレの事をよく分かっていませんでしたね。
いい機会ですからこの際ここで把握しておきましょうか」

そう言うと、サイスマスターはエンジェルに先程と同じく分身するように言う。

「分かった、ガードスキル、harmonics」

うっすらとした輪郭がエンジェルから離れて実体化すると彼女と瓜二つ、というよりそのままもう一人の
立華かなでが現れる。

「一応、本体であるあなたに危害のないようこちらでやりますか。では始めましょう」

僅かに好奇の色を瞳に滲ませながら、サイスマスターは実験の開始を告げた。

125 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/05(土) 22:34:53.59 ID:nNFxc6l5
「銃で撃たれたり、爆弾が来るときは、Distortionで防ぐの」

そう言ってエンジェルが同名のガードスキルを使用する。見た目の上では変化が分からないが試しに
オートマグで一度撃つと、硬質な音と共に弾が跳弾しあらぬ方向の壁に穴が開く。

「でもあんまり大きい物は防ぎきれないから、そういう時は、Delayを使う」

目の前で消えたかと思えばいつの間にか自分の後ろにおり振り向けばまた消える。高速移動の能力らしい。
ちなみに今能力を使っているのは増えた方のエンジェルであり、説明は首輪がついた方、つまり本人が
行っている。

「それでこれがHandSonicとOverDrive、これはもう見たと思うけど」

もう一人のエンジェルが手の先に手甲剣から槍、ハサミと次々に出しては変化させ最後に出した花のような
物で壁を思い切り殴る。鈍い破砕音が響くと壁に大穴が空いている。

淡々とガードスキルの紹介を受けながらサイスマスターは眉ひとつ動かさなかったが、内心では見世物を楽しむ
子どものように嬉々としていた。エンジェルの警告後に使われたHowlingという音波攻撃らしきものを見たときも
それは変わらなかった。

(やはり素晴らしい。素材の段階でここまでならこの先どれほどの物にできるのか)
惜しむらくはこの素材が一つしかない希少品だと言うこと。そう思っていた。エンジェルが次の一言を
言ってしまうまでは。

「あとは、私を一人に戻すabsorbっていうのがあるんだけど、これはなるべく使いたくないの」

「何故です、分身を戻すだけではないのですか」
らしくもない素朴な疑問だった。内心興奮していたとはいえ間抜けな聞き方をした物だと彼は思った。

「この娘も私だから、分身っていうより、本当に「もうひとりの」私だから、戻そうとすると少し辛いの」
その言葉が、目の前の男の欲望を充分に満たしてしまうことは、エンジェルには分らなかった。

「なるほど、ではあまり増えた状態で戻そうとするとどうなるのですか」

サイスマスターの心臓の鼓動が早くなる、自分に急ぎ過ぎないようかろうじて自制を促す。

126 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/05(土) 22:38:03.45 ID:nNFxc6l5
「分らない、でも一人に収まらなかったら、きっと私でなくなると思う」

それが何を意味するのか実際に確かめて見たかったが今は思い留まる。彼は務めて平静な声で最後の疑問を
口にする。

「しかし、そのアブソーブというのもさっきのハーモニクスも本体のあなたしか使えないと来れば
ある程度は仕方のないことなのではないですか」

しかしエンジェルは首を横に振る。それは彼の言葉を否定すると同時に彼にある幸福を確約するものでもあった。

「使われたことは無いけど、この娘もさっきの娘もガードスキルはみんな使えるの、『私』だから」

渋々自分の分身を戻しつつガードスキルの講義を終了する。そして目の前の男にとっても見世物もまた。

「............エンジェル、申し訳ありませんが先程のハーモニクスをもう一度使って頂けませんか。
一つ確認したいことがありましてね、それが済んだらもう休んで頂いて結構ですから」

エンジェルから見てサイスマスターに変わった所は無かった。戻ったばかりで気持ちが悪かったが
最初に自分が言い出したこと、そして休めるということもあって彼女はその命令を承諾した。


とりあえず四人ほど増えてもらうと彼女たちに「少し確認したいことがある」といいそれぞれ別の部屋に待機させる。
今この部屋には初めと同じくエンジェルとサイスマスターの二人だけである。

「それで、あなたの確認したいことって?」
エンジェルが不思議そうに小首を傾げている。その姿は少女以外の何者でもない。

「いえ、大したことではないんですよ。ただそう、ディストーションの強度の確認をしたいだけでして」

そう言ってサイスマスターはオートマグの銃口をエンジェルに突きつける。既に先程確認していた筈だが
納得が行かなかったのか、それとも連射でもしようというのか、でなければ目でも撃つつもりなのか。
目であってもせいぜいゴミが入った程度の衝撃なのだがもしかしたらその辺りかも知れない、とエンジェルは考える。

初めに言っていたことと話が違っているが、他の自分にやらせるのも可哀想だと思ったので彼女は黙って沙汰を待った。

127 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/05(土) 22:40:54.19 ID:nNFxc6l5
「本当に、何から何まであなたはよくできた娘でしたね、エンジェル」

目の前の男が優しげに微笑む。これから飛んでくるのはただの銃弾だ。何の心配もない。それなのに
エンジェルの、立華かなでの胸はざわついていた。言いようのない不安が湧き出してくる。

「心配は入りません、これで終わりですから、後はゆっくりお休みなさい、エンジェル」
引き金がゆっくりと引かれる瞬間、銃口が頭よりやや下の位置を狙っていることにエンジェルは気付いた。

急にどこかで見た光景が脳裏と視界に映り込む。覚えていないはずのものまで。
知っている、自分はこの光景を知っている。校舎、ライブ、SSS、麻婆豆腐、死後の世界、自分の名前
そして、今まで思い出せなかった、今一番会いたい人の名前......

(音無君)

とある青年の顔と声が彼女の中に蘇るのと、彼女の視界と意識が白く吹き飛ぶのはほぼ同時だった。
閃光と爆音の後、燻る火が外の天気とは対照的な暗い室内に渦巻いている。火は人の形をした物を
燃料に燃え続けている。あたかも人型の蝋燭に灯っているかのように。

直前まで少女の顔が乗っていた場所には何もなかった。垂直に伸びた火柱によって焼き切られ
消し飛んでしまったようだった。

「やはり駄目でしたか、しかしこれではっきりしましたね」
防御に身を固めた人外でも今見たとおり首輪が爆ぜればご覧の通りだ。首の上の火が消えて、どさりと
少女の体が崩れ落ちるのを尻目にサイスマスターは部屋を出る。

立華かなでの利便性、首輪の威力、収穫としては上々だった。別の部屋へ行き増やした「エンジェル」達へと
声をかけて彼はその施設を出ることにする。当面の間は気ままに散策するのもいいだろう。

なお彼女たちには本体である彼女は休んでいるとだけ伝えておいた。皆一様に沈んだ顔をしているあたり
バレているのかも知れないが反抗する気配がないのは、自分の手入れが行き届いたということなのだろう。

参加者ではない彼女たちなら持ち出しても問題はないだろう。サイスマスターは元の世界へ帰った後の
ことを考えると晴れやかな気持ちで仕方がなかった。

(彼女がいれば、採算は取れるでしょう。ですができるなら他にも欲しいところですね.........)
口元に笑みを貼りつけたまま、彼は宿泊施設を後にした。

128 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/05(土) 22:42:54.62 ID:nNFxc6l5
【立華かなで@Angel Beats!死亡】
【残り35人】

【1日目 G-3 宿泊施設 午前】

【サイスマスター@Phantom 〜Requiem for the Phantom〜】
[状態]:健康 、気分高騰
[装備]:白い普段着
[道具]:基本支給品×2、無線機、オートマグ@現実(残弾5+1発)、義体用の薬品セット@GUNSLINGER GIRL、ランダム支給品0〜1
立華かなでの分身×4人
[思考]
基本:どのような形であれ、このゲームに勝利する。
1:エンジェルの教育
2:アインを利用する。策を弄する。
3:適切な行動の為の情報を集める。
※アインとは今後の方針、緊急の連絡方法等を事前に決めました。
※かなでの首輪の爆発の音が周囲に聞かれた可能性があります。
※かなでの分身の処遇については後の書き手さんにお任せします。

129 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/05(土) 22:45:02.37 ID:nNFxc6l5
投下終了 タイトルは「シミュラークル」

130 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/06(日) 02:38:49.68 ID:Gd6+I+gP
「実験」でわざわざ貴重な手駒を殺す意味がわからない…
あとメタ的に言うと本体殺せば分身全部消せるって手段が使えなくなったから
収拾がつかなくなったと思う

131 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/06(日) 08:53:47.27 ID:vuC3R3nV
>>130
良かった、これで修正できます。
したらばがもうほとんど機能してないので言ってもらうには
これしかないと思いました。

132 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/09(水) 21:06:32.80 ID:axAhsNZG
修正版投下します。

133 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/09(水) 21:09:20.41 ID:axAhsNZG
とある宿泊施設の一室に二人の男女がいた。片方は背の高い、成人してから久しいような男。
片方は未だあどけなさが濃く残る女学生といった姿だった。

施設の構造と相まってあたかも営利によって情事に及ぼうとする物事を連想させるが
そこで行われたのは色事とは縁遠い、もしかすればその方がまだいいような「実験」であった。

「それでは、あの青年はもう一人のあなたに任せて、こちらも休息をとることにしましょうエンジェル」

自らがそう名付けた少女を彼、サイスマスターは呼んだ。エンジェルと呼ばれた、彼に本当の名を奪われた
少女、立華かなでは小さく返事をする。

「でも、本当にいいの?」と小さくエンジェルが聞き返す。
「私がもっと増えて島中にいけばきっと早く終わるわ」

ああ、とサイスマスターは小さく頷くと彼女の疑問に答える。

「だからですよ、これはこれで興味深い出来事なのですから、もう少しことの推移を観察しましょう」
折角ですしと付け加えると彼は何事か思い出したようにエンジェルを見る。

「そういえばあなたの持っているガードスキル、でしたか。アレの事をよく分かっていませんでしたね。
いい機会ですからこの際ここで把握しておきましょうか」

そう言うと、サイスマスターはエンジェルに先程と同じく分身するように言う。

「分かった、ガードスキル、harmonics」

うっすらとした輪郭がエンジェルから離れて実体化すると彼女と瓜二つ、というよりそのままもう一人の
立華かなでが現れる。

「一応、本体であるあなたに危害のないようこちらでやりますか。では始めましょう」

僅かに好奇の色を瞳に滲ませながら、サイスマスターは実験の開始を告げた。

134 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/09(水) 21:12:33.55 ID:axAhsNZG

「銃で撃たれたり、爆弾が来るときは、Distortionで防ぐの」

そう言ってエンジェルが同名のガードスキルを使用する。見た目の上では変化が分からないが試しに
オートマグで撃つと、エンジェルの額に当たった弾は硬質な音を立てあらぬ方向の壁に穴を開ける。

「でもあんまり大きい物は防ぎきれないから、そういう時は、Delayを使う」

目の前で消えたかと思えばいつの間にか自分の後ろにおり振り向けばまた消える。高速移動の能力らしい。
ちなみに今能力を使っているのは増えた方のエンジェルであり、説明は首輪がついた方、つまり本人が
行っている。

「それでこれがHandSonicとOverDrive、これはもう見たと思うけど」

もう一人のエンジェルが手の先に手甲剣から槍、ハサミと次々に出しては変化させ最後に出した花のような
物で壁を思い切り殴る。鈍い破砕音が響くと壁に大穴が空いている。

淡々とガードスキルの紹介を受けながらサイスマスターは眉ひとつ動かさなかったが、内心では見世物を楽しむ
子どものように嬉々としていた。エンジェルの警告後に使われたHowlingという音波攻撃らしきものを見たときも
それは変わらなかった。

(やはり素晴らしい。素材の段階でここまでならこの先どれほどの物にできるのか)
惜しむらくはこの素材が一つしかない希少品だと言うこと。そう思っていた。エンジェルが次の一言を
言ってしまうまでは。

「あとは、私を一人に戻すabsorbっていうのがあるんだけど、これはなるべく使いたくないの」

「何故です、分身を戻すだけではないのですか」
らしくもない素朴な疑問だった。内心興奮していたとはいえ間抜けな聞き方をした物だと彼は思った。

「この娘も私だから、分身っていうより、本当に「もうひとりの」私だから、戻そうとすると少し辛いの」
その言葉が、目の前の男の欲望を充分に満たしてしまうことは、エンジェルには分らなかった。

「なるほど、ではあまり増えた状態で戻そうとするとどうなるのですか」

サイスマスターの心臓の鼓動が早くなる、自分に急ぎ過ぎないようかろうじて自制を促す。

135 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/09(水) 21:15:57.32 ID:axAhsNZG
「分らない、でも一人に収まらなかったら、きっと私でなくなると思う」

それが何を意味するのか実際に確かめて見たかったが今は思い留まる。彼は務めて平静な声で最後の疑問を
口にする。

「しかし、そのアブソーブというのもさっきのハーモニクスも本体のあなたしか使えないと来れば
ある程度は仕方のないことなのではないですか」

しかしエンジェルは首を横に振る。それは彼の言葉を否定すると同時に彼にある幸福を予感させた。

「使われたことは無いけど、この娘もさっきの娘もガードスキルはみんな使えるの、『私』だから」

やはり、とサイスマスターは思った。これは言い換えれば彼女という道具は如何なる技術も用いずに
いくらでも増やすことができるということでもある。まさに打止めのない兵器だった。

「ふむ、それは興味深いですね。エンジェル、やって見て下さい。もしかすれば首輪も外れるかも知れません」
そう言って増えた方のエンジェルに促すと戸惑ったような表情を浮かべたが、ちらりと本体の方を見ると
アブソーブを使用する。だが小さく唱える声が聞こえた後は部屋はしん、と静まり返り何も起こらない。

エンジェルは二人して不思議そうに顔を見合わせているがサイスマスターの方は先程は違う表情でやはり、と思った。

「流石に話が上手すぎましたかね。エンジェル、ハーモニクスを使ってみなさい」
分身が使用するが、ガードスキルは発動しない。ようやく自分たちの身に起きたことに気付いたのか
二人のエンジェルはひどく動揺していた。

「どうやらハーモニクスもアブソーブも使えるのはあなただけのようですね。それが首輪のせいなのか、
それともまた別の要因の因るのかは分かりませんが、分身の方は使用できるガードスキルが制限されているようですね」

分かり難くはあったがどちらも心細そうな目の光を弱めている。

「まあそれでも充分な気もしますがね、エンジェル、とりあえず十人ほど分身して頂けますか。その方が安全でしょう」

本体の方がハーモニクスを使用するとしかし現れたのはたったの二人だけだった。サイスマスターは
やれやれといった態で頭を軽く降る。

136 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/09(水) 21:19:56.73 ID:axAhsNZG
「こちらもですか、貴女たちと先程の娘たちも含めて分身は五人が限度のようですね」

更に増えた分身達はそれぞれ別の表情を浮かべている。本体に比べて性格が別のようだ。

「まあ、自衛においては上々でしょう。エンジェル、授業はこれくらいにして、夜まで休むとしましょう」
自分の体の異常に納得が行かなかったが、エンジェルは渋々ガードスキルの講義を終了する。

(ふむ、制限がかけられているということはそれだけ彼女の力が危険だということになります。
これはいい土産になりそうですねえ)

口元に笑みを貼りつけたまま、彼は増えたエンジェルたちと共に夜を待つことにした。
ただ、彼は自分の小さな間違いに気付かなかった。追手として放たれた二人のエンジェルの内片方は既に
死亡しており、彼女が分身できる数は正しくは四人だった。

【1日目 G-3 宿泊施設 午前】

【立華かなで(A、本体)@Angel Beats!】
[状態]:健康、脇腹に刺し傷(縫合済み)、記憶喪失
[装備]:制服、エンジェルプレイヤー
[道具]:なし
[思考]
基本:マスターの命令に従い、参加者を駆逐する。――に会いたい。
1:マスターの命令に従う
2:――を探す為に学校に行きたい?

【サイスマスター@Phantom 〜Requiem for the Phantom〜】
[状態]:健康 、気分高騰
[装備]:白い普段着
[道具]:基本支給品×2、無線機、オートマグ@現実(残弾5+1発)、義体用の薬品セット@GUNSLINGER GIRL、ランダム支給品0〜1
立華かなでの分身×3人
[思考]
基本:どのような形であれ、このゲームに勝利する。
1:エンジェルの教育
2:アインを利用する。策を弄する。
3:適切な行動の為の情報を集める。

※アインとは今後の方針、緊急の連絡方法等を事前に決めました。
※かなでの分身の処遇については後の書き手さんにお任せします。

137 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/09(水) 21:22:32.18 ID:axAhsNZG
【立華かなで(D)@Angel Beats!】
[状態]:健康
[装備]:制服、エンジェルプレイヤー
[道具]:なし
[思考]
基本:マスターの命令に従い、参加者を駆逐する

【立華かなで(E)@Angel Beats!】
[状態]:健康
[装備]:制服、エンジェルプレイヤー
[道具]:なし
[思考]
基本:マスターの命令に従い、参加者を駆逐する

【立華かなで(F)@Angel Beats!】
[状態]:健康
[装備]:制服、エンジェルプレイヤー
[道具]:なし
[思考]
基本:マスターの命令に従い、参加者を駆逐する

138 : ◆PuVQoZWfJc :2011/03/09(水) 21:25:37.11 ID:axAhsNZG
修正版投下終了、タイトルは変わらずに「シミュラークル」

139 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/10(木) 15:11:43.37 ID:9rW+godt
まだやってたんだ

140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/22(火) 12:17:25.84 ID:BiZfm9Xp
保守上げ

141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/03/31(木) 20:42:15.88 ID:QCu1GIeb


142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/08(金) 02:27:41.41 ID:lKLo/xIP
そろそろ参加者の間引き作業に戻ろうかな…

143 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/21(木) 11:06:24.35 ID:3WkLYfQy
まどか放送終了したら作品選出からリスタートしようぜ

144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/24(日) 21:02:30.19 ID:mfKDxq+b
まどかオワタ
ムシャクシャした気分を収めるためにさやかちゃんに10人くらい殺害させたい


145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/04/30(土) 22:54:58.17 ID:iyJ2aazJ
完全停止か
書き手は帰ってくるかねぇ

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/03(火) 17:56:32.93 ID:S5EMriFk
今年に入ってから投下した書き手は一人だけだしなあ
その一人が去ったら誰も残らないだろう

147 : ◆/Fnde2WILg :2011/05/10(火) 01:10:00.10 ID:akOa43aG
真壁一騎、遠見真矢、宮藤芳佳、ハルトマン、バルクホルン、ルッキーニ、エイラ、武藤カズキ、火渡赤馬、ヴィクター
神山高志、林田慎二郎、ゴリラ、マスクド竹之内、ヘンリエッタ、ジョゼ、トリエラ、ピノッキオ、銭形巡、仲村ゆり
立華かなで、劉備、諸葛亮、趙雲、曹操、ルーシー、ナナ、坂東カナン、アルファルド、大沢マリア、リャン・チー
アイン、サイスマスター、黒、蘇芳・パヴリチェンコ で予約。

148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/10(火) 10:48:38.32 ID:MDsFRqTT
最初勢いで始めてef関係のゴタゴタがあったのを必死で流そうと躍起になった書き手が
ひとり頑張っただけだとさ

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/10(火) 15:22:06.99 ID:D4W/7sx6
今回で全員死ぬのか

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/14(土) 22:34:08.49 ID:hgobI9Py
下手なりに頑張ってはいたんだけど、やはり駄目だったか

151 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/21(土) 01:18:48.13 ID:EXIEaXYj
アリア面しれぇな

152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/30(月) 22:04:25.26 ID:si0fZArP


153 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/30(月) 22:54:48.11 ID:dCUi5ZAR
久々に見たが終わりか
とりあえず途中まで書いたけど、途中で書く気が失せたプロットでも晒すか
長かった夜が終わり、世界に色彩が戻っていく。
東の空からグングン昇る太陽が、この夜を生き抜いた参加者たちを祝福するかのように、清々しい朝の光を放っている。
その光を受けて、アスファルトの上に広がったエイラ・イルマタル・ユーティライネンの亜麻色の髪が、白く透けるように輝く。
空色の軍服に包まれた肢体を道路のド真ん中に投げ出し、エイラは呆然と空を見上げていた。
放送が終わってからも、ずっと――。

----



自作ソング「器の大きい人の歌」を歌い終わると同時に始まった放送を、エイラは鼻歌交じりに聞いていた。
支給されたマップに禁止エリア情報を書き込み、いよいよ読み上げが始まった死亡者の名をチェックすべく名簿を取り出す。


『吾妻玲二!ツヴァイと言った方が良いでしょうか。敵の名前は、フフフ、栄えある一人目の敵の名前は、エイラ・イルマタル・ユーティライネン!』


最初の加害者として自分の名前が呼ばれた時は、サーニャに叱られちゃうかなと少し思ったのだが、それよりも自分の悪戯が主催者たちに
どう判定されるのかという事の方に、エイラはより強い興味を持った。
自分が殺した少年の名を初めて知ったのもこの時であったが、もはやツヴァイと呼ばれた少年にはなんの興味もなかった。
エイラは吾妻玲二と書かれた文字列にさっと線を引くと、その下に自分の名前を得意げに書き込んだ。


『――十六人目、近藤剣司!敵の名前はフランチェスカ・ルッキーニ!』


そして放送の声はエイラの狙い通り、ルッキーニの名を加害者として告げる事になるのだが――
その直後に続けられた名前に、エイラが取ろうとしたガッツポーズは、永久に封じられる事となった。


『十七人目サーニャ・V・リトヴャク!敵の名前は遠見真矢!』


サーニャ・V・リトヴャク。
エイラがこの殺し合いに乗る事にした理由となった少女。
誰よりも大切な少女の名を告げられてエイラは――突然全身の力が抜けて、へたりこむ。
そしてそのまま冷たい道路の上に、その上半身がドサリと倒れ込んだ。


強烈な張り手を食らった時のように、頭がクラクラした。
何を言われたのか、一瞬わからなかった。
でも、自分がサーニャの名を聞き違える事なんて、あるはずがなくて。
名前が呼ばれたという事は、つまりそういう事で。



「ウソダ。でたらめダ……」

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/30(月) 22:56:47.50 ID:dCUi5ZAR
なんでサーニャが。
と思った。
サーニャは優秀なナイトウィッチで、夜間戦闘への適正は自分たち魔女の中で一番高いのに。
放送の内容が間違っているとしか、思えなかった。


確かにサーニャは、優しくて穏やかで、人同士の殺し合いなんか出来ない性格だ。
それに純真だから、悪い奴に騙されてしまうかもしれない。
いつも夜間パトロールを一人で頑張っているから、明け方にはへろへろで、自分の部屋も判らない状態になる事もあって……。

「――い、いや、それでもサーニャが……そんなはずアルカッ」

様々な不適切な想像が頭の中に広がって、エイラは慌てて大声を出して否定する。
信じられない。
信じたくない。

なのに、目の端から勝手に大きな水滴が溢れだして、頬を伝っていってしまう。
放送は、いつの間にか終わっている。名簿の線引きは、十六人目で止まったままだ。
だからすぐに立ちあがって、まだ生きてるはずのサーニャを探しに行かなきゃいけないのに、こんな放送を聞かされただけで嘘みたいに身体に力が入らない。
こんな状態で当てもなく、サーニャを探し続けるなんて無理ダナと、兵士としての冷静な自分が頭の片隅で囁く。
背中に当たる、道路の冷たさで身体が凍えた。
サーニャの温もりが欲しかった。

「……サーニャァァー」

弱弱しい泣き声が漏れる。
自分の魔法が、未来予知である事が恨めしくなった。
坂本少佐や、ミーナ中佐のような探索系の魔法があれば、もっと簡単にサーニャを探せたはずなのに。
または、サーニャのような全方位広域探査魔法があればサーニャと交信して――。
と、ない物ねだりの連想を広げていたエイラの脳髄に、電流が走った。

「そうだ、無線ダ! 無線でサーニャに呼び掛けレバ……」

エイラとサーニャ(と宮藤)だけの秘密なのだが、サーニャの魔導針はラジオの電波でも捉える事が出来る高性能なシロモノなのだ。
無線装置でサーニャに呼び掛ければ、いかなる帯域での通信だろうと、きっと傍受してくれるはず。
そんな指針を得たエイラの足はすっくと立ち上がり、力を取り戻した両目が周囲を見渡す。

「よし、待ってろヨ、サーニャ」

幸いにも、ここは商店街の一角だ。
電気屋を探せば、無線機の一つや二つ、きっと見つかるはず。
エイラは、白いストッキングに包まれた脚で道路を蹴ると、狐のような俊敏さで商店街の中を駆けて行った。


----



このあとエイラが無線通信に成功してアインに繋がって、アインがエイラに対して如何にサーニャを無惨に殺したかを語る
(ささやかな復讐)
絶叫するエイラ

場面転換

サイスを生還させるという自己の目的に寄与しない自分の行為に戸惑うアイン
でもそれは、凄く嬉しそうで、生き生きとしていたとトリエラに指摘されるアイン
いいじゃない、一緒に『復讐』しようよと言いだすトリエラ
イタリア人は血を見ないとうんぬんという話で〆

こんな話にしようと思ってた

155 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/31(火) 08:52:29.98 ID:vfsJnYP8
ストパン厨うわぁ

156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/05/31(火) 20:13:52.28 ID:/IE3nEZD
いや、俺は好きだな。
読んでみたいと思ったよ

157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/01(水) 18:14:28.17 ID:d3lS4CO4
そりゃストパン厨でもなきゃ、わざわざこんな過疎ロワで書こうとは思わんだろjk

158 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/01(水) 22:20:31.90 ID:/W8HwVdK
結局というか何というかミソがついたロワは一人が頑張っても
どうにもならないという事だな。ロワの完結は本当に難しい。

159 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/02(木) 02:35:33.33 ID:DnXAcYmn
一人で頑張ったとか誰の事を指して言ってるんだか知らんが、とりあえず書き手は複数残ってたんだし
そういう人たちを軽視するような事を言うなよ

160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/02(木) 23:22:31.06 ID:T43Z5ZbP
そうだな、俺が悪かった。皆よく頑張って書いてたな、年明けから
投下なくなってたが、書き手は残ってたんだな、投下なかったけど。
今となってはどうでもいい気がするけどな、もう投下ないんだし。

161 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/07(火) 22:41:30.70 ID:uzD9Z0Yg
今年書いてた人か
まぁあの筆力じゃ書けば書くほど泥沼だと思ってたけど…

162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/08(水) 16:06:15.15 ID:CZQDYY8S
どっちにしろ潰れるとして、書き手がぱたっと消えるのと
下手くそが細々とやってやっぱり消えるのはどっちが
いいのか、まあ前者なんだけどさ

163 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/09(木) 00:37:14.70 ID:zfooOidF
筆力以前に今まで誰一人参加者殺してないからなあの人…
ロワ書きにしては人柄が優しすぎる

164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/11(土) 01:48:09.58 ID:HGPH0rwG
殺すと影響が強そうだと思って遠慮したんじゃないか?
まぁ別に殺さなくても話を一話書けばそれだけで影響は出ちゃうものだし
殺さないほうが続きを書きにくいって事もあるけども

165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/17(金) 06:29:39.58 ID:YX/KnZud
マーダーと対主催ほいほい合流させちゃうほうがよっぽど影響強いし続き書きにくそうだけどな

166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/18(土) 01:19:23.38 ID:xGCgLW5W
つーか天使ちゃんが100人くらいに分裂すれば優勝一直線だろw

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